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福島からのメッセージ

 少し遅く帰宅した昨夜,ふと洗面台の脇に置いてある電波時計に目をやると,電波の受信に成功し時刻の修正が行われたことを示すサインが表示されていた。

 それまで全く受信が出来ずにいたこの時計の突然の変わりように,私はちょっと戸惑った。ご存じの通り,先の地震と原子力発電所の影響で,福島にある送信所が避難対象地域となり,電波も停止したままになっていたからだ。

 地震から2週間ほどたったある日,別の部屋にある電波時計が受信に成功したサインを出していたのを見て,私は心躍る気がした。福島が復活したと信じたからだが残念ながらそうではなく,日本にもう1つある,九州のからの電波を受信していたというのが真実であった。

 「停波中です」という公式なアナウンスを当局のホームページで確認し,福島からの電波であることを否定せざるをえなくなると,「まぁあたりまえの事だ」という冷静な諦めの気持ちが私を支配した。 

 と同時に,福島からの電波だと喜んだ自分に,被災地の復活がわずかずつでも進むことへの渇望と,日常が少しずつ戻ってくることへの待望とが,驚くほど強く内在していることを思い知らされたのである。

 どうせまた九州の電波が届いたのだろう,純粋な心をくじかれてしまい,斜に構えた私はそう思って,電波時計が出すサインを強く警戒した。

 しかし,よくよく考えてみると洗面台の脇にある時計は,まだ日本に1つしか送信所がなく,それも試験送信中だった時分に購入したもので,周波数の異なる九州からの電波を受信する能力はない。

 誇らしげに胸を張ってアンテナのマークを表示している,その古参の電波時計をもう一度眺めて,私はもう一度だまされてもいいかなと,覚悟を決めた。

 早速他の部屋の電波時計を確認すると,家中の時計が皆一様に強い電波を受信し,時刻の修正が行われたことを示している。期待は膨らむばかりである。

 そしてインターネットにあふれる有象無象のニュースから,福島からの送信が暫定的に復活したという情報を釣り上げて,私はようやく警戒を解き,古参の電波時計に詫びた。

 正確な日本標準時を40kHzという長波の電波に乗せて送信し,これを受信した時計が自らの時刻を修正するという電波時計のシステムは,日本中の時計が一斉に同じ時を正確に刻むという夢を実現したものだが,我々は普段これを意識をすることはない。

 まさに空気のような存在の電波が停止するに至り,数秒から数分の単位で時計が狂い始めると,私はそれが規律と秩序を尊ぶ日本人の自制心が緩み,勝手気ままに行動して内側から崩壊していくさまに重なって,背筋の凍る思いをしていたのだった。

 あるいは,強力で正確なリーダーを失った集団の,個々の能力のみで生きていくことの危うさを,それぞれ異なった時刻を表示した時計を眺めては思い至り,今の日本の状態との類似性に,また寒気を催していた。

 リーダー不在の期間はいつまで続くのか。いつまで我々は画一的な正しさを維持して生活できるのか。

 もしかすると,時計の表示がわずかにずれることくらい,その時計の「個性」だと言えるかも知れない。個性に良し悪しはなく,それぞれが尊いから,画一化されることに賛成しかねる要素があることまで否定しない。では電波時計が没個性の象徴であるかといえば,これはまた違う話だろう。

 福島の送信所は,前述の通り避難地域になっている。原子力発電所の状態を考えると,短期間で復活するとは考えにくく,恒久対策として「福島を放棄」し,別の場所に送信所を作ることもありうると私は考えていた。しかしこれはとても悲しい結論である。

 この送信所のスタッフは,防護服を着て送信所に向かい,電源を入れて送信できるようにして改めて避難をしたそうである。現在無人で電波を出しているのだが,東京から監視を行う事は現在も可能で,遠隔操作も検討しているという。

 大切な事は無人かどうかではなく,被災地にある施設が動き始めたことであり,私は福島から届いた電波に「俺は生きてるぜ」というメッセージを見た。

 まるで荒れ野に,ぽっと小さな,けど力強く咲いた野花を見つけた時のように,私は福島からのメッセージに激励されたのである。
 

GreenFan2の情けない初期不良

 GreenFan2は,とてもいい製品なのですが,早速壊れました。結論から先に書くと,初期不良という扱いになり,この土曜日に代替品が届き,同時に壊れたものを引き取るという手はずになっています。

