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MacBookPro2008にWindows8.1を入れる

 新しいMacBookProが来たおかげで,お役御免となったのが古いMacBookProです。2008年のモデルなのでもう8年も前のものです。

 これがですね,10年前の2006年に8年前のマシンを使うなんて話になると,もうさすがに使い物にはならないのですが,ここしばらくのPCの進化は緩やかですし,その上2008年当時でもトップクラスの性能を誇っていたMacBookProですから,廃棄したり数千円で買い取られてしまうのは,ちょっと惜しいです。

 スペックは,Core2Duoの2.5MHzでキャッシュはなんと6MB,メモリは4GBを搭載し,250GBのSSDが入っています。LCDは15インチで1440x900でGeForce8600搭載,VRAMは512kBです。

 802.11nとGbitのEtherを持っているし,光学ドライブも内蔵です。しかもExpress/34のスロットやIEEE1394まで持っています。このくらいの性能のPCなら,今でも新品現行品として売られていると思います。

 確かにGPUは世代的に厳しいですし,VRAMも少ないです。CPUも同じクロックでも処理速度は半分くらいしかありませんし,なんといってもバスの速度が遅いので,重い負荷には苦しいでしょうね。

 実際,Macとして厳しいですし,写真編集なども苦痛なほど遅いです。でも,これがWindowsで行っている電子工作関連の開発マシンとしてならどうかと考えてみると,全く余裕であることがわかります。

 もちろん,大規模FPGAの開発とか基板CADとかアナログ回路の重たいシミュレーションとか,そういうのはしんどいでしょうけど,AVRのソフトを書くとか,EP-ROMライタのホストとして動かすとか,そのくらいなら全然心配ありません。

 なにより,新しいWindowsが動いてくれること,それもストレスなくOSが動いてくれることが大事です。そして出来れば64bit環境に移行したいです。

 ということを,新しいMacBookProが出ると噂されていた夏頃から考えていて,値上がりする前にとWindows8.1Homeを買ってありました。

 その後,Windows10への無償移行期間が終了したり,MacBookProのリニューアルが11月になったりと,すっかり季節も移り変わってしまったわけですが,新しいMacBookPro導入プロジェクトの総仕上げとして,現行バリバリで使えるWindowsマシンを用意するということを,ここ1週間ほどやっていました。いやはや,苦労しました。

(1)方針

 MacでWindowsと言えばBootcampなわけで,これなら小学生でもWindowsをインストール出来るでしょう。しかし今回の対象である2008EarlyのMacBookProでサポートされるWindowsは,なんとWindows7までです。

 私が手にしているWindowsはあいにく8.1ですから,対象外です。実際,Bootcampアシスタントではインストールを拒まれてしまいます。

 もともとmacOSとの共存は考えておらず,すっきりとWindows専用マシンとして使うつもりでしたから,ダメモトでWindows8.1のDVD-ROMからブートしてみました。optionキーを押しながら電源を入れると起動メニューが出てきますので,ここからDVD-ROMを選択します。

 幸いなことになんの問題もなくWindowsのインストーラが立ち上がります。SSDをフォーマットして指示に従ってインストールするだけです。

 2時間もすると,64bitのWindows8.1が立ち上がる15インチノートPCが姿を現したのです。しかし,本当の地獄はここから先でした。


(2)ドライバを入れる

 まだmacOSが動いている間にBootcampアシスタント(バージョンは4)を起動して,このMacBookPro様の最新のドライバ類をダウンロードし,USBメモリに入れておきます。これを忘れるとたいへんです。

 このドライバ類はWindows7用で,64bitと32bitの両方が用意されています。Windows8や10をサポートしたものではないので注意が必要です。

 最近の機種でこの作業を行うと,そのモデルでのドライバが用意されてしまいますから,やっぱりインストールをする実機で作業をしないといけません。

 さて,DVD-ROMから起動して新規インストールしたWIndows8.1に,すぐにこのドライバを入れます。setup.exeを探して起動しますが,最初はWindows7ではないと怒られても,めげずにもう一度起動すれば互換性の設定を変えて起動するので,すんなりとドライバのインストールが完了します。

 この段階でMacBookProは問題なくWindows8.1が動くマシンになりました。あとはもうWindows8.1が動いているマシンとして,環境構築をしていくことになります。


(3)WindowsUpdateではまる

 インストール直後のWindowsいわば蜂蜜を塗りつけた体でアリの巣に飛び込むようなものです。セキュリティ維持の為にもすぐにWindowsUpdateです。

 ところが,更新を確認しています,という状態のまま何時間もダンマリなのです。一向に進む気配がありません。

 これはWindows8.1をサポートしない古いMacBookProへのインストールという特殊な状況から来ているのかもしれないと,もう一度最初からインストールをし直しました。でもダメでした。

 購入したのが古いWindows8.1のDVD-ROMからインストールを行って見ましたが状況は同じ。ならば32bit版ならどうかと思いましたがこれもダメ。

 ここでもう試す手がなくなりました。時間のかかる作業をずっとやっているほど私も暇ではありません。仕方がないので,蜂蜜を塗りたくったままで,このWindows8.1を使い続けることにしようと,64bitのWindows8.1のインストールを済ませました。


(4)WindowsUpdate解決!

 気になって調べて見ると,どうもWindowsUpdateの仕様が変わったらしく,古いWindowsUpdateクライアントではダンマリになるそうです。ひどい話ですねー。ダンマリが致命的であるという意識がないんでしょうか。

 解決策は,2つのパッチを当てること。これを直接ダウンロードしてオフラインでインストールするとWindowsUpdateが進むようになるんだそうです。

 ところが,このパッチをインストールしようと起動しても,やっぱり更新を探しています,から先に進みません。ここでまたくじけそうになりました。

 解決策は,ネットワークを切断すること。どうも,スタンドアロンインストーラでもネットワークでWindowsUpdateのサーバにつなぎに行くそうで,そこでダンマリになるらしいです。ほんとひどいですねー。

 WiFiを切断して,ようやくパッチがあたりました。WiFiをつなぎなおして,祈るような気持ちでWindowsUpdateをすると,今度は200個近いパッチを入れるように指示が出ました。やった・・・

 なんでこんなにうれしいんだろう。おかしいなあ。


(5)VirtualBoxではまる

 こうしてWindows8.1の64ビット版が無事に動き出しました。思った以上に快適で、サクサク動いています。ATOKも入りましたし,会社のマシンと同じような環境になってきました。

 AVR StudioもAVRライタもインストール出来て,それらしい環境になってきたのですが,EP-ROMライタで躓きました。

 以前秋月で買ったROMライタが,64bitで動かないのです。LEAPER-3CというUSBモデルで,物理的には接続出来るのですが,ドライバがないので動きません。

 Windows8.1の32bit版にすれば動くかもしれない・・・あるいはあきらめるのも手だ・・・とまあいろいろ考えたのですが,2005年以来アップデートされていないレガシーなROMライタ1つのために64bitに移行しないのもおかしいので,ここはVirtualBoxで仮想環境を作り,ここで32bitのWindowsを動かす事にします。

 幸い,かつての地デジPCで使っていたWindowsXPのライセンスが1つ余っています。これを使いましょう。

 VirtualBoxをインストールして,そこからWindowsXPを入れます。ところがライセンス認証が通りません。まあそれはそうですよね,以前のマシンとは全然違うのですから。

 そこで初めて電話をしました。担当者に事情を説明することも覚悟していましたが,無人対応でさくっとライセンス認証が完了し,晴れてWindowsXPの動く環境を用意出来ました。

