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ユーザー「gshoes」の検索結果は以下のとおりです。

KT-1100Dの顛末~その2

 KT-1100Dを常用できないなあと思ってはいても,横幅43cmもあるFMチューナーをそこらへんに放置して置くわけにもいきません。場所ふさぎで目障りですし,空席になっているFMチューナーというポジションのレギュラーの椅子を埋めなければなりません。

 KT-1100Dは先日も書いたように,セパレーションが大きく変動してしまい,ピーク時には70dBを越えるのに,時々刻々と値が悪化して,30dB台にまで悪くなってしまいます。悪いなら悪いままで安定してくれた方がまだ手が打てると思うだけに,途方に暮れていました。

 加えて,回路図がなく,元の状態を記録していないので,こうなった原因が部品の交換によるもの(交換ミスも含む)のか,あるいは故障してしまっているのか,そうではなくもともとこんなものだったのかが,すでに分からないという事が問題になってきました。

 そこで2つの方法を検討します。

 1つはかつての常用機であるF-757を復活させること。オーディオアナライザに19KHzのフィルタを装備しましたし,ステレオエンコーダーにMSG-2170を導入しましたので,調整は以前よりも綺麗に出来ると思います。どこまで性能が追い込めるか,チャレンジです。

 もう1つは,先日書いたように,別のKT-1100Dをもう1台手に入れ,これと比較することです。セパレーションの変動がもう1台でも起きるのか起きないのか,部品の付け間違いはないかを比較するという目論見です。

 しかし,KT-1100Dは人気機種です。オークションでも1万円程度で取引されることも多くあるわけですが,今回の目的程度では1万円はさすがに出せません。

 しかし,運良く安く(といってもそれなりに高かったんですが)動作品を手に入れる事が出来ました。

 改造品だと今回の目的を達成出来ないので,壊れていないことと改造されていないことを祈っていましたが,届いたものをドキドキしながら確認すると,幸いにしてそれは杞憂に終わりました。



(1)F-757の再調整

 F-757はチューナーとしては高価でしたし,パイオニアにおけるフラッグシップモデルでしたから,そんなに悪いものではないはずなのに,今ひとつ評価が低いです。

 銅めっきのビスにハニカムシャシーと,いかにもバブルな趣向を凝らしたモデルで,しかしながらメンテナンス性は最悪で部品の交換もやる気が失せるほどですし,カタログや取説に書かれたスペックはどう考えてもウソで,知識も技術もなかった30年前の私でさえも「これはあやしい」と疑ったほどです。

 デザインは悪くないし,電波環境が良ければ音質は良いと思うのですが,今にして思えば電波の質が良くないと,性能を発揮できないモデルという事になるのでしょうね。このチューナーの評価が分かれるのも,無理からぬことです。

 ただ,FMチューナーというのはオーディオ機器である前に,無線機器です。受信機として電波をつかまえる性能が高くないと話にならないわけで,そこはさすがに定評のあったケンウッドにはかなわないということでしょう。

 とりわけ,都心部におけるマルチパスへの耐性であるとか,混信であるとか,電波は強いんだけども質が悪いという地域での性能の高さは使って実感するほどずば抜けていて,F-757ならジュルジュルというマルチパスで発生するノイズが全く出ないなど,頭一つ抜け出ている感じがしました。

 たかがFM放送になにを,と私も思うのですが,これだけの違いがあると認めるしかないなあと思います。

 とはいえ,私もF-757の長年のユーザーです。実家ではマルチパスも少なく,極めて高音質でエアチェックが出来ました。どこまでKT-1100Dに迫ることが出来るか,頑張ってみましょう。

 調整の結果,こんな感じになりました。

・NORMAL時
 歪率 L: 0.0686dB  R: 0.0688dB  MONO: 0.0782dB
 S/N L: 74.27dB  R: 74.33dB  MONO: 76.4dB
 セパレーション L->R: 57.49dB  R->L: 55.89dB
 
・SUPER NARROW時
 歪率 L: 0.299dB  R: 0.294dB  MONO: 0.302dB
 S/N L: 74.47dB  R: 74.40dB  MONO: 76.4dB
 セパレーション L->R: 40.76dB  R->L: 43.24dB

 うーん,悪くない数字,というよりなかなか良好です。確かに突出した性能とは言えませんが,FMチューナーとしては十分過ぎる性能です。

 ただし,放送波を受けてみるとジュルジュルというマルチパスによるノイズの発生が時々ありましたし,音質も硬い割には輪郭が曖昧でぼやーっとしています。FMラジオの延長にある音です。

