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ユーザー「gshoes」の検索結果は以下のとおりです。

Si5351Aを検討する その2

  • 2016/03/04 15:05
  • カテゴリー:make:

 前回は,Si5351Aと26MHzのTCXOを買い込み,設定値をツールで作り,I2Cにはmbedを使って試して見ようというところまで書きました。今回はその続きです。

 ともあれ,回路を作らねばなりません。SI5351Aは10ピンのSOPですので,0,5mmピッチの変換基板にのせて,DIPに変換します。こういう場合,0.1uFのパスコンをチップで一緒にのせてしまうとよく効くし,綺麗です。

 ついでに,TCXOものってけてしまいましょう。裏側にベタGNDがありますから,ここにTCXOをハンダ付け,ちょこっと配線をして完成です。さらにI2Cはプルアップ抵抗もここに取り付けてしまいます。

 これをブレッドボードに差し込み,mbedのI2Cと繋ぎます。

 mbedのサイトを見ていると,同じmbedのNXPのチップ用に,Si5351の設定プログラムがアップされていました。ありがたいことです。早速使わせてもらうことにし,STM32F401用に修正してコンパイルしました。

 動かしてみたところ,I2Cは動いているようなのですが,Si5351Aは黙ったまま。おかしいなあと見直して見ると,なんとVDDとVDDOが繋がっていません。VDDOというのは,出力ポートの電源で,本体のVDDとは分離されています。これで,クロックを与える相手の電源に合わせる事が出来るのですが,ここをうっかり配線するのを忘れていいました。

 繋いで見ると,あっけなく波形が出てきます。本当にあっけなくです。0.4ppm程のズレがありますが,それは原発の26MHzのズレがそのまま出ているようですので,気にしても仕方がありません。計算すると,とりあえず10MHzも9.765625MHzも,ちゃんと出ているようです。

 26MHzの原発:25.999988MHz
 10MHz:9.99999586MHz
 9.765625MHz:9.76562085MHz

 こんな感じです。どれも-0.4ppm程度です。

 ただし,オシロスコープで周波数を計ってみると,10MHzの周波数は変動しないのに,9.765625MHzはふらふらと周波数が変動するんです。

 どうやらこれが,分数分周の副作用のようです。

 分数分周というのは言葉の通り,分周比を分数で設定出来るものですが,普通にカウンタを回していたら2のn乗しか設定出来ません。

 これ,わかりやすく言うと,10段の階段を3回で登るにはどうするか,という話です。3-3-3で飛ばして登れば,1つ余ってしまいます。そこで3-3-4という具合に,1度だけ4段飛ばすんですね。そうすれば10段の階段を3回で登ることができます。

 しかし,3段と4段とでは飛ばした段数がちがいますので,3段と4段は同じ長さではありません。長い目で見れば10段分の長さですが,1回ごとに見れば,長さが違うわけです。

 今回の分数分周も同じような話で,長い目で見れば(つまり平均では)9,765625MHzなんだけども,短い目で見れば(つまり1周期や2周期では),9.765625Hzではないのです。これはつまり9,765625MHz以外の周波数成分,すなわちスプリアスを含んでしまうということです。

 最近は無線でこの技術がよく使われるため,特にスプリアスのない綺麗な波形が必要ですから,なんとデルタシグマを使ってスプリアスをぱーっと高い周波数に追いやったりするそうですが,Si5351Aがそういう高度なことをやっているかどうかは,わかりません。

 とはいえ,私の場合,周波数カウンタのタイムベースに使いたいわけですから,長期的な精度が出ていれば全然OK。分数分周の問題は,私にはあんまり関係ないと,逃げる事にしました。

 さて,ここでまた一区切り。ここまでで分かった事は,

・Si5351Aは外部クロックを入力しても動く。
・レジスタの設定値はSi5351Cで作って,ちょこっと修正。
・I2Cで書き込めば,さくっとお望みの周波数が出てくる。

 です。私は高周波をやりませんので,波形の純度はあまり関心がなく,長期レンジにおける精度だけ気にしていれば良いという,気軽なご身分ですので,基礎検討はここまで。

 あとは,これを実用的なシステムに完成させる検討です。そう,mbedをそのまま組み込めません。そもそも,100バイトほどのレジスタ設定をI2Cでやった後はなにもすることがなく寝ているだけなのですから,mbedはもったいない。

 ここは,安価なマイコンにやってもらうことにしましょう・・・続く。

Si5351Aを検討する その1

  • 2016/03/03 14:42
  • カテゴリー:make:

 秋月の新商品を眺めていたら,Si5351AというICが売られているのを見つけました。なになに,クロックジェネレータ?

 外付けに水晶発振子を1つ付けると,3kHzから200MHzまでのクロックを任意に生成可能,複数の出力があり,それぞれに周波数設定が出来る,低ジッタ100ps,しかも安いという,大変美味しそうなICです。

 私は以前から,安価なTCXOに自分が欲しい周波数がないことに悔しい思いをしてきており,12.8MHzのTCXOからPLLで10MHzを作ったりしました。

 これはこれでうまくいったのですが,元々のTCXOの安定度が悪かったり,任意の周波数を作るには分周器の制約が多すぎて,やっぱり生成出来ない周波数がほとんどだったりと,なかなか思い通りに行かないのです。

 最近困ったのは,aitendoの時計キットの原発である12MHzと,周波数カウンタの原発である9.765625MHzの2つです。

 前者の12MHzについては,オーディオ用にと800円ほどのTCXOが売られていたのでこれで解決,aitendoの時計は笑っちゃうほど正確な時計になりました。

 後者の9.765625MHzについてはちょっと説明が必要でしょう。元々秋月の周波数カウンタキットだった私の8桁周波数カウンタの原発は10MHzなのですが,2.4GHzを測定する場合には1024分周のプリスケーラを通します。

