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御三家シャープの撤退

 シャープがパソコンから撤退したことが報道されました。いわく,2009年度中に生産を中止していたそうです。

 シャープなんて,まあテレビと家電の会社ですから,パソコンなんてやっててもやめてても,体勢に何ら影響はないと思われるのがおちですが,新聞でも報道されているくらいですので,それなりの大きさのニュースなのだと思います。

 1990年代以降,メビウスやMURAMASAなど,個性的なノートPCで一定のファンを掴んでいたシャープの撤退は確かに1つの事件ですが,私は,実はシャープが日本のパソコンメーカーとしては最古参であるという事実が意外に知られていないことが,残念です。

 日本のパソコンの歴史を紐解くと,1976年にNECから発売された,トレーニングキット「TK-80」が思わぬヒットとなり,個人でコンピュータを所有することが,一般の人たちにも認知されるようになりました。

 これをうけ,主に半導体メーカーが自社のCPUを使ったトレーニングキットを販売するようになりました。CPUにメモリ,テンキーとLEDによるディスプレイが基板の上にハンダ付けされただけのむき出しのものが,普通の人向けに売られていた事が不思議なくらいです。

 この程度の製品では,本当にCPUを自分で操作して終わりで,実用性はありません。ゲームやビジネスアプリなど,結果を求める作業はなにもできないわけで,なんだ,コンピュータってなんにもできないじゃないか,と言うがっかり感も漂うようになります。

 もちろん,実力あるユーザーたちは自分で部品を追加し,ソフトも自分で書いて,フルキーボード,CRTディスプレイ,高級言語の実装を行っていったのですが,彼らにとってはその作業こそが目的であり,楽しみでもありました。

 そうではなく,コンピュータを使って得られる何かが目的の人のために,最初から完成していて,すぐに使えるパソコンが登場するのは,時間の問題でした。

 人によっては,トレーニングキットと中心としたワンボードマイコンのブームを第一次マイコンブームと呼ぶのですが,このブームの中でフルキーボードとCRTディスプレイを持ち,BASICインタプリタが動いて,保守契約を必要とせず,かつ完成品としてセットで30万円までで売られていること,の4つが,次の世代のパソコンの標準という方向が生まれて来ました。

 余談ですが,海の向こうのアメリカでは,かのAppleIIが1976年に登場し,このすべての条件を満たして,新しい時代を切り開いていました。(日本国内では為替の関係で価格という条件は満たしていませんでした)

 日本でこの条件を満たしたマシンが登場するのは1978年になります。あえてこの4つの条件を満たしたものを「パソコン」と定義すると,日本で最初のパソコンはこの年の9月に発売された,日立製作所の「ベーシックマスター」です。

 この「ベーシックマスター」を,日本で最初のパソコンとする考えた方が1つの流派を作っているのですが,3ヶ月遅れた12月に,シャープから「MZ-80K」というパソコンが登場します。

 なお,1979年の9月にはNECからPC-8001が登場し,この三社をして「パソコン御三家」と呼ばれるようになるわけです。

 このうち,MZ-80Kについては,セミキットという形で販売された関係で,厳密に言うと完成品で登場したわけではありません。しかし,実際に作る部分はキーボードの部分だけで,他は既に組み立て済みでしたし,すぐに完成品も登場して数年間の製品寿命を持っていたことを考えると,パソコンに含めてよいと思います。

 インベーダーゲームやYMO,デジタル時計というような「テクノロジー」が文化や世相に影響を与えるような時代背景もあり,個人所有でかつ結果を期待できるPC-8001は大ヒットとなり,ここに第二次マイコンブームが到来します。

 NECはPCシリーズとしてホビーマシンであるPC-6001からビジネスマシンであるPC-9801までフルラインナップ,ポータブルマシンPC-2001やハンドヘルドマシンPC-8201,果てはPC-100のような異端マシンまで繰り出す余裕を見せ,豊富なソフトを武器に王座に君臨,1990年代前半のPC-9801の隆盛へと続いていきます。