 EP-ROMライタも問題なく動作するようになりましたので,これでこの件は解決です。


(6)Windows10ではまる

 調べ物をしているうちに,未だにWIndows10の無償アップデートが出来るという話を目にしました。試して見るか,とスケベ心がでたのが終わりの始まりでした。

 Windows10の起動用USBメモリを作り,そこからアップデート。ウソのようにサクサク進み,しばらくしてWindows10の起動画面が出ました。

 ところがトラックパッドが動きません。

 なんとかキーボードだけで操作して,改めてMacBookPro用のドライバをインストールしようと,Windows7用のドライバのセットアップを行いますが,なんと途中で止まってしまいました。

 あきらめて再起動。

 悲劇はここから始まりました。マウスもキーボードも動きません。USBも動かないので,外付けのキーボードも動きません。

 ログイン出来なくなってしまい,なにも操作ができなくなりました。復旧を試みてもダメ。

 最悪でもWindows8.1に戻せると思って気軽に始めましたが,まさかログイン出来なくなり,Windows8.1に戻せなくなるとは思いませんでした。

 泣く泣く,Windows8.1を新規インストールするところから,やり直しです。


(7)なんとかWindows8.1まで戻した

 これまでの手順をもう一度繰り返し,Windows8.1が動くところまで戻しました。WindowsXPのライセンス認証をもう一度やり直すために電話が必要になったところまで同じように繰り返しましたが,ともあれ元通りです。ここまでで1日無駄にしています。

 しかし,WIndowsというのは,動き出すまでにいくつもいくつも落とし穴があるものですね。良くなったとは言え,やっぱりWindowsだなと思いました。

 Windowsはなにかと画面を青くするのですが,その時に私の顔が青くなるらしく,5歳の娘が「お父さんの顔真っ青」と心配そうに話しかけてくれたのが,唯一の救いでした。


(8)やったこと

 まず,USB接続のVNAであるziVNAuを動くようにしました。これは問題なし。

 AVR関係はAVR Studioの4.19をインストールしました。これも問題なし。

 LEAPER-3Cは前述の通り仮想環境のWindowsXPで動かして解決です。

 もう1つ,大事な作業としてCoolScanVEDを動かす事があります。ニコンのフィルムスキャナーなのですが,これまではMacで使っていましたが,サポートソフトがPowerPCのコードで書かれているので,PowerPCのエミュレーション機能があるMacOSX10.5を外部HDDから起動して使っていました。

 でも,外付けHDDは遅く,信頼性も心配なので新しいMacBookProの仮想環境で動かすことを考えていたのですが,せっかくMacでWindowsを動かす事がなくなったのにディスクスペースももったいないので,Windowsマシンで動かす事を考えたのです。

 幸い,Vista用のサポートソフトを使えば,64bitでドライバを動かす技もあるということで,試して見ました。

 結果は問題なし。トラブルもなくCoolScanVEDが動きました。よしよし。

 最後に,家にあるいくつかのWindowsに散らばっているデータやソフトを集めました。20年以上前から蓄積している古いものも出てきましたが,これを統合です。PC-6001やX68000のエミュレータも動くようになりました。

 さすが,Windows8.1がサクサク動くマシンですね。これらのエミュレータも実機と同じように動きます。PS3のコントローラも動くようにして,レトロゲーム三昧です。


(9)苦労しました

 私がWindowsに詳しいならなんてことはなかったのでしょうが,あいにく私はWindowsはよくわかっていませんし,最新の状況を常に仕入れているほどのMicrosoftウォッチャーではありません。

 WindowsUpdateが黙ることは世界中で知られている話だそうですが,私のように知らない人はまったく知らない話です。Microsoftについていっている忠誠心の高い人でも新規インストールすれば古いWindowsを動かすことになるわけで,せめてそこからのWindowsUpdateくらいは出来るよう,どうしても出来ない場合でも,ダンマリはやめて欲しいなあと思いました。

 また,Windows10でSSDのフォーマットからやり直した人は珍しいかも知れませんが,これが無償期間中のように頻繁にアップデートを促されてなかば強制の上でWindows10にしていたら,どんなに恐ろしいことになったかと,背筋が寒くなります。
 
 こういう事態に陥るのが事実であるわけですから,あそこまでUpdateを強く促すのは危険だったと思います。こういうこころは,やっぱりMicrosoftだなあと思います。

 さて,動いて見ればストレス無しのWindowsです。画面も広く,キーボードもしっかりしていて,速度もまずまず。SSDで快適ですし,大きめのノートPCとして妥協する点はなにもありません。

 やっぱり1台,まともなWindowsマシンがあるといい面もありますね。以前ほどWindosでないと不自由するシーンは少なくなりましたが,それでもWindowsをサポートしない測定器や開発環境はないといっていいですから,電子工作関連はWindowsに集約しましょう。

 64bitですので,将来も安心。まだしばらくは使えるWindowsマシンを手に入れました。ふと思ったのは,このころのMacBookProは中古品が安く売られていますが,macOSは満足に動かなくてもWindowsはこうして問題なく動きます。

 大きな画面を持ち,処理能力もそれなりにあるノートPCを,1台新たに手に入れた感じです。苦労した分,どんどん使っていこうと思います。


MacBookPro(Late2016)15inch TouchBar,使った!

  • 2016/11/24 09:12
  • カテゴリー:散財

 さてMacBookPro,上海から出荷されたのが11月15日,予定日である19日の午前中にきちんと届きました。新しいPCを買うのも久々なら,出荷から届くまでワクワクした買い物も久々です。

 店頭での販売も19日からという事ですので,私は先頭グループで祭りに参加したということになります。こんなのも初めてです。


 「箱も商品」という考え方から,箱をさらに段ボール箱に入れて送ってくれることはいつも通りですが,この段ボール箱が良く出来ていて,緩衝材として入っている段ボールの端っこをぐいっと外に広げると,すすーっと中の箱がせり出してくるのです。

 こういうのって,なかなか出来ないです。感心しました。

 箱を開けると出てきましたよ,スペースグレーのMacBookProが。なんだかMacBookAirをそのまま大きくしたような感じがします。15インチという大きさにもかかわらず剛性感は高く,手に持った瞬間にうれしくなります。

 入っているものを確認すると,本体とACアダプタとUSB Type-Cケーブルだけ。あれこれと付属品が入っていると得をした気がするものですが,冷静になったときにそれら細々したものを片付けるのにうんざりすることが私は多いので,このシンプルさはむしろ好都合です。

 そしてMacBookProを開きます。

 開くと勝手に起動します。これも聞いていたとおりです。そして,あのおなじみの起動音もなくなりました。これもまた,聞いていたとおりです。起動音は確か,1990年代前半に登場したMacintosh Quadraという初の68040搭載モデルから採用されたものがそのまま長く使われていたと記憶していますが,寡黙に立ち上がるMacに寂しさを感じながらも,実はもうMacは電源を切るとか起動するとか,そもそもそうした概念がなくなっているんじゃないかと思いました。

 そういえば,ここ数年は起動音を聞いていませんでした。時々再起動したときに音が出るので,びっくりするくらいです。

 さて,電源が入ったら設定には手を付けず,さっさと古いMacBookProから環境移行アシスタントで環境を移行します。せっかくだから環境移行アシスタントを使わずに,いちから手作業で環境構築をしようかとも思ったのですが,時間もかかるし,コピー漏れや設定漏れがこわくて,環境移行アシスタントに頼ることにしました。

