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PC-386BookLをカラーモデルとして復活させる

 ワンダースワンを手始めに次々に襲いかかる恐怖のビネガーシンドローム。偏光フィルムの交換以外に修理の方法がないこの問題は,交換可能な新品の偏光フィルムが手に入るかどうかという問題に始まり,ホコリや気泡を避けて一発で綺麗に貼り付けるという,非常に難しい作業に打ち勝たねばなりません。

 もちろん,それらの作業中にLCDそのものを壊してしまえば元も子もないわけで,フレキを切る,フレキがガラスから剥がれる,ドライバICが壊れる,ガラスが割れるなどに気を遣いながら作業をするのはなかなか難しいと思います。

 満身創痍で,次から次へと壊れていく状況に抗い,頑張ってここまで復活させたPC-386BookLを,先日LCDのフレキの切断で失った悲しみは大きく,どうしたものかとこの年末年始,考え込んでいました。

 外部ディスプレイを繋いでやればもちろん使う事が出来ますから,捨てるという選択肢はありません。しかし,HDDにFDD2機搭載という1990年代のフルスペックで,2MBのプロテクトメモリを装備した486(Cx486SLCですが)マシンがディスプレイまで含んだ「オールインワン」になっている,電源さえ与えれば即当時の環境が甦るというメリットは捨てがたいものがあります。

 加えて,今はもう世の中に存在しないDSTNのモノクロLCDには,なんとも言えない味わいがあり,私にとっては見にくさを越えた魅力があります。これを失ったことはなかなか残念なことでした。(青/白のLCDはまだちょっとした小さいディスプレイで使われていますが,200ラインを越えるLCDでSTNはもう見られないと思います)

 しかしこればかりは復活に同じ物を手に入れる意外に方法はありません。同じLCDを手に入れるのはほぼ無理,それこそ同型機のジャンクを手に入れるしかありません。一応ジャンクも探しましたがオークションには見当たらず,もし仮に出品されていても高くついたりLCDそのものがだめになっていたりする可能性も考えねばなりません。

 ここは1つ,古いLCDにこだわらずに,なんとか「オールインワン」を維持することを目指してみましょう。(あ,オールインワンというキーワードは,1980年代初頭のパソコンを知る人にとってはおなじみで,ディスプレイやデータレコーダまで搭載したMZ-80シリーズが他の機種との差を印象づけるものとして,強力にプッシュしていた言葉でした)

 以前から考えていたのは,入手しやすくなっている10インチクラスのLCDを移植出来ないだろうかということです。幸いにしてPC-386BookLの時代のLCDは厚みが必要でしたし,バックライトのインバータ基板も大きいので,蓋の部分にスペースがたくさんあります。

 なので,画面のサイズさえ適合すれば,あとはなんなく組み込めるはずです。

 とはいえこれはあくまで物理的な話。電気的な話がそもそも立ちはだかっています。もとのLCDの信号を使うことは絶対にと言っていいほど無理ですから,なんらかの方法で画像信号を用意し,LCDに表示させることはこの話の前提となります。

 適当な物がないかと探してみると,10.1インチのLCDモニターが使えそうでした。1024x600ピクセルという前時代的なTFTのLCDで,HDMIとVGA,それからNTSC/PALが入力出来るものです。お値段はamazonなら13000円ほどもしますが,あるお店で同じ物が7000円ちょっとで手に入りました。

 届くの少々時間がかかってしまいましたが,手元に来てまず試したことは,このディスプレイのVGA入力が24kHzのRGBに対応しているかどうかです。もし対応していればPC-386BookLの外部ディスプレイの信号をそのまま使うことが出来ますが,もしだめだったら変換基板を介する必要があります。

 さすがに変換基板まで組み込むのはもったいないので,一度VGA入力を外に出し,外部に変換基板を置く方法を取ることになります。オールインワンにはなりませんが,24kHzが日本以外で使われたことは希であり,海外製のディスプレイが24kHzに対応しないという事は今に始まったことではありません。

 果たして試してみるとなんと映りました。安い割に24kHzに対応していたみたいです。ならばと15kHzを入れてみましたが,これは未対応でした。残念。

 もしも15kHzのRGBまで対応しているというのであれば,それはそれで貴重なので組み込むのやめてしまう,あるいは組み込んでも一度VGA入力を外部に引っ張り出して汎用性を維持することも考えていましたが,24kHzまでしか対応しないだなんて,まるで今回の改造のために生まれてきたようなものじゃありませんか。

 これで覚悟は決まりました。組み込んで使いましょう。

 まず,LCDや部品の配置を考えます。画面を表示させて,表示内容が枠で隠れてしまわないような位置を探して固定するのですが,なんと上下がギリギリ。左右方向は問題がありませんが,表示サイズを調整出来ないディスプレイなので,危ないところでした。

