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DTC-59ESJにDDS4を使って死んだ話

 新しい年が始まりました。自分の好きなこと,楽しいと思えることを持っていることはとても幸せな事だと,つくづく感じた昨年でしたが,いずれ私が死んだときに,この大量のがらくたを,どうやって処分してもらおうかと,そんな不安も同時に感じて,ふと気分が沈むことも増えました。

 事故や病気で突然死んでしまう場合は,準備もなにもあったものじゃないでしょうからあきらめもつきますが,これからどんどん歳を取り,体もいうことを聞かなくなる中で,10kgも20kgもあるような大きな機材は使うも捨てるも大仕事です。

 いやね,ちょっと前まではお金と場所と技術力がある人間は,古い物品の保存に努めるのが社会的使命だとか,そういうことをいっちょ前に考えたりしたんです。それは,美術品がそうであるように,今やマンガやプラモデルといった,大量生産品であっても同様だと思うのです。

 とりわけ,昔のゲームを楽しむことが,それらを動かすハードウェアが貴重なものになることで難しくなっていく現状は深刻で,一昔前は粗大ゴミで出された古いパソコンやゲーム機が,一部のマニアによって維持されていることは,とてもよいことだと思っていたのです。

 戦後の機材をコレクションするには,動くように維持する必要があるわけで,そこには当然修理などの技術が求められます。だから,ただただ好きというだけではどうにもならなくて,お金と場所と技術が揃っていないと手が出せないのです。

 おそらく美術品も大昔はそうだったのだと思いますが,技術はお金で買うことが当たり前になっているわけで,このあたりさすがに歴史と伝統を感じます。ゲーム機や古いパソコンも,最近は専門のお店が出来てきていますので,どうもお金で技術を買うことの出来る時代が,ようやく訪れたということでしょうか。

 これら古い機材については,私は今持っている物を出来るだけ使える状態に維持することが,持っている者の責務となかば考えている節があります。たいしてお金もかからず,場所も塞がず,私のような人間には好都合なのですが,頑張っても新しい物が増える,新しい事が出来るわけではないので,最終的に手に入るのは「現状維持」にすぎず,ここが耐えられない人もいるんじゃないでしょうか。

 閑話休題。

 さる1月2日と3日には,NHK-FMで昨年秋に行われたTokyoJazz2015のダイジェストを放送していました。毎年年始にやっている放送だそうですが,私は今年から聴く事にしていました。

 というのも,いつもの生放送では,翌日に行われるライブが放送されず,ここ数年私が聞きたい人達がさっぱり放送されなくなってしまい,寂しい思いをしていたからです。特に1月3日の放送は,まさに夢のような人達が登場するものでした。

 両日とも朝11時から夕方4時45分までの放送で,この間ニュースも中止という徹底っぷり。これを途中で分断して録音するなど愚の骨頂です。

 しかし,私のDR-100mk2は2GBの制限があり,3時間ほどでファイルが分割してしまいます。これはつまらないです。そこで,320kbpsのMP3で録音することにしました。MP3ですから,音質の劣化は避けられません。320kbpsですからそんなに劣化はないのですが,精神衛生上しっくりこないのも事実です。

 番組として丸ごと録音したいという欲求と,リニアPCMで残すという欲求を同時に満たすにはどうすればいいか・・・

 放送まであと1時間というところで考えついたのは,DATで録音するという作戦でした。

 いやいや,DATは通常2時間,長時間でも3時間が限度で,これ以上だとLPモードをないはずだ,3時間だったら2GB以内なのでDATなんか意味がない,とちょっと詳しい人なら思うでしょう。

 しかし,禁じ手があるのです。それはDDS4のテープを使うというものです。

 よく知られているように,民生用オーディオ機器として登場したDATは,その価格と性能から,コンピュータのストレージのバックアップとして使われていました。これがDDSです。

 オーディオ機器としてのDATが今ひとつ市民権を得ないまま収束していく一方で,バックアップ機器としてのDDSは,ハードディスクの大容量化に対抗していく形で,次々にバージョンアップを重ねて,最終形態はテープ幅を倍にして,形まで変わってしまうという大変化ぶりです。もはやそれはDDSではないんじゃないのか・・・

 DDS1は民生用DATとテープもメカも共通です。ゆえに最大2GBが記録出来ます。今や2GBのSDカードなんか,二束三文ですよね。

 DDS2はテープを薄くし記録方式を変えて4GBに,DDS3はテープの長さは変えずに記録方式で12GBまで容量を増やしました。DDS4ではさらにテープを薄くして150mもあの小さなカセットに押し込んで20GBまで対応しました。

 このあと,DDS5と言われていた規格がDAT72と呼ばれるようになって36GBになりました。圧縮すると倍の72GBまで記録出来ますが,それでもSDカード以下というのが泣かせます。

 この後,テープを薄くして長さを稼ぐのは限界と感じたのか,テープ幅を倍にするという暴挙に出てDAT160とDAT320となりました。DAT320では圧縮時に320GBまで記録出来るようになりましたが,秋葉原で2TBのHDDが8000円くらいで買えることを考えると,もうその役割は終わったと言えて,すでにDDSの開発は行われてとのことです。

 で,もともとDATと同じ先祖を持つDDSです。もし150mもの長いテープがDATで使えたら,ウハウハものです。そう,120分のDATは60mですから,120mのDDS2でも4時間,150mのDDS4なら実に5時間も連続録音できるのですよ。

 昨今,ICレコーダーでも4GBまで1ファイルで録音できる物が出てきたので,そうなると全然うれしくないのですが,私のDR-100mk2は2GBまでです。5時間も録音できたら,それはもう録音した物を1度聞くだけでも大仕事です。