 1024分周ですから,測定値を直読するには原発を1000/1024しないといけないのですが,それが9.765625MHzです。

 ですが,こんな半端な周波数のTCXOなど標準品では売られておらず,仕方がないので鈴商で買った15MHzのTCXOを改造して使っているのが,現在の状況です。

 実力は温度変化に対しても3ppmくらいに入っているようなのですが,改造品ですし,改造に使った水晶発振子もごく普通の特性のものですので,TCXOに使うには不安があります。

 まあ,2.4GHzなんて測定することはありませんので,オマケ程度に考えて,10MHzの低周波域の原発をTCXOにして使っていました。しかし,9.765625Mhzもちゃんとした原発にする,というテーマは,ずっと未解決のままでした。

 そこへ,このSi5351Aです。Si5351Aはクロックジェネレータですが,要するに高性能なPLLですから,いろいろな周波数を生成出来るシンセサイザという素性は,そのまま原発の精度で任意の周波数を作る事が出来るという,まさに夢のようなICと読み替えることが出来るのです。

 いや,まてよ。

 Si5351Aは,水晶発振子専用の安価なバージョンです。外部クロック入力が可能なのはSi5351Cという上位版だけです。

 SI5351Aを使う限り,水晶発振子(それも25MHzか27MHzのどちらか)で使う事になり,そうすると結局普通の水晶発振器と同じ20ppm程度の精度しか得られなくなります。

 Si5351Aの主な目的は,1つのクロックソースでUSBやらHDMIやらに必要な様々なクロックを一気に生成出来ることですから,まあやむを得ないとは思うのですが,これでは私の夢がかないません。

 悲しんでいても仕方がないので,データシートを見ます。すると,Si5351Aでも水晶発振子の代わりに,外部から信号を入れる方法が書かれていました。ただし1Vp-pの正弦波でないとダメで,0.1uFのコンデンサで直流カットも必要です。

 しかもご丁寧に,こうやって信号を入れる場合でも25MHzか27MHzと指定されています。

 わざわざそう書いてあるのですから,ちゃんとした理由があるのだと思いますが,アマチュアには知った事ではありません。データシートを見ても,最低25MHz,最高27MHzと書いてあるだけで,他を入れたらダメとは書いてありません。

 なら,26MHzならどうだ。25MHzと27MHzの間だし,速度的には問題ないはず。というか問題など考えつかない・・・確か26MHzならTCXOが秋月で安く売られていたはず。

 ぱーっと明るい日が差して,私は涙で曇った目を擦りながら,秋月に早速注文です。変換基板と26MHzのTCXOも一緒に注文したことは言うまでもありません。Si5351Aが150円,26MHzのTCXOが2個で350円です。安い。

 さて,届いてみたものの,SI5351Aは生成する周波数の設定をレジスタで行うもので,I2Cで書き込むことが必要です。設定値の求め方を見ていると,まず原発から数百MHzの高い周波数をPLLで生成し,これを分数分周比を設定出来る分周器で,最終的にズレのない周波数設定を行うとあります。

 分数分周?あまり馴染みがないのですが,なにせHz単位で誤差なしの設定を行うために,分周比の設定は桁数が多く,手で計算していたらきりがありません。それに,PLLで逓倍する周波数も何通りもあり,どれが最適値かわかりません。

 うまくPLLでの逓倍を行えば,分数を使わず整数での分周で欲しい周波数が生成出来るので,スプリアスの少ない,より高品質な周波数を得ることが出来ます。でもそんなに人の手で計算するのは,とても大変です。

 設定値は200近くあります。きちんと設定するべき設定値だけでも100近くありますので,手で計算するのは,間違いが出ることも含めて非現実だと知りました。

 最初の挫折はこれですが,メーカーのサイトを見ていると,やっぱりありました。設定値を計算するツールが。

 そりゃそうですよ。ユーザーが任意の周波数を作れることが売りなのに,計算がややこしいから使えませんは,通りません。ツールをダウンロードしてウヒョウヒョいいながら使ってみます。

 次の挫折はここです。Si5351Aでは,原発の設定が25Mhzか27MHzのどちらかしか出来ないようになっていました。いや,Si5351AはそういうICですので,文句が言えないんですけど・・・

 しかし,これも正面突破。Si5351Cは外部入力が可能な上位版ですが,これで設定値を計算することはできないものかといじってみました。ビンゴ,Si5351Cを選べば,原発を好きな周波数に設定出来るようになっていました。

 ここで26MHzを設定,欲しい周波数として10MHzと9.765625MHzを入力すると,10MHzは整数で,9.765625MHzは分数で生成,近似値ではなくジャストの周波数を生成出来る設定値が出てきました。

 このうち,Reg.15のクロックソースの設定を水晶発振子モードに手作業で修正すれば,Si5351A用のレジスタ設定値が完成です。

 次はi2Cです。

 Si5351Aも初めて使いますし,しかも正しい使い方ではありません。動作しないときに何に原因があるのかがわからないと対策も打てないし,結局ダメだった時にあきらめがつきません。もし,I2Cのしょーもないミスに気が付かず,Si5351Aをあきらめてしまったら悔しいじゃないですか。

 そこで,I2Cが確実に動く物を用意します。今回は,偶然手元にあったmbedを使ってみます。

 実のところ,mbedも初めて使うんですが,聞けばとても簡単だそうですので,使ってみようと思ったわけです。I2Cは旧フィリップスが開発した機内用シリアルインターフェースですが,すでに特許が切れているので誰でも使う音が出来るようになりました。

 ただし,なんちゃってではI2Cを名乗るわけにはいかず,事実AVRなどはI2Cとは言っていません。でもmbedではI2Cと言い切っているんですね。気休めでしょうが,安心です。

 手元にあるのは,STMicroのSTM32F401 Nucleoです。秋月でも1500円ほどで売られている安価なボードですが,これでmbedが使えるんなら安いですね。

 mbedはArduinoのようなプロトタイピングツールです。Arduinoの盛り上がりに危機感を抱いたARMが,ARMでも出来ないもんかと作ったのがmbedというところでしょう。

