AG1022を買ってみた
- 2013/09/12 09:31
- カテゴリー:make:
ファンクションジェネレータとは,なんと魅惑的な言葉でしょうか。functionとは機能ではなく,数学の言葉で「関数」です。それを発生させる装置というのですから,なんだか凄そうな気がします。
発振器と言えば正弦波を発生させるRC発振器だった時代,矩形波やパルス波,三角波やらのこぎり波(当時はランプ波といっていたようですが)を発生させることは,特殊なことでした。ですから,それ専用の装置が用意されるのは当たり前の事だと思います。
そもそも,正弦波は高調波を含まないのが理想です。高調波を含まない波形を使うことで,歪率や周波数特性を測定出来るのです。
一方で,高調波を含んだ信号というのは,正弦波とは使い道が違いますから,求められる性能も違います。互いに置き換え出来ないわけです。
かつて,ファンクションジェネレータといえば,それこそHPの高級なものか,あるいかインターシルの定番ICである8038を使った簡単なものか,どちらかでした。8038は三角波を元に,ダイオードによる折れ線近似を使ってなんちゃって正弦波を作り,また同じ三角波からコンパレータを使って矩形波を作っていました。
正弦波の歪率はおよそオーディオに使えそうなものではなく。数%にもなるようなものでしたし,三角波だって対称性やリニアリティに問題があって,使い物に使い物になりそうなのはせいぜい矩形波くらいのものという印象があります。
かくいう私も,8038を使ったファンクションジェネレータを自作したことがあり,バッファアンプやアッテネータも真面目に作ってあったのですが,肝心の発振源が今ひとつで,何に使うことも出来ずに,お蔵入りしました。
以来,ファンクションジェネレータは私には不要となったのです。
そんなこんなで,2465Aの調整を行うのに,信号源が必要になりました。矩形波と正弦波さえあれば事足りるので,RC発振器を使って済まそうと思っていました。しかし,結構頻繁に出力電圧や周波数を切り替える必要があるのと,10MHz程度の高周波まで必要になりそうだったことで,作戦の練り直しを迫られました。
せっかくですから,安いファンクションジェネレータを買うか,そんな風に思って探してみました。最近は3万円で実用的に使えるオシロスコープが買える世の中です。ファンクションジェネレータだって,それなりのものが安く買えるようになっているに違いありません。
果たして,安いオシロスコープで有名な中国のOWONというメーカーから,約4万円でファンクションジェネレータが出ていることが判明しました。それがこのAG1022です。
新しい製品でもあり,あまり詳しい話は出てこないのですが,最新の波形発生器らしくDDS方式,2チャネル独立出力,サンプリング周波数130MHz,出力周波数の上限は25MHzで,振幅の分解能は14ビットです。
発生出来る波形は正弦波,矩形波,三角波(のこぎり波),パルス波,その他特殊な関数,ユーザー定義,DCで,出力インピーダンスは任意の値を設定可能です。50Ωのインピーダンスでは,10mVppから10Vppまで出力できます。
案外ありがたいのは大型LCDとテンキーを搭載していて,どんな波形が出ているかがぱっと分かること,各種パラメータを簡単に設定出来ることです。昔,HPのファンクションジェネレータを使ったことがありますが,3桁や4桁の7セグLEDにジョグダイアルという組み合わせは,操作がとても面倒臭かった記憶があります。
DDS方式ですので,周波数安定度や波形の品質も悪くないでしょうし,RC発振器とSSGの間を埋める発信源として有効に活用出来そうです。お値段は36800円。ファンクションジェネレータとしては激安ではないですが,性能を考えると安いです。
よし,買うか。
amazonで買えてしまうところが,なんとも凄い時代になったものです。
さて,届いたAG1022ですが,怖いのは欠品と初期不良です。ちゃんと確認をしますが,どうやら大丈夫なようです。
・外観
