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ギックリ腰からの帰還

 誰が言ったか知らないが,9月の連休を「シルバーウィーク」と,世代間闘争に油を注ぐかも知れない不用意な名前で呼ぶようになり,そこはさすがに休みだからと闘争もお休みに入ったわけですが,私も自分の母親を自宅に招いて,のんびり過ごさせてもらいました。

 一応私は母親を招く「ホスト」にあたるので,食事の用意などは基本的に私の役割で,黙々とこなします。といっても,普段も同じ事をやっているので,一人分増えるだけのことでしたが・・・

 母は別に外に出かけたがるような人ではなく,家にいて孫の顔を見ているのが一番という人ですので,わざわざ私がおかしな企画を立案して外に連れ出し,結局誰もハッピーにならなかったという状況を作るような失敗をせずに済みます。

 実家では母が猫を飼っており,本来なら両者の利害は長期滞在で一致を見る(往復の時間と費用,その他にかかる種々のコストを滞在時間で割った値を最小化する)のですが,生き物がいる以上そういうわけにはいきません。
 
 例年,2泊で帰阪する母親に,今年は3泊にチャレンジしたらどうか,と提案してみました。母親が来ると誰かが必ず体調を崩すという失態を続けていた我々も,今年は体調も良く,楽しい時間が過ごせそうだという見込みがあったことも理由です。

 かくして,3泊して母親は無事に実家に戻っていきました。

 本題はこれからです。

 母親が帰り,連休最大のイベントが終わったことで油断をしたのでしょうか,それとも日頃の疲労の蓄積ゆえだったのでしょうか,木曜日の夕方に,俗に言うギックリ腰に見舞われたのです。

 木曜日の16時30分過ぎのことです。米びつのお米がなくなりそうになっていて,今日炊く予定だった4合に足りません。そこで買ってあった10kgのお米の袋をえっちらおっちら引き摺って,米びつに半分ほど入れました。

 この時鈍くさい私は,何粒か米粒をこぼしてしまったのです。

 いつもならそのまま「もうええわ」と放置するのですが,この日はなぜか気になり,ネズミが出たり虫がわいたりすると嫌だと考え,せっかくだから綺麗に掃除をしようと思い至って(私の場合概ねこういうことが動機となります),ハンディクリーナーで掃除を始めたのです。

 右手に持ったハンディクリーナーを屈んで引き出しに突っ込んで掃除をしていると,何か突然,腰に強烈な刺激がありました。あまりの衝撃に,一体何が起こったのか,わかりません。

 私もギックリ腰は何度かやっているのですが,まるで火箸で焼かれたような熱を感じる事もあれば,ブチブチという音がしたような気になることも,目の前にぱっと閃光が走ることもあるのですが,今回はそういうものは一切無し,ただなにかすごいことが起きた,と言うことだけがわかる感じです。


 しかし,すぐに強烈な痛みが襲い,崩れそうになる体を両手で何とか支えますが,痛みが治まる気配がありません。どうにか支え方を変えたりつかまったりしていましたが,この時すでにギックリ腰になったこと,それもかなり程度が悪いことを腰が焼けたように熱く感じた事と一緒に,理解していました。

 そうこうしているうちに,病院に行っていた娘と嫁さんが帰ってきて,階段を上がってきた娘が私の異変に気が付きました。私はなんとか,背もたれのない椅子に腹ばいになり,腰の力を抜いて移動する方法を見つけ,隣の部屋で横になりました。

 そこからがもう地獄です。1ミリも動けません。少しでも動けば激痛が走ります。そして一度痛みが発生すると,その痛みをカバーすべく背筋に力が入り,そのせいでまた痛みが強まり,さらに背中の筋肉に力が入って・・・を繰り返して,際限のない痛み地獄にはまり込みます。痛くない姿勢に戻しただけでは痛みは引かず,ここで深呼吸をして力を抜くことを覚えて,ようやく痛みから逃げられるようになりました。

 3時間も安静にしていれば,まあトイレに行くことくらいは出来るようになるだろうと,これまでの経験から思っていたのですが,痛みのひどさと経過の悪さから,それも難しいと分かってきたのは,2時間ほど経過してからでした。

 もしかすると,週明けも満足に動けず,私が担当している家事や保育園の迎えが出来なくなってしまうんじゃないかと,焦りが出てきます。

 結果から先に書くと,自分でも驚くほど急激に回復し,週明けにはほぼ痛みが取れ,元の生活に戻ることができました。わずか3日で普段通りの生活にほぼ戻ることが出来たその驚異的な回復速度は私も未体験で,ここに何をやったかをまとめておくと,次の約立つだろうと思った次第です。

9月24日 16時40分頃
ギックリ腰発生。過去最大の痛み,もはや痛い場所もわからない。とにかく仰向けに寝ているしかない。

9月24日 17時30分頃
お医者さんでもらったボルタレンをはる。

9月25日 19時半頃
食事。飲み食いすると当然出るものが出るわけで,食べないつもりだったがそうもいかず,おにぎりとおかず少々を食べる。嫁さんが食べやすいようにと作ってくれたおにぎりの美味しかったこと。ただし水は飲まないが,痛み止めとしていつも飲んでいる頭痛薬のエキセドリンを飲む。

9月24日 20時30分頃
全く改善せず。痛みで動けず,這うのが精一杯。おしっこが我慢できず,やむなく嫁さんに2Lのペットボトルを加工して急ごしらえの溲瓶を作ってもらい,これでなんとな乗り来る。嫁さん曰く「はじめてあなたの下の世話をしたわ」

9月24日 夜
22時頃にもう一度おしっこをとってもらい,そのまま寝ることにするが,痛くない姿勢の範囲が狭く,ちょっとしたことで痛みが走り,その都度深呼吸が必要になるので,ほとんど眠ることが出来ない。当然風呂にも入れず,自分の布団にもいけず,カーペットの上という,健康なときでも背中が痛くなる状況で,寝返りも姿勢を変えることも許されずに,まさに地獄のような時間を過ごす。寝たきりになると,こういうしんどさがあるんだと思う。