 なにが壊れたかというと,モーターが入っている部分,説明書によるとモーター部というらしいのですが,この部分の背面,ちょうど取っ手のある部分についている,黒いフタ,あるいは化粧板が,ぽろんと取れてしまったのです。

ファイル 468-1.jpg

 フタですから,中は丸見えで,モーターと配線が見えています。

ファイル 468-2.jpg

 事の顛末ですが,先の金曜日の夜,寝る前に偶然,その黒いフタの部分が取れそうになってぶら下がっていることに気が付きました。あれ,と思って触ってみると,ぽろんと取れてしまいました。

 よく見てみると,ぶよぶよした白い接着剤(シリコーン系のような気がします)で接着してあっただけで,爪で引っかかるとか,ネジ止めされているとか,そういう固定方法ではありません。接着剤はすでに粘着力を失っており,二度と黒いフタが固定されることはありませんでした。

 取っ手の部分はこのフタの内側に,別のアルミ製の部品として用意されているので,このフタは本当に目隠しの役割しかしていないのですが,それにしてもぽろっと外れて,そのまま元に戻らないというのは,35000円もする扇風機としては,言語道断でしょう。

 このモーター部を分解するには,大きなネジを外さねばなりません。これを黒いフタで隠すというのはわかりますし,いざというとき簡単に外れてくれないといけないですから,着脱可能な接着剤で貼り付けておくというのは理解出来なくもありません。しかし,どうも安易過ぎるというか,ちょっと幼稚な解決方法だなあという印象です。私が設計者なら,こういう設計はしません。

 はっきりいって,両面テープでくっつけるだけで解決しそうな気もしますが,水曜日に入手して金曜日に壊れたわけですからこんなバカにした話もなく,私であれこれするのは避け,初期不良と言う形で新品に買えてもらうのが正しい道だと考えました。

 ところが,この「バルミューダ」という会社は,土日祝祭日のサポートセンターがお休みなんですね。うーん,会社の規模を考えたらやむを得ないか。とりあえずメールを出せるそうなので,出しておきました。

 月曜日,メールで連絡があり,新品に交換という話になったのですが,まあさすがに購入後数日で後ろの黒い化粧板がぽろりと外れてしまうような話は異常事態なわけで,初期不良としての対応は妥当だと思います。

 それにしても,接着剤ですからね,ちょっとびっくりです。まあどうなんでしょうね,黒いプラスチックの表面に,金型から外しやすくするために塗布された離型剤を拭き取らずにそのまま接着しようとして,しばらくして剥がれたとか,そんなところではないでしょうか。

 とりあえず,土曜日に新品が届いてから,ですね。

防湿庫の整理と粉を吹いた酸化銀電池

 昨日,ふと防湿庫に目をやると,湿度計が70%というまずい値を示していることに気が付きました。

 そういえば,3月11日の地震からこっち,防湿庫の中身をきちんと確認していないので,急に不安になりました。もし防湿庫が壊れたんだとしたら,これは買い直しも処分も大変面倒です。(いや,大きめのものに買い直すチャンスかもしれません)

 とりあえず中身を取り出し,湿度設定をより低いものにしてしばらく放置すると,ちゃんと50%位まで下がってくれたので,地震で扉に隙間が出来たか,あるいは振動で中身が内側から扉を押して隙間を作ったか,まあそんなところでしょう。

 とりあえず壊れてなくてよかったです。

 せっかくですので,軽く点検をしましょう。下手をすると1ヶ月以上高湿度で締め切ったので,もしかすると予期せぬ異常が起こっているかも知れません。
 
 まず銀塩カメラです。一番気になるES2ですが・・・あれ低速シャッターが動きません。ES2で低速が出ない時は,大体ソレノイドか基板が逝ってるので,もう致命傷です。おどおどしながらバッテリーチェックをしてみると,電圧が下がっています