最近の中国製品はあれですね,野暮ったさというか,古くささがなくなり,随分スマートになりました。なんでも貫でも青色のLEDを使って,まぶしいくらいに光らせていた品のない製品が多かったのですが,AG1022はそれなりに上手にLEDを使っていて,使い勝手を向上させているように感じました。
キーはサイズも配置も悪くないし,全体の色合いも好印象です。上ケースが曲がって取り付けられていることは少々残念で,このあたり,細かい事が気にならないおおらかな人が作った(検査した)んだろうなと思います。
・性能
カタログに書かれているスペックに,とりあえず偽りなしです。さすがDDSで,周波数を切り替えた時にも安定していますし,波形そのものも綺麗です。正弦波はもしかするとオーディオに使えるかもしれないと思って歪率を測定しましたが,0.01%ということで,使えなくはないんだけども,正直厳しいというレベルです。
・操作性
操作性は特に良くもなく,悪くもなくです。慣れれば全然不自由しませんし,昔の中国製品によくあった,理不尽なUIもありません。ただ,LCDは今どきSTNで,視野角が狭すぎです。できればTFTにして欲しかったなあと思います。
精度
実は,周波数精度がスペックとして出ていないんですね。水晶発振子の精度がそのままと考えれば,50ppmや20ppmくらいだろうと思いますが,周波数を測定してみるともうちょっと悪い感じです。揺らぎは少ないのですが,絶対精度が今ひとつです。
同じ事は振幅にも言えて,0.1%くらいの誤差は当たり前に出ています。
いずれにせよ,誤差や安定度の規定がないものは,測定器ではありません。AG1022はその点で,測定器として扱うことは残念ながら出来ないです。
・面白い事
基本的な関数だけではなく,ちょっと面白いものが入っています。heartという関数は,オシロスコープで見るとハートマークが出てきます。これは,高い周波数の矩形波の振幅をうまく設定し,ハートマークになるようにしているものです。同じ仕組みでcircleという円を描く関数も用意されていました。
書くことがあまりないんですが,そもそも簡単な機械ですので,まあこんなもんでしょう。なにより,2465Aの調整が出来る事が大事です。
このシリーズの2回目に書きましたが,結論から言うとAG1022を使って2465Aの調整はとりあえず出来ました。AG1022は振幅方向の精度が今ひとつな感じがあるので,2465Aも精度が出ているとは思えませんが,まあアナログオシロの調整ですので,そんなに厳密でなくてもよいと思っています。
これが,ちゃんとしたメーカーのファンクションジェネレータなら,精度も一応管理されているでしょうから,2465Aの調整結果も不安のないものだったと思いますが,まあそれなりの金額がしますので,これはこれでよいことにします。
何度考えてもそうなんですが,アマチュアがファンクションジェネレータを必要とするシーンって,あるんでしょうかね。AG1022は独立した2出力がありますので,位相をずらした正弦波を発振させたり,2つの周波数を合成したりと,いろいろ使い道はありますが,それでも特殊な話です。
これよりも,歪率の低い正弦波発振器の方が役に立つし,矩形波が欲しい時は別にタイマICの555でさっさと作ってしまえば良いだけです。それに,オーディオ帯域で良ければ,今はPCを使ってどんな波形でも作る事ができますし。
AG1022の上位機種では,変調機能があるのでSSG代わりに使えるかも知れませんが,中古でSSGが2万円ほどで買えることを考えると,ファンクションジェネレータで実現されても微妙な感じしかしません。
そんなわけで,ファンクションジェネレータを買うのであれば,基準信号になるくらい精度の良いものを買うと便利でしょうし,そうしたものが予算的に買えないのであれば,もう買わないでおくのが一番いいんじゃないかと,やっぱり思います。
とはいえ,2465Aの調整では,本当に楽をさせてもらいました。垂直軸とトリガの調整では,電圧を一発で指定通りに変更出来ることは,調整を効率的に進めるのに不可欠でした。
これが3万円くらいなら,まあおすすめ出来るんですけど,4万円だと,ちょっと厳しいかなというのが,私の感想です。1CHでもいいから,29800円のモデルが欲しいですね。