 LCDを両面テープと接着剤で固定したら,ドライバ基板をLCDの上側に固定し,配線を取り回します。このLCDはVGA入力がUSBのMiniBを流用しているのでコネクタも小さく楽ちんです。

 これに電源のケーブルの2本を取り回して長さを揃えて切断します。その先に10ピン程度のコネクタをハンダ付けし,メンテ姓も確保しておきます。

 次に考えるのはディスプレイの操作キーです。電源のON/OFFはもちろん,入力切り替えや画質の調整で頻度は高くないものの必要になる操作キーは,PC-386BookLに穴を開けることになるので出来れば用意したくありません。

 幸いにもこのLCDには赤外線リモコンが付属していて,これですべての操作が可能です。受光部は操作キーの基板についているのですが,受光部だけはコントローラ基板に直接繋がっているので,特に操作基板の回路が必要になっているわけではなさそうです。

 なので,受光部を直接コントローラ基板に繋いで試すと,ちゃんと動きました。これで操作に関しては問題解決です。

 もとのLCDの明るさやコントラストを調整するスライダの一部に3mm程の穴を開け,スライドさせると穴が出てくるようにした上で受光部を固定します。

 スライダは動かせるように,もとのインバータ基板を外さず,ダミーで残しておきます。これで綺麗にまとまりました。

 さて,次はとうとう本体側の改造です。外部ディスプレイの信号を取りだしてVGA入力に入れるというのが作戦ですから,メイン基板から信号を取り出す必要があります。従って全バラシです。

 メイン基板にマウントされているD-SUBの15ピンから出ているアナログRGB信号から,RGBの各信号とHとVの同期信号の5本とGNDの計6本を,コネクタの足にハンダ付けして直接取り出します。そしてケーブルの長さを調整して端っこにコネクタをハンダ付け。

 電源は12Vから15Vまで入力可能だそうなので,電源の容量を考慮しなくていいようにACアダプタからの入力のところから取り出します。本体の電源スイッチに連動させるために本体の基板から12Vを探して供給することも考えましたが,安全性を考えるとこれがベストでしょう。

 長さを揃えてこちらもコネクタにハンダ付けし,テストを行うとあっさり表示ができました。

 あとは組み立てて完成です。取り回しによってはノイズで画像が乱れることもあるのですが,上手く取り回して回避します。

 気を付けないといけないのは,PC_386BookLの外部ディスプレイの信号は,初期状態では出力されないという事です。バックアップのための電池が切れると初期状態に戻ってしまうので,こうなるともう全く画面が見えなくなります。

 起動時にHELPキーでメニューに入っても,そこからの操作が全くできなくなるのは辛いので,ブラインド操作で外部ディスプレイの信号が出るようにしないといけません。

 簡単なのは,DOSをフロッピーから起動し,CTRL + HELP + Dを押すことです。フロッピーから起動しないといけないのは,初期状態だと内蔵HDDの設定が256バイト/セクタに戻ってしまうからで,こうなるとHDDからの起動が出来なくなるからです。

 一度外部ディスプレイの信号が出漁されればあとはHELPキーで起動するメニューでも操作ができますので,HDDの設定などを変更して再起動。これで大丈夫です。

 ここまで出来たらあとは実際に使ってみます。安い割にLCDの品質は良好で,最初のTFTモデル,PC-9801NCを見た時の感動が甦ります。

 PC-9801は登場時からカラー表示が前提のマシンでしたから,やはりカラーはいいものです。私は滅多にゲームはやりませんが,ゲームも楽しめそうです。(あ,FM音源がないか)

 確かに当時の雰囲気を存分に味わうことの出来るDSTNの表示も恋しいですが,カラーの鮮やかな表示は,これはこれで楽しいものです。本体の重量も手に持った瞬間にわかるほど軽くなっていますし,最終的にアップグレードされた形で復活するというのもありではないかと思います。

 で,ふと気になったので調べてみると,PC-386BookLには,BookLCとBookLXというカラーモデルがすでに出ていたんですよね。LCがTFT(エプソンとしてはTFTとはいってませんが),LCがSTNモデルではないかと思いますが,それぞれメインメモリが2MB追加されているので,今の私のPC-386BookLと同じ状態です。

 そういう意味では,Bookタイプという今となっては存在価値のないプラットフォームにおける完成形として,当時既にカラーモデルが位置づけられていて,その価格にもかかわらず市場に投入されたという事でしょう。存在が空想の物ではなく,実際にカラーモデルが少数とは言え作られていたわけですから,私のPC-386BookLはオリジナルの価値や魅力を損なう物ではない,ということにしておきましょう。