 ただし,そうは問屋が卸しません。DDS4はDATが死んでから生まれたものですから,DATでの使用など全く考慮されていません。動かないだけならまだしも,レコーダを壊してしまうかもしれません。

 民生品とはいえ,日本がバブルに沸いた時期に開発されたDATは,メカ精度も要求が高く,高度な専用LSIがバンバン投入された複雑な電気回路に,信号処理やメカ制御,果てはサーボにソフトが応用された,まさにメカと電気とソフトの三つどもえの機器です。

 DATの前後の機材では,すでに3つの技術が高次元で融合している必要がないものに変わって来ていて,カセットテープレコーダーがソフトを必要とせず,ICレコーダーがメカ的な要素を全く持たないことは,この端的な例でしょう。

 というわけで,個人的には「よくもまあこんなややこしいものを製品化した物だ」と呆れてしまうくらい,複雑なシステムであるDATにとても愛着があったりするわけですが,出てくる音はCDそのものなわけで,音質は現代にも通用するものがあります。実用品として使えるのだが,前世紀的なバランスでなんとか動いているというのが,DATだと言えます。

 このDATにですよ,DDS4をかけようというのですから,もはや無茶苦茶です。実際DDS4に関する資料を読むと,テープの厚みはDATに比べて半分以下,材質もポリエステルからPETになっているとのことです。このため,極薄のテープを安全に扱うためにメカ精度をさらに追い込み,その結果DDS1との互換性を失ってしまったとありました。

 一方,DDS4のテープで5時間,LPモードで10時間の録音を楽しんでいる人もいるようで,私も興味本位で数年前にDDS4のテープを1本買っておいたのでした。

 あいにく180分のテープは手元になく,120分のテープでは録音時間が短いということで,DDS4にチャレンジです。

 テープを先日修理したばかりのDTC-59ESJにセット,録音を開始します。別に問題なく録音が進んでいる様子で,私はあまり心配せずに,子供の昼寝に付き合っていました。

 3時間後,様子を見に行くと,問題なく録音は続いています。すごい。

 放送が終わったところで一度テープを止めますが,最後まで録音しきった方がいいだろうとおかしな事を考えて,ここからさらに録音を再開します。

 そろそろテープが終端になった頃だろうと,おやつを食べた後に見に行くと,テープが止まっています。よしよし,これでばっちり・・・

 ・・・あー,テープが出てこない!

 そうです。テープが巻き込まれてしまい,取り出せません。放送が終わった段階では問題なかったのですが,そこで巻き戻すなり取り出すなりしておけばよかったと後悔してももう遅い。

 とにかくテープを出そうとしますが,全く出てきません。無理をすると壊してしまうので,家族に非常事態を宣言し,自室に籠もることにしました。

 ラックから引っ張り出し,先日閉めたばかりの上蓋を取り外してみます。見事にテープが絡まっています。実は巻取側の摩擦が増えて,止まりがちになっていたのを見ていたのですが,どうにかなるだろうと放置したのがまずかったようで,巻き取られなかったテープがそのままドラムに巻き付いたようなのです。

 恐ろしいことに,ドラムのロータとステータの隙間にグルグルと何度も巻き付いています。ドラムが死んだことも覚悟しながら,慎重にゆっくりほどいていきます。

 ようやくほどけました。恐る恐る他のテープをかけてみます。大丈夫,ちゃんと音が出ます。ドラムは壊れていないようです。(もっともヘッドは死んでいるかも知れません。DATは2つあるヘッドのうち,1つが壊れてしまっても,とりあえず音は出ますから。)

 くしゃくしゃになった部分は最後の方なので,カセットを分解してそこから最後まで捨てることにし,切った部分を供給側リールに挟み込みます。元のように組み立てれば完成,といいたいところですが,ここで鈍くさいことに,バネがぱちんと跳ねてしまい,部品がばらばらと外れてしまいました。

 ピンセットで組み直して,一応完成ということになったのですが,これを再生するとどうもテープがガイドの縁に乗り上げて,折れてしまったり裏返ったりします。そして最後にはテープを切られてしまいました。

 むー。テープはあきらめるとしても,このリニアPCMで録音されたFourplayだけはなんとかサルベージしたいものです。

 しかし,なんどやってもテープがまともに走りません。

 万策尽きて,この日の当番である晩飯を作りにキッチンに向かいます。さっさと食事を済ませて,子供を風呂に入れるまでの10分で,再度カセットの分解にチャレンジです。

 よくよく見てみると,ライナーが裏返しになっているような感じです。これが原因かもなあと,裏返して組み手立て直すと,今度はまともに走ります。

 もちろん,とても危なっかしく,特にキャプスタンの手前にある巻取側のガイドなど,かなり強いテンションで引っ張られているのがわかりますし,やっぱり時々テープが折れてしまうことがあります。

 しかし,危なげな様子でもテープが走っている間は,ノイズもなく綺麗に音が出ています。サーボとエラー訂正,どんだけ強力やねん,すごいなあ。

 翌日,嫁さんに懇願し,2時間自由時間をもらいました。そして約1時間のFourplayのステージをDR-100mk2に取り込みます。だいたい失敗するものだから,半分あきらめながら録音をしますが,全く問題なし。綺麗に録音が出来ました。

 この調子でもう1時間,他のアーティストのステージも録音に成功したところで時間切れ。もうこのテープは捨てることにしましょう。

 思いの外うまくいったのですが,ここでまた余計な事をしてしまいました。巻戻しです。もう捨てるんですから巻き戻す必要はないのですが,こういうところで生真面目な私は,躊躇なく巻き戻しました。