 古いMacBookProとは,Firewire800で直接繋ぎます。古いMacBookProをターゲットモードで起動して,新しいMacBookProでは環境移行アシスタントを起動します。あとは指示通りに従い,しばらく放置です。

 私の場合,どちらも同じ容量のSSDだったので容量の問題は発生せず,2時間半ほどでスムーズに移行作業が終わりました。OSのバージョンが異なるため,そこでの問題を心配しましたがこれも問題なしです。

 再起動してみると,古いMacBookProと全く同じ環境がそこに再現されていて,その完璧ぶりに感動しました。ScanSnapもLightroomもSafariはもちろん,デスクトップにおかれたアイコンまで同じ。

 そしてTimeMachineです。新しいMacBookProで引き継いでくれます。その代わり古いMacBookProでのバックアップはもう出来なくなります。環境移行なんだから,それで全然構いません。

 ということで,これだけあっさりと環境移行が終わり,その日の午後には実運用に入ることが可能でした。この時間短縮は素晴らしいですよ。

 数日間触ってみたところで,インプレッションです。


・全体的な話

 大きさは古いMacBookProとほぼ同じです。ただ,薄くなり,軽くなったこともあって,ぱっと見たところ小さく見えます。MacBookAirの15インチモデルだとウソを言ってもばれないんじゃないかと思います。

 この薄さを実現しているのは,賛否両論あるUSB Type-Cコネクタへの一本化のおかげです。Type-AコネクタやHDMIなど,あれこれついていると便利なように思いますが,人によっては使わないもの,時々しか使わないもののために,誰にとっても重要な薄さを犠牲にするのは私は正しくないと思っていて,このシンプルさをもっと他も見習って欲しいです。

 ただ,いくら薄い軽いとはいえ,常に持ち運ぶような気軽さがあるわけではありません。マシンの性能も高いですし,これはいざというときに持ち運べる,トランスポータブル型のワークステーションと考える方が正しいと思います。


・TouchBar

 さて,今回のモデルで台風の目になったのが,ファンクションキーの代わりにおかれたTouchBarです。ディスプレイの横幅と同じだけのピクセル数を持つOLEDにタッチパネルを組み合わせたもので,やれファンクションキーがなくなって困るだの,やれESCキーがないのは致命的だのと,まだ有効な使い方が出揃っていない今は否定的な意見が支配的なように感じます。

 実際に目にすると,まずその表示の鮮明さと精緻さに目が釘付けです。まるで薄いシールを張り付けたような綺麗さで,角度によって色が変わったり見え方が変わったりしません。OLEDでなければこの素晴らしさは実現出来なかったでしょう。

 そして,発色のいいカラーが出ていることに気が付くとまた感激。音量や画面の明るさを変更する時も,スライダの呼び出しをしてから指の位置を変えず,そのまま左右に動かせばよいという親切さです。

 TouchBarのカスタマイズ時には,機能をTouchBarまでドラッグしますが,この時LCDからTouchBarまで,するするアイコンを動かして好きな場所におくことが出来ます。ちょうど2画面あるような感じです。

 タイムラグもなし,ユーザーの作業を邪魔することもなく,次々に表示と機能が変わっていくTouchBar。必要のある人にはとても便利で楽しく,しかしながらTouchBarを使うことを強制されるわけではないので,必要のない人には全く無視して良い存在に仕上がっており,これは本当によく出来ています。

 実は,これまで,画面の明るさや音量を変えるときに,いちいちFnキーを押しながら行うのが嫌でした。二本の指が必要になりますからね。そこで私はKarabinarというソフトを使って,Fnキーなしで変更出来るようにしていたのですが,sierraでは使えなくなったのです。

 Airでは困っていたわけですが,TouchBarでは画面の明るさと音量を指1本で変更出来るようになりました。これでKarabinarはいりません。

 つくづく考えてみると,このTouchBarというのはAppleらしい発明です。WindowsもMacも,タブレットやスマートフォンの「画面を触る」というインターフェースをPCに統合しようとしています。この流れは止まらないと思います。

 しかし,かつてJobsも話したように,人間の腕は垂直に切り立った画面を触るには重すぎるのです。そして不自然な動作で疲れてしまうUIを導入して大失敗したのがWindows8です。

 Appleは,画面を触るUIのために,キーボードの上側にもう1つ画面をおきました。これでPCの利点である目線の先に自然に立っている画面と,タッチパネルとを同居させることに成功したわけです。

 もちろん,Windows8のように直接画面を触るUIにも,視線を動かさずに済むというメリットはあります。しかし,それまで見るだったLCDが,突然指示を出すための装置になってしまうことへの違和感が大きいことや,視線移動を嫌うそもそもの理由がキーボードのブラインドタッチを邪魔するものであったことを考えると,PCで画面をタッチするUIというのは,あまり意味がないものだと言えます。

 TouchBarでは,視線の移動もなく,ブラインドタッチも続けたまま,使うことが出来ます。ユーザーは視線移動やブラインドタッチが中断される事へのデメリットを上回るメリットがあると思った時に,TouchBarの直感的な操作を選ぶことが出来るのです。

 惜しいのは,押したことのフィードバックがないことと,ESCキーの左側の空白にもESCキーの反応があることです。

 どっちも誤操作に関する問題なのですが,フィードバックがないので,触った後の反応を視覚で確認するまで視線を動かせません。それに,なれてくればTouchBarもブラインドタッチで操作できるようになるでしょうから,その際の反応を返してもらえないことで結局視線が動くのであれば,それはもったいないと思います。

 ESCキーについては,私はvi使いですが,別に違和感はありませんでした。しかし,私は癖でついついキーボードの左上に左手をおくので,知らないうちに中指がESCキーの近くに行っていることがあります。

 突然ESCキーが連打され,何事だとびっくりしては実はESCキーの近くを触っていると気が付く事が何度もありました。といいますか,私にこんな癖があったことすらこれまで知らなかったのですが,この癖に必然性はありませんので,まあ私が気をつけることにしましょう。


・TouchID

 指紋認証が実装された新しいMacBookProですが,電源ボタンの位置にTouchIDが仕込まれています。電源ボタンを兼ねることから,物理的に押下可能なボタンになっているのですが,これが便利なようでなかなか馴染みません。

 まず,完全にパスワードを置き換えるものではないことが挙げられます。起動直後のログインではパスワードが必須,その後のスクリーンセイバーからの復帰はTouchIDで可能なのですが,今どちらの状態かは画面だけではわかりません。

 結局パスワードであればどっちもで対応可能ですので,いちいち確認せずにさっさとパスワードを打ち込んだ方が早いです。

 コントロールパネルの設定変更でも同様です。TouchIDでよい場合もあれば,パスワード必須のものもあります。セキュリティレベルの違いで差があるのでは分かりますが,もう少し規則性がはっきりすると使い心地もかわるでしょうか。

 期待外れだったのはTouchIDの認識率の悪さです。スクリーンセイバーからの復帰でtouchIDを使うようにしていたのですが,結構な割合で二度三度とTouchを要求されますし,結局ダメでパスワードになることもしばしばです。特に風呂上がりは全滅で,「私は本当に私なのか」という,まるでハヤカワのハードSFのような自問をする羽目になりました。

 ApplePayも使いませんし,たぶんTouchIDは使わなくなると思います。

 
・LCD

 15インチのRetinaの表現力はまさに圧巻で,その精細感はまるで印刷物です。すでに目が悪くなっている私にはもったいないくらいですが,それでも元のMacBookProには戻れません。

