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保育園という感染経路

  • 2013/09/17 09:33

 今年の4月から娘が保育園に通うようになりました。いつも手を伸ばせば届く範囲にいた親が,全然知らない人と入れ替わる現実を1歳の娘が理解出来るとは思えず,まさに断腸の思いで保育園に入れたわけですが,当の本人はどこ吹く風で,保育園の先生に甘えたり,お友達と遊んだりと,それなりに楽しくやっているようです。

 保育園というのは家族の次に経験する集団です。肉親という枠を越える初めての機会になるわけですが,わずか1歳にしてこれから死ぬまで続く社会生活がスタートするのかと思うと,うれしいやらかわいそうやら,複雑な気持ちです。

 予想されていたことでしたが,人が集まれば感染症にかかる,と言う現実に直面するのも,保育園による社会生活デビューによるものでした。とはいえ,多くて1,2ヶ月に一度くらいの話だろうと思っていたのです。なぜなら,私がそうだったから。

 ところが現実は違いました。まさに2週間に一度の割合で病気になります。治った頃にまた新しい病気をもらってくるのです。ずっと病気をしている感じさえしますし,平熱で元気でいることが,特別な事なのだという事を,無意識に思い込んでいることに気付くほどです。

 我々両親にとって大きな想定を越えた話というのが,娘がかかった病気が,親にもうつってしまうことでした。子供病気は大人に感染すると,得てして重症化します。そういう話は耳にしていましたが,私も嫁さんも健康なので,自分達には関係ないやと思っていたわけです。

 ところが,とんでもない。子供と同じ回数だけ病気になってしまい,それがことごとく重症化して日常生活に大変な支障を来すのです。

 私も嫁さんも,体調不良で会社を休むなどということは年に一度か二度だったのですが,子供の病気で保育園に預けられずに休む場合と,自分達が出社出来ずに休む場合の両方の理由によって,これほど会社を休むことになるとは思ってもみませんでした。

・4月末・・・引っ越し後初めての連休で,一気に片付けようと思っていたのに,マイコプラズマ肺炎に感染。高い熱が続き,喉の腫れが気管支に移行して,咳が止まらない。喉の腫れも治まったと思えばまた再発するという具合に,ちっとも治らない。

 激しい咳のため,私は肋骨を折ってしまい,寝返りを打つこともままならない状態に陥る。すでにマイコプラズマはほとんどが耐性菌と言われていて,効き目のある抗生物質は限られている。娘と嫁さんにはまだ効き目のある抗生物質が出て比較的早くに治ったが,私だけなぜか古典的な抗生物質ばかり処方され,ちっとも効かないまま2ヶ月が経過,薬による症状改善とは違う,緩やかな治り方から自然治癒したもよう。

 体重が4キロ減る。


・7月初旬

 とても暑い日に,娘が家の外で少しだけ遊んでいたが,その日の夜にぱーっと39度近い発熱。ぐったりして動かないので,熱中症の疑いがあると,エアコンをきつめにしたところ,熱が平熱近くになり,元気を取り戻した。

 ところが翌日,やはり39度近い熱を出してしまい,ぐったりするので病院へ。溶連菌に感染しているということが判明。またも抗生物質の世話になる。

 そして案の定,私もこれに感染。40度近い熱が出て,喉の腫れと咳が続く。完治には2週間ほどかかる。せっかく2キロほど戻った体重が3キロ落ちる。


・8月中旬

 そして8月のお盆前,またしても娘が39度を超える熱を出した。もういちいち慌てないが,原因だけははっきりさせようと,病院へ。咳もあまりひどくなく,ぱっと見た目に症状が出ていないので首をかしげていたら,なんと手足口病。

 おりしも,前日のニュースで,東京で大発生中といっていたところ。うちも人並みだなあと安心したのが悪かったのか,私にまた伝染。

 大人の手足口病は地獄とは聞いていたが,まさかこれほどとは。家庭崩壊が危惧されるほど,社会生活に支障を来す上,精神的にも追い込まれる,本当に恐ろしい病気。

 手足口病は,抗生物質が効かず,特効薬もないため,症状を抑える対症療法で安静にして自然治癒を待つしかないが,子供は数日で治る。

 しかし,大人は強烈で,まず40度近い熱が2日ほど続き,以後は1週間ほど38度台の熱。その後37度台の熱が残る。かなりしんどい。

 その名の通り,手足口に発疹が出る。幸いかゆいということはなかったのだが,口というより喉に発生した炎症により,食事はおろか,水を飲むこともあくびをすることも困難になる。

 暖かいもの,塩気のもの,かたいものは全く口に出来ず,しばらくの間昼は焼かない食パンに潤滑目的のマーガリンを塗ったもの,夜は常温の素うどんだけの生活を続ける。ちなみに朝は食べない。そのうち口から出血。

 その上,足の浦に出来た発疹が強烈に痛み,壁伝いに歩かねばならないほど。しまいには足から出血。

 ようやく発疹が引いてきたのは,発症から2週間ほど経過してから。発疹のあった皮膚がぼろぼろと向けて,剥がれる。足の裏も同様だが,1mmくらいに分厚くなった皮がむけて床にまき散らす羽目になる。見た目にも汚く,不衛生で,風呂にもしばらくは入れず。休日も靴下をはいて過ごすしかない。

 ようやく治まったのは,9月上旬。2キロ戻った体重は3キロ減った。
 

 ということで,4月下旬から8月下旬までの4ヶ月間のうち,病気をしていた期間は実に3ヶ月以上。健康でいられたのは,3週間ほどでした。この間に引っ越し荷物を片付け,ジャンク測定器を修理し,写真の現像をして印刷をしていたわけですから,我ながらよくやったものだと,感心しました。

 そもそも,どうしてこんなに簡単に感染し,しかも重症化するのか,そこが問題です。もともとそんなに体が丈夫な方ではありませんでしたが,今からこんなでは,年寄りになってからすぐに死んじゃうなあと,ため息が出ます。ま,それもありですが。