 しかし,途中で止まります。テープも出てこなくなりました。またトラブル発生です。

 今度は,どうもローディング機構が動かなくなっているようで,テープが出てこなくなっているようです。

 ああ,メカデッキを分解しないといけなくなりました・・・テープパスが狂ってしまい,調整すると泥沼に・・・という最悪の展開が目に浮かびますが,このまま放置は出来ません。

 それに,調整の不安など,修理が出来ればの話です。この時期のソニーのDATのメカはプラスチックが多用されていて,割れてしまうともう修理不可能です。

 メカデッキを外し,分解を始めます。焦る気持ちを抑えて,ゆっくりと分解していきます。すると,ローディングポストを動かすギアが外れています。さらに見てみると,このギアを固定するプラスチック製のワッシャーのような部品が外れており,筐体の底の方に転がっておりました。

 これが割れてしまうのも,このメカの持病のようなものらしく,同じような症例がgoogleで調べるとたくさん出てきます。

 代わりの部品もありませんし,どうにかするしかありません。

 そこで試行錯誤をしたのですが,結局落ち着いた方法は,0.3mmのプラ板に1.5mmの穴を開けた5mm角くらいの板を作り,これでギアが外れないようにするというものです。1.5mmの穴だとちょっと窮屈なくらいで,押し込めば入る感じです。

 これを2枚重ねて,最後に接着剤で固定です。

 接着剤はいまいち効果がないようですが,なんとか大丈夫そうです。我ながら,なんとかやってしまうものだなと感心します。

 寝たら死ぬという格言を胸に,夜中の1時まで頑張ってメカデッキを組み立て,本体に仮組みすると,ちゃんと動作するようになりました。清掃と注油,コンデンサの交換もしておいたので,スムーズに動きます。

 と,ここまでで力尽きて布団に直行。新年早々なにをやってるんだかと呆れながらも,目処が立ったことで安堵して,眠りにつきました。

 長くなったので,続きは後日。

VP-7722Aの再修理

  • 2015/12/28 21:54
  • カテゴリー:make:

 1ヶ月ほどから,産業廃棄物から不死鳥の如く復活を遂げた我が家のオーディオアナライザVP-7722Aの調子が悪く,どうしたものかと思っていました。

 VP-7722Aは完全独立2ch構成が特徴で,レベルはもちろん歪率もS/Nも左右同時に測定可能,しかも2ch独立を生かしてチャネルセパレーションも祖規定できてしまうと言う便利なオーディオアナライザです。基本性能はもちろん高く,歪率で言えば-120dBを測定可能ですし,測定可能な周波数範囲は40kHz程度まで伸びています。

 完全なハイレゾ環境の測定は無理ですし,近年では常識となったデジタルアンプの測定に必要なフィルタが装備されていないなどで,最前線の設計現場にはちょっと厳しいものがありますが,アマチュアにはもったいないくらい素晴らしい測定器です。

 で,そのVP-7722Aですが,ch2の入力がうまく動いていません。歪率を測定しようにも,3Vrms付近を入れるとカチカチとリレーが繰り返し動く音がして,測定結果がちらちらと動き,まともな結果が出ません。他の電圧であれば測定出来ることから考えると,どうも特定のレンジだけが測定出来ない状態になっているようです。

 歪率に限らず,レベルも測定不能ですし,2ch同時でなくてもch2だけを測定してもだめです。ch1は生きているので,また産業廃棄物になってしまうわけではないのですが,一度同時測定の便利さを知ってしまうと,もう元には戻れませんし,やっぱりきちんとメンテをして使いたいものです。

 ですが,なにせ相手は複雑で知られたオーディオアナライザです。前回の修理も奇跡的に修理出来たと表いるのに,今回は全然動かないわけではないので,故障箇所の特定にもそれなりの苦労をしそうな感じがします。

 とりあえずやってみるさと,ラックから取り出して分解を始めます。

 まず,どの基板の故障かを特定するために,ch1とch2のフロントエンド基板を入れ替えて見ます。結果,問題はch2の基板について回ることがわかったので,原因はこの基板にあるようです。

 また,他のレンジが動いていることを考えると,入力のアナログ回路は問題はないと思われます。リレーの音がカチカチすること,特定のレンジで値が出てこないことを考えると,レンジ切り替えのリレーに関係する故障であると目処が立ちます。

 とはいえ,リレーの駆動回路,駆動回路を動かすマイコン,リレーの出力の回路周辺など,リレーは広範囲の回路と繋がる部品なので,難しいことがわかっただけと言う気もします。

 しかし,相変わらず人の手を拒むような規模の大きなシステムです。途方に暮れて手の出しようがないと思っていても仕方がないので,とにかく基板を目視で確認して,問題がありそうな場所を見ていきますが,あいにく目視では異常なし。

 こういうのは案外,リレーが壊れていたりすんだよなーと思いつつ,ダメモトでいくつかあるリレーのコイルをテスターであたっていきます。大体120Ωくらいの抵抗値ですが,3つ目のリレーのコイルが10kΩ以上の値を示しています。

 こりゃおかしいですね。コイルが断線している可能性が大です。無限大にならずとも,ドライブ回路の抵抗値が見えてくるのでこのくらいの値になるのも無理はありませんし,これはリレーを基板から外して確認するしかありません。

 基板から外して確認すると,コイルの抵抗値が無限大です。ビンゴ,こいつが不良でした。ここまで,検討を始めてわずか10分。なんと簡単に問題が見つかったことか。しかし油断は出来ません。これで治るかどうかは,新しい部品に交換して動作するかどうかを見なければわかりません。

 交換しようにも,在庫がなければ買ってこないといけませんから,どんなリレーかよく調べてみます。壊れたリレーを見ると,黄色い小型のリレーで,松下電工の「DS2E-S DC5V」とあります。とりあえず5Vで動作する2回路のリレーのようです。