 この性能が安定して出るんだから,なんだかもうF-757でいいんじゃないかと思った時もありましたが,KT-1100Dの音を聞いてしまうと,やっぱりもうちょっと頑張ってみようと言う気になりました。F-757はこのまま押し入れにしまうことにします。

 ところで,FMチューナーの心臓部である検波の調整を行う際に,なかなか歪率が0.3%以下に下がらずとても苦労しました。きっとコツがあるのだと思いますが,素人が試行錯誤でいじっているだけではなかなか収束しません。アナログと高周波の難しさを味わったことを欠いておきます。


(2)もう1台のKT-1100Dと比較する

 届いた2台目のKT-1100Dは傷も多く,あまり程度が良いとは言えないものではありましたが,とりあえず受信はしますし,中を見ると改造もされていません。故障していなければ,今回の目的を達成出来ますから,傷には目を瞑りましょう。

 SGで信号を入れて見ると,周波数のずれが大きくて,調整がかなりずれてしまっているようです。このままでは前に進まないので,まずは調整からです。

 ところがここで問題が発生です。検波段のコイルの調整(L9)なのですが,ここはテストポイントの電圧が0Vになるように調整をしなければなりません。なのに,0Vになってくれないのです。

 0Vに近いところまで動かすと,もうコアが飛び出して外れそうになります。それにその状態ではうまく受信が出来ない様子です。

 検波段をきちんと調整しないと,その後の性能が出ないので頭を抱えましたが,とりあえず折り合いを付けて調整を進めます。じっくり検討するのは後です。

 歪率もぱぱっと調整し,セパレーションも69dB位を出したところで蓋を閉じて1時間ほど放置すると,やはり40dB台まで悪化していました。再調整しても1時間ほどでずれてきますが,50dB台を下回ることはなく,偶然かもわかりませんが50dB程度で落ち着くポイントで調整が出来たような感じです。

 発熱も結構ありますし,叩けばセパレーションが変動します。基板をたわませても同様です。程度の差はあれ,KT-1100Dというのは,温度変化でセパレーションの性能が大きく変動するものと考えて良さそうです。

 また,気に担っていた左右のレベル差についても,今回のKT-1100Dでも8mVほどありました。

 ケンウッドのチューナーは,高価なアナログ乗算器を使ってまでステレオ復調の理想を追いかけた回路になっています。アナログで,しかもディスクリートですから,温度や電圧,部品のばらつき,経年変化などの影響を強烈に受けるのは間違いなく,「よくもまあここまでやるよなあ」と私などは思います。今ならDSPで一発ですからね。

 まあ,セパレーションも実用上40dBが出ていれば問題なしと言われていますし,70dBが50dBになったことに,普通の放送波で気が付く人などいないと思いますから,きっと当時はクレームもなかったんだろうと思いますが,複雑なアナログ回路を手なずけることの難しさを痛感しました。今ならこんな回路は却下されるだろうなあ。

 さて,次です。部品の交換が正しく行われているかを確認します。特に抵抗です。

 2台のKT-1100Dの基板を交互に見て,抵抗とコンデンサの確認を1つ1つやってきましたが,これはありがたいことに,交換ミスは見つかりませんでした。


(3)結局のところ

 まず,セパレーションの変動は「こんなもんです」が結論です。実用上折り合いの付くところで調整をするのが対応になりそうです。

 そして部品の付け間違いはありません。左右のレベル差も,いずれのKT-1100Dにも同程度ありますので,こんなもんでしょう。

 とまあ,1台目のKT-1100Dが「こんなもんだよ」となったところで,調整を適当な所で落ち着け,うちのレギュラーに戻すことになったわけですが,そうと決まったからには効果のなかった電源用のトランジスタを内部に戻すことをやります。

 また,一部交換を忘れていた抵抗を金属皮膜に交換します。また,スチロールコンデンサをマイカコンデンサに変えます。スチコンも温度特性に優れたコンデンサですが,マイカコンデンサの方が温度特性は良好です。

 そして,検波回路のスチコンも交換です。今回いじっていて分かったのは,検波回路の調整がずれているとセパレーションも急激に悪化するという事です。また,セパレーションがずれた状態で,SGの周波数を僅かに前後させると,セパレーションが70dBを越えるような状態になったりします。