 それに体重が落ちてしまって,ベルトが一番きついところでも緩くて,ズボンが落ちてしまいます。持久力もなく,無理が利かないので,毎日毎日帰宅すると,大した仕事もしていないのに,クタクタになっています。

 今の体重は,大人になってから2番目に軽い体重です。これではいかんと,出来るだけ食べるようにしているのですが,なかなか戻りませんし,戻った分はすぐに病気でふっとんでしまいます。

 はっとするのは,病気をして一番しんどいのは,娘自身であることに気付くときです。生まれてからずっと家にいて,衛生的に管理された空間で病気をすることもなく生活していたのに,保育園にいって他人と接触するようになると,まさに無力なネズミに猫が襲いかかるかのように,無防備な娘に病気が襲いかかります。

 こうして免疫を獲得していくし,病気に対する慣れも手に入れるんで,このプロセスはとても大切です。そうした気持ちで病気と闘う娘を見ているだけでは,きっと神様もお許しにならないのでしょう,その苦しみを味わえと,私にも同じ病気を体験させるのでしょうかね。

 そして,こんなに苦しい思いをしたのかと高熱にうなされつつ,絶望の淵にたたずんだり,普段ならなんでもないパンの耳に「こんなかたいもん食えるか!」と怒ってみたり,発疹が痛くて歩けない状況に不自由したりと,娘の病気の追体験をする機会に恵まれました。

 娘はまだ満足に話すことが出来ませんから,痛いことも苦しいことも,我々には伝えることが出来ません。だから,この追体験というのは,とても貴重なものだったのかも知れないです。

 うーん,こんなこと,今だから言えることですね。特に手足口病にかかっているときは,本当に地獄でした。

 これから,どんな病気をもらってくるのかと思います。3歳くらいまでには落ち着くと聞いていますが,まだ1年以上もあるんですよね。ほんと,死んじゃうんじゃないかと,まじめな話,怖いです。

番外編 アッテネータをつくってみたのと,VP-7722Aのダイオード交換

  • 2013/09/13 08:37
  • カテゴリー:make:

 オーディオ用のステップ式アッテネータは,ちょっとした小道具ですが,あると便利,ないと困るものです。0.1dB単位である必要はなくて,3dBくらいでも十分です。

 1つ作るかなと思っていたところへ,知人が75Ωのステップ式アッテネータをくれました。テレビのアンテナの検討に使うものだったらしく,しっかりしたケースに6つほどスイッチが付いていて,ケースの両端には75ΩのBNCコネクタが付いています。

 私は高周波はやりませんし,まして75Ωですから,これは使い道がありません。そこで,600Ωのアッテネータに作り直すことにしました。

 T型アッテネータの式に当てはめ,3,6,9,10,20dBの定数を求めます。ぴったりの値はありませんので,市販されている金属被膜抵抗を組み合わせて出来るだけ近い値になるようにしていきます。

 また,出力側に接続した機器のインピーダンスが高いときのために,600Ωで終端出来るよう,ターミネータも取り付けて,スイッチでON/OFF出来るようにしておきます。

 計算間違いとハンダ付け間違いさえしなければ,まず確実に動作するものですの,あいた時間の気晴らし程度でさっさと組み立てます。

 うまい具合に,ちゃんと動作も確認して,めでたくステップ式アッテネータが完成しました。

 自作の歪率計に内蔵した発振器は,出力振幅によって歪率が大きく変わります。一番歪率が小さくなるようにした上で,このアッテネータで調整が出来れば,良い測定結果が得られるはずです。

 しかし,VP-7722Aを手に入れて運用している今,もう必要がなくなってしまいました。

 とはいえ,なにかと便利に使えるし,これを持っていれば「おお,わかっとるなこいつ」と思ってもらえるので,見栄を張るのにも好都合。買えば結構な値段がしますし,気になっていた事が片付いて,良かったです。

 次にVP-7722Aのダイオード交換のお話です。

 VP-7722Aのアナライザ基板には,被測定対象を接続するオーディオ入力がつながります。ここに保護ダイオードが入っていて,燃えた基板はこのダイオードが壊れてショートしていたことを,以前書きました。

 同じ物と交換すべきですが,ちょっと変わったダイオードなので1N4148Aというごく普通のシリコンダイオードを代用したところ,小さいレベルの時と周波数の高いときで,歪率が悪化する傾向がありました。

 これが気になっていたので,出来れば同じダイオードに交換したいなと思っていたところ,比較的安価に手に入ることがわかりました。
 
 先日はさらっと書いたのですが,ガラス管に入ったダイオードには部品の名称もメーカーも記載がなく,回路図も手に入らない状況で,どうやって部品を特定したかが結構大事な話です。

 これは,海外の部品屋さんに,パーツリストが掲載されていたことで,解決しました。PDFになっているわけではなく,WEBに直接書かれていたんですが,もともとサービスマニュアルから引っ張ってきたもののようで,修理に際して大変参考になりました。

 VP-7720Aの回路図を手もとに置き,これとVP-7722Aのパーツリストと見比べて,VP-7722Aの回路を推測していきます。パーツリストにあるダイオードを調べると,ちょっと見慣れない1SS101というのが目に付きます。

 それで,1SS101ってどんなやつ?とgoogle先生に聞いてみると,簡単な仕様が出てきました。ここにある外形図とカラーバンドを確認すると,どうやら今回壊れた入力保護ダイオードがこれに該当することが判明しました。

 回路図を入手していたVP-7720Aでは,入力保護にMA150という普通のシリコンダイオードが使われていたんですが,面白いですね。これはやはり,高級機であるVP-7722Aならでは,なんだと思います。

 ところが,1SS101って,その用途にUHFのミキサ用とあるショットキーダイオードなんですね。HFくらいまでなら,ゲルマニウムダイオードの代わりに検波やミキサに使われたものでもあるらしく,アマチュア無線機にも使われた実績があるようです。

 高耐圧,高速,低歪みを特徴としている,なかなか個性的なショットキーダイオードです。本来,1SS101そのものが製造中止になっても,これに代わるものがありそうなものですが,その個性故かなかなかありません。

