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B20を作る

ファイル 119-1.jpg

 2月末から取り組んでいたブラスキットが,ようやく完成しました。

 今度のキットもワールド工芸のもので,以前買い逃した国鉄の蒸気機関車B20型のNゲージ,今回はトップナンバーをモデル化したリニューアル品です。

 前回のキットは,欲しいときには既に完売となっており,どこを探しても見あたらない状態だったのですが,どうも今回のキットはかなり細部が改良されているようで,前回はロッドが動作しなかった(それでも自走するというのは当時としても驚異的だったといいます)のに対し,今回はなんとロッドが動作するというではありませんか。

 ワールド工芸というと,忠実なスケールに細かいディテール,そして美しいプロポーションにこだわるメーカーとしても知られていますが,あの豆タンク蒸機B20をどうやってそこまで再現するのか,興味は尽きません。

 3週間ほどの発売遅れがあり,ようやく手に入ったキットですが,価格が安いのでなめていたところ,とんでもない代物であることがわかりました。

 まず,部品が小さい。何かに固定してハンダ付けを行おうとしても,固定することすらままなりません。

 小さいということは熱がすぐに回るということで,先に取り付けた部品が,別の場所のハンダ付けの際にぽろっと取れてしまうこともしばしばです。

 なにせ指でつまんで位置を合わせながらハンダ付けを行うという作業が,熱がすぐに回って熱くて出来ません。そこで今回はマッハ模型から出ている耐熱指サックを導入します。もともと強力なステンレス用フラックスで指がボロボロになるを防ぐために,指サックは必要だろうなあと思っていたのですが,耐熱性がないとダメだからと見送りにしていたこともあって,ちょうど良かったと思います。

 この指サックの効果は絶大で,サクサク作業が進みます。大型の模型を作るときにはあまり意識しないかも知れませんが,これくらい小型になるとやはり雲泥の差だと思います。

 そうしてどうにかこうにか出来上がったボディがこれです。

ファイル 119-2.jpg

 大きさが分かるものを一緒に置いて撮影すれば良かったと思うのですが,そうですね,大きさとしてはメモリースティックより少し大きいくらいですかね。

 部品点数は多くないので,位置決めがきちんと出来れば時間はそんなにかかりません。

 続いて足回りを作ります。最近,模型用の超小型モーターが手に入るようになってから,ワールド工芸も積極的にこれを採用し,B20の細いボイラー内部にモーターを仕込むことが出来るようになりました。その代わりパワーはないし,過電圧で焼損する可能性もあったりして,一般向けには厳しいのではないかと思います。

 足回りもなかなか大変でした。

 まず,フレームと台枠を作るのですが,先にギアを取り付け(これは簡単),その後車軸を入れてから車輪を圧入します。私はここで万力を出すのをさぼって大きめのペンチで押し込んだのですが,そのせいで車輪に傷を付けてしまいました。後にこの程度の問題は気にならなくなります。

 車輪を押し込んだら,ホイール部分を圧入します。ここにロッドを取り付けます。

 このロッドが非常に細い上,加減リンクはステンレス製で,しかもハンダ付けを必要とするものだったりします。これはもうステンレス用フラックスを使うしかありません。

 細かいハンダ付けと,取り付け順序を間違わないように(間違うと先に進めず後戻りを余儀なくされます)作業を進めることに気が滅入りつつ,なんとかかんとか形にしました。

 モーター取り付け前の段階でスムーズに動作することは確認できたので安心してモーターの取り付けをします。ウォームギアをエポキシ接着剤でモーターのシャフトに取り付け,固定されるのを待ってから慎重に位置決めし,一気に高い温度でハンダ付けします。ここで温度を下げたハンダゴテを使うと,熱の回りが遅くなり,モーター全体を高熱にさらすことになり,失敗のもととなります。熱が拡散しないうちに,必要な場所だけさっと暖め,ハンダをのせるのがうまくいくコツです。

 そうそう,今回は初めて,温度調節機構付きのハンダゴテを使って製作をしています。偶然手に入れたもので,最初は使い慣れずに難儀していたのですが,なれてくるとハンダ付けを行う対象に応じて温度を調整することも出来るし,電源を入れて使えるようになるまでの時間も短く,なかなかよいです。

