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世にも珍しい魚眼ズームAT-X107DXを中古で買う

 突然魚眼レンズが欲しくなりました。

 チェキをオモチャ代わりに遊んでいる娘が,エフェクトの1つである「Fisheye」の面白さに目覚めてしまい,私も再発見の機会を得たというのが理由です。

 「魚眼」ではなく「フィッシュアイ」で,ひどく歪んだ画像を生み出すレンズを覚えた娘は,私よりもずっと先に特殊レンズの洗礼を受けました。

 ついでにいうと,B&Wというエフェクトも再発見の対象となっていて,なんでもないポートレートが,なにかを語ろうとする意味深なものに変わることに新鮮な驚きを感じてしまいました。

 なんというか,私がモノクロで撮影していた頃というのは,とにかく枚数を稼ぐことが目的だったので,そんなに感動的な説得力のある写真を撮ることは一度もありませんでした。

 加えていうと,さすがフジフイルム。デジタルなのに,そのコントラスト,その階調には,思わず笑ってしまうほどの再現性があります。
 
 話を戻すと,私はこれまで魚眼レンズを使ったことも欲しいと思った事もありませんでした。高価ですし,ほぼ例外なくデメキンレンズなので神経質になるし,その割には使い道は限られてしまい,常用出来るレンズではないというのが,興味を全く持たなかった理由です。

 だから,PENTAX Qのトイレンズで,数千円の魚眼レンズがでた時には,真っ先に買いました。結果,面白いと思いましたし,案外使えるもんだなあと思いましたが,やっぱり常用出来ないので,一眼レフ用のまともな魚眼レンズには手を出しませんでした。

 そして,偶然見かけたのが,ペンタックスがコーティングを変更して発売した,魚眼ズームの記事でした。

 APS-C用の10mm-17mmというズームですが,10mmだと180度の対角魚眼,テレ側になると歪みが減り超広角ズームとして使えるという,面白い一本です。

 これ,トキナーとの共同開発らしく,同じ光学系のレンズが他のマウント用に,トキナーから発売されているのですが,これもペンタックスの旧製品も,10年以上前から売られるロングセラーです。(なにせ作例がD200とか,そんな懐かしい時代の作例です)

 ですので,定価はは8万円ほどですが,実売は45000円以下と安くなっています。AFもボディモーターで駆動するものですし,デザインも垢抜けていません。光学特性もずば抜けているとはいえず,この当時の平凡なものですので,今どきの基準で見れば全然ダメなんじゃないかと思います。

 なにより,APS-C用というのが厳しいです。海外版はフードが取り外せて,フルサイズでも使えるようになっているそうですが,国内版はフードが作り付けですので,ケラれてどうにも使えません。

 でも,魚眼ズームだと,ズームによって魚眼と超広角を切り替えて使う事が出来るわけで,魚眼だけではどうにも使えない状況でも,このレンズであればさっと広角に切り替えて使う事ができます。

 ズームレンズは単焦点レンズ数本分の役割をするといいますが,これこそその真骨頂でしょう。APS-Cなら17mmは25.5mm相当です。今どきこれは超広角とは呼びません。

 しかも幸いなことに,このレンズは欲しいと思っていたトキナーのレンズです。

 トキナーのレンズは,AT-X16-28mmF2.8PROを買った時,その色を大変気に入りました。あいにく,解像度が今ひとつで手放してしまいましたが,この青色には未練があり,安ければ買い直そうかなと思っていたくらいです。

 もちろん,この魚眼ズームが同じ「トキナーブルー」を出してくれるとは限りません。でも,時代的にも大なり小なり同じ方向を向いているでしょうし,少なくともタムロンのような傾向ではないと思います。

 だとすれば,この値段で,しかも広角域で,トキナーブルーが楽しめることになります。これはおいしい。

 ただ,今さらこのスペックのレンズを新品で買うのも,ちょっと勇気がいります。ということは,中古を探すことになるわけです。

 AT-X107DXという名前のこのレンズは,ロングセラーではありますが,大ヒット商品ではないでしょうし,そんなに球数があるとは思えません。でも,買った人の多くが「だめだ使いこなせない」とさっさと売りに出している可能性もあり,数は少ないけど値段は安いというレンズかも知れません。

 探してみると,中野の某店で,程度がAランクのニコン用が26000円。他に在庫はないようですし,他のお店では在庫すらありません。むむむ。

 現物を見ないままで中古を買うことは,必ず1つや1つがっかりさせられるものなのですが,いちいち中野に出向けませんし,確認したところで結局買うのですから,もう買ってしまいましょう。Aランクという言葉を信じて・・・

 届いたものは,キャップくらいしか付属品がない状態で,レンズ本体は綺麗で使用感も少ない良品でした。ちょっと当て傷のようなものがありますが,ほとんど気になりません。

 問題はフロントレンズキャップでして,フードに被せるものなのですが,分厚いアルミで出来た非常に質感の高いものなのですが,コイツの表面に傷がたくさんあるのです。

 なにか,シールでも貼り付けたものを無理に剥がして,ゴシゴシ擦ったような感じの擦り傷で,随分目立ちます。安いものならキャップだけ別に買うかと探してみましたが,あいにくアルミ製なので非常に高価とわかり,あきらめました。

 ちゃんと調べていませんがこれ,ペンタックスのFA43mmやFA77mmのキャップとよく似ています。

 手に取ってみると,これがなかなかずっしりとして,いい質感です。小型で取り回しもいいのですが,ちゃちな感じはせず,見た目に反して凝縮感があります。設計はペンタックスだということらしいですが,さもありなん,という感じがします。