 純正のコンパイラにライブラリが無償,開発環境はWEBアプリで,PCにインストールする必要すらありません。ブートローダは書き込み済みで,出来たオブジェクトはUSBで繋がったターゲットボードにマスストレージで書き込むだけで則動作するという簡便性です。

 開発言語はC++で,Arduinoのような変な言語ではありません。ただ,デバッガは使えませんので,やっぱり簡単なプロトタイピング向けというところでしょう。

 それにしても,ちゃんとしたCで書けるということと,32bitのCPUで80MHzを越えるパワーですから,随分いい世の中になったものです。

 長くなったので,続きは次回に。

ミニパンチの復活

  • 2016/03/01 14:30
  • カテゴリー:make:

 そう,あれは私が中学生の時でした。中学校で初めて,同じ電子工作の趣味を持った友人に出会った(なんかスティーブ・ジョブズっぽい)のですが,彼は私よりも1歩も2歩も先を進んでいて,私の知識や技能が一気に進歩したことがありました。

 改めて考えてみると,今の知識や技能のベースは,この時に手に入れた物だったりします。タッパーにハンダゴテで穴を開けてケースを加工するのではなく,アルミケースにドリルで穴を開けるようになったのも,この頃の話です。

 子供の工作から大人の趣味へ。ちょうど変化点だったように思います。

 で,彼と話をしていると,「ミニパンチ」なるものを教えてくれました。

 9mmや10mmといった,ドリルで開けるにはちょっと大きく,でもリーマーで広げたりヤスリで削ると綺麗な丸穴にならないという苦労は,ケース加工をやったことのあるホビーストなら経験したことがあると思います。

 かくいう私もそうだったのですが,彼の工作物はとても綺麗なのです。聞けば,ミニパンチを使っていると言うことでした。

 ホーザンという工具メーカーから出ている「ミニパンチ」は,真空管のソケットの穴開け用に用意された工具「シャシーパンチ」の小型版です。

 シャシーパンチはウスとカッター,そしてセンターボルトからなる工具で,ウスのくぼみにカッターがねじ込まれることで,間に挟まれた板が切れるという仕組みの物です。

 センターボルトでねじ込むということ以外は,プロが使うプレスと同じ仕組みで,とても簡単に綺麗な穴を開けることが出来ます。

20160228210545.JPG

 写真の通り,ミニパンチも同じ構造をしていて,サイズに合わせて4種類が販売されていました。7mmと8mmがK-71,9mmと10mmがK-72,12mmと13mmがK-73,14mmと15mmがK-74という商品名で販売されていたのですが,20年ほど前に生産終了となり,現在は補修部品さえも手に入りません。

 1つ1000円ちょっとと,そんなに安くもない工具だったのですが,特にRCAピンジャックなどで,綺麗に揃った穴を複数開けるときにとても重宝しました。

 友人にお勧めされた9mmと10mmのK-72だけを買って便利に使っていたのですが,切れ味が落ちてきたことと,もう少し小さい径の物が欲しいと言うことで,K-71も一緒に買ったのが,25年ほど前の話です。

 しかし,工具の扱いが荒っぽく,かつ鈍くさい私は,このK-71を買ってすぐにこわしてしまいます。K-71は7mmと8mmですので,センターボルトがM4と細く,K-71のM5に比べて折れやすいのです。

 厚みはそれ程でもなかったのですが,アルミの厚さにムラがあり,斜めにカッターが入ってしまったことでボルトがねじれてしまい,写真のようにポキッと折れてしまったのです。


20160228210546.JPG

 折れたボルトはウスからなんとか抜き取りましたが,短くなったボルトはもう使えません。強い力がかかるボルトですので,そこら辺のM4のネジでは耐えきれないだろうと,もうあきらめてしまいました。

 後年,部品注文をしよう,あるいは修理依頼をしようと気が付いても時既に遅し。すでに部品がなくなっており,結局どうにもならないまま,工具箱に転がっておりました。

 先日,そのK-71を眺めていて,手持ちの硬そうなM4のネジを使って,柔らかいアルミくらいなら切れないかとためしてみたところ,とても綺麗に開けることができました。プラスのネジでしたが,電動ドライバーでねじ込めば,非常に楽ちんでもありました。

 これなら,もっと硬いボルトを探せばそれなりに使えるんじゃないかと思い立ちました。いつかアキバに行ったときに探してみようと思っていましたが,当面行くことがなさそうなので,通販で探してみると,いろいろ見つかりました。

 とはいえ,M4で高強度,頭が六角で長さも30mmというのはなかなか見つからず,ようやく見つけたのがBUMAX88のキャップボルトというやつです。

 ステンレスというのはそんなに硬いわけではないのですが,このBUMAX88というのは,鉄製の高強度ボルトと比較し,同等かそれ以上の強度があるんだそうです。だから,それまで太い鉄製のボルトを使っていた場所に,細いBUMAXを使えば同じ強度で小さく軽く安く,ダウンサイジングが可能になるんだそうです。

 私はネジの専門家ではないので,普通に手に入る六角レンチで回せる硬いボルトがあればいいんですが,とにかくざっと探して一番強そうなものを選びました。2本で500円。高いと言えば高いですが,ミニパンチが復活するなら安いです。

 届いたものが,以下の写真のようなものです。


20160228210547.JPG

 早速試してみましょう。まず,4mmの下穴を開けます。これはラフでいいです。そして,ウスを下側に,カッターを上側にして,ボルトを通します。


20160228210549.JPG

 あとは六角レンチでぐいぐいとねじ込んでいきます。そしてあいた穴がこれです。

20160228210550.JPG


 とりあえずうまくいきました。1mmの柔らかいアルミですので問題なしだったんでしょうが,嫌な音もせず,急にトルクがかかったりすることもなく,非常にうまくいったと思います。