 スペックを見ると,逆耐圧70V,順方向電圧0.41V,順方向電流は15mA,端子間容量は2pFです。耐圧が高いわりには,容量が小さいというダイオードで,なかなか個性が強いやつです。海外製をぱっと探すと,1N5711とかいうのが該当しそうです。

 これが1N4148Aなんかだと,耐圧は75Vですが端子間容量は4pFと倍もあります。信者すらいると言われるベストセラーの1S1588だと耐圧30V,端子間容量は3pFと,実に凡庸です。またVP-7720Aに使われていたMA150ならどうかというと,耐圧は35V,端子間容量は2pFです。

 つまりあれです,VP-7722AはVP-7720Aなんかと同じ性能を維持しながら,入力保護の耐圧を高める必要があって,1SS101と採用したということですね。

 MA150をとりあえず使えば良かったように思いますが,またこれも同じ物は手に入りにくくて,困ります。ということで,1SS101が70円ちょっとで手に入るようですので,早速注文します。

 届いてみれば,もう1枚のアナライザ基板で見慣れた,大きさ,形,カラーバンドです。

 早速VP-7722Aを分解し,ダイオードを交換します。気持ちがいいものです。

 そして測定です。レベルは左右でほぼ一致です。周波数やレベルによる差はほとんどありません。歪率は,1kHzの2Vrmsで0.00001%前後の差が出ることがありますが,ほとんどなしです。2Vrmsなら,80kHzくらいまで差はほとんどありません。レベルを小さくした場合でも,以前ほど大きな差にはなっていません。

 これで修理完了です。同じ部品に交換したんですから,当たり前といえば当たり前です。しかし,1SS101という部品の特定が出来なかったら駄目ですし,特定出来ても手に入らないとアウトです。外し品を使うことも,部品に名称が書かれていないのでは難しいものがありますから,新品が手に入って本当に良かったと思います。

 たかだかダイオードでこれだけ結果が違ってくるんですね。しかもショットキーダイオードという,非常にプリミティブな半導体でです。奥が深いなあと思います。

 しかし,こういうダイオードが製造中止って,なんとかならんもんでしょうか。

AG1022を買ってみた

  • 2013/09/12 09:31
  • カテゴリー:make:

 ファンクションジェネレータとは,なんと魅惑的な言葉でしょうか。functionとは機能ではなく,数学の言葉で「関数」です。それを発生させる装置というのですから,なんだか凄そうな気がします。

 発振器と言えば正弦波を発生させるRC発振器だった時代,矩形波やパルス波,三角波やらのこぎり波(当時はランプ波といっていたようですが)を発生させることは,特殊なことでした。ですから,それ専用の装置が用意されるのは当たり前の事だと思います。

 そもそも,正弦波は高調波を含まないのが理想です。高調波を含まない波形を使うことで,歪率や周波数特性を測定出来るのです。

 一方で,高調波を含んだ信号というのは,正弦波とは使い道が違いますから,求められる性能も違います。互いに置き換え出来ないわけです。

 かつて,ファンクションジェネレータといえば,それこそHPの高級なものか,あるいかインターシルの定番ICである8038を使った簡単なものか,どちらかでした。8038は三角波を元に,ダイオードによる折れ線近似を使ってなんちゃって正弦波を作り,また同じ三角波からコンパレータを使って矩形波を作っていました。

 正弦波の歪率はおよそオーディオに使えそうなものではなく。数%にもなるようなものでしたし,三角波だって対称性やリニアリティに問題があって,使い物に使い物になりそうなのはせいぜい矩形波くらいのものという印象があります。

 かくいう私も,8038を使ったファンクションジェネレータを自作したことがあり,バッファアンプやアッテネータも真面目に作ってあったのですが,肝心の発振源が今ひとつで,何に使うことも出来ずに,お蔵入りしました。

 以来,ファンクションジェネレータは私には不要となったのです。

 そんなこんなで,2465Aの調整を行うのに,信号源が必要になりました。矩形波と正弦波さえあれば事足りるので,RC発振器を使って済まそうと思っていました。しかし,結構頻繁に出力電圧や周波数を切り替える必要があるのと,10MHz程度の高周波まで必要になりそうだったことで,作戦の練り直しを迫られました。

 せっかくですから,安いファンクションジェネレータを買うか,そんな風に思って探してみました。最近は3万円で実用的に使えるオシロスコープが買える世の中です。ファンクションジェネレータだって,それなりのものが安く買えるようになっているに違いありません。

 果たして,安いオシロスコープで有名な中国のOWONというメーカーから,約4万円でファンクションジェネレータが出ていることが判明しました。それがこのAG1022です。

 新しい製品でもあり,あまり詳しい話は出てこないのですが,最新の波形発生器らしくDDS方式,2チャネル独立出力,サンプリング周波数130MHz,出力周波数の上限は25MHzで,振幅の分解能は14ビットです。

 発生出来る波形は正弦波,矩形波,三角波(のこぎり波),パルス波,その他特殊な関数,ユーザー定義,DCで,出力インピーダンスは任意の値を設定可能です。50Ωのインピーダンスでは,10mVppから10Vppまで出力できます。

 案外ありがたいのは大型LCDとテンキーを搭載していて,どんな波形が出ているかがぱっと分かること,各種パラメータを簡単に設定出来ることです。昔,HPのファンクションジェネレータを使ったことがありますが,3桁や4桁の7セグLEDにジョグダイアルという組み合わせは,操作がとても面倒臭かった記憶があります。

 DDS方式ですので,周波数安定度や波形の品質も悪くないでしょうし,RC発振器とSSGの間を埋める発信源として有効に活用出来そうです。お値段は36800円。ファンクションジェネレータとしては激安ではないですが,性能を考えると安いです。

 よし,買うか。

 amazonで買えてしまうところが,なんとも凄い時代になったものです。

 さて,届いたAG1022ですが,怖いのは欠品と初期不良です。ちゃんと確認をしますが,どうやら大丈夫なようです。

・外観

 最近の中国製品はあれですね,野暮ったさというか,古くささがなくなり,随分スマートになりました。なんでも貫でも青色のLEDを使って,まぶしいくらいに光らせていた品のない製品が多かったのですが,AG1022はそれなりに上手にLEDを使っていて,使い勝手を向上させているように感じました。