 解像度と共に素晴らしいのは,発色の良さ,そして明るさ,輝度ムラのなさです。

 今回のMacBookProの色域はsRGBを越えていますが,白は鮮やかになり,黒の白浮きもなくなって,コントラストが圧倒的に高くなっています。赤色もきらびやかになり,LCDもここまで来たかとため息が出ました。

 明るくなったことはあまり意味がないかなと思いましたが,Lightroomを使う時には,その余裕に助けられることがありました。暗い部分を画面を明るくして見るという自然な行動がコンピュータで出来ることは当たり前のようで,なかなか難しいことです。

 そして,輝度ムラがほとんどなくなりました。15インチにもなると輝度ムラは避けられず,視野角による見え方の変化もそれなりにあります。古いMacBookProでもそのあたりの性能には最初驚きましたが,新しいMacBookProではそうした不自然さはもうほとんど感じません。まさに写真編集のための道具です。

 LCDの前にもう1枚透明なパネルがありますが,この部分とLCDとは一体化していて,奥行き感がありません。まさに表面に浮かんで描かれます。アンチグレアではありませんが,映り込みも反射もコントラスト低下もほとんどなく,まったく意識することがありません。

 そういえば,ひところの新機種レビューでは,必ずといっていいほどアンチグレアでないことを揶揄するものが目に付きましたが,このMacBookProにについては,全く言及されていません。もうこの問題は決着したという事ですね。

 ところ私は,カラーマネジメントとしてColorMunkiDisplayを使っていました。今回,もしも必要がなければいい機会だから使わないようにしようかと思いましたが,使ってみるとやはりやや色温度を低めにしてくれて,プリンタとの差が小さくなりました。

 使わないで済むならそれが一番だと思っていましたが,とりあえずこれまで通り使って様子を見ようと思います。


・キーボード

 新しいMacBookProに対するもう1つの不安(あるいは批判)は,バタフライ式のキーボードにありました。12インチのMacBookと同じ構造のキーボードですが,このMacBookが出た時に,みな想像以上に使い勝手が悪かったので,今回も心配されたんだと思います。

 確かに,モバイルとしてある程度の妥協や割り切りが出来るMacBookに対し,UNIXを使ったり文章を書いたりするプロが使うMacBookProでは,キーボードに対する期待感が全く違います。不安が出るのは当然です。

 で,触った感じですが,私は全く問題なし。というか,大変心地よく,とても快適です。押し込むと言うより,あるいは叩くと言うより,なでるような感じで恐る恐る使っていましたが,案外強く叩いてもしっかりとしていて,そのクリック感も癖になり,とても楽しくタイピング出来ています。

 ストロークは浅いですが,遊びがなくグラグラしませんし,どこを押さえても同じように沈むので,実際のストローク以上に「押した」という感じが強くあります。キーの縁を押してもふにゃっとした感じがないので,癖になりそうです。


・トラックパッド

 そうそう,巨大なタッチパッドも忘れてはいけません。この部分に不安を感じる人はいなかったようですが,私は最近のMacを使っていない人でしたから,物理的に押し込めないトラックパッドに馴染めるか,実は結句不安でした。

 結論から言うと,快適です。

 以前のMacBookProやAirではトラックパッドが狭くて,指3本のスワイプや,広げる動作は辛いものがありました。しかし,そこらへんのスマートフォンよりも大きな面積のトラックパッドでは,そうした操作も楽々です。

 ハプティクスによるフィードバックも適切で,もう前の機種には戻れません。これも素晴らしいものでした。


・拡張性

 そして最大の懸念が,この拡張性です。プロが使う道具ですので,あらゆる用途に対応出来ることが望まれるのは当然なのですが,その実現には様々なインターフェースをもれなく搭載していざというときに備える事がこれまで取られてきました。

 Thunderbolt3(USB Type-C)への一本化はこれに逆らう流れに見えるわけですが,よく考えるとそうではなく,同じ目標の実現方法として,インターフェースそのものを万能にするというアプローチを果敢に取ってきたものだとわかります。

 どんなものも繋がる,どんなインターフェースも包含する,それこそ充電さえも可能な万能インターフェースを4つ用意しておくことで,もう機能別のコネクタをバラバラと並べることはしなくてよくなったのです。

 このことで,人によっては全く使わないインターフェースを無駄に用意することはなくなりましたし,物理的な制限(大きさとか奥行きとか)も少なくなり,あの持ち運びに便利で,美しい筐体が実現したわけです。

 確かに,今の周辺機器をそのまま移行できないのは面倒くさいです。しかし,徐々にそうしたものは淘汰されていくでしょうし,変換ケーブルでしのぐこともできます。私はこのType-Cへの一本化は大賛成でした。

 ところで,買った変換ケーブル類ですが,すべて問題なく動作しています。belkinのGbit Etherのケーブルは,差し込むだけで即動作しました。ただ,ファイルのダウンロードが中断したりすることがあり,これがこのケーブルのせいかどうかは分かりませんが,もう少し注意しておこうと思います。

 そうそう,SDカードリーダやHDMIも搭載した「3Q-LEVO Type-C USB ハブ ウルトラスリム」というハブを買ってみたのですが,これが失敗でした。

 新しいMacBookProでも使えると言うことだったのですが,最初に差し込んでも認識せず,何度か抜き差しするとようやく認識するという不安定さです。

 また,ハブにあるType-Cを介して充電をしようとしても,ACアダプタを87Wとは認識してくれないので,電力供給が制限されます。

 このType-CにBelkinのEtherアダプタを繋いでも動作しませんし,これでは使い物になりません。もうちょっと様子を見ますが,返品の可能性も視野に入れておきます。


・音質

 音質はわざわざ書いておきたいくらい良くなっています。この薄い筐体で,よくこれだけの音が出せるなと感心しました。

 よく見ると,左右に底面にスリットがあります。ここから低音が出ているようなのですが,このスリットもType-Cへの一本化によって作られたスペースで可能になったものだと思います。

 声は聴き取りやすく,音楽も楽しく聴けます。そこらへんの安い外部スピーカーはもはや必要がないでしょう。


・マシン性能

 ちょっと期待外れだったのが,サクサク感というか,キビキビとした速度です。新しいマシンほどキビキビ動くというのが当たり前だと思っていたので,ここは期待が高すぎたのかもしれません。

 画面の書き換え速度や反応速度などは,古いMacBookProでもそんなに不満はありませんでした。新しいMacBookProでも,意識するほど高速化したという感じはありません。

 CPUのクロックはそれほど変わっておらず,同時に走るスレッドが4から8になったわけですから,シングルスレッドの場合はあんまり体感速度は変わらないです。

 しかし,スレッドの数が増えた場合に,速度が落ちません。

 CPUのコアの数もそうですが,やはりバスやストレージといった足腰を鍛えてあるんでしょう。スレッドが増えた場合にはデータの転送が足を引っ張るのですから,重たい処理でも速度が落ちないというトルクの太さは,バランスの良いマシンの証です。

 特にLightroomで複数の処理を行う場合,例えば一括の変換や印刷という処理をバックグラウンドで行い,RAWの編集をするといった作業が,ほとんど速度を落とさず行えるのはすごいと思います。

 見た目の速度よりも,へこたれない強さ。最近のコンピューティングは,こういう方向に進化していたんですね。不勉強でした。

 もう1つ,H.264HDというH.264へのエンコーダを試したのですが,これはまあ期待通りの速度でした。古いmacBookProではUSBに繋ぐアクセラレータを付けて34fps程度だった処理速度は,アクセラレータ無しで68fpsと倍になりました。アクセラレータを繋ぐと50fpsくらいに落ちますので,すでにUSBがボトルネックになることがわかります。

