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ユーザー「gshoes」の検索結果は以下のとおりです。

F2がAI対応に

 先日,生きていれば格安,死んでいれば高価なゴミというF2を買ったわけですが,週末に時間が出来たので,様子を詳しく見てみました。

 まず手始めにボディからです。シリアルから1972年ごろの製造で,マイナスネジが使われる初期型です。確かに低速のシャッター速度もきちんと出ているようですし,ぱっとみてわかるようなおかしな所はないようです。

 しかし,裏蓋を開け閉めしている時に,裏蓋がやや斜めになって閉じることに気が付きました。可能性は2つ,フタがゆがんでいるか,ボディがゆがんでいるか,です。

 右肩の大きな打撃痕があるのですが,これだけのへこみを作るんですから,かなり強くぶつけた(あるいは落下させた)のでしょう。外側だけで済むはずもなく,おそらくボディが歪んでしまっているんじゃないかと思います。

 ボディが歪んでいると,フィルムに平面が出ません。フォーカスが周辺でズレるとか,どこかから光が漏れるとか,そういうトラブルが発生します。そうした致命的な問題を出すボディの歪みは,修正する方法がありません。

 よって完全なゴミになってしまうのですが,このF2はおそらくボディが歪んでしまっていると思います。価格のうち,ボディは0円になりました。

 次は,お目当てのフォトミックAファインダーです。

 とりあえず明暗に反応してメーターが動きますし,AI連動レバーを回してもスムーズにメーターが動きます。致命的な故障は起きていないと思っていました。

 一安心してメカを分解,注油してスムーズに動作するようにしましたが,続けて調整を行ったところ,レンズを交換すると調整が大きく狂うことに気が付きました。

 詳しく調べてみると,明るい場所と暗い場所で全然値が違ってきます。

 これは電気系に問題があるということです。まず200kΩのソリッド抵抗を確認しますが,ちょっと大きめ(220kΩ)ではありましたが,一応問題なしです。

 そうなるとCdSです。祈るような気持ちで左右のCdSを取り外してテスターで確認すると,やはり片側のCdSが死んでいました。真っ暗にしても抵抗値が上がり切りません。

 困りました。

 まさかCdSの不良だったとは。これでこのファインダーも0円になりました。つまり,今回の買い物は全くのゴミに高価なお金を払ったことになりました。やっぱり中古カメラ専門店はよく分かってますね。

 カメラ用のCdSは,リニアリティのある測光範囲を広く取る必要があるので,γ(簡単に言うと100lux時の抵抗値と10lux時の抵抗値の比率)が小さい事が望ましく,市場で流通していたものとしては最も小さい0.5くらいの物を使うことが多かったようです。

 ところが,単なるON/OFFのスイッチとして使う場合にはγは大きい方が設計が楽で動作も確実であり,通常簡単に手に入るものは0.7とか0.8とか,使いやすい大きめの物ばかりだったりするのです。

 それにCdSはばらつきが大きく,20%程度のバラツキは普通にあります。出来れば選別して似たような物とペアにしたいところですが,そのためには数を買って実測してペアを組むしかありません。

 壊れたCdSを交換出来ればよいのですが,同じ物は手に入らないので,理想的にはペアを組み直して2つとも一気に交換するのがベストです。しかし,そもそもW他足は手持ちで使えそうなCdSを持ってはいません。以前,NikomatELを修理するのに,秋葉原で様々な種類のCdSを買ってきましたが,どれ一つ使えそうなものがなかったのでした。

 NikomatELと同時代のフォトミックファインダーですから,CdSも同様の特性である可能性が高いと思うのですが,つまり残っているCdSに使えそうな物はないということです。

 そうはいっても一応確かめてみます。生きているCdSは,真っ暗にすると500kΩ以上の値を示します。15Wの蛍光灯に15cmくらい近づけると1.5kΩくらいになります。

 これに近いものを探してみると,1つだけ見つかりました。しかも外形は6mmのメタルCANでガラス窓です。ただ,値は常に20%ほど大きめに出ます。しかしγは揃っているような感じです。

 これくらいならなんとかなるかもしれないと,早速交換してみます。

 一応,明るさに応じてメーターが適切に振れるようになってくれました。動作そのものは治ったようなのですが,問題は調整が可能かどうかという問題と,精度の問題です。

 試行錯誤をしたのですが,やはり完璧に調整することはかなわず,被写体の明暗によって,測光値に半段ほど差が出ています。これくらいの違いならまあ実用上は困らないので,とりあえず良いとします。

 いろいろな開放F値のレンズを試したり,いろいろな明るさの被写体で試したりと何度か繰り返していますが,全然ズレてしまって困るという問題は起きてはいません。

 というわけで,完璧とは言いがたいですが,とりあえず実用レベルに復帰したフォトミックAファインダーですが,実際に使ってみた感じでいうと,F2がクラシックカメラから現行機種になったような錯覚をしてしまいます。

 なんといっても,AI方式に連動するようになった事が大きいです。うちでいえば,AI45mmF2.8Pも,AIAF85mmF1.8Dも普通に使えます。試していませんが,AIAF300mmF4Sも使えるでしょう。