 シャープはMZ-80Kから現在のPCと同じような,メモリ空間の大半をRAMとして,BASICに固定せず様々な言語を扱える「クリーン設計」を1980年代後半まで踏襲し,個性的なマシンで熱狂的な支持を得ます。また,別の事業部で作られたとはいえ,MZの遺伝子を持つX1シリーズはテレビとの融合を掲げて誕生し,Z80マシンの完成形と言われるX1turboを経て,X68000という当時最強のホビーマシンを世に問うことになります。

 日立は御三家の中では唯一の68系のパソコンを作るメーカーで,究極の8ビットと評された6809を搭載したマシンを発売したりしましたが,1980年代中頃にはその存在に陰りが出始めていました。その直系であるMB-S1というマシンは,8ビットパソコンとしては最強のパワーと高い完成度を誇っていましたが,すでにホビーマシンとしてしか売れなかった8ビットパソコンの世界において,その勝負は付いていました。もしもMB-S1が68000とACRTCを持ったマシンだったら・・・とは,当時からよく言われた「IF」です。

 残念な事に,日立はMB-S1を最後に,独自アーキテクチャのパソコンから撤退します。代わって登場した68系の盟主が富士通で,1981年に登場したFM-8を皮切りに,FM-7,FM-77といったヒットモデルを連発し,新御三家の一員として,後に明らかにX68000を意識したと思われるホビーマシン,FM-TOWNSで勝負に出ます。

 この,第二次マイコンブームに参入した国内メーカーと代表機種をざっと挙げてみると,東芝がPASOPIA,カシオがFP-1100,松下がJR-100,ソードがM5,トミーがぴゅう太,バンダイがRX-78,セガがSC-3000,エプソンがHC-20,キヤノンがX-07,ソニーがSMC-70,IBMがJX,三菱がMULTI8,と言った具合です。概ね,シリーズ化もできないくらいの短い間の出来事でした。

 そしてBASICインタプリタで圧倒的シェアを握るマイクロソフトと,日本のアスキーが仕掛けたMSXが,主にパソコン参入のきっかけを失った家電メーカーから多数登場し,1980年代の第二次マイコンブームはピークを迎えるのです。

 しかし,この時期に登場したファミコンがこれらパソコンの主用途であるゲームという分野を奪い取り,次第にパソコンは仕事の道具という性格を強めていくことになります。

 ちょっと話が長くなりましたが,最古参のパソコンメーカーであるシャープは,1978年から2009年までの31年にわたって,パソコンメーカーであり続けたのです。決して1990年代のIBM互換マシンからが,彼らの歴史ではないということを,どこか1つの新聞くらいは書いて欲しかったなあと,そんな風に思うのです。

 もうちょっと遡ってみましょう。

 シャープは今日でも電卓メーカーとして知られていて,その熾烈な生存競争の勝者であることは有名な話です。リレーやトランジスタで作られた電卓をIC化して小さく安くしたことは,電卓の進歩のみならずマイクロプロセッサ誕生にも繋がる話ですが,なぜラジオやテレビのメーカーだったシャープが計算機に手を出すことになったかというと,当時の若手社員が「次の飯の種」と考えていたからです。

 NECや日立,富士通が電子計算機を立ち上げようとしていたころから,シャープは大学の先生から教えを請い,コンピュータの分野への参入を画策していました。

 しかしコンピュータは莫大な投資が必要で,製品の価格も大きく,数を売る商売ではありません。シャープはその電子計算機の基礎検討を,電卓や小型コンピュータの開発に応用するという,実に賢い選択をしました。

 ただ,こうした経緯もあって,当時は二流といわれた家電メーカーのシャープは,かなり本格的な電子計算機の基礎技術と,自社でコンピュータに使われるような大規模な半導体の生産が可能な,ちょっと特異な会社だったのです。