 レトロマシン,ヴィンテージマシンのレストアは,オリジナルに戻すことが基本です。勝手な改造やアップグレードは御法度ですが,今有る部品で当時の状態を取り戻すことは十分に認められると思います。

 ということで,今度こそだめだと思われたPC-386BookLですが,まさかのカラーモデルとして復活を遂げました。これで本当にレストアが終わればいいなあ。

 

PC-8201のLCDを復活

 1983年,PC-8001,PC-6001,PC-8801でまさに帝国を築こうとするNECがハンドヘルドコンピュータとして世に問うたマシンがPC-8201です。

 A4サイズ,単三電池4本で駆動,デスクトップ型と全く同じキーを備えたキーボードに大画面のLCD,そしてN-BASICと互換性のある強力なBASICという本気のマシン。

 その上レッド,アイボリー,シルバーという,どれも従来のパソコンとは一線を画す3色の本体色で,当時中学生だった私には,138000円という価格もあって,とてもまぶしく見えました。

 PC-8201に搭載されたN82BASICもマイクロソフト製のBASICですが,このBASICこそ,ビル・ゲイツが最後に書いたコードをを含んでいることでも知られています。

 さらに,PC-8201にはタンディとオリベッティに兄弟がいて,すべて京セラのOEMだったということもエピソードの1つです。

 そんなPC-8201ですが,単三電池で動かすためにすべてCMOSのICで構成することになります。Z80は当時まだCMOSでは手に入らず,CMOS化で先行していた沖電気の8085が搭載されています。

 このころの電池で動くマシンのCPUの選択肢には制限があって,PC-2001に至っては8080系でさえありません。そういう過渡期のマシンというのも,実は結構面白いものだと思います。

 さて,そんなPC-8201ですが,私が入手したのは随分後です。とはいえ入手から30年も経過しています。当時既に傷んでいましたが,この30年でさらに劣化が進んでしまいました。ケースもすでに塗装が剥げてしまっていますし,黄変も見られます。

 その劣化のうち,最も深刻なのは先日発覚したLCDのビネガーシンドロームです。発見したときの悲しさといったら・・・

 表示は正しく出ていますが,画面の中央に色の違う楕円が浮き出ていて,いかにもLCDがだめになっている感じがします。こうなると時間の問題で,分解してLCDを取り外しきちんと確認してみると,ビネガーシンドロームに特徴的な,すでに斜めのキズのような物が浮き出ていました。

 ここまで来るともう偏光フィルムの交換しかありません。PC-386BookLのLCDの修理に失敗した悲しみが癒えないまま,私はある一面ではPC-386BookLよりももっと大切なマシンの修理に進むことにしたのです。

 作業そのものは簡単。ますはLCDの端っこをめくって,手持ちの偏光フィルムが使えるかどうかを試してみます。悲しいかな,このLCDは先日入手したA4サイズの偏光フィルムを斜めにしないとコントラストが最大にならず,結局1枚の偏光フィルからは斜めに1枚分しか採ることが出来ない,無駄の多い結果となってしまいました。

 大きさを測って切り出した後は,元の偏光フィルムをLCDからエイやっと剥がしてアルコールで綺麗にします。

 あとは覚悟を決めて,新しい偏光フィルムのシールを剥がして貼り付けます。少々大きめに切り出しておくと,少し斜めになったくらいで失敗したりしないのでオススメです。

 書くと簡単ですが,ホコリは入る,気泡も入る,斜めになって端っこが張り切れないととにかく失敗の可能性が高い作業です。しかも偏光フィルムの糊は一度貼ると使えなくなるので,チャンスは一度きりです。それでも偏光フィルムが複数枚とれればまだ安心なのですが,前述の通りA4の偏光フィルムから1枚しか採れない以上,本当に一度きりです。

 こういう時大体失敗知るのが私なのですが,今回はホコリは入らず,気泡も数カ所で済みました。強く指で押すと気泡は消えるものなのですが,押しすぎるとガラスが割れてしまうので注意が必要です。

 しかし,3ヶ所の気泡が消えず,うち1ヶ所が黒ずんだ謎の気泡です。しかし,これを深追いするとろくな事がないと,これまでに痛い経験を重ねてきたもう一人の私がやめておけとブレーキを踏んでいます。

 なんとかしないとと思う気持ちを抑えて,今回はこのままでいきましょう。余った端っこを少し切り落とし,LCDは一応完成。本体に組み込んで組み立てれば作業終了です。

 劣化した偏光フィルムを交換したのですから,視認性も向上。非常に見やすくなりました。ますます愛着がわいてくるから不思議です。

 問題の気泡は,なんと小さい物は3日ほどで,黒ずんだ物でもどういうわけか5日くらいで綺麗に消えてなくなりました。やはり深追いは禁物でした。希望については神経質になることはなかったということです。