 ガチャガチャをしなくていいと言うのも地味に便利ですし,デザインも少し変わっていて,おでこの部分がやや狭くなっているので,バランスが良くなって見た目も格好いいです。

 ただ,ファインダー内に表示される絞りの値が見にくくて,F3に持ち帰るとその見やすさに驚きます。F3はやはりF2の改良型だったんだなあと思われる瞬間です。

 もちろん,現像して結果を見なければ使えるかどうかわかりませんが,完璧を求めなければ使えそうな感じですので,これで一旦修理を終わります。

 それにしても,いくらメーター不良と書いてあっても,CdSが死んでいるファインダーにおそらく歪んだボディを組み合わせて12000円というのは,もっとあこぎなカメラ屋さんでも付けない値付けじゃないですかね。

 いくらF2とはいえ,基本的に修理不能なジャンク品ですからね,逆説的な言い方をすれば,こういうお店でそれなりの保証のある高価なものを買えば,自分に見る眼がなくても失敗しないという事になるでしょう。

 さて,CdSをどうにか調達しないといけないですね。F2用として売られているものを探すのもいいですが,汎用の物から使えそうな物をストックしておき,他のカメラの修理にも使えるとよいと思うのですが,そもそもCdSのことを私はあまりよくわかっていません。

 実はCdSって,詳しい文献が少ないのです。RCAが開発したことになっていますが,登場は1960年代のようですし,1970年代中頃にはフォトトランジスタが使われるようになって,どちらかというと光センサとしては安かろう悪かろう的な扱いだったようです。

 ただ,人の目に近い感度特性を持っていたり,抵抗が変化する受動デバイスだったことで,詳しいことを知らなくてもそれなりに使える,手軽な光センサだったことは事実で,カドミウムが規制対象になる2000年頃までは,割と目にすることも多かったように思います。

 環境規制が理由だとすればこのまま絶滅するだろうと思っていたのですが,どういう訳だから未だに入手可能で,中国あたりで現在も生産されていると聞きます。保守用の部品として作られるにしては規模も大きいようなので,手軽で安いというのは,それなりに需要があるのかも知れません。

 

2台目のF2がやってきた

 5月の連休に手に入れたニコンF2フォトミックは,オーバーホールを経て現在2本目のフィルムを通しているところです。

 F2は70年代らしい装飾のない上品なデザインで,なにが素晴らしいといって本体に数字以外の文字がほとんどないのです。

 今どきのカメラは文字だらけです。ひどいものは日本語です。

 文字が書かれていないと操作することが出来ないほど多機能になっているのだろうと思いますが,写真を撮影するという目的は変わらず,F2とD850を並べてみると,なにがこんなに違っているんだろうと,ふと考え込んでしまいます。

 いや,iPhoneのような文字がボタンがないデザインを洗練されているだのシンプルだのと賛美するのではありません。iPhoneが操作系をソフトウェアに丸投げしたに過ぎず,機能は数え切れないほどあるのに対し,F2はカメラとして備わっているべき機能がすぐに引き出せるようになっていて,機能の少なさに誰も文句を言わないことに,根本的な違いがあります。

 いつからだろう,カメラに文字がごちゃごちゃ書かれるようになったのは。

 まあ,そんなわけで,F2はさすがにプロ機です。使い込まれていてもちゃんと動き,整備すれば完調に戻るという夢のような堅牢さを誇る機械式カメラです。(私個人はこれをオーバースペックとも考えるので,現在の価値観ではこれを賞賛することは出来ないかなあ,とも思っています)

 で,メーター不良と書かれた1972年頃製造のF2フォトミックを相場よりもやや高いくらいで購入した私は,特にフォトミックファインダーDP-1の整備に苦労して,ようやく実用レベルに追い込んで使っています。死ぬまでに本物のガチャガチャのお作法を体に染み込ませたいという夢は,なんとか叶いそうになってきました。

 後で知った事ですが,DP-1のメーターは固着が問題となっていて,これを対策したメーターが後期から使われているんだそうです。このメーターは右側が細く絞られていて,まるでワインのボトルを横倒しにしたような表示になっています。

 私のフォトミックファインダーは前期型ですので,その見た目から「アンプルメーター」と呼ばれる固着対策済みのメーターではなく,振動を与えないと針が動いてくれないという問題に頭を抱えていたことは,すでに周知の問題だったということでした。

 少し振動を与えればちゃんと動きますので,気にしなければいいだけのことです。何度もばらして組み立てたことで,シャッタースピードダイヤルを巻き戻すバネが緩くなり,ちょっとだらしない感じもするのですが,とりあえず動いているのでよしとします。

 ところが,あれだけ憧れたガチャガチャなのに,面倒になってきました。

 1つは,カニ爪のあるレンズが少なくなっていることです。例えばAi45mmF2.8PなんかF2で使うと面白いだろうなと思うのに,カニ爪がありません。

 AiAF85mmF1.8Dもそうです。あるいはAiAF-S300mmF4もそうです。タムロンのSP90mmF2.8も使えたら面白そうです。

 これらを使うにはそう,Aiに対応したフォトミックAが必要です。

 しかし,Aiに対応したファインダーはF2を実用機として使う人にとって最善の選択肢であるだけに,比較的高価です。ただ,微妙にファインダーのおでこの部分が狭くなり,個人的により格好良くなったと感じるフォトミックAは,是非欲しいアイテムでした。