9月25日 8時ごろ
家族が起き出して活動開始。私はまだ動けない。しかし,寝返りが打てるようになっていて,朝目が覚めたときの改善具合に驚く。

9月25日 9時ごろ
軽くお菓子を食べ,ロキソニンを飲む。ボルタレンを貼り替えてみるが,大きな改善はなし。

9月25日 9時30分ごろ
意を決してゆっくり動き,中腰のままではあるが立ち上がることに成功。このままよろよろと歩き,3階にあるトイレにいって久々に自分で用を足す。寝室に向かうが,嫁さんの使っている敷き布団が低反発ウレタンのもので,腰が楽という話から,これを借りることにする。

9月25日 17時頃
腰痛の時には最初の48時間はとにかく動かずじっとする,その後は出来るだけ動くようにすると,回復が早いと聞いたことがあり,実戦する。24時間が経過し,少しは動けるようになってくる。ロキソニンのせいで胃と腸を壊してしまい,下痢をするがそれがまた腰には厳しく,大変な思いをする。

9月25日 19時頃
夕食は2階に降りてみんなと一緒に食べられそうだったので,椅子に座って食べる。ただし長時間は無理で,さっさと食べてまた寝室に戻る。この時にはなんとか立って歩けるようになっている。ロキソニンに加えて,ナボリンも飲む。

9月25日 21時頃
シャワーに入る。なんとか体を洗って,そのまま寝る。

9月26日 8時頃
活動開始。なんとこの日は朝から背筋を伸ばして歩くことが出来るようになっていた。しかし,痛みはあるので,無理せず朝食後にすぐ寝る。

9月26日 17時頃
48時間が経過,ほとんど回復。絶っている状態から座ると痛かったり,座っている状態から立ち上がると痛いという状況すら,もうほとんど出なくなっている。
ただし無理はしない。この日の夜から,自分の薄い布団で寝る。

9月27日 8時
活動開始,起き上がるときにも,寝るときにも,もう痛みをほとんど感じる事なく,生活に支障はないレベルに改善。下痢がひどいのでロキソニンをやめる。

9月27日 10時30分頃
自転車に乗って,来週分の食材を買いにスーパーへ。それまで体が不自由だっただけに,自転車で走ることが楽しくて仕方がない。問題なく帰宅。以後は用心しつつ,出来るだけ普段通りの生活をする。

9月28日 7時
出勤。痛みはないが,ずっと寝ていたせいで筋肉が弱っているらしく,電車で立っていると,非常に腰に疲れを感じてだるい。しかし午後には元通りになり,以後はちょっとした痛みを感じつつも,普段の生活に完全に戻る。


 てなわけで,48時間ひたすら寝る,と言う初動によって,急激に状況を改善させることに成功しました。ナボリンも効いているのだと思います。また,消炎剤としてロキソニンが大きな貢献をしているはずで,この結果として徐々に痛い場所が特定出来るようになり,やがて痛みが気にならなくなったのでしょう。

 また,ボルタレンは強い効き目があるとは言え,貼り薬ですので,そんなに深い場所には入っていきません。ボルタレンで痛みが取れたなあと実感出来るようになるには,かなり痛みが弱まっている必要があり,48時間の安静とロキソニン&ナボリンは,そのことにも大きな貢献をしているはずです。

 だから後日,ボルタレンを貼る場所がずれてしまった際に,弱い痛みが一日続いたんだと思います。

 長々と書きましたが,48時間で家の中で生活出来るレベルに復活し,72時間で普段通りの生活にほぼ戻ることが出来るというのは,かなり画期的な成果でした。これまで,この手のギックリ腰はどのくらいで動けるようになるかさっぱり分からず,自分の周りも予定が立たないので,それがますます焦りを生んでいましたが,今回ほどのひどい痛みでも,3日で復活出来ることがわかれば,かなり負担を軽減できるでしょう。

 こういう話をすると,ご自分の「腰痛自慢」する人ばかりになってしまうので,私はあまり周りにこういう話をしませんが,少なくない自慢話を聞いていると,復活するのに2週間とか,1ヶ月とか,そのくらいのスパンでかかったと言う人が多いです。数日という人は,まずいません。

 2日で動けるようになり,3日で復活出来るなら,ギックリ腰ももう怖くありません。私は4回目になりますが,普段から気をつけて生活することも大事ですが,不幸にもギックリ腰になったとしても,慌てず騒がず焦らずいられるようになったことは,大きな転換点だと思います。

 ポイントは4つ。

(1)48時間はとにかく寝る。起きるのはトイレだけ。出来ればトイレもいかない。
(2)ナボリンとロキソニンを毎食後に飲む。
(3)貼り薬はボルタレンを使う。
(4)48時間経過後は無理のない範囲で起きて動く。変にかばわない。

 ちなみに,パナコランも併用していますが,外す段階で電池が切れていることがほとんどで,効いているんだかいないだか,はっきりしませんのでここには書きません。

 

ScanSnapのUSBコネクタを交換

  • 2015/09/16 15:21
  • カテゴリー:make:

 ある日曜日の夕方,意を決してPDF化することにした,裁断済みの電気電子系の古い本を目の前にして,私は途方に暮れていました。

 ScanSnapが認識されないのです。

 私はScanSnapはUSBによる有線接続を使っています。WiFiは速度も遅いですし,無線ですから電波の状況で通信の品質が変わってしまいます。滅多なことはないと思いますが,あとで「実はデータが化けていました」と発覚しても,手遅れです。

 USBでと繋ぐとはいえ,私のMacBookProはUSB2.0までですから,残念ですがUSB3.0に対応したScanSnapは,オーバースペックです。そのかわり,USB2.0なら細くて曲がりやすいケーブルが使えますので,これを使っています。

 おかしいなあと思いながら,なんどかUSBケーブルを抜き差ししますが,やっぱり認識しません。もしかして,ScanSnapのUSBコネクタが基板から剥がれてしまったり,異物を噛んだりしているのではないかと,コネクタを覗き込んでみて,私は目が点になりました。