 以外に六角レンチを回すのに手が痛かったので,ここは小型のラチェットを使えばいいように思いますが,あまり楽に回せてしまうと負荷がかかったことに気が付かず,またボルトを折ってしまうかもしれません。まあ,これくらいがちょうどいいのかも知れないですね。

 ということで,K-71が復活です。

 ドリルで開けられる6.5mm以上で,かつシャシーパンチで開けられる16mm以下の穴を綺麗にあける決定版であるミニパンチが手に入らないことで,私は小型のホールソーや,タケノコドリルも買ってみたのですが,やっぱりミニパンチが一番です。出来れば再販して欲しい所ですが,ホーザンしか作っていなかったという話から考えても,望み薄です。

 7mmと8mmという穴も,綺麗に開けるのが難しいものです。20年ぶりに復活したミニパンチ。どんどん使っていけそうです。

標準電圧発生器で遊んでみよう[測定編]

 前回紹介した標準電圧発生器ですが,こういうものを手に入れたらとにかく測定してみたくなるのが人情です。てなわけで,うちの測定器どもで手当たり次第に試してみることにします。

 まず最初に,この標準電圧発生器の,製造元での実測値を書いておきます。

2.50165V
5.00302V
7.50454V
10.00533V

 これとの比較を,私の手元にある電圧計の測定値で行います。数字は左から測定値,実測値との差分でmV,そして差分を%で表したものです。


・HP34401A(Hewlett-Packard,6.5桁1200000カウント)

 まず,うちの代表選手,HPの34401Aです。ジャンク品でしたから,全然信用出来ませんけど,そこは天下のHP,それなりにいい数字を出してくれていたので,どんなもんか気になっていました。

2.50165V    0mV    0%
5.00338V    0.36mV    0.007195654%
7.50529V    0.75mV    0.00999395%
10.00644V    1.11mV    0.011094087%

 お,いいじゃないですか。特に2.5Vなんて,ぴったり一致しています。他の電圧も,そんなにずれていませんし(でもスペックからは外れてます),10Vなんて1mVくらいの差しかありません。引き続きうちのキャプテンに残留決定です。


・DL2050(ケンウッド,5.5桁120000カウント)

 私が最初に買ったベンチ型のマルチメータ,ケンウッドのDL2050。計測器ランドでまともに買ったきちんとした計測器で,34401Aを手に入れるまでは「なんて素晴らしいんだろう」と思っていました。今は欠点ばかりが目立つ,かわいそうな子です。

 34401Aと違って1桁少ないマルチメータですので,そもそもの実力が違うと言えばそうなのですが,小数点以下4桁も出ていれば普通は困りません。

2.5012V    -0.45mV    -0.017988128%
5.0026V    -0.42mV    -0.008394929%
7.5041V    -0.44mV    -0.005863118%
10.005V    -0.33mV    -0.003298242%

 おお,いいじゃないですか。差分だけで見れば34401Aよりも小さいです。10Vで0.3mVしか差がありません。どの電圧でも常に0.4mV前後の差になっていることが少々気になるところですが,なんか,惚れ直しましたよ。よし,バンバン使おう。


・101(FLUKE,3.75桁6000カウント)

 次,うちのハンドヘルド型の常用機として購入した,フルークの101です。腐ってもフルーク,フルークを持ってないエンジニアは偽物とまで言われる極端なブランド信仰に屈して買ってはみたものの,こいつは値がずれているだけではなく,起動時に「Err」と謎のメッセージを表示するという体たらく。あてにしないで見てみましょう。

2.493V    -8.65mV        -0.345771791%
4.989V    -14.02mV    -0.280230741%
7.47V    -34.54mV    -0.460254726%
9.97V    -35.33mV    -0.353111791%

 うーん,微妙なところですね。例えば5Vですが,差分は-14mV。0.2%ほどのズレですので0.5%以内というスペックに入っていますし,実用上も全然OKといえばOKなんですが,でも5Vに対して4.9Vですから,シビアに使えないと判断せざるを得ない場合も出てくるレベルです。

 まあいいか,かわいいから許す。(結局それかい)


・STA55G(ソニーテクトロニクス,3.75桁4000カウント)

 お次はソニーテクトロニクスのSTA55Gです。あのテクトロニクスがソニーと一緒にやっていた時代の産物で,波形を見る事の出来るテスターとして登場したものの,オシロスコープとしては画面が小さく解像度が低く,しかも帯域1MHzで全く役に立たず,テスターとしても中途半端で,でかい,高価,単三電池が6本もいるのにすぐに電池が切れると,まさにいいことなしの黒歴史です。

 とはいえ,テスターは当時としては高性能の証であった4000カウント,TrueRMSで交流も実効値で測定可能,測定周期もとても高速で,2回/秒の更新が当たり前だった当時としては,第一印象でエンジニアの心を掴みました。

 何度も書きましたが,私はこれを計測器ランドの特売で購入,その足で友人とブルーノート東京に出向いて,クロークに計測器ランドの紙袋を自慢げに預け,友人に冷たい目で見られたという過去があります。

2.495V    -6.65mV        -0.265824556%
4.99V    -13.02mV    -0.260242813%
7.49V    -14.54mV    -0.193749384%
9.98V    -25.33mV    -0.253165063%

 お,購入からもう20年も経過しているのに,なかなかやりますね。101よりも整った値で,これくらいなら気にしないで使えそうです。


・RD-500(サンワ,3.5桁2000カウント)

 私が高校生の時に初めて購入したデジタルテスターです。テスターとしても2台目になるもので,非常に長い付き合いのあるかつての常用機でした。

この手のテスターは当時,同じデザインで色違いのものが,あちこちのメーカーから出ていたものです。デジタルテスターのワンチップLSIは,アメリカではインターシルが先行していたのですが,このLSIは9Vの電源が必要で,006Pか単三電池6本を使わざるを得ませんでした。