 そんなおり,ふと三宝カメラのサイトを見ていると,F2が安く出ていることに気が付きました。本体をひどくぶつけた安いF2は,メーター不良のフォトミックAを乗っけて,破格の安さです。さらに割引もありました。

 ボディはシリアルから前期型ですので,この値段なら最悪部品取りでいいや,動けば儲けものくらいで買うことにしたのです。

 果たして届いた格安のF2は,すべてがちゃんと動いていました。

 ボディは右肩がへこんでいますが,動きはややぎこちないものの,へんな引っかかりもなく巻き上げからレリーズまで一連の動作が出来ます。シャッター速度も低速はきちんと出ています。

 シャッター幕も綺麗ですし,塗装の剥げも擦り傷も少なく,下手をすると私のF2よりも素性がいいかもしれません。

 心配していたメーター不良のファインダーですが,本体に電池が入っていたこともあり,動く事がすぐにわかりました。もちろん狂ってはいますが,そんなものはどうとでもなります。部品レベルで生きていることが,修理には不可欠なのです。

 プリズムの剥がれもありませんし,アイピースの割れもなく,ぶつけた跡もありません。もしかすると分解痕くらいはあるかもしれませんが,とりあえずちゃんと動いてそうなので,安心しました。

 うーん,確かに右肩のへこみは強烈なので,これをそのまま常用機にするのは厳しいですが,それでもこの程度でこのお値段は,安くないかい?しかも新しい電池にボディキャップまで付けてくれています。

 まずは,ファインダーをオーバーホールして,完調に戻しましょう。調整まで済ませれば,晴れてAi対応のF2の完成です。レンズ互換性がMF最終モデルのFM3Aと揃ってしまうなんて,なんと痺れる展開でしょう。

 ボディはさすがにこのまま使えませんが,まず右肩のへこみをたたき出して直して見た上で,少し内部を観察しダメージがなさそうなら,練習も兼ねてオーバーホールをやってみましょう。

 これから涼しくなり,夜の楽しい秋がやってきます。ちょうどいいパズルを手に入れた気がして,今からワクワクしています。

 


 

日本カメラ博物館とワークショップ

 子供が自らの最大の関心事となり,かつ生活の中心に居座っていると,子供の「夏休み」がまるで自分の夏休みのような感覚に囚われます。いやはや,面白いものです。

 その開放感も,高揚感も,なにやら自分の事のような気分です。自分の生活はなにも変わっておらず,大人には夏休みはないのに,まるで夏休みを過ごしているような気持ちになるのはなんだか得をしている感じがして,これも子供を持つことの特権の1つかなあと思ったりします。

 もちろん,子供は自分で面白い事を見つけてきますし,勝手に面白おかしく夏休みを過ごしてくれるものなのですが,大人は大人の仕事として,子供たちの手の届かない範囲にある「面白い事」を,ぐっと彼らの近くに引き寄せることも,やるものです。

 だからこそ,夏休みになるとあちこちで子供たちを対象としたイベントが開かれるわけで,本気のものから形だけのものまで,それはもう玉石混淆です。

 私は出不精ですし,暑いのも人混みも嫌いなので,子供を外に連れ出す事はあまりありません。学校や地域でちょっとしたイベントが行われることもあり,夏休みはそれはそれで毎日忙しいわけですが,今年に限っていえば,子供が通っている小学校で夏休み期間中に工事があり,イベントのすべてが行われないことになったのです。

 このイベントは近隣の小学校と合同で行われていたのですが,我々の学校で開催できなくなったことで,我々の子供が他の学校のイベントに参加出来なくなってしまうという事態まで招きます。その大人の論理の全開っぷりに,誰のためのイベントやねんと,思ってしまいます。

 なんと世知辛いことか。

 実際には私の想像も及ばない事情があって,やむなき判断という事なんでしょうが,残念な事に本来味方であるべき大人に,こうして「世知辛い」なんていわせてしまうあたり,推して知るべし,というものです。


 そんなわけで,一番割を食っている子供に何かをしようと奮起した私は,ふと目にしたイベントに足を運んだのでした。

 日本カメラ博物館にて,8月17日に行われた「暗室で写真影絵アートを作ろう」です。

 写真影絵アートはフォトグラムとも呼ばれている,印画紙の上にものを置き,上から光を当てて現像し,影絵を作るという立派な芸術作品です。

 ピンホールカメラだのカメラの分解だのというわかりやすいワークショップはすぐに満席となっていましたが,私に言わせればこれらは比較的簡単で,どこでもやろうと思えば出来ます。その気になれば,家でも出来ますし。

 しかし,フォトグラムはそうはいきません。

 今や貴重となった大きなサイズの黒白印画紙がまず必要ですし,光源である引き延ばし機も必要です。現像液や停止液,定着液といった薬剤も必要ですし,これらを扱うために上下水道が完備した作業スペースが必要です。

 しかも,そこは真っ暗でなければなりません。

 そんな場所,あるかいな!