 コネクタがこわれています。中心にあるプラスチックが折れてしまっていて,ここに差し込まれていた4つの電極がぴーんと飛び出しています。

 これでは,USBケーブルを差し込んでも動かないはずです。

 そういえば,とその日の朝に掃除機をかけた際,見慣れない青色のプラスチック片がカーペットに落ちていたのを思い出しました。ははーん,これか。

 いや,以前から。いつか壊れるだろうなと思っていたのです。USB2,0のコネクタならがっちり繋がるケーブルですが,USB3.0のコネクタに差し込んだUSB2.0のケーブルは,妙にグラグラと動きます。外側で固定すると言うより,コネクタの中心にあるプラスチックで支えるような感じがして,ここに何かぶつかったら壊れるだろうなと思っていました。

 思っていたなら丁寧に扱えばいいのですが,そうしないのが私の鈍くさいところで,結局掃除機が何度もぶつかって,折れたのだと思います。

 困りました。

 今日のうちに,新たに4冊ほどスキャンしたいと思っていたのです。あいた時間でささっとスキャンできる効率の良さが,スキャン速度が高速化されたIX500の良いところなのに,壊れてしまえば話になりません。

 そこで,普段は使わないWiFiを使う事にしました。一時しのぎです。

 夕方には3冊ほど,WiFi接続で何の問題もなくスキャンできた(通信速度の遅さ故に,スキャンが終わっていてもデータ転送中になっていましたが,それは仕方がありません)のですが,夜に続きをやろうとすると,突如転送が先に進まなくなったりします。

 こうなると,ScanSnapManagerはうんともスンともいわなくなるし,これまでスキャンしたデータはぶっ飛ぶしで,作業が全然先にする見ません。

 転送が止まっているときに,ScanSnapをちょっと動かすと点灯が再開されたりするので,おそらく電波の状況が悪くて,転送速度がほとんど出ないのでしょう。やっぱりWiFiはダメだなあと思いました。

 ただ,転送されたデータを念のため全ページ確認しましたが,問題は見つかりませんでした。正しく転送できないなら,転送を止めてしまうと言う考え方なんだと思いますが,もしこれがなかったら,本当に1枚1枚目を皿のようにして確認しないといけなかったところですから,助かったです。

 さて,とりあえず急ぎのスキャンは済んだのですが,今後どうするかを考えないといけません。これはやはり,修理しないといけないだろうと思うのですが,メーカーに修理に出すというのもなんだか面白くありません。

 壊れたコネクタの交換だけの話ですから,自分で交換しちゃいましょう。

 ただ,気がかりなのは,USB3.0のBコネクタなど,ばら売りされているのをほとんど見たことがないので,手に入るのかどうかです。

 そもそも,MicroUSBや,typeCコネクタが話題になっている昨今,Aコネクタならまだしも,Bコネクタなど完成品に搭載されているケースも少ないのに,コネクタだけ売っているところがあるのかどうか,不安でした。

 その不安は的中し,私が知るパーツ屋さんで,売っていたのは千石電商だけでした。しかも467円。高い!送料もいれれば1000円近いです。うーん。

 しかし,秋月も共立もマルツも若松も売っていません。千石のサイトを見ても写真が出ていないので,どんなものか不安がありつつ,仕方がないので注文しました。

 もう1つの手としては,もうUSB2.0専用と割り切って,入手の容易なUSB2,0のBコネクタを付けてしまうことです。

 さっとScanSnapを分解し,基板を取り出し,壊れたコネクタを基板から取り外してみます。

 そしてなぜか手元に転がっている新品のBコネクタを基板に差し込んで見ると,問題なく取り付け可能です。このままハンダ付けしてしまいたい衝動にかられます。

 しかし,いずれMacBookも買い直すだろうし,そうなるとUSB3.0に対応することになるでしょう。USB2.0では,スキャン速度よりも転送速度の方が遅い場合があるにはあって,紙は全部排出されているのに,データは転送中ということがしばしば起こっていますから,USB3.0になるならそれが望ましいわけです。

 そうこうしている間に千石からコネクタが届きました。あれこれ考えましたが,とりあえずそのまま使えそうなものだったので,基板にハンダ付けし,元のように組み立て直して,完成です。

 今回は光学ブロックを触っていませんので,面倒な調整もなく,ただ元に戻すだけです。

 この状態で,とりあえずUSB3.0での動作テストをしますが,問題なし。修理に出すともっとかかると思いますが,それでも送料込みで1000円近くかかってしまって,まあなんと馬鹿な話かと思います。

 USB3,0のカードも安定動作をしてきたし,せっかくだからScanSnapもUSB3.0で常用することにしましょうか。

 ところで余談ですが,本当にUSB3.0のBコネクタが千石からしか買えないのかと,google先生に聞いてみました。すると,10個で1296円というお店が見つかりました。1つ130円ですから,まあそんなもんかな,という値段です。ここに送料もかかりますから,2000円ほどかかってしまうと思いますが,単価は確かに安いです。

 千石のものは,ちゃんとコネクタが青色なのですが,この安いものは黒色のようです。ここにこだわらないなら,お買い得だったかも知れません。


 

初歩のラジオ雑感

 先日,1991年頃の「初歩のラジオ」を手に入れました。

 ご存じの方も多いと思いますが,「初歩のラジオ」は1991年の4月号から「SRハムガイド」へと新創刊,その内容もアマチュア無線に特化したものになりました。

 そして内容を大きく変えたにもかかわらず,1992年5月号で休刊してしまいます。わずか1年ほどで消えてしまったことは,この作戦が失敗であったことを物語っています。

 そもそも「初歩のラジオ」は1948年に創刊されたビギナー向けの電子工作雑誌で,子供向けで科学全般を取り扱う「子供の科学」と,専門的な内容でオーディオや無線を取り扱う「無線と実験」という,1920年代に創刊された雑誌の間に挟まれた,中高生に向けた雑誌でした。

 1948年ですから,戦後数年で創刊されたときは,雨後の竹の子のように市場に出回った,ラジオの自作関係の本や雑誌の1つだったと思う(当時のラジオは物品税が高くて,メーカー製のものは高額でしたから,自作するとかなり安く手に入れる事が出来,これを売ったりするとちょっとした小遣い稼ぎになったそうです)のですが,その後日本の復興に伴って役割も変わっていきました。