 1970年代前半にはミニコンピュータHAYACを事務処理用のコンピュータとして展開していましたし,1980年代にはCPUに68000シリーズを採用し,OSにはUNIXを搭載したワークステーションOAシリーズをラインナップしていました。さらにマイナーなところでは,1986年にRISCプロセッサを用いた32ビットのスーパーミニコンIX-11まで発売しています。

 また,8ビットパソコンを席巻したZ80を始め,16ビットのZ8000など高性能なCPUや,そのファミリLSIを大量に生産する能力を有し,SRAMやマスクROMにおいても常に時代の先頭を走る製品を持っていました。さらに,今では誰も逆らえないARMというプロセッサを国内メーカーでいち早く導入したのもシャープでした。

 日本のコンピュータの黎明においては,電電グループと呼ばれたコンピュータメーカーが主役を演じますが,実はシャープのような傍流にも,それなりの存在感を示すメーカーがあったのです。

 そして,その歴史あるシャープは汎用コンピュータから2009年に撤退しました。HAYACが,OAが,MZやCZが紡いできたその糸が,ここで切れたのです。

 もちろん,シャープはコンピュータから撤退したわけではありません。電卓,電子辞書,携帯電話,ネットブックマシン,そして今回のガラパゴスと,コンピュータそのものといっていい商品群で相変わらずの存在感を示しています。ただ,なんでもできる汎用コンピュータのラインナップがなくなることに,かつてのシャープを知るものとしての,寂しさがあります。

 さて,終わりに,その後の日本のパソコンを書いていきましょう。

 1990年代中頃にPC-9801で我が世の春を謳歌したNECは,その後Windowsと海外勢との競争に巻き込まれ,独自アーキテクチャのマシンから撤退し,基本的にIBM互換機メーカーとして現在に至ります。国内でのシェアは上位だそうですが,それも事業として安泰というレベルではなく,また海外ではさっぱりダメという状態ですので,かつてのIBMがそうだったように,NECにとってのパソコンというものを,再定義する時期はそう遠くないように思います。

 新御三家の富士通は,PC-9801との勝負を幾度となく仕掛けましたが,FM-16β,FM-Rシリーズ共に惨敗。これが独自アーキテクチャのマシンからの撤退を早め,現在に続くIBM互換機のFM-Vへの全面的な切り替えを行います。

 日立は早くからIBM互換機へのスイッチを行っており,コンスーマーマシンへの撤退と再参入を繰り返しながら,2000年代初めにはパソコンからの撤退を行っています。日本で最初のパソコンメーカーは,その名誉を守ることができませんでした。

 東芝,三菱,松下といった電機メーカーはぱっとしない状態でしたが,東芝はラップトップマシンで高い評価を得てノートPCに強いメーカーとなりました。

 MSXは最終的にファミコンに始まる家庭用ゲームマシンに敗れ去り,1990年代中頃までに市場から消え去りました。

 そしてシャープ,1986年に登場したX68000はMZ,そしてX1の流れを汲むホビーマシンの最高峰として,PC-9801やMacintoshとは違う世界を作り出しますが,加速度を増す技術の流れに背を向けて性能向上を怠ったことや,PlaystationやSEGA Saturnといった次世代ゲームマシンの登場により急速に陳腐化,Windowsの時代の到来と共に消え去ります。

 よく知られた話ですが,実は最終機種であるX68030の後継として,CPUにPowerPCを搭載した次世代Xの開発はほぼ終わっており,量産するかしないかという判断まで来ていたそうです。この話,私も後日関係者から聞いた記憶があります。

 シャープとしては,ホビーマシンをこのまま継続することは得策ではなく,またこの時登場したメビウスが大変好調であったことから,パソコン事業をメビウスに一本化することとし,PowerPCを搭載したXは幻に終わりました。

 ただ,もしもこのPowerPC搭載のXが登場していたとしても,まず現在まで生き残っている可能性はないと思いますし,おそらく1年か2年で撤退することになって,何も残さず,大きな損失を出していたことでしょう。X68000シリーズの後継かどうか,PowerPCを搭載するのかどうか,が問題ではなく,時代とユーザーの質が,すでにそのコンセプトと大きく乖離していたであろうから,です。