 つまり,セパレーションというのは,セパレーションの調整がずれるだけではなく,受信周波数のズレや検波の性能で大きく変わってくると言う事です。

 そこで,検波基板のコンデンサもマイカに交換しました。

 こうした対応をしたのですが,再調整をしてもやっぱりセパレーションの変動は大きいです。とはいえ,通電をして機内が十分に暖まってからだと50dB以上を確保しますし,面白いのはそこからジワジワと良くなっていき,68dBくらいまで改善したりすることもあるのです。

 結局そこから悪化してしまうのですが,それでも50dBを割ることはなくなってきました。うまく調整が出来たんだと思います。

 もうこれでいいです。これ以上いじっても良くなるような気がしませんし,この音なら多少の問題があっても常用機の価値があります。

 あとは,常時電気を食っているのを防ぐ為に主電源スイッチを追加すること,安全のためにヒューズを追加すること,AMアンテナの端子をプッシュ式に交換する改造をやって,この件は終わりです。

 そうそう,KT-1100Dにはトリマコンデンサが3つ使われていますが,ことごとく劣化していたので,秋月で売っている20pFの赤色のセラミックトリマに全部交換しました。すっきりです。

(4)最終性能

 うちの常用機の椅子に引き続き座ることになったKT-1100Dの最終性能です。

・WIDE
歪み    L:0.0075%    R:0.0074%    MONO:0.0068%
S/N    L:74.0dB    R:74.0dB    MONO:74.9dB
セパレーション    L->R:64.2dB    R->L:64.5dB (Max 74dB)

・NARROW
歪み    L:0.0167%    R:0.0153%    MONO:0.0174%
S/N    L:74.0dB    R:74.0dB    MONO:74.9dB
セパレーション    L->R:62.2dB    R->L:61.8dB


 歪みの少なさが素晴らしいですよね。このことでざらつきのない,解像感を強く感じるきめ細かな音が出てきます。そのくせ輪郭ははっきりしていて,聴き疲れしないというのは多くの人が異口同音に述べるように,本当だなと感じます。

 セパレーションについても,このKT-1100Dの最高値は74dBをたたき出すのですが,それは短時間でずれてしまい,24時間で見てみると50dBから68dB位の間を変動しているような感じです。

 dBで見れば大きな変化なのですが,漏れてくる信号のレベルを考えてみると,100%変調時の出力が0.65Vなら,たった2mV漏れてくるだけで50dBですし,70dBといえば200uVなんですよ。

 確かに片チャネルが無音の状態で漏れてくる音はわかりますが,両方から出ている放送波の受信状態で,50dBと70dBの近いが分かるかと言えば,わからないと思います。

 それに,50dBでも漏れてくる音よりもステレオ復調時のノイズの方が耳障りだったりします。あまりこのあたりでカリカリするのは,精神的に疲れてしまうのでやめようと思います。

 ただ,40dBになると楽器が中央に寄ってくるのではっきりわかります。ボトムとして50dBはキープしたいところです。


(5)最後に

 もう1台のKT-1100Dですが,役割を終えた今,どうしようかなと思っています。オークションで流すというのも面倒だし,誰かにあげようかと思うのですが,それもちゃんと調整をしてからにしないといけませんし。

 MC1495やらFL表示管のような貴重な部品も入っているので,部品取りとしておいておくのも手だなと思いますが,それにしても置く場所ももったいない・・・

 安いものではなかったので,捨てるという選択肢は考えたくありません。お世話になっている友人にFMチューナーが好きな人がいて,彼はかつてD3300-Tを手に入れたはいいが,故障のため調整を追い込めなかったという苦い経験をしているので,彼がまだFMチューナーに興味を持っているようなら,調整済みで差し上げようと思っていますが,調整が終わるのがいつになるか・・・

ベクトルネットワークアナライザってなんと大げさな名前だことよ

  • 2016/11/09 09:21
  • カテゴリー:make:

 夏頃の話ですが,RFワールドという雑誌で,ある方が自分で作られたベクトル・ネットワーク・アナライザ(略してVNA,以後VNAと書きます)が取り上げられていました。有償で頒布するという話もあり,私も1つお願いしました。

 10月下旬に届いていたのですが,ようやくFMチューナーの一件が片付きそうになったので,動作確認を行いました。

 実のところ,私もVNAってよく分かっていません。苦手な高周波に使う非常に便利な測定器で,高級な輸入者が買えるほど高価なので個人で持つわけにはいかず,でもあるととても楽が出来るという夢のマシンだと聞きました。

 それが4万円ほどで手に入るのですから,これは面白いですよね。私はスペアナも持っておらず,周波数軸で測定を行う手段を持っていませんから,VNAとして使いこなすことが出来なくても,トラッキングジェネレータ付きスペアナとして使えれば,それでもう十分です。

