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aitendoの6石ラジオは超上級者向け

  • 2014/08/08 14:05
  • カテゴリー:make:

 aitendoで買い物をした際に,懐かしさのあまり6石スーパーラジオのキットを一緒に買いました。

 いや,懐かしさのあまり,というのは2つの点で誤りですね。1つは,私は6石スーパーを作った事がないし,子供の頃からあまり興味もなかったので,過去に作ったという懐かしさはありませんでした。

 もう1つは,20年前からずっと同じようなキットが今でも普通に買えるので,仮に懐かしいと思ったとしても,それがこのキットを買う理由にはなりません。

 細かい事はさておき,私は電子工作を趣味にしながら,ラジオをまともに作った事がないことが1つのコンプレックスにしていて,特に調整が必要なスーパーラジオを完成させたことがないことを,負い目に感じています。

 しかも,小学6年製の時に,3石スーパーを本を見て作ろうと部品を集めたのですが結局完成できず,部品も散逸してしまったことがあるだけに,失敗という汚名も背負っているのです。

 そんなわけで,この失敗という経験を思い出し,今こそリベンジだ,今なら調整も含めて完璧に仕上げられる,と息巻いて購入したと言うわけです。

 しばらく放置し,ようやく先日から作り始めましたが,これがなかなかくせ者で,とても大変なキットである事がわかりました。初心者お断り,中級者も妥協が必要,まさに定数の見直しだけではなく回路形式の変更も厭わないような。上級者向けのキットだと思います。


・回路図がない,配線図がない

 まずなんといってもこれ,回路図も配線図も,組み立て方を書いた説明書も入っていません。aitendoはコスト削減のためWEBからダウンロードせよ,といっていますが,やっぱりキットですし,子供も買うでしょうから,せめてこの手のキットくらいには,説明書を入れて上げられないものかなあと思います。

 ちなみに,私のキットにも,ケースに張り付ける周波数表示のシールが入っていませんでしたが,なんでもこれは注文時にお願いしないと,ついてこないんだそうです。なんか,そういう役所のような対応って,子供には厳しいと思いますよ。

 幸いにして,先人達の記録が広大なインターネットの海に漂っていて,google先生に聞けば探し出してくれます。私も回路図などの情報をネットから入手しました。


・ケースの仕上がりが悪すぎる

 これはもう中国のクオリティなので仕方がありません。気の毒だと思うのは,このクオリティしか知らずにいる,中国国内の人々だと思います。良いものを安く作ってみんなを幸せにするという大きな夢は,特にこれから頑張ることになる国や地域の人々には,ぜひ持っておいて欲しいものだと,私は思います。

 まあ,多少の事は辛抱する私ですが,これはひどいですね。自分でケースを探してきて加工した方がいいんじゃないかと思ったくらいです。


・回路と部品の仕様が不明

 回路図も説明書もないので当たり前の話ですが,部品の素性がわかりません。トランジスタも中国仕様,バーアンテナもバリコンもIFTも,トランスも全くどんなものかわかりません。

 基板のシルクを見ていれば組み立てられるように思いがちですが,なんとまあ低周波用のトランスは3ピンずつ合計6ピン出ているもので,どちらの向きにも取付が可能です。

 向きを間違えれば全く音が出ませんので,ここは初心者には厳しいでしょう。よくよく見ると,2次側に印付けておいてくれてあるので,これに気が付けばいいのですが,わかりにくいので向きを間違えて取り付けてから気が付く可能性は高いでしょう。

 もう1つ気が付いたのですが,普通IFTは,1段目から順番に黄色,黒,白の順番になっています。IFTの帯域は1段目が一番狭いので,調整は1段目から順に行うのが普通です。

 しかし,このラジオは,1段目が白,2段目が黒です。(中間周波増幅が1段しかないので,IFTは2つしかない)

 だから,調整も白が先,次に黒となりますが,なんで順番が違うのかなあと,不思議でなりません。

 私の場合,さすがにトランスの向きと,バーアンテナの線だけはテスターで導通だけ調べましたが,あとは行き当たりばったりで組み立てました。


・6石スーパーの標準回路ではない

 それでも,よく見かける6石スーパーの回路ならなんとか完成させることが出来るかもしれません。しかし,この6石スーパーは,6石とは言いながらも標準的な回路構成とは違っています。

 よくある6石スーパーは,局発に1石,ミキサに1石,中間周波増幅は2段で2石,検波はダイオードで行い,低周波電力増幅は2石でプッシュプルです。

 しかし,この6石スーパーは,局発に1石,ミキサに1石まではいいとして,中間周波増幅は1段で1石,検波と低周波増幅に1石,低周波s電力増幅に2石という構成です。

 なんで中間周波増幅が2段じゃないのか,なんで検波をトランジスタでやるのかなど,回路を設計した人に聞いてみたい(逆に言うと回路図からはそれらの必然性がちっとも読み取れない)です。

 特にぎょっとするのは,電力増幅段です。一見するとプッシュプルなのですが,トランジスタラジオによく見られた出力トランスを使ったプッシュプルではなく,トランスのないいわゆるSEPPです。

 それはそれで結構なのですが,NPNとPNPで作る純コンプリメンタリではなく,NPNだけで構成された回路です。これだと,片側はエミッタフォロワなのに,もう片側はエミッタ接地で動くので,どうしたってアンバランスが出ます。

 これを打ち消して補正するためにいろいろ回路的な工夫をして出来上がったのが,準コンプリメンタリという方法ですが,今は誰も使いません。

 そうかといって,このラジオが準コンプリメンタリかといえばそうではなく,入力にドライバトランスを設けてあって,位相反転をこれでやってるんですね。しかも,電力増幅にもかかわらず固定バイアスで熱暴走もどんとこい,という配慮のなさです。

 私の場合,おかしな改造はせず,一応設計者の意図を尊重して,出来るだけオリジナルで組み立てましたが,トランジスタはすべて入れ替えました。

 手持ちの関係で,電力増幅段の2つは2SC2120,残りはすべて2SC1815のYランクです。別にすべて2SC1815でも良かったのですが,2SC2120も売るほど持っているので,電気的に余裕のあるものを入れておこうと思いました。

 また,2SC1815についても,ランクを使い分けたり,hFEを実測したりしている方がいらっしゃるようですが,私はそんな面倒な事はせず,同一ロットでhFEが250前後のものを4つ使いました。