 キーはサイズも配置も悪くないし,全体の色合いも好印象です。上ケースが曲がって取り付けられていることは少々残念で,このあたり,細かい事が気にならないおおらかな人が作った(検査した)んだろうなと思います。


・性能

 カタログに書かれているスペックに,とりあえず偽りなしです。さすがDDSで,周波数を切り替えた時にも安定していますし,波形そのものも綺麗です。正弦波はもしかするとオーディオに使えるかもしれないと思って歪率を測定しましたが,0.01%ということで,使えなくはないんだけども,正直厳しいというレベルです。


・操作性

 操作性は特に良くもなく,悪くもなくです。慣れれば全然不自由しませんし,昔の中国製品によくあった,理不尽なUIもありません。ただ,LCDは今どきSTNで,視野角が狭すぎです。できればTFTにして欲しかったなあと思います。

 精度

 実は,周波数精度がスペックとして出ていないんですね。水晶発振子の精度がそのままと考えれば,50ppmや20ppmくらいだろうと思いますが,周波数を測定してみるともうちょっと悪い感じです。揺らぎは少ないのですが,絶対精度が今ひとつです。

 同じ事は振幅にも言えて,0.1%くらいの誤差は当たり前に出ています。

 いずれにせよ,誤差や安定度の規定がないものは,測定器ではありません。AG1022はその点で,測定器として扱うことは残念ながら出来ないです。

・面白い事

 基本的な関数だけではなく,ちょっと面白いものが入っています。heartという関数は,オシロスコープで見るとハートマークが出てきます。これは,高い周波数の矩形波の振幅をうまく設定し,ハートマークになるようにしているものです。同じ仕組みでcircleという円を描く関数も用意されていました。

 
 書くことがあまりないんですが,そもそも簡単な機械ですので,まあこんなもんでしょう。なにより,2465Aの調整が出来る事が大事です。

 このシリーズの2回目に書きましたが,結論から言うとAG1022を使って2465Aの調整はとりあえず出来ました。AG1022は振幅方向の精度が今ひとつな感じがあるので,2465Aも精度が出ているとは思えませんが,まあアナログオシロの調整ですので,そんなに厳密でなくてもよいと思っています。

 これが,ちゃんとしたメーカーのファンクションジェネレータなら,精度も一応管理されているでしょうから,2465Aの調整結果も不安のないものだったと思いますが,まあそれなりの金額がしますので,これはこれでよいことにします。

 何度考えてもそうなんですが,アマチュアがファンクションジェネレータを必要とするシーンって,あるんでしょうかね。AG1022は独立した2出力がありますので,位相をずらした正弦波を発振させたり,2つの周波数を合成したりと,いろいろ使い道はありますが,それでも特殊な話です。

 これよりも,歪率の低い正弦波発振器の方が役に立つし,矩形波が欲しい時は別にタイマICの555でさっさと作ってしまえば良いだけです。それに,オーディオ帯域で良ければ,今はPCを使ってどんな波形でも作る事ができますし。

 AG1022の上位機種では,変調機能があるのでSSG代わりに使えるかも知れませんが,中古でSSGが2万円ほどで買えることを考えると,ファンクションジェネレータで実現されても微妙な感じしかしません。

 そんなわけで,ファンクションジェネレータを買うのであれば,基準信号になるくらい精度の良いものを買うと便利でしょうし,そうしたものが予算的に買えないのであれば,もう買わないでおくのが一番いいんじゃないかと,やっぱり思います。

 とはいえ,2465Aの調整では,本当に楽をさせてもらいました。垂直軸とトリガの調整では,電圧を一発で指定通りに変更出来ることは,調整を効率的に進めるのに不可欠でした。

 これが3万円くらいなら,まあおすすめ出来るんですけど,4万円だと,ちょっと厳しいかなというのが,私の感想です。1CHでもいいから,29800円のモデルが欲しいですね。

やっとまともなFMステレオ標準信号

  • 2013/09/11 09:51
  • カテゴリー:make:

 絶滅して久しい「高級FMチューナー」を愛でる一部の奇特な人々にとって,その調整が経年変化でずれてしまったり,故障してしまって初期性能が出なくなってしまうことほど,悩ましいものはありません。

 調整は10年もすれば大きくずれるものですし,ずれてしまえば強烈なカタログスペックを誇る高級FMチューナーも,ラジカセ以下に成り下がります。これは不本意で悔しいことに違いありません。

 昨今,インターネットでFMラジオを聞くことが出来ますので,FMチューナーの役割はもう終わったかなと思う所もありますが,100kHz近い帯域を効率の悪いアナログ変調で贅沢に使ったFM放送は,本気になればビックリするほど高音質です。

 ただ,アナログですので,条件が揃わないと音質の劣化が激しいため,ラジオ=音質が悪いという一般的なイメージは,変わらないのではないかと思います。

 そんなわけで,私もパイオニアのF-757というチューナーを若いときに買って現在も保有する以上,ベストな状態を維持するために必要な保守は,もはや義務となったと自覚しています。

 そこで初めてオークションでジャンク測定器(略してジャン測)に手を出したのが,SSGであるVP-8191Aです。これは一般的な無線機の調整に使う事を目的にしたSSGのようで,AM変調とFM変調がかかり,下は90kHzくらいから,上は130MHzくらいまで発振できるものです。

 一応シンセサイザ方式ですので,それなりの精度が出ているものだと思いますが,FMチューナーの調整に欠かせないステレオ変調機能が搭載されておらず,VP-8191AだけではFMチューナーの調整に使えません。

 にもかかわらず手に入れたのは,手頃で程度の良さそうなSSGにあたる可能性がそうそうあるとも思えないことと,内蔵のステレオ変調機の性能は高級FMチューナーの調整にはちょっと物足りないものが多いこと,それにモノラルの段階ですでに大きく調整がずれている私のF-757にとっては,VP-8191Aで調整出来る範囲でさえも,大きな成果を得ることが出来そうだという期待があったからです。

