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非常用電源を買う

  • 2011/06/14 13:08
  • カテゴリー:散財

 3月11日の大地震は,物理的にも精神的にも大きな影を落とし,それ以前と以後とでは,明らかに世界が違って見えます。西日本の人はどう見えているか分かりませんが,私は阪神大震災も経験している人なので,大地震を他人事として見た経験は,実はありません。

 先の地震では停電という障害も深刻でした。首都圏が比較的早期に落ち着いたのは,電気,ガス,水道といったインフラへの被害が少なく,これが普段通りに使えたからだと私も思うのですが,そのうち電気は原子力発電所をはじめとする発電施設の停止により,計画停電なるものが実施されてしまいました。

 原子力発電所は1つで100万kWもの発電量があります。これを代替するのは並大抵庫のことではありません。今年の夏も暑いと言われていますが,夏場の電力使用量が大きいことはもう避けられず,よって節電をしないと「停電するぞ」と,強く迫られています。

 日本人は流されやすく飽きっぽいので,春になり暖房を使わなくなって電力使用量が下がってくると,さも解決したような勘違いをしがちです。今,そんなに必死に節電やってる人は,正直なところ少ないのではないでしょうか。

 しかし,夏になると確実に深刻な電力不足はやってきます。

 なにか用意をせねばと,妊婦を抱える私は3月下旬にこの夏を乗り切る施策を検討しました。

(1)遮光・遮熱

 昨年の我が家は,2階が40度を超える暑さとなり,1時間もいると熱中症で倒れてしまうほど厳しい環境だったのですが,これは南向きの大きな窓と,西日が差し込む窓があって,一日の大半を直射日光に晒されるからです。

 しかも雨戸は無し。カーテンで防ぐとはいっても,日光によって熱せられたカーテンが熱を出すのは室内です。遮光は家の外で行わねば意味がありません。

 そこで母のアイデアですが,農業や園芸に使う,遮光ネットを外にぶら下げようという事になりました。数ミリ程度の目の荒い黒いネットに過ぎませんが,これで75%を遮光するというのですから,大したものです。

 実は,ゴーヤなどのツル草を育てることも考えたのですが,2階はもの干し場でもありますので,ツル草を育てることは難しいです。それに我々夫婦はゴーヤをそれほど食べません。アサガオは秋まで持ちませんし,ヘチマはそもそも食べ物ではありません。

 常に水が循環している植物に比べて効果が低いことは承知の上で,この遮光ネットをどうやって使いこなすかを思案中です。


(2)扇風機

 冷房を使わないと過ごせない状況で,停電するというのはもう死活問題です。ちょうど8月末には産休に入る嫁さんが,浜に打ち上げられたクラゲのようになっていたら,私はその悲しみをどこにぶつければいいのでしょうか。

 そうならないためにも,最低限扇風機は導入しないといけません。

 私は扇風機はどうも嫌いで,あの人工的な風がつかれますし,子供一人分くらいの大きさで妙に存在感があり,鬱陶しいです。

 しかし,そういうわがままをいっている場合ではありません。ということで,消費電力がわずか3Wで,風にも工夫が成されている「GreenFan2」をいち早く導入しました。

 これ,初期不良で一度交換していますが,それ以後はなかなか快適で,ほとんど音がしない静かさに,「窓が開いているのかな」と錯覚するほど高品質な風,そして3Wという消費電力の低さで,家の中がちょっと蒸し暑いときにも実に快適に過ごせるのです。リモコン装備もすばらしいです。

 昨年,大きめのサーキュレータを買いましたが,これは正直うるさすぎて使い物になりませんでした。今非常に邪魔になっています。


(3)非常用電源の確保

 100万円近い非常用電源がニュースで報道されていますが,電池が数年でダメになることを考えると,今あれを買うのは相当のチャレンジャーだと思います。金額が違うので比べられませんが,プラグインハイブリッドのプリウスを買う方が現実的ではないかと思うほどです。

 ですが,真夏に停電するのは命に関わります。GreenFan2を無理して購入したのは,その3Wという消費電力に注目したからで,この電力なら車のバッテリーにインバータの組み合わせでも長時間動かせるのではないかと思ったからです。

 でも,車のバッテリーを確保するのも面倒です。100Vからの充電と,100Vを作るインバータを装備するシステムは結構大がかりで,自作もなかなか大変だなと思っていると,世の中にはあるものですね,キャンプなどのアウトドアで100V機器を使うためのポータブル電源というものが。

 アウトドアにもキャンプにもバーベキューにも何の魅力も感じない私としては,好きこのんで野宿するのに100V電源で快適に過ごそうなどちゃんちゃらおかしい,と言って憚らなかったのですが,カー用品メーカーがこの手の商品を比較的安価に用意してくれているものを,私のような引きこもりが使ってはならないという法律はありません。

 そこで,セルサス工業という,その手の製品ではよく知られたメーカーのPD-350を,23800円で手配したのは3月下旬のことでした。5月上旬の納期が6月上旬に変更になり,先日ようやく届きました。

(1)スペック

 PD-350は12V17Ahの小型シール鉛蓄電池を中心に,100Vからの充電機構,150Wの100V出力インバータ,12Vシガライターのプラグ,そして自動車のバッテリー上がりをレスキューするセルスタータ機能を持ったポータブル電源です。

 電池の容量は12Vで17Ahですのでざっと200Whです。


(1)第一印象

 でかい,重たい,不細工。

 ポータブル電源としての機能をちょっと無視すると,嫌悪感のある外観です。無骨な外観,おかしな色使いの操作パネル,「ポータブル電源」と大きく日本語で書かれた下品なシール,と,そんなにアピールしなくても分かるよ,とため息が出ます。

 いや,この製品が悪いわけではないのですよ。ただ,自動車用品としての生い立ちから,そのへんの妙な無骨さに抵抗が強くて,良い印象が沸いてきません。

 W410×H370×D110で重さ8kg。電動ドリルのキャリングケースよりも大きく,見た目よりずっと重たいため,かなりの存在感があります。非常時にはよいとして,平常時にこれをどこにしまっておけばよいでしょうか。

 ところで,これは製品の問題ではなくお店の問題なのですが,箱に直接伝票を貼って送って来ました。運送屋の人も取っ手を使って持ち運ぶのでボロボロになり,もう使用しないときの収納には使用できません。「箱も商品」と私などは教育されたものですが,未だにこんなちゃらんぽらんな会社があるんですね。