 そこへ,当時飛ぶ鳥を落とす勢いの日本が,3Vで動作する超低消費電力のLSIを開発,単三2本で動くテスターは言うまでもなく,ボタン電池搭載のカード型やペン型という多彩なバリエーションと圧倒的な低価格で市場を席巻しました。

 RD-500も,どっかのOEM(おそらく日置)だと思うのですが,30年もしぶとく私のそばにいてくれました。どれどれ・・・

2.45V    -51.65mV    -2.064637339%
4.93V    -73.02mV    -1.459518451%
7.41V    -94.54mV    -1.259770752%
9.89V    -115.33mV    -1.152685619%

 うーん・・・こりゃだめですね。実はRD-500は何度か修理をしていて,その度に適当に基板上の半固定抵抗をいじくっていたりしました。それで初期精度など全く出ていないんですが,それにしてもこれはいかん。いかに3.5桁とはいえ,2%もずれていたら苦しいです。

 これは,再度調整をして,リベンジさせたいです。

 ちなみに,こいつが優れているのは,導通チェッカーの反応速度が高速で,音だけ聞いていればすぐに判断出来たというのが理由です。このおかげでどれだけ作業が捗ったか知れません。


・DT3100(不明:ソアーのOEM)

 何度かここにも書いたと思うのですが,デジタルテスターなのにバーグラフ表示という,なんだかよく分からないテスターです。1980年代中頃にソアーから登場したものなのですが,数字表示とバーグラフ表示の悪いところを引き継いだ可愛そうな奴で,結局バーグラフが普通のデジタルテスターの表示に追加されるという,至極まともな進化を遂げて,絶滅しました。

 このテスターは私にとって3台目にあたるものです。一度完全に壊れたのを修理しました。ソアーのOEMで,輸出専用機です。

 デジタルテスターは数字で測定値を直読出来るのが最大のメリットなのに,それが出来ないなんて何のメリットがあるんだよ・・・誰か注意しなかったのでしょうか。

2.54V    38.35mV        1.532988228%
5.05V    46.98mV        0.939032824%
7.59V    85.46mV        1.138777327%
10.12V    114.67mV    1.146089134%

 バーグラフ表示とは言え,セグメント表示ですので,読み取る人によって結果が違うというアナログっぽいことは起こりません。誰が読んでも,数を正しく数えられる人なら,正確な値を読み取ることができます。

 で,この結果です。まあ,RD-500とそんなに時期的に変わりませんし,経年変化もあると考えればこんなものなのかも知れませんが,それにしても常用するには厳しい数字です。


・MT-2000(マザーツール,3.5桁2000カウント)

 昔,2代目シビックに乗っていた頃,突如やってくるバッテリー上がりに備えるためにテスターを常備する必要があって,購入した手帳型のポケットテスターです。LR44が2つで動くのですが,交換したのは購入後20年経過してからというのがすごいです。

2.47V    -31.65mV    -1.265164991%
4.97V    -33.02mV    -0.660001359%
7.46V    -44.54mV    -0.593507397%
9.96V    -45.33mV    -0.45305852%

 意外や意外,結構頑張ってます。どの電圧でも40mV前後の誤差となっているので,低い電圧の測定ほど誤差が大きくなっていますが,10Vで0.5%以内ですから,なんとかなんとか踏みとどまっているという感じでしょうか。


・P-16(秋月電子,3.75桁6000カウント)

 みんな大好き秋月電子のオリジナルで,性能とお値段から考えるとこれ以上の選択肢を考える必要がないとさえ思われる,P-16です。まさかの6000カウントで多機能,安くて小さくて電池も長持ちと素晴らしいテスターなんですが,その安さ故に測定結果を信用してもらえないという不運がつきまといます。

2.502V    0.35mV    0.013990766%
5.004V    0.98mV    0.019588169%
7.51V    5.46mV    0.072755958%
10.02V    14.67mV    0.146621851%

 おいおいちょっとまて,なんという精度ですか,これは。2.5Vではまさかの0.014%ですよ。たった0.35mVのズレですよ。それも,桁数が少ないから出たズレで,桁数にあわせて丸めると,ドンピシャじゃありませんか。フルークなんて目じゃないっす。

 いやはや,これはもう誤差なしといってもいいくらいです。問題は,どれを買ってもこの精度かどうかわからないという,ばらつきの問題があるわけですけど,こうやって基準となる電圧を持っている人なら,P-16はお得なテスターだと思います。

 残念なのは測定周期が長いことで,測定のレスポンスを期待する人は買ってはいけません。というか,もう売っていないんですね,これ。


・P-10(秋月電子,3.75桁4000カウント)

 かつて一世を風靡した名機中の名機,P-10です。今はディスコンになっていますが,登場時は高性能,多機能,高速レスポンス,しかも1000円という低価格で,騙されてもいいからお布施と思って買って,いつの間にか常用機にしてしまったひと仮続出しました。

 およそ老若男女,みんな使っていたテスターだと思うのですが,後継のP-16の登場で惜しまれながら消えていきました。

 P-10はP-16に比べてカウント数は少ないのですが,バッテリーチェッカーがとても便利ですし,測定周期が短いのでテンポ良く測定が出来ます。しかもデフォルトでオートパワーオフが無効になっており,いつの間にか消えているという面倒なことがありません。それでも電池はとても長持ちなので,良い設計だなあと思います。

2.475V    -26.65mV    -1.065296904%
4.97V    -33.02mV    -0.660001359%
7.46V    -44.54mV    -0.593507397%
9.94V    -65.33mV    -0.652951977%

 カウント数が少ないので誤差が大きくなる傾向はあるのですが,それでも1%未満です。とはいえ,ズレは結構大きいですから,まあ特別高精度だという物でもないでしょう。

 購入から時間が経過しているし,酷使しましたからこれくらいのズレで収まっているなら,よく頑張ったということでしょうか。


・BX85TR(サンワ,アナログ)