 それだけではなく,これらを使うこなすための指導をする人もいないと困ります。しかも専門的な知識や技術が必要で,そこら辺のおっさんをつかまえてきて,頭数だけ揃えて済ませるわけにはいかんのです。

 どうですか,これは激しく大変そうでしょう。

 しかも,出来上がる作品は写真用の印画紙を使うだけに,白は純白,黒は漆黒と,見事なコントラストを駆使できます。拡大して投影するのではありませんから,くっきりとエッジも立ち,素晴らしい解像感が得られます。影絵という言葉に連想される,あのぼやーっとした投影とは,もう格が違うのです。

 事実,これは芸術家が作品作りとして取り組むもので,子供の遊びではありません。

 これを,かの聖地「日本カメラ博物館」がやってくれるというのですから,たまりません。まるで子供をダシにしたみたいで,私がワクワクしていることが,なにやら後ろめたい気持ちでした。

 8月17日は,東京でこの夏一番の猛暑となった日です。体温を超える気温で,天気予報のお姉さんは「なにもしなくても熱中症になる」と,いわれたところでどうにもしようのない警告を繰り返していましたが,幸いにして誰も倒れることなく,無事にカメラ博物館でワークショップに参加してきました。

 印画紙は四つ切りとキャビネを何枚かもらえるのですが,最初は持参した小物が,どんな影絵を作るのかを試してみる感じで,創造というより実験という感じです。

 しかし,何枚か作るうち,それらを工夫して並べて,物語を考えたりある状況を再現したりと,表現を始めるようになります。そうです,これこそ芸術です。

 慣れない暗室で,薄暗い赤い光を頼りに,触ったこともない液体と格闘し,出来上がった作品は,子供たちにも大いに驚きと感動を与えたようです。

 後述しますが,娘は私が高校生の時に愛読した「究極超人あーる」を,暇さえあれば読んでケラケラ笑っています。わかりやすいギャグで笑っているだけだった娘も,そのうち「暗室って暑いの?」とか「バットってなに?」などと聞いてきます。

 一応説明をしますが,こういう部分はその当時から,写真を嗜むものだけが理解出来る,いわば作者からのメッセージだったわけで,デジカメしか見たことがない8歳の子供が,現物も見ないで理解出来ようはずがありません。

 そんな口惜しい思いをしていた私も,今回のワークショップでは現物を見て触って,使う経験をしてもらえます。これほど血肉になる体験は他にないでしょう。

 私が知る「臭くて暑くて狭くて汚くていつもなぜか薄暗い」暗室とはおよそ反対の,実に快適な暗室での2時間余りの作業はあっという間に終わってしまい,娘は無事に夏休みの自由研究としてキャビネサイズの組み写真を完成させたのでした。

 このワークショップ,形だけの参加費が必要なのですが,そのこともあってか隣接する博物館にも無料で入館できます。特別展も子供向けでしたし,私は私で図録がほしかったので,ちょっと遅くなってしまうのですが,博物館にも立ち寄ることにしました。

 そうするとまあ,娘はどういうわけだか,大はしゃぎです。

 一時期流行したステレオ写真が面白いらしく,ずっと見ています。私にもしつこく見ろ見ろといってきます。

 そしてカメラの展示です。

鰯水のF-1ってどれ?
曲垣が使っていたAE-1はこれだ!
成原博士が持って池から出てきた「ハッセル」と「ローライ」というのは,これな。
えりかが持ってきた6x9のカメラって,こんなに大きいのよ

 とまあ,こんな調子で,あーるの世界が目の前に現れます。私もクラクラしてきました。

 かなうなら,17歳の私に,やがて君の娘は8歳になると,一緒にあーるの話で盛り上がることになるぞ,だから毎日楽しみに生きろよと,教えてあげたいです。

 なお,鰯水のF-1はNewF-1で,博物館にあったF-1とは違っていました。説明に書かれていた当時の価格が鳥坂さんのF3に比べて随分安いのに気が付き,「なんだ安いのか」と小馬鹿にしていたあたり,本能的に鰯水を小馬鹿にする鳥坂さんとお金にうるさい小夜子の両方の素質を持っているように思えてなりません。

 そして,子供向けに,古いカメラを実際に手に取って動かせるようになっていて,物珍しい娘は出ているカメラをひととおり触って喜んでいました。

 いわゆる一眼レフは見慣れているし,私のF3やF2を触っているので珍しいこともないのでしょうが,およそカメラに見えない2眼レフのリコーフレックスを,どうやったら動かせるのか不思議でならないようでした。

 かくいう私も2眼レフは扱ったことがありません。説明書きを見ながら恐る恐る,親子で2眼レフを触って見ます。6cmx6cmの正方形のファインダースクリーンに投影される天地逆転の画像の緻密さに驚き,鉄板を組み合わせた四角柱を上から覗き込むようなカメラが存在したことにも,好奇心が刺激されたようでした。