 ラッチングリレーやリードリレーならもうお手上げだったのですが,そういう感じでもなさそうです。手持ちを見てみると,こんなこともあろうかと秋月で買っておいた941H-2C-5Dというものが,どうも大きさからピン配置から機能や規格から,ぴったりのような感じです。1個100円なんだけど,大丈夫かなあ。

 コイルの抵抗値は140Ωとちょっと高めですが,問題ないでしょう。信号の切り替えに使うものですので,接点の容量の問題はないでしょうし,とりあえず交換してみましょう。

 結果ですが,修理出来ました。あっけないくらい簡単に直ってしまいました。

 後で調べてわかったのですが,この松下電工のリレーは有極性でかつ高感度タイプでした。交換した秋月のリレーは有極性ではないのですが,高感度タイプでした。これで問題なく動いてくれているのだと思います。もし,同じ物が簡単に買えるならいずれ交換しようとも思ったのですが,高感度タイプではないものばかりがひっかかり,同じ物は売っていないようです。

 秋葉原のお店をつぶさに見ていけばあると思いますが,まあそこまでしなくてもいいかなと。

 ここまでわずか15分。いやー,我ながら大したものだと自画自賛できるスピードです。

 しかし,私のことですから,これで終わるはずがありません。

 ついでに,動作不良になりつつあるパネルのスイッチを交換しようと考えました。チャタリングが強烈に発生して,スイッチが何度も押されたような状態になるのです。

 以前分解して部品取りにしたFMステレオエンコーダVP-7635Aから取り出したスイッチに交換するのですが,VP-7722Aの操作パネルの取り外しが結構大変でした。無理に引っ張ってしまって,フレキが切れる寸前です。

 なんとかスイッチを交換し,元通り組み直しますが,フレキの差し込みが悪いらしく,うまく動いてくれません。全然動作しなかったり,どのスイッチも連打されたりと散々ですが,どうにかやっつけました。この作業で2時間・・・なにをやってんだか。

 しかし,この結果,さらに確実な操作と動作が期待出来るようになりました。実は以前からch2のレンジ切り替えがうまくいかないときがあり,そういうときは一度入力を切断し,再度入れ直すと測定出来たりしたので,騙し騙し使ってのですが,今回の修理でこの問題も解消したところを見ると,以前からリレーの調子が悪かったんだろうと思います。

 こういう測定器を持っていることで,自作の幅は広がりますが,別の楽しみとして測定器を自分でメンテするというのもあります。なにせ相手は技術的な頂点に位置する測定器です。これを完全とはいえなくても,その人が必要とする精度や性能にまで追い込んで使うというのは,難しいしうまくいかない場合もありますが,単なる電子工作とは別次元の楽しみがあります。

 冷静に考えると,こういう産業機器とか測定器というのは,簡単に買い換えないで修理することが当たり前ですから,修理や保守はしやすいように出来ています。そのことを念頭に置いて,落ち着いてパズルを解いていくのは,実に面白い作業だと思います。

 またしばらく,このVP-7722Aには働いてもらえそうです。

グラフィックイコライザを買いました

  • 2015/12/18 15:21
  • カテゴリー:散財

 劣化し低域が落ちてしまったテープ,あるいは当時の機材の問題から高域が上がりすぎたテープの補正のために,グラフィックイコライザを買いました。

 買ったのは,安いことで有名なベリンガーの15バンド,FBQ1502です。

 このモデル,実はすでに生産終了となっていて,現在は後継機種であるFBQ1502HDとかいうものに変わっているようです。価格についても,数年前は1万円以下で売られていたものが,現在は13000円くらいになっており,円安と物価の上昇を実感出来ます。

 腐っても1Uラックの15バンド2chのグライコが1万円以下というのは,確かに「安いなー」という印象がありますが,その感覚になれてしまうと現在の13000円は妙に高いと思ってしまうから不思議です。

 ご存じの方も多いですが,このベリンガーという会社はドイツのメーカーなのですが,製造を中国で行うことを前提にして,実用品をびっくり価格でと言う,100円ショップみたいなことをやっている会社です。

 楽器というよりも,マイクやミキサー,エフェクターなどのPA機器をやっているので,同じ範疇に入る電子楽器やギターアンプを作ったりはしていないようです。

 確かに,グラフィックイコライザのような枯れた電子機器が,なんでこんなに効果なのかと私も思った事がありました。数が出ないからとか,信頼性を重視しているからとか,いい部品を使っているからとか,そういう理由を勝手に考えて納得していましたが,ベリンガーさんはそこから,なら安く作ってみるか,と行動を起こしたところがすごいと思います。

 特に壊れやすいとか,そういう話が目立ちますが,音が悪いとか,使い勝手が悪いとか,そういう評判が案外少ないので,メーカーの意図通りという感じでしょうか。

 私の場合,そんなに頻繁に使うものでもなく,補正をしないといけない場合に出番があるという程度のものですから,高価なものは避けたいです。信頼性に関してもおおらかですし,音質についても,そもそも補正をかけるようなソースですから,余程ひどいものでなければOKです。

 そんな観点で行けば,もうベリンガーしかありませんわね。

 問題は機種選定です。まずステレオで補正しますので,2chは必須。面倒なので2ch分が同時に調整出来るとよいです。バンドはあまり荒いと調整出来ないから駄目ですが,かといって多すぎるのも面倒です。

 ということで,候補は9バンドステレオのものと,15バンド2chのものがのこりました。前者は9000円。数年前は5000円だったそうです。ハーフラックサイズでとてもチープで,5000円なら買うけど9000円はないなと,すでに心は離れていますし,9バンドというのもちょっと少ないです。