日曜の午後のケース加工

  • 2010/10/04 15:54
  • カテゴリー:make:

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 TA1101を使ったデジタルアンプを,リビングのAirTunes(AirMacExpressにはオーディオ出力端子が付いており,iTunesから音楽を飛ばせるのです)専用アンプとして使っています。

 半年前の引っ越し時には,オリジナル設計の6V6シングルアンプを使っていました。スピーカはパイオニアのPE-101Aに専用エンクロージャLE-101Aです。このスピーカが大変に良い音をしていまして,いつ音を出しても「おっ」と手を止め,ついつい聴き入ってします。

 6V6シングルは2W+2W程度と低出力で,PE-101Aにはちと厳しいところではありますが,PE-101Aとの組み合わせで負帰還量を「自分が最も心地よいと思う」量に調整したものです。こういう調整の仕方は私は普段はしないのですが,たまには感性でチューニングってのもやってみようかと思った次第です。

 そんな訳で,この組み合わせはかなり気に入った音を出すのですが,いかんせん消費電力と発熱が大きいことが致命的で,今年の夏は特に稼働させるのが不可能なレベルでした。

 また,私だけが使うのではなく,嫁さんも使うものになったわけですが,電源スイッチの切り忘れが頻発し,危険だったという事も気になっていました。そこで半導体アンプ,特に効率の良いデジタルアンプに置き換えてしまおうと考えたのですが,いちから設計して作るのは大変なので,安易にケース加工済みのキットでも買ってこようと思っていました。

 けど,この手のキットというのは,ありそうでない,という感じでして,ちょうど手頃なものが見当たりません。共立電子で売られていたキットに目を付けていたのですが,入荷未定で品切れ。

 やむなく,10年ほど前に手に入れたトライパスのTA1101の評価ボードを引っ張り出して来ました。トライパスはすでに存在しないメーカーですが,デジタルアンプを一気にHi-Fi用途に耐えうるものに押し上げ,高い効率と音質の両立に成功したメーカーです。多くの製品に組み込まれ,キットにもよく使われていたもので,デジタルアンプが使い物になることを証明した功績は多大だと思います。

 その初期の製品がTA1101で,BTL,10W+10Wのものです。放熱器も必要ないくらいに効率が高く,特性上も十分Hi-Fiに耐えます。PowerMacG4に採用されたことで世に知られることになったICですが,どういうわけだか,この純正評価基板が,私の手元にありました・・・

 経緯は覚えていませんが,確実に動作する基板があるのですから,使わない手はありません。ところが,手頃なケースがありません。40度近い猛暑でアキバに出かける気も起きず,やむなくCD-Rの50枚スピンドルケースに組み込み,ちゃんとしたケースを買うまでのつなぎとしました。

 先月末,大阪に戻った時,日本橋でケース一式を調達してきたのですが,そのケースがアイデアルのCL140であることは,先日も書いたとおりです。

 その穴開け加工を昨日の昼過ぎ,急に思い立って始めたところ,18時頃には完成し,実用に供することが出来ました。

 電源はACスイッチング式のACアダプタを使いますが,これまではちょうどいい手持ちがなく,12V-1Aのものを使っていました。今度は大阪から持ち帰った,12V-2.5Aのものです。これでフルパワーもいけるでしょう。なお,このACアダプタ,HPのハンドヘルドPCである,Jorunada720に付属していたものです。

 このCL140というケースは,フロントパネルがスモークアクリルとアルミの二重になっていて,7セグメントLEDなどのディスプレイを組み込むことを念頭においたケースです。ひさしが出っ張っていることも,それらしいデザインです。

 綺麗なモスグリーンで塗装された丈夫な鉄製のケースで,大きさも手頃,形もかわいらしく,仕上がりが楽しみではありました。一緒に買ってきたつまみも,大きさやデザインが良くて楽しみです。さすがLEX製,昔はどこのパーツ屋でも買えましたが,今はちょっと探さないと買えません。