 ズームもフォーカスも,可動部分も滑らかです。4万円そこそこで売っているレンズとは思えないです。

 実際に撮影してテストをしますが,光学的には問題なし。さすがに暗いですし,画像も高価なズームに比べるとさっぱりですが,そこはやはり一眼レフ用,ちゃんとした画像が撮影出来ます。

 D850はAPS-Cにクロップすると,撮影エリアの外側が黒く塗りつぶされてファインダーに投影されます。ですのでこのレンズでもなんら問題不自由を感じる事なく使えるわけですが,12mmという超広角の世界に見慣れた人でも,画面がグイーンと曲がる魚眼の面白さは,ファインダーを見ただけで感じられることでしょう。

 ということで,何枚か撮影してみます。このレンズは14cmまで寄れるありがたいレンズで,これだけ寄れれば魚眼も超広角も怖くありません。魚眼は,中央部は歪みが少なく,外に行けば大きく歪むレンズなわけですから,ぐっと寄って被写体を真ん中に据えることは必ず必要になります。

 くっつくんじゃないかと思うほどに近寄った娘の顔を撮影し,本人に見せてみると,にやっと笑ってから「フィッシュアイだ」とうれしそうにいいます。この歪みを表現手法として使うのは難しいですが,魚眼も含めた広角はとにかく「寄る」ことが基本です。

 その上で,180度言う視野角を使い,ぱーっと目の前の画像を一網打尽にするというのはなんと気持ちのいいことか。特に縦位置でいけば,足下から空まで全部入り込んできます。これは面白いです。

 機会があれば,D850をAPS-Cに固定して,このレンズだけで外に出てみたいところです。きっと面白い景色を切り取ることができるでしょう。同時に,バリエーションの少ない,どっかで見たことのあるような写真が量産されることにもなりかねず,そうしたつまらなさに,案外がっかりすることになるかも知れません。

 

GPSDOが壊れたので修理

  • 2019/07/08 13:36

 先日,ふと自作のGPSDOのパネルに目をやると,OCXOの制御電圧を示すメーターが振り切れていました。PLLが特区していて,10MHzをきちんと出力しているときは中央に来るようにしてありましたので,振り切れるというのは明らかに故障で,出力も10MHzではなくなっています。

 このGPSDOは2016年8月に完成したもので,その後大きなトラブルもなく,うちの基準クロックとなってくれていました。

 これはいかんと,あわてて詳細を調べます。

 調べてみると,周波数を制御する電圧が,条件と下限を行ったり来たりしている状態でした。つまり,PLLが全くロックしていない状態です。

 しかし,これほど制御電圧がへんかしているのに,出力周波数が変化しない(フラフラと変動はしている)のもおかしいと,OOCXOのVC端子に,電源器を繋いで電圧を動かしてみました。

 しかし,周波数が全く変化しません。

 周波数が変化しないなら,PLLがロックするはずがありません。OCXOの制御電圧端子に直結した電源器の電圧を動かしても周波数が変化しないのですから,もうこれはOCXOの故障です。

 このOCXOはヤフオクで手に入れたもので,4000円ほどで購入しました。ダブルオーブンではないのですが,何かの役に立つだろうとGPSDOの自作を始める少し前に買って置いたものでした。

 24時間運転とは言え,3年で壊れるとは・・・

 まあ,ジャンク品なんていうのはそんなもんです。

 気を取り直して,修理を試みます。OCXOはGPSDOのキーパーツです。これが壊れた以上は交換しかありません。

 そこで,やはりオークションを探して2つ手に入れました。1つは小型のシングルオーブンで,5Vで駆動するもの。もう1つは12Vで駆動するもので,ダブルオーブンです。

 どちらも電圧制御が可能と書かれていませんが,端子の数や周波数調整用のトリマがないことを考えると,電圧制御で間違いなさそうです。

 届いたので早速確認をしますが,5Vの小型のものは問題なく,1Vで2Hz程度の周波数の可変が出来ています。もう1つは動作が怪しい。

 12Vのダブルオーブンのものは,GPSDOを5V用に改造しなくて済みますし,しかもダブルオーブンですので,さらに高性能化が図れます。一石二鳥とこのOCXOに交換することを本命としていたのですが,動作が怪しいとあれば慎重にならざるを得ません。

 古いOCXOを取り外してから,ダブルオーブンのOCXOをミノムシクリップのコードで仮接続します。するとやっぱりロックがかかってくれません。

 しかも,OCXOに手書きで書かれた端子名に誤りがありました。信じて電源を入れていると,ヒーターのONとOFFで周波数が大きく変動します。どうも,Vref端子を電源と間違えて書いてあったようです。

 正しい端子につなぎ替えてもやっぱり周波数は制御電圧で変化しません。きちんと調べてみると,通常2Hz/1V程度であるはずの所,0.5Hz/1Vくらいです。しかも,電源電圧で圧12Vをかけても,10MHzを越えてくれません。これでは,ロックなどかかるはずがありません。