 そうして,想像以上に有意義で楽しかったカメラ博物館を後にしたのは,到着から3時間半も経過してのことでした。よく遊んだと思います。

 娘は今,家の大きなテレビに映る,呑み鉄本線日本旅で頻繁に登場するキハ40の走行シーンを,自らの愛機であるチェキで一瞬のシャッターチャンスをものにしようと格闘しています。面白い事に,撮影結果について彼女なりの振り返りがあり,これは今ひとつ,これは惜しいと,厳しめの自己評価を続けています。これはもう,立派な撮り鉄です。

 よく,世の親は,子供に芸術性を伸ばして欲しいというわけですが,それは私も同様です。ただ,それは子供のためという話だけではなく,私自身が彼女の作品をもっともっと見たいと思うからです。

 おそらくですが,成長に伴って,その作品はあるフォーマットに従うようになり,形式的な要素を強めることになるでしょう。それはそれで面白いのでしょうが,私個人は子供の自由さや柔軟性からくる予測不能な世界を見てみたいと思っていて,近い将来確実に見ることが出来なくなる前に,たくさん見ておきたいなと思っています。

 そのための表現手段,あるいは道具として,色鉛筆や折り紙があるのと同じように,デジタルカメラがあるというのは,興味深いことだと思います。ボタンを押せば写真が撮れる,しかしその結果には彼女なりの成功と失敗があります。果たして,ボタンを押すだけのカメラを小馬鹿にするマニアたちは,この成功と失敗の線引きを,どう考えるのでしょうか。

 

ルータを新調する

  • 2019/07/29 13:18
  • カテゴリー:散財

 自宅のネットワーク環境が老朽化してきました。

 我が家はインターネットへの依存が低く,21世紀初頭のまま時計が止まってしまったんではないかと思うほどなのですが,実際,高速である事よりも常時接続であることが長年求められていて,私がADSLの登場時にいの一番の飛びついたのは,速度よりも繋ぎっぱなしでも大丈夫という,従量課金ではなく定額であったことが重要でした。

 ですから,光ファイバや高速モバイル通信によってADSL加入者が減り,ADSLの設備が老朽化で維持できなくなりつつある昨今,いつまでADSLに頼ることが出来るか気が気でなりません。

 光ファイバにするのが順当ですが,維持にかかる費用が今の倍くらいかかるわけで,速度よりも常時接続を目的にしている私にとっては高価な上にオーバースペックです。

 そのうち安い接続サービスが出てくるよと思って早10年,競争はモバイルに映ってしまい,固定回線は競争がなくなりました。価格は下がらず,参入業者も増えません。

 なので,このままサービス終了までADSLにしがみつくことになるんだろうなあと思っているのですが,ここ最近,ADSL使い続けることで別の問題が出てきました。

 セキュリティの問題です。

 ADSLはすでに過去の技術です。モデムを作っていたメーカーは統廃合が続き,少なくとも国内向けに新しい製品は投入されていません。

 従って,長い間ファームウェアのアップデートが行われていません。インターネットの,それも最前線に立たされるモデム(とルータ)が,10年以上もアップデートされずそのままというのは,もう蜂蜜を塗りたくってアリの巣の前に寝転がっているようなものです。

 そのアップデートも,メーカーの撤回もあって今後も期待出来ず,我々ADSLの人々はセキュリティリスクに晒され続けているわけです。

 実際,ここ数年,うちも外部からのアタックがひどく,ルータ0が処理能力を超えて止まってしまうこともしばしばです。特にここ1ヶ月ほどは,毎日再起動をしないと全く通信が出来ない状態に陥っています。

 さすがに対策をしないとなと思っていたところ,とうとう先日大規模な障害が発生し,再起動後も1日も持たないという事態に発展し,これはこのまま放置できないと緊急対策を取ることになりました。

 ADSLモデムは,厳密にはADSLで繋ぐモデムと,IPアドレスをもらい,グローバルネットワークとローカルネットワークを橋渡しするルータで構成されています。障害の発生やセキュリティのリスクはこのルータの部分が原因ですので,ここを新しいものに置き換えればとりあえず解決しそうです。

 我が家には,AirMacExtremeがありますし,これをルータとして使えばいいと考えたのですが,電話回線があるのが1階,従ってADSLモデムも1階に設置しなければならず,自動的にルータを1階に置く必要がでてきます。

 しかし,無線LANを1階に置くと3階からは繋がりにくくなるので,やはり2階に設置しておきたいところです。

 そんなわけで,もったいないと思いましたが,有線のルータを買うことにしました。ここでルータを独立させておけば,ADSLから別のネットワークに移行しても,無線LAN機器を入れ換えたとしても,その部分だけ交換出来るので楽でしょうし。

 で,家庭用の有線ルータなんて,もう絶滅しているだろうと思っていたのですが,SOHO向けにはVPNを手堅く実現する方法として定番化しており,今でも安価に有線ルータを買うことが出来るようです。

 TP-LINKのTL-R600Vは実売8000円ほどでとにかく安く,基本機能は十分に持っているのですが,いかんせん速度が遅く,ADSLなら問題はないですが,先々は厳しいでしょう。

 プラネックスのVR500-A1は13000円弱ですが,価格差分くらい高速なので,選ぶならこちらでしょう。

 ということで早速手配。週末に設定を行いました。

 やることはとても簡単で,ADSLモデムのルータ機能を殺し,VR500-A1のWANをPPPoEで繋ぐようにしてやるだけです。LAN側の設定は従来の設定を踏襲すればOKのはずです。