・感度がとれない

 これは他の方の検討結果なのですが,特に中間周波増幅段のトランジスタのhFEが低く,感度に影響が出るんじゃないかということでした。実測で100を切るようなトランジスタがわざわざ使われているようですが,ここに250くらいのトランジスタを選ぶと,かなり感度が上がるそうです。

 そういう話を事前に聞いていたので,前述のように2SC1815に入れ替えたのですが,あまりゲインが上がりすぎると,今度は発振するんじゃないかと思っていまして,そこは注意が必要な点かもしれません。

 
・部品の不良を疑わねばならない

 私の場合は幸いにして起こりませんでしたが,部品の不良が結構あるそうで,取り付け前にテスターで一応良品かどうかを確認しておくべきというのが,他の方からのアドバイスでした。

 これってね,初心者にはものすごく厳しいのですよ。部品の良否判定を,その部品を使う前に行うというのはとても高度な技術と知識が必要です。


・無駄な回路がある

 最たる例は,電源ONで光るLEDでしょう。ラジオですよ,音が出ていれば電源ONってわかるじゃないですか。もちろん音量を絞ればわからないかもしれないし,そのまま放置すると電池が切れてしまうかも知れません。

 しかし,それでも,電源が入っているかどうかを示すランプに,10mAも電流を食わせているんですね。そもそもこのラジオが動作する全体の電流が20mAほどなのに,何を考えているんだと思います。

 例えばですね,チューニングインジケータとかなら,まあ許せますよ。単なる電源ランプでも,1mAくらいならそれでも許せなくはありません。ですが10mAは無茶苦茶です。

 私?LEDを取り付けることをしないことにしました。無駄ですもん。


・このままでは熱暴走

 これは結構深刻です。組み立ててから気が付いたことで,他の方もあまり指摘されていないようなのですが,致命的な欠陥です。

 電力増幅段のバイアスは固定バイアスで,3Vの電池電圧を4本の抵抗で分圧して,約0.8Vを与えています。ですが,電源電圧の変動がもろにバイアス電圧と連動するので,トランジスタのベース電流が大きく変化してしまいます。

 ということは,動作点も大きく変わりますから,電池が減ると急激に歪みが出たり,電池が新品だと消費電力が増大します。

 私の場合,安定化電源器で音を出していたのですが,3.0Vなら20mA程度だった消費電流が,3.3Vにすると100mAを越え,3.5Vにすると200mAを越えます。この時電力増幅段のトランジスタはチリチリに発熱していて,やけどをするくらいです。

 電圧が上がるとバイアスが上がり,ベース電流が増えます。そうするとコレクタ電流が増え,温度が上がります。ところがトランジスタのVBEは正の温度係数を持っているので,温度が上がるとVBEも上昇し,ますますベース電流が増えます。そうするとコレクタ電流も増えて温度が上がって・・・を,トランジスタは壊れるまで繰り返します。これが熱暴走です。

 温度上昇がそれほど出ないような小さい電流の回路なら,バイアスの安定化だけで温度補償まではあまり気にしなくてもいいのですが,特に発熱のある電力増幅器で温度補償をしないのは自殺行為です。

 この回路は,温度補償はおろか,固定バイアスですのでバイアスの安定化さえ行われていません。恐ろしい・・・

 本格的な温度補償をするのは面倒だし,そこまでしなくてもいいだろうと,とりあえずバイアスの安定化だけ行います。とても簡単で,それぞれのトランジスタのエミッタに直列に,22Ωの抵抗を入れます。これだけです。

 ベース電流が増えてコレクタ電流が増えると,エミッタの抵抗に流れる電流も増えるので,この抵抗に発生する電圧も大きくなります。

 するとトランジスタのVBEは下がるので,ベース電流も下がります。同時にコレクタ電流も下がります。こうして一定の状態を維持しようとするのです。

 ただし,抵抗を入れてしまうので,出力は小さくなります。かといって抵抗を小さくしすぎると一定の状態を維持しようとする力が弱まるので,ぽろっと安定状態から外れて暴走しがちです。

 ということで,とりあえず22Ωで電源電圧を振って試したところ,うまく制御出来ているような感じです。5V以上に振っても,電流が急激に増加するようなことはなくなりました。

 この時のVBEを測定してみると,0.62V弱です。ちょっと低めですね。

 確かに,このままの回路では電圧が低めで,ベース電流も小さめですから,分圧抵抗の値を調整して,少し高めにします。ここでは4本の分圧抵抗をすべて150Ωにしました。結果としてVBEは0.63V程度に少しだけ上昇しましたが,なかなか安定せず,ジワジワと上昇するので,不安があるのは確かです。

 きっとどこかで安定するはずなのですが,時間もなく安定するまで待てませんでした。肝心の音質ですが,あまり改善していません。もうちょっとベース電流を流してもいいかも知れませんが,もう面倒だからこれでいいです。

 ところでちょっと気になるのは,この分圧抵抗には,7mA近い電流が流れ込んでいるんですね。ラジオ全体の消費電流が20mA弱である事を考えると,3割4割がここで消費されているのです。もったいないと思いませんか?

 もっとも,電力増幅段のドライブにはそれなりのベース電流が必要で,抵抗でバイアスを作るならベース電流の10倍くらいはブリーダー電流として流さないと不安定です。だから仕方がないといえば,その通りなのですが・・・

 で,ここを改善しようとすると,電力増幅段をICに置き換えるとか,そういう大きな改造が必要になるので,今回はもうあきらめてこの回路のままにします。

 ところで,この22Ωにパラレルにコンデンサを付けると,インピーダンスが下がります。交流的には抵抗がないのと同じように見えるからなのですが,今回は気休めという事で,一応10uFを入れておくことにしました。ただし,あまり効果がないように思うので,コンデンサはなくてもいいかも知れません。


・調整について

 スーパーラジオですから,最終的に完成させるには調整が不可欠です。しかし,世の中なかなか良く出来ているもので,IFTもバリコンのトリマも,出荷時の状態でとりあえず音が出るように鳴っていることが多いです。

 調整無しでもそれなりに動作するようになっているので,調整をすることが出来ない人は,変にいじらない方がよいと思います。ただし,受信出来る周波数の範囲がずれていて,端っこの局が入らない可能性は高いですが,これは割り切ってください。

 それで,調整するための機材や知識がある人は,やっぱりトライしたくなるものだと思いますが,私はちょっと戸惑いました。

 聞いた話ですが,どうもかの国の中間周波数は455kHzではなく,450kHzなんだそうです。完成品はもちろんですが,IFTも局発コイルも,だいたい450kHz付近に調整済みで出荷されているような感じです。