 しかも,制御電圧を電源電圧と同じにしても,周波数がフラフラと変動して定まりません。2から3Hzの変動がありますので,これはOCXOとしては不適切です。

 うーん,どうも壊れているようです。

 残念です。一応10MHzが出ている事は画像に出ていましたし,実際にそれらしい周波数は出ていますが,GPSDOにつかえるようなものではありません。

 もう,このOCXOはあきらめました。嫁さんは「詐欺だ」といってましたが,まあジャンク品ですし,仕方がないところでしょう。

 もう1つの5VのOCXOは非常に調子が良いです。5Vを外部から与えてGPSDOに繋いで見ると,きちんとPLLがロックします。

 そこで,基板に12Vから5Vにする7805を追加し,ここから5VをOCXOに供給することにしました。

 動き出せば,ゆっくりPLLがロックしていきます。24時間後には,10mHzの桁がポロポロと1から2くらい,変動する程度まで安定してきました。

 ダブルオーブンを奢ることは出来なかったのですが,従来と同じ程度の最終性能は出ていそうな幹事です。

 ちなみに,故障前のOCXOと同じ型番のものをebayで見つけ,オーダーしましたが,出荷前のテストで不良品である事がわかり,キャンセルされてしまいました。

 残念ですが,仕方がありません。

 ダブルオーブンのOCXOは故障品を掴まされました。釈然としませんが,オークションにはこういうリスクは折り込み済みで,仕方がないなあとあきらめました。

 しかし,ジャンク品だけに,簡単に壊るもんですね。予備を買っておいた方がいいかもしれません。

instax mini LiPlayはチェキの正常進化版なのか

  • 2019/06/26 13:00
  • カテゴリー:散財

 7,8年ほど前に,正月の福袋に「チェキ」が入っていたことがありました。数千円で買える最も安いチェキの,当時の型落ち品でした。

 デジタルカメラが大きく進歩しているときで,フィルムが少しずつ店頭から消え,どこでも出来た現像が出来なくなっていき,まず真っ先にインスタント写真など消えてなくなるだろうと,そう信じて疑わなかった時代です。

 1枚1枚,じーっという音と共に紙切れが吐き出され,しばらくすると画像が浮かび上がってくるという神秘性に,面白いなあと思った事は私にもありましたが,実用性を考えても,画質を考えても,そしてコストを考えても,どうしても肯定的な気分にはなりません。

 やがて子供が生まれ,彼女が私の写真を撮っている姿を真似するようになると,一眼レフは当然として,簡単操作が売りのコンパクトデジタルカメラでさえも,子供ににとって難しい事がわかってきました。

 操作が難しいのではありません。操作によって結果がどう変わるかを,とにかくたくさん「暗記」しなければならないのです。

 電源をいれ,シャッターボタンを半分押せばAFが作動し,画面の真ん中の四角が緑色ならピントが合っていて,赤ならピントが合っていない,そこからさらに押し込めばシャッターが切れる。

 たったこれだけの事,誰にもわかると思うでしょう。

 しかし,

 シャッターボタンってなんだ?
 半押しってどのくらい押すことだ?
 ピントってなんだ?AFってなんだ?
 真ん中の四角ってなんだ?
 ピントが合うってなんだ?
 シャッターってなんだ?切れるもの?

 我々は,ある程度の基礎的知識をベースにあらゆるものを使っています。ものを作る人も,そういう基礎的知識のある人を対象にして作っていますし,そうしないととてもものを完成できません。

 でも,結局,ここでやりたいことは単純に,目の前の光景を紙に印刷したい,それだけなのです。

 その上,この難しい操作のあとには,本当の地獄が待っています。

 SDカードを取り出し,PCに転送,プリンタをUSBでつなぎ,印刷用の紙をプリンタに入れて,印刷用ソフトを立ち上げ,印刷する。おっと,インク切れ?筋が入るけどどうしたらいい?

 もうくどくど書きません。

 繰り返しますが,やりたいことは目の前の光景を紙に印刷したいだけです。

 こんなの屁理屈だ,現実的にこんなに説明しないといけない人などいない,と私も思っていました。しかし,いるんですね。

 そう,子供です。

 子供だから知らないわからない,のではありません。その人にとって,初めての事だからわからないのです。子供は初めての事がほとんどです。だから子供はなめられますが,大人だって初めての事には右往左往するでしょう。

 しかし,子供も,自分がやりたいことははっきりしています。目の前の光景を紙に印刷したいのです。

 私は,小さなデジカメを子供に渡し,せめてデータとして目の前の光景を取りこむところまではやってもらおうと頑張りましたが,何もしらない,すべてが初めての子供には,説明不能である事を思い知り,そこに立ち尽くしてしまいます。

 無理だ,子供には無理だ。

 しかし,私の前に一条の光が差し込みます。

 チェキです。

 レンズを引っ張れば電源が入ることで,電源とは,の説明が不要。
 パンフォーカスなのでAFもピントの説明も不要。
 シャッターボタンに半押しがないので,半押しの説明が不要。
 カメラを相手に向けて「唯一の」ボタンを押せば,紙が出てきて画が出てくる。
 電池が数年間もつ。交換したことなどない。

 すごい,すごすぎます。

 もう一度繰り返しますが,やりたいことは,目の前の光景を紙に印刷することです。デジカメだととても印刷までたどり着けないのに,チェキならあっという間に,自分のしたいことにたどり着きます。

 私は,感激しました。チェキが大好きになりました。

 そして,子供に,チェキをどんどん使わせました。

 低画質? 出力サイズが決まっているのに画質云々なんか関係ない。
 高コスト? これだけ簡単なのは,難しい処理がフィルム側に入っているから。

 そして,このシンプルな「ボタンを1つ押せば紙にその光景が印刷される」ことを実現する仕組みを作ることは,案外難しい事にも気が付きます。そして最も簡単な仕組みこそが,インスタント写真技術です。

 感光,現像,定着,色の調整など,難しい事はすべてフィルム側が担います。だからユーザーは難しい事はなにも考える必要はありません。一方で,ユーザーが調整を行う余地はありません。
 