 参考までに,アナログテスターも調べてみます。私が持っている唯一のアナログテスターにして,私が最初に購入したまともなテスター1号機,そして今もって私の宝物である,サンワのBX85TRです。

 こいつはね,いいテスターですよ。センターメーターとかロジックアナライザとか,そういうのはどうでもいいんです。とにかく精度やレスポンスが,メーターの性能に完全に依存するアナログテスターは,もうメーターが命です。

 桁数とか測定周期とか,そういうのと無縁なアナログテスターはどんな結果になるんでしょう。

2.51V    8.35mV        0.333779705%
5.01V    6.98mV        0.139515732%
7.49V    -14.54mV    -0.193749384%
10.0V    -5.33mV        -0.053271606%

 最初にことわっておきたいのは,アナログテスターですので,値を読み取るときにも誤差が出てしまうので,測定者によって値が変わってきますという事です。それに,目盛りと目盛りの間を10分割するなんて無理で,4分割くらいがいいところでしょう。相当丸め込まれていますが,それにしてもなかなかの精度じゃないですか,これ。

 アナログテスターは,メーターが命だと言いましたが,もっというと読み取りをする人のスキルにも精度が依存します。自慢をするわけではないのですが,そこらへんのデジタルテスターが真っ青になるような値を最終的に読み取れているというのは,なかなか驚きです。

 今回,久々にアナログテスターを引っ張り出しましたが,デジタルテスターとはもう完全に別物ですね。脳みその別の部分が働いているのがわかります。


・M4650CR(METEX,4.5桁20000カウント)

 秋月で20年以上前に買った,当時の秋月としては高級機に分類される多機能テスターです。今でもMETEXという韓国のメーカーは存在しますが,値段があわなくなってきているのか,存在感が薄くなっています。

 国内メーカーのものよりはるかに安価で,多機能という事で買いましたが,導通テスターのレスポンスがあまりに遅くて使い物にならず,ほとんど使わずに放置していました。

2.502V    0.35mV    0.013990766%
5.004V    0.98mV    0.019588169%
7.506V    1.46mV    0.01945489%
10.007V    1.67mV    0.016691104%

 げ,すごいじゃないですか。これ,丸め込んだらほぼ誤差ゼロですよ。20000カウントでよくぞここまで頑張った!

 しかも多機能でhFEもコンデンサの容量も周波数も測定出来ます。表示も大きいので見やすいのですが,測定周期の遅さなど世代の古さは拭えず・・・まあ電池くらいは入れておきましょうか。


・10XL(Wavetek,3.5桁2000カウント)

 日本ではあまり知られていないと思いますが,海外では非常に有名なWavetekの製品で,ベストセラーである10XLがなぜか私の手元にあります。電気工事など強電の人向けに作られた堅牢性と安全性がとてもしっくりくるいいテスターではあるのですが,さすがに設計の古さは否めません。

2.49V    -11.65mV    -0.465692643%
4.99V    -13.02mV    -0.260242813%
7.48V    -24.54mV    -0.327002055%
9.98V    -25.33mV    -0.253165063%

 なかなかやりますね,低めに出る傾向がありますが,0.3%程度のズレであれば問題のない凡庸なレベルという感じでしょう。ただ,他に魅力のあるテスターではないので,やっぱり使い道がないなあと思います。

 ところで,10XLって販売期間が長いせいか,いろいろな色のものがあるようです。うちのはネイビーブルーです。


・MS2008A(HYELEC,3.5桁2000カウント)

 すっかり忘れていたのですが,2014年に買ったクランプメーターにも電圧測定機能がありました。メーカーはHYELECとあるのですが,型番からMASTECHのものであることは明白です。というかOEMなら型番くらい変えて下さい。

 電圧測定機能はどっちかというとおまけのようなもので,今さら2000カウントです。ですが,ないとあるとでは大違いという事で,早速試してみましょう。

2.50V    -1.65mV    -0.065956469%
5.00V    -3.02mV    -0.06036354%
7.51V    5.46mV    0.072755958%
10.02V    14.67mV    0.146621851%

 おお,これはいい。2.5Vと5Vはどんぴしゃ,7.5Vも無視できるレベルで,10Vも問題なしです。すごいです。

 これ,安かった割には良く出来ていて,クランプと画面の両方にライトがついているし,クランプを使わない測定機能だとクランプ側のLEDが消えるとか,細かいところまで作り込まれています。

 小さいですが持ちやすく,画面も見やすいし,立派なキャリングケースもあるしで,MASTECHなかなかいいですよ。今はちょっと高くなっていますが,私が買ったときも3000円ほどだったとおもいます。

 今さらですが,クランプで測定出来る電流が交流だけなのが残念で,こんなにクランプメーターが便利なんだったら,直流も測定出来るものを(少々高くても)買っておくんだったと後悔しています。

 今から買うか!


・FD-730C(サンワ,4.5桁20000カウント)

 おまけで,会社で使っているテスターも調べてみました。私はカスみたいな出がらし底辺エンジニアですので,会社から支給された測定器って,これだけです。とほほ。
       
2.504V    2.35mV    0.093938001%
5.008V    4.98mV    0.099539878%
7.512V    7.46mV    0.099406493%
10.016V    10.67mV    0.106643159%

 買ってから15年は経過していると思うのですが,なかなかいいですね。使い勝手も良くて電池も長持ち,同僚達はこれ見よがしに肩で風を切りながらフルークを使ってブイブイいわしてますが,この結果をみるとフルークなんぼのもんじゃい,と思います。個人的にも1つ買っておけば良かったかなあ。

 ----

 と,うちにあるテスターを手当たり次第に調べてみました。まあ当たり前の事なのですが,どうにもならないくらいずれてしまった物はなく,テスターっていつからこんなに安く高精度で,長持ちする物になったんだろうなあと感じました。