 そんなわけで,今回のビネガーシンドロームには勝利。PC-8201は無事に復活することができました。登場から40年以上ですからね,自分でメンテ出来る人しかレトロマシンを所持してはいけないと,そんな風に自分に言い聞かせて,今後も維持していこうと思います。

PC-386BookLもビネガーシンドロームの餌食に

 LCDに確実に発生する,そしてとても恐ろしい現象,ビネガーシンドローム。ある時期に生産された映画や写真のフィルムに頻発し,一度発生すると修復の手段はなく,情報を救い出す方法はありません。

 見た目の悲惨さに加えて,その強烈な臭いはまさに死の臭い。どれほどの関係者が心を折られてきたかわかりません。

 そしてその恐ろしいビネガーシンドロームは四半世紀を経て,LCDにも発生しています。言うまでもなく,LCDは機器の小型化と低消費電力化を高い次元で達成させて立役者ですが,同時にその機器の寿命を決定するものにもなったというわけです。

 汎用の部品と違い,LCDはほぼカスタムメイドです。劣化したLCDは交換以外に方法がなく,従ってLCDが劣化した機器を救う手立てはほぼありません。

 ビネガーシンドロームで劣化するのは主に偏光フィルム,それものり付きの物ですので,これを交換することで復活させることが出来る場合もあります。しかしそれは運が良ければの話です。ゲームボーイのように数が出ていて,かつ今でも需要があるものは偏光フィルムが手に入るのですが,多くのLCDでそれは望めないでしょう。

 私の場合,ワンダースワンシリーズすべてと,ゲームボーイアドバンスがビネガーシンドロームの餌食になっていました。一説では,ビネガーシンドロームが1つ発生すると,周囲のLCDにも伝染するらしいので,結果的に全滅になるそうです。

 これは偏光フィルムを交換,あるいはLCDを最新のIPAに交換することで解決したわけですが,コロナの間に失血を注いで復活させたPC-386BookLが,まさかのビネガーシンドロームにやられていました。

 ビネガーシンドロームに特徴的な,あの酸っぱい臭いと共に,なぜか斜めに入る傷のようなものが見つかったので,先日勇気を持って分解しました。

 予想は的中し,派手なビネガーシンドロームに蝕まれていました。

 PC_386BookLのLCDは640*400ピクセルのSTNのモノクロです。DSTNというちょっと珍しいタイプで,画面の上下を分割し,200ラインのLCDを2枚同時に駆動するという形で400ラインを実現します。

 なんでそんなことをするかといえば,STNは200ラインくらいが駆動限度だからです。
STNでピクセル数の多いLCDを作る必要がなくなった現代において,完全にロストテクノロジーになったと言えるでしょう。

 偏光フィルムは通常のSTN用の物で十分なので,試しに手持ちの偏光フィルムで端っこを剥がして見てみると,綺麗に表示が出ます。容易に手に入る偏光フィルムで修理可能です。

 喜んでA4サイズの偏光フィルムを注文,届いた時点で早速作業開始です。

 LCDを分解し,偏光フィルムを剥がします。面積が大きいため,ビネガーシンドロームで発生する酸っぱい臭いも尋常ではありません。思わずむせてしまいました。

 あらかじめサイズを合わせて切っておいたフィルムを綺麗に貼ります。ホコリが入らないように,汚さないように貼るのですが,想像以上に綺麗に貼ることが出来ました。

 ここまで実にスムーズで,ウソのようです。

 仮組みして動作テストを行うと,悲しい事に左の縦2ラインが表示されていません。どうも壊してしまったみたいです。

 どうせ,フレキがLCDのガラス面から剥がれたんだろうと,最近手に入れたフレキを熱で溶着する真鍮製のコテ先を取りだし,交換したハンダゴテでフレキに熱をかけました。

 試してみると・・・なんということか,さらに状況が悪くなっています。左は縦に?ライン,中央に8ラインが2本,これはもう完全に死んでます。

 おかしいなあ,こんなところ触っていないんだけどなあ,と改めて確認すると,なんとフレキが切断していました。熱を加えるときに他のフレキも含めて曲げたのですが,フレキの劣化が進んでいて,一度折り返しただけで切れてしまったようなのです。

 万事休す。

 こうなると,もう手はありません。フレキはドライバIC(フリップチップ)の基板の一部として出ていますので,この部分だけを交換したり,手配選するのはどう考えても無理です。