 モーターを電源器につないで回してみると,これもなかなかうまくいきます。そこで注油を行ってよりスムーズに回そうとしたのですが,この結果圧入したはずの車輪とホイール部分が空回りを始めてしまい,瞬間接着剤で固定をすることにしました。

 しかし,油が馴染んだ部分に瞬間接着剤を使っても意味はなく,結局予備の車軸に交換することになりました。この作業はかなり難しく,結局ほとんどの作業をはじめからやり直すことになってしまいました。

 そんなこんなで,出来上がったのがこれです。

ファイル 119-3.jpg

 実は,この段階では大きな問題に気が付いていません・・・

 さて,ここまできたら塗装です。蒸気機関車は黒がメインなので楽ちんですが,その分おもしろみにかけますね。

 いつものように中性洗剤で洗浄し,超音波洗浄機で細かい部分の油分やフラックスを落とします。続けてマッハ模型のブラスクリーンで錆を落とし,良く乾かしてからマッハ模型のメタルシールプライマーで下塗りをします。

 それから光沢具合を調整した特製セミグロスブラックを吹き付け,同じく特製クリアで仕上げます。

ファイル 119-4.jpg

 ところでこのB20にはウェイトが付属していません。しかしこのままでは軽すぎ,牽引力不足は当たり前,集電すらままならないという有様だそうです。そこで説明書にもウェイトを追加することが推奨されていますが,どこにそんなスペースがあるのかと首をひねってしまいます。

 こんな時は,やはりマッハ模型(マッハばっかりですねえ)のマイクロウエートの出番です。鉛を0.8mm位のボールにしてあるもので,これを溶かさずそのまま接着剤や塗料で固めて使います。ボール状ですので隙間に流し込み,そして固めることでどんな場所にもウェイトを積めるというのが素晴らしいです。

 私の場合,左右の水タンク,ボイラーの先端部に詰め込んでいます。キャブの後ろ側にも詰め込んだのですが,あとでDCCデコーダを組み込むときに邪魔になり,外してしまいました。なお,固定にはトミックスのシーナリーボンドを水で薄めて使っています。失敗してもやり直せるので気楽でいいです。

 さて,ボディと足回りの合体です。今回は比較的組み立て精度も良かったせいか,合体作業に問題は出ませんでした。問題がなさそうなことを確認し,DCCデコーダの取り付け用のリード線を長めに出しておき,合体させます。

 カプラーは付属のものではなく,IMONで売られている台湾製のカプラーを常用しているのでこれと交換しますが,カプラーのホルダーをビスで固定するときにビスをへし折ってしまい,ハンダ付けでごまかしました。急なカーブを曲がるときに,連結が外れてしまうかも知れません。

 さて,いよいよDCCデコーダの組み込みです。今回は特にスペースが厳しいのでDZ123しかありません。キャブに収まることは確認済みなので,配線をして黒いテープで絶縁し,なかば強引に押し込みます。

 そして最後の最後に,集電バネをビス留めして,完成!となるはずでした。

 DCCデコーダ組み込み後に車輪の左右がショートしていないかを確認すると,見事にショートしています。これはおかしい。原因はDCCデコーダ組み込みの失敗でしょう。分解して確認をしますが,ショートの原因はDCCデコーダではありません。

 ではどこだろう・・・答えは,足回り全体でした。

 私は,これはワールド工芸の設計ミスではないかと思っているのですが,シリンダとピストンのシャフトが絶縁されておらず,ここがショートするのです。

 シリンダは鋳造品で,ピストンのシャフトが入り込む空間はかなり大きめに作られています。実際にピストンのシャフトが触れるのは,これを支える真鍮製のガイドです。このガイドは直径0.5mm程なのですが,黒で塗装する部分なので,実は塗料によって絶縁されます。

