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2023年08月19日の記事は以下のとおりです。

PC-386BookLはいよいよ完成

 先日PC-386BookLの復活について書きましたが,その後さらによい方向に検討が進みました。なにかと問題を抱えていたコンパクトフラッシュの問題が根本的に解決したのです。

 MS-DOSや初期のWindowsといった20世紀のOS,むしろそれらが動作するシステムすべては,NANDフラッシュと言う半導体メモリが同じ場所に何度も連続して書き込むことで寿命を大幅に縮めてしまうことを考慮していません。

 というよりも,フラッシュメモリでシステム全体を運用することなど夢物語だった10年ほど前までは,専用につくられたSSDでさえシステム側での対応は十分とは言えず,なにかしらの問題を抱えた上で使われていたものです。

 特にスワップの発生する仮想記憶を持つOSでフラッシュストレージを使うことは,その書き込み頻度の多さから慎重でなければならず,きちんとした対策が行われている最新のOSを用いることのないPC-386BookLで私がコンパクトフラッシュを使うことにしていたのも,その運用がMS-DOSに限られていたからです。

 ですが,やはり原理的に壊れるものを使うことへの抵抗は大きく,できればハードディスクを使いたいと思ってはいました。それに当時のマシンですから,ハードディスクの遅さを味わうのも,また一興と言うところでしょう。

 残念なことに,PC-386BookLに内蔵して使えるハードディスクは当時のものを中古で探すしか手はありません。仮に手に入れることができたとしても,ドライブ自身は著しく信頼性を落としていると思いますし,適合する新品のドライブ探して入れ替えることは簡単ではありません。

 そこで私は思い切ってTrue-IDEモードを持つ,古い小容量のコンパクトフラッシュを使って40MBのIDE接続(DOSからはSASI接続に見える)のハードディスクとして使うことにしたわけです。手持ちのコンパクトフラッシュの大半はうまく動いてくれませんでしたが,256MBと32MBだけは動いてくれて,このうち256MBのもので40MBのハードディスクを再現して使うことにしました。

 この目論見は案外うまくいき,その高速性も手伝って快適なMS-DOSの環境を手に入れることがかなったわけですが,MS-DOSとはいえ古いコンパクトフラッシュには荷が重く,使っているうちに長時間反応を返さなくなったり,ハングアップしたりする頻度も増えてきました。

 これではいつ動かなくなってもおかしくはないと,使えるコンパクトフラッシュを探さねばと新品の64MBなども買って試してみましたがうまく動いてはくれませんでした。もし現在動作している貴重な256MBのコンパクトフラッシュが壊れてしまうと,PC-386BookLそのものが動かなくなるということが起きてしまいかねません。

 そこで目をつけたのが,もう二度と使うことがないであろうマイクロドライブです。一世を風靡したコンパクトフラッシュサイズの超小型ハードディスクは,まだIBMがハードウェアメーカーとして世界を牽引していた時代の製品で,確か最初は340MBからスタートしていたと思います。当時340MBと言えば大容量で,このサイズのコンパクトフラッシュは非現実でしたから,これこそハードディスクの生きる道であると話題になったことを思い出します。

 圧縮音楽を詰め込む音楽プレイヤーが丁度登場した時期で,にたようなサイズの超小型ハードディスクはIBM以外のものも含めて以外に身近にあったのですが,基本的には印刷と同じような技術である半導体にかなうはずもなく,6GBまで発売されましたがその後はその使命を終えました。

 私はデジタルカメラ用に1GBと6GBを買って使っていました。しかし,その後フラッシュメモリが安くなったこともあり,使うことはなくなっていたのです。

 この1GBのマイクロドライブがPC-386BookLに使えたら好都合です。書き込みよる劣化も基本的には起きませんし,もともと衝撃には十分な配慮をしてつくられたマイクロドライブをコンピュータの内蔵ストレージに使うと言うのですからまったく問題はありません。消費電力も小さいですし,遅いといっても当時のハードディスクに比べたら随分高速です。

 しかし,残念なことにこのマイクロドライブはうまく動いてくれず,このときは結局あきらめたのです。

 今回,もしかすると動くかもしれないともう一度試したところ,なんとあっさりフォーマットができて,MS-DOSが起動するところまで出来てしまいました。それならとバックアップしてあったコンパクトフラッシュのイメージをそのまま書き込んでみたところ,これもあっさり動作してしまいました。

 これでフラッシュメモリの劣化の心配をしなくても済みます。それに,ドライブの起動時間からくるタイムラグも,当時の使用感を思わせて個人的には懐かしい感じがします。
 ただ,使い勝手は確実に悪くなっているので,コンパクトフラッシュの時には使う必要がなかったディスクキャッシュを復活させました。2回目以降のアクセスでハードディスクにアクセスしないと言うのも当時の感覚そのものですし,当時のマシンを使うならこういうところも味わないといけないと思います。

 ということで,フリーズもなくなり,安心して当時の使い勝手をそのまま再現したPC-386BookLが出来上がりました。当時はこの環境でガンガン日本語を書いていたんだなあと思うと信じられない気がするのですが,ものは試しにとこの文章はPC-386BookLで書いています。