 そんなわけで,私は子供に,写真を撮影することも面白さ,ひいてはその本質である「なにをどう撮るのか」に興味を持ってもらうことにしました。そう,デジタルカメラは,写真の本質を経験し楽しむために,越えなければならない壁が多すぎるのです。

 果たして,チェキは,子供のカメラになりました。やがて,名刺サイズの印画紙があちこちに山積みになりました。

 もったいないからなんでもかんでも撮るなよ,という言葉は,チェキを与えた大人が発してはいけない言葉とわかっています。しかし,私の現実の経済状態が,この言葉をどうしても口から出るのです。

 そんなある日,ハイブリッド型のチェキが登場したというニュースが耳に入ってきます。曰く,デジタルカメラとチェキへのプリンタを一体化したものだそうです。

 私の最初の印象は「賢い人がウンウンいって考えた結果閃いた,1周回って元のところに戻ってきたアイデア」です。直接光を当てて感光させればいいようにせっかく作ってある印画紙を,なぜわざわざデジタルで撮影し,このデータを元に印刷をせねばならないのか・・・

 どうも,印画紙をデジタルで感光させたら面白そうだという思いつきから,そのメリットを後付けで考えて商品化を押し通したように見えて,それはチェキのあるべき姿ではないと思えたのです。

 この考えは今でも変わりません。しかし,現実的な問題として,デジタル写真を印刷することを考えた場合に,本体のプリンタ機構を簡単にするには,やはり紙の側に色を出す仕組みを入れるしかなく,そしてそれは今のチェキの印画紙が最適であるという事実があります。

 この時登場したハイブリッド型のチェキは,スクエアフォーマットの大型のものでした。我々が一般にチェキと呼んでいる名刺サイズのInstax miniというフォーマットではありません。

 そして先日,いよいよこの名刺サイズのフォーマットでハイブリッド型が登場しました。それがinstax mini LiPlayです。

 チェキの面白さがわかってきた私としては,フジが作るんだから印画紙の画質はもっと高いに違いない,チェキの画質が悪いのはきっと光学系がプアだからだと思っていました。事実,子供の使っていた廉価なチェキは,プラレンズです。

 真面目な光学系のチェキはどうも売っていないようで,もったいないなあと思っていた所にこのハイブリッド型の登場です。ここで初めてハイブリッド型への期待を私は持つに至ったのでした。

 instax mini LiPlayは,ハイブリッド型にしたことによる明確なメリットがあります。1つは本体が小さくなったこと。チェキは印画紙に直接露光しますので,投影面はずばりあの印画紙のサイズを持っていますから,当然光学系は大きくなります。(一方で精度はゆるくなるので,安く作る事ができるはず)

 しかし,一度デジタルにするなら,光学系は小型に出来ます。小さいCMOSセンサ(instax mini LiPlayは1/5インチです)にオートフォーカス機構やレンズなどの光学系を1つにまとめたカメラモジュールが携帯電話やスマートホン用に安く用意されているので,これを使えば小さく出来ます。

 AFのように,レンズを動かす機構が入れば,マクロモードを入れることも簡単です。つまり寄れるチェキが誕生します。

 子供が失敗する撮影の多くは,近寄りすぎでした。そりゃそうです,子供は近づいて今見ているものを撮影したいのですから。

 パンフォーカスのチェキでは60cm程度が限界で,それでは子供が手のひらに載せるような大きさのものでも,豆粒のような大きさでしか撮影出来ません。

 まして,素通しのファインダーしかないチェキで,撮影結果を正確に予想するなど難易度が高すぎます。近寄るとぼけてしまう,近寄るとファインダーの位置から被写体がズレてくる(パララックス)ということは,子供には窮屈な制約です。

 instax mini LiPlayは,寄れることがとても大きなメリットだと思います。

 プリンタ機構はすでにフジが選考して商品化しているので,得に問題になりません。極論すれば,instax mini LiPlayとはこのプリンタのどこかに,カメラモジュールを押し込んでしまえば完成するような商品です。

 消費電力が増大するので乾電池ではどのみち無理で,そうすると小型の充電池を内蔵することになります。そうするとさらに小さく出来ます。

 そしてそのプリンタについても,小型化が可能です。印画紙とカートリッジのサイズが決まっているので面積は小さく出来ないかも知れませんが,光学系に奥行きが必要な従来のチェキに比べ,有機ELで出来た印刷ヘッドを密着させて印刷するプリンタは,薄く作る事が可能です。

 小さいカメラと薄いプリンタを電線で繋いで,1つの箱に入れたものが,このinstax mini LiPlayというわけです。

 一度デジタルになってしまえば,何でもありです。ストレージに蓄え,失敗写真を印刷せずに済むのは当然として,フレームを追加したり画像を加工したりすることは,誰でも思いつくことでしょう。

 カメラの画像をPCやスマホに転送することも出来るし,PCやスマホの画像を印刷することも可能になります。

 これだけでは足りないと感じたフジは,音声をクラウドに置き,ここへのアドレスをQRコードで印刷することで,短い音声を写真に取り込む事にしました。これも新しい機能でしょう。

 それで,価格はプリンタ単体よりもちょっと安いくらいです。カメラの値段はもう無料みたいなものです。しかしその分,全体的な安物感は拭えなくなってしまいました。

 しかし,このチェキには,スマホプリンタとしての機能に加えて,高画質化というカメラにとっての本質的な改良と,ランニングコストの大半を占める印画紙の無駄な消費を抑えるというコストダウンを期待出来る製品と,私の目には映りました。