 作業そのものは10分もかからず,簡単にADSLが繋がるようになりました。ただ,電話局とのリンク速度がわからなくなってしまったのは,ちょっとさみしいところです。

 そして設定と動作のチェックです。

 NATの設定,ポートフォワードの設定などを進めていくのですが,どうしても従来の設定を引き継げないものがありました。UPnPです。

 以前のADSLモデムにはUPnP機能があり,QNAP Cloudではこれを使っていたのですが,VR500-A1にはUPnPがないようで,QNAP Cloudでエラーが出るのです。

 UPnPでの設定をなんとかしようとちょっと頑張ってみましたが,もともと植木鉢の底に鍵を張り付けておくようなUPnPを私はどうも信用することができず,これを機会にUPnPをやめることにしました。

 とりあえず使いそうなポートを手動で開放して,設定完了。テストも済ませて運用に入りました。

 VR500-A1は設定も楽ですし,速度もまずまずで,なんといっても価格がこのクラスでは飛び抜けて安いです。しかし,前述のUPnPには対応しませんし,耐久性についてはなんとも言えません。(TL-600Vは5年保証ですし,なかなか壊れないそうです)

 私は使っていませんがVPNにも対応しますし,きちんと使えれば便利なルータかも知れません。
 
 ルータが新しくなると,ネットワーク速度が確実に向上したと感じます。もっと早くに入れ換えておけば良かったと後悔しました。

 

MC20mkIIをならしてみる

 V15typeIII用の互換針が1つ余っていて(V15typeIVの動作確認用にとにかく安い使えそうな針を探したところ,動作確認後に不要になってしまった),せっかくの楕円針ですし,使わないとなあと思っていました。

 V15typeIIIの動作品を何度か手に入れようと思っていたのですが,V15typeIIIの価格が私の想像を遙かに超えるような高価格である事を知り,入手はあきらめてしまいました。

 ふと思いついたのは,楕円のダイヤモンドチップを他のカートリッジに移植しようという話です。この方法で一部の好事家はカンチレバーが折れたカートリッジや,針交換できないMCカートリッジを修理しては現役に復帰させていいるわけですが,私はこれまで自信がなくて,行って来ませんでした。

 そもそも,カンチレバーを折ってしまうと心の傷が大きくて,物理的に修理出来ても立ち直れないという私自身の狭量さに問題があります。これを癒やすには,お金をかけて針交換をし,「なかったこと」にするしかありません。

 この,お金で解決という,日本人が誠に嫌う札束で頬を叩くような行為に対する背徳感が,また自分のやらかしたことの大きさを増幅するわけで,若かりし頃の私は,そもそも折らなければいいんだと気が付いて,以来無事故無違反を続けています。

 そんなこともあり,カンチレバーの移植という技は全く磨いてこなかったばかりか,経験したこともないという状況ですが,もし針が折れて安く売られているカートリッジがあれば,このV15typeIIIの互換針で修理しても面白いんじゃないかと,そんな風に思ったわけです。

 早速某オークションを見てみると,結構あるものです。ただ,価格は全般的に高め。半年くらい前まではこの半分くらいの価格で落札できていたようですが,昨今のアナログブームで価格が上がっています。って私もその片棒を担いでいるわけですが・・・

 せっかく手間暇と新品の交換針を突っ込んで修理を行うわけですから,修理後に実は方chが断線してましたとか,もっと安く交換針が売ってましたとか,そもそも不人気で誰もありがたがりませんとか,オリジナル以外の音は認めないという原理主義者が跋扈しているとか,そういう話は避けたいところです。

 探していると,オルトフォンのMC20シリーズが目に付きました。チップを飛ばしたというMC20mkIIとMC20superがあり,どちらも動作品だったという個人からの出品のようです。

 MC20といえば,1970年代に登場したオルトフォンの柱の1つです。MCの原器とも言えるSPUを持つオルトフォンが,さすがに20年前の設計ではなあと,何度かSPUの次世代機を作るわけですが,中でもMC20は今もその後継機が登場する,代表的なモデルです。

 伝聞で恥ずかしいですが,SPUのナローレンジで重たい音に対し,ワイドレンジで軽快な音がMC20の狙いだったそうで,当時の軽針圧化(ハイコンプライアンス)の流れに沿うような設計を行ったのでしょう。

 本家MCカートリッジの構造を踏襲し,ダンパに工夫を凝らして出来上がった軽針圧SPUはまさにファンの期待に応えて,こうして40年も続くシリーズになっています。

 これも伝聞で恐縮ですが,MC20から廉価版のMC10,そして主にダンパを一新したMC30を登場させたあと,その技術を中核モデルのMC20に転用しMC20mkIIとなります。当時から不評だったプラスチック製の外筐をアルミの押し出し材に変更した(もちろん変更はそれだけではないでしょうが)MC20superになって,CDに席巻され絶滅寸前のアナログオーディオの1990年代をしぶとく支え続ける事になるわけです。