 FEPは懐かしのWX3,エディタはMIFESです。ちょっと遅いですし,変換精度もさすがに良くないのですが,普通に文章を書くくらいなら十分に使えると言う印象です。

 ただ,PC-386BookLのキーボードは今の水準で言えば良くないキーボードで,音はうるさいわ変なクリック音は出るわストロークは深いわバネは重いわで,正直疲れます。ここだけでも改良できれば随分使い勝手のいいマシンになるんじゃないかと思うのですが,うまく改造する方法が浮かびません。

 それともう1つ,冷却の問題です。PC-386BookLには小さな空冷ファンがついていますが,普段は止まっています。冷却が必要な内部温度になると勝手に回り始め,温度が下がると自動停止する賢いファンです。

 1年ほど前は問題なく動作していたこのファンも,いつの間にやら動作しなくなっていました。かといって故障したわけではなさそうで,電源を入れなおせば回転しますから,制御回路の問題かなあと思っていました。

 もし本当に制御回路の故障なら長時間の使用で電源ブロックが壊れてしまうでしょうし,壊れなくても熱による劣化が進んでしまうので,長時間使うのをためらっていました。

 この文章を書いているうちにも,どんどん温度が上がってきています。いよいよ心配になったその時,ようやくファンが自動的に回り始めました。どんどん温度が下がっていくのがわかりますし,基板をIPAで洗浄したため,あの嫌な臭いもしなくなっています。

 ということで,PC-386BookLは,本当に実用的に使えるマシンになってくれました。なんだかんだで1年かかりましたし,これはもう本当にだめだろうとあきらめそうになったことも一度や二度ではありません。爆発や出火の危険もありましたし,その意味では今も安全だとは言い切れません。

 次にやるべきことはこのキーボードをもっと使い易くすることでしょうけど,それはもう30年前のマシンにするような改造とは違うように思います。当時のマシンそのままに,いいところも悪いところもまとめて味わうことが,このPC-386BookLの正しい使い方のように思います。

 CPUはCX486SLCですからメモリのバスはなんと16ビットですし,クロックはわずかに25MHz,メインメモリはたったの640KBで拡張メモリも2MBに過ぎません。

 画面は640x400でVGA以下,LCDはもちろんモノクロですがそれもSTN液晶と言う,いまなら時計か電卓くらいにしか使われていないようなパッシブマトリクスの液晶です。モノクロも白と黒ならまだしも,青と白ですから目が疲れて仕方がありません。バックライトも当時のことですから冷陰極管という蛍光燈の一種でLEDではありません。

 マウスもトラックパッドもなく,これを今時の人にわたしても,きっとどうしていいかわからなくなってしまうでしょう。なにせ画面に出てくるのは,16ドットの荒く大きな文字だけなのですから。

 そんなマシンで動作するのはMS-DOSという原始的なOSです。今となっては本当に原始的としかいえなくて,コマンドを打ち込まないとなにも出来ません。しかし,こうして日本語の文章が書けています。キー配列ももう慣れて,すらすら書けるようになってきました。

 うーん,この用途には,これでもう十分なんじゃないでしょうか。

 有り余るCPUパワーや膨大なメモリは,結局見た目の美しさや操作に費やされているということでしょう。それは作業内容そのものにはそれほど関係はなく,商品として魅力的にみえるかどうかということに,大きな役割があるように思います。

 もちろん,使い勝手そのものに貢献した進化も多いでしょうし,目の不自由な方や手や指がうまく動かせない方に寄り添うような機能の実装も,昨今のCPUパワーやメモリがあったからこそといえるかも知れません。

 でも,やっぱり私は,今のPCやスマートフォンが,装飾過多になっているんじゃないかと,思わざるを得ません。

 一方で,同じように進化を劇的に遂げた自動車を考えてみると,本来の目的である移動をより快適に行うために進化してきたことに,私は疑問を感じません。

 同様にPCだって,例えば目的である文書作成を快適に行うための進化と捉えれば,このきらびやかな画面もまた納得せざるをえないのでしょうか。

 どうやら問題は,こうした進化の結果の選択肢が,我々ユーザーに少なすぎることにある用に思えます。自動車はそれこそ星の数ほど選択肢があります。しかしPCはOSを入れてしまえば,どんなマシンも向き合うのは結局OSです。

 自動車は基本操作はどれも共通で,PCも共通の操作系を持つことは当然でしょう。しかし見え方なんかは,もっと選択肢があってもいいんじゃないかと思います。

 その昔,PCはカスタマイズのためのツール類が商品として売られていました。それらは次第にOSに取り込まれていき,カスタマイズはOSを新しくしたときにまず最初に行う儀式になりました。

 しかしそれも下火になり,今我々が新しいPCに買い替えたときに行うことは,これまでの環境をそのまま移行させることです。いつからでしょうか,新しいマシンに買い替えたことがワクワクしなくなったのは。

 そうこうしているうちに冷却ファンが自動停止しました。これで一安心。もうこのマシンは大丈夫でしょう。




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