 しかし,フロントパネルは思案しました。アンプですから,光り物といえばパイロットランプくらいしかありません。アクリル板など必要ありませんが,これがないとパネルが随分と奥に引っ込んでしまいますから,やはりこれはアクリルを使う事を考えたいところです。

 問題はナットを挟むだけの隙間が,アクリル板とアルミ板の間に出来るかどうかです。ボリュームのナットは大きな穴を開けて表面に出てきてもつまみで隠れるからいいとし,スイッチは普通のトグルスイッチですから,なっとを表に出すのは格好が悪いです。まあ,1mmや1.5mmくらいの隙間ならなんとかなるだろうと,いい加減なのりで加工開始です。

 リアパネルにスピーカ端子,RCAジャック,ACアダプタのジャックを取り付けます。フロントは3mm径のLED,電源スイッチに2連ボリュームを付けるだけです。あとはTA1101基板の固定穴を4つ開ければ出来上がり。アクリル板は現物あわせとし,アルミパネルに重ねて位置決めをし,ボリュームとスイッチの穴を割れないように慎重に開けます。

 組み付けて見ると,意外にぱちっとおさまります。大体勢いで始めた加工では失敗をするものなのですが,昨日は失敗らしい失敗もなく,気分良く加工を終えることができました。

 欲を言えば,電源スイッチの位置がやや低く,LEDの位置がやや高い気がするという感じでしょうか。ま,ひさしがあるだけ印象も違ってきますので,あまり細かいことにこだわることはしないでおきましょう。

 さて,肝心の音ですが,iTunesが圧縮オーディオであることもあってか,どうもざらつく印象です。電源ラインは10000uFの電源コンデンサを付けてありますが,もともとそんなに良い電源でもないでしょうから,音の悪さはACアダプタのせいかも知れません。

 ただ,スピーカの良さには,やっぱり「おっ」と手を止めてしまいます。

 TA1101は低発熱で,出力も小さなものですので,特に放熱を考えなくても構いませんし,ケースに密封しても平気です。こうして,誰にでも扱えるお手頃アンプが1つ出来て,うちのリビングに,ちょこんと座ることになりました。

 音質の改善だなんだといじり回すのも1つですが,私としては余計なことをせず,このまま使おうかなと思います。

 

近代デジタルライブラリーの役割

 著作権が切れてしまった書物をスキャンしてデジタル化によるアーカイブを行うことがあちこちで行われています。

 我が国でも国会図書館が「近代デジタルライブラリー」という名称で2002年から行われており,今年7月の時点で明治,大正期の約17万冊が,インターネットを経由し,WEBブラウザで誰でも自由に閲覧できます。登録なども必要ありません。

 明治や大正の書物というのは,普段の生活には全く必要ありませんし,面白いものでもありませんが,興味を持ち始めるとそれは底なしという感じがあります。私の場合,産業史や技術史が好きだったりしますので,特に無線や電気工学が急速に進歩する1920年代の書物に触れることは,とても刺激的です。

 海外の文献について,これらの時期のものを目にすることはあったりしたのですが,日本語の文献を見るには国会図書館に行くしかないなあと思っていたところ,その国会図書館がプロジェクトを進めていたことをふと思いだし,「無線」をキーワードに検索すると200件近くがヒットすると知り,喜んで閲覧を始めました。

 PDFでのダウンロードも可能なのですが,サーバー負荷を考慮して一度にダウンロード出来る数は見開きで20ページ(ということは10枚ですね)に限定されているため,1冊丸々のダウンロードには手間も時間もかかりますが,貴重な資料に誰でもアクセス出来るという魅力の前には,大した壁にはなりません。

 考えてみると,資料や情報というのは,囲ってしまった人が勝者です。これらは全ての活動の源泉ともいえ,これらに自由にアクセス出来ないから,そこに差が作られます。

 文字を読む,文章を綴るという事を教育の根幹とするのはそのためですし,これらの「道具」を使って,先人達の知恵に触れるチャンスを持つことは,その人自身の可能性を広げるという意味においても,大変民主的なことだと私は思います。