 ただこいつにも利点はあり,入出力がRCAピンジャックだということ,それとステレオなので2ch同時に調整がかかるので,手間がかかりません。

 しかし,やっぱりやめました。なぜなら,15バンド2chのFBQ1502が安く買えたからです。

 今この機種を買うと,13000円くらいします。2ヶ月ほど前までは1万円くらいで買えたようなのですが,時既に遅し。

 ですが,あるところにはあるんですね,送料込みで9800円というのがありました。再生品なので新品ではないですが,メーカーの保証もつきますし,動きさえすれば問題はないかと。すぐになくなると思われたので,迷わずポチリました。

 届いたFBQ1502は,箱も潰れておらず,中身も問題なし。傷も見当たらず,使われた形跡もなく,新品そのものです。ただ,ACケーブルやマニュアルの袋は開封されており,製造年も2014年1月とありましたので,やはり再生品なんだと思います。

 さくっと動かしてみましたが問題なしなので,早速改造です。保証のある品物を買った日に改造するなどしない私ですが,これは話が別です。コストダウンを受ける部品の代表が電解コンデンサ。しかし安い電解コンデンサは,音質の劣化もあるし,すぐに駄目になってしまうと言う,今どき価格と性能が密に創刊を持つという珍しい部品でもあります。

 本当は機構部品が一番高価なので,ボリュームのスライダーとかが問題になりそうですが,こういうものは交換出来ないですから,今回は特に信号系に入っている電解コンデンサを交換です。

 入力側に220uF,出力側に470uFがシリーズに入っていますので,これを在庫してあったMUSEとFineGoldにします。耐圧を高いものにしたので外形が大きくなってしまい,やむなく基板の裏側に取り付けました。

 本当は,電源に入っている1000uFが心許なかったので,105℃品の2200uFにしかったのですが,これは大きさが問題で,どうしても良い場所に配置できずに,断念しました。熱源である3端子レギュレータの真上に来てしまうと,さすがにまずいです。

 スライダーがついている基板は,分解するのが面倒なのでそのままにしましたが,どうもここにも電解コンデンサがついている様子です。中途半端なのもいやなので,これもそのうち改造しましょう。

 このFBQシリーズは,熱を持つことで有名で,ラックにしまい込むと特に熱が籠もってしまい,動作が不安定になったり壊れてしまうことが知られていますし,電解コンデンサの容量抜けでハムが出やすくなることも報告されています。

 だから,電解コンデンサを交換すること,熱対策をすることは,この機種では定番化した改造のようななのですが,私の場合そこまでしなくてもよかったかなあと思ったりしています。

 さて,少しいじってみたのですが,さすがに15バンドあると楽に調整が出来ます。足りないなと思う帯域を協調したり,ベースラインをはっきり聞きたい時にさっと調整出来たりと,なかななのものです。スライダーの感触はオモチャみたいで良くありませんが,これはまあ仕方がありません。

 安いとは言え,オペアンプは性能に定評ある4580が全面的に採用されていて,歪みもノイズも少なく,音質も大変立派なものだと思います。

 グラフィックイコライザのせいではないのですが,当たり前の話として,高域が落ちた昔のテープの補正を行うと,それはもうひどくノイズも大きくなってしまうんですね。これにはもう閉口しました。

 4kHzや6.3kHzをあげると盛大にノイズが盛られますし,10kHzや16kHzでも耳障りなノイズが乗ってきます。

 かといってノイズを気にすると,補正が弱すぎて面白くないですし,困ったものです。

 そこで,一種のノイズゲートである,ダイナミックのいずリダクションを試しに入れて見ました。中学生の時にLM1894Nを使って作ったものですが,押し入れに残っていたので引っ張り出してきたのですが,これが思いの外よいのです。

 当時は,ノイズが出たり引っ込んだりが不自然に感じて使わなくなり,再生時だけにかけるノイズリダクショの限界を感じたわけですが,上手に調整すると劇的にノイズを減らせるので,真面目に使ってみようかなと画策中です。

 どんどんハイファイから遠ざかってしまいますが,もともとのテープの状態から考えると,まあこのくらいは仕方がないかと思うところです。

 これと,あとは高域が上がりすぎたテープの補正です。再生イコライザの調整不良で起こった問題ですので,グラフィックイコライザがよく効くでしょう。

 もともと,わかりやすい機能として,ヘッドホンステレオやラジカセ,ミニコンポなどにこぞってグラフィックイコライザが盛んに搭載されたことがありました。

 この時は,5バンドくらいでそんなに積極的に音をいじれるわけでもなく,またノイズも増えてしまい,音質そのものを損なう場合が多かったことで,ネガティブな印象が定着して,次第に廃れてしまいました。

 とはいえ,デジタルオーディオプレイヤーやスマートフォンの音楽再生アプリでは搭載されていて当然の機能の1つになっているので,廃れたと言うよりも当たり前になったというのが正しい表現かもしれません。

 それでも,今回のように15バンドもあるグラフィックイコライザは,一部のオーディオマニアが積極的に音場補正に使うことがあるくらいで,今のDSPを使えばいいものがいくらでも作れるんじゃないかと思いますが,相変わらず高級オーディオ界の日本人のグライコアレルギーは結構根深いものがあるようです。

 今回,音の補正にグラフィックイコライザを使ってみたわけですが,非常に使えるという印象です。以前と違って音質の劣化も少なく,もっと使ってみようと思わせるものがありました。

 足りなかったものがぴたっと収まった感じがします。こんなことなら,もっと昔から手に入れておけば良かったなと思います。

DR-100mk2のライン入出力レベルについて

 前回,DR-100mk2のレベルダイヤグラムのことを書きましたが,実際に信号を入れて挙動を確かめたところ,間違っていましたので訂正を兼ねて,再度まとめてみようと思います。