 仮に手配選できても,このフレキはポリイミドに銅箔のタイプではなく,フィルムにカーボンのタイプです。ハンダ付けなど全く不可能です。

 ああ,なんということか。

 ゴミも入らず,綺麗に貼れて,しかも今出ている下半分の表示は非常に綺麗で,STNならではの味があります。これで使える事を夢見ていたので,とてもがっかりしました。

 そもそも,このPC-386BookLも,これまでとても頑張って死の淵から甦らせてきたものです。ほとんど意地と言ってもいいほどで,今の私に同じ事をやれと言われても,絶対に無理だと思います。

 その修理範囲に,LCDも入っていました。LCDの駆動回路はCRT用とは別に用意されていて,パターン切れで清浄な画面が出ない物を波形を追いかけて修理しました。LCD用の電源も壊れていたので修理,LCD自身もキズがあったのでフィルムを貼って対策しました。

 これだけやったのも,あのSTNの表示が見たかったから。1990年代の雰囲気は,あのコントラストが低く,視野角の狭い,青と白色のLCDに宿っているのです。

 しかし,とうとうビネガーシンドロームに屈しました。

 ジャンクのPC-386BookLを探してみましたがあいにくありません。仮にあってもLCDは同じように劣化しているはずで,今回と同じように鳴ってしまうことも避けられないでしょう。

 仕方がありません,オリジナルのLCDを使うことは諦めます。

 なんと恐ろしいことか,ビネガーシンドローム。私から大好きな物をどんどん奪っていきます。

 そして,その恐ろしい魔の手は,PC-8201にも・・・続く。

 

 

ワンダースワン復活の道~その4・完結編

 ワンダースワンカラーのLCD,ようやく決着しました。手間もお金もかかってしまって,結局何をやってるんだろうと思うこともありましたが,LCDの綺麗さを見ると,やってよかったかもなあと思ったりします。

 さて,前回壊してしまったLCDだけを買い直すことは失敗に終わり,もう一度コントローラ基板ごとフルセットで買い直すことにしました。円安が進行してしまったため前回よりも価格が上がっていましたが,それは仕方がありません。

 今回は配送のトラブルもなく(とはいえエスポ便はまたも深夜に配達してくれたわけですが),無事に予定日よりも前に到着。動作テストも良好で,今回は前回の反省から,とにかく余計な事をしないと誓って作業開始です。

 風防は前回取り付けてありますので,今回はホコリをよく取った上で,LCDをケースに貼り付ける作業からです。一番問題となるホコリ,そしてうっかり触って表面を汚してしまうということがないように,慎重に,でも手早く作業を進めます。

 上手くいったので,LCDとコントローラ基板と繋ぎ,メイン基板を重ねます。付属の両面テープは,もともと基板についていたスポンジよりも少しだけ薄いので,コントローラ基板の厚みを上手く相殺してくれるだろうと,スポンジを剥がして両面テープに交換します。

 上手く基板を固定できたら,今度はコントローラ基板に電源を供給する配線を行います。メイン基板にあるDC-DCコンバータモジュールから2本,細い線で引き出してコントローラ基板に取り付けます。この辺は商品ページにあるとおりです。

 前回は配線の取り回しが悪かった(最短で配線したら基板とケースのリブに挟まってしまった)ので,よく考えて配線を回します。

 これもうまくいきました。あとはフレキの途中にあるタッチパッドをテープでケースの裏側に固定します。このタッチパッド,短押しで画面の明るさを段階的に変更,長押しで画面モードを変える機能があります。

 画面モードは,カラー,カラーで縦のスキャンラインあり,カラーで横のスキャンラインあり,モノクロ,を繰り返して変更出来ます。

 このLCDは3インチという小さいサイズのくせに480*320ピクセルの解像度があるんです。ワンダースワンの解像度は224*144ピクセルですから,縦横をそれぞれ2倍して448*288ピクセルとし,長辺に余った32*288ピクセルのエリアに,ワンダースワンに特徴的なアイコンの固定パターンをドットマトリクスで表示する仕組みです。良く出来ています。

 スキャンラインは1本間引いて黒を表示すれば,解像度を落とすことなくオリジナルのLCDに近い表示が出来る事になります。これもなかなか憎い工夫です。

 とはいえこのスキャンライン,画面の輝度が半分に落ちてしまいます。それだけ画面が暗くなりますし,明るくするにはバックライトの輝度を上げねばならず,結局電池寿命に影響します。

 もともとLCDですので,そんなにスキャンラインが目立つわけではありませんので,私はスキャンラインはなしで使うことにしました。せっかく改造するんですから,IPSという高画質LCDで,その上倍の解像度で表示するという高画質を堪能しましょう。

