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2023年10月23日の記事は以下のとおりです。

XD-S260の修理

 先日からカセットやLPレコードなどの音源をデジタル化してFLACにするということをコツコツとやっているのですが,この作業はとにかく時間がかかるのが問題です。

 楽しい音楽ならいいのですが,必ずしもそうではないところが「すべての音源」を目標にすることの厳しさで,まるでお経を聴いているかのような気分になることもしばしばです。

 だから途中で嫌になってやめてしまうのですが,数年するとまた「そろそろやるか」と重い腰を上げることになります。今回もわりとそういう間隔で始まった気がします。

 ここで数年というブランクが引き起こす悲劇があります。FLACにしたファイルの格納場所を忘れてしまい,デジタル化していないと勘違いしてもう一度取り込みをやり直してしまうことです。

 今回も,ふとDATの音源を探してみると,なんとMP3に変換した物しか見つかりません。当時はMP3で圧縮するのが容量的にベストであったとしても,今はそんなことで情報量の欠落を言い訳出来ません。やり直すしかないなあと,うちのDATデッキに目をやります。

 うちのDATデッキは,ソニーのDTC-59ESJと,アイワのXD-S260です。XD-S260の方が先に購入し,DTC-59ESJはいよいよDATが市場から消えるというタイミングで,バックアップとして買いました。

 このXD-S260は私にとっては画期的な一台で,これが当時のエアチェックの問題のすべてを解決してくれたのでした。

 FM放送を録音することをエアチェックといいました。今でこそFM放送は録音する価値などないものになりましたが,1980年代や1990年代は,FM放送でしか聞けない音源が流れていました。代表的な物はスタジオライブでしょうか。

 特にNHK-FMのスタジオライブは,当時でも音の良さで定評のあった505スタジオで録音されたものが毎週かかっていて,出演者のレベルの高さと相まって,本当に素晴らしい音源でした。今でも楽しく聴けてしまうのがすごいです。

 問題はこれをどう残すか,でした。もちろん,FM放送をそのままカセットに録音すれば良いだけなのですが,1時間の番組を切れ目なく録音することは出来ません。必ず裏返す必要があります。

 しかし,きっちり30分で演奏を切ってくれるわけもありませんし,裏返す時間がかかってしまうと,次の演奏の頭が切れます。それに,ただただ裏返しただけだとB面の録音時間が短くなってしまいますから,出来ればギリギリ,ベストなのはB面を巻き戻してから録音することです。(この点で言えばオートリバースデッキは役に立たない機能だったと言えます。)

 最後まで録音できなかったという最悪の事態はもちろん,ライブですから,MCも含めて切れ目がないのが楽しいのに,切れ目があるととても残念ですよ。

 そこで,一度出来るだけ長い高音質のテープに録音し,あとでダビングすることを思いつきました。とはいえ,当時のカセットデッキはA-450と,ジャンクの再生専用の改造カセットデッキだけですし,高音質のテープに120分のテープは売られていませんから,90分のテープを使っても,どっかで一度は裏返す必要があるのです。(裏返すのではなく別のテープの交換すればよかっただけではないかと,今思いつきました・・・)

 ところが,そうやって時間の問題を解決しても,ダビングによる音の劣化が問題です。まともなカセットデッキがなかった当時はもう深刻で,せめてメタルテープが使えたらと何度持ったかしれません。(A-450はメタルテープは使えないのです)

 ある日,日本橋でアルバイトをしていた私は,休み時間に近くのニノミヤムセンのオーディオ売り場を見ていました。すると,特価品としてXD-S260が忘れもしない,39800円で売られていたのです。夢にまで見たDATが,たった4万円で買える!