 ですから,これを日本の標準である455kHzで調整しようとすると,大きく調整点が変わってくることになり,もしかすると部品の持つ調整範囲を越えてしまうかも知れません。

 ということで,まずは調整の手順です。どうも発振気味なので,ちゃんと調整出来なかったことを先に書いておきます。

(1)バリコンの局発側の端子をピンセットでショートし,局発を止める。
(2)SGを455kHzに設定し,アンテナコイルの端子のどれかに適当に信号を注入する。
(3)IFTの白と黒を交互に回して,発振音がなんとなく出るようにしてから,IFTの白を回して音が最大になるようにする。
(4)IFTの黒を回して,発振音が最大になるようにする。これでIFTの調整は終わり。
(5)次に局発の調整。ショートしたピンセットを外し,SGを531klHzにセット,インダクタを繋いでアンテナコイルに結合して,ラジオの受信周波数を最低にしてから,赤いコアの局発コイルを回して,発振音が大きくなるようにする。
(6)次にSGを1602kHzにし,ラジオの受信周波数を上限にして,バリコンの局発側のトリマーを回して,音量が最大になるようにする。これを交互に何度か繰り返す。
(7)SGを531kHzにして,ラジオのダイアルを下限にしてから,バーアンテナのコアを抜き差しして,発振音が最大になるようにする。
(8)SGを1602kHzにして,ラジオの受信周波数を上限にしてから,バリコンのアンテナ側のトリマーを回して,発振音が最大になるようにする。これを交互に何度か繰り返す。
(9)バーアンテナが動かないように,接着剤なりロウで固めて終了。


 実は,なかなか最大点って見つからないし,調整というのは結構難しいものです。ですが,入ってみれば調整範囲が広いと言うことでもありますから,性能は出にくくても厳密に調整を追い込む必要もないということで,そこそこのところでやめても,そんなに性能差は出ないんじゃないかと思います。

 私の場合,調整がいまいちなときには,受信種は数の下限に近いNHKのラジオ第一が受信出来ませんでした。性能云々ではなく,明らかに受信出来ないというのは問題で,放置できません。

 それと,私はうっかりアンテナコイルのリード線をギリギリの長さに切ってしまったので,コイルを動かして調整をすることがあまり出来なくなってしまいました。コアを動かす方法で逃げようとしましたが,ケースにぶつかってあまり大きく動かせません。これから作る人は,少し余裕を持って切った方がよいと思います。

 それにしても,以前修理と調整を行った松下のポケットラジオは,調整もとても楽だったんですね。調整点がわかりやすく,追い込むのも簡単でした。中間周波増幅が1段しかないからなのか,トランジスタを交換して不安定になっているのかわかりませんが,とにかく今ひとつな感じでした。


・結論として

 最終的に,音質はともかく,十分な音量と実用的な感度で,ラジオを完成できました。消費電力も小さく出来たし,安全性もそれなりに確認出来たので,実用機として使う事ができるでしょう。

 受信出来る局も,関東の主要局はすべて入っています。ラジオは,趣味で聞くのも楽しいですが,一番活躍するのは災害時でしょう。災害時には,故障や電池切れ,その時々で入手出来る電池の種類が限られることから,いくつか,何種類か持っておくとよいと思っているので,このラジオの一応も動作する状態にしておいて,いざというときに役立つことを期待しています。

 それにしても,2日ほどあれば完成できると思っていたのに,5日もかかってしまいました。なかなか手強いですね。

 これ,ほんとに皆さん完成できてるんですか?

またまたURLの変更のお知らせ

 またまたURLの変更です。

 再びno-ipのお世話になることにしました。今後は

http://gshoes.no-ip.biz

 でアクセスをお願い致します。

 先日,no-ipがマイクロソフトによって使用不能に陥った際に,代替DDNSを探したのですが,切り替えるつもりだったdhsが実は有料だったという話と,no-ipがとても迅速に事態の収拾に取り組んでくれて,現在は元のサービスを復活させてくれていることで,もう一度使わせて頂くことにした次第です。

 dyndnsが有料になってからと言うもの,なかなか落ち着かないのが実情なのですが,今は過渡期だから仕方がないなあと思います。独自でドメインを取る事も考えましたが,私はこのURLで一銭のお金も得ていませんし,今はgoogle先生のおかげで覚えやすいURLである必要もなかったりするんですね。

 実のところ,このサイトも以前は日誌が私の周囲の方々にも読まれる機会があると耳にしていて,そのためにも維持しないといけなかったのですが,今はそうでもなさそうで,日誌は自分の為という性格が強くなってきましたし,加えて日誌以外の自分の為に用意した他のサービスのために維持している側面もあります。

 ちょっと脱線しますが,日誌とか日記とか,そういうのは長く続けると良いものだなあとつくづく思います。過去にやっていたこと,興味を持ったこと,自分に怒った環境の変化などを思い出すきっかけになりますが,そういえばあの家電はいつ買ったかなとか,この回路を設計したのはいつだっけ,とか,この時はどういう改造をしたんだっけとか,そういう記録が残っていることは,結構便利なのです。

古いAMラジオの復活

  • 2014/07/29 13:58
  • カテゴリー:make:

 先日実家に戻った際に,私のがらくた箱から,古いポケットラジオを発掘しました。

 松下電器産業(現パナソニック)製の6石スーパーで,2SA101やら2SB172といった,当時としてはおなじみのゲルマニウムトランジスタが並んでいます。

 電池は006Pを使っていて,この後のトランジスタラジオが単三2本になったりすることを考えると,少なくとも国内向けとしては初期のものになるのではないかと思います。

 外観や回路構成,使っている部品などから推測するに,1960年頃のものではないかと思います。思いますという程度にとどまったのは,形式などが全く不明だからです。

 もともと,このラジオには,黒いケースが背面に取り付けられていました。電池を交換するのにこのケースを外してしまわねばならず,中の部品が全部あらわになってしまうという潔い設計なのですが,悪いことにこのケースがなくなっており,ここに貼られていたと思われる機銘板もなくなってしまったのです。

 このラジオは父が独身時代に買ったものだと思われるのですが,私が小さい時に,私の貴重なオモチャになっていました。小学校にあがるずっと前の話だと思いますが,ピンク色のペンでチューニングダイアルに落書きをし,さらに「あらいぐまラスカル」のシールを貼りまくっていましたし,革製の黒いソフトケースは早いうちに紛失,そして裏蓋もなくなってしまいました。