 今思えば,ということなのですが,なにせ20世紀後半は電子工学全盛の時代です。次々に開発される半導体デバイス,年々進化するICとLSI,コンピュータの登場と高性能化,ソフトウェアという概念が当たり前になるといった,全く新しい事が目の前に次々に出てくる時代でした。

 そして,これらを駆使した産業が誕生し,プロの世界はもちろん,民生機器も電子工学の応用製品が主役となっていった時代でした。

 世の中にはいろいろな産業がありますが,子供が憧れて,工作に取り組み,またそれらを使いこなすことを楽しむというのは,なかなかないものです。例えば化学工業だったり,繊維や機械工学などは,なかなか子供が「試せる」環境にはないものですが,電子工学は違っていたんです。

 そして,そうしたホビーとしての電子工学を支えたのが,「初歩のラジオ」と「ラジオの製作」でした。

 これらが,電子工作に興味を持つ小学校高学年から高校生くらいまでをターゲットにしたことで手に入れた個性が,若者向けの情報誌,という機能でした。

 電子工作に興味のある中学生や高校生は電子工作が好きな人である前に,10代の若者であることを考えると当たり前の話で,刺激が恋しい若者に興味のある話題や情報を誌面に展開することは,ごく自然な流れでしょう。

 ですから,製作記事や技術解説はもとより,映画,音楽,ラジオといった一般的な話題も取り扱っていましたし,当時の若者の間で流行していたオーディオ,電子楽器,無線,BCL,コンピュータと言った内容はかなり突っ込んだ内容になっていました。

 これが,広く若者にアピール出来た理由だったんじゃないのかなと思います。

 もっとも,そうした若者への文化発信を狙った雑誌は他にいくらでもありますから,電子工学の専門的な記事を期待するストイックな読者もいたと思いますが,当時は今のようにインターネットや携帯電話などはなく,それにテレビもラジオも限られた情報しか伝えていませんでしたから,複数の雑誌を買うことの出来る人が情報通と呼ばれた時代でしたので,極普通のお金のない若者が買い続ける雑誌には,出来れば様々な情報が盛り込まれていた方がメリットがあったはずです。

 私もそうした口で,もちろん技術的な内容が薄いものは論外ですが(私の目にはラジオの製作がまさにそうでした),それだけではなく,映画や音楽,科学技術全般に渡る話題が出ている初歩のラジオは,本当に貴重な情報源だったのです。

 私は1970年代の初歩のラジオのことは知りませんが,私が知らないだけで,いろいろな変遷があったのだろうと思います。

 私の知る限り,1983年頃までは従来路線の踏襲がなんとか行われていましたが,このころから記事の量が増えてきたパソコン(特にMSX)の話題が増えるにつれ,ちょっとずつ読者層が変化してきたようで,1985年頃は,従来路線の踏襲という重いテーマのために,すべての記事が中途半端になっていた感じがありました。

 価格もそれまで580円だったものが600円を超えるようになり,内容の薄さと価格の高さから,私もこのころの初歩のラジオは読んでいません。

 ですが,1985年7月号に突然大きな変化が起こります。定価が480円に下がり,中綴じになりました。明らかにページ数は減りましたが,基板マスク紙の付録が復活しましたし,製作記事も減っていません。取り扱うジャンルはオーディオ,コンピュータ,電子楽器,BCL,アマチュア無線とこれも変わっておらず,そこに若者らしい音楽や映画の話題もきちんと織り込まれており,読んでいて実に楽しいものだったことを覚えています。

 泉弘志先生のラグ版を使った1石・2石の工作や,増永先生のメカトロ工作も続いていましたし,東芝ラジオ教室も継続,おすぎのシネマトークもちゃんと続いており,良いものは遺して,1980年代に相応しい雰囲気に作り替えたものという印象です。

 これも振り返ってみると,以前はしばしば掲載された非常に規模の大きな製作記事,例えば制作費に数万円もかかる本格的なステレオアンプであるとか,完成までに何ヶ月もかかるものなどは,姿を見せなくなりました。こういう高度なものを期待した読者は,きっとここで離れていったのでしょう。

 この体制が1991年まで続きますが,この期間がちょうどバブル全盛だったことに注目すべきで,当時の初歩のラジオの新製品紹介のページは,8ページや10ページという枚数が割り当てられているにもかかわらず,全然ゆとりがありません。それだけたくさんの新製品が毎月登場していたということで,バブルを謳歌した人の言葉として「出せば売れた」という話は,決して大げさなものではなかったのだなと感じさせます。

 そしてバブルが崩壊し,雑誌が売れなくなります。より専門性に特化した雑誌にすべきという方向は間違っていなかったと思うのですが,その専門性を「アマチュア無線」に向けたことは,当時の私にさえわかる,重大な誤りでした。

 確かに,当時はバブルの残り香があり,携帯電話は入手が難しく,アマチュア無線には一定の需要があって,若者の憧れであったことは否定しませんが,いずれ携帯電話が普及することは目に見えていたし,アマチュア無線にはすでに名高い専門誌がいくつもあったことを考えると,もうここで初歩のラジオは終わったのだなと,そう思ったものでした。

 あるいは,内部ではすでに終わっていて,猶予として1年だけ続けるという「お情け」があったのかも知れないですね。こういう邪推をすればもう切りがないのでやめておきますが・・・

 ただ,ハムガイドになる前の数ヶ月の初歩のラジオを改めて見て気が付いたことがあるのですが,広告のほとんどが,アマチュア無線機のものなんですね。以前はサンワなどのテスターのメーカーや,オーディオメーカーのものも,パソコンのメーカーのものあったりしたのですが,本当にヤエス,ケンウッド,アイコム,スタンダード,アルインコという無線機のメーカーしか出ていないんです。