 ZiVNAuと名付けられたそのVNAは,帯域が500MHzまでとかなり狭く,VNAがあると天国と思われるGHzオーダーの世界では活躍できないので,人によっては全く使い物にならないと考えるかも知れません。

 ですが,高周波を嗜むことのないアマチュアとしては,500MHz以上の世界をそもそも扱う事がありませんし,500MHz以下でもVNAがあれば十分楽しいという話もあり,買ってみようと考えたのです。

 まあ,単純なスペアナでも4万円では買えません。PCベースで500MHzまでとはいえ,そこはそれ,VNAです。使いこなせば面白い事が出来そうです。

 まずは,オススメのケースを加工して,基板を収納します。私は金属加工が下手くそで(木工はもっと下手くそですが),型紙を使って穴開けをしても穴がずれてしまうような鈍くささです。

 あげく,リアパネルの裏表を間違えて途方に暮れました。図面の見方も分かってないんですねえ・・・

 とりあえずカッティングシートを貼ってごまかして,あちこちから10mmの金属スペーサーをかき集めてケースに組み込み,動作確認をしました。幸いなことに動作確認は異常なし。よかったです。

 さて,このVNAで何を測定してみようかなと思ったのですが,1年ほど前に作ったFMブースターの性能を測定してみようと思っています。

 別にVNAである必要はなく,トラッキングジェネレータ付きのスペアナで十分なのですが,とにかく使って見る事が大事で,自分で作ったものをちゃんと測定して評価することは,非常に有用なことだと思います。

 ラジオのIFTの選定や評価,BPFの調整などにも使えるでしょうし,水晶発振子の優劣の判定にも使えそうです。

 これまで,RF関連には手を出さずに来ましたし,それほど興味のある分野でもなかったのですが,VNAを手に入れて,ネットワークアナライザとはなにかを知るにつけ,ちょっとずつ興味がわいてきました。シンプルな原理ですが,非常に合理的で面白い測定器だと思う一方で,トルクレンチでコネクタを取り付けないと再現性が出ないとか,ケーブルの取り回しで結果が変わるとか,RFらしい注意書きも出てくるなど,取り扱いの難しさも感じました。

 安いとは言え,それでも高い買い物です。うまく使って,これがないと先に進めなかったと思うような,そんな使い方が出来るようになりたいと思います。
 

KT-1100Dの顛末~その1

 先日から散々悩んでいるKT-1100Dですが,いろいろやってますがうまくいってません。セパレーションが時々刻々と変動して,ちっとも安定しないのです。

 はっきりいって万策尽きたと言っていいと思います。

 詳細は次に述べるとして,結論を書けば,どこか壊れているか,こんなものかの,いずれかだと思います。もう疲れました。


(1)LA3350を予熱する

 フタを開けた状態でセパレーションを最良点に持っていっても,時間が経てば平気で30dB以上悪くなってしまうという,とんでもないドリフトを起こしているKT-1100Dですが,筐体内には結構な発熱がある電源回路が存在しているので,温度の変化は結構あります。

 セパレーションの最良点は大体74dBくらい(これはかなりいい数字です)なのですが,これがすぐに50dB台になり,フタを閉じれば40dB台,そのまま一晩放置すると30dB台まで悪化しています。

 これだとやはり温度変化ではないかと思う訳ですが,指でさわって特性が大きく変わる箇所を探してみると,一番大きい変化をするのはLA3350でした。

 ステレオデコーダICであるLA3350を,38kHz生成用のPLLとして使っているのがKT-1100Dですが,このPLLのVCOのフリーラン周波数が温度で大きく変動します。事実,フリーラン周波数をぴったり19kHzにするとセパレーションの値は70dBを越えますが,1Hzでもずれると60dB台止まりです。

 LA3350に繋がる抵抗をすべて金属皮膜に変更し,コンデンサはマイカコンデンサに置き換えて,温度特性を小さくしてみたものの変化無し。これはもうLA3350自身の問題と考えるしかありません。

 そこで,LA3350を暖めることにしました。

 気温の変化も含めて,LA3350を一定の温度に出来ればいいのですが,そのためにあまり大げさな装置は組みたくありません。そこで,パワーアンプの熱暴走対策用のバイアス回路をちょこっといじって,一定温度で発熱する回路を作りました。

 実際に発熱する熱源たるパワートランジスタと熱結合したバイアス生成用のトランジスタの2つで構成され,自身の発熱はもちろん,周囲温度によるコレクタ電流の増大を押さえる回路です。