 まあ,CPUのコアが倍になりましたから,このくらいの速度アップは当たり前かなと思います。


・使ってみて

 すぐに運用に入ることができて,たまりにたまった写真の現像と印刷を数日間まわしてみました。データは主にD2HとD800のRAWデータで,D2Hは約2000枚,D800は1800枚程の,いずれもRAWデータです。

 これをLightroomで処理していきます。処理バージョンの統一とレンズ補正を一気にかけて,D2HはここからJPEGの生成をします。

 そしてあとは印刷する写真をコツコツと選んでいく作業です。私の場合,現像タブから1枚1枚選んでもライブラリからサムネールで選んでも,結局時間がそれ程変わらないので,現像タブから選んでいき,いいと思ったものを選び出してその場でさっと補正を済ませてしまいます。

 こうすると,補正をかけて救えるものと駄目なものをその場で試せますし,反省点が見えてくるので次に繋げることが出来ます。レンズの癖も良く見えて楽しめますし,いろいろ試行錯誤をしましたが結局このスタイルです。

 いいと思ったもの,補正が済んだものはレーティングを付け,全部終わったらフィルタでレーティングが付いたものだけを表示,ここからさらにふるいにかけて最終的に印刷するものを決めます。

 そして,CanonのPRO-100で印刷です。

 ざっと,私のあまり合理的とはいえないワークフローを書きましたが,こういう鈍くさいことをやっていると,時間はかかるわ,急ぐといい写真を選び損ねるわで,これまでのMacBookProではLightroomを開く気さえ起きなかったのです。

 嫁さんの「高いマシンだけどあなたは使うからなあ」という,脅迫に似たつぶやきに震え上がった私はとにかくLightroomを立ち上げて,処理を進めます。

 確かに,RAWが現像されて高解像度の画像になるまでには数秒かかります。このタイムラグが期待外れの原因ではあったのですが,考えてみると古いマシンではここに10秒以上の時間がかかっていました。次々にフルスペックの画像を確認していきます。ピクセル等倍に拡大してもへこたれません。

 この背後では,D2HのJPEG書き出しが回っています。でも速度が落ちません。

 トリミング,露光量の調整,ホワイトバランスを整えて印刷データを作って行きますが,これも全然ひっかかりが出てきません。スムーズです。キーボードのタッチも快適です。

 印刷データがまとまったらここからプラグインエキストラにあるPRO-100の印刷ツールを起動して,Lightroomからデータを渡します。ここに少々の時間がかかりますが,これも以前のMacBookProだと昼ご飯が食べられるくらいの時間がかかっていたので,雲泥の差です。(ただ,ご飯が食べられるくらいの時間がかかると,本当にご飯を食べに行くのでなんら問題はなかったのです)

 そして印刷。印刷していてもどんどん写真を現像していきます。結局D2Hの2000枚,D800の900枚ほどを,のべ4時間ほどで処理し終えました。私の感覚だと,まさにあっという間です。

 負荷をかけてもへこたれず処理速度が「一定である」こと,バックグラウンドで処理がどんどん進むこと,ストレージへのアクセスが高速で待ち時間が短縮されること,トラックパッドやキーボードが快適,膝の上に置いても重くなく熱くならないこと,Lightroomでも長時間バッテリーが持つこと,画面が美しく印刷したときのイメージに極めて近いことなど,本当にこのマシンを手に入れて良かったと思います。使ってみて実感します。


・まとめ

 新しいものが出てくると,なにかと批判も出てくるものですが,不思議なことにAppleの場合は,最初はちょっと違和感があっても使っている内に馴染んできて,いつの間にかないと困るような存在になっているものです。

 今回のMacBookProもそういう感じがします。大きな変更が入っているのに,食わず嫌いをやめて一度使ってみると手に馴染んで快適になります。

 最近気が付いたことは,仮にそうして試して見た結果,やっぱりダメだと思ったら躊躇なく使うのをやめることができる事です。やめたところで従来通りの使い方を継続出来ることが分かっているので,とりあえず一度試して見ようか,という気分にさせられます。

 これがもし,試すまでもなく強制的に大きな変更が成されていて,気に入らなければ古いバージョンのOSに戻すか,古い機種を使い続けるかしか選択肢がないような話だと被害は深刻で,そういう勝手なことをやるメーカーの製品はもう使わないでおこうと,自然に避けてしまうのではないでしょうか。

 Appleというメーカーに対する信頼というのは,こういうことを長年続けてきたことへの安心感なのかもなあと,思います。

 いろいろと心配事も批判もあるのが,良くも悪くもAppleの製品です。しかしそんな話は使ってみればどこへやら,新しいものをまとめる力はさすがといえて,使った瞬間の面白さから,使っていてジワジワと出てくる満足感にいたるまで,やはりこれはAppleのプロ用ノートブックマシン,MacBookProです。

 ちょっと前のMacProを越えるようなパワーを,まさに膝の上で駆使できるのが,MacBookProです。単にCPUやGPUが高速であったり,メモリがたくさんあるとかストレージが高速であるとか,そういうスペックの高さだけではこの使い心地は得られず,それらをうまくまとめて,ユーザの視覚や触覚とどう接続するかという部分に,最終的な仕上がりの差が生まれます。

 確かにmacOSでも,まだまだ完全とは言えませんが,それでも他に比べて抜きんでていることは間違いなく,Windowsに対する感情的なバイアスがすっかりなくなった今の私でさえも,やっぱりMacだと作業を邪魔されることがないなあと感じるあたり,うまくまとめてあるのだろうと思ったりします。

 いつもいっていることですが,ソフトウェアが最終的な製品の使い心地を決めるものであっても,一方でソフトウェアはハードウェアの限界を超えられません。ハードウェアの進化,言い換えると半導体の進化がこうして使い心地に反映されるまでには手間と時間がかかる上,必ずしもうまくいくとは限りません。

 大げさな言い方をしましたが,つくづく考えてみるとAppleはMacという高額な商品を使って,様々な試みを行ってきましたし,それがうまくいってもうまくいかなかっても,果敢に取り組みを続けているなと思います。

 分かりやすい例ではフロッピーディスクを廃止したこと,USBに一本化したことがそうですし,見えにくい部分ではCPUを全く異なるものに3回も変えていますが,OSもアプリケーションもスムーズにこの大変更を乗り切りました。64ビット化だっていつの間にか終わっていて,ユーザーにいちいち32ビットか64ビットかと選択を迫らないでしょう。

 こうしたAppleの良き伝統が,iPhoneの大成功でぶれてしまうことを一番に心配していた私でしたが,それは杞憂だったと思います。

 現状に不満を感じる事なく,その使いやすさとパワーに身を委ね,ちらっとパーソナルコンピューティングの未来まで見せてくれる,少し背伸びして買っても全く損をしない,今回のMacBookProは本当に良いマシンだと思います。おそらくこのMacBookProは成功し,今後のMacのベースになっていくことでしょう。


MacBookPro(Late2016)15inch TouchBar,買った!