 しかし,絶縁を意識した塗装ではなく,あくまで外観上の塗装に過ぎません。真鍮モデルを塗装しない人もいるのですが,そういう人はまずショートするはずです。

 私の場合,塗装が弱くなっている部分が作業中に剥がれてしまい,ここがショートの原因となっていたことに加え,精度の問題から一部シリンダの内部に直接ピストンが触れてしまう場合がまれにあり,これが原因でショートしていました。

 困りました。こんなに小さい模型ですから,可動部分を温存したまま効果的な絶縁をどうすればいいものか・・・今回ばかりはもうダメだと思いました。

 思いついた方法は,まずマスキングテープを直径1mm程の丸めてパイプを作り,これをシリンダ内部に差し込みます。その後細い針金で内径を広げ,ピストンのシャフトが抵抗なく前後できるように調整をします。これで絶縁は出来たはず。

 ほとんどショートはなくなり,DCCデコーダの動作も確認できたのですが,それでも時々ショートを起こします。ロッド類の細かい調整を繰り返しながら,なんとか連続運転が可能になるところまでだましだまし持っていきました。

 最後にナンバープレートを接着して完成です。

 そして試運転。

 結果は散々で,全く動作しません。集電不良を起こしているようです。集電能力を向上させるLOCOを使って徐々に走るようになってきます。

 走るようになると,足回りから赤い火花を出し,ショートしていることがわかるようになります。コントローラも頻繁に瞬間的なショートを起こしていることを示しています。

 確認すると,ロッドの遊びが大きく,これが車輪に触れてしまうことがあるようです。それでも左右の車輪がショートするわけではないので問題はないはずなのですが,やはりシリンダとピストンのシャフトの接触が起きているようで,片側が接触しているような時に車輪とロッドが接触すると,ショートが起こるような感じです。

 そこでロッドを少し曲げて,遊びが大きくなっても車輪に接触することがないようにしました。

 これで完璧。スローもきくようになり,思い通りに速度調整ができます。DCCデコーダのパラメータを設定し,このモーターの限界電圧である8Vを上限に設定,中間電圧を低めに設定して操作をやりやすくして完成です。

 30分ほどの走行試験を終えて,早速貨車を連結しました。軽いせいで牽引力は弱く,ワムくらいだと2両でうちの勾配は上れません。平坦線では5,6両は軽いと思うのですが・・・

 苦労はしましたが,最終的にいい感じに走る機関車に仕上がりました。作る作業そのものは部品も少なく大した手間でもなかったのですが,やはり小さいこと,そして電気系の問題に苦労したことで,このキットは上級者向きだと感じました。

 なんでもこのキット,大人気で発売と同時に完売したそうです。再生産が決定したらしく現在予約を取っているようなのですが,かわいいからとか,安いからとか,そんな軽い気持ちで取り組むと,思ったような結果が得られないかも知れませんよ。

立て続けに3つの病院にかかる

 3月31日,前々日から痛み出した親知らずを抜くことにしました。

 左上の親知らずは,もともと虫歯になっていたのですが,2年ほど前にぽろっと折れてしまいました。それでも痛みは全くなく,このままなくなってしまうのではないかと馬鹿なことを考えていたのですが,やっぱり甘い考えでした。

 歯は,ストレスなどによっても痛みが出たりするそうです。私の場合も,ここ最近いろいろあったり悩むことが続いたので,痛くなったのかも知れません。

 痛みを散らすことも考えましたが,なにせ虫歯からきた親知らずの痛みですから,腫れたり熱が出たり,はたまたおかしな病気になると結構大変らしく,今のうちに決着をつけようと意を決して近所の歯科医に出かけたのでした。

 レントゲンを撮ってみると,やはり根っこだけ残っていますが,骨にまで炎症が進んでいるとのこと。先生が提示した治療は2つで,1つは今すぐ抜く,もう1つは薬で炎症を抑えて後日抜く,です。

 前者は原因をすっきり取り除けるのですが,炎症を起こしているときに抜くため,痛みや腫れがひどくなる場合があるそうです。後者はその心配はないが,時間がかかる,さてどちらにしますかという事でした。