 さっと試作して,ドライヤーで暖めたり冷やしたりしても,コレクタ電流が一定に保たれることを確認しました。これで一定の温度になっているはずです。設計では,14Vで65mAから120mAくらいまで調整可能にしてあります。

 熱源トランジスタのVCEは約12Vでしたから,これに100mAを流せば1.2Wです。表面温度w調べて見ると,60度くらいになっています。

 これをLA3350にくっつけてみます。

 なるほど,VCOの周波数は安定してきました。しかし採取的なセパレーションはやはり変動します。変動の幅は小さくなっているように思いますが,それでもフタを閉じて40dB台になってしまいます。きっとLA3350だけではないんでしょう。

 結局この回路は外してしまいました。


(2)カレントミラーの熱結合

 先日も書きましたが,MC1495の電流出力を引っ張り出すカレントミラーを熱結合してみました。実は,熱結合前に,トランジスタの片側だけを触っても全然セパレーションが変化しなかったので,きっと意味のない対策だろうと思っていたのですが,やってみたら本当に効果がなく,がっかりしました。


(3)基板のたわみ

 面白い事に,基板を上から押し込む方向にたわませればセパレーションは悪化する方向に,逆に引っ張り上げてたわませれば,良くなる方向に値がずれていくのです。物理的な位置関係や歪みが変わることで10dB程もセパレーションが変化するのですからよっぽどで,ベークで出来た基板だけに熱による変形は大きいだろうと思いました。

 そこで,基板を固定しているビスを緩めて,熱の変化でも基板が変形しにくいようにしてみました。

 結果はダメ。変化無しです。


(3)熱源を外に出す

 KT-1100Dは,安定化されていない22Vから,安定化した14Vを得るための電源回路を持っています。制御用のトランジスタが比較的大きな放熱器にネジ留めされており,これが結構な熱を放っています。

 フタを閉じれば筐体が徐々に熱を持つようになります。

 最終手段として,この熱源を外に出して,密閉された空間の温度上昇を食い止めようと考えました。

 やったことは単純で,熱源たるトランジスタを放熱器ごと取り出し,筐体の背面に取り付けて,ケーブルで基板に取り付けます。

 かなり機内の温度上昇は押さえられ,フタを開けてももわっと熱い空気が吐き出されることはなくなったので,その結果が楽しみだったのですが,一晩放置した後のセパレーションは43dB。確かにいくらかの改善はありますが,それでもこの悪さです。

 それに,熱源を外に出すという作戦は,外気温の変化には無抵抗です。この日の朝は冷えましたので,そのせいで大きくずれた可能性はあります。

 どっちにしても,これはあまり大きな効果はありませんでした。


(4)万策尽きた

 ここまでやっても改善が見られないということですので,仮に温度変化が原因だとすれば,その影響を受けている原因箇所は複数あるという事でしょう。それらすべてを熱的に対策するのは無理です。

 あるいは,本来なら温度変化を受けないように作ってある回路が壊れているケースです。一見するとちゃんと動いている回路ですから,故障箇所を探すのは難しい作業です。これもしんどいですね。

 最後に,こんなものだという話。KT-1100Dという機種は,温度に対してセパレーションが大きく変動するものだということですが,そんな話は聞いたことがありませんし,可能性は低そうです。

 やっぱり,この個体の故障ではないかと思うのですが,動作確認前にケミコンの交換を始めたもんですから,交換ミスがあるのかも知れません。だからといってこんな温度変化に関する問題が出るとは考えにくいのですが,どっちにしても私が今考えうる対策は,もう全部やりました。そしていずれも効果に乏しいものでした。

 これで折り合いを付けるしかないなあと思うのですが,幸いにしてもう1台,KT-1100Dの動作品を入手出来る事になりました。

 動作品と言っても,とりあえずステレオ受信が出来るというだけの話ですから,本当に大丈夫かどうかはわかりません。

 しかし,この新しいKT-1100Dで温度変化がないなら,やはり故障していたということになるでしょう。逆に,新しいKT-1100Dも温度変化が大きいのであれば,この機種はこんなもんだとあきらめも付くというものです。


 ところで,ベストに調整したときの測定値ですが,これがなかなかよい値が出てきたんですね。セパレーションは大きくずれるのですが,それ以外は安定しているので残念なのですが,参考までに書いておきます。

・WIDE時
 歪率 L: 0.0068%  R: 0.0068%
 S/N L: 74.0dB  R: 74.0
 セパレーション L->R: 73dB  R->L: 73dB
 