 まず,最初に言い訳ですが,前回のレベルダイヤグラムは誰かが勝手に作ったものというのではなく,某所から手に入れたDR-100のサービスマニュアルに記載されていたものです。

 DR-100とDR-100mk2は入力系統に仕様の変更がありますかr,同じという前提で話をするのはまずいのですが,今回の話は録音と再生という基本機能そのものであることから,仕様の変更はないものと考えています。

 だから,DR-100のレベルダイヤグラムをDR-100mk2でも同じだと思っていたのですが,結論は誤りでした。DR-100とDR-100mk2とは同じ仕様で,サービスマニュアルが間違っているのか,DR-100とDR-100mk2が異なる仕様になっているのかは,DR-100を持っていないのでわかりませんが,とにかくレベルダイヤグラムは適用できないというのが答えです。

 なら,正しくはどうなのよ,ということになるのですが,残念ながらメーカーが出所となるレベルダイヤグラムは手に入りませんでした。ただ,DR-100mk2で追加されたXLRでのライン入力に関してはキーフィーチャーだったようで,レベルダイヤグラムがカタログに記載されていました。

 よって,この数字をアンバランスのライン入力(LINE2)にあわせて,実機の動きと矛盾しないように書き換えるというのが,今回の話になります。


(1)ライン入力の仕様について

 DR-100mk2のライン入力は,前述のようにバランス入力とアンバランス入力の2系統があります。前者であるLINE1入力はプロスペックを満たすために,基準レベル+4dBu,最大レベル+24dBuとなっています。ヘッドマージンは20dBです。

 もう1つのLINE2入力は民生機器への接続用で,基準レベル-10dBV,最大レベル+6dBVです。ヘッドマージンは16dBとなっています。1dBVは1.0Vrmsですので,-10dBVは0.3Vrms,+6dBVは2.0Vrmsです。


(2)ライン出力の仕様について

 DR-100とDR-100mk2はライン出力を独立した端子で持っており,仕様は両機で共通です。民生機器接続用のアンバランスで,基準レベル-10dBV,最大レベルが+6dBVです。


(3)コーデックの入出力レベル

 コーデック(ADコンバータとDAコンバータ)の入出力レベルについては,フルスケールを0dBとおいて,dBFSで表記します。

 カタログに記載されたDR-100mk2のレベルダイヤグラムによると,ライン出力のレベルは,0dBFSで+4dBVです。従って,基準レベルである-10dBVでは-16dBFSです。これはカタログのレベルダイヤグラムに書いてあるとおりですし,実機での計測でも同じ結果が得られました。

 また,同じレベルダイヤグラムに記載があるLINE1の入力レベルを見ていくと,基準入力レベルである+4dBuが-20dBFS,最大入力レベルである+24dBuが0dBFSと書かれています。


(4)レベルメーターについて

 DR-100およびDR-100mk2のレベルメーターには数字が入っていませんが,逆三角形の印がついているところが-16dBであり,ここを下回らないように入力レベルを調整せよと取説に記載があることから,この印がコーデックの-16dBFSであると考える事ができます。


(5)アッテネータについて

 アッテネータといっていいか分かりませんが,入力レベルの調整用のボリュームは,最大で-31dBの減衰を行う事が可能となっています。サービスマニュアル記載のDR-100のレベルダイヤグラムでは-31dBから0dBとありますが,DR-100mkのカタログ記載のレベルダイヤグラムでは,-15.5dBから+15.5dBまでと記載があります。

 この場合,0dBはボリュームの真ん中になると考えていいと思いますが,減衰量と回転角がリニアであるとはどこにも書かれていませんので,違うかも知れません。

 減衰しか出来ないボリュームで+15.5dBというのはおかしいので,前段に15.5dB以上のゲインを持つアンプがあるのが前提ということになります。

 果たして実機がそうなっているかどうかを確かめてみると,ツマミが10(最大)で-10dBVを入れると,レベルメーターはちょうど0dBを示しました。

 また,ツマミを0(最小)にして,+6dBVを入れると-25dBを示しました。まあ難しい事は考えずに,普通に-31dBから0dBの減衰という理解が,一番しっくりくると思います。


(5)LINE2入力の仕様を推測する

 と,ここまで書き連ねてきた事実と考察から,問題のLINE2入力の仕様を推測します。

 まず,LINE1の基準入力レベルが,ヘッドマージンを割り引いたレベルとなっていますので,これをLINE2に当てはめてみると,基準レベルである-10dBVは-16dBFSとなります。

 そして,それぞれの数字にヘッドマージンの16dBを加えてみると,入力レベルが+6dBVで0dBFSとなります。ということは,DR-100mk2のLINE2入力の電圧とレベルメーターとの関係は,0.3Vrmsで-16dB,2.0Vrmsで0dBということになるわけです。


(6)短くまとめると

 入力→ 0.3Vrms = -10dBV = -16dBFS = -10dBV = 0.3Vrms 出力→
 入力→ 2.0Vrms = +6dBV = DdBFS = +6dBV = 2.0Vrms 出力→


(7)それで?