  • 2016/11/22 09:00
  • カテゴリー:散財


 MacBookPro,届きました。そう,先日発売になったばかりの,TouchBar搭載の15インチモデルです。色はスペースグレイにしました。

 スペックは,

    2.6GHz Quad-core Intel Core i7
    16GB 2133MHz LPDDR3 SDRAM
    Radeon Pro 450 with 2GB VRAM
    256GB PCIe-based SSD
    Four Thunderbolt 3 ports

 です。まあ要するに,上下2つのランクがある15インチのTouchBarモデルのうち,階の安い方を選んだという事です。

 しかも,見ておわかりのように,キーボード以外はすべて標準構成です。私はどうも最近,自分であれこれとカスタマイズをすることを避けるようになりまして,時間も手間もお金もかかるわ,それでもトラブルは発生するし,今きちんと動いていても次のアップデートでどうなるかわからん,という苦労を相殺するほどのメリットが,もう見つからなくなってしまいました。

 CPU性能だってグラフィック性能だって,私が重視するバスの速さだって,このスペックであれば十分すぎるでしょう。それになんといっても,プロの期待に応えるMacBookProです。

 ただし,キーボードだけは,長く使い慣れているUSキーボードにしたいと思いました。基本的にBTOであり,注文時のカスタマイズ対応なのですが,一部のお店には店頭在庫を持っている場合もあるくらい,普通のカスタマイズです。ですが,いつも手に入るとは限りませんし,どっちかというとカスタマイズが必要ということを言い訳にして,安い店を探したり買う時期を慎重に吟味することを避けAppleStoreで買ったといってもいいでしょう。

 話は逸れますが,分解記事でも分かるように,今回のMacBookProはユーザーによる拡張やカスタマイズが出来ないようなハードウェアになっています。メインメモリもSSDもマザーボードに直づけですし,キーボードだって交換するには上ケースごとごっそり交換になります。

 ExpressCardは随分昔からなくなっていて,内部バスがそのまま外に出てくることはくなっていますし,その代わりThunderbolt3が4つ用意されています。つまり,基礎的な体力は買った時のまま固定されるので,買うときに失敗出来ないという事です。

 こういう傾向は私がMacBookAirを買った時にも感じた事ですが,

 よく知られているようにMacBookProは長い間基本的なアーキテクチャが変更されないまま販売されてきました。確かにPCは進化が遅くなり,マーケットも小さくなったのですが,それはコンテンツを消費するスマートフォンやタブレットの普及のためであると言えて,コンテンツを創る道具としてのPCへの期待はこれまで通りか,それ以上のものがきちんとあります。

 コンテンツを創る人の多くはプロであり,収入を得る手段としてPCを使う人であり,それは趣味の道具ではなく生活を支える道具です。経済的にも創造的にもそれは妥協が許されないものです。

 にも関わらず,MacBookProのユーザーは妥協を強いられてきたと言って良いでしょう。もちろん,彼らの期待を支えるだけの底力は一世代前のモデルでもあったという評価が高いですし,私の目で見て,今回のMacBookProでも最先端の創造に耐えうるだけの強烈なパワーを持っているとは思いません。

 ですが,Macがクリエイターの道具であり,その中でも特にクリエイターが望むプロモデルの進化が止まっていたことに,私は大変不満でした。お金になるiPhoneに集中するのは結構だが,そのiPhoneのユーザーが楽しんでいるコンテンツの多くはMacで作られていることをもっと大事にして欲しいと,そう思っていたわけです。

 とまあ,偉そうなことを書いていますが,私は趣味でMacBookProを使っている気楽な人です。私の歴代のMacは,これまでにただの1円も生み出さなかったですし,またその徹底した割り切りが,私のMacとの付き合い方です。

 ただ,大昔にも書いたことですが,本質的にコンピュータが人間の創造性をアシストするものであるならば,コンピュータの性能不足によって創造性にブレーキをかけるようなことがあれば,その段階で存在の全否定になります。

 作品がお金になるかならないかは別のドメインの話で,アマチュアだろうがプロだろうが,自分の作業をよりスマートに,より創造的にやりたいと思うのは共通ですから,そのための道具としてMacBookProには常に最強であって欲しいし,そうしたアピールをメーカーであるAppleには続けて欲しいと思っています。

 閑話休題。新しいMacBookProの話ですね。

 発表になったのが日本時間の10月28日深夜です。私は今年の春に,今使っているMacBookProのメモリが壊れてしまい,少ないメモリ容量で運用を続けることになった時に,買い換えを決めました。予算も確保し,その価格からはみ出さない限りは機械的に買うと決めていました。

 問題はいつ買うかだったのですが,欲しい時が買い時を座右の銘にする私も,モデルチェンジが確実視されているモデルを待たずに買うという冒険までは出来ません。

 すぐに買えばたまりにたまったD800のRAWデータを効率よく処理できると思いますし,あらゆる作業が楽しくなるだろうと思いますが,最新のOSが無料で配布されるMacでは,アップデート対象機種から外れるかどうかが新しいユーザー体験を逃すかどうかを決める要素ですから,出来るだけ最新の,特に基本アーキテクチャが大きく変わるなら変わった後のモデルを手に入れないと,Macの進化についていけません。

 私がこれまで使っていたMacBookProは2008年のモデルですが,先日のSierra(10.12)で対象機種から外れました。これが買い換えの大きな動機になりました。USB3.0の未サポート,メモリ不足,Lightroomの動作にストレスがあるという実害と共に,OS面からも旧世代になったというこのタイミングはそんなに悪くはありません。

 ということで,最新アーキテクチャ,15インチ,予算25万円である程度の枠を決めましたが,この範囲内なら何も考えずに発注するとして,発表された朝にAppleStoreに注文をしました。

 11月17日から11月24日に届く予定というメールが届き,実際に届いたのは19日でした。出荷は16日だったので17日にはとどくじゃないかと喜んでいたところ,まさか上海から発送されていて,それで19日になるとは思ってませんでした。

 届く前に事前に準備したものがあり,それがUSB Type-Cコネクタ関係です。新しいMacBookProでは,電源コネクタさえもType-Cコネクタに統合されてしまいました。本体から出ているコネクタはこのType-Cコネクタが4つと,後はヘッドホンジャックだけという潔さです。

 個人的にはこのすっきり感は歓迎なのですが,実用上の問題としてうちにはType-Cの周辺機器が1つもありませんから,とりあえず変換ケーブルを用意するしかありません。

 とりあえず必要なものは,Type-Aのコネクタで出てくるUSB,外付けHDD様のFIreWire800,GbitEtherです。とりあえずこれだけあれば即稼働させることが出来ます。

 まずType-CとType-Aの変換ですが,Appleが年内の緊急値下げを行った関係で品薄になっているようで,私もあわてて渋谷のAppleStoreに買いに行きました。

 FireWire800についてはちょっと厳しいです。Thundebolt2からFiewWire800にする変換コネクタはAppleから用意されているのですが,あいにくThunderbolt2とThunderbolt3は物理形状に違いがあり,そのままではささりません。

 そこでMiniDisplayPortと同じ形のThunderbolt2を,Type-Cと同じ形のThunderbole3に変換するケーブルを間に挟んで,FiewWire800に変換します。ここに一番お金がかかった感じです・・・

 はっきりいって,FireWireはもう終わった規格です。最大で800MbpsではUSB3.1に足下にも及びませんし,Thunderbolt3とも全く勝負になりません。

 かつてはUSB2.0に比べてオーバーヘッドも小さく,高速で信頼性も高いストレージ用のインターフェースとして重宝しましたが,すでに生みの親であるAppleでさえもFireWireのサポートを切っていますので,こんなものに投資をするのは無駄だと思います。

 ただ,今私がとても大切にしてあるデータがFiewWire800のケースに入っていることと,ひょっとしたら古いマシンからの移行にFireWireがあった方が楽かもしれないと思ったのがあります。

 GbitEtherは,きっと純正品があるものだと思っていましたが,ないんですね。Thunderbolt2と100MのEtherはあるんですが,Thnderbolt3とGbitというのは,Belkinのものを推奨しています。とはいえこれは在庫がありません。