 ある人が,3000円の本を書いたとしましょう。これが1000冊売れると,300万円の価値があったことになります。この人は,世の中に300万円の価値を生み出した訳ですね。

 この本はがすぐに絶版になってしまったとすると,著作権が存在するために,新たにこの本を読む機会がなくなります。全く存在すら知られず,消えてしまうこともあるでしょう。しかし,もしこの本が「誰でもアクセス出来る」ような状態だったなら,新しい読者が新しい価値を生み出してくれる可能性が出てきます。

 例えば,ですが,1960年代に一斉を風靡した,世界で最初のスーパーコンピュータとされるCDC6600というコンピュータの,アーキテクチャを説明した本が出版されたことがあります。

 CDC6600は現在のコンピュータに至る過程で生まれた,多くのアイデアが盛り込まれていて,現在も使われているものもあれば,現在は別の方法で解決された問題もあります。

 しかし,CDC6600はすでに過去のもので,この本も絶版になって久しい技術書です。

 著作権は消えていませんので,当然コピーも出回りませんし,そんなことをしたら犯罪です。

 ところが,この本の価値を知るある人が,スキャンして配布したいと考え,版元に連絡をしました。版元はちゃんと受け付けて,著者の連絡先を紹介しました。

 残念な事に,著者はすでになくなっており,奥さんが権利の保有者になっていました。この本をこのまま眠らせるのは惜しいという熱意に,奥さんはこの本をスキャンして配布することを,快諾しました。

 それからしばらくして,私は偶然そのデータを入手しました。大変に面白く,数々のアイデアに脱帽しました。1960年代は現在に通じる数々の機構が開発された時期で,それが出た当時にどれくらい画期的であったのかを知ることは,とても興味深いことです。

 私はそのことで,直接の価値を生み出していないかも知れません。しかし,こうして絶版となった名著が志あるものの目に触れ,彼が新しい価値を生み出したら,それは社会全体に,もっというと人類全体にとってプラスになることだと思えないでしょうか。

 知恵の継承というのは,こうして行われて来ましたし,そこで新しい技術が生まれて,人はさらに進化していくわけです。著作権という権利はとても重要な概念ですが,諸刃の剣であることを痛感した出来事でした。

 日本語は全世界で1億数千万人しか使わないローカルな言語です。しかしその長い歴史を考慮すると,蓄積された情報量というのは膨大なものになることでしょう。それが特別なものではなく,広く希望する人に行き渡ることで,新しい価値が生み出されるはずです。

 国会図書館が,こうしたプロジェクトを地道に行っていることは,一見無駄に見えるかも知れませんし,マニアックで,一部の人の利益にしか鳴っていないように見えるかも知れませんが,直接閲覧して面白いと思うならそれはそれでよいし,直接ではなくても間接的に,必ず社会全体の利益になると,私は信じています。

 注意しないといけないのは,昔の本ですから,ウソも書いてあるという事です。電波は「エーテル」を媒質に伝わると,これだけ豪快に言い切ってしまう文献を,歴史的なものとして見るだけのゆとりがないと,恥をかきますのでご注意あれ。

感謝とお別れ

 今日で9月も終わりです。

 私の背中側に座ってらっしゃる方が,今日をもって定年退職されることになりました。

 詳しいことは伺っていませんが,サラリーマンですから,それはそれは山あり谷あり,いろいろおありだったことと思います。

 ともあれ,1つのことをやり遂げる,それも短時間の努力や我慢で成し遂げられるようなものではなく,日々積み重ねていくことでしか完遂できない物事には,ゴールにたどり着いたという事実が,直ちに賞賛されるものとなります。

 個人的事情ですが,ちょうどふさぎ込んで,誰とも話をしようと思えなかった時に,その方が近くの席においでになり,なにかと話しかけて下さったことで,少しずつ話をするようになり,それが私という人間を周囲に認知せしめたという,とてもありがたいきっかけを作って下さった方でした。恩人の一人と言ってよい方だと思います。