 なにを当たり前の事をごちゃごちゃ書いているのかと,大多数の方は思ってらっしゃることでしょう。結論はとても簡単で,例えば基準レベルが-16dBFSだと知っていれば,こんな考察など必要なく取説を読むだけでこのくらいの情報は得られます。

 私は民生品のオーディオ機器しか扱ってこなかったので,レベルダイヤグラムなどあまり意識してきませんでしたし,レベルを合わせるなどと言う注意もしてきませんでした。

 胸を張って言えるようなこととは違うのですが,これですっきりしたのは,録音時には-16dBから0dBの間で,メーターがウロウロするようにすればよいという取説の記述の根拠です。

 確かに,仮にDolby-Cで20dB改善されたカセットでも,ダイナミックレンジは70dBほどですから,最大レベルを仮に-16dBとしても,ダイナミックレンジは理論上80dB確保出来ることになるので,十分カバー出来ると考える事ができます。

 まあ,小さいレベルの時には,量子化雑音が占める割合が大きくなってしまうので,やっぱりレベルはギリギリを狙っていくのがいいと思いますが,ピークレベルメーターですべてのオーバーを拾えているという保証もないですから,取説に従っていこうと思います。

 だけど,ヘッドマージンとして用意された16dBってのが,デジタル録音では一番おいしいところだったりするんですよね。ここを使わず,いざというときのために撮っておくというくらいの意味で残しておくのは,旧世代の私としては,ちょっと悔しい気もします。

 そうそう,もう1つ実験したことがあります。

 入力レベルを調整するつまみですが,DR-100mk2は2重になっていて,左右独立でレベル調整が出来るようになっています。

 ですが,少なくとも私のモデルでは,内側と外側のツマミの数字が回しきったところで揃いません。0にしても10にしても,ちょっとずれるんです。

 このズレが,実際の音量の差になっているなら問題ですが,単にツマミのガタで怒っているなら,無視しても良いでしょう。

 そこで,ツマミをまず両方とも10に回しきって揃えた後に,外側のツマミを回して両方とも0にします。ここで左右の音量を測定し,そこからさらに内側だけさらに回します。

 これを,0で揃えて10まで回しきった後にも同様に行います。そしてレベルが変われば問題,変わらなければ問題なし,と判断します。

 
 結果ですが,ツマミのガタでした。どちらのケースでも,さらに回したところで値は変わりません。

 案外,このボリュームはよいものを使っているような感じで,ボリュームそのものにガタはないですし,左右の変化のずれも少ないようです。

 昨日思い出したのですが,昔使っていたA-450という古いカセットデッキは,どうもアジマスが狂っていたのと,ディスクリートで構成されたDolby回路の調整がずれており,左右の音量差が出ているテープが多く,しかも周波数と絵ベルで定位が変わってくるという非常に面倒なものになっています。

 周波数や音量で定位が変わることはもう仕方がないとして,明らかにずれているものは左右独立のボリュームの利点を生かして,左右の音量バランスが同じになるように調整をすることが出来ました。

 こうして録音した音楽を,録音後に再生してみると,回転部分などどこにもないのにちょっとした感激があるから,録音という作業は楽しくてやめられません。

 ただ,楽しいのは結構なのですが,安いテープで30年を経過したようなものは経年変化で高域の減衰が目立って来ているものがありますし,そうでないものも転写がおきていたり,磁性体が剥がれてしまうという劣化も出てきています。

 このため,左chだけ音がこもってしまうのが10秒だけ続くいったような,それまでの作業をパーにしてしまうような事故もおきやすくなっています。

 20年以上経過し,ひどいものは30年にもなるようなテープが,今でも再生出来ることがそもそも大したものなのかも知れませんが,ここはさすがに音が出なくなるデジタルと違い,ダメになってもダメなりに音が出るアナログは,頼もしいなあと思います。

 何度か録音をやってみて,大体作業の流れや注意点も見えてきました。あとは単純作業の繰り返しになりますが,なにせカセットもDATも数があるので,短期的に時間を作って処理しても追いつきません。死ぬまでにコツコツをやっていくという長期的な覚悟で,取り組んでいく必要があると思っています。

 とはいえ,ちょっと無視できないなと思っているのが,当時の機材の問題(調整不良)による高域が異常に出ているテープと,経年変化や劣化による高域が落ちてしまっているテープです。

 一度デジタルで取り込んだ後に,ソフトで補正をかけようかと思ったのですが,時間もかかるし,アナログの段階で補正が出来る方がいいと考えて,グラフィックイコライザを買うことにしました。

 オーディオ用途のものはもう絶滅しているんですが,業務用にはたくさんの品種があります。随分安くなっていることに気が付いたのですが,今回は価格破壊者として知られる,ベリンガーのものを手配しました。

 積極的に音をいじることを良しとしなかった私は,グラフィックイコライザーを使いこなせる自信がありません。試行錯誤でいじっても,結局うまくいかなかった経験もあるので,15バンドで左右独立という自由度の高い機器を目の前にして,果たしてきちんと目的を果たせるのかどうか・・・

DR-100mk2で録音

 DR-100mk2を使って,DATの録音を少しだけやってみましたが,なかなか大変です。

 まず,面食らったのは,デジタル入力なのにPEAKインジケータが点灯し,あげく「OVER」とレベルメーターに表示されてしまったことです。

 本来,デジタル入力ですから0dBFS以上の入力は入ってくるはずがありません,なのにOVERとはどういうことか?

 理由はともかく,本当に私のDATから0dBFS以上と認識される信号が出ているなら問題です。そこで,XD-S260からDTC-59ESJに入れ,ここからDR-100mk2に入れて見ました。

 すると,DR-100mk2ではOVERとなる信号でも,DTC-59ESJでは0dBとなり,オーバーにはなりません。断定するのは難しいですが,デジタルの信号ですので,フルスケールは0dBであり,これ以上を表現する事が出来ない以上,信号そのものがレベルオーバーになっている可能性は,ないと考えていいでしょう。

 残る可能性は2つ,DR-100mk2がデジタル入力の信号を増幅してしている,もう1つはレベルメーターの表示が実際よりもずれている(というよりより慎重な方向に修正されている)というこことです。

 前者の可能性ですが,私は当初低いと考えていました。意味もないし,わざわざDSPで処理するようなことでもないと思っていたからで,そんなものは世の中にほとんどないと思っていたのです。