 ええ,大阪のJといえばお分かりでしょう。


(2)電気的性能

 説明書によると80WのAC機器を2時間駆動できるとありますので,インバータの効率は約80%,つまり160Wh相当ということになります。

 仮に,3WのGreenFan2なら53時間も駆動できます。5WのLEDライトなら32時間です。40WのノートPCなら4時間ということですので,かなり本格的な非常用電源です。

 充電時間は8時間かかりますが,寝ているうちに充電すれば全然OK。

 ただし,インバータが150Wですので,例えば5分でいいから電子レンジを使いたいとか,10分でいいから湯沸かしポットを使いたいとか,1回でいいのでご飯を炊きたいとか,そういうことには使えません。

 私の持っている除湿器は200Wでこれも使えません。エアコンなどもってのほか,冷蔵庫も無理です。ホットプレートももちろんダメです。

 ドライヤーもだめ,トースターもだめ,GOPANもだめですね。アイロンもダメならテレビもだめです。

 冬場など,電気毛布が使えるとありがたいのですが,実はこれもダメ。電力的には大丈夫なのですが,インバータの出力が矩形波で,サイリスタ制御の電気毛布では使えないのだそうです。温度制御のない暖房器具で100W以下のものを用意して置くと良いかもしれません。

 基本的に誘導負荷は使えず,モータを交流で駆動する装置には原則使えません。抵抗負荷(電球や電熱器など)や内部で直流に変換して動いている機器なら大丈夫ですが,それも150W以内ですからね,随分と限られます。

 と考えると,私が支払った23800円に対して,価格相応のものだったということがよく分かります。この値段で決まったバッテリー容量とインバータで,その結果非常用のポータブル電源としてはあまり利用出来る機器がないわけです。

 確かに,携帯電話の充電やノートPCの充電,ゲーム機器の充電などに使えるので,本当に停電すればありがたいことでしょう。しかしながら,これらは停電前に充電しておくことが原則です。


(3)寿命

 電池の寿命を延ばすために1ヶ月に一度の再充電が必要で,それでも3年で電池がダメになるとあります。鉛蓄電池の性能を考えるとやむを得ないところですが,年間8000円で中途半端な安心を買うことに意味があるかどうかは,ちょっと難しいところです。

 それに,鉛蓄電池ですので,廃棄は面倒です。粗大ゴミで持っていってくれるはずもありませんし,車のバッテリーは交換が原則ですので,自動車屋さんに引き取ってくれとお願いしても,断られるのがおちです。メーカーに返すのが一番適当でしょうが,それだと年間8000円でリースしたようなもので,なんだかばからしいです。一番いいのは,3年ごとに有償でバッテリー交換ですけども,そういう話も特にありません。

 鉛を使った電池ですので,安全面においても,資源の回収という面においても,きちんとリサイクルしないとまずいですので,買う前にちゃんとその辺を考えておくことをおすすめします。


(4)使い方の工夫

 150Wのインバータですので,小さい保冷器や小型のコンプレッサなどの電動工具くらいは使えそうですね。誘導負荷なので本当はダメなんですが,まあ短時間ならいいでしょう。

 LED電球を使った照明器具は便利に使えそうですが,部屋に備え付けの照明器具を接続出来ないのでダメですねえ。

 小さい保冷器や小型の掃除機,小型のPCなら使えます。こうなると緊急というより,やっぱりアウトドアで無理矢理快適な生活を手に入れるためのものですね。

 暖房器具についても,60Wくらいの足温器や小型の電熱座布団なら使えそうです。これらは安く売っていますし,冬になったら買っておくといいと思います。

 これは少し調べてみないといけませんが,もしかするとガス給湯器が使えるかも知れません。ガス給湯器は100Vの電源が必要で,停電するとガスは通じていてもお湯が出ませんから,お風呂もシャワーもだめなのです。もし給湯器がポータブル電源で使えるなら,これはかなり有用です。(と思って調べてみましたが,どうも150Wではおさまりそうにない感じですね・・・残念)


 ということで,これだ!という決定版の使い方がなかなか見つからない中途半端さがちょっと残念な印象ですが,庶民がちょっと無理してなんとか手が届く非常用電源としてはこのあたりが限界かも知れず,その意味ではこれをなんとか使いこなすことを考える必要があると思います。

 そもそも非常用ですので,このままなにも起きなければ無用の長物になること請け合いで,まさに24000円を捨てたに等しいわけですが,何も起きないならそれに越したことはなく,私としてはこれをメンテしつつ,無駄に終わってくれることを,ちょっと惜しいと思いながら,願っています。

またもPM-G850のインク不良

 先日,数年前に購入したPM-G850というエプソンのプリンタを久々に使おうとしたのですが,あいにくインクが切れているというエラーが出ました。

 よく知られているように,インクジェットプリンタは本体を安くばらまき,その代わり高価な交換用インクで利益を上げるという仕組みになっています。使用頻度によりますが,インクを交換するより本体を買い換えた方がお得というのは事実で,そうしてより高画質なプリンタがわずかな間に普及したわけです。

 PM-G850には画質の不満もなく,今時のプリンタはスキャナ付きの複合機ばかりですので,プリンタだけで十分という私のニーズにはぴったりのプリンタです。使用頻度は非常に少ないのですが,買い換えようという気は起きません。

 そんなわけで,6本セットで6000円もするインクカートリッジを,何かの機会に安く買っておき,切れたインクから順番に交換していくようにしていました。

 6色のうち,未交換がライトマゼンタとライトシアンの2色だったところで,いよいよライトマゼンタがインク切れになったのでした。

 このプリンタは,どれか1つでもインクが切れてしまうと,印刷ができません。この時は黒1色のPDFファイルを印刷したかったのですが,ライトマゼンタなんて関係ないのに,動いてくれないのです。

 面倒なのでさっさと交換したわけですが,やっぱり動きません。おかしいなあと調べてみると,なんとこのインクを認識していません。おかげで他のインクカートリッジの情報も読む事が出来ていないようです。