 今回,こういうことを手間をかけてやってみたわけですが・・・

(1)アナログテスターは結構すごい

 デジタルテスターと違って,測定者が値を読み取るときの誤差が存在するのは避けようがありませんが,実際に読んでみるとその誤差の小ささに驚きます。

 考えようによっては,アナログテスターと値を読んで数字で書いてくれる人がワンセットになって箱に入った物がデジタルテスターなわけで,値を読んで数字を書いてくれる人の読み取り精度も,デジタルテスターの性能の一部なんですね。

 そこを人間がやるアナログテスターは,訓練次第で誤差を小さく出来ると言う話ですから,これは面白いですよ。

(2)桁数が少なくてもいい場合がある

 桁数が多い=いいものだ,と直感的に考えてしまう我々ですが,例えば5.012Vが真の値だとして,これが3.5桁のテスターなら5.01Vと出ればドンピシャとなります。ですが,これが4.5桁のテスターで5.014Vと表示されてしまうとドンピシャではなくなります。

 3.5桁は5.010Vから5.014Vまでの範囲のどれか,という言い方をしているに過ぎませんのでドンピシャではないのですが,それを言い出したらきりがありませんし,そもそも普通我々が実験をしていて,5.01Vで足りない事ってあんまりありません。

 そんなわけなので,桁数が多い方がいいものだ,という考え方ではなく,自分に取ってどれくらいの性能が必要になっているのかをよく考えて選ぶのが正しいと思いました。

 ついでに言うと,桁数を切り替えられるベンチ型のテスターでも,桁数を減らせば高速動作が可能になりますので,測定対象に応じて適切に選びましょうねというお話です。

(3)でもカウント数は大事かも

 (2)と矛盾するように思うかも知れませんが,表示桁数を気にするよりも,カウント数の方が実際には影響が大きいと思います。例えば真の値が5.012Vの場合,同じ3.75桁のテスターであっても,4000カウントだと5.01V,しかし6000カウントでは5.012Vとなってしまいますからね。

 これ,表示桁数が1つ減るという問題は実は些細なことで,1つのレンジで測定出来る範囲が狭いか広いか,と言う話が大事です。出来るだけ小さいレンジで測定するのが誤差を小さくするための鉄則と,皆さんも習ったと思いますが,まさにこの話です。

 4000カウントだと,3.999Vを越えると次のレンジ(例えば39.99Vまで)に切り替わってしまうのですが,6000カウントなら5.999Vまで同じレンジで動いてくれます。

 まあ,レンジごとに誤差が違っているし,小さいレンジの方が誤差が大きい場合もあったありするので,一概には言えないというのもまた事実なんですが・・・

(4)もう桁数はどうでもいい

 桁数というのは,内部表現であるBCDで考えた場合,4bitで一桁と数えます。ですから一番左側になる桁が-1から1までを表現するためには2bit必要です。4bitのうち2bitしか使っていないので,これを1/2桁と書くようになりました。

 -3から3までを表現するには3bit必要ですから,4000カウントのテスターを3/4桁というのですが,6000カウントのテスターについても,1桁に満たないという意味で3/4桁と書いてあるケースが散見されます。

 桁数とカウント数が一致していた時代なら別に良かったのでしょうが,もう桁数があてにならない以上,もう桁数を語るのはやめましょう。


 あー,疲れた。

標準電圧発生器で遊んでみよう[考察編]

  • 2016/02/17 09:07
  • カテゴリー:make:

 さて,電子負荷キットがめでたく完成し,我が家の測定器戦列に加わったわけですが,この時同時に同じお店から,「標準電圧発生器」なるものを買ってありました。

 これ,キットでも部品セットでもなく,完成品です。透明なアクリルで出来た高級感など全くない筐体で,当然のように中国製なのですが,なんと4000円もする高級品です。

 なんでそんなものを,と思われたかと思いますが,その名の通り,標準電圧を発生させる,いわばモノサシです。

 実はこれ,なかなかこの値段では手に入りにくいものです。

 電圧というのは身近な数値で,乾電池は1.5Vですし,コンセントの電圧は100Vです。で,それを測定する機材としてテスターがあり,電子工作に興味を持てば,まず最初に手にする測定器だったりするので,初心者の頃からとにかく電圧だけはどんどん測定することになります。これはもう大昔から変わりません。

 初めてのテスターを手に入れて,大喜びでそこら中の電圧を無闇に測定しまくった経験を皆さんもお持ちかと思いますが,その後テスターがもう1台増えると,新しい疑問が吹き出します。

 そう,2つのテスターの示す値が違うのです。

 どっちが本当だ?

 いやどっちも間違っているのでは?
 
 とりあえずもう1台テスターを買って試して・・・なんてことを長年繰り返して,気が付いたら身の回りはテスターがゴロゴロしているわけですよ。困った事です。

 そんなあなたに,これ,標準電圧発生器です。

 非常に高精度な電圧を安定して発生させるこの装置を使って,テスターの数字が正しいかどうかを確かめてみるのです。標準電圧に比べて大きくずれていたら,そのテスターは信用出来ないということになります。

 とはいえ,そんなに高精度な電圧なんて,簡単に手に入るのでしょうか?そう,簡単には手に入りません。まず,絶対的な精度があります。同じ5Vといっても,5Vと5.00000Vとでは,全然意味が違います。

 仮にその精度を実現した電圧があったとしても,それがずっと,長い間変化しないように作ることはとても難しいことです。電池だって,使わなくても勝手になくなってしまいますよね。世の中,変わらないことがどれほど難しいことか。

 加えて,気温や湿度,気圧の変化だって電圧に影響を与えてしまいます。もしかしたら強力な電磁波(電波)でも変動するかも知れませんし,その電圧を発生させる仕組みによりますが,元々の電源の変動が影響することだって考えられます。

 高精度になってくれば,地磁気の影響だって受けるだろうし,もっといえば人体の影響だって避けられないでしょう。もう,泥沼です。

 まあ,さすがにそこまで気にし出すともう切りがないのでそこそこにするとしても,それでもやっぱり大変です。こういう,絶対精度と経年変化を抑えた「標準電圧」は,電圧計の校正などに使われますが,とても高価ですし,精度の維持管理がとても大変です。