 このうちセパレーションが,どんどん悪くなってしまい,そのうち30dB台になります。外気温の影響も受けますし,これを実用的に使うというのは,ちょっとないなあと思います。

 大事な事はピーク性能ではなく,安定した性能です。F-757は絶対性能はこんなに良くないと思いますが,安定性はよいので,こっちを常用することも視野に入れようと思います。

QX5FDで懐かしい打ち込みをやってみる

 コンピュータによる自動演奏の楽しさは,PC-6001のPLAY命令で知りました。自動演奏と当時に和音を出せる面白さは,当時自らの手で和音を出す術を持たなかった私にとって,まさに「出来る事が増える」という画期的な事件でした。

 電子楽器,自動演奏,オーケストレーションというこの3つは,その後の私の趣味の柱の1つを担うまでになりますが,中学生の時の私はそんなことなど全く知りません。

 その後,同じように面白さに目覚めた弟がPC-6001の後継機として,OPMが使える当時唯一のマシンであることを理由にX1turboを選び,私も少し触りました。ただ,X1turboには当時最強のFM音源を搭載可能ではあっても,それを操る方法はほとんど用意されなかったので,使いこなしたという印象は持っていません。

 そうこうしているうちに,D-20というローランドのシンセサイザーを手に入れるわけですが,10万円前半のアマチュア向け機器に,使い物にならない中途半端なシーケンサーを内蔵してプロ用の機器に近い値段になったという,まったく話にならないマシンを喜んで使っていたことを恥ずかしく思います。

 ただ,当時はフロッピー付きのシーケンサーが付いているというのはとても未来的で,当時のプロならみんな持っていたコルグのM1が「ワークステーション」を名乗っていても,フロッピーディスクまでは搭載していなかったことを考えると,D-20は本気度でM1を越えていたと言えます。

 私はまんまとその気合いに騙されたといえる(だって当時178000円もしたんですよ,D-20は)のですが,でもそれに見合う音源やシーケンサーとしての完成度を持っていなかったD-20には,明らかにオーバースペックな機能が搭載されたという事だと,買ってから気が付くわけです。

 そのD-20のシーケンサーですが,ローランドですし,フロッピーディスクも搭載しているのですから,そこはやっぱりMC-500やMC-300譲りかと思うじゃないですか。MC-8で革命を起こし,シーケンサーという一般名称に背中を向け「マイクロコンポーザー」と名乗り続け,プロの期待に応えているMC-500がビルトインされるなら,D-20はとんでもなくお買い得なマシンになっていたはずです。

 しかし,残念な事に,D-20のシーケンサーはMC-500と違うだけではなく,全く使い物にならないものでした。ステップ入力が全く出来ない,もたつく,よたる。ペダルを使ってリアルタイム入力をするとシーケンサーの同時発音数をオーバーする,テンポを変更出来ない,イベントを編集できない,クオンタイズが使い物にならない,などなどです。

 ステップ入力が出来ない事と,イベントを編集できないことはもはや致命的で,これじゃアナログのMTRとなにも変わりません。何度か使ってみたのですが全然ぱりっとした仕上がりにならず,MIDIシーケンサーとはこういうものなのか,あるいはD-20だからこんな程度なのかが分からない,そんな状態が続いていました。

 そこで,外部にちゃんとしたシーケンサーを繋ぐことを考えました。しかしお金のない高校生が,おいそれとシンセサイザー1台に匹敵するだけの買い物をするわけにはいかず,当時既に旧型となっていたQX5の展示品を4万円で買ったのでした。

 これも今にして思うと,そんなに安いものではなかったと思いますが,4万円でまともに動くMIDIシーケンサーを手に入れる事は現実的には難しかったと思います。

 果たしてQX5はどうだったかというと,これが実に楽しかったのです。ステップ入力をあの少ないキーと小さなLCDで行うのは至難の業かと思っていたら,なんのことはない,鍵盤から入力が出来るので非常に楽でした。

 イベントの編集も出来ますし,なによりテンポがずれたりよたったりせず,ばしっとタイミングが出ます。

 慣れればあの小さなLCDでなんでも出来るようになりました。QX5で不満や不足を,当時は感じませんでした。そりゃそうです,D-20とMatrix-1000だけだったのですから。

 QX5はバッテリーバックアップがありましたが,外部ストレージへの記録はカセットテープで行いました。でもこれは時間もかかるし,信頼性も低いので,QX5の演奏データをD-20のシーケンサーで一気録りし,これをD-20のFDDで記録する方法を取りました。