 さて,今回はスムーズに改造が出来ました。GUNPEY EXをテストプレイしますが,これがもう素晴らしい画質で,感動的です。登場から経過していますが,あの見にくいSTNカラー液晶が,筐体のサイズを変えることなくIPSにバックライトのカラー液晶になるんですから,技術的な進歩はすごいなと思います。

 そして,その進歩が主に中国企業の努力によってなし得ているというのも興味深いです。もともとSTNのカラー液晶だって,当時は最先端のLCD技術だったはずです。

 それが,画質,電力,価格的にも追いつかれて追い越されてしまい,セット全体の価値が大きく向上するという結果に繋がっています。もう,中国の技術力なしに世界は動かないのかも知れません。少なくとも,世界の技術の中心に日本はいません。

 消費電力は増えてしまうので,駆動時間が短くなると言う話は聞いています。しかし,フル充電したNi-MHで3時間ほど遊べるようですし,ワンダースワンを長時間遊ぶこともしませんので,これで十分だと思います。シミュレーションゲームやRPGで遊び始めたら,なにか対策が必要かも知れません。

 ということで,ビネガーシンドロームの同時発生で右往左往したワンダースワンの復活祭りは,これでひとまず終了。

 モノクロの初代ワンダースワンは,緑/青で復活。ワンダースワンカラーはIPS化,スワンクリスタルはオリジナルと同じ状態に復活。部品取りに使ったスワンクリスタルは,電池の液漏れで死んだメイン基板と,ほぼ無傷のLCDが手元に残りました。

 費用はそれなりにかかってしまいましたが,今出来ることはとりあえず全部こなしたと思います。

 さてさて,実は怖くて様子を見ていないLCDがあるのです。PC-386BookLです。夏頃だったか,ちらっと見た時,LCDに斜めの線が入っていたことに気が付きました。

 これってもしや・・・しかし,見たくない現実から目を背けて,私はその場を立ち去ったのですが,今回のワンダースワンが落ち着いたことで,勇気を持ってPC-386BookLを見ました。

 結果は・・・恐ろしいことになっていました・・・続く。

NASの10TBのHDDとamazon

 今回はワンダースワンの話から少し離れて,うちのNAS(QNAPのTS-231P)についてです。

 ちょうど今年のamazonのブラックフライデーが終わろうとしているとき,突如NASから警告メールが飛んできました。なになに,ドライブ2でリードエラーだと!

 うちはいっちょ前にRAID1で運用していますので,エラーが出ても深刻なことにはなりませんが,この手のエラーというのは放置するとボロボロと壊れていくものです。ですが,これには思い当たる節もありました。

 実は,この8TBのHDDは,WD BLUEなんです。そう,2台とも,です。

 もともと,TS-231Pを導入したときには見栄を張ってWD REDの4TBを導入したのです。振動が異常なほど大きかった1台は初期不良という事で交換になりましたが,運用に入ってからはとても堅牢で信頼性も抜群,まだまだ使えそうな状況なのに,容量不足で6TBに交換することになりました。

 この6TBもWD REDだったのですが,RAID1の最大の問題は,容量不足という「運用上の寿命」を迎えた場合には,一気に2台のHDDがゴミになることだなあと思いました。

 しかし,この6TBも簡単に一杯になり,2023年の頭には残り容量が5%を切るようになってしまいました。次のamazonのセールで8TBに交換しようと思って迎えた4月,WD REDの8TBが思った以上に高額であることに私は迷いました。

 これがWD BLUEなら1台14000円ほどです。安い。しかもCMRです。

 せっかく倍のコストをかけてRAIDを組んで冗長性を確保しているのだから,安いHDDをどんどん交換して回して行くというのもありだよな,とWD BLUE導入に傾く私は,もともとWDのHDDが信頼性も高いし,もし3年も使えたら大もうけだぜウシシ,というスケベな気持ちも忘れてはおりません。

 届いた2台のWD BLUEの8TBのうち,1台はまたも初期不良Niあたり交換しました。届いたものもかなり大きな振動があって,これはハズレだったなと思ったのですが,仕方がありません。

 そしてその数日後,私は知らなかった事実を突きつけられます。WD BLUEはある機能の設定のために,NASで使うと壊れやすいという話です。

 それは,IntelliParkという機能です。ある時間の間アクセスがないとヘッドを自動的に待避する機能だそうで,回転数も落とすので消費電力も下がるという事で,WDのHDDに特徴的な機能です。

 問題はそのアクセスがなかったときの時間です。聞いた話だとREDが300秒なのに対し,BLUEはなんと8秒。8秒アクセスがなかったらヘッドを待避してしまうのです。

 かなり極端だと思いますが,ホームユースならむしろ良いかもしれません。連続したアクセスがないなら,きっとその先のアクセスもないでしょう。それに24時間運転なんかやりませんし。