 安い広告料のモノクロページには,従来通り部品やジャンクの広告も出ていますが,これと伝統の科学教材社の広告を除けば,もう無線機だけです。

 つまり,初歩のラジオという雑誌を維持していたのは,アマチュア無線だった,ということです。

 アマチュア無線機のメーカーが,お金にものを言わせてアマチュア無線以外の記事の排除を求めたのか,あるいはすでにアマチュア無線に興味のある人しか初歩のラジオを買わなくなったのか,それはわかりません。どちらにしても,ハムガイドになる前に,すでに初歩のラジオはアマチュア無線の雑誌であり,むしろそれに内部があらがって電子工作雑誌の体裁を維持して,いびつな状態になっていたということになります。

 でも,私がこのことに気が付いたのは,つい先日のことです。当時は初歩のラジオの広告が減っていることに気が付きませんでしたし,その構成が偏っていることにも気が付きませんでした。

 なぜなら,アマチュア無線機も,初歩のラジオの主な守備範囲であり,その広告は私のようにハムではない人でも,必ず見ていたからです。無線機を買うことはなくても,どんな無線機が出ているのかとか,このメーカーの無線機は格好いいなあとか,大体どのくらいの値段で買えるものなんだろうかとか,そういうことは広告で知っていましたので,ホビーとしての電子工学を語る雑誌にアマチュア無線機のメーカーが並んでいることは,とても自然に思えたのです。

 しかし,冷静に考えてみると,アマチュア無線機のメーカーにとってメリットのある雑誌でなければ,広告を出す理由はありません。アマチュア無線機のメーカーにとっては,オーディオやパソコンが好きな人は当然ですし,電子工作をする自作派の人も,邪魔だったのでしょう。

 かくして,最後には内部の無言の抵抗すら感じたハムガイドへの新創刊により,理系の中高生のための情報誌という役割を捨てました。その多大なる犠牲に私はとてもがっかりしたし,今も残念なのですが,なにが悔しいといって,そうした犠牲が全く生かされず,結局1年ほどでハムガイドもなくなってしまったことです。

 これで,せめてハムガイドが生き残っていれば,あるいはハムガイドがまた新創刊して別の雑誌に生まれ変わってくれていれば,初歩のラジオが消えたことにも辛抱が出来たのですが,ただただ若者に対する電子工作の面白さを啓蒙する役割が消えただけとい現状には,私は一定の社会的責任があるのではないかとさえ,思います。

 そうそう,もう1つ気が付いたことがあります。ハムガイドになる前の数ヶ月,読者投稿やはみ出しの読者の年齢が,高齢化しているのです。20歳台から40歳台がチラチラと散見されます。

 このころ,すでに若い読者の獲得に失敗していたのかも知れません。そして,1970年代にラジカセとアマチュア無線で青春を謳歌した人が,40歳代になって初歩のラジオに戻ってきたということかも知れないです。

 ラジオの製作と違い,初歩のラジオは内容が「軽く見えた」のでしょうけど,図書館に入る数が少なかったように思います。図書館需要というのは,こうした雑誌を維持するにはそれなりに大きな数で,子供の科学が生き残っている理由も,これが大きいです。

 もし初歩のラジオが図書館や学校にたくさん入っていたら,もしかするとハムガイドになることはなかったかも知れません。そして,電子工学が先端の産業から「当たり前」の技術になった現在に,相応しい役割を果たしてくれていたかも知れません。


 

MSG2170をめぐるすっきりしない結論

  • 2015/08/31 15:40
  • カテゴリー:make:

 MSG2170ですが,注文したクリックなしのロータリーエンコーダが届きましたので,早速取り付けてみました。

 作業そのものはとても簡単で,動作を確認すると一応動いているようです。これで1周48パルスという高分解能なロータリーエンコーダとして動作します。

 問題がないわけではなく,まずA相とB相のパルスが立ち上がる(下がる)タイミングが等しくない(と思われる)ため,偶数から奇数への変化角度と,奇数から偶数への変化角度が異なります。

 気にならないと言えば気になりませんが,ロータリーエンコーダだけで微調整を行うようなシーンでは,数字の変化にムラがあるように見えますから,やりにくいです。

 しかし,もう面倒ですからこのままとします。48パルス/1周ですから,ざっと大まかな調整に使うつまみで,微調整はキーで行うということにしないといけませんから,割り切ります。というか,これにそこまで時間を使えません。

 先にハンドソープでしっかり洗浄したフレームでパネルをしっかり固定し,ゴム足などを組み付けた筐体の上下のフタを取り付けて,一応完成です。

 早速,ステレオモジュレータの調整をして,その素性を見てみましょう。

 FMステレオの方式をここでくどくど述べませんが,パイロット信号の位相がきちんとあっていないと,セパレーションが悪化します。そこで,ステレオモジュレータでは必ず位相合わせの作法があります。

 MSDG2170では,オシロスコープをX-Yモードにしておき,X入力に背面のPILOT OUTを,Y入力に正面のOUTPUTを繋ぎます。

 そして説明書にあるように,まずはパイロット信号だけを出力して,オシロスコープに出てきた楕円が,左上から右下に向かう斜めの一直線になるように,SCOPE PHASINGという背面のツマミを回します。

 次に,L-R(SUB)信号を出力してやると,蝶が羽を広げたような絵が出てきますので,これが二重にならず,また中央部が菱形ではなく点になるように,PILOT PHASEを回します。

 作業を一通り進めてみましたが,幸いなことにSCOPE PHASINGも綺麗に一直線になりましたし,その後のPILOT PHASEも,菱形が点になるくらいに追い込めました。

 実は,これまで使っていたVP-7635Aでは,こんな風に綺麗にならなかったのです。最初のSCOPE PHASINGはそれなりに出来たのですが,肝心のPILOT PHASEが全然ダメで,菱形が点になりません。つまり,パイロット信号と出力信号の位相差が小さく出来ないということで,最終的にチャンネルセパレーションの悪化に繋がっていたはずです。

 VP-7635Aでも55dB程のセパレーションが測定出来ているので,ここからさらに追い込めたMSG2170は,これ以上の性能を持っているはずだと,私はワクワクしました。