 チェキが我々家族の標準ツールとなっている現状から鑑みて,これは買うしかありません。

 予約して発売日に届いたinstax mini LiPlayですが,インプレッションを簡単に書きます。


(1)質感

 歴代最小とまで謳っている本体の大きさは,手に取ってみると想像以上の大きさに面食らいます。もっと小さく,もっと凝縮感のあるものを期待しただけに,叩くと「カンカン」と無粋な音を発する筐体に,まず最初に幻滅しました。

 実際に大きいという事もそうですが,多用された曲面とデザインの妙技によって小さく見えているはずですから,実際には見えている以上に大きいはずです。事実,大きさから来る持ちにくさまでは,隠し切れていません。

 プラスチッキーで,ああこれはやっぱりチェキ一族なんだなあと思うのですが,これだけ設計に無理をしていなければ,落としたりぶつけたりしても,壊れることなどないんじゃないかと思います。


(2)画質

 注目点である画質ですが,これもちょっと期待外れでした。本体で撮影,本体で印刷してみると,銀塩のチェキとそっくりの画質で印刷されます。

 スマホから印刷してみましたが,これもまあチェキで撮影したかのような見事な画像処理です。色合いといいコントラストといい白飛びの具合といい,チェキの雰囲気をこれほど残せるものかと感心しました。

 カメラのは500万画素と10年前の携帯電話並み,一方の印刷は312dpiで階調ありですのでかなり高画質なはずですが,カメラの画像はそれなりに綺麗でも,印刷するとチェキになります。
 
 原因が印画紙の性能によるものなのか,それとも画像処理でわざと銀塩のチェキと同じ程度の画質を落として印刷しているのかわかりません。しかし,フィルターによって画質がそれなりに変化していることを考えると,印画紙の性能の限界によって画質が低下しているとはちょっと言い切れないように思います。


(3)使い勝手

 使い勝手は悪いです。まず説明書が不親切で,手に取ってもオロオロするだけです。

 設定の一部はスマホのアプリからしか出来なくなっていますが,それがどの機能なのかは説明書には書かれていませんので,試行錯誤が必要です。

 また,広くハイブリッド型を標榜する製品の宿命である,それぞれの機能の切り替えですが,このカメラについては画像の再生と印刷に独立したボタンはあるのに,撮影モードに移行するボタンがシャッターボタンと兼用になっています。私はこれがなかなか理解出来ず,カメラモードへは電源投入時にしか入れないものだと思って,いちいち電源を切っていたくらいです。

 LCDの画質も悪く,解像度も足りなければ発色もコントラストも悪いです。なにより,視野角の狭さには閉口もので,少し横から見ると色が派手に転びます。娘は,こういう機能だと思っていたほどです。

 UIとしても,ボタンへの機能割り当てが直感的ではなく,暗記しないといけないものが散見されます。悪いことにグローバルモデルゆえボタンに付いているのはアイコンで,そのアイコンもわかりにくいものです。

 私自身が操作方法を習得するのに30分ほどかかりましたが,これを娘に教えるのにとても苦労しました。

 もう1つ,許せないのが通信についてです。

 プリンタとして使う時にはスマホとBluetoothで繋ぎます。しかし,同時にペアリングしておける台数が1台に限られているのです。

 複数のスマホと共有出来ず,一々ペアリングを削除しなければなりません。プリンタだけではなく,スマホの設定からも削除が必要なので,とても面倒です。

 スマホやタブレットは一人一台です。家族で共有出来ないと不便で仕方がありません。

 セキュリティ面が理由ではないかと考えましたが,スマホから可能な操作が少ないこともあり,複数のスマホのペアリング情報を残しておくことは難しくないはずです。

 もっとも,設定がスマホのアプリから行う現在の仕組みは,本体の設定状態とアプリの設定の記録とを同期させねばなりません。Aさんが設定したあとBさんが設定をいじり,またAさんに戻ってきたとき,Aさんのスマホに残っている設定状態との食い違いをどこで同期させるのか,真面目に考えないと破綻しそうです。

 個人的には,接続したスマホごとに設定を切り替えるのが良さそうですが,それだとスタンドアロンで使う時にどの設定で使うのかという問題が残ります。ということは,やっぱりスマホのアプリで設定をさせるという現在の仕様そのものに無理があったという事になるでしょう。

 もう1つ,せっかく低画素なカメラなのに,画像をPCなりスマホに転送する方法がないのです。マイクロSDで持ってくればいいのですが,なぜBluetoothで転送できるようにしなかったのでしょうか?これも疑問が残る,不便な仕様の1つです。


(4)面白さ

 実のところ,一度デジタルを経由するかどうかは,紙の写真をすぐに手に入れたいという目的に対して,どうでもいい些末な事なのかも知れません。撮影し,選んで,印刷を行うと,いつものチェキの写真が出てくるという事に,ややこしい背景は関係がありません。

 撮影は手軽に,しかし印刷はよく考えてということで,撮影と印刷が同時に起こるかつてのチェキに比べて,悩む「壁」の場所と大きさが再調整されたものと考える事ができるでしょう。