 まあ,こういうのは勢いが大事と,今すぐ抜くを選択。こういうのは実のところ非常に抜くのが難しく,もう少し早くに来て欲しかったと恨まれつつ,麻酔が始まりました。

 ところが麻酔がきいて実際に抜く作業がはじまると,さくっと抜けてしまいました。

 出血もなく,大した腫れもないまま,万事がきれいに解決するはずでした。

 ところが翌日の朝,右のお腹が痛いことで目が覚めました。数日前から胃の調子が悪く,そのせいもあってかなと思っていたのですが,寒気も出てきます。これはまずいなと思いつつ,痛みがどんどんひどくなるのがわかります。

 日曜日だったので休日診療所に電話してみると,盲腸の可能性もあるということで,すぐに救急車を呼びなさいということでした。

 で,119番をしてみると,自力で医者に行けないのかと一喝され,弱気になっていた私は救急車を断り,もう一度同じ病院に電話してみると,とりあえずきなさいとのこと。

 タクシーで向かい,歳を取ったお医者さんの診断は,盲腸ではなさそうだが,検査が出来ないのでわからん,でした。月曜日に先生に縁のある病院を紹介していただいて,翌日きちんと検査をすることになりました。

 ここまでの話で,どうも尿管結石ではないか,という予想が頭をよぎりました。私は中学生の時に尿管結石で激痛を体験してから,2度ほど同じような痛みを経験しています。前回は夜中に痛み出し,救急車で担ぎ込まれました。

 今回も,よく考えてみると同じような痛みです。盲腸でなければ,おそらくこれでしょう。

 昨日の昼過ぎに,痛み止めを飲んでから痛みが消え,今日になっても痛みが戻ることはありませんでした。熱は37度5分くらいあって,体のだるさには参ってしまいます。

 それでも今日会社を休んで,その先生の紹介をうけた病院にいってきました。

 レントゲンは何度か撮ったことがあるのですが,CTスキャンははじめてです。そこまでする必要があるのかなあと思いつつ,一通りの検査が終わっての結論は,やっぱり尿管結石だろうということでした。

 今回の痛みの原因である結石はもう出てしまっただろうということですが,悪いことに腎臓の中にはもう1つ結石が写り込んでいます。素人にもはっきり分かります。

 これがそのうち降りてきて,また激痛をもたらすかも知れないと思うとゾッとするのですが,尿管結石の治療は基本的に「自然に出てくる」のを期待するものらしく,水を飲むこと,食事に気をつけることが大事なのだそうです。

 そういえば,ここ1年ほど,水分の摂取量が半減していることを思い出しました。また,結石の成分であるシュウ酸も,あまり気にしないうちにたくさん摂っていた可能性があるなと思い当たるものがあります。

 痛みが消えてとにかく楽になったのですが,この間気分が悪く,食欲もなかったために元気が出ませんし,熱もまだ残っているので,体のだるさは続いています。

 尿管結石で検索してみると,多くの人がこの病気で悩んでいるようで,その痛みのすごさを「だれも分かってくれない」と書いています。また再発する率も高く,何度もその激痛を味わっている人が多いこともわかります。

 厄介なのは,この痛みが右側だと盲腸の疑いがあるから,お医者さんに診てもらわないで済ませるわけにはいかず,かといって本当に結石なら自然に出るのを待つしかない(そのくせ立てないほど痛い)のです。

 大した病気はしたことがありません(入院も手術もしたことがない)が,こういう持病を持っていることだけは自覚しておかないといけないです。

 しかし,あの突然の激痛,まさに立っていられず,歩くこともできないあの痛み,あれだけどうにかならんもんでしょうか・・・

念願のScanSnap

  • 2007/03/30 17:55
  • カテゴリー:散財

 人類が増えすぎた書類を磁気円盤に移動させるようになって,既に半世紀が過ぎていた。
 コンピュータの周囲の巨大な磁気円盤は書類の第二の故郷となり,書類はそこで子を産み,育て,そして死んでいった・・・(どかーん)

 そんなわけで,書類です。頻繁に見る物は紙に限りますが,書類の多くはそれほど頻繁に見るものではありません。捨てるわけにもいかず,さりとて置いておくには場所ふさぎという,そんなものの代表ではないでしょうか。