 この方法だと,D-20でイベントの編集は出来ませんし,QX5に戻すことも出来ません。だからQX5で作ったデータを文字通り録音するだけになってしまうのですが,FDDで記録が出来ることは便利でしたし,ステージでもD-20だけできちんとしたシーケンスを演奏出来たので,なかなか便利に使っていました。

 QX5FDはすでにこのころ出ていて,確かにQX5FDを買っていればこんな面倒な事をしなくても済んだだろうし,編集も出来て便利だったろうなと思いましたが,買い直すだけの経済力もなく,そのまま高校時代を過ごしたのでした。

 その後,大学生になってアルバイトをしてからは,Macを手に入れ,念願のPerfoemerを使ってシステムを組みました。鍵盤と音源の数も増えていき,様々な音を混ぜて作る事の面白さを堪能していました。

 そのうち,就職と引っ越しで機材の処分をしたことでシステムは整理されていくのですが,一番問題だったのはMacとPerformerです。Macが新しくなるとPerformerは動かなくなります。動くようにするには少なくない費用がかかるので,使用頻度から考えて後回しとなっていきました。

 単純なMIDIシーケンサーだけでよかったのに,DigitalPerformerにしないとMacOSXに対応しないなどの問題もあり,もうPerformerについていくのはあきらめたのです。
 
 結局,高品位な音源と膨大な同時発音数を期待して購入したRD-700や,個性的で太い音のMicronを楽曲作りで使うことは一度もないまま,10年の時間が流れています。

 そんなおり,娘がピアノを始める事になり,当座私のRD-700を使ってもらうことになりました。もっといいものが欲しくなったら,その時考えてくれればいいです。

 私もRD-700で久々に遊んで見たのですが,やっぱりマルチトラックで楽曲を作ってみたくなります。

 しかし,Performerはすでに動く環境がなく(PCベースだとこれが一番頭が痛いですよね),QX5はすでに処分してしまいました。冷静に考えると,私は今,全くMIDIシーケンサーを持っていない状態だったのです。

 これはいかん。MIDIシーケンサーを使った打ち込みの楽しさを伝承せねば。

 カット&ペーストで作るのも,DAWを使うのもいいんですが,やっぱりMIDIのイベントを1つ1つ見ていじることの面白さも,堪能出来る環境がないと・・・でもそういう機材ってすでにもう絶命しているんですよね。

 かつては市場を二分したローランドのMCシリーズも,ヤマハのQXシリーズも現行機種はありません。すでに20年近く前に新しいものが出なくなっています。

 なら,中古を買うか。

 名機QX3を買うことも考えましたが,値段よりもなにより,大きさが大きすぎです。こんなに大きいと邪魔で仕方がありません。

 使い慣れたQX5をオークションで探してみると,安いです。これでいいかなと思ったところで,QX5FDが見つかりました。これも安いです。

 かつて欲しかったQX5FDです。この値段なら買ってみてもよいでしょう。

 想像以上に程度のいいQX5FDを落札し,届いたのが少し前です。軽く動作確認をして,分解掃除を済ませて,実際に使ってみました。

 ケースのプラスチックの劣化があって,ビスを差し込むボスが数本折れて締まったものを修理したり,電源ケーブルを直出しからメガネコネクタに変更したりと,ちょっとした改造をやってから,早速打ち込みをしてみましょう。

 RD-700につなぎ,ハイハットだけでまずメトロノームを作ります。次にピアノを入れて,ベースを入れ,ドラムを入れます。

 1時間ほど格闘し,出来上がったのは沢田研二の「勝手にしやがれ」です。
サビを入れる所で力尽き,なんだか不完全燃焼のままでした。

 最初はなかなか慣れないのですが,やっているうちに体が勝手に動くようになってきました。QX5はDISPLAYキーを押すことで,小節,トラック,テンポと言った情報がすべてあの小さなLCDに表示出来る慣れた人向けのモードがあるのですが,私もこれの方が見やすく感じるくらいです。

 ベースも,8部音符で刻む部分はテヌートで演奏したいわけですが,鍵盤ではなかなかテヌートが再現出来ません,そこでステップ入力で入れていきます。

 次はドラムです。私はドラムはすべて手で打ち込みます。パターンを並べる方法は使いませんし,繰り返しも含めて全部手で打ち込みます。可能ならリアルタイムで入れた方が,強弱もきちんと入っていくので楽な上に楽しいです。