 さて,一度電源を切り,VP-7635Aを入れ替えます。VP-7635Aはすべての操作がボタンで行え,マイコンを内蔵していないので,1つのボタンに複数機能の割り当てがあるケースはほんの僅かです。

 これはこれでとても楽ちんで,気に入っていたのですが,基本性能に疑問符がついていることもあるし,せっかくMSG2170を割高な価格で手に入れたのですから,ここはVP-7635Aに引退して頂く事にしましょう。

 接続はとても簡単です。MSG2170のOUTPUTをVP-8191Aの外部入力に繋ぐだけです。
 

 設定は,MSG2170が本来DARCエンコーダですので,なかなか項目も多く面倒です。しかも,VP-7635Aと違ってマイコン制御(68000で制御しています)ですから,階層化されていて使いにくく,多機能化によって増えた設定項目を整理するためとはいえ,私はあまり歓迎できません。

 私は,DARCエンコーダとしての機能は使いませんので,L-MSKに関する設定はすべてOFFか無視です。大事なのはMAINメニューとSTEREOメニューです。

 STEREOメニューでは,出力を90%,パイロット信号を10%にします。これ,人によっては出力を100%にするようなのですが,出力とパイロット信号の合計が100%になるように設定しないといけません。パイロット信号は10%と決まっていますので,出力は90%にすることになります。

 DARCエンコーダとして使う場合には,L-MSKが10%ですので,パイロット10%とあわせると20%,よって出力は80%に設定します。

 MAINメニューで大事なところは,出力レベルです。VP-8191Aの外部入力は,変調度が100%になるようなレベルで突っ込んで上げる必要があります。誤差は±2%ということですが,この範囲が直感的に分かるように,OVERとUNDERのLEDが装備されており,この2つが消えている状態になるよう,MSG2170の出力レベルを調整します。

 私の場合,出力信号をMAIN(L+Rですね)で6.5Vp-pに設定するとうまくいきました。

 この状態でVP-8191Aを83MHz,75kHz変調,出力90dBにしてKT-1100Dに繋ぐと,ちゃんとステレオ受信しています。とりあえずMSG2170は動いているようです。

 ここで,KT-1100Dの調整をやり直します。全開は真夏のクソ熱いときにやりましたので,涼しい時にやる方が気分がいいです。

 フロントエンドは概ね全体の調整から動いてません。DCC基板も問題なさそうでしたが,ミスでVRを触ってしまい,調整をやり直す羽目になりました。

 そして,注目のMPXの調整です。

 ・・・うーん。

 どうも期待外れです。セパレーションを調整しても,54dBくらいで頭打ちになるんです。おかしい。だってVP-7635Aでもこのくらいの数字で,VP-7635Aよりも位相が揃っているはずのMSG2170が,同じ程度問いのは腑に落ちません。

 もしかするとKT-1100Dが54dB程度だということでしょうか。いや,KT-1100Dは,うまく調整すると70dBのセパレーションをたたき出すはずです。せめて60dBくらいになってくれないと・・・

 ということで,あわててF-757を持ってきました。こいつはVP-7635Aでも58dBくらいの測定値が得られています。MSG2170ではどうだったかというと,ほとんど同じ値,58dBでした。

 ここから得られる結論は,KT-1100Dのチャンネルセパレーションは54dBしかないということ,VP-7635Aは60dB近いセパレーションを持っていたこと,MSG2170は少なくともVP-7635Aと同じ程度の力があるということ,です。

 あー,もったいない。じゃVP-7635Aのままでよかったじゃないか。

 それにしても,KT-1100Dですよ。いきなり測定もしないで部品を交換しまくったので,最初からどこか壊れていたのかも知れませんし,間違った部品に交換されたものもあったかも知れません,元に戻そうにも,古い部品は捨ててしまったし,回路図もありません。お手上げです。

 まあ,そんなことを言っていても仕方がありません。出来るだけいい数字に調整して終わりにしましょう。で,調整した結果が,以下です。

  WIDE
歪率 MONO:0.0165% L:0.126% R:0.129%
セパレーション L->R:54.78dB R->L:54.12dB
S/N MONO:73.1dB L:64.7dB R:64.7dB

 NARROW
歪率 MONO:0.033% L:0.134% R:0.136%
セパレーション L->R:52.2dB R->L:50.5dB
S/N MONO:73.6dB L:64.6dB R:64.6dB

 参考までに,全開の測定値が以下です。

  WIDE
歪率 MONO:0.025% L:0.12% R:0.12%
セパレーション L->R:53.7dB R->L:53.6dB
S/N MONO:72dB L:63.2dB R:63.2dB
キャリアリーク 67.3dB

 NARROW
歪率 MONO:0.035% L:0.12% R:0.12%
セパレーション L->R:50.2dB R->L:50.3dB
S/N MONO:72dB L:63.2dB R:63.2dB


 なんかあれですね,モノラル時の歪率が0.016%と大幅に改善したことと,S/Nが全体的に1dB程改善している以外は,すべて悪化しています。悪化といってもほとんど誤差のようなものでしょうから,要するにMSG2170で調整しても,KT-1100Dの実力は変わらなかったということになります。

 なんかがっかりです。

 がっかりしながら,KT-1100Dのフタを閉じて,電源を入れて様子を見ることにしました。かなりの発熱があり,機内温度が上昇することが分かっていたからです。

 1時間ほどしてから,セパレーションをもう一度測定してみると,なんと33dB。20dB近くも悪化しているではありませんか。出力に電圧計を繋いで,出力の出ていない方のチャネルの出力を見ていると,54dBのセパレーションが出ているときの出力が1.4mV程度(20*log(1.4/665)=53.5dB)なのに,今はその10倍ほど出ています。(20*log(14/665)=33.5dB)

 あわててフタを開けてみると,すーっと出力電圧が下がっていきます。1.4mVに下がるには時間がかかりますが,どんどんセパレーションの値も改善していきます。

 フタを閉じれば,またどんどん悪化していきます。いやはや,こんなに温度変化があるものなんですか?