 人類の歴史は,アーカイブされて今に伝わっています。もし先人達が「場所ふさぎだから」と書類をその都度捨てていたら,我々は自らの歴史を知ることもなく,時間の流れに彷徨って,同じ過ちを二度三度と繰り返していたに違いありません。

 しかし,書類の保存には膨大なコストがかかるものです。これは,書類そのものの価値に加えて,書類をとにかく保存するということにも価値が認められているからでしょう。

 それで人類は,書類をいかに効率よく保存するかを考えて来たわけですが,マイクロフィルムの時代を経て,今は電子データとして保存することが一般的です。

 マイクロフィルムも専用の機械がないと見る事ができないのですが,電子データはもっと最悪で,ただの数字の羅列に一定の決まり事を設けて,情報を織り込んでいくわけですから,その決まり事がわからないと困ったことになるわけです。

 前置きが長くなりましたが,ScanSnapを買いました。

 すでによく知られた製品なので今さら説明の必要もないでしょうが,小さく,読み取りも高速で,PDFに変換するところまで自動化されている,書類のアーカイブ専用のドキュメントスキャナです。

 本物のAcrobatが付属していて約5万円という価格はなかなか微妙なところで,フラットベッドスキャナが1万円を切る値段で売られているこのご時世に,5万円という価格には高いなあという印象が拭えません。

 ただ,よく言われることですが,Acrobatの価格を考えると,結構妥当な金額といえます。両面スキャンが可能で,オートドキュメントフィーダまで搭載したスキャナですから,単純に1万円のスキャナとの比較も出来ないでしょう。

 以前から欲しいなと思っていたのですが,やはり価格がネックになって買わずに来たのですが,いつも捨てている,以前カーナビを買った業者のメールマガジンを偶然きちんと見てみると,1つ前の製品が36800円と破格値で出ています。送料も無料です。

 現行品はS510というものなのですが,1つ前のS500との違いはソフトウェアの違いだけで,スキャナ本体にはなんにも違いはありません。それにどちらもフル機能ではないにせよ,Mac用のドライバも提供されているため,私の環境でもばっちりです。

 小さいとはいえ,それなりの大きさがあるものなのでかなり迷ったのですが,書類が片付いて,それで生まれたスペースがスキャナよりも大きければ,スキャナを導入する意味があります。

 一昨日届いたScanSnapをちょっと使ってみたのですが,Macで使ってる人もそんなに多くはないでしょう。使い心地を少し書いておきたいと思います。

 まず,本体は大きさの割にずっしりと重いです。想像していたよりずっと小さく,しっかりとしているので,本体については好印象です。ただ,ACアダプタがじゃまくさいのはお約束です。

 ソフトはダウンロードをしないとMac版は手に入りません。Windowsで使うのとは随分機能差があり,特に残念なのはOCR機能が使えず,結果として検索が出来るPDFが生成されないのです。

 また,PDFを編集するソフトであるAcrobatは当然Mac版がついているわけではないので,余計なページを削除するなどの編集は出来ません。もともとMacOSXでは,PDFは標準フォーマットとしてOSに組み込まれた存在です。それゆえ,PDFの扱いそのものは軽快なのですが,編集に関してはちょっと面倒です。

 基本的な機能についてはWindows版との差はなく,本体のボタンを1つ押すだけでスキャンが始まり,最終的にPDFを作ってくれることも同じです。ただし,A3のスキャンを行う機能がMac版にはありません。よって付属しているA3用のキャリアシートは無用の長物です。

 読み取り速度は,Windows版を使ってないので比較出来ませんが,Mac版が特別遅くなっているわけではなさそうで,十分に高速だと思います。また,両面のスキャンが同時に行われるため,片面でも両面でも使い心地に差がないというのがありがたいところです。

 画質はWindowsもMacも変わらないと思いますが,これも十分です。私の場合スーパーファインモードを使っていますが,カラーもモノクロも問題はありません。

 音は結構大きめでしょう。また,ADFのパワーが結構大きいので,もしジャムが起きたりすると書類がくちゃくちゃになってしまうことは避けられません。スキャナにセットする前に,ジャムが起こらないよう,書類が1枚1枚きちんと剥がれてくれることを確認した方がよいと思います。