 とまあ,こんな感じでピアノ,ベース,ボーカル,ドラムを入れたわけですが,本当はここから先が面白くなるはずでした。ですが,RD-700のマルチ音源としての使い方がよく分かっておらず,結局5トラック目を入れる事が出来ずに,ここであきらめてしまったのでした。

 ということで,出来上がった曲はとても短く,楽器の数も少ないまま,ベロシティの調整もパンの調整も,各トラックのレベルのバランスも取る事が出来ないままあきらめたので,なんだか「ミュージ君」で譜面通りに打ち込んだ素人丸出しの音楽になってしまいました。

 とても悔しいですし,いやいやこんなもんじゃないのよ,と言い訳をしたいところです。

 ところでQX5は,データを蓄積するSRAMがバッテリーバックアップされていたので,電源を入れればすぐにデータを再生出来たのですが,QX5FDはバックアップがないのですね。手に入れてから初めて知りました。

 電源を入れる前にFDにデータを記録し,再生したいときにはFDからのロードをしないといけないということなのですが,ステージで使う時に,そんな面倒な作業をしているだけのゆとりってあるものなんでしょうか。もしロードエラーが起きてしまったらアウトですし,そもそもFDを忘れてきたらもう終わりです。

 複数の曲を演奏するときにはFDでロード出来ないとダメですから,QX5では話にならないわけですが,QX5FDにバックアップ機能を付けてくれれば良かっただけなのになと,今更ながらに残念です。

ロシアより愛をこめて

  • 2016/10/31 10:12
  • カテゴリー:make:

 さて,先日のKT-1100Dの再調整の件で,半導体を少しばかり確保そしておこうと思いました。LA3350は,たまたま秋葉原の店頭で買えたから良かったものの,手に入らないともうおしまいだった部品なわけで,代用可能なものでない限り,困る前に手配しておくと幸せになれるというのが,長く生きてきた結果学んだものの1つです。

 まず手配しようとおもったのは,このころのケンウッドのチューナーの要である,アナログ乗算器です。

 MC1495という定番のICで,古くからあるメジャーなものですから,高価であっても入手は簡単だと思っていました。1つ違いのMC1496なんか,新日本無線がセカンドソースを作ってくれているくらいですし。

 調べて見ると,入手などとんでもない状態であることがわかりました。

 どうやら生産中止。世界中のどの部品屋さんでも在庫はなく,もともと高価で特殊な用途に使われた高性能部品だっただけに,似たようなICはいくらでもあるのですが,このICに限ってはほとんど見かけません。

 また,電子楽器に使われたICでもあり,ヴィンテージ電子楽器という特殊な市場で取引される部品の1つとくれば,もう価格なんてあってないようなものです。私は絶望しました。

 しかし,面白いものですね。MC1495でgoogle先生に聞いてみると,ロシア製ならあるよと教えてくれるじゃありませんか。

 ロシア,あるいは東欧圏においてもICが生産されていたことに疑問はないと思いますが,アメリカや西ヨーロッパのデッドコピーが生産されていたことは,当時の鉄のカーテンのせいもあり,あまり知られていません。

 旧東ドイツ製のZ80とか,結構マニア向けのものが珍重されているという話も聞いたことがあります。

 MC1495相当品である,ロシア製のICの名前はKR525PS1Aとのことです。

 10個で1400円ほど。なんとamazonで注文可能。470円ほどの送料,わずか1週間でロシアから届くそうです。ほんまかいな?

 まあ全部で2000円ほどですし,騙されたと思って買ってみましょう。いやはや,旧共産圏の半導体は初めて買いますね。大丈夫なのか・・・

 果たして,10日ほどで届きました。すごいですね,本当にロシアから自宅まで届きました。見たこともない相手の姿をなんとなく想像して,なんだかあったかい気持ちになりますね。

 電子メールではなく,封書で海外の友人と文通なんていうと,毎回こういう気持ちになるんだろうなと思いました。

 とはいえ,先日書いたようにKT-1100Dがまともに動いていない状態だったので,このICに交換することもしていませんし,他に動作の確認をする方法もありません。型名と数量があっていること,ピンの状態から少なくとも外し品ではないこと,でも変なマーキングがあったりなかったりでとても不安なこと,そんな複雑な想いが交錯しながら,私の机の上に置かれています。

 プレミアが付いていない状態でも,MC1495というICは数千円しました。怪しげな互換品とはいえ,これが本当に動くならば,とてもお買い得だったという事になるでしょう。いずれ確かめてみたいと思います。

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