 裏蓋がなくなってからは基板がむき出しになってしまい,バーアンテナは断線し,部品は曲がり,動かなくなってしまったのですが,捨てることは特にせず,幾度も世代交代を重ねた私のがらくた箱に長年眠っていたのです。

 実家の荷物をいろいろ整理していて,野球ゲームや「さんすう博士」と一緒にこのラジオを見つけた私は,修理して動くようにすることを1つの使命ととらえました。いやなに,6石スーパーくらいなら修理は出来るはず,SGだってあるんだし調整だってちゃんと出来るはずで,むしろスーパーラジオの調整の練習になるんじゃないかと,そうやる気が出てきたのです。

 いろいろ片付いて,ようやくそのラジオの修理に取りかかることができたのですが,まず壊れているのはバーアンテナです。

 バーアンテナを見ると端子が4つあります。詳しい仕様は不明ですが,同調回路そのものの巻線と,トランジスタに繋がる巻線の2つが必ずあるはずなので,4端子という事はタップも出ていない素直なものだとわかります。

 基板とバーアンテナを繋ぐ配線が1つ切れているのと,アンテナコイルが途中で切れているのと,2つの断線が目視で分かります。見えない断線があるかも知れませんが,4つの端子の導通とインダクタンスを計ってみると,このうち2つは導通あり,残る2つはどこにも導通しません。

 そこで,導通しない2つの端子のそれぞれと,切れたアンテナコイルとの間で導通を見ると,片側は導通ありと出ました。

 推測すると,どうもこの切れた配線は,端子から遠いところに巻き終わりがあって,そこから伸ばして端子と繋がっていたものが,途中で切れてしまったもののようでした。

 そこで試しにこの巻線と端子を繋いでインダクタンスを計ってみると,ちょっと大きいのですが740uHくらいが測定されました。大きすぎるなあと思いつつ,とりあえずショートや断線,配線違いもなさそうということで,バーアンテナとして機能することを期待したい結果です。

 これで仮に組み立ててみると,最初はシーンと何の音もしなかったのですが,いじっているうちにノイズが出始め,バリコンを回すとうまくラジオが受信出来ました。ここまでくると,特に致命的な故障が起きているわけではないと言えるので,かなり気が楽です。

 ここで,レストアを以下の手順で進める事にしました。


・電解コンデンサの交換

 他はともかく,電解コンデンサはすでに50年近く経過してほぼ確実に劣化しているはずですので,これは問答無用で交換です。

 当時の電解コンデンサは今のようにE12系列ではないので,33uFではなく30uFなんですね。これは別に問題にならないくらいの差ですから,似た値のものにに交換します。

 結局交換したのは,1uFと10uF,30uFくらいだったように思います。電源に入っているパスコンがまさに30uFだったのですが,ここは手持ちの関係で47uFにしました。

 この頃の基板は片面で手描きですし,しかも大きな部品を無理に配置するのでかなり込み入ってますし,ジャンパ線も飛んでいます。古い電解コンデンサを外すのにジャンパ線を外したのですが,うっかりもとに戻す時の接続点を忘れてしまい,適当に付けたらどうやら出力段のトランジスタの動作点が変わってしまい,強烈に発熱してしまい,肝を冷やしました。ゲルマニウムトランジスタは,結構熱暴走しやすいと聞きましたし,そのくせ熱に弱い(80℃くらいで壊れるらしい)ので,ちょっとずつ音が小さくなり,触れなくなるほど熱を持ち始めたときには,もう駄目かと思いました。

 で,外した電解コンデンサを確認したのですが,30uFは容量抜けをおこしていて,すでにコンデンサとしては機能しなくなっていましたが,それ以外のものは初期の容量を維持しており,ちゃんと動いていたようでした。すごいですね。


・調整

 標準的なトランジスタ式のスーパーラジオの調整の経験をする,というのが1つのテーマですから,これはきちんとやっておきたいところです。ですが,いろいろ調べてみても,これだ!という決定版の方式がなかなか出てこないんですね。

 私が持っているラジオ関係の本は古く,真空管時代の調整方法が丁寧に解説されていますが,原理はともかく具体的な方法としてこれがトランジスタラジオにはそのまま適用できません。

 その後,ラジオは最新技術ではなくなりますし,IC化と無調整化が進み,1980年代の中頃にはラジオの作り方など雑誌にもあまり掲載されなくなりました。

 また,調整の方法も持っている測定器によって随分違い,放送波を受信して調整するものから,周波数カウンタを使うもの,SGを使うものなど,皆さんいろいろ工夫をしているようですが,ちょっと残念なのは「本来ならこうすべきなんだが」という部分があまり語られておらず,手順と結果だけ書かれているWEBが多いんですね。

 そこで今回は,古い文献を出来るだけたくさんあたり,自分なりに手順を考えてみました。

(1)まずなんでもいいから,放送を受信します。受信出来ない場合は調整不良か故障かわかりませんが,少なくとも受信が出来れば調整が進められることは確実です。

 実のところ,新品の部品を買ってきた状態なら,ある程度の範囲に入っているので,特に調整をせずともとりあえずどっかの放送局を受信出来ることが多いです。


(2)IFTの調整をします。まず,局発を止めるため,バリコンのうち局発側をGNDと繋いでショートします。

(3)次にSGを455kHzにセットし,1kHzを変調して出力させます。これをアンテナコイルの端子に繋いで,ラジオから1kHzが出ることを確認します。弱くてもノイズまみれでもかまいません。多くのラジオは455kHzが通ってしまうので,こうして音が出てくれるのです。

(4)検波するダイオードの入り口にオシロスコープをつなぎ,検波前の波形を見ます。いかにも振幅変調というような波形が見える場合もあると思いますが,今回見るべきなのは1kHzではなく455kHzですので,時間軸を切り替えておいて下さい。

(5)SGを操作し,変調をOFFにして搬送波のみにします。これで綺麗に455kHzがオシロスコープに出ているはずです。

(6)SGを操作し,波形が綺麗に見えるギリギリところまで振幅を絞って下さい。大きすぎるとあとの調整で変化が見にくくなるので,出来るだけ小さくしておくのが理由です。

(7)SGを操作し,周波数を455kHzの前後にふってみます。おそらく振幅が変化すると思いますが,一番大きくなる周波数が455kHz以外にあるかどうかを見ておいて下さい。