 そして,撮影と印刷の2点間には,フレームの追加とフィルタによる加工というデジタルならではの遊びがはいります。

 娘はこの2つが面白いらしく,私としてはここをもっと強化するして欲しいなあと思いました。


(5)電池寿命

 電池がすぐ切れます。娘もびっくりしていました。

 充電がUSBからになったことはよいのですが,3時間ほど充電にかかってしまい,その間は使えなくなるのに,簡単に電池が切れてしまいます。

 LCDの輝度を落とすとか,LCDをOFFにするとか,そういう低消費電力化の設定があるかと思いましたがありません。

 原理的なものは仕方がないとして,以前のチェキが,いつ電池を交換したかを忘れてしまうくらい電池が切れなかったことを考えると,今回のモデルはあまりに電池寿命が短すぎるように思います。


(6)全体として

 これはなんとも難しいカメラです。歴代最小のチェキとみるか,スマホの周辺機器とみるか,安い低画質デジカメとみるか,画像を加工できるチェキとみるか,見方によって評価は変わると思います。

 個人的には,画質と質感,大きさと電池寿命で大きく期待から外れてしまった感は否めず,それがこのカメラの魅力を半減させているのですが,嬉々として使っている娘を見ていると,そんなものはどうでもいいのかも知れない,とそんな風にも思えてきました。

 私が残念だと思った点は,おそらく次のモデルの改良点として必ず検討されることだとは思いますが,小型軽量は別にして,高画質化が果たしてチェキのユーザーの望むことかといわれれば,それは違うような気もします。

 オモチャと割り切るにはちょっと高価ですし,スマホのカメラにも画質で負けているので,カメラ代わりにはなり得ません。

 かといって半額の光学式チェキとそんなに出来る事も違ってこないわけで,私の中では,これは結局,賢い人がウンウン唸って1周回って原点に戻ってきたチェキだということに,なってしまいました。

 楽しいのは事実です。子供も面白がって毎日使っています。これが来てから家族で遊ぶことが増えました。

 ただ,それはきっとチェキの面白さが根本にあると思うので,安いチェキとよく比べて選んで欲しいなあと思います。

 夏休みが間近に控えています。チェキを自分の道具にした私の子供が,この夏をどんなふうに切り取って残すのか,楽しみです。

 

F2の分解清掃で小ネタ2つ

 完全な機械式カメラであるF2フォトミックがまともに動き出して,あとはフィルムでの試写を行うのみとなったのですが,その後の小ネタを2つほど。

(1)ファインダーアイピースバラバラ事件

 さすがに50年も経過すると,プラスチックは分解し,柔らかくなったり欠けたりします。ひびが入ってボロボロと崩れていくこともしばしばです。

 プラスチックは安いし,自由な形に成型できるし,強いし美しいし,色も選べるということで,今やこれなくしていかなる工業製品も成り立たないのですが,問題の1つは経年変化に弱いことがあると思います。

 実際,金属で作られた大昔のカメラは修理可能でも,プラスチックを多用した比較的新しいカメラは修理出来ないことがごく普通に起こっています。

 ニコンFもF2も機械式カメラであり,壊れても修理可能だといわれていますが,プラスチック部分については例外で,ここが壊れてしまうと別の方法を使って修理するしか方法がなかったりします。F2の電池ケースの割れは,もはや定番の故障です。

 で,私のF2もようやくにしてボディとファインダーが組み上がって,暫定的に露出計の調整も終わって一息つき,改めて眺めていると,アイピースがねじ込まれる部分のプラスチックにひびが入っているのを見つけました。

 これはまずい。今のうちに手を打たないとえらいことになります。

 急いでアイピースを取り外し,周辺の張り皮を剥がします。2本のネジが出てきますが,これを緩めて,接眼レンズがくっついているこのブロックを取り外します。

 よく見てみると,上と下にそれぞれひびが入っていて,上のひびはもう少しで完全に破断しそうなほど長く伸びています。

 更によく見ると,ビスの穴から横方向にひびが入っていて,もうボロボロと壊れてしまいそうです。

 プラスチックには接着剤なのですが,ここは最強の接着法である「溶着」を使います。アクリル用接着剤を隙間に流し込み,ぐっと押しつけておくと,接着面が溶けてくっつきます。くっついてしまえば元のように一体化するので,割れてしまったことすらなかったように,元の強度が戻ります。接着の強さは,力を加えてねじったら,接着部分ではなく他の部分が壊れてしまうほどです。

 ただし,寸法がちょっと変わってしまいます。溶けるのですから当然です。

 それと,接着剤とはいいつつ,揮発性の有機溶剤ですので,乾いてしまうのはすぐです。しかし,溶けたプラスチックが固着し,元の強度を発揮するには最低一晩放置しなくてはいけません。1時間や2時間程度で力を加えると簡単に剥がれてしまいます。

 ということで,完全で破断すると位置合わせも難しくなるので,割れ筋のうちに修復です。

 裏側の押さえ金具,接眼レンズ,そしてゴム枠の3つを取り外します。順番と向きはメモしておきます。

 そして割れ筋の部分を両側から押さえて,隙間が小さくなることを確認します。そしてその割れ筋に,接着剤を流し込みます。すっと入り込んで行きますが,ここで力を緩めず,出来ればテープやゴムで密着させておきます。これで一晩です。

 あまり強く押すと,溶けた部分がはみ出してしまい,寸法が変わってしまいます。また,力を緩めると隙間が余計に広がってしまい,接着そのものが出来なくなってしまいます。

 事故は個々で起きたのですが,指で挟むようにして押さえつけていたのところ,なんと別の部分がひび割れてしまい,そこが完全に破断してしまいました。大慌てで部品を集めてあわせて,さらに接着剤を流し込みます。