 しかし,これをNASに使うとどうなるか。NASはアクセスが頻繁でしかも24時間運転です。8秒という時間は実に絶妙で,待避したと思ったらすぐにまたアクセスされるということが繰り返されるわけです。

 こうなると心配なのは,ヘッドロードの寿命です。ヘッドのロードは機械物ですので当然寿命があり,30万回くらいと言われています。天文学的な数字と思いきや,実はそうでもなく,WD BLUEをNASに使って,160日程度で20万回に達するという話も耳にしました。

 工業製品ですから30万回きっちりで壊れるものでもなく,100万回持つ物もあれば,10万回で壊れるものもあると思いますが,一応設計保証値は30万回でしょうから,IntelliParkはその30万回の寿命を削って消費電力の削減に割り当てたと考えてもいいでしょう。

 回数はSMARTのロードサイクルカウントを見ればわかりますが,実は私のWD BLUEもそろそろカウントが0になりそうな感じだったのです。稼働時間は20.5ヶ月なので620日ほど。ということは15000時間ほどです。

 さすがに8TBだと容量的にもまだなんとかゆとりもあり,せめて2年は使いたいなあと思っていたのですが,SMARTが信頼性を問題にして警告を出すのも間近というこの状況は,警告が出たらどんどん交換して行こうという作戦が,昨今の円安や値上がりも相まって決して成功とは言えなくなってしまいました。

 それにしても,こんなに簡単にロードサイクルカウントが消費されるというのはまずいですね。一時期この機能をOFFにすることが世界的に流行ったみたいですが,私はすでにNASに組み込んで運用を開始してしまったので,そのままで使っていたのです。

 もちろん,今回のリードエラーがIntelliParkと関係があるとは言えません。もともと24時間運転を想定していないHDDをNASで酷使したんですから文句は言えませんし,そもそもハズレだったのかも知れません。しかし,やっぱり2年持たなかったというのは残念です。

 悔しいですが,ブラックフライデーが後数時間で終わるというところで警告が出たのも何かの啓示。さっそく8TBのWD BLUEを買うことにしますが,想像以上の値上がりに加えて,在庫切れ&納期は1月半ば。これでは話になりません。他社の8TBを検討するも,2万円超えで手が出せず,状況は思っていた以上に厳しいものであることを思い知りました。

 この際10TBに増量するかと10TBのHDDを探してみると,これがまた高価。しかも2台ですので,とても手が出せません。

 なんとかならんかとトボトボとamazonを彷徨っていると,10TBなのに18500円という激安のHDDが目に入りました。Ultrastar WD10EZAZという,ちょっと見慣れないものです。再生品なので安いというのはわかりますが,それにしてもこのいかつい外観はなんだ?

 なになに,NASやデータセンターで使われていたヘビーデューティなHDDで,新品と同じ状態にした上で1年保証。

 さらに調べてみると,もともとHGSTのデータセンター用HDD,Ultrastar He10の系譜で,あのヘリウム充填のHDDだというではありませんか。DC HC510の回転数を7200rpmから5400rpmに落としたものらしく,キャッシュは256MBと変わらず,耐久性も抜群です。

 24時間運転を前提にしたプロ用HDDですので,堅牢で低消費電力,うちのNASにはもったいないくらいのお嬢様でした。

 これなら2台買っても37000円。10TBになって信頼性も向上するなら出せない金額ではありません。しかも在庫ありで納期も早い。マケプレですがamazonの発送で,保証もあり,レビューも悪くはありません。

 実質選択肢はこれしかないと,2台手配をしました。

 さて,届いて確認したところ,2台ともシリカゲルの入った帯電防止袋に,きちんと密封されて届き一安心。リファービッシュ品であることと,2023年2月という日付がありましたが,これが製造を意味するのか再生を意味するのかはわかりません。ただ,見た目は新品とかわらず,とても綺麗です。

 それから,HGSTのデータセンター用のHDDに有名な話で,電源ピンの一部の使用が変更されていて,リセット端子になっているそうです。サーバーの電源を落とさずにHDDをリセット出来るようにしたためということですが,この端子に3.3Vが繋がっている一般的な電源だとリセットが解除されず起動しないので,オープンになっているような電源ケーブルに変換して使う事が広く知られています。

 このHDDにも対策用のケーブルが付属しています。NASへの組み込みでは関係ないので使わないことになるでしょう。

 クッション材から出てしまっていたHDDを先に試すことにし,まずはNASを停止させます。そして問題となっていたドライブ2を抜取り,交換しNASの電源を再投入します。