 ということで,私は特別高度なことを考えていないので,これでもう十分です。ちょっと置き場所に困るような雑誌類もどんどん読み取ってくれます。

 こうしたアーカイブを行う場合に,その保存フォーマットをどうするかは少し前まで頭の痛い問題でした。機種やOSを問わず,複数ページを1つのファイルにまとめることができるものは意外に少なく,実質的に標準となっているPDFの存在が,こうしたドキュメントスキャナを身近なものにした最大の理由ではないかと思います。

 すでにスキャンしたい書類がたくさんたまっています。逆に,これがあればスキャンしておいたんだけどなあと思う捨てた雑誌もたくさんあって,今にして思えばちょっと残念です。

朝の出来事

 昨日の朝は,出るのが少し遅くなってしまい,小走りに駅に向かいました。

 1つ,2つ,3つと角を曲がり,少しだけ視野が開けた場所にさしかかって目に入ったのは,いつもより少しだけ離れたところにあった,いつも同じ時刻に目にする出勤途中の女性の背中でした。

 違っていたのは,狭い道の真ん中にかすかに見える膨らみと,それを心配そうに見つめるおばさんの姿が同時に目に入った事です。

 おばさんは困ったという顔をして,すれ違う寸前の私に声をかけました。

 すみません,この子が動けなくなっているのですけど,このまま車にひかれたらかわいそうなので,自分が道の横に動かしてあげられればいいんですけど,ちょっと私はそういうにが苦手なので,できれば動かしてあげられませんか・・・

 彼女はそういって私に本当に困った視線を投げかけました。その視線と私が見たいつもの女性の背中は,この頼みが私だけにされたものではないと知るのに十分でした。

 反射的に私は,足下にあるその膨らみを凝視しました。そこにあったのは,小さなスズメでした。

 死んでいるわけではなく,さりとて大けがをしたり,病気で動けなくなっている様子もないのですが,用心深い彼らが人間二人に囲まれて逃げ出さないはずもありません。なにかがあったのでしょう。

 ほぼ同時に私は困ったことになったぞと思いました。いつもの電車に乗り遅れる,そんな心配をしていたのです。それに,厄介なことは何かに関わるから起こるのであって,逃げてしまえば何も起こりません。

 朝の憂鬱な表情を浮かべる私に声をかけるくらいです。おばさんも,余程困ってのことだったのでしょう。おばさんは私の態度が期待はずれになりそうだと察知して,続けました。

 あなたも,やっぱりこういうの,苦手ですか?

 私も,実はあまり生き物が得意なわけではありません。ええ,実はそうなんですよ,と申し訳なさそうに答えたのですが,その場をさっと去ることも出来ずにいました。いくつかある選択肢の中で,電車の乗り遅れるのが嫌だ,という理由に最もそぐわない行動を取っている私がいました。

 鳥インフルエンザが人間に感染する可能性が心配されています。政府も,死んだり弱っている鳥には触らないようにと呼びかけています。もしこのスズメが鳥インフルエンザで弱っているのだとしたら,私が世界に先駆けて,新しい型のインフルエンザを蔓延させ大被害を起こす元凶となる可能性だってあります・・・

 人間は,中途半端に賢いせいで,面倒なことに壮大な妄想を付加してくだらない言い訳を考えつく動物です。自分がそんな大それた事件の主人公になることを想像しながら,足下のスズメに視線を落とし,同時に,でもこのままだと車にひかれますね,それはかわいそうですね,とおばさんに返しました。

 おばさんも,そうでしょうと頷きましたが,それでは事態は何も変化しません。

 そのまましばらくして,この場を何となくやり過ごすことになるだろうと考えていたところに,それを許さない神の手が,事態をのっぴきならない方向に動かしました。

 ワンボックスカーがやってきたのです。道の幅はぎりぎりです。とても小さなスズメをよけて通ることは出来ないでしょう。果たして我々の眼前で,かくも残酷な事が起こってしまうのでしょうか。