 MCカートリッジはDJには使えませんから,その需要はHi-Fiオーディオだけです。だから,とっくの昔に消えてなくなってもいいくらいなのですが,MCカートリッジが手作り可能なくらいに少量の生産にも対応出来る構造であること,針交換は原則的に現行機種の同等品へ交換となるので本体への需要が一定数あることもあって,今もこうして我々は,MCカートリッジの新品を手に入れる事が出来るのです。ありがたい。

 で,もう本質的にMCが引き出せる情報量にMMは絶対にかなわないと確信した私は,個性の差ではなく優劣としてこの2つを比較するようになっています。

 いや,反論もあると思いますが,MMに10万円かけてもSPU#1から出てくる情報量に勝てないなあと思うので,それなら潔くSPU#1を買えばいいと思うのです。MMを選ぶのは,あのブーミーな低音が欲しい時,ジュークボックスから出てくる音などの当時の雰囲気を味わいたいときになると思っていて,DJ向けの需要も減っている今,MMは確かに生き残ることが難しいだろうと思います。

 閑話休題。

 紆余曲折がありましたが,結局MC20mkIIを,少し前なら完動品くらいの価格で手に入れました。チップが外れて飛んでしまっていますが,それまではきちんと動作していたものだということです。だからカンチレバーもほぼそのまま残っています。

 まあ,これに47000円足せば針交換対応として最新のMC Q20が手に入るのですから,MC Q20の新品を買うより合計で1万円ほど安くなるとは思います。ただ,MC Q20もなかなか微妙な評判のようで,ライバルたちも交換用の種としてではなく,修理用して復活させMC20mkIIの音を楽しもうと考えていたのではないでしょうか。

 9000円ほどで手に入れた不動品のMC20mkIIは,心配していた断線もなく,チップがない以外は正常です。30年以上も前のものですので汚れもサビも浮いていますが,それは綺麗に磨けば済む事です。(この後済まないことが起こるわけですが)

 ところで,届くのを待っている間に私はふと,V15typeIIIの互換針を潰してしまうのはもったいないかもしれないと思うようになりました。極論すると欲しいのはチップだけです。

 なら,V15typeIIIのようなメジャーな高級カートリッジではなく,国産の名もないカートリッジの互換針でいいんじゃないかと,そう思い至ったのです。ただ,名もないカートリッジのしかも互換針が出回っている時代ではすでになく,しかも最低楕円針で,V15の互換針の価格(約3000円)よりも安くないといけません。

 そんなのあるわけないなあと思っていたら,ありました。0.3mil x 0.7milの楕円針が付いた国産カートリッジ用互換針が2000円です。ムク針ではありませんが,私はそこにはあまりこだわらないので,早速手に入れます。

 届いてみると,どうも複数機種に使い回せるよう,共通化したカンチレバーの外側に少し太いアルミのスリーブを差し込み,反対側にマグネットを差し込むという構造になっているようです。サスペンションワイヤもなく,ゴムのダンパに差し込んであるだけの簡単な構造も,この値段の理由でしょう。

 さて,役者が揃ったところで作業開始です。まず,修理前に本体を磨きます。メタリック塗装ですので,指紋がくっきりついて艶もなくなっています。コンパウンドで磨きますが,あまいr磨きすぎると下地の銅めっきが出てきますので,注意して磨きます。

 写真ではくすんだ銀色だったものが,綺麗なシャンパンゴールドになってきました。

 不幸はこの時起こります。磨いている間に,手元が狂って残っていたカンチレバーに激突,「あっ」と思ったあとには,無残にも90度に曲がって横を向いたカンチレバーがありました。

 やってしまった・・・

 この時,どうやって修理をするか,まだ決めかねていました。カンチレバーをできるだけ残した方が,オリジナルの音に近づくはずです。カンチレバーがほと丸々残っているのですから,出来ればチップだけ移植したい所です。

 しかし,今回のチップは楕円です。向きを正確に出さないといけませんから,チップだけの移植はあきらめます。そうするとカンチレバーのどこまで残すか,大いに悩むわけです。

 厳密に言えば,共振の節の部分で繋ぐとか,そういうことも考えないといけないのでしょうが,そんなことより確実にまっすぐ繋いで,強度を持たせる事が優先です。

 でも,それぞれのカンチレバーの太さも内部構造もわからないなかで,最適解など出るはずもなく,運次第でうまくいくという現実に,なかなか踏ん切りが付かずにいました。

 実のところ,カンチレバーを派手に曲げてしまった瞬間,まずいと思うよりも,これで方針が決まったと言う安堵感の方が強くありました。だから,曲がったカンチレバーを反対側に曲げて折ってしまうことにも,何の躊躇もありません。

 しかし,あくまで方針が定まったというだけの話で,次の問題が私の前に横たわります。

 カンチレバーが,あまりに根元で折れてしまったのです。

 カートリッジの表面から飛び出ている部分がほぼすべてなくなってしまった状態で,折れた部分のすぐ先には,もうコイルが巻いてあります。

 幸い,移植する予定のカンチレバーは十分に長いことがわかり,移植出来なくなってしまうことは避けられたのですが,ほとんどゆとりはありません。

 それに,接合する場所は本体の中に潜り込んでしまうわけで,これで作業をするのはかなり難しいだろうと思いました。加えて進んだ老眼は,作業そのものを難しくします。

 どっちにしても,移植予定のカンチレバーの降誕にあるマグネットを外し,太くなっているパイプをMC20側に差し込んで接着するしかありません。マグネットを外し,長さを揃えるところまでは,やっておきましょう。