 悩むことなく買って帰ってから,その素晴らしさに感動しました。DATは標準録音時間がが120分ですから,1時間の番組など余裕です。16ビット/48kHzのリニアPCMですから,FMの音なんか「そのまま」です。いわば,私のためだけに再放送を何度もやってもらうような感覚なのです。

 ここから劇的にスタジオライブの録音品質が向上しました。当時の録音を聴いていると,A-450しか持っていなかった時でもDATからの録音だと十分音楽として聴くに堪えうるものが残っています。

 使っていて思ったのは,XD-S260はなかなか優秀で,ミニコンポサイズで安っぽい外観ではありましたが,音質もナチュラルでしたし,なんといっても信頼性が抜群でした。ドロップアウトもほとんど経験していませんし,DATにありがちなテープを傷めることはなく,安心して使うことが出来ました。

 その割には動作はキビキビしており,DTC-59ESJ等ではイライラさせられることもしばしばです。

 DATは,一応互換性は保たれている物の,やはり録音したデッキで再生するのが一番安定します。XD-S260で録音されたテープが多いのですから,XD-S260を出来るだけ維持しておきたいと思うのも人情です。

 一度,大がかりなレストアを数年前にやってはいるのですが,この時はベルトの交換と電解コンデンサの交換だけでした。電解コンデンサはこの当時の常として四級塩電解コンデンサの漏液がありましたが,基板の破損まではなかったので軽く見ていたのです。

 今回,久々にXD-S260を引っ張り出してみたのですが,やはり動きません。

 あれ,なんで私ワクワクしてるんだろう・・・・

 そんなわけで,修理開始です。症状はテープのトレイが出てこないからスタートです。

 トレイが出てこないのは想定内で,これはベルトが切れているか緩んでいるかです。交換すれば済むだけの話なので簡単で,あとは外観を綺麗にしたら終わりかなあなどと緩く作業をやっていました。

 しかし,テープが無事にロードされても,再生をしようとするとCAUTIONが出て全く動きません。これはなかなか面倒な事になってきました。

 注意して見ていると,早送りや巻戻しは出来る時があります。しかし再生は全くダメで,テープが回っている様子もありません。ということはキャプスタンかピンチローラーです。
 
 指でキャプスタンのモーターを回してみますが,なにから擦っているような感触があります。キャプスタンもーたーをメカデッキから取り外してみると,やはりローターがなにかと擦れているようです。

 モーターの故障ですから,普通はここでもう終了なのですが,諦めないのが私の良いところ。モーターを分解して見ると,ステーターのコイルに擦れた跡があります。何らかの理由で,どうもローターとコイルが接近しすぎたようです。

 理由が思いつかないのも気持ち悪いですが,ローターのマグネットを貼り付けた両面テープが膨らんだとか,コイルが広がったとか,いろいろこじつけることは出来るでしょう。とにかく擦れないようにスムーズにキャプスタンを回すことが最優先です。

 よく観察すると,キャプスタンの端っこを固定するベアリングは,スリーブの先端にねじ込む構造になっていて,ネジロックのペイントで固定されています。ここを調整すればいいんじゃないかと回してみますが,すでに目一杯回っています。ぐいっとねじ込んだらローターの擦れは軽減されますが,どう頑張ってもこれが限界です。

 本当に仕方がないので,壊す気持ちで紙やすりで削り,ネジがもう少し奥まで回るようにしました。これで組み立てると擦れることはなくなりました。

 しかし,あまりスムーズに回りません。どうも,ねじるときに歪んでしまったようで,軸受が一直線上に並ばなくなってしまったようです。モーターにとっては致命的でしょう。

 これももう仕方がないので,スムーズに回る向きと角度を出しながら,少しずつ指で曲げていきます。かなりスムーズになったところで深追いはやめました。やり過ぎると,ポロッと折れてしまいますからね。

 で,この修理したキャプスタンとモーターをメカデッキに戻してみますが,ローディングが完了せず,時間表示も出ないうちにCAUTIONが出ます。これもまた厄介です。

 よく観察すると,ドラムが回転していません。おかしい。再生でなくとも,ローディングした最初にはドラムは回っているはずです。そうしないと時間を読み取ることが出来ないからです。

 ということは,ローターを回すモーターです。ローターから出るフレキを見ると,もう切れそうになっています。何度も付け外した結果です。

 ルーペで見ると,1本は既に切れているようです。フレキ切れは致命傷ですが,この頃のフレキは太いので修復が可能です。フレキの被覆を削って銅箔を出し,ここに直接細いウレタン線をハンダ付けして修復です。