 私は決心しました。手で車に合図を送り,まずこちらの異常に気付いてもらいました。もう後戻りは出来ません。

 私はしゃがみ込み,そのスズメを,出来るだけ出来るだけそっと抱きかかえようと手を伸ばしました。

 こんな近くでスズメを見るのは,何年ぶりでしょう。

 そのスズメは,目をつぶっていました。残念ながらスズメ独特の愛らしい表情を見せてはくれません。半開きになったくちばしの奥には,赤黒い血がたまっています。そしてその足下には,血の跡がついています。

 どこから出た血なのか探してみますが,口以外に見あたりません。それに,意外にちゃんと両足で立っています。震えている様子もなく,丸く膨らんでいるようでもありません。

 私の手が,スズメの一部に少しだけ触れた一瞬,スズメはびっくりしたように,ばさばさと辛そうに飛び立ちました。少なくとも私の視線の高さを超え,彼を見上げることを期待しながら,しかしそれはかないませんでした。

 3メートルほど先の塀にとまったのを見届けた我々は,車に再び合図を送り,止まって待ってくれたことに感謝をしました。運転手の表情は実ににこやかでした。

 おばさんは私に頭を下げ,少し先のマンションまで一緒に歩いて,そして帰っていきました。私は私で,何事もなかったかのように,駅への道程を急ぎました。

 いつもの同じ電車に乗り,いつもの時間の流れに少しだけ挟まったこの事件を振り返りながら,どうして躊躇せず,おかしな言い訳ばかりを考えずに,さっと行動に出ることが出来なかったのだろうか,スズメがぐったり動けなくなっておらず,案外簡単に事態が収束したことを助かったとまず思ったさもしい感情は一体どこから沸いて出てきたのだろうか,結果としてスズメは車にひかれず,おばさんは安心し,私もいつもの通りの生活に戻っているが,私の気持ちは暗いままでした。

 そういえばすっかり春のそれになった日差しに目を細めて,ちいさな丸い姿のスズメをかわいらしいと思った数日前を,私は思い出していました。

 その日の夜,同じ道を帰りに通った時に,私はそのスズメの痕跡を探してみました。暗いせいもありましたが,私はとうとうそれを見つけることが出来ず,自分の望みが叶ったことに感謝をして,自宅にたどり着いたのでした。

 
 

Make:02に本気を感じた

  • 2007/03/22 15:38
  • カテゴリー:make:

 昨年秋にオライリーから出た「Make:日本語版」の第一号は,多くの書店で平積み&店頭POPとかなり気合いの入ったものでしたが,内容がかなりアレゲだったこともあり,さっぱり売れなかったようです。

 オライリーといえば,印象的な銅版画の表紙に飾られた硬派な書籍にお世話になった人も多いでしょう。それに社長のティム・オライリーは「WEB2.0」という胡散臭い言葉を生み出した人でもあるし,私のような人間にとって,オライリーというブランドには大きな信用があるのです。

 そのオライリーも最近ちょっと方向性が変わってきていて,実用一点張りの役に立つ書籍だけだったものが,数年前から何の役にも立たない本もチラチラと出てくるようになりました。

 本国では別に珍しい傾向でもなんでもないんでしょうが,その最たる例がMake:という雑誌です。

 アメリカのホビーストには,日本人にはないマニアっぷりが炸裂していて,よくもまあそんなことをするものだと思うようなことを涼しい顔でやっていたりしますが,それを取り上げて紹介するのがMake:という雑誌です。

 ニュートンのような単なる科学雑誌でもなく,またラジオライフのようなマニア限定の雑誌でもなく,強いて言えばホビーストが互いの安否を気遣う雑誌という感じでしょうか。とにかく,こういう雑誌は日本にはないと思います。

 それが日本語版として出るというので,私は期待をしていたわけです。しかし昨年秋の第一号は,ちょっと内容が薄かったことと,本当に役に立たない記事ばかりで,知的好奇心を満足させるようなクオリティではなかったことがとても残念でした。

 案の定,大量の在庫がしばらくすると綺麗に返品され,まるでそんな本はなかったという黒歴史っぽい扱いを受けるようになっていました。

 第二号が昨年末に出るというアナウンスもふいにされ,Make:はもう永遠に日本では出ないのだと思っていたのですが,突如3月末に出るという情報が!