 なにも問題なく起動し,RAIDの再構築が始まりました。15時間後に完了ということで,翌日に確認するとなにも問題なく動作しています。異音もなく静かですし,振動もほとんどありません。WD BLUEの8TBはとにかくブーンと振動がうるさかったので,やっぱりハズレだったんですね。

 簡単なテストを行ってNASをシャットダウン。いよいよドライブ1を交換して再起動しますが,様子がなにやらおかしいです。

 まずカリカリという異音がおさまりません。それもかなり大きな音が出続けています。振動も大きいようです。なにより,NASがいつまでたっても起動しません。

 仕方がないので強制的に電源をOFFし,問題のドライブを取り外して,別のケースを用意して単独で動かしてみます。

 やはり状況は悪く,ずっとカリカリいってますし,Macに繋いでも認識しません。すでに夜10時半ですが,不幸にもまたも不良にあたった私は,大慌てでamazonに連絡です。

 こういう場合は,電話で話が出来ると助かります。amazonは夜でも話が出来るのでとてもありがたいです。

 交換にはメーカーの証明が必要になる場合もあるのですが,今回は異音がすると言えばすぐに返品の話になりました。交換を希望しましたがマケプレの商品だということもあり,一度返品して買い直すことになりました。

 ブラックフライデーの時とは価格が違うんだけど,と話をすると,その場で差額をギフトカードで補填してくれた上に,返品の手続きもその場で済ませることができ,翌日に集荷してもらえることになりました。amazonすごいです。

 実は,ポイントアップキャンペーンも補填してもらえないかとダメモトでお願いしたのですが,これは却下されました・・・

 というわけで,こちらの不良という言葉を全く疑わずに信じてくれて,差額も補填した上で,返品の手続きまで済み,この間全く嫌な気持ちにならないという担当の方には,感謝しかありません。

 実のところ,amazonでこうしたサポートを受ける度に,期待以上の対応を頂くのですね。丁寧だけど杓子定規なものでもなく,こちらの要望に出来るだけ応えようと臨機応変に提案をくれます。それがかつてのamazonを含めた通販業者のイメージ,いうなれば「自分は悪くない,客の落ち度だ,でも対応してやってる」という店側の心理と,これに由来する電話してくる客は面倒な客,という観念がなく,電話してくる客は困ってる客という当たり前の話と向き合った上で,その問題を出来るだけよい形で解決しよう,という気持ちからブレないんですね。

 担当者によるのかなと思うとそうでもなく,これまで私が何度か相談した担当の方は皆,同様の気持ちの良い対応をして下さいました。はっきりいってこれ,日本一だと思います。

 先頃,公正取引委員会にamazonは怒られましたが,これまでに何度か注意されたことも含めて内容を見てみると,決して消費者の不利になるような話から来ているわけではないんですね。どっちかというと,消費者が有利になるように,出品者に圧力をかけたりしていたことが問題になっています。

 もちろん,不正は不正ですし,理不尽で不当な扱いに苦しむ出品者がいらっしゃったことも事実ですが,これまでの自らの利益のために不正を働いてきたことを咎められたケースとはちょっと違うなと,私はそんな印象を持っていました。

 まあ,幻想かも思い込みかも情報操作かも陰謀かも知れませんが,少なくとも私が困った時に,amazonはいつもちゃんと私を助けてくれました。そんなことまでしてたら赤字で潰れるよ,と思うようなことを,amazon側から先に提案してくれるので,交渉など全く必要がありません。ついでにいうと,amazonは必要以上の謝罪はしません。謝罪で解決しようとするのではなく,最低限の謝罪で済むように問題そのものの解決を優先するからだと思います。

 かくして,実に気持ちよく安心して問題の処理が終わりました。新たに購入したWD100EZAZは問題なく動作し,RAIDの再構築を済ませて現在何の問題もなく運用に入っています。

 不良のHDDも翌日(そう,返品処理が夜10時半なのにです)にヤマトのドライバーが自宅まで引き取りに来てくれました。そして2日後に無事に返金されています。すべてがスムーズで,すべてが完璧です。

 不良は仕方がありません。でもその後の処理は人がやるものだけに,お店で差が出ます。amazonは満点です。正直すごいと思います。

 そんなわけで,HDDの不良によくあたる私ですが,amazonで買ううちはなにも心配なく変えるでしょう。20年前,当時のツクモに9GBのHDDを交換してもらう時に,散々疑われて散々ごねられ,ようやく交換してもらえたことがウソのようです。

 海外からamazonが,日本の小売りの常識を変えています。日本のオモテナシとやらは,どこに行ってしまったんですかね?

 あ,そんなもの,もともとなかったですか?

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