 ところが,MD全盛の時代に,デジタル入力でもレベル調整をしたいというニーズが多くあり,中級機種から上のモデルではレベル調整が可能なものがいくつもあったようなのです。確かに,デジタル入力時にレベル調整をしないというのは,その信号が既に適切なレベルに調整されていることが前提であり,もしもそうでないソースがあったら,調整したいと思うのは普通の欲求でしょう。

 なんに使うのかと思ったのですが,例えばアナログ録音されたMDをデジタルでコピーするとか,テレビや衛星ラジオなど,あまりレベルを厳密に管理していないと当時言われていたソースを録音するなら,使い道はあるかも知れません。

 でも,私に言わせてみれば,デジタルでレベル調整をすることで音質劣化のデメリットが普通に発生するわけですから,一度アナログに戻してアナログでレベル調整をしてやればいいんじゃないのかと,思うのです。

 話を戻しますが,こうした過去の機器にあったデジタル入力時のレベル調整ですが,レベルが固定という事はなく,可変になっています。目的から考えると当たり前の話ですが,DR-100mk2には調整がありませんので,レベル調整は行われていないのではないかと,そんな風に思っています。

 もう1つの可能性である,レベルメーターのズレですが,私はこの可能性が大きいと思っています。この手のレコーダーというのは,どうもレベルオーバーによる音質の劣化がなにより嫌われるようで,あまり上限ギリギリを狙ってレベル設定を行うことはしないようです。ま,そりゃそうですね,マイクで録音することを主眼においたハンディレコーダーですから,どんな大きさの音が来るか分かりません。

 さらに,歪ませるよりはノイズに埋もれさせた方がましだ,という考え方が浸透してきたようで,これを根拠にレベルを小さめにして録音し,あまり上限ギリギリを狙わないようになってきているみたいです。

 機器の性能向上もあり,ノイズフロアが下がってきているのがその背景にあるようです。特に24bitの録音が可能な機器な場合,マイクやプリアンプのダイナミックレンジから考えると,上限ギリギリを狙わなくても,十分なダイナミックレンジが取れるのですから,無理をすることはありません。

 そんなわけで,レベルメーターがより安全な方向にずれているんじゃないかと思うのです。機会があったら確かめてみようと思います。ここで例えば,2Vrmsの1kHzを入力して,0dBFSを越えてしまったら私の考察が正しかったことになりますし,0dBFSぴったりになれば,やっぱり信号のレベルそのものが変わってしまっていたことになりますね。

 ここで,自分自身のために,レベルについてまとめておきます。

 DR-100のレベルダイヤグラムを見ると,ライン2入力(3.5mmのジャックy)の標準入力が-10dBVで,これがレベルメーターの-16dB(-16dBFS)に相当します。最大入力の+6dBVでレベルメーターの0dBとなり,これがADコンバータ(CODEC)のフルスケール,つまり0dBFSになるようになっています。ヘッドルームは16dBとなりますね。

 入力のボリュームの可変範囲は31dBとなっていますが,基準入力である-10dBVが
-16dBFSであることから考えると,入力ボリュームを0に絞った場合には-41dBVとなり,これが-47dBFSになるというわけです。

 0dBVが1Vですので,-10dBVは0.33V,+6dBは2Vと言うことになりますので,まあ普通のラインレベルを受ける端子としては,ギリギリの線です。

 これはDR-100での資料を基にしていますが,DR-100mk2でもこれは同じでしょう。

 それで,DR-100にはない,XLR入力のライン1になると,基準レベルが+4dBu,最大入力レベルが+24dBuと書かれています。カタログにレベルダイヤグラムが出ていましたので,同じように考えてみましょう。

 レベルダイヤグラムによると,基準レベル+4dBuが-20dBFSとなっています。ヘッドルームは20dBで,最大入力は+24dBuです。これはライン2入力とは全然違っています。

 なお,このレベルダイヤグラムには出力も書かれているのですが,+24dBu = 0dBFS = +6dBVです。出力の+6dBVはライン1でもライン2でも同じ仕様です。

 で,ライン1での基準レベルは20dB下がったところですので,+4dBu = -20dBFS = -14dBVです。(ちなみにライン2では-10dBV = -16dBFS = -10dBV)

 +4dBuは1.23V,+24dBuは12.3Vです。このあたり,さすがプロ仕様です。

 取説では,レベルメーターが-16dBを中心に行き来するようにし,かつPEAKインジケータが点灯しない範囲で入力レベルを設定しろ,とあります。なるほど,レベルダイヤグラムをきちんと読んでみると,この説明にも納得がいきますね。


 さて,他にも,AUTOREC機能は,レベル設定の下限が-48dBなので,頭切れも尻切れが簡単に発生してしまいますし,PRERECはAUTORECとは別の設定項目なので,手動でも2秒前から録音されてしまうとか,尻切れを防ぐRELAYの設定も5秒まで設定出来るとはいえ,設定単位が1秒でとても大雑把であるとか,あれこれと面倒なところもあります。

 最初は,AUTORECで楽をしようと思っていましたが,結局使い物にならない事がわかってしまい,すべて手動に切り替えました。それでも,ファイルを分けるTRK INCで僅かながら頭切れが起こっているようなので,心持ち前でボタンを押すように,心がけています。

 そうして苦労して録音を進めていても,DATの調子がどうも悪くて,途中でCAUTIONを出して止まってしまい,またやり直しです。

 こんなことをやっていたら,いつ手持ちのDATがファイル化出来るか,見当も付きません。そうこうしているうちにデッキも動かなくなり,テープは劣化して,再生不可能になります。さすがの私も,ちょっと焦ってきたというのが,本音です。

 

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