 ものは試しにと空っぽになったインクに戻してみると,全てのカートリッジの情報が読めるようになりました。

 これは交換を行ったライトマゼンタのインクカートリッジの不良だと,私は結論しました。

 気になるのは,このインクが買ってからすでに長い時間が経過していることです。これには私なりの言い分があって,1本ずつバラで買うよりお得なセットを,いずれ交換するわけだしと購入したのであって,まさか最後の1本(実は同時にライトシアンも交換したのでこの時買ったインクは全部交換に使いました)で不良品が出てくるとは思ってもいなかったのです。

 早いうちに開封したなら私が壊した可能性もあるのですが,このカートリッジは未開封で,真空パックになっています。こんな風に密封されているものを,わざわざ認識出来なくなるように壊すことはできません。

 もちろん,初期不良は購入後1週間から2週間が限度です。それ以降は保証期間内で修理対応です。しかし,インクカートリッジに保証期間があるわけではありません。

 ただ,インクカートリッジには使用期限があります。使用期限が過ぎると未開封品でも性能保証はなくなるのか,といえば,これはYESです。インクが変質し,エプソンの思う画質が保証されないことは確かです。

 しかし,空っぽになったインクだけ交換出来るようにとバラバラにカートリッジを交換出来る仕組みを用意しておきながら,使ってみるまで分からない不良品が6本セット品の中に混じっていて,その結果他の5本も使用できなくなるというのは,ちょっともったいないと思いませんか。

 インクカートリッジが200円とか300円くらいなら,もう面倒なので黙って買い換えますが,1000円以上するのですから,やっぱり惜しいですよね。それによく思いだしてみると,私が6本セットをわざわざ買ったのは,バラで買うより安いからであって,6本のうち1本が不良品だったら全然安くならないじゃないですか。

 惜しいので,ダメモトでエプソンのサポートにWEBから問い合わせてみました。

 互換品じゃないのかと疑われてみたり,きっちり差し込めだの,エラーの画面をキャプチャして送れだのと,なかなか信用してもらえなかったのですが,よくやく代わりのインクを送るので試してくれという返事が何度かのやりとりのあとに届き,果たして数日後には私の手元に新しいライトマゼンタのカートリッジが届いたのでした。

 しかしまあ,私に言わせれば,インクで儲けるモデルを勝手に構築しておいて,高価なインクを嫌う消費者の声に応えた互換品を締め出すためにわざわざROMまで搭載し,徹底的に互換品を排除するわけですから,それが消費者の正常な使用に支障が出るようでは本末転倒です。(そのROM代だってユーザー負担ですしね)

 ROMが壊れたことで認識不良を起こしているのですから,非純正品対策などなければ私は問題なくその文書を印刷できたはずなのですが,こういうことが嫌で純正品を使っている私のようなユーザーの足まで引っ張るような仕組みは,やっぱやり過ぎだと思いますし,正規品を使用する人を巻き添えにするほどの強いプロテクトは,もう破綻しているといって差し支えないでしょう。

 まあ,もし使用期限のことをいわれたら,潔く引き下がってプリンタを別のメーカーに買い換えようと冷静に思っていたのですが,幸か不幸か届いたインクを差し込めば問題なく動作しました。

 やはりインクの問題だったようです。

 さて,この不良のインクを返却せよと,エプソンは返信用の箱と袋と伝票を同封してきました。

 ヤマトのメール便の着払いの伝票で,荷物を出す人の住所氏名を書く欄がありません。しかもメール便なので,コンビニか営業所に持ち込めと書いてあります。

 ヤマトは,かつてローソンとケンカをして取り扱いがなくなっているのですが,悪いことに私の通勤ルートにはローソンがほとんど。ヤマトを扱うコンビニなんか,わざわざ出向かないといけません。さりとて営業所の場所もわかりませんし,これじゃ着払いの意味がないと思うくらい,面倒です。

 そこで,別の荷物がヤマトで届いたついでに,持っていってもらえないか聞いてみました。無料だし,営業所に戻るんだから,聞いてみるだけ聞いてみようという魂胆です。

 来たドライバーは「よくわからない」と,営業所の社員に電話をしたら,現物を見ないとよくわからんので,うちまで来てくれるということになりました。

 しばらくして来てくれたのですが,彼も「こんなの初めて見た」といっていました。
メール便を集荷してもらう形に結果としてなったことを詫びると,いえいえ勉強になりました,とニコニコして持って帰ってくれました。

 翌日にはエプソンから私に解析結果がメールで届いたので,荷物は無事に到着したのだと思いますが,ユーザーに手間をかけさせることでコスト削減を狙ったエプソンの作戦は,私のような人のせいで,ヤマトへのしわ寄せとして決着したわけです。ヤマトは100円かそこらの運賃で,私の家まで取りに来たわけですので,割が合わないことでしょう。気の毒です。

 で,エプソンからの解析メールでは,やはりインクの不良でした,ご迷惑をおかけましたということでした。本当に迷惑したわけですが,ほとんど使わないライトマゼンタのせいで黒の文書が印刷できず,あげく今時解決に10日もかかり,しかもヤマトに負担を強いて問題を解決して,それでサポート完了というわけですから,まーなんというか,エプソンには怒りと言うより,ずるいよなあというイメージが渦巻いています。

 実はこのPM-G850,初期不良品だったのですが,その原因も同梱のインクカートリッジの不良でした。この時はライトシアンが不良だったのですが,なにせ一度も正常に動いていない初期不良ですので,それがインクの不良のせいとわかるはずもなく,私は相当困ったのです。

 とりあえずエプソンのサポートに電話をして,買ってすぐの話だし,一度も正常に動いていないのだから,私にあれこれ試させるのではなく,新しいものに交換するのが正しいのではと私が言えば,初期不良交換は販売店の仕事,動かない物を動くようにするのがエプソンの仕事なので,交換して欲しかったら販売店にいってください,と誠に正論を通されて,結局インクの交換で決着したのでした。納得しない人もいるだろうなあと思いました。

 それでも,この時の交換では,インクカートリッジの返却はもっと簡単だったように思います。

 ということで,私の結論は,もう次はエプソンのプリンタは買いません。

 同梱品を含む新品のインク12本のうち2本が不良という不良率の圧倒的な高さ,そして1本のインクが認識出来ないだけでプリンタ全体が全く動いてくれないという機会損失への誤った考え方,そして必ず一度は「非純正品じゃないか」とユーザーを疑い,自らのために不良品を返品させるのに,その返送コスト削減に罪のないユーザーの労力を平然とあてがう意識と,どうも私にはしっくりこないのです。