 60歳で仕事を辞めて,そこから一体なにをして過ごすのでしょうか。はたまた,生活の糧はどうするのでしょうか。確かに自分の人生設計ですから,定年後,年金をもらうまでの間をどう生きるか考えておくべきというのは分かりますが,そういう心配をしなくて済むならそれが一番いいわけで,もう少しどうにかならんもんかな,とそんな風に感じました。

 私としては,この方が思っている以上に感謝をしているのですが,普段から肩肘張らない話を気楽にさせて頂いただけに,改まってきちんとお礼を申し上げていません。もうそんな機会が何度もあるとは思えず,焦りに似たような気分をここ数日味わっていました。

 それにしてもリアリティがありません。明日の朝,また職場にいる姿を見つけてしまいそうな気がします。

 特に感傷的になるものでもなく,入れ替わり立ち替わり,世話をした若い人や,同僚の方々が次々にお別れの挨拶にやってこられます。おかげで片付けがさっぱり進まないご様子ですが,さすが人望のある方だなと思います。

 私は,定年を理由に親しくして頂いた方とお別れすることは実は初めてです。悲しいことでも残念な事でもなく,めでたいことなわけですし,今生の別れとなるわけではありませんから,通過点の1つとして,私も捉えたいと思います。

 とても長い時間を過ごされた大先輩に,心から感謝したいと思います。ありがとうございました。そして,ご苦労さまでした。

ストロベリーリナックスのL/Cメータを作る

  • 2010/09/29 13:27
  • カテゴリー:make:

ファイル 410-1.jpg

 先日,日本橋のシリコンハウス共立で購入した,ストロベリーリナックスのL/Cメーターキットを作ってみたわけですが,その感想をば。

 Ver2になってからも結構な時間が経っている定番キットですので,その感想なぞ誰ももう期待しないと思いますが,遠慮せず書いてみます。

・キット?
 書き込み済みのAVR,LCDもCR類も揃っていて,ガラエポの両面基板にハンダ付けするだけのキットですから,とても気楽ですし楽しく製作できます。スイッチも基板上にハンダ付けするので,ケースに入れなければ使えないというものではなく,私のようにものぐさでケースに入れるのを億劫がる人でも,さっと使える実用キットだと思います。

・回路図?
 キットとして致命的というか,もはや言語道断なのは,回路図がないことです。AVRのソフトを公開せよ,といってるのではないですよ。純粋に,キットで回路図がないのは話にならない,ということです。
 なにか公開できない秘密でもあるんでしょうか。Ver1では公開されていたそうですから,別にストロベリーリナックスが意地悪をしているような感じではなさそうです。
 しかし,回路図がないと壊れた時に修理も難しくなりますし,実はキットの組み立ての段階でも,間違わずに部品を取り付ける重要な情報になります。
 それに,キットというのは,改造して性能アップを行ったり,使いやすくするということが日常的に行われるものですが,回路図がないと,それも難しくなってしまいます。
 どこが性能に影響するのか,なにか精度を左右するのか,その部品はどういう働きをするのか,そういうことが回路図には出ています。初学者が勉強になるのはキットのそういう所が優れているからですし,電子工作を実体配線図だけでやり遂げたところで,あまり意味がないのではないかと思います。
 私は,この事実で,ストロベリーリナックスという会社に,ちょっと疑問を感じるようになりました。

・説明書?
 苦言を呈してばかりですが,なにせ説明書が読みにくく,よく読んでもいまひとつピンときません。ボタンは4つありますが,なぜ4つのボタンを用意したのか,4つのボタンにはどういう機能をアサインしたのかが体系的に書かれておらず,校正時にはこうしろ,コントラスト調整はこうしろ,ゼロ調整はこうしろと,機能を軸に説明をしてあるのですね。
 それでもいいのですが,結局使わないスイッチがあると,これってなんのスイッチだ,と言うことなるわけで,それを解決することも説明書の役割です。いかにも理系の人が書いたという感じがする説明書という印象で,悪意はないのですが,褒められたものではないでしょう。