 ようやく元の形に戻りました。翌朝様子を見ると,幸いうまく接着できているようです。

 せっかくですので,接眼レンズも綺麗にクリーニングしておきます。そしてゴム枠,磨いた接眼レンズ,そして押さえ金具を戻し,ファインダーに取り付けてビス留めです。

 しっかり修理が出来ていることが確認出来たら,張り皮を貼って完成です。どうも,視度補正レンズを強くネジコンd事も悪かったような気がします。少しゆるめにしておきましょう。

 この,アクリル用接着剤でプラスチックを溶着する方法は最近私が多用するもので,スチロールはもちろん,接着が難しいとされるABSでも強力に接着できます。ポリプロピレンやPETなんかはやっぱりダメなんですが・・・

 F2の電池ケースもこれで修理をしていますし,結果は上々です。

 ただ,古いプラスチックの修理は,溶着した部分こそ元通りになるかも知れませんが,全体的に脆くなっていますから,他が割れてしまうかも知れません。
 

(2)シャッタースピード簡易テスタ

 メカだけで1秒から1/2000秒を作り出すF2のメカシャッターは,カメラが精密機械といわれていた時代があったことを我々に思い出させてくれますが,電子制御シャッターと違って精度が心配なのも事実です。

 特に,高速側のシャッターは無理をしているのか,最高速が出ていないことが多くのカメラで見られたそうです。(アサヒカメラのニューフェース診断室のバックナンバーを見てみて下さい)

 そういう話になってくると,自分のF2も心配になってくるものです。多少のズレはいいとしても,大幅に狂っていないかだけは確認しておきたいです。

 アナログオシロを使って簡易チェックはやっていますし,結果1/2000秒で問題ないことをある程度確認してありますが,もうちょっとちゃんと,楽に確認出来ないものかと思っていたところ,フォトトランジスタがONになる時間を測定することを思いつきました。

 調べてみると随分と古典的な方法で,オシロスコープを持っているカメラ修理を趣味とする人ならほぼ全員がやっているんじゃないでしょうか。

 フォトトランジスタは手持ちの関係でTPS603Aという東芝の廃品種を使います。フォトトランジスタですので速度は遅く,電流を流しても数msの遅れがあります。

 1/1000秒なら1msですので,あまりに遅いと正確に測定出来ませんが,かといってフォトダイオードは使うのが面倒ですし,スローシャッターを確認出来るだけでも意味がありますので,さっさと作ってしまいます。

 アクリル板を適当にカットし,真ん中に3.2mmの穴を開けます。ここにTPS603Aを押し込み,そばに両面テープで貼り付けた基板に,足をハンダ付けします。

 基板には470Ωの抵抗も取り付け,電源とGNDと出力の3つの端子を出しておきます。

 電源は10Vあたりをかけ,オシロスコープを繋ぎます。

 カメラの裏蓋を外して,フィルムの代わりにアプリル版をテープで固定します。ミラアップし,マウント側からマグライトで光を当て,シャッターを切ります。

 おお,ちゃんとシャッターが開いたときにONになっています。

 さすがに1/1000秒くらいになるとなまってしまいますが,F3でも測定を行って相関を取っておけば,結果を目安くらいには使う事が出来るでしょう。

 また,本当はシャッターは走り始めと走り終わりで速度が違っていて,それが露光ムラの原因になります。だから,シャッターが開いている時間を測定する前に,シャッター幕の走行速度を合わせて置くのが必須なのですが,それはそれでまた別の測定器が必要なので,今回はやめます。

 横走なら,左側と右側のシャッターの開いている時間を比較すれば,幕速が出ているかどうかもわかるでしょうし,今回はこれでいいです。

 さて,結果ですが,X接点よりも低いスローシャッターは完璧でした。高速側も1/100秒まではほぼ完璧,1/2000秒が速いということがわかりました。

 ただ,速いと言っても,立ち上がりと立ち下がりがF3よりもなだらかで,ダラダラと露光している感じです。とはいえ,どんなシャッターの動きがこういう露光に結びつくのか私はちょっとわからず,もしかするとシャッター幕とフォトトランジスタとの距離が開いていたとか,光源との光軸が大きくズレて斜めから光が入ったりしていたのかも知れません。

 完全に開いている部分は500us以下ですが,開き始めるて完全に閉じきるまでの時間は70usを越えているので,ならすと500us程度になるでしょう。ですのでトータルで1/2000秒の露光時間になっているのだと思う事にします。

 本当は,F3だけではなく,F100などの縦走りの電子制御シャッターも測定したかったのですが,F100は裏蓋があいているとシャッターが動かないようになっていますし,SFXnはシャッターは動きますが開いてくれません。

 もう面倒くさくなったので,ここで終了。当初の目的であった,F2のメカシャッターがそれなりに精度で動いていたことがわかっただけで十分です。

 

F2のフォトミックファインダーのメーターにゴミ

 さて,前回フォトミックファインダーのメータが動かない問題を書きましたが,その続きです。

 メーターが動かないという電気のトラブルが,30度傾けると100%発生するというのも首をかしげたくなるのですが,接触不良を疑うも,バネ圧を増やしたり清掃しても改善しません。

 ボディとファインダーの電源端子が悪いのかと思い,ファインダーのおでこの下にあるフックが引っかかるボディ側のピンを少し下にずらそうと,ビスを緩めたりしめたりしているうちに,マイナスネジの頭を飛ばしてしまいました。