 いや,対応が悪いとか,そういうことではないですよ。丁寧だし,正論だし,メールのレスポンスも早いし,何も悪いことは彼らはしていません。ただ,やってることそのものというか,姿勢というか,非純正品の対策は彼らの都合で作ったビジネスモデルで,それを維持するためにユーザーを疑ったり,ユーザーに負担を強いるような話が,以前にも増して強くなっていることに,私はモヤモヤとしたものを感じているのです。

 まあ,そんなことをエプソンに言っても仕方がないし,エプソンも困るだろうから,私はどうもエプソンに共感出来ないので,違うメーカーにしますということで,よいのではないかと思います。

 やっぱあれですね,次はHPですかね・・・

Nintendo3DSのアップデート

 Nintendo3DSのアップグレードが6月7日に行われました。これによってソフトのダウンロード販売が可能になり,DSiウェアを購入することも出来るようになりました。

 私にしてみれば,この段階まで出荷すべきじゃなかったよなぁと思うのですが,発売から3ヶ月経過してようやく「使える」状態になったことを,素直に喜びたいと思います。

 任天堂は遊びの会社です。遊びを真面目に探求する姿勢は随一のものがあり,操作の1つ1つ,レスポンスの1つ1つに工夫の跡が見られます。これは本当に手間のかかる,すごいことだと思います。

 そんな会社が自前でインフラを持ち,ダウンロード販売をやっているわけですから,初代DSから買い換えをせずにきた私としては,3DSでどんなものか是非体験したいと思っていました。

 幸いにして,ダウンロード販売で買いたいものは決まっていました。プチコンです。

 レガシーなBASIC言語のインタプリタなのですが,現在活躍中の多くのソフト屋さんを育てた「マイコンBASICマガジン」への回帰を狙って,ショートプログラム,ゲーム作りに向けた設計が行われています。

 それは,

・構造化を意識していないプログラミングスタイル
・80年代丸出しのフォントに半角カタカナ
・256x192ドットというPC-6001やMSXでおなじみのグラフィック解像度
・カセットテープ時代を肯定するかのようなファイル操作命令の乏しさ
・業務用アプリ開発に必要なデバッグ命令やエラー処理関数を持たない潔さ
・プログラムの配布はメディアによらず,基本は手で打ち込む
・やたらと豪華なスプライトとBG

 というあたりに垣間見ることができます。ま,わざとですね。

 これに,MON,CONSOLE,DEFINT,OUT,EXECなどがあればさらに懐かしさ爆発です。雰囲気としてはMSXとM5のBASIC-Gのいいとこ取り,という感じもして,M5大好きな私としては好印象です。

 人間がプログラムを組むというのは,自動化したい処理があるからですが,自動化の究極に知性を持ち自律することを投影する人間の本質があります。自律した個体を作る事,それはつまり子孫を残すということであり,人間と言うより生物としての生存理由にまで昇華します。

 私は,これがプログラム作りが楽しい根本的な理由だろうと思っています。プログラムに限りません。メカでも電子回路でもいいのですが,勝手に動いてくれるものを見るのは,子供も大人も大好きなのです。

 1980年代に存在したパソコンには,例外なくBASICインタプリタが用意されていいました。100万円の高級機から2万円弱のオモチャの延長まで,BASICを覚えれば一通り「自動化」が行えた時代がありました。

 思うに,当時,一部の専門家を除いてコンピュータを扱える人は少なく,それが大人だろうと子供だろうと,等しく全くの初心者であったことが,初心者をターゲットにしたBASICインタプリタの普及した理由なのでしょう。

 10年もすると,プログラミング言語としては汎用性の高いC言語が一般化しますが,一方でC言語は別売になり,低価格機においては用意さえされない状況になりました。自動化は高度なものを専門的に作る階層と,作られたものの「実行」で十分な階層に,分かれてしまったのです。

 作る階層は,その高度な能力で使う階層のニーズを実現して,対価を求めます。そしていつしか,作る階層の目的はお金儲けになり,使う階層の目的は消費することになっていきます。

 初心者向きの言語がこうして衰退したことは,大変に不幸なことです。複雑なことは出来ず,高速動作して信頼性の高いプログラムを作ることは出来なくても,簡単に手を出す事の出来るBASIC言語には,「勝手に動く物」をとにかく作ってその楽しさをとにかく知ることへの,手軽さがありました。

 ネットがなかった時代,自動化を体験した初心者達が自分のプログラムを共有し,互いに高め合う場として,雑誌がその機能を担っていました。ベーマガはその最初の場であり,ある意味では最大の場であったと思います。

 プチコンには,こういう環境で育ち,やがてプログラム開発を生業とする人々の,感謝と尊敬を感じますし,さらに言えばかつての自分達に用意してもらった環境に対するお礼を,次の世代にも用意することで果たそうとしているのかも知れません。


 プチコンを触っていると,そういう優しい眼差しを意識するのですが,やっぱりとても楽しいのです。タッチパネルを使った入力はもどかしく,できればフルキーボードで使いたいのですが,行番号を打ち込むこともないですし,編集と実行をモードで分けるという概念はシャープのポケコンで一般的な方法で,私にはとてもしっくりきます。

 実際にこれでなにかを作ってみたいのですが,ゲーム&ショートプログラムをねらったものだけに,アイデアと工夫が試されます。私は昔からゲームではなく実用プログラムを作っていた人だったので,プチコンを前にしてなお,実用プログラムのアイデアばかりが出てきます。しかし,メモリやファイル操作の限界から,実用にならない実用プログラムになってしまうので,結局取りかかれません。

 ところで,3DS専用のゲームもダウンロード出来るようになっています。エキサイトバイクとゼビウスは,3Dでリメイクされています。どちらも3D化するのに特別な説明のいらないわかりやすさを持ち,かつ誰もが知っている名作ということで,私もダウンロードして遊んでみましたが,これがなかなか面白いです。

 ROMカートリッジのゲームを買うよりも,数百円でダウンロード出来るこの手のゲームの方が私には向いているように思います。

 ということで,3DS,いよいよ本格的に動き出しました。

さようならFCZコイル,ありがとうFCZコイル

  • 2011/06/08 16:45
  • カテゴリー:make:

 FCZコイルがとうとう製造販売停止になりました。

 今さら説明の必要もありませんが,かのJH1FCZ大久保OMが作った,アマチュアのための高周波コイルシリーズがFCZコイルです。中波,短波,超短波などのアマチュアバンドを網羅し,ケースのサイズも10mm,7mm,5mm角と揃っています。使いやすく,再現性が高く,設計する側も作る側もこのコイルを使えばもうコイルは心配なし,使いこなしのノウハウも蓄積され,全国のパーツ店で手に入る入手性の高さに安価なお値段と,至れり尽くせりのコイルです。

 その誕生は大久保OMいわく,「かつて雑誌の記事を書いたとき,コイルを自作するように書いたら,コイルがうまく作れずに,それが原因で動かないという人が出た,当時一般的だったコイルの自作は実は再現性に欠ける・・・」

 そこで,大手コイルメーカーの製品を使う事にしたのですが,コイルが結合しないようにシールドを考えないといけなくて,これもまた再現性に難あり。適当なものがないなあと考え込んだ大久保OMは,ないものは自分で作ろうと考えて,FCZコイルを手がけることになるのです。1977年の誕生から30年以上,もっとも厄介なコイルでアマチュアを支え続けてくれました。

 FCZコイルでは,アマチュア無線で使われる各バンドのコイルをバンドごとに1種類ずつ用意してあります。それぞれは突出した特殊な性能をもっているわけではありませんが,平均的性能で,むしろ汎用性を高めてあります。そして回路全体の性能は,トランジスタの性能の向上に任せています。

 そんなことが出来るのかと,高周波の素人である私などは???な訳ですが,結果は疑いようもなく,高い汎用性,シールドケースに入った使いやすさと再現性の高さで,アマチュアの電子工作には欠かせない部品となりました。

 欲しいときにすぐに手に入ること,種類を無闇に増やしたり改良を小刻みに行うのではなく,古いコイルも新しいコイルも同じものとして扱えて,昔の回路にそのまま使えることも,大久保OMの人柄を見るようでした。

 私がこのFCZコイルについて感慨深いのは,アマチュアの電子工作のために生まれ,その存在感を放ち続けた部品だからです。

 以前にも書いていますが,電子工作という趣味は,その時々のプロが使う部品のおこぼれによって,成り立っています。真空管がゲルマニウムトランジスタになり,やがてシリコントランジスタになったり,ICがTTLからCMOSに移行したことは,アマチュアの欲しい部品をメーカーが用意してくれた訳ではなく,それがプロによって大量に消費されるようになって,値段が下がり、入手が簡単になったからです。

 2SC1815や2SK241が製造中止になってしまうことは,まさにこのことを象徴しています。

 アマチュアが使う数はたかが知れています。メーカーにしてみれば誤差のようなものです。アマチュア向けにある程度まとまった数をストックして小売りしてくれるパーツ店の存在があるから,我々は高性能な部品を,安価に使えるわけです。

 しかし,FCZコイルは違います。アマチュア(法人としてのFCZ研究所がアマチュアかと言われれば厳密には違うかも知れません)が,アマチュアのために,用意した部品です。FCZコイルはプロの設計者は使いません。カスタムで作る事ができるからです。

 FCZコイルは,汎用性の高いコイルを種類を絞って作る事で,アマチュアにも安価な価格で提供可能なコイルでした。これを使う事を前提に,多くの回路が誕生し,そしてそれらは一様に高い再現性を持っていて,作者の先生が苦心の末に練り上げた作りやすさと高性能を,全国のアマチュア達が追体験出来たのです。

 FCZコイルがあるから,アマチュアは安心して高周波の回路を作る事が出来ました。でもこれからはそうはいきません。

 大久保OMは,供給出来なくなる代わりに,コイルを手作りする方法を解説してフォローしたいと言われています。大久保OMには頭が下がります。

 かつて,初歩のラジオやラジオの製作などの雑誌がベテラン設計者の回路を掲載し,全国のアマチュアがそれを作ることが盛んに行われていました。設計者と製作者は分離していて,特に製作者のスキルには個人差がありました。

 故に誰でも完成できて,性能を出せる再現性の高さが設計者には求められたのですが,雑誌が消え,雑誌を見て製作する者がいなくなり,設計者と製作者が分離しなくなりました。

 今,部品レベルで自作が出来るのは,コイルだけです。コイルの製作と回路の設計を同時に行う方が,より性能を高めることが出来るのですから,回路設計が出来る人にとって,ただ作るだけの人のために再現性の高い汎用品のコイルを使う理由はないといえます。

 そう考えて,ひょっとすると時代が変わって,FCZコイルの役目は終わったのかも知れないなあ,と思いました。

 この30年の間,日本も世界も大きく変わりました。国内で製造するのが当たり前だった電子部品は,いつしか海外で生産されるようになりました。現在のFCZコイルも中国の部材を使って作られていましたが,ここ数年はそれら部材の度重なる値上げや仕様の変更,供給ルートの確保などでご苦労があったようです。

 部材の仕様が変わるたびに,それまでと同等の性能を維持するべくマイナーチェンジを繰り返して来られましたが,今回はどうしても元の性能を確保出来なかったとのことで,製造販売を中止するに至ったということです。

 そういう私は,結局FCZコイルを買って何かを作った事がありません。1つや2つ買った記憶はあるのですが,それが今どこにあるのか覚えていません。無線や高周波の世界に背を向けたアマチュアにとっては,FCZコイルは知っていても身近でなかったといえて,だけどもその功績はやっぱり知っています。

 大久保OMがFCZ研究所を解散したとき(2007年だったと思います)もショックでしたが,FCZコイルが過去のものになった今回の話は,確実に電子工作のフェイズが移り変わったことを示すものになったと思います。寂しいものですが,常にその時手に入る新しいもので工作するのが,これまでにも繰り返されてきた電子工作の進歩に繋がると考え,くよくよせずにいきたいと思います。

 ただ,アマチュア無線の高齢化が深刻で,近寄りがたい集団になっていることは否定できないでしょう。大昔,ラジオが最先端だった時代は,その延長にアマチュア無線がありました。オーディオとコンピュータの時代になり,アマチュア無線はそれらと接点を持たない独立国家となりました。