 マイナーな商品を買い支えることに心地よさを感じる私としては,もう買うしかないでしょうね。内容は正直,前回同様外しまくりであることはもう覚悟の上です。

 第一号を大量に返品した職場近くの大きな本屋さんは,2店とも入荷していませんでした。当然でしょう。仕方がないので家の近所の大きな本屋に出かけると,4冊ほど残っていました。

 期待しないで読んでいると,「こ,これは!」というまるで美味しんぼのような台詞が頭の中を錯綜します。

 そうなのです。かなりよい内容なのです。

(1)内容がかなり濃くなった

 ニュースやら製作記事やらインタビューやら,実は第一号から結構いろいろ書かれていたのですが,その内容はどれも「ふーん」で終わるようなものばかりでした。第二号ではセグウェイの発明者へのインタビュー,直径30cmのサイクロトロンを自作した人の話など,なかなかキャッチーなものが列んでいます。


(2)試してみるかと思う記事が増えた

 第一号では凧にカメラを付けて空撮とか,ビデオデッキを改造した猫の自動えさやり装置など,どうでもいい製作記事ばかりでしたが,第二号はジャム瓶で作るパルスジェットエンジン,空き缶で作るスターリングエンジン,廃物利用で瞬間撮影用のフラッシュを作るなど,自由研究として取り組んでも面白そうな製作記事が増えました。気合い入ってます。


(3)脳に染み入る知識

 第一号では常温核融合など,どっちかというと「とんでも科学」っぽいネタが出ていて,胡散臭さが漂っていたのですが,今回のネタは冷凍による仮死状態に関しての話です。一瞬「とんでも科学」っぽいところを見せながら,実はすでに実用化されて我々の生活にも組み込まれている事実や,最新の成果による可能性を堅苦しくならないように論じており,読み応えがあります。


(4)印象的なコラム

 グリニッジ天文台の博物館は撮影禁止になっているそうですが,その理由が釈然としない,というコラムが出ています。ミケランジェロのダビデ像を,スタンフォード大学が精密に三次元スキャンする研究で,そのデータを他に出さないという契約を必要としたことについても異論を述べており,すぐに著作権が版権が,という世知辛い世の中に対し,痛烈な批判を行っています。海外の知識人が述べるこうしたオピニオンを読むことが出来る機会というのも,なかなか貴重ではないでしょうか。そして,なぜこのコラムを選んだのか,そこにMake:日本語版の意図を読み取ることが出来そうです。


 てなわけで,第二号はかなり手間をかけて丁寧に作られた感じがあります。

 そもそも人間は知らないことに接し,それを理解したときに充足感を得るものです。第一号のMakeにそれはほとんどなかったわけですが,第二号は逆にそういう記事ばかり。しかもかなりのボリュームです。

 噂によると,店頭売りはぼちぼちでも,amazonなどでは大変によく売れているんだそうです。この調子なら第三号もほぼ確定という話もあります。

 日本語版独自の記事がないことを1つの問題点として捉えて第二号を出しているようですが,独自の記事があるかないかではなく,それが知的好奇心を満たすものかどうか,同時にあまりに尖りすぎて怪しいものになってはいないか,というごく当たり前の観点で記事を選べば済むだけの話のように思います。

 感心したのは,本国の記事を抜粋し,まとめただけではなく,きちんと日本のスタッフが追試を行い,動作することを確認してあるのだそうです。この作業に時間がかかってしまったことを,発売が何ヶ月も遅れた理由にしています。

 根拠がはっきりしない記事を見ることに対する不安感というのは,読者は敏感に察知するもので,今回の確かな手応えはこうした丁寧な作りから得られるものではないかと思います。どんなものでも手を抜いたら,その分のペナルティはあるものです。

 次はうまくいくと7月頃だそうです。年4回を目標にするそうですが,同じような方向と思われたCQ出版の「エレキジャック」があまりにひどい出来だったこともあり,Make:日本語版はうまく続いてくれるのではないかと思います。

 この調子で頑張れ。

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