 組み立ててみるとローターは回っており,ローディングから時間の表示まで問題なく進みます。これで治ったかなあと思ったのですが,再生すると3秒ほどでCAUTION表示が出て止まります。いや,テープのたるみもなくて,なにもCAUTIONになるような状況はないんですが・・・

 早送りも巻戻しも7秒ほどでCAUTIONですので,これはリールのセンサだろうと思いつきましたが,センサ自身がどこにあるのかわからなかったのと,きっと光学式だろうからちゃんと回路図を読まないとダメだろうなと,ここで一度諦めました。

 翌日,回路図を眺めつつ,海外のオーディオ機器の修理趣味人が集まる掲示板を見ていると,全く同じ症状をXD-S1100という機種で経験し,修理を完了した人を発見しました。

 XD-S1100はXD-S260の兄弟モデルで,メカデッキと主要な電気回路は共通です。この人によると,巻取側か供給側のどちらかのリールのセンサからの入力が基板の腐食で断線していて,これをくっつければ治ったということでした。

 回路図を追いかけると,確かにリールセンサはTR8とTR9というトランジスタで受け
マイコンに入っています。早速マイコンとトランジスタとの接続を見ますが,ここはOK。

 続けてセンサが繋がるコネクタとトランジスタを見ますが,こちらもOK。ならばとトランジスタ周辺の回路を見ていると,供給側のリールセンサ出力とTR8のエミッタ(つまりGND)との間に入る22kΩの抵抗が浮いているようで,エミッタはGNDに繋がっているのに,抵抗は断線してGNDから浮いています。

 これが原因です。おそらく電解コンデンサの漏液で,電解液が基板を腐食し断線を招いたのでしょう。抵抗の値も25kΩとおかしくなっていたので交換し,抵抗とエミッタと配線して繋ぎました。

 組み立てて試すとバッチリOK。再生も巻戻しも早送りも問題ありません。ドロップアウトなどの経年劣化による症状もなく,すっかり元通りです。

 丸一日ずれ込みましたが外観を綺麗にして,それからベトベトになったACコードも交換して,修理完了です。

 これで気持ちよく使えるなあと思っていたのですが,一部耐久性の良くない酒類のテープでドロップアウトが発生してしまうようです。同じテープはDTC-59ESJでは跳ばないので,再調整が必要になっているのだと思います。(DTC-59ESJは再調整を数年前に行っていますがXD-S260は全くやっていません)

 しかし,通常のテープは全く問題ありません。夢のDAT同士のダビングも出来るような環境に戻ったことに満足し,このプロジェクトは終了。

 ちなみに,MP3にしてしまったという音源は,再録音を終えた後でサーバーの置くからFLACになった物が発掘され,結局DATを修理する意味がなくなってしまいました。

 XD-S260の調子は以前ほど良くはないようです。DTC-59ESJの調子が良いのでまだ安心していられますが,もう30年も前のメカものですからね,いつ壊れてもおかしくありません。

 でも,DATは私の音楽生活を一変させた,夢のマシンです。ゆっくりゆっくりテープが回って,そこからとんでもない音が帯出すという不思議な体験は,今もってしても新鮮な感激があります。

 メカですから,いつかは壊れます。致命的な故障は簡単に起きるでしょう。それまでは,なんとか維持しておきたいと思います。修理は楽しいですしね。

 そうそう,そういえば,XC-HM86がまた壊れたようなんです。新品を買ってすぐに壊れた時と同じ,CDのトレイが出てこないというやつです。

 この時はモータードライバの破損という事だったのですが,あまりに修理がずさんで新品に変えてもらうというすったもんだがありました。

 同じ問題がまた起きたので,調べてみると同じような故障が頻発しているようです。傾向不良というやつですね。設計ミスなのか部品の不良なのかはわかりませんが,回路図を見る限りこんなところが壊れまくるというのは,メーカーの設計技術も下がった物だと思います。

 代替品で修理出来るかと思いましたがそういうわけにもいかないようで,同じ部品を手配中です。11月上旬には届くと思いますので,届き次第修理に取りかかりましょう。

 

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