 携帯電話とワイヤレスデータ通信の時代がやってきて,アマチュア無線がまた最先端になるかとおもいきや,高度なディジタル変調技術のせいもあってか,同じ無線の世界でもアマチュア無線の人たちの視点と,最新の無線技術の人たちの視点にズレがあるように感じます。

 同じ無線局なのにアマチュア無線家は携帯電話には疎いですし,携帯電話大好きな人がアマチュア無線をやってるという話はあまり聞きません。私の目から見て,今のアマチュア無線に技術的に見るべきものはありません。

 ところで,PLCという,電灯線を使ってLANを構築するという仕組みが数年間にちょっとしたブームになりました。しかしこれは,アマチュア無線や短波ラジオで使われている周波数に大きな妨害を出す可能性があり,私も当時懸念していました。

 無論,アマチュア無線家や短波ラジオの愛好家が声を上げましたが,そんな声は無視され,公的機関からの認可を得て,各メーカーから一斉に機器が発売されたことを覚えています。

 あまり知られていませんが,理由もはっきりしないまま当局から認可の取り消しを受けた機器がいくつもありますし,実際にラジオの受信に妨害を受けたという事例もあるようですから,行政もメーカーもあまりにずさんだったといえるでしょう。

 PLCは結局,小さく安くなったWiFiに駆逐されるように,ほぼ消え去りました。懸念の声を無視してなかば強引に始めたにもかかわらずビジネスとしても失敗に終わりました。

 私は結構おおごとだと思っているのですが,社会一般の意識も低く,このことが話題に上ることはほとんどありません。大多数の人にとってアマチュア無線家や短波ラジオが関心の対象から外れていることを如実に示しているのではないでしょうか。

 果たしてこれでよいのかどうか。1970年代から80年代のアマチュア無線ブームで開局した人がほとんど電話級だったこと,JARLのやってきたこと,乱立したアマチュア無線機器メーカーのやってきたこと,電波を公共物として管理してきた行政のやってきたことなどなど,もう少し検証されてもよいのではないかなーと思います。

 ちょっと話が逸れましたが,FCZコイルの製造販売の停止と,アマチュア無線の衰退は,どうも無関係ではないと,そんな風に思うのです。

ガイガーカウンターを作る

  • 2011/06/07 11:52
  • カテゴリー:make:

ファイル 480-1.jpg

 秋月の出物でD3372というガイガーミューラー管が手に入ったことは先日書きました。先々週の土日に少し動かしてみようといろいろ検討をしたのですが,いやー,どうも勘が鈍っていけません。結局その後1週間ほど検討に集中して,先週金曜日には一応形にまとまったので,これで完成としました。

 AVRtiny2313を使った作例がソース付きで見つかったので,最初はこれをそのまま頂いて,最小限の変更を行うだけににしたのですが,きちんと理解をしないままにいじくり回したため,なかなか上手く動かず手こずりました。

 やはり全部をきちんと理解しておかないとダメですね。結局ほぼすべてを書き直しました。


(1)高圧の発生

 ガイガーミューラー管には,500V程度の直流電圧が必要です。D3372の場合,350V位から放射線の検出が始まります。電圧が高くなるほどに検出率は上がっていきますが,550Vくらいになると検出率が平坦になり,電圧を上げてもほとんど増えなくなります。この平坦な部分の電圧をプラトー電圧といいます。ガイガーミューラー管は,このプラトー電圧で使うのです。

 ガイガーミューラー管は,放射線が検出されたときに電流が流れるだけで,普段はほとんど電力を消費しません。ですので高圧の電源回路には電力を供給する力は必要がありません。

 プラトー電圧の発生にはいろいろな方法があります。秋月のキットではCMOS版の555を使って間欠発振させ,本当に必要なエネルギーだけ作るようになっています。おかげで消費電流が大変に小さく,優秀です。ただ欠点があって,なにせエネルギーが小さいので,その電圧を測定するには入力インピーダンスが10MΩ程度のテスタやオシロスコープではあっという間に「消費」されてしまい,真の値がわかりません。

 一方で,LCDバックライトによく使われた冷陰極管のインバータを流用することも行われていますが,供給エネルギーがGM管よりもずっと大きいものですから,インバータも常時発振しています。電池の電圧を100倍以上に昇圧する回路ですので,その効率の悪さを考えると,数十mA(あるいはそれ以上)の消費電流が常に流れていることはやむを得ません。

 カメラのストロボの駆動回路を改造する方法もあります。これは割合現実的で,よく行われている方法のようです。

 今回私がデッドコピーを試みた作例では,AVRで555の代わりをさせた省エネ方法がされています。周波数やパルス幅もプログラムで調整が自在なので,マイコンが使えるなら便利でしょうが,CMOSの555の消費電力にはかないませんので,結局数mAの消費電流は覚悟しないといけません。

 先の連休中,ペンタックスのMZ-10が壊れてしまい,それを部品取りに残しておきましたが,ここからストロボ用の部品をいくつかとります。MZ-10は6Vの電源電圧ですので,昇圧比はあまり期待できないのですが,小型のトランスと高圧用のダイオードを確保します。本当は低圧側のスイッチングトランジスタも確保したかったのですが,結構VCE(sat)の大きなトランジスタが使われていたので,手持ちのMOS-FETを使うことにします。ちょっと贅沢に,2SK703です。

 このトランスを使って100倍ほど昇圧,そしてダイオードで整流し直流を作るわけですが,実は高圧を貯めるコンデンサが最大の問題です。ストロボでは大きなエネルギーが必要ですので電解コンデンサを用いますが,GM管ではほんの一瞬ですので470pFから1000pF程度あればよいとされています。

 しかし,前述の通り,これでは電圧の測定が難しいので,あえて大きめにしたのです。2.2uFで400Vのフィルムコンデンサがあったので,これを直列にし,1uFで800V相当にします。

 とりあえず高圧発生部だけ組み立て,AVRにプログラムを書き込んだところ,どうも電圧が上がってきません。いくらなんでも100V以下というのはおかしいです。クロックが低いのではとか,パルス幅を広げようとか,いろいろやってはショートに近い状態になってあわてたりしましたが,冷静に考えてみるとこんな大きなコンデンサを十分にチャージできるような回路になっていないので,電圧が上がらないのは当然のことです。

 そこで,部品箱をあさって,小学生の時に分解したテレビから取り出した,390pFで1kVのセラミックコンデンサを2つ並列に繋いで,800pF相当にしました。これで電源電圧を6.5V位にすれば,ちょうど650V程度が作れるようです。