(8)SGを455kHzにあわせて,いよいよIFTの調整です。中間周波増幅が2段の一般的なスーパーラジオは,IFTが3つあります。上流から順に通過帯域が広くなっていくので,調整の順番は上流から下流に,です。

 IFTはコアの色で区別されているので,黄色,黒,白の順番で調整をします。この順番でコアを調整用のドライバーで回して,オシロスコープの波形の振幅が最大になるようにします。

(9)次に局発の調整です。(2)でバリコンの端子とGNDをしましたが,これを取り外して局発を発振させます。

(10)SGの出力に,別のアンテナコイルか400uHくらいのインダクタを繋いで,ラジオのバーアンテナに近づけて,結合させます。そしてSGを受信周波数の下限である531kHzにあわせて1kHzを変調して出力し,これを受信します。ピーと音が出ればOKです。

(11)ここで赤いコアの局発コイルを調整し,ピーという音が最大になるように調整をします。わかりにくければ検波後の回路にオシロスコープを繋いで,復調後の波形が最大になるようにしても良いかもしれません。

(12)次にSGを受信周波数の上限である1602kHzにあわせてこれを受信し,今度はバリコンの背中にあるトリマーコンデンサのうち,局発側を回して音が最大になるようにします。どっちが局発側のトリマーかわかりにくいと思いますが,アンテナコイルと並列に繋がっていない方の端子の近くにあるのが,局発側であることが多いです。

 IFTがすでに455kHzに調整されているので,局発と放送波の差が455kHzになれば最大音量になるわけですね。上限を合わせると下限でちょっと狂ったりするので,531kHzと1602kHzを何度か交互にあわせます。これで局発は調整出来ました。

(12)最後にトラッキング調整です。SGを531kHzにセットし,ラジオのバリコンを下限いっぱいに回し切っておきます。そしてバーアンテナのコアを抜き差しして,531kHzがきちんと受信されてピーという変調音が最大になるようにします。

(13)今度は1602kHzにSGをセットし,バリコンを上限いっぱいに回し切って,バリコンの背面にあるトリマコンデンサのうち,アンテナコイルに繋がっている方を回して,受信音量が最大になるようにします。

(14)これを何度か交互に繰り返し,最終的に531kHzから1602kHzまでの間でトラッキングがとれて,常にミキサーの出力が455kHzになるようにします。

(15)IFTや局発コイルは勝手に動いたりしませんが,アンテナコイルのコアは動きやすくてずれてしまうので,パラフィンか何かで固定します。

 これで調整完了です。531kHzから1602kHzまでの範囲で局発との差が常に455kHzになるようになっており,かつIFTは455kHzの帯域フィルタとして動作していますから,このスーパーラジオはその性能をいかんなく発揮しているはずです。


・清掃

 分解して出来るだけ綺麗に清掃するのですが,アルミに小さい穴をいっぱい開けた「ラス板」が使われていて,しかも不織布のテープ(ヒメロンといいます)が貼られているので,水洗いをすると良くないでしょう。

 そんなに汚れているわけではなさそうなので,メッキのくすみとラス板はコンパウンドで磨きます。油性ペンの落書きはアルコールとシンナーで拭き取ります。

 たったこれだけの作業ですが,随分手触りも良くなり,綺麗になりました。


・裏蓋の加工

 このままでも音は出ますが,なにせ背中がむき出しですので,調整がずれたり壊れたりします。背面が開放されると音も良くないので,出来れば裏蓋を復元したいところですが,代わりになりそうなものはぱっと思いつきません。

 手持ちのケースをいろいろ試したところ,厚みはともかく縦横だけはほぼぴったりのプラケースが見つかりました。どうやら数年前に買ったワールド工芸の10000型電気機関車の真鍮キットの箱だったようです。

 イヤホンジャックと音量つまみの部分を切り欠いてはめ込んでみますが,ちょっと無理をしているという感じはしつつも,なんとか様になっている感じです。使い勝手も音質も十分です。

 黒く塗装しようかと思いましたが,中がそのまま見えるというのも悪くないなと思い,そのままにしてあります。


 ということで,作業期間は4日ほどです。故障がなかったこと,調整がすんなりいったこと,ケースの加工が楽だったことで,予想以上に楽に終わりました。

 それにしても,この頃のAMラジオって音がいいんですよね。しっかり下支えしてくれる低音と聴き取りやすい中域がすばらしく,このサイズのラジオなのにもっと大きなラジオから音が出ているのかと思うほどです。

 まろやかさがあるように感じるのは,ゲルマニウムトランジスタのせいかもしれませんし,トランスを使った低周波回路のせいかもしれません。いやまてよ,セラミックフィルタに比べてダルな特性をもつIFTのせいかも・・・気のせいですね。

 つくづく思うのは,ラジオって50年以上前のものでも実用品になるんだなということです。テレビはすでにアナログ放送が停波しているので昔のものは映りませんし,携帯電話も停波しているので,昔のアナログは当然,次の世代のデジタルのものも全く動きません。PHSもそうですよね。

 カメラも,35mmのフィルムは売ってはいますが,APSとか110とか,すでに手に入らないものも多く,そういうものはすでに使う事ができません。

 20年前のパソコンはネットに繋がらず,そこに流れているデータを処理する力もないので,全く役には立ちません。

 その意味では,黒電話は今でも繋がって通話も出来るわけで,技術革新が進むことも素晴らしいが,完成されたシステムを維持していくこともまた素晴らしいと,思いました。

 余談ですが,10年ほど前にラジオがデジタル化されるという話が出た際。もしもAMラジオのデジタル化されたらゲルマラジオを作り,音が出るということに感動することがなくなってしまうのかなあと心配になったことがありました。

 ラジオの自作はなくならないでしょうけど,電子回路としてはおそらく最小規模で,電池も必要ないという摩訶不思議なゲルマラジオが動かなくなってしまうのは,とても寂しいなあと思っていたのですが,幸いにしてそういう事態は起こらず,相変わらず夏休みの工作にゲルマラジオは定番であり続けています。

テスターを新調しました

  • 2014/07/28 13:49
  • カテゴリー:散財

 テスターを新調しました。

 今回買ったのは,フルークの101というやつです。

 フルークって,この仕事をしていると,なんやかんやで一流品ですから,ものよりも持っている人のこだわりのようなものに興味がいきます。

 テスターは価格も安いものもありますし,一般の人にも手軽に買える測定器です。その割に測定出来る事が多くて,初めてハンダゴテを握る子供からこの道30年のプロまで,使って意味のある測定器です。