 仕方がないので,ヨドバシで色が黒のものを買いました。形状は全く同じですが,本当にAppleストアで売られているものと同じ動作をするかどうかはわかりません。信頼性を求めるが故にわざわざ有線でネットワークに繋げるんですから,不安定な動作しかしないというのは困ります。

 とまあ,これだけ準備をして届くのを待っていたわけです。

 長くなってしまったので,インプレッションは次回に続く。

はじめて「ファミコン」を買う

 11月10日発売になった,「ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ」を買いました。発表になってすぐにヨドバシカメラに予約を入れて,発売日にケトル事ができたのですが,届くまでにワクワクし,遊んで楽しかったものって久々でしたから,ちょっと新鮮でした。

 かくいう私,ファミコンもスーパーファミコンも,その後続く任天堂の据え置き型(コンソール)は一度も手に入れたことがありません。ポータブル型については何度か買っていますが,それもゲームボーイアドバンスが最初で,子供のうちに買ったことは一度もありません。

 ファミコンについてはPC-6001を買って満足していた(しようとしていた)ことがあり,ファミコンを認めるわけにはいかないという屈折した意地がありましたし,スーパーファミコンについてはメガドライブが,Nintendo64についてはセガサターンが,GameCubeについてDreamcastが・・・と,ことごとく反主流な選択肢によって任天堂を選ばなかったということが繰り返されてきました。

 いや,ゲームキューブは,マイナー機に仲間入りしたことで守備範囲に入ってきたのですけど,任天堂という巨大ブランドが私を素直にさせなかったというのが正しいでしょうか。

 任天堂は優れたゲームデザインを行うゲーム会社ですし,ゲームの本質,遊びの本質をぶれずに追求し,いつも原点にぱっと戻ることが出来る,素晴らしいクリエイター集団です。お金もあるし優秀な人も揃っていて,アイデアだけではなくそれを形にする値からにも長けています。

 ですが面白ければ何をやってもいいと考えないところはさすがで,自らを律したり,なにが自分達を高めているかをちゃんと理解しているところが,世界でも希有な企業だと思います。

 概して成功者というものはおごり高ぶるものですが,任天堂の視線はいつも変わらず,ファミコンから現在のWiiUに至まで,変わっていないと思います。純粋に楽しく,健全で,PS3やPS4のゲームとは,脳みそのちょっと違った部分が喜んでいるように思っています。素晴らしいです。

 素晴らしいのですが,一方で私はその同業他社に対しての厳しさに反発を持っていて,同じく作品に敬意を払いつつも「きらい」なディズニーと同じ方向を剥いていました。

 ゆえに,任天堂のハードウェア,特に最強と言われたファミコンとスーパーファミコンを欲しいと思わなかったのです。

 昨今,レトロゲームのブームが来ています。こうした過去を懐かしむブームが来るには当然時間が流れないといけませんから,随分昔の話になったのだなあと感慨深いのですが,そんな流れの中でファミコンがこうした形で,しかも任天堂自らの手で復活するとは思いませんでしたし,それを私が手に入れることも,想像していませんでした。

 かくして,私が初めて買ったファミコンが,やってきました。

 聞けば,どこも予約完売で品薄になり,プレミアが付いているほどの人気とか。限定品といっていないのに再入荷の予定もないらしく,任天堂としてもこんなに人気になるとは思ってなかったんじゃないでしょうか。

 値段は税込みで約6500円とそれなりにしますが,そこは真面目で面白い任天堂のことです。内蔵ゲームの選択UIはわかりやすくストレスフリーですし,小さくなったコントローラも全く使いやすさを損なっていません。

 画面もかつての低画質アナログテレビをシミュレートする演出を盛り込んでいますし。ハードウェアも放熱対策やEMC対策に結構なお金と手間をかけてあります。この手のゲーム機にありがちな中華製のものとは,もう別次元の完成度です。

 説明書も見ずに,一通りゲームをやってみます。

 なつかしい。私はファミコンを買ったことが一度もありませんが,それでも当時の事ですから,友人宅に遊びに行けば,必ずファミコンで遊ぶことになります。あの銀色の箱も,本体の色合いも,あのファミコン独特の音も,全部懐かしい。

 当時一番親しかった友人が,これをやるためにファミコンを買ったという,マリオブラザースをまずやってみます。うん,これです,これこれ。

 本当に懐かしいなあ。二人でプレイするのに,共同でクリアしているはずなのに,いつの間にか殺し合いになっていくんですよね。当時知恵を絞って,どうやって相手をはめるか,必死になったものです。

 思わず,カセットをずらして遊ぼうと手が動いてしまいました。いかん,カセットなんてなかったんだ・・・

 アイスクライマーもエキサイトバイクも懐かしいです。いやー,この頃のファミコンは,他のパソコンやゲーム機とは一線を画していて,ゲームセンターのゲームを家で満足に遊ぶことのできる,唯一無二のマシンでしたからね,それを再認識しました。

 そして,パックマン。さすが本家の移植だけに面白いです。5歳の娘も夢中です。

 大きくなってからなので遊ぶことのなかったDr.マリオや星のカービーも面白く,実に良く出来ています。

 膨大なタイトルから選ばれた30本のうち,私が本当に当時面白いと思ったものは少ないし,「懐かしい」と思うこともないのですが,その分新規に遊んで十分に楽しいものばかりで,これ,ぜひいつでも買うことの出来る定番ゲーム機にして欲しいと思います。

 残念なのは,このゲーム機は全く外に対しての拡張性を物理的に持っていません。SDカードスロットとか,何らかの端子があれば期待も出来るのですが,そういう外と繋がるものは一切存在しないのです。

 内部はタブレット向けのアプリケーションプロセッサらしく,これでファミコンのエミュレータを動かしているものだと思いますが,フラッシュメモリを搭載してダウンロードしたゲームを残しておくとか,SDカードでゲームを追加できるとか,そういうのがあると,いいんだけどなあと思いました。

 でも,こういう割り切りがまた任天堂の良さでもあります。拡張できない,というのは,現在の仕様,選んだ30本のゲームが,万人に受け入れられるという強い自信の表れです。なんであれが入っていないんだ,なんでこんなものが入っているんだ,という声がある事もすべて飲み込んだ上で,わずか30本を選び,しかも増やすことが出来ないようにして退路を断つというのは,かなり大変だったはずです。

 いうなれば,この30本のチョイスも,彼らの作品です。

 蛇足ですが,ここ最近私も昔のゲームを楽しむことが増えました。タイトーの昔のゲームも集めたタイトーメモリーズも発売当時に4つ買ったのです。しかし,いずれPS3はPS2の互換機能を実装すると期待してPS2は引っ越しの時に処分したのに,すっかりPS2は過去のものになってしまいました。

 このままではPS2のソフトが全部ゴミになってしまうとずっと気になっていた私は,先日意を決してPS2の中古を買い,これでタイトーメモリーズを散々遊びました。いろいろ意見はあると思いますが,それでも「レイフォース」と銘打ったゲームがきちんと遊べるのは,とても魅力的です。

 実のところ,アングラな商品に手を出せばいろいろなゲームで遊べるのは確かでしょう。しかし,そこまでするのもなあと思いますし,昔のゲームであったとしてもきちんとした対価を支払って,氏kルべき人の収入になるような形で手に入れたいと思うので,怪しい物には手を出しなくありません。