 いくらなんでもこれはひどいということで,あちこち部品を触っていたら,C100(だと思う)の1uF-50Vの電解コンデンサを指で触ると,セパレーションが急激に悪くなることを発見しました。

 そこで,このコンデンサを同じ1uFのフィルムに交換しますが,指で触って変化することはなくなっても,温度による変動は相変わらずです。

 こうなったら,十分内部を暖めて,この状態で調整をするしかないと考えたのですが,なにせフタを開けるとすぐに温度が下がってしまうので。何度か繰り返してようやく,2時間放置しても54dB程度になるように調整出来ました。

 しかし,これでは,セパレーションが最良点になるまでに1時間以上かかってしまう上,電源投入時には30dB程度とラジカセ並みになってしまうのが大問題です。それに,なんどか試していると,40dBくらいでとまってしまい,そこから下がっていかないこともありました。

 さらに,筐体をポンポンと叩くと,セパレーションが悪化します。叩いた衝撃で無音のチャンネルになにか信号が出てくるようです。

 コイルの振動ならやむを得ないかと思ったのですが,検波基板についているC19という電解コンデンサを指で弾くと出てくることが判明。しかし,これを対策するわけにもいかず,とりあえずこのままです。

 また,値が下がらないときにDCC基板の裏側を触ると下がったこともありました。

 いずれにせよ,故障していると考えた方がいいのかも知れません。
 
 うーん,どうしたものか。すっきりしない結論になり,私もなんだか消化不良で気持ち悪いです。


 

MSG2170のレストア

  • 2015/08/28 13:42
  • カテゴリー:散財

 先日,KT-1100Dと言うFMチューナーをレストアした話を書いた際に,FMステレオエンコーダの調子が良くないということを書きました。

 VP-7635Aというエンコーダですが,どうもパイロット信号の位相を完全に調整出来ないのです。位相を調整しきれないという事は,FMチューナーのセパレーションを最適な位置に持ってこれないという事を意味していて,もはや測定器として疑問符がついている状態です。

 もっとも,測定値は疑わしいとはいえ,この状態でも最善の場所に調整をすることでそこそこのレベルに追い込む事が出来ますから,これで我慢するというのも,1つの手でした。

 しかし,やっぱりダメですね。気になってしまいます。

 どうせ手に入れるなら,高性能なものをということで,セパレーションに70dB以上というスペックを誇る,目黒のMSG2170という機種を,ずっと探していました。

 この機種,2000年代中頃まで販売されていたもので,そんなに古くさい測定器ではないのですが,もともと「見えるラジオ」と呼ばれたFM多重放送が受信可能なラジオの設計や調整に使う測定器で,正しくはDARCエンコーダというのですが,オプションでステレオエンコーダが搭載可能で,このエンコーダの性能が飛び抜けているのです。

 ですが,すでに見えるラジオはサービスも終了しており,FM多重放送を受信出来るラジオの設計や製造も,もう行われていません。各社がこぞって発売を開始した時期に,どうもこの機種は大量導入されたようで,今ちょうど中古市場にたくさん出てきています。

 ところで後継機であるMSG2173や2174は,コストダウンのためか,ユーザーがそこまで必要ないと考えたのか,スペックが落とされており,手に入れやすい高性能なエンコーダとしては,MSG2170は貴重な存在です。

 これを何度かオークションで手に入れようとしたのですが,高価だったりして逃してきました。しかし先日,ようやく手に入れる事ができました。

 正直言って,程度が今ひとつで,値段も高めでした。私は必要ないからいいですが,付属している見えるラジオのデータ作成用ソフトもついておらず,実は少し後悔しています。

 ぶつけた傷も大きいものがありますし,背面の足も少し曲がっています。BNCコネクタはことごとく錆びており,困ったのはデータエントリー用のロータリーエンコーダの調子が悪く,ミスカウントが多発していることです。

 ということで,肝心な生成された信号の質の確認はまだまだ出来ず,分解が必要なレストアから始めることになりました。

(1)バックアップ用電池の交換

 MSG2170に定番トラブルは,設定内容を覚えてくれないというものです。これは単純にSRAMのバックアップ電池が切れているのが理由で,まずはこれを交換しておく事にします。

 幸い私のものは電池が切れている様子はないのですが,予防的な措置として,タブで直接基板にハンダ付けされているコイン型リチウム電池を取り外し,CR2032用の電池ケースに交換し,今後電池が切れても簡単に交換出来るようにして置きます。

 MSG2170のバックアップ電池は,実は2つ装備されています。CPUの乗った基板は2階建てになっていて,それぞれに電池がありますので,両方とも交換します。私の場合,メイン基板側は3.0Vほど,漢字ROMののったサブ基板の電池が2.9V程になっていました。ICの刻印から,2002年頃に作られたもののようで,10年ちょっとならまだ大丈夫というのも道理です。

 この作業はとても簡単で,さくさくと終わりました。起動も問題なし,ちゃんとバックアップも行われています。メモリのクリアを行って,初期化をしたところで作業完了です。


(2)ロータリーエンコーダの不調

 このMSG2170のツマミって,なんとまあアルミの削り出しなんですね。すごい重量感ですし,ひんやりとした感触は非常に趣味的な魅力にあふれていますが,測定器らしくなく,このツマミだけ浮いているように思ってしまいます。

 それはともかく,これが動かないと操作に支障も出ますから,直したいところです。

 ロータリーエンコーダは,よく知られているように,絶対値を出力するアブソリュート型と,90度位相のずれた2つの出力からパルスが出るインクリメンタル型の2つがあります。

 インクリメンタル型の場合,精度や耐久性がそれ程要求されず,民生機器の操作パネルに取り付けられる様なものには,コストが重視されて機械式が主流です。

 どんな機器にもマイコンが入っていること,もちろん安くなったことで,わかりやすくて操作しやすいロータリーエンコーダは,電子レンジにしろ洗濯機にしろオーディオにしろ,本当に多くの機器に導入されています。

 ただ,この機械式のロータリーエンコーダは,良く壊れるんです。なんでこんなに壊れるのかなと思うくらい,壊れます。多くの場合騙し騙し使えるし,キーで代用できたりするので気にされない事も多いと思いますが,カウントしない,一気に3つ4つ進む,増やしているのに減っている,とか,まあイライラすることこの上なしです。