 ですが,その中でフルークは今ひとつアマチュアへの露出が少なく,また価格も高いので今ひとつな感じがありますが,経験とが上がるごとにフルークを知り,やがて欲しいと思うようになるわけです。

 とはいえ,所詮はテスターですし,高額なものは別にして,3万円くらいまでのものなら,基本性能や精度を見ても他社のものと比べてそんなに変わるものもなく,私などはむしろブランド志向でフルークを選ぶくらいなら,ちゃんと吟味したサンワが一番いいと思っています。

 そういえば,高校生の時に師匠と仰いだバイト先の店長さんに,テスター買ったと話をしたら,すかさず「どこの?」と聞いてきたので,サンワですと答えたら,ニコニコしながら「サンワならええね」と返してくれたことを思い出しました。

 いくら安くて高性能とはいえ,秋月オリジナルのポケットテスターで測定を平気な顔をして行っている人には,いくら仕事が出来ても首をかしげたくなるわけですし,その結果を求めている相手を安心させたり,信用してもらったりという,エンジニアとしての最低限の心遣いが出来ない人というのは,申し訳ないけど一緒に仕事をしたくないものです。

 先日,偶然計測器ランドのWEBサイトを見ていたら,フルークの廉価版が登場とあります。なになに,と見てみると,一番安い101というモデルで6000円弱じゃありませんか。

 106と107という上位機種もありましたが,それでも1万円までで,なかなか安いです。調べてみると低価格路線に打って出た戦略モデルなんだそうですけども,私の目には,一目でフルークと分かるあのデザインがポケットに入る超小型であることに,もうクラクラしました。

 ちょうどamazonのタイムセールをやっていたのでちょっとお安く買えたこともあり,101を注文しました。アンチフルークといっても良かった私が,まさかフルークを買うことになるとは・・・

 実は101と106,そして107の三機種は微妙に難しい差があるシリーズです。101が一番安く,106から107と値段が上がるのは分かるとして,106は101よりも上位なのに周波数もダイオードテストもデューティも測定出来ないとか,実は106は101よりも大きいとか,価格が上がるごとに機能が追加されるわけではないので,油断は禁物です。

 とりあえず107を買っておけば全部入りなので憂い無しというところなのですが,バックライトも必要なければ,本体よりも大きなストラップも必要ありません。なにより超小型のフルークというところにしびれた私は,電流が測定出来るからと大きくなってしまうことをどうしても許せなかったのです。

 かくして手元に届いた101ですが,軽くインプレッションを。

(1)大きさ

 手にすっぽりおさまるサイズのフルークはおそらく初めてであろうと思いますが,投影面積もさることながら,厚みも手頃で邪魔になりません。中央部がほんの少しだけくびれているのですが,ここが手にも馴染むので,使いやすいです。

 あらためて大きさを確認しましたが,やはり106や107ではやや大きいと思います。この101のサイズは絶妙なところなんでしょうね。


(2)使い勝手

 まず端子がパネル面ではなく,下側にありますので,リードが下から出てきます。これは結構面倒かなと思っていたのですが,全然大丈夫です。

 ロータリースイッチはさすがフルーク,とても良い感触です。ただ,OFFから1つ動かしたところがAC電圧なので,DC電圧を測定するときに「あれ」と思うことがありました。

 これはフルークのテスターに共通する仕様なのですが,電気工事士が使うことを想定して1つ目にAC電圧を置いているのかも知れません。国産を含め,多くのテスターがDC電圧を1つ目に置いていることを考えると,意地というかこだわりというか,そういうものを感じますが,私はあまり合理的だとは思いません。

 ディスプレイは大きすぎず小さすぎず,また表示内容も良く整理されており,視認性に優れています。ただし,あまり良質なLCDではないようで,見る角度がちょっと悪いと,急にコントラストが下がって見にくくなってしまいます。

 私がテスターで気にするポイントは2つあり,1つはディスプレイの更新周期と,導通を知らせるブザーが鳴るまでのタイムラグです。

 前者は,古いテスターは1秒に1回だったりするのですが,これくらい遅いともう変化を読み取ることは出来ないので,使い方は限られます。せめて1秒に2回くらいは欲しいところですが,この101は1秒間に3回です。

 あまり頻繁に更新されるとかえって測定が難しくなりますから,このくらいが一番適当じゃないかと思います。

 後者についてですが,これは十分速くて,問題なしです。実測で30ms程度とのことですが,使い勝手を悪くするレベルではないと思います。

 中には0.5秒くらいのタイムラグがあるテスターもあり,これはもう論外です。例えば50ピンのコネクタの接続チェックを行う時に,すべての端子を調べるのにかかる時間はタイムラグだけでトータル25秒も余計に待たされるわけですよ。テンポが大事な測定に,これはもう致命的です。

。ただ,導通の判定をいい加減にやっているから反応速度が速いテスターというのもあるはずで,これはこれで使う意味がありません。電気抵抗を測定するなり,流れる電流を調べるなり,電圧をみるなりで,きちんとした判定は不可欠です。

 101がこうした基準で導通を判定しているかどうかは,結局分からずなのですが,あまりいい加減な事はやっていないはずと,信じて使う事にします。


(3)分解能と精度

 6000カウントのテスターは今どきのエントリーモデルです。かつては4000カウントとか2000カウントのテスターもありましたが,それらを一通り使って見た経験から言うと,6000カウントは欲しいところですが,一方で6000カウントあれば十分という気もします。

 というのは,例えば4000カウントと6000カウントを比べて見ると,5Vを測定するとき,6000カウントだと5.000Vと表示されるのに,4000カウントだと5.00Vとなってしまうからです。

 どっちも1%とか2%の誤差を持つわけだし,最終的に大差ないように見えますが,デジタルテスターの場合,いわゆる測定誤差に加えて,一番下の桁が2から3くらいずれることを認めています。分解能が小さく,表示桁数が大きいとここが有利なのです。

 だから,仮にどちらのテスターも1%の誤差を持つもので,0.05Vの測定誤差を含んでいるとしても,そこから2カウントの誤差を考慮すると,4000カウントだと4.93V~5.07Vまでの中に真の値が,6000カウントだと4.948V~5.052Vの中に真の値があることになるわけで,その範囲がまさに桁違いなんですね。

 私などは古いタイプの人間ですので,アナログのメーターは読みやすくて好きです。最小目盛りの間の,どの当たりに針が来ているかをどんぶり勘定で判断し,それをサクサクと記録するだけです。最小目盛りを信用出来るようにするには,そのヒトケタ下を読まないといけないのですが,そんなもの,そもそも正確に読めるはずがありません。

