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2023年08月30日の記事は以下のとおりです。

カセットテープへの郷愁のようなもの

 先日,過去に発売されたTDKのカセットテープをすべて網羅したという本が出たので,懐かしさに負けて勝ってみました。私はちょうどカセットテープのど真ん中世代で,自分で録音することが出来る唯一のメディアであったカセットテープには,随分とこだわっていたものです。

 最初に手に入れたまともなカセットデッキはTEACのA-450で,これは当時の友人がゴミ捨て場で拾ってきたものを,メンテをして私に譲ってくれたものです。A-450は当時の最高級機で,オープンリールなみのACモーターと大型フライホールを持ち,ワウフラッターをメカ的に押さえ込んだマシンですが,録音と再生の回路にもお金がかかっていて,テープの性能が向上していたこの時代,カタログスペック以上の音が出ていたように思います。

 A-450は古いモデルですのでメタルテープにも対応していませんし,フェライトヘッドだった関係でバイアスも深く出来ませんでしたので,当時ハイポジションとして売られていたテープの中にはバイアスが浅すぎ,高域が出すぎる傾向がありましたし,もっと悪いケースでは消去不良を起こすものもありました。

 結局基準テープとして使われていたTDKのSAを中心に使うことになるんですが,そうした事情に加えて,実際に使った感じとしてTDKが一番気に入って使っていました。

 テープそのものの耐久性がずば抜けていて,某S社のテープのようにA面とB面で時間が違うという事は絶対にありませんでしたし,某S社は3回使うとテープがヨレヨレになったり磁性体が剥げたりして捨てるしかなくなりましたが,TDKだと致命的な劣化が起きるのはもっと使い込んでからでした。

 一番最初に録音するときだって,某S社のものはドロップアウトがひどいのですが,TDKはそうしたものはなかった(1990年代前半にはひどいものがありましたが)ので,大事な録音を行う時や,FM放送を丸取りするときのマスターテープ,あるいは長期保存を行うような場合には,迷わずTDKを使っていました。

 A-450を手に入れるまでは,安いモノラルのラジカセでノーマルポジションを使うことしか出来なかったので,ハイポジションのテープを試したくて仕方がありませんでした。A-450が手に入ると念願叶ってハイポジションが使えるようになりましたが,ノイズの少なさと高域の伸びに驚いたことが思い出されます。

 そういえば,この時のテープは,確か初代のSFだったと思います。SAなんて高価でもったいなくて手を出せず,ソニーが先鞭を付けた安価なハイポジションにようやくTDKも参入し,登場したのがSFです。それでもADよりも高かったですし,私としてはそれなりの覚悟で,あのくすんだ水色の格好悪いテープを手に,ワクワクしながら自宅まで早足で帰ったことを覚えています。確か年末,12月も30日近かったんじゃないかなあ。

 その後,いろいろなメーカーのいろいろな銘柄のテープを試してきましたが,どれも基本性能で抜群の安定感を持っていたのがTDKでした。生まれて初めて箱買いを経験した(UDIの46分でした)マクセルも,耐久性や信頼性は申し分なく,安心して使えるテープでしたが,音質jについては低域が盛り上がり感じがあって,私の好みと違っていたので,積極的に使ってきませんでした。

 あとは富士フイルムです。AXIAブランドになってから,(デザインの軽さに似合わず)その性能の良さに驚き,積極的に使いたいテープだったのですが,TDKの同クラスのテープに比べて1割ほど高かったので,あまり選ぶことはありませんでした。

 A-450はワウフラッターを物量で押さえ込む思想が気に入って,大事に使っていました。回路を修正することはしませんでしたが,トランジスタはすべてローノイズ品に,抵抗はすべて金属皮膜に,コンデンサも高音質なものへ変更し,イコライザもバイアスもアジマスも再調整して使っていました。

 これが高校生くらいまでの話で,大学生になると,もうこの時期を逃すと二度と買えなくなるかも知れないという恐怖感から,AKAIのGX-Z9100EVという高級機を背伸びして買いました。A-450の後釜ですし,TEACは大好きなメーカーでしたからTEACからと選ぼうと思いましたが,AKAIのデッキを使っている人の良い評判を聞いて,買うことにしました。

 GX-Z9100EVはAKAI(A&D)のカセットデッキとしては最終モデルだったと記憶していますが,現在に至っても致命的な故障や部品の破損もなく,30年も前に買ったにもかかわらず,今も調子よく動いています。

 GX-Z9100EVの源流はおそらく1986年のGX-93にあると思うのですが,もともと会話録音程度を想定して誕生したカセットテープに,3ヘッド,クローズドループデュアルキャプスタン,PLLによる回転数制御,リールモーターを別に用意といったオープンリール顔負けのメカを奢り,さらにDOLBY-B/Cノイズリダクションでダイナミックレンジを最大20dBも改善,DOLBY HXPROで高域のバイアスを動的に補正,OP-AMPを使わずディスクリートで組み上げたアナログ回路といった電気回路を組み合わせたGX-Z9100EVは,テープを傷めることなく,ほぼ原音そのままを記録出来るカセットデッキとして私はとても重用しました。

 もちろん,DATも使っていたのですが,DATはテープが高価でしたし,耐久性が低い上,テープの劣化や不良があると音が突然途切れるというデジタルならではの問題点もあって,主役の椅子に座ることはありませんでした。

 GX-Z9100EVを買ってからは,念願だったメタルテープを使うようになりました。ノイズはやや多いのですが,DOLBY-Cでかなり低減できますし,中低域のパワーだけではなく,高レベルで録音すると落ちがちな高域もしっかり出てくるので,その音の良さに驚きました。この頃にはメタルテープの価格も下がっていて,クセのあるハイポジションを使う理由は完全になくなったと思いました。

 磁気記録,特にカセットテープについてはなぜか今でも心地よさがあり,好きなメディアです。磁気を使った記録が我々の身近な所から廃れてしまって久しいですが,物理学的にも独特の世界を持つ磁気記録は,やっぱり興味の尽きない分野だと思います。

 そんなカセットテープから,驚くような音が出てくるということを,もちろん据え置きのGX-Z9100EVでは体験していますが,手のひらサイズのポータブル型でも,信じられないような良い音が再生出来るということを,もう一度普段の生活に取り入れてみたくなりました。

 あいにく,当時使っていたウォークマン(WM-EX60)は,ゴムベルトが切れてしまったために捨ててしまいました。今またWalkmanがちょっと見直されているようで,ゴミベルトも手にはいやすくなっているので,捨てずにおいておけばよかったと後悔していますが,こうなるとなかなかあきらめが付かないものです。

 ポケコンもそうだったのですが,お店でジャンクを漁ることが出来ない私が頼るのは,某オークションです。程度の悪いものが高価だったりするのでここももうあてにはならないんですが,とにかく手を出さないと始まらないと,Walkmanの修理の世界にこぎ出すことにしました。

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