 この春に手に入れたVP-8191Aで調整を行ったF-757は,大きく調整がずれていることがわかったのと,可能な限り再調整を行い,かなり状態は良くなりました。しかし,FM復調の調整が出来ないことは大変フラストレーションがたまりますし,実はFMステレオの復調は音質に大きな影響を与えるので,やはりちゃんと調整出来ないとつらいのです。とにかく,現在の状況もわからないというのは,気持ちが悪いです。

 ロームのFMステレオトランスミッタICを使って,簡単な変調器を作って見ましたが,あまり性能は出ず,気休めに過ぎません。せっかくオーディオアナライザも手に入れたことですし,VP-8191Aを買うときにも「そのうちFM変調器を買えばいいや」と思っていたこともありますから,オークションでの出品状況を見てみました。

 すると,安いものが見つかりました。VP-7635Aです。

 VP-7635Aは,VP-7633Aというこの時代の標準的なFM変調ユニットに対し,北米や欧州で使われていた渋滞情報をFMラジオで伝達する方式をチェックする機能が付いている,上位機種です。

 FMステレオ変調ユニットとしてはVP-7633Aと全く同じように使う事が出来るのですが,この時代のものですのでそんなに突出した性能があるわけではありません。しかしSSGに内蔵されたものよりはずっとよい性能を持っていて,歪率0.01%,セパレーション66dB以上,S/N90dB以上となっています。

 これをVP-8191Aと組み合わせると,一応高級FMチューナーを綺麗に調整出来そうです。欲しい。

 ジャンクに手を出すのはオーディオアナライザで懲りたはずですが,3000円ほどでしたので入札しておいたところ,うまく落札できました。

 届いたものを見てみると,やっぱり汚いです。なんでこうも汚いんですかね。

 通電して一通り試して見てから,分解して水洗いをします。気持ち悪くないように磨いたら再度組み立てていきます。

 ただですね,これ,ぱっと見ただけでは使い方がさっぱりわからないんですよ。今まで触ったこともないような測定器ですし,FMステレオの仕組みをちゃんと知らないといけないわけですから,動作を見て正常か壊れているのかを判断することも難しいです。

 説明書があれば勉強しながら使えるようになるのでしょうが,そんな気の利いたものはありません。手に入れたのは当時のカタログくらいのもので,搭載された機能が簡単に紹介されているだけのものです。

 面白いのは,VP-7635AはGP-IBを搭載しているのに,マイコンを内蔵していないことでしょうか。CPUなんてそんなに高価なものでもなかったし,安い製品ではなかったことを考えると,どうしてCPUを使わなかったのか疑問ですが,まあそれはいろいろ事情があったんでしょう。

 ですから,電源を入れれば以前の状態に復帰せず,必ず決まった状態からスタートしますし,初期設定はすべてフロントパネルから触ることが出来る半固定抵抗です。GP-IBについてもリスナのみで,簡単なものしか実現出来ていないようです。

 とにかく,その初期設定を行わなければ調整作業に進めません。ほとんど唯一のヒントとも言えるVP-8191Aの説明書を見ながら,なんとか使えるようにします。

 ところで,FMステレオ放送の原理は,左右のチャネルの信号の和信号と差信号を送信し,受信したらこの2つの信号から左右の信号を分離するというものです。

 なんでそんなことをすんの?と思うでしょうが,そうしないとモノラルしか受信出来ないラジオで,正しい音声が出なくなってしまいす。

 L+Rというのはモノラルの信号ですから,モノラルのラジオでこれがそのまま再生されるように電波に乗せる信号を作っておけば大丈夫。一方ステレオのラジオの場合は,L+RとL-Rを加算するとL信号が,引き算すればR信号が出てきます。

 ミソは,L-Rの信号をどうやってモノラルのラジオに影響を出さないように,また現在の放送システムと互換性を取りながら一緒に送信するのか,です。そこで考え出されたのが,現在のFMステレオ放送の方式です。

 2つの信号の和(L+R)と差(L-R)を作り,和信号は通常の音声として,差信号は38kHzのキャリアで振幅変調をかけ,しかもキャリアを抑圧します。DSBという変調方式ですね。

 そしてキャリアの半分の周波数である19kHzをパイロット信号として用意しておき,この3つを合成してコンポジット信号として,電波に乗せます。

 コンポジット信号は,モノラルのFMラジオの帯域にL+Rが存在するので,そのままモノラルラジオでも音を出すことが出来ます。L-Rは38kHzで変調されたので,38kHzというずっと高い周波数を中心に,低いところと高いところの両方の側波帯が出来ます。この結果,23kHzから53kHzまでがL-Rの信号となります。

 そしてここに19kHzのパイロット信号がのっかります。これがFMステレオのコンポジット信号の正体です。

 ここで,モノラルのFMラジオならあまり気にしなくても済んだ,音声信号の周波数帯域に気をつけなくてはいけないことに気が付きます。少なくとも19kHzのパイロット信号にぶつかってはいけませんから,音声信号の周波数帯域は19kHz以下に制限されます。実際には15kHz以上はカットされます。

 これはもう1つ理由があり,38kHzで振幅変調をかけるL-Rの帯域制限です。38kHzの両側に±15kHzの側波帯が出来るのですから,低い方が19kHzのパイロット信号にぶつかってはいけませんし,高い方も他の信号にぶつかってしまうとまずいのです。

 この両方の理由から,音声の周波数帯域は15kHzまでに制限されているわけです。

 ついでにいうと,その昔,ドルビー方式のノイズリダクションを搭載したカセットデッキで,マルチプレックスフィルタというローパスフィルタを搭載するものが高級機種では多かったのですが,これは周波数によって録音レベルを可変して聴感上のノイズを減らすドルビー方式のノイズリダクションが,19kHzのパイロット信号によって誤動作することを防ぐ目的で用意されていました。

 せっかく20kHz以上を録音できる高級機種で,高域をカットするのはもったいないと思うのは早計で,19kHzのパイロット信号が存在するのはFMのステレオ放送だけで,そのFMステレオ放送は15kHz以上の高域をばっさりカットされているのですから,積極的に使うべき機能でした。