 ここで頭を冷やすため,寝ます。

 翌日,潰れた切断面をまち針で広げる作業でウォーミングアップ完了。

 そして,事前に考えた作戦をおさらいします。

 作業を確実に行う為に,本体を可能な限りばらします。まずは邪魔なケースは外してしまいます。場合によっては前側のポールピースも外してしまい,接合部分を露出させます。ただ,それだけコイルの断線を引き起こしやすくなりますから,細心の注意が必要です。


 早速,カバーを外します。上面にあるシールを剥がし,爪で引っかかっているプラスチックのカバーをゆっくり下げていきます。この時,背中側にある端子盤も一緒に動いてきますが,なんとここにコイルの細い線が直接繋がっているので,動かないように気を付けてカバーをずらしていきます。

 ここでポールピースを眺めてみると,接合部がちょうどポールピースの穴の中です。これでは作業できませんので,ポールピースも外します。マイナスネジを緩めると,マグネットと前後のポールピースが外れますが,強力な磁石で工具が持って行かれないようにすることと,コイルが宙ぶらりんになるので,断線に気を付けることがとにかく必要です。

 ポールピースを外したら,そのままネジを戻して仮留め,マスキングテープでベースに固定して接合作業を進めます。

 まず,そのまま移植するカンチレバーがささらないか確かめますが,さすがにそれは無理。そこで,もとのカンチレバーの残った部分を抜き取り,コイルのボビンからでている接合部を1mmほど露出させます。

 口で言うのは簡単ですが,なにせすぐそこにはコイルがいます。小さいニッパーで力加減を工夫して外側のアルミスリーブを切り取っていくわけですが,下手をするとコイルもダンパも壊してしまうわけで,そうなったらもうすべてがおしまいです。

 実体顕微鏡で様子を確認しながら,少しずつ剥いていきます。

 よし,ひとまわり細い棒が出てきた。これなら刺さるはず。

 先にまち針で広げた,少し太めのアルミパイプがとりあえず刺さることを確認出来たら,これを接着して固定するため,2液混合のエポキシ接着剤を練ります。ほんの少しだけ塗って,新しいカンチレバーを差し込んでみます。

 5分で硬化しますので,それまでに位置を出します。上下左右からみてまっすぐかどうか,針は傾いていないか,針の先端の場所は適切かなど,これも顕微鏡を見ながら確認して修正をしていきます。

 5分経過し,正しい位置で固着しました。指で触っても大丈夫です。

 本気で使うには24時間経過しないとだめですが,音出しくらいは出来るでしょう。慎重に元通り組み立ていきますが,ポールピースの取付には随分と遊びがありますので,固定する位置を慎重に出していきます。

 ケースも,外すときはカンチレバーが折れてなくなっているので気にしませんでしたが,組み付けるときは針が突き出ていますので,引っかけてしまわないように,信用に被せていきます。

 取り付け,針圧をとりあえず1.7gかけて,音を出します。心配なのは断線です。

 左から音が出ません。やってしまったーーーー。

 ・・・と思ったら,ラインケーブルの接触不良でした。ややこしい。これもどうにかしないと。

 とりあえず,音は出ているようです。そして私は,その伸びやかさとみずみずしさに,心を奪われました。

 もっときいていたい,と思いましたが,接着剤がきちんと固まっていないのに,2g近い針圧をかけていいはずもなく,早々に切り上げました。

 修理完了後の写真が,これです。

20190712113309.jpg

 どうです,接合部が奥に引っ込んでいるせいで,綺麗に修理が出来ているでしょう。

 本格的な視聴は後日やります。シェルはどうしよう,針圧はどれくらいかけよう,オーバーハングも調整しないとなあ,テストレコードで性能の確認も必要だと,いろいろやることがあります。

 でも,とにかく音を出してみて,その素性の良さは一発でわかります。SPUは濃密ですがきらびやかさはなく,DL-103は情報量は多いですが凡庸で,AT-F3/2は派手ですが希薄で重心が高く,うちのMCは各々のカバーレンジが小さい事が悩みでしたが,MC20mkIIは濃密さと情報量はSPUゆずりで,程ほどの重心の低さと華やかさが備わっています。これはどんなジャンルの音楽でも,華麗にならしてくれるのではないでしょうか。

 1つ気になる事があるとすれば,出力電圧が非常に低いことでしょうか。DL-103では0.3mV,SPU#1では0.18mVであるのに対し,MC20mkIIは,なんと0.09mVです。

 実際に音を出してみても,小さいなあという印象が強くありますし,レベルを上げればイコライザアンプやヘッドアンプのノイズが目立って来ます。トータルのS/Nの良さはMMにかなわないというのがMCの弱点ですが,MC20mkIIは特に厳しく,気にならない程度を越えてしまっています。

 MC20mkIIを本気で使うなら,このS/Nの悪さを解決しないといけないですね。

 

 

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