 なので,次はぜひ,「セガクラシックミニ メガドライブ」を期待したいです。そうそう,小物入れのメガCDをくっつけられるようにしてあるとうれしいです。

KT-1100Dの顛末~番外編

 KT-1100Dをいろいろ調べているうちに,受信周波数のズレは検波部にある,コイル(俗にディスクリコイルと呼ばれている)の不良である可能性があることがわかって来ました。。

 検波した結果をそのまま音声信号に使うチューナーではないKT-1100Dのことですから,同調点を見つけるだけのものだと油断していたのですが,その安定度が受信性能に大きく影響することも実際にいじっていくうちにわかってきました。

 KT-1100Dの(同調点を探すための)検波部は,一般的なクアドラチュア検波です。位相を90度ずらすために特殊なコイルを使うのですが,修理に出したらこのコイルが壊れていたので交換されたとか,他機種ですが受信周波数がずれてどうしようもなかったのに,これを交換したらスカッと治ったとか,まるで胡散臭い健康食品みたいな話がWEBで出てきます。

 私は高周波とコイルには大した知識もないので,コイルなんてのは銅線をグルグル巻いたものだから壊れるわけがないと思っていたのです。

 ですが,この検波用のコイルの劣化というのは,内蔵のコンデンサの不良によるものなのだそうです。まあ,この世界にいれば常識なんでしょうが,私は知りませんでした。

 先日比較用に手に入れたKT-1100Dは,L9というコイルを調整しきれないという問題を抱えていたわけですが,まさにこれがこのコイルの故障です。内蔵コンデンサが劣化していて,調整範囲に入ってこないという理屈です。

 だったらコンデンサを交換すれば済む話じゃないかと思ったのですが,これが実に甘かったのです。

 コイルは正の温度特性を持っています。これを相殺するために負の温度特性を持つコンデンサを内蔵してあるのですが,この負の温度特性のコンデンサというのが,なかなか簡単には手に入りません。

 これを通常のセラミックコンデンサなどに交換してしまうと,正の温度特性を持っていて,かつ盛大に狂うため,温度の変動で簡単に共振周波数が変化してしまうわけです。

 容量は大体100pF程度なんだそうで,これはまあどうにかなるとして,温度特性だけは材料の問題ですので,工夫でどうにかなるようなものではありません。困りました。

 セラミックコンデンサというのは,材料をうまく調合することで,様々な温度特性を持つものを作る事ができるのですが,残念な事に温度特性をきちんと管理したものは以前のような旺盛な需要がなく,特に負の温度特性を持つような温度補償用コンデンサは,現在ほとんど生産されていないのだそうです。

 いや,確かに温度補償コンデンサと銘打ったものは現在も作られていますが,これは温度特性が±0のものがほとんどであり,正の温度特性を持つコイルの補償につかうような負の特性を持ったコンデンサは,さっと探してみてもなかなか売っているお店がないのです。

 負の特性といっても-200ppm/℃くらいですから,±0ppmのメジャーな温度補償コンデンサに比べても僅かな変動でしょう。そこで先日,コイルを基板から外し,内蔵のコンデンサを取り外してから基板に戻して,基板上で100pFのCH特性のものを付けてみました。

 目論見通り,ちゃんと調整範囲に入るようになり,正常に動作するようになったのですが,そのまま朝まで放置して置くと,盛大に周波数がずれてしまい,放送波を受信出来なくなっていました。

 CH特性ではだめなんですね・・・

 ということで,負の特性を持つコンデンサを手持ちから探してみましたがありませんでした。SL特性という,+300ppmから-1000ppmという,大きなバラツキ範囲を持つものならあったので,これに交換してみました。容量は少し小さめの91pFです。

 結果,前回ほどの大きなズレはおきませんでした。朝になっても放送波をきちんと受信していましたが,その翌日には完全に受信周波数がずれてしまっていて,結局このコンデンサはあきらめました。

 受信周波数のズレというのは,無線機器にとって致命傷であり,基本性能の1つを欠いていることになりますから,このコンデンサは非常に重要な部品であるといえて,早急にちゃんとした部品に交換したい所なのですが,前述したようになかなか手に入りません。

 で,再度手持ちの部品を確認すると,なんとまあ小学生の時にテレビから外したセラミックコンデンサがいくつか出てきて,これがオレンジや紫色のペイントがなされた,負の温度特性を持つものだったのです。

 容量も,100pFや68pFという美味しいところが見つかり,試して見ることにしました。

 交換したのは,オレンジのペイントがある100pFです。

 オレンジのペイントということは,-150ppm/℃ということです。別の言い方をすればPH特性ですね。実は,コイルメーカーのとある「ディスクリコイル」の仕様書を見たことがあるのですが,これに内蔵されたコンデンサが,まさに100pFのPH特性でした。

 早速試してみます。

 83MHzをSGで作り,指定されたテストポイントの電圧を測定し,0VとなるようにL9を調整します。フタを閉じ電圧を見続けて,どのくらいの電圧のズレがあるのかを確認していきます。

 同じ事をSL特性のコンデンサでもやったのですが,随分と変動をしていました。しかし,今回のコンデンサではほとんど変動しません。大きくずれても4mV程度で,それもいつのまにか0Vに戻っています。

 常用機のKT-1100Dにも同じテストポイントに電圧計を取り付けましたが,その変動はほとんど同じでした。受信周波数の温度特性については,2つのKT-1100Dはほぼ揃い,どちらもほとんどずれないという結果を得ました。

 今回入手したKT-1100Dは動作保証という触れ込みでしたが,結果はL9の故障で受信周波数がずれていて,しかも調整不可能な状態でした。修理にはL9の交換しか方法がなく,それは素人には無理です。

 私の場合,L9を分解して劣化していた内蔵のコンデンサを取り外し,外にそのコンデンサを取り付けて修理を行ったわけですが,L9の詳細も不明,修理のための部品も入手が難しいですし,修理出来たかどうかを確かめる方法も簡単ではないことを考えると,このKT-1100Dを修理して使えた素人さんがどれくらいいるのか,甚だ疑問です。なんだか心配になってきました。

 せっかくですので修理を終えたKT-1100Dの他の調整をぱぱっと済ませて,常用機と同じ程度の性能が出るようにしておきました。セパレーションは50dB弱と言うところですが,これ,電波の強度が強いと良い値が出てきますので,アンテナやブースターと言った受信環境の改善がまず先にくるように思います。

 現在,2台のKT-1100Dが82.5MHzのNHK-FMを50時間ほど連続受信していて,時々SGにつなぎ替えては諸特性を確認しています。理想を望めば切りがなく,実用レベルとしてこんなもんかというあたりで2台が揃ったところで,FMチューナーの検討はおしまいにしようと思います。

 ちょうど今週は,寒くなるときもあるそうです。25度近い暖かい部屋と,10度近くになる寒い部屋で状態を確認出来る貴重なタイミングでもありますので,今週は継続して様子をみていきます。

 KT-1100Dの検討は10月頃から取り組んでいますので,延べ1ヶ月もこんなことを続けていました。ロシアからMC1495のパチモンを買ったり,わざわざ秋葉原の若松へLA3350を買いに出かけたりといろいろあったわけですが,目標に届かない結果に対しても納得出来るだけのことをしましたし,データも揃いました。

 それにしても,温度補償コンデンサというのは大事な部品ですね。それに本当に綺麗に温度補償が出来るのです。大昔のアナログ無線機の温度特性をこういう方法で維持していたのだと思うと,すごいなあと感心します。

 さて,この修理をしたKT-1100D,まずまずの性能になっていますが,どうしましょうかね。もうちょっと手元に置いてから,部品取りにするか,予備機にするか,友人に進呈するか,考える事にしましょう。

 

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