 これを,そこそこの精度でいいからという制約で,モノリシックICにしたものがあります。そう多くはないにせよ,機器に組み込んだ高精度な標準電圧が欲しい時だってあるんですね。

 そのICとしてよく知られたものが,アナログデバイセズのAD584です。なかなか高いICですが,今回の標準電圧発生器は,このICを使っています。だから4000円でも安いと思って買いました。
20160217092101.jpg
 さて,届いてみると,透明アクリルの板きれを組み合わせて作ったオモチャのような外見と,そんなに高級な部品を使っていない感じがして,どうもあやしい感じです。裏側には電圧の実測値がボールペンで書かれています。どれどれ・・・

 気温21℃で,測定日時は2015年とだけ書かれています。それぞれの実測値は,

2.500V・・・2.50165V
5.000V・・・5.00302V
7.500V・・・7.50454V
10.00V・・・10.00533V
20160217092100.jpg
 これが,シールに書かれた日時に,彼らの34401Aで測定された電圧です。その34401Aが十分な精度を持ち,管理されているのであれば,この標準電圧発生器の電圧もそれなりに信用出来るというわけです。

 さて,うちのテスターどもを確かめる前に,あらためてこの標準電圧発生器を考察してみることにします。

 まず,心臓部のAD584KHですが,メタルCANパッケージで,精度は2.500Vで±3.5mV,5.000Vで±6mV,7.500Vで±8mV,10.000Vで±10mVという仕様になっていて,2ランクあるAD584のうち上位ランクになります。
20160217092102.jpg
 温度安定性については,0から70℃までの範囲で15ppm/℃。いやーやりますね。なになに,レーザーウェハトリミングで出力レベルと温度係数を調整ですか,むむー,しびれますね。

 私の手元にある標準電圧発生器の誤差は,現地で測定された34401Aが誤差ゼロと仮定すれば,2.500Vで+1.65mV,5.000Vで+3.02mV,7.500Vで+4.54mV,10.000Vでは+5.33mVです。いずれもスペック内に入っています。

 ちなみに今日現在の某部品通販会社の価格は1個で3633円,メーカーの100個時の価格は18.03ドルです。これが完成品でしかも実測値つきなら4000円というのは十分安いです。

 AD584KHはメタルCANパッケージで,プラスチックのAD584KNとスペックを比べても,同一です。ではわざわざなんでメタルCANを用意するのか,と言う話なんですが,これはもう長期信頼性と堅牢性が気になる方向け,です。

 メタルCANパッケージは溶接で封止するため,完全な防湿が可能です。半導体は,素子の酸化や劣化が問題となってメタルCANパッケージが使われていた時代が初期にあったのですが,その後プレーナプロセスの登場で酸化や劣化をほぼ無視できるようになり,安価なプラスチックパッケージに移行しました。

 ただ,このプラスチックというのは水分を通しますので,半導体は湿気に晒されることになります。それでもほとんど影響がないのですが,ごく僅かに性能を変化させるため,その変化が問題となるような高精度な世界では,長期間にわたる信頼性を確保するために,こうしてメタルCANパッケージが選べるようになっています。

 もちろん,光,電磁波,機械的衝撃,磁気などにも強いことは言うまでもありません。ただ,このパッケージはピンが細くて長く,曲がりやすいこともあって,自動で基板に取り付けできません。大量生産品には使えないんですね。

 さてさて,ICの性能が高ければそれでOKかというと,そんなに甘い世界ではないわけで,ここまでくると実装や回路の工夫が,精度を左右します。

 まず,電源です。電源をACアダプタなんかから取ってしまうと,電圧の変動やノイズといった電源品質が,精度の足を引っ張ります。理想的には電池ですが,その電池だって乾電池では内部抵抗が高いし,電圧が安定しません。

 そこで,内部抵抗が低く,電圧変動の小さい電池として,リチウムポリマー2次電池が使われています。3.7Vで580mAhと,この回路では大きすぎる容量を持っているのですが,あまり小さいと使い勝手も悪いし,電圧変動も出てくるので,これを選んだのかも知れません。ちなみに充電は外部から5Vを供給することで行います。充電中は動作しません。これも,設計者がよく考えて作った結果だと思います。

 1つのボタンで電源と電圧切り替えを行うのですが,当然マイコンが入っています。また電池の充電回路も入っているので,システムとしてはそれなりに完成されていて,電圧だけ出ればそれでいいやという適当な作りにはなっておらず,ちょっと感心しました。

 些細なことですが,電圧表示のLEDに赤を使っているところもうれしくて,中国製にありがちな超高輝度なギラギラした青色なんかを使っていると,もうゲンナリです。

 次に基板です。両面基板ですが,しっかりとGNDを取ってありますし,配線も太く,それなりに考えられていると思います。職人が引くもはや芸術的とも言える高精度アナログ回路のパターンというわけではありませんが,それはもう高望みでしょう。

 面白いのは,AD584KHの周りに3mmくらいの穴が8個あいていることです。これ,おそらくですがパッケージの周囲の風通しを良くすることで,IC自身が発生する熱を放熱しているんではないかと思います。

 残念な所があるとすれば,出力端子でしょうか。普通のバナナプラグが刺さるような安物の端子で,配線もラグにハンダ付けです。せっかく高精度なものを使っているのだから,ここは圧着か直出しでしょう。

 それと,基板の洗浄がちょっと不足です。AD584KHの足下に,白いフラックスが残っています。こういうのが案外,精度を落としたり長期的な信頼性を悪化させたりするんです。

 とまあ結局の所,校正され管理された正確な電圧計で測定した値を,温度や経年に対して出来るだけ維持して持ち歩くための「箱」がこの標準電圧発生器です。絶対精度で一喜一憂するよりも,変化しないことを評価したいです。

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