 もっとも,FMチューナー側にも19kHzをカットするフィルタが搭載されているのが普通ですから,あまり実害はなかったのかも知れないし,FMステレオのS/Nがかなり条件の良い場合でも60dB程度だったことを考えると,ドルビーを使う意味がそもそもあったのかどうか,今にして思えば疑問ですね。

 さて,コンポジット信号をのせた電波を受けたラジオでの話ですが,モノラルのラジオの場合は和信号がそのまま再生されますので問題なし。

 ステレオの場合は19kHzのパイロット信号を2逓倍して38kHzを生成,これを元に差信号を復調し,和信号と差信号を加減算して,もとの左右の信号を得ます。この方式をマトリックス式といいます。

 復調の方法にはもう1つあって,19kHzのパイロット信号の2倍の周波数である38kHzを作り,この周波数で復調したコンポジット信号をそのままスイッチングして左右交互に出してやります。

 そうするとあら不思議,38kHzがHighの時とLowの時に,それぞれ左右の信号が出てくるんです。これをスイッチング方式と呼んでいます。

 なんで?と思うでしょうが,この2つは実は同じ事をやっています。変調時に38kHzのキャリアで振幅変調を行って,キャリアを抑圧しましたが,これは平衡変調器を使って実現します。

 平衡変調器というのは,2つの周波数の和と差を出力するものですが,それぞれの周波数は平衡しているので出てきません。そもそも振幅変調というのは,2つの信号の和と差を作る作業ですから,キャリア抑圧まで一緒にやってくれる平衡変調器というのは,とても都合が良いのです。

 ここで,2つの周波数の和と差というのは,2つの信号の積になるという事を,高校の時に習った数学で思い出して欲しいと思います。

 38kHzの信号が+1から-1まで変化するとし,もう1つの信号である(L-R)を平衡変調器に入れると,38kHzに同期して(L-R)と-(L-R)が交互に出てきます。これがFMステレオの信号には含まれているわけですね。そしてこの38kHzに同期して入れ替わっていることが,振幅変調そのものなのです。

 この信号を復調する時には,まず普通にFM検波を行ってコンポジット信号を手に入れます。コンポジット信号には,(L+R)と38kHzで正と負が入れ替わった(L-R),そして19kHzのパイロット信号の3つが含まれています。

 そしてパイロット信号である19kHzを2倍して38kHzにしてやり,この周波数で(L+R)と38kHzで正と負が入れ替わった(L-R)が混じった(言い換えると加算された状態の)コンポジット信号をスイッチングします。

 38kHzが+1になったときには,(L+R)+(L-R)=2L,-1になったときには(L+R)-(L-R)=2Rとなり,混じった信号から左右の信号を分離することができました。

 別の見方をすると,コンポジット信号を,1秒間に38000回のスピードで左右を切り替えて出しているのが,FMステレオです。人間の耳にはこの速度で左右を切り替えられても区別が出来ず,一緒になっているように聞こえるわけです。

 また,この38kHzで左右を切り替えるわけですから,送信時の38kHzとぴったり同期している必要があります。周波数は当然ですが,位相もぴったり合わないと左右の信号が漏れてしまいます。

 こうしたアナログ技術てんこ盛りな信号処理を使った方法は,お金をかければそれなりの性能が出ますが,お金をかけないと全然性能が出ません。高級なFMチューナーの性能がずば抜けていたのには,こういう理由もあるわけです。

 そりゃ,世の中デジタルが歓迎されますわね。余談ですが,このくらいの周波数をデジタル演算で処理する事は,今なら簡単にできます。大体,変調や復調というのは,純粋な数学の世界の話ですから,DSPを使ってもいいし,FPGAで作っても良いのですが,数式通りに実装してやればほぼ理論値に近い結果が得られるデジタル処理を行うことで,究極のFMチューナーが出来る時代です。

 やっと時代が追いついたんですが,悲しいかな,今そんな高性能なFMチューナーに需要はありません。
 
 話が逸れてしまいました。

 それで,FMチューナーを調整するには,日本のFM放送の規格に準じたコンポジット信号を作って,それをFM変調してやらねばなりません。SSGはFM変調をかける機械ですので動作は単純ですが,変調されるコンポジット信号を生成するVP-7635Aは,この規格に従った信号が出るように設定をしなければなりません。

 調べてみますと,日本のFM放送は,モノラル時最大75kHzの偏差で変調されることになっています。つまりこれが100%変調ということですね。

 そしてステレオ時には,主信号であるL+Rと,副信号であるL-Rの合計が90%,19kHzのパイロットが10%でなくてはなりません。75kHzの90%ということは,67.5kHzの偏差です。ステレオ信号をモノラルのラジオで受信すると,モノラルの信号を再生するより,少し音が小さくなるんですね。

 SSGであるVP-8191Aには外部入力端子がありますが,正確に75kHzの偏差で変調できるように,レベルインジケータがついています。OVERとUNDERのLEDが両方消灯するようにレベルを調整して入力すると,日本のFM放送でいう100%変調がかかるようになっています。

 ここまでわかれば,VP-7635Aの初期設定を始める事ができます。

 まず,VP-7635Aの出力レベルツマミを引っ張り,右に回しきります。このツマミは,押し込めば半固定抵抗が有効になり,設定した出力レベルになりますが,引っ張り出せば暫定的に値をツマミで調整が出来るようになります。

 そして,内蔵発振器を1kHzにセットし,変調モードをMONOにします。つまり,ただの1kHzの発振器の状態です。つまりこれが100%変調されると,75kHzの偏差になるわけです。

 VP-7635Aのレベルメータがフルスケールになるように,発振器の振幅を半固定抵抗で調整します。レベルメータはフルスケールで100%になるようよう,目盛りを切ってありますので,直読出来るようフルスケールにあわせます。