 下の目盛りをちょっと越えているのか,真ん中よりもちょっと低いのか,真ん中をちょっと越えているのか,それとも上の目盛りにもうちょっとで届くのかという4つの程度を見て,それぞれ0.2,0.4,0.6,0.8とおけば,もうそれで十分ですから。

 話を戻しましょう。精度については101も106も107も同じで,DC電圧では0.5%+3カウントです。これはこの価格のテスターとしてはまずまずよい精度です。実用上も問題はありません。

 正しい方法ではありませんが,安定化電源にいくつかのテスターを並列に繋いで電圧を見てみましたが,HPの34401Aと比べても,小さい電圧から高い電圧までほぼ全域において0.01くらいの差しかありませんでした。

 ちなみに秋月のP-10は長く使い込んでいるせいもあって,値はもうボロボロでした。レンジによってはもちろん,測定電圧によって全然値がずれるので,もうリニアリティが破綻しているんだと思います。6000カウントのP-16ですが,これは思った以上によいもので,101とほぼ同じ値を示していて,リニアリティも問題ありませんし,更新周期も速くて,この値段なら実によいテスターと言えるでしょうが,残念なのはオートパワーオフの時間が短く,頻繁に電源が切れてしまうことです。解除の方法もあるのですが,私のP-16はこれが有効になりません。

 あと,うちで最古のデジタルテスターであるサンワのRD-500ですが,これもリニアリティが悪く,値があまり信用出来ません。もう30年近く前のものですし,今どき2000カウントで更新周期は0.5秒ですので,もう全然使い道がないのですが,実は導通ブザーの反応が速くて,とても重宝します。


(4)その他

 CAT3・600V対応とか,付属のテストリードが単品で買うと4000円を超えるよいものがついているとか,電池の交換をするのに裏蓋を全部外すのではなく,ロック付きのちゃんとした電池ブタがついているとか,安いとは言え,こういうところで手を抜かないところはさすがにフルークです。

 電流の測定が出来ないことを問題にする人は106か107を買えば良いと思いますが,振り返ってみると電流を測定する機会ってそんなにありません。その割には測定に危険が伴うものですから,「ないよりはあったほうがいい」という程度で電流測定機能を求めるのは,ちょっともったいないかなと思います。

 もちろん,電流の測定はとても大事な事です。ですから,そこはいい加減なものではなく,安全で精度の良い,しっかりしたテスターを1つ選んで,これに電流測定機能を求めるべきと思います。

 この101や106,107には,電流クランプが用意されています。5000円という値段でクランプメーターになるのですから,これはよいですね。私も先日クランプメーターを買わなかったら,きっとこれも一緒に買っていただろうと思います。

 価格が安いので交流電流しか測定出来ませんが,危険な電流測定がクランプで出来るのであれば,最初から電流測定機能などなくてもよいんじゃないかと思います。


(5)まとめ

 101,106,107の3つのうちどれを買うかですが,おすすめはやっぱり101です。小さい安いし精度は上位機種と変わりません。なくて困るのは電流測定機能くらいですが,電流の測定はそんなにするものではないし,電圧と抵抗をこの信頼性と安全性で測定出来るなら,この価格はとてもありがたいと思います。

 確かに,秋月をはじめとする安価で高性能なテスターはいくらでも見つかりますが,精度も怪しいし,そもそも本当に安全なのかという疑問があります。高いと入っても1万円までの測定器なら,思い切って良いものを買って欲しいなと,私は思います。

 さて,101が思った以上によいテスターだったので,P-10には引退してもらうことにしましょう。10年以上にわたってお世話になりましたが,もう電池も何度も液漏れして,精度もガタガタ。満身創痍で可愛そうなくらいですが・・・あ,乾電池のチェッカーがあるのはこのP-10だけでした。バッテリーチェッカーとして,もうちょっと頑張って頂くことにしましょうか。

周波数カウンタをさらに改良

  • 2014/07/14 16:19
  • カテゴリー:make:

 先日,何気なく秋月電子のWEBを見ていると,新商品の中にTCXOがラインナップしていました。温度補償型の高精度発振器をTCXOといいますが,これは本来特殊で高価で,また標準品として普通にお店に並んでいるものではありません。

 とはいえ,無線系では今も昔も必須と思われる重要な部品で,時々「残りもの」がこうして,安価に出てくる事があります。

 以前は12.8MHzのTCXOが安く手に入ったものですが,それも入手が難しくなり,私が以前レストアして完成させた周波数カウンタのタイムベースを,25年前の古い12.8MHzからPLLで10MHzにして搭載してあることは,ここにも書きました。

 10MHzのTCXOが手に入れば何の問題もないのですが,そういう話も期待薄で,まあとりあえず25年前のTCXOにPLLという若干不安な構成でもいいか,とあきらめていました。

 ところが,なんとまあ2個で350円という安価な価格で,TCXOが出ています。今どきの発振器らしく,面実装品です。

 周波数は10MHz,12.8MHz,20MHzの3種類。周波数の誤差は最大で2ppmで,肝心な温度特性は-30度から+85度の間で2ppmと,まずますの性能です。

 現在搭載しているTCXOは,温度特性が3ppmということですので,交換するだけで性能アップしそうな感じです。

 加えて,ケースを開けたときと閉じたときとで,測定値が変化することが先日わかったのです。10MHzのOCXOを測定していると,数Hzの変動がゆるやかにあります。温度のせいとは言い切れませんが,他に要因も見当たらないので,きっとそうなんじゃないかと思うのですが,仮に3Hz変動すれば3ppmですので,まあスペック内ですから,文句も言えません。

 ということで,こういうスポット特価品は買い逃すと後悔しますので,さっさと確保です。

 回路構成を少し考えましょう。この周波数カウンタは5Vで動いていますので,信号レベルも5Vでなければなりません。しかしこのTCXOは3Vで動きますので,10MHzのTXCOには3VのLDOを通して供給します。

 TCXOの仕様を見ると,2.9Vが標準とありますので,電圧可変型のLDOの電圧設定抵抗を多回転ボリュームにして,2.9Vに合わせます。

 TCXOを電源に繋いで,10MHzで発振していることを確認してから,手持ちの関係で74AHC04を繋いで見たところ,全然信号が出てきません。おかしいなあ,ちゃんとロジックレベルは確認したつもりだったのになあ・・・