 これが,レンズ付きフィルムのストロボから取り出したトランスだったら,もっと低い電圧から昇圧できたでしょう。おかげで高圧発生用の電源とAVRの駆動用電源を分けることになってしまいました。


(2)パルス検出

 GM管から得られたパルスは,2SC1815で受けてAVRの割り込み端子に入れます。これはトラブルもなく,あっさりOK。


(3)カウント

 問題はここからです。パルスの数を数え,1分あたりのカウント数と,それをuSv/hに換算した値をLCDに表示する部分です。繰り返しになりますが,この部分はAVRtiny2313を使います。

 ソースをよく読まずに作り始めたものですから,おかしな動作をしても原因がわからず,試行錯誤を行うとさらに混乱するという,まるで初心者のような状態になりました。

 これではいかんと,ちゃんとソースを読むわけですが,この作例では1分間あたりのカウント数は内部で持っているのみで,表示はuSv/hに換算したものを出しているだけです。

 ロシアのGM管に合わせた係数をD3372用の係数に置き換え,内部で持っている1分間あたりのカウント数も表示させます。LCDも手持ちの16文字x2行のものに交換です。しかし,どうもワークエリアをこわしているようで,文字化けはするわ,暴走するわで散々です。tiny2313でも暴走するのかと,当たり前のことに感動しました。


(4)改良

 1分あたりのカウント数を持つ事は,ガイガーカウンターとして基礎的な機能です。しかし定義に従うと,値の確定には1分かかることになり,それまで全く表示が出ないというのはちょっとまずいです。一応,カウントされるときにはLEDとブザーが動作するようになっていますが,やっぱり表示にはそれなりの更新頻度が欲しいものです。

 作例では,3秒ごとにカウントした数を20倍してずっとその値が続いたと仮定して値を求め,,それまでの平均値との平均を取って,3秒ごとに値を更新しています。この方法は非常によいやり方に見えるのですが,私には問題が多いように思います。

 例えば,ある3秒間で2カウントあったとします。その後ずっと0カウントだったという場合を考えると,最初は40と表示され,次には20,その次は10,そして5,2,1となり,結局0になります。実際には2cpmなのに,この表示だといきなり40と出た後,21秒後には0となってしまうのです。常に一定のカウント数があるような測定には有効な手段ではあっても,カウント数が変動する場合,正確な値は全然わかりません。

 かといって,本当に1分間の間数えて表示するには,時間がかかりすぎます。

 そこで考えたのは,3秒ごとのカウント数を1分間記憶しておき,その総和を1分あたりのカウント数として使うことです。3秒ごとに新しいカウント数が得られますので,これを総和に加えると同時に,一番古いカウント数を引き算することで,常に直近の1分間のカウントの合計が得られることになります。

 過去の値の総和から,過去の値を引き算するだけですので,総和が最終的に負の数になることはありえません。そして平均を取る場合の問題点であった,最初の3秒で2カウント,それ以後ずっと0カウント言う場合の表示は,最初の1分間の間は常に2と表示され,1分を越えると0になります。

 バックグラウンドのような,1から3カウント程度の場合でも,直近の1分間の総カウント数がちゃんと表示されます。平均を用いる方法では,1カウント程度なら数秒で0になってしまいます。

 ただ,やはり欠点はあって,常に一定の線量を放出する放射線源の測定を行うと,その値が安定するのに1分かかってしまうのです。例えば1分間で200カウントの放射線源があった場合,3秒ごとに10カウント,1分間で200カウントとなります。

 しかし,平均を用いる方法では即座に200と出てくれます。急激な放射線を即座に知らせる能力に長けてはいても,それが本当の値である保証がないことは私には大問題に思えて,この方法は使わないことにしたのです。

 それに,値が安定するまでに1分間かかるとはいえ,増え方を見ていれば大体想像も付きますし,突発的な変動でも一定の場合でも,癖を掴めばそれなりの値を知る事が出来そうです。

 さらに,カウント数をゼロにしてカウントし直すボタンを取り付けてみましたが,変数を初期化した後の計数値がおかしく,どうも負の数を取ってしまう場合があるようなのです。初期化の関係か,割り込みの関係かといろいろ追いかけてはいるのですが,さっぱり理由がつかめません。

 実は,今回のプログラムはなかなか手こずってしまいました。uSv/hへの換算のために文字列操作を行っていますが,そこで確保した配列の影響もあってか,明らかにRAMを壊しているような挙動が起こっていました。

 配列のサイズを調整してなんとか動くようになったり,プログラムの最適化を行ったりしてなんとか3秒おきの更新には問題がなくなったものの,なにか機能を追加すると問題が出てくるような状態で,落ち着いてくれません。

 やむなくgoogle先生に聞いてみると,特にtiny2313ではこういう,コンパイラを使った場合の原因不明の挙動不審が話題になることがあるらしいのです。かつてGPSクロックを作ったときは,割り込みで使う変数にvolatile宣言をしなかったために動かなかったので,今回も自分の間違いを徹底的に疑っては見たもの,やっぱりよくわかりません。

 確実にAVRとコンパイラのせいだとは言えませんが,配列を使う時などは要注意のようで,配列を小さくすると正常に動いたりする今回のケースでは,やはりAVRとコンパイラの限界と考えた方がいいかもしれません。

 冷静に考えてみると,tiny2313のRAMはわずか128バイト。割り込みを使うとレジスタの待避などで数十バイト使うということですから,残り100バイト弱です。ここに配列を含む様々なワークエリアを置けば,そりゃ何かの拍子にあふれることもあるでしょう。

 AVRは確かに高機能だし,制約の少ないごく普通のC言語ですらすら書けてしまうワンチップマイコンですが,ハードウェアのリソースをソフトウェアは越える事が出来ないという,ごく当たり前の事を忘れていました。

 アセンブラならこういう問題は起きないはずで,C言語を使ってプログラムを作ることの窮屈さを,10年ぶりに感じました。

 結局有効な対策が見つからず,値のクリア機能は断念しました。負の数になって明らかにおかしい数値になっているならまだよいのですが,もっともらしい数字が出ている場合に,それが正しいのか誤りなのか判断出来ないことは最悪といってよいと思います。