 続けて,内蔵発振器をOFFにし,パイロット信号をONにします。そしてNORMというボタンを押して,この時のレベルが10%になるように,半固定抵抗を調整します。ありがたいことに,VP-7635Aはパイロット信号だけ出力しているときには,レベルメーターはフルスケール15%のレンジに切り替わってくれます。

 普段の測定には使いませんが,ついでにパイロット信号のレベルを少し増やした状態と少し減らした状態を設定しておきましょう。+ボタンを押して11%に,-ボタンをおして9%になるように,それぞれの半固定抵抗を調整します。

 さて確認です。パイロット信号をNORMにし,内蔵発振器を1kHzにセット,変調モードをL=Rにします。そうするとレベルメータは100%になっているはずです。なってなければ,故障しています。

 これも普段は使いませんが,変調度が一発で30%になるようにしておきます。変調をMONOに切り替え,REDUCEDボタンを押します。そしてレベルメータが30%になるように半固定抵抗を調整します。

 そして最後に,パイロット信号の位相を合わせます。オシロスコープをX-Yモードにし,Xにパイロット出力,Yにコンポジット出力を繋ぎます。

 そして,変調をOFF,パイロット信号をONにします。この状態で,オシロスコープに出ている斜めの線が,綺麗に1本になるように,SCOPE PHASEと書かれた半固定抵抗をあわせます。この調整は,オシロスコープが最初から持っている位相差を含む,系の位相差を補正するものです。

 次に,内蔵発振器を1kHzに,変調をL=-Rにします。すると画面上にリボンのような図形が出ます。周波数比が1:2の時の図形ですね。

 画面の真ん中に,菱形の部分が出ているようなら,これがなくなって,2つの線が交差するような状態になるよう,PILOTと書かれた半固定抵抗を回します。

 ということなのですが,FMステレオモジュレータにおいて,この調整は一般的なもののようで,後継機種であるVP-7637Aの説明書にも書かれていました。私の場合,PILOTを回しきっても菱形を消すことは出来ず,最も小さくなるところで妥協せざるを得なかったことも記しておきます。

 また,これも面白い事なのですが,VP-7635Aは19kHzを手早く正確に合わせるための,周波数計を搭載しています。METERと書かれたボタンを押すとメーターが周波数計になり,パイロット信号を出力していたBNCコネクタが入力端子になって,ここの周波数が19kHzだとメーターがセンターに来るというものなのですが,入力端子になにも繋がない場合には内蔵の19kHzが校正用に入力されるらしく,SCOPE PHASEが調整済みの場合には,ぴったりセンターに来るのです。

 調整がずれることを覚悟してSCOPE PHASEを回せば,メーターが大きくセンターから外れるのですが,波形を見れば斜めの線が重ならず2本の線になっています。

 偶然かも分かりませんが,周波数計の校正に使うのはSCOPE PHASEで,19kHzのパイロット信号出力と,38kHzのコンポジット信号との間の位相差をゼロにすることで,周波数計の校正が出来る仕組みなんじゃないかと思います。

 それで,PILOTを調整して菱形を消すことが出来ないのは,私のVP-7635Aの不良ではないかと思います。内部を見たのですが,たくさん調整箇所があります。調整位置を示すマーキングから大きくずれている半固定抵抗も多数あり,再調整されたのか,それともでたらめに誰かが触ったのか不明ですが,いずれにしても完調ではないということでしょう。

 きちんと調整を済ませたいところですが,なんの半固定抵抗かわかりませんし,回路図もない,調整方法もわからないので,かえって悪くする可能性が高いです。ここはぐっと堪えて,現状のままでいくことにします。

 後述しますが,F-757の調整の結果,セパレーションは60dB近いのです。VP-7635Aのスペックでは66dBとありますが,F-757は60dB程度ということですし,完璧ではないにせよ,このVP-7635Aを使えば60dBくらいの性能が受信側でも出るという事がわかっているので,変にいじるべきではないと判断しました。


 さて,いよいよ仕上げです。VP-7635Aの出力レベルツマミを押し込み,出力端子をSSGに接続してSSGを外部入力モードに設定,変調をFMにして変調度を75%にします。この状態でUNDERとOVERの2つのLEDが消えるように,VP-7635Aの出力レベルの半固定抵抗を調整します。大体レベルメータの読みで40%くらいのところのはずです。

 これで,VP-7635Aの設定は終わりました。1kHzを発信させ,MONOにしたりL=RにしてもSSGのUNDERとOVERが消えていることを確認してみて下さい。

 私のVP-7635Aは結構怪しくて,発振周波数を切り替えるとOVERになったりUNDERになったりします。まあ,1kHzと400Hzくらいしか使いませんし,実は手に入れたVP-7635Aは改造品で,切り替えられる周波数が標準品とはちょっと違っています。あんまりこだわるのも面倒なので,もうこのままいきます。

 ところで,この内蔵発振器の性能についてですが,周波数はほぼ正確です。歪率は標準的で,0.002%くらいでした。VP-7722Aに比べると悪い値ですが,FMチューナーの調整には申し分ないです。

 では,早速F-757の再調整をしてみましょう。モノラルの調整は前回と同じです。しかし今回は左右同時測定可能なオーディオアナライザに高レスポンスのDMMがあります。実にスムーズに確認と調整が進みます。いいですね,気分がいいです。

 そしていよいよステレオの調整です。F-757はステレオ時に歪率を補正する回路があるそうで,ここを調整して歪率を下げていきます。そしてセパレーションが最善になるように,マルチプレクサの調整もします。

 そして,19kHzの漏れが小さくなるように,キャリアリークが最小になるようにします。

 この結果,以下の性能になりました。

・歪率
 MONO:0.0552%
 L:0.1%,R:0.1%

・セパレーション
 L->R:58.72dB,R->L:57.72dB

・S/N
 MONO:77.2dB
 L:61.4dB,R:61.37dB

・キャリアリーク
 -61.33dB

 おいおい,カタログスペックからすれば,全然ほど遠い結果です。取説に記載されている仕様によると,歪率はモノラルで0.005%,ステレオで0.008%です。一桁以上悪いです。

