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2023年09月19日の記事は以下のとおりです。

Walkmanの修理~その4~RQ-SX11編

 今回の修理は,パナソニックのRQ-SX11にしました。1995年の発売のようですので比較的新しい年式で,カセット関連では眼中になかった松下電器の製品にあって,SX11という型番だけは広告による露出度のせいもあってか,良く覚えています。

 最初に修理したRQ-SX35が1998年のモデルでしたから,RQ-SX11はその3年前のモデルになりますが,実はこの3年間の間にメカデッキが一新されていました。SX11はAR-90,SX35はAR-10です。

 一説によると,ライバルのソニーが超低消費電力を達成したのに追いつくには,もうメカデッキを作り直すしかないという判断で開発されたのがAR-10メカだったという話で,なるほどワウフラッタは大きめですし,ギアによる動作音も耳障りです。トルクも小さいのでテープによってはリーダーテープを残り得られません。

 ならばとAR-90メカを試してみたくなり,SX11を手に入れてみたというわけです。

 SX-11はなかなかデザインも秀逸で,特にブルーがよいなと思うのですが,手に入れたのはブラックです。それでも精悍ですし,特に蓋を開くと,蓋が縮んで短くなる仕組みには思わず唸ってしまいました。

 しかし,裏側に返して操作ボタンを見てみると,安っぽいギラギラのメッキのボタンが楕円状に配置されていて,このあたりは格好悪いと思います。パナソニックは丸いのが好きなんでしょうけど,反対面とのアンバランスを考えないのかと思います。

 さて,手に入れた段階では液漏れはなかったものの,フォワード側のキャプスタンに少し錆がありました。この影響でピンチローラーにもフォワード側に結構なへこみがあります。リバース側は無傷です。

 落下も打撃痕もなく,程度は良さそうなのですが,なんと早送りボタンを押してもクリックがかえってきません。

 ここで通電してしまうと,融けたベルトがモーターに巻き付くのでそれはやめて,分解に入ります。内部は比較的綺麗なもので,ベルトさえ交換すれば動きそうです。

 基板を外すために一部ハンダを取り除き,慎重に基板を外します。並行して筐体を分解し,ハンドソープで洗って乾かしておきます。

 先程の早送りボタンの破損ですが,完全に壊れていてスイッチ上面のペコ板が完全にへこんでいました。強く押さえつけられたからだと思うのですが,さらによく観察すると,ケースも変形してへこんでいました。ボタンが強く抑えられたというよりは,ケースが強く圧迫されたんだろうと思います。踏んづけたとか,そういう感じですかね。

 フライホイールやプーリーの融けたベルトを綺麗に除去し,モード切替のクラッチのプーリーのグリスが固着していたので清掃して,適当な長さのベルトを試してかけてみます。

 AR-10のモータはベルトが太いとモーターの内部で接触して回転不良を引き起こします。だからRQ-SX35の時には0.5mmのベルトをわざわざ買ったのですが,AR-90ではどうだろうかと手持ちの0.7mmで試したところ,接触もなく上手く回ってくれました。試しに再生するとワウフラッタはリバース側は小さく,ゴムベルトはこれで大丈夫なようです。

 ここで興味深いことがあったので書いておきます。実は最初,再生速度が強烈に速くて,速度調整ボリュームでも出来ないほどでした。これはキャプスタンが滑っているからだろうと思っていたのですが,よくよく考えてみるとモーターの上側のローターを外していました。

 パナソニックのブラシレスモーターは面白い構造をしていて,コイルの並んだステータをマグネットのついた上下2つのローターが挟み込んでいます。おそらくメカW全体を薄く作る事が出来るのだろうと思うのですが,ベルトの交換は上側のローターを外さないと出来ません。(出来なくはないが失敗しやすいし難しい)

 それでローターを1つ外して通電したのですが,これで速度が強烈に速くなったというわけです。ピンと来た人も多いと思いますが,直流モーターは磁石(界磁と言います)が弱くなると回転数が上がります。

 そこでローターを戻して2つで回転させると,ちゃんと正規の回転数で回ってくれるようになりました。いやー,面白いです。

 これ,なぜそうなるのかという話です。直流モーターは電圧を上げると回転数(もトルクも)が上がるので,磁石を強くしても回転数は上がると思いがちですがさにあらず,回転数は下がるのです。

 これは,直流モーターは回転するとき,同時に発電も行っているからです。磁界の中をコイルが動いているのですから,当然電圧が発生します。これは与えられた電圧とは逆になるので,逆起電力と言います。

 モーターを回している電圧は逆起電力と相殺されて,電圧が下がったのと同じようになり,回転数が上がらないのです。理屈では知っていましたが,実際にこういう現象を体験すると,ちょっとした感動があるものです。

 さて,フォワード側のワウフラッタが大きいのはピンチローラーの変形が原因でしょう。これは基本的には新品交換が一番よいのですが,外してみると5.5mmという小さい径です。手持ちもないし入手が難しいかなと悩んでいたのですが,かつてWM-805から外したピンチローラーを削って6mmにしようとしたところ削りすぎたものが出てきました。

 ゴムも柔らかいので,もうちょっと削って5.5mmにすれば大丈夫そうです。そこでさらに削ってみたのですが,削りすぎてアウト。そんな失敗を何個か作って,ようやく5.5mmのローラーを作る事が出来たので,少しだけあったキャプスタンの錆を取って,組み立てて動かしてみます。

 ワウフラッタはかなり押さえられたのですが,よく見るとフォワード側のピンチローラーが上下に1mm程動いています。見た目に最悪な動きなのですが,ワウフラッタは出ていません。

 おそらくですが,ピンチローラーを削るときに,真円に削ることができなかったのだと思います。この場合,ピンチローラーを押さえる付ける圧力が変動するのでワウフラッタは当然出るものだと思っているのですが,結果はそんなことなくて,なかなか良好です。

 これほど動くんですから異常な動作であることは間違いなく,なんとかしないといけないとは思うのですが,実害はありませんし,最終的に見えないようになるので,もうこれ以上追い込むのはやめようと思います。うーん,気持ち悪いなあ。

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