 と思って遅ればせながら波形を確認してみると,TCXOの出力が1Vp-pくらいしかありません。あれ,どっか配線間違いしたかなと確認しましたがそういうこともなさそうです。あわてて仕様を見直すと,このTCXOの出力は0.8Vp-pと規定されていました。これで正しいんですね。

 思い込みで設計するとこういうことがあるから問題なのですが,通信機用のTCXOでこの出力仕様というのは標準的なものらしく,私の不勉強も露見してしまいました。恥ずかしい話です。

 対策を考えますが,振幅が0.8Vしかありませんので,ロジックICに確実にHとLを入力するのは難しそうです。そうなると,波形そのものを増幅してやる必要があります。

 10MHzという速くもないが遅くもないという信号を,ただ振幅だけ確保する増幅回路ですので,出来るだけ簡単に済ませます。2SC1815を使ったインバータですが,トランジスタがONするベース電圧としては0.8Vは結構ギリギリですので,しっかりベース電流を流すために,割と小さなベース抵抗にしないといけません。

 そして崩れた信号波形が出てきますから,ここはシュミットで波形整形です。74HC14を使う事にします。

 計算でざっくり抵抗の値を求めてバラックを組み,波形を見ながらカットアンドトライをして,次の段にひかえている74HC14の入力を確実にHとLに出来るあたりを探っていきます。ここでは,ベース抵抗を220Ω,コレクタ抵抗を1kΩにしました。ん?なんか不思議な値だなあ。まあいいか。

 これでようやく,TCXOが5VのTTLレベルに変換できました。

 さて,次です。この周波数カウンタは1/1024のプリスケーラを使って2.4GHzまでカウント出来るのですが,値を直読するために10MHzを1/1024した9.765625MHzをベースクロックにすることになっています。

 これまでは,10MHzこそTCXOでしたが,この9.765625MHzは通常の水晶発振子を使っていました。まあ,1/1024分周するので,タイムベースの誤差もそんなに小さくなくても良いかもしれませんが,そこは気分の問題です。例えばですね,2GHzの測定を行う場合,この周波数カウンタでは2MHzの周波数をカウントすることになります。水晶発振子の誤差が20ppmとすれば,2MHzの20ppmで4Hzの測定誤差が入ってきますから,実際の周波数に直すと4kHzの誤差となります。結構大きいですね。

 これがTCXOを使って2ppmに出来れば,誤差はヒトケタ下がり,400Hzの誤差となります。つまり,20ppmなら1kHzの桁は信用出来ないけれども,2ppmなら1kHzの桁が信用出来るようになるというわけです。

 ですが,こんな中途半端な値のTCXOは売っていません。困ったなと思いつつ,ならば手持ちのTCXOを改造するというのはどうだ,という発想にいたりました。

 手持ちのTCXOは,トヨコムの9.98MHzのものと,NECの15MHzのものの2種類です。前者の方が値が近いのでこちらを分解して,推奨を交換しましたが,残念ながら規定の値に調整出来ません。サーミスタは使われておらず,どうも水晶の温度特性を打ち消すようなコンデンサと組み合わせた回路のようです。そこでコンデンサを交換して無理矢理合わせましたが,今度は温度特性が無茶苦茶で,ちっとも安定しません。失敗です。

 それならとNECのTCXOを分解すると,こちらはサーミスタを2つ使ったオーソドックスなタイプです。温度変化するデバイスがサーミスタですので,コンデンサの温度依存性に頼る割合は小さいはずで,こちらの方が脈があります。

 水晶だけを交換しても規定の値にならないので,コンデンサを交換してなんとか値を出します。ドライヤーを使ったりして温度を振ってみたところ,変動は10Hz以内です。10MHzに対して10Hz以内という事は,1ppm以内の変動という事ですので,これはなかなか結構な性能です。

 ところが,このTCXOの出力は2V付近を中心に3Vくらいの振幅がでているようで,マイナス側にも触れています。さすが通信系のTCXOです。しっかり振幅が出ているので,ここは簡単に2.5Vでバイアスするだけで済ませます。これを74HC14で整形して完了。

 これでめでたく,10MHzと9.765625MHzのタイムベースが完成しました。

 あとは現在取り付けられているPLLによるタイムベースと交換するだけです。

 交換して電源を入れ,普通に動作することを確認してから,安定度を見ていきます。手持ちのOCXOを見ていると,24時間経過しても値が変動していません。以前ならなかなか値が落ち着かなかったのですが,今回は電源投入時から値が変動することはありません。

 もちろん,新しいTCXOの方がスペックは上なのですが,どうも以前のPLLに使っていた12.8MHzのTCXOは,随分と性能が落ちていたような感じです。

 もう1つのTCXOである9.765625MHzをどうやって合わせるかという問題が残っていますが,これはもう面倒なのでこの周波数カウンタで会わせてしまいます。

 2ppmのTCXOで別のTCXOを調整するのですから,結果は20ppmしか保証出来ないわけですが,そういうことをいっていても始まりません。

 こうして,レンジに寄らず,ある範囲に入った測定結果を出す周波数カウンタが出来ました。試しにSSGの周波数を測定すると,10MHzまでなら10Hzの桁までばっちり会っています。

 ここからまた24時間を運転し,OCXOの値の変動を見てみますが,1Hzの桁が全く動きません。OCXOの安定度がTCXOの10倍良いという事を考えると,値が変動しなかったというのは,TCXOが随分安定しているという事でしょう。

 この周波数カウンタ,キットを素組みしたときには値が動いて仕方がなく,PLLを使ったTCXOの10MHzタイムベースを用いたときには,2時間で数Hzの変動がありました。

 しかし今回は電源投入から24時間経過しても値は安定し,絶対値が3ppm程度しか信用出来ないとしても,温度による変化がほぼなくなったことで,とても良い結果が得られました。

 絶対値については,8桁精度の基準クロックがそもそもありませんし,そこまでの精度管理はしんどいので,私はさっさとあきらめているのですが,今回の10MHzのTCXOは調整の仕組みがないので,初期値が実力ではそれなりに追い込まれている上,経年変化も小さいと期待しており,使って見た結果もその通りになっているような印象です。

 繰り返しになりますが,9.765625MHzの改造TCXOも思った以上に安定しています。

 これまで,周波数カウンタは今ひとつ信用出来ない測定器と思っていましたが,これくらい安定してくれるのであれば,もっと積極的につかっていけそうです。

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