 代わりに,このスイッチはAVRのリセット端子に繋げて,完全なリセットとすることにしました。入力ピンが1つ空いてしまいましたが,別になにか機能を付けることもしませんし,メモリもカツカツなので,もうこれでいいです。

 最終的に,流用したコードはほぼなくなり,ほとんど書き直してしまいました。


(5)完成に向けて

 まず,高圧発生回路への電源と,AVRへの電源を別の電圧で供給する問題を解決しないといけません。高圧発生側は約7V,AVRへは5Vです。

 ところで高圧側はそのエネルギーが小さく,手持ちの機材では直接電圧を測定出来ないため,実験用の電源器で高圧発生回路への電源電圧を可変し,レンズの放射線の測定値がばらつかないような電圧を選びました。この電圧を与えたとき高圧側にプラトー電圧が発生しているはずという根拠によって,6.5Vから7.0Vを最適値としました。

 その高圧発生回路への供給電圧の生成は,手持ちの関係でトレックスのXC9119Dを使いました。OLEDや白色LEDの駆動用に作られた昇圧コンバータICですが,効率も高く,小さく,また使いやすいよいICだと思います。入手がもっと簡単ならいう事ないのですが・・・

 これを使って作ったのは,3Vから7Vに昇圧する回路です。実際には6.8V位に調整をしました。これを高圧発生回路に入れると同時に,LDOで5Vに落とし,AVRに供給します。LDOはこれまた手持ちの関係で,NJM2387Aを使いました。1.5Aクラスの大型LDOですので明らかにオーバースペック,しかもバイポーラですのでIC自身の消費電力が結構あるため,今回のような用途には向いていませんが,CMOSの小型LDOの手持ちがなく,やむを得ません。

 昇圧回路への入力は,3.0Vで27mA,4.5Vで18mAです。81mWですね。1600mA位のNiHM電池だと45時間ほど使える計算でしょうか。昇圧回路の出力は6.8Vで10.2mAです。約70mWですので,その効率は約86.5%程度。なにも考えずに組み立てただけでこれだけの効率ですから,XC9119Dは優秀です。

 次にクロックです。内蔵RC発振では温度や電圧への依存が大きいので,水晶発振子を使いたいところです。しかし手持ちで小型の水晶発振子がないので,セラミック振動子で代用します。精度は水晶よりもずっと落ちますが,RC発振よりは断然有利ですので,これでいきましょう。

 AVRの場合,クロックソースの切り替えはプログラムで行うのではなく,デバイスのヒューズビットをライタで直接書き込みます。ソースを修正しビルドと書き込みをやり直す必要がないので楽なように思いますが,周波数の変更を伴うとどうせソースも変更が必要ですし,ヒューズビットの設定は忘れやすいので,私は非常に面倒だと思います。


(6)組み上げてみて

 手持ちのプラケースにさっと組み込みました。消費電流を測定中に過電流でXC9119Dを1つ燃やしてしまいましたし,テスターのヒューズも飛ばしてしまいました。鈍くさいことこの上なしです。

 そうそう,電流の測定ですが,手軽で使いやすい秋月のP-10というテスタでは,正確な測定が出来ず困りました。テスタの内部抵抗が結構大きくて,随分電圧が落ちるようなのです。その分を稼ごうと電源器を調整する途中でミスがあって,XC9119を燃やしたのです。

 これを,STA55で測定すると,電圧降下もほとんどなく,良い値が測定出来るようになりました。

 さて,動作試験です。まず平常時のカウント数,いわゆるバックグラウンドが2から3CPM程度であることを確認しますが,これは問題なしです。

 次になにか放射線源を使って,そのカウント数が「それらしい」ものになっているかをみます。以前も書いたように,私の手元には「放射能レンズ」がありますので,これを近づけます。いやー,やってみたかったんですよね。

 写真にあるように,164CPMという表示です。SuperTakumar50mm/F1.4の場合,D3372で大体200CPMくらいということですので,まあこのくらいで妥当でしょう。1分経過すると,大体この値で落ち着きます。1秒間に2.5回ほどのカウントになりますので,ブザーとLEDが結構うるさく,びびります。(嫁さんの目がすごい怒ってました)

 ただし,左上にあるガイガーミューラー管とレンズとの距離にカウント数が大きく左右されます。もっと近い距離に置けば250から300CPMくらいでが出てきますし,もう10mmもはなすと,数分の一まで値が下がります。15cmも離してしまえば,もう全然カウントしません。

 164CPMというのは,D3372の場合13.8uSv/hという高い線量に相当するようです。内部被曝すると洒落にならないのですが,15cmも離れればほとんど影響がないからこそ,こんな民生品に多用されたのだと思います。(とはいえ今なら絶対に世に出せないでしょうね)

 ここまでで,とりあえず放射線を検出できる事がわかりました。uSv/hへの換算は全然あてにならないのですが,そもそもガイガーミューラー管は放射線の検出器と考えた方が無難で,普段から1分あたりのカウント数をおおよそ覚えておき,それに対して多いか少ないかで危険度を見る指標とすべきでしょう。

 測定値の絶対的な値は,校正も行っていませんし,GM管の特性や放射線源にもよりますし,きちんとした線量計でも測定方法によって値が大きく異なるものなので,参考にさえならないと思います。

 ただし,普段より大きいか小さいか,そのくらいの情報でも,あるのとないのとでは大きな違いです。今から洗濯物を干そう,布団は大丈夫か,外に出ても良いかどうか,これをその場でさっと確かめることが出来るのは心強いです。なにか事故が起こっても,それがニュースで我々に届くには,数時間はかかるものです。

 そもそもガイガーカウンターというのは,ガイガーミューラー管の機能がそのまま使われているもので,これがなくては話になりません。それゆえ,回路の工夫で性能を高めることも出来ませんし,代用品もありません。

 それほど複雑な構造のデバイスではないですし,できる事なら数百円で簡単に手に入るようになって欲しいと思うのですが,冷戦終了後の需要の減少は想像に易く,それが平和利用の花形だった原子力発電の危機的状況から再び注目されるようになるとは,なんともやりきれません。


 さてさて,そんな大した製作ではなかったのですが,久々のAVRということもあって,いい頭の体操になりました。AVRも面白かったのですが,近頃は昇圧回路があっさりできてしまうので,スマートにまとまって,ホントに良い時代になりました。

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