・性能?
 誤差は1%と大々的にいってはいますが,誤差1%をキープできるのは,コンデンサでは10pFから0.01uFくらいまでです。もちろん,小さい方に浮遊容量由来の誤差があるのはわかりますが,フィルムコンデンサやセラミックコンデンサでも1uFを越えるものが普通に手に入る昨今,0.01uFくらいまでしかダメというのは,ちょっと厳しいです。
 さらに致命的(致命的な話ばかりですみません)なのは,0.01uFから0.1uFだと,誤差が3%くらいになると書かれているのです。
 いや,3%になるのは仕方がありません。しかし,問題は,1%をうたった測定器が,あるところで3%,それ以上の誤差を持つ事を書いてしまっていることです。では,1.2%はどこのあたりから,1.8%はどのあたりから,と,表示されている値をどこまで信じていいのか,わからなくなってしまうのです。
 これなら,1%を維持できる容量はどこからどこまで,3%ならどこからどこまで,と書くべきであり,この製品のように0.01uFから0.1uFで3%程度,では,あんまりだと思うのです。
 これを少し深読みして,0.01uFまでなら1%,0.1uFまでは3%と判断してもよいのですが,なら0.03uFならどうなのか,0.082uFならどうなのか,3%程度というのはどういうことなのか,使う人の想像力に任されてしまいます。測定器を名乗るなら,これはダメです。
 それと,0.47uFのコンデンサを測定してみたのですが,0.26uFと半分ほどの値を示しました。説明書には誤差が大きくて使えないとあるので文句は言えませんが,未知の値を測定するのに,倍近く異なる値を平気な顔をして表示するというのは,ちょっと不親切かなという感じもします。いや,これは使う人が気をつければよいということにしておきましょう。
 なお,インダクタはなかなか良さそうです。測定範囲は0.1uHから10mHですので,普通に使うものは十分測定可能ですし,コンデンサのようにテスタに測定機能があるわけではありませんので,この際コンデンサの容量計はオマケで,インダクタンスメーターとして割り切って使うべきだと思います。

・バグ?
 ゼロ調整ですが,どういうわけだか電源を切っても保存されるべきなのに,保存されずにもどってしまいます。
 一度,コンデンサを付けたままゼロ調整を誤って行って,大きくずれたオフセットが記録されてしまい,戻せなくなってリセットをかけたのですが,どうもゼロ調整は2回連続で行わないと,記録されないっぽいです。バグですかね。

・結論?
 とりあえず,容量計はあまり信用できません。小容量品の測定には威力を発揮しそうですが,私のように高周波に無縁な人には,あまり必要性がないといえるでしょう。1000pFとか,1%精度で追い込む人なんかにはありがたいかも知れませんが,そんな回路の設計なんて,正しい設計なんですかね。
 インダクタンスの測定はとても便利に使えそうです。スイッチング電源を自作することがホビーストにも求められる時代になりましたが,そこで活躍するのがインダクタンスメーターでしょう。ジャンク品の流用,実測値の測定,手巻きで作るなどなど,テスタで代用できないだけに,貴重な測定器だといえそうです。

・おすすめできる?
 難しいですね,インダクタンスを測定したい人は,4600円の価値があります。コンデンサの容量測定をメインにするなら,買わない方がいいでしょう。もう4600円追加して,よいテスタを買いましょう。
 1000pFくらいを1%で測定したい極端なマニアは,すでにこんなの持っていると思いますので,今から買おうかどうか考えている人は,ちょっと考えた方がよいように思います。
 決して使いやすいわけではないし,回路図もない,実用機器を作るだけのキットで,しかし案外実用度が低いとくれば,残念ですが積極的にはおすすめ出来ないなというのが,私の結論です。

 ということで,もう作らなくてもいいかなあと思っていた容量計ですが,やっぱり作ろうと思います。

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