 これには参りました・・・ああ,どんどん壊れていく私のF2。

 原因ときちんと調べることもなく,とにかく組んでばらしてを繰り返していても解決するはずもなく,時間ばかりが経過します。

 そうしているうちにネジはなめ,更に深い部分を分解し,組み立てミスを連発するようになってきます。これはまずい。再起不能になる前に手を打たねば。

 そこで,論理的に原因の究明を行うべく,真面目に回路図と検討する事にしました。

 まず,メーターが動かなくなり,その時露出計も動かないのですから,可能性が高いのは電源が来ていないことです。

 傾けてメーターが動かなくなる現象が出ていることを確認した上でフォトミックファインダーを外し,電源端子にテスターを当ててボディを傾けてみます。しかし,電圧が下がってしまうことはありません。どんなに動かしてもちゃんと3Vが出ています。

 ボディに原因はなさそうです。

 そうなるとファインダーです。

 ファインダー単体に電源を繋ぎ,ファインダーを傾けると,やっぱり再現します。

 続けてファインダーを上下に分解し,メーターがある上半分に電源を直接入れて,傾けます。すると現象は再現。上下の間をつなぐ接点の不良ではないことが判明しました。

 上半分の回路を追いかけていきますが,断線箇所はありません。

 ファインダーに電源を入れず,メーターを含めた回路に抵抗レンジにしたアナログテスタを入れて導通を見てみます。すると,当然導通があるわけですが,面白い事にメーターが止まっても全く変わらず導通が維持されています。

 ん?

 とういことは,回路が切れて電流が流れなくなったためにメーターが止まるのではなく,電流は流れているのに,なにか物理的なものがメーターの動きを妨げていることになります。

 それならばと,メーターを軽く叩いてみます。メーターが動かない状態でも叩けば動きますし,何度か叩いていると,そのうち現象が出る角度が変わって来ました。

 さらに叩くと,現象が出なくなりました。

 うーん,ゴミでしょうね。

 ただ,このゴミを取り除くにはメーターを外し,分解しなくてはなりません。そこまでばらしてしまうのも怖いですし,メーターはただでさえ壊れやすい精密部品です。今問題がないなら,わざわざ分解することはやめておきます。

 ということで,この問題の原因はわかりました。

 あとは組み立てです。

 しかし,この組み立てがまたくせ者です。実は,以前からf2kとf1.4の間が1段ではなく0.5段ほどしか変化しないという問題がありました。きっとギアのかみ合わせがズレているせいだと思っているのですが,なにせ正しいかみ合わせ位置をメモしていないので,もう試行錯誤でやるしかありません。

 しかも,これまでの組み立ててでは,f22にするとブラシがコモンから外れてしまうこともわかりました。これはさすがにまずいです。

 ついでに,リング抵抗に接触するアースの接点を清掃していないことに気が付いたので,清掃して正しい位置に曲げておきます。

 そうして組み立てるのですが,やはりなかなかうまくいきません。何度か組み立ててバラシ手を繰り返して,ようやくEV1からEV17まで連動するようになりました。

 しかし,絞りの連動機構の動きが渋くて,f5.6から絞り込むときに,随分と大きな力をかけないといけません。これあはなにかがおかしいです。

 改めて組み立てを確認して。なんとか落ち着いたところを探し出して,やっと完成です。はっきりいって,ボディよりも時間がかかってしまいました。

 基準となるのはF3です。F3の露出計と同じような結果になるよう調整をして,これですべての作業が終了です。

 一通りに動作試験をやって,あとはひたすら,脳内麻薬を出しながら空シャッターを切るだけです。

 近いうちにフィルムを通そうと思います。以前なら100円のカラーネガフィルムをテスト用に撮影し,自家現像してすぐに再修理出来たのですが,今はラボに出さないと現像もできません。

 面倒ですが,カメラは撮影してなんぼ,です。

 数は減りましたが,手元にあるガチャガチャ可能なレンズを取り付けて,撮影を楽しもうと思います。

 しかし,私はつくづくメカのセンスがないなあと思います。メカ屋さんが電気屋さんの手つきを不安そうに眺めていることって,設計の現場では良くある事なのですが,それをまさに地で行っている感じがしました。

 こうして改めてF2を見ていると,やっぱり格好いいです。Fのように角張っておらず,F3ほどややこしくなく,角の取れたほどよい丸みにシンプルな外観と,良く出来ているなあと思います。

 F2本体がデザインされたとき,一緒に考えられたのがフォトミックファインダーのデザインでしょう。後に何種類もファインダーが出ますが,個人的にはDP-1のデザインが一番しっくりきますし,F2らしくて格好いいなあと思います。

 ニコマートELを修理した時,そのシルエットの美しさに,ぜひこの当時のフラッグシップを使ってみたいと思ったものですが,そのF2を実際に手にしてみて,F3とは繋がっている部分もあるけど,繋がっていない部分も多いなあと感じました。

 そして,AEカメラではないことが,こんなにしっくりくるというのも,冷静に考えて分かった事です。思えば,私はPENTAXのSPを長く使っていましたから,AEではない内蔵露出計の指示だけで,シャッター速度も絞り値も露出補正もささっと決めていたのです。

 そのことを体が覚えていて,F2フォトミックでもなにも違和感を感じることなく,操作できているんだろうと思います。そう考えると,F3よりもずっと手に馴染んだ感じがあります。(そうなんです,F3が名機である事は間違いないのですが,長い付き合いにも関わらず,私はまだF3を手足のように使えません)

 さて,フィルムを通して,早く現像に出しましょう。そういえばGR1で1本撮ったものも現像に出さないといけないし,FA43mmも修理が上がってから一度も撮影していません。PEN EESにもフィルムが入ったままです・・・

 

 

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