 それで交換を考えたのですが,手元に秋月で手に入れた,200円の古いロータリーエンコーダがありますので,これに変えて見る事にします。まあ,仮にロータリーエンコーダの不良が原因でなくても,回転の感触が悪いので,これは交換しておきたいところです。

 古いものを基板から外しますが,2階建てになっている操作基板の,奥側の基板に取り付けられたロータリーエンコーダは,長いシャフトが手前の基板の穴を通してパネルに出てきます。こんな長いシャフトのロータリーエンコーダは,ちょっと手に入りません。

 そこで,手前側の基板に開いた穴に,エンコーダを直接ネジ止めし,配線は別に行う方法で取り付けて見ました。シャフトの長さは問題く,ちょうどよい長さになり,ツマミも綺麗に取り付けできます。

 配線も済ませて動かしてみますが,どうもおかしな動きです。配線を間違えたのかも知れないと適当に入れ替えてみたら,それらしい動きをします。(よく調べてみると,最初についていたアルプス製のロータリーエンコーダは真ん中がコモンでしたが,秋月のものは右端がコモンでした)

 それらしい動きをしているように思ったのですが,よく見てみると,1クリックで2カウントします。クリックの途中で1つカウントしますので,そこで無理に止めれば良いのですが,それはあまりに使い勝手が悪すぎます。

 うーん,なんかおかしい。

 ロータリーエンコーダなんて,クリックのありなしと,1回転でいくつパルスが出るかくらいの違いしかなくて,とりあえず動くと思っていたのに,そういうものでもなさそうです。

 これは,もしかすると回路の故障かも知れないと思い始めましたが,このままでは使い物にならないので,元のロータリーエンコーダに戻します。とはいえ,ただ戻すだけでは芸がないので,ロータリーエンコーダを分解し,内部を清掃してから戻すことにします。

 ロータリーエンコーダを分解して内部を軽く掃除して組み立て直すのですが,固定している金属製の爪が壊れてしまったので,引っかかりが小さく,ちょっと不安があります。でも,もうこれで進めるしかありません。

 仮組をしてみると,以前よりもミスカウントが減っています。やっぱりロータリーエンコーダの不良だったんだなあと納得して,正式な交換作業をスタートさせます。

 交換した秋月のロータリーエンコーダを取り外し,元のロータリーエンコーダを基板にハンダ付けして組み立て直すときに,悲劇が起きました。基板の表と裏を間違えてしまい,このままでは組み立てられません。もう一度ロータリーエンコーダを外して,裏表を逆にして取り付けねばなりません。

 かなり眠くなっていた私は,作業が乱暴になっていたんでしょうね。なかなか基板から外すことが出来ずに,ロータリーエンコーダを壊してしまいました。さらに,基板のパターンも剥がしてしまうという,大失態です。

 落ち込んでも仕方がありません。壊れたロータリーエンコーダをもう一度修理しますが,金属の爪が完全になくなっているので,もう固定できません。それを承知で基板に取り付けます。

 ようやく組み立てが終わって動作をさせてみますが,かなりミスカウントが減っているとは言え,やっぱり動作がおかしく,このままではちょっと使えない感じです。

 もう力尽きて寝ることにしますが,その前に,オリジナルと秋月のものとの,クリック数の違いを確かめてみると,オリジナルは30,秋月のものは24です。

 秋月のサイトを見ていると,今売っているものはすべて24クリックです。一方,大阪の共立電子を見てみると,30クリックというのがあるのですが,ここにパルス数は15と,ちょっと気になる事が書いてありました。

 クリック数と,パルス数は,同じとは限らないんですね。これは大発見です。

 さらに調べてみると,秋月のものは1回転あたり24パルスで24クリックであるという記述を見つけました。

 気になって,アルプスのサイトにある,製品情報を見ていると,1回転あたり15パルスで30クリックの製品は確かに存在し,それはA相とB相それぞれの確定部分,厳密に言えばA相とB相が同じレベルになっているところがクリック安定点になっています。

 一方1回転あたり24パルスで24クリックの製品を見てみると,B相の立ち上がりおよび立ち下がりのところでクリックが出るようになっていて,クリック安定点でB相の状態が規定できないと注意書きまでしてあるのです。

 これで説明がつきました。

 オリジナルは,1回転で15パルスが出るロータリーエンコーダですが,クリックはその倍の30クリックが出るもので,このセットは1クリックごとに,つまりA相かB相のいずれかが変化したところ,つまり0.5パルスで,1カウントされるように作られています,

 ところが,交換した1回転あたり24パルスで24クリックのロータリーエンコーダでは,1回転で出るパルスは24もあるのに,クリックは24しかありません。つまり,1つのクリックで2つのA相とB相の変化点が存在し,その度にカウントされるので,1クリックで2つカウントされてしまうのです。

 そうなると,もう15パルス30クリックのものを買うしかありませんが,30カウントではちょっと分解能が荒くて,グルグルツマミを回さないといけないのも面倒くさく,24クリックのロータリーエンコーダの快適さを知ってしまうと,元に戻すのも惜しいです。

 そこで,クリックのないロータリーエンコーダを使えばいいんじゃないのかと思い至り,そういうものを探したら,あったあった秋月にありました。

 実は,手元にある秋月のロータリーエンコーダを分解し,内部のバネを取り外す改造を行うと,クリック無しになることが分かっています。しかし,分解というのも信頼性を下げますし,もともとこのロータリーエンコーダは,時計のキットについていたものですから,出来れば元に戻しておきたいところでもあります。

 そこで,早速秋月に部品を注文です。余計なものも一杯買ってしまった(カーボン抵抗全種類詰め合わせ5700円を買ったのが失敗だったかも)ので,高くついてしまったのは内緒ですが,これに交換してみましょう。

 部品が届くのは週末です。うまく交換が出来て,操作フィーリングが向上することを期待したいと思います。

 そうそう,発生信号が高品質である事も確かめないといけないです。

 

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