 セパレーションは70dB,S/Nはなんとモノラルで100dB,ステレオでも92dBとCDなみです。これはいくらなんでも盛りすぎですわね。FM放送のポテンシャルやF-757の回路形式を考えると,これは無理です。

 日本の取説にはありえない神スペック(嘘スペック)が書かれているので無視するとしても,正直で現実的な海外仕様のスペックに対しても実は届いていません。特に歪率が0.1%というのは,ちょっと悪いなあと思います。

 これなら,F-757を大事に調整して使うのではなく,別の中古のチューナーを探して買い直すのも手かも知れないですが,なんだか本末転倒ですね。

 あるいはF-757の不良箇所を調べて修理するという手もあるでしょうか。電解コンデンサは20年もすれば,悪くなっているものもあるでしょう。交換するだけで随分良くなるような気もします。

 9月になると,毎年恒例の東京Jazzの生中継がFMで行われるはずです。これに間に合うようになにか手を考えてみましょう。

 VP-8191AにVP-7635Aと,まあ滅多に使わない測定器をよくも揃えたものです。代用の利かない測定器で,これがないと全く話にならない,でも持っていても滅多に出番がないという,つぶしの利かない面倒な存在ですが,あまりこじつけて無理に納得することはしないで,FMチューナーをベストな状態にするために必要なものだったと,割り切ることにしたいと思います。


 測定器の話は,あと最後に1つ,2465Aの調整のために新品を買った,ファンクションジェネレータAG-1022のお話を次回にして,やっとおしまいです。

業界標準のDMMの使い心地

  • 2013/09/06 08:51
  • カテゴリー:make:

 VP-7722Aを見つけた時に,業界標準で知られるアジレント(旧HP)の34401Aを安く見つけました。とりあえず入札しておいたのですが,かなり汚く,程度もよくなさそうです。

 にも関わらず,終了間際で値段が上がり,結局25000円ほどになりました。ジャンクはもとより,程度もよくない感じですから,これはちょっと高いなと思いつつ,気が付いたら落札。2年前にDL2050を3万円で買ったのに,DMMが増えてどうするんだという感じです。

 届いた34401Aは想像以上の汚さです。表面はヤニのようなものでネトネトしていますし,日焼けもすごいです。アクリルの風防は,型名やメーカーロゴが一部消えています。

 これ,仮に動いても精度は全然信用出来ないんだろうなあ。

 そんなことを考えつつ,とりあえず清掃です。可能な限り分解して,水洗いします。煙草のヤニかもしれないので,強力な洗浄剤を使って掃除します。

 だいぶ綺麗になったとは思うのですが,それでもまだまだ薄汚いという印象です。しかし,汚い外側と打って変わって,中身は大変綺麗です。ちょっと期待が持てそうです。

 元のように組み立てて,動作チェックです。まず,セルフテストを走らせます。ありがたいことにすべてパス。基本的な動作は大丈夫なようです。

 入力をショートさせて電圧を見ると,さすがに6桁では完全に0mVにはなってくれません。まあ,これはケーブルや端子の接触によるものですので,精度が出ていないせいかどうかは,わかりません。

 34401Aは,6桁半という高精度DMMを,当時の常識を破る低価格で実現したベストセラー機です。事実上のDMM標準器といってよいと思います。私にとっては,6桁半という精度よりも,高速な測定周期や周波数特性が300kHzまで伸びていることが機能的には大変魅力です。

 私が2年前に買ったDL2050も,同じOEM元からアジレントは供給を受けて自社ブランドで販売していますが,34401Aに比べると何もかも1ランク下で,ちょっと使い比べてみると,使い心地が違うことは否めません。なんででしょうね。

 DL2050はデュアル表示なので,周波数と電圧を同時に測定出来たりしますが,実際に使ってみると測定周期が遅くなって今ひとつ実用的ではありません。製造ラインの検査では役に立つ機能かも知れませんが,普通に使う場合電圧と周波数を切り替えて使う方が良い場合がほとんどのような気がします。

 まあ,そんなことより34401Aの実用的な精度が気になります。DL2050と比べてみたのですが,ほぼ一致しています。DL2050は5桁半ですから,最終桁はわからないんですが,とりあえず大きな差があって悩む,と言うことはなさそうです。

 抵抗も周波数も問題はないようですし,ステップ式のアッテネータを持つ低周波発振器を繋いでアッテネータの減衰率を見てみたところ,ちゃんと決まった数字だけ変化していますので,相対的な精度もそれなりにあるようです。

 34401AはDL2050と違って調整(校正)もユーザーが出来るようになっているのですが,さすがに6桁半を合わせきる自信もないし,さっと試して見た感じで今以上の精度を出せるとも思いません。

 よって,34401Aについては,このままにします。

 しかし,テストリードは買わないといけないです。

 DL2050の時には,計測器ランドのオリジナルブランドのものを買いました。ものは悪くないのですが,その代わりちっとも安くないというもので,お得なのかそうでないのか,今ひとつはっきりしないものでした。

 使ってみると,不必要にバナナプラグのL字部分が長くて,非常に邪魔です。自ずとDL2050を使う機会が減ってしまっていました。

 その後,アジレント純正品を調べてみると,同じ値段で手に入ることがわかり,地団駄を踏んだわけですが,この純正品はICクリップや先の長いテストリードなどの付属品もちゃんとついていて,価格以上のお買い得感があります。

 ということで,これを今回34401A用に買ってみました。これ,大変よいです。

 バナナプラグの部分はストレートなので,ベンチ型DMMには最適です。ケーブルもしなやかで邪魔にならず,先端のリードに装着するオプションはどれも大変便利です。もう1つ買っておこうかと思ったくらいです。

 ということで,DL2050よりも全然使いやすい34401Aが,うちのDMM主力機の座に座ってしまいました。DL2050は保証のある状態で購入したという「まともさ」だけが存在価値になってしまった感じもありますが,これでも34401Aより1万円も高かったことをどう考えるべきか,ちょっと複雑な気もします。

 いや,DL2050は,これはこれで愛着があるんですよ。


 で,そろそろ測定器祭りも終わりだろうって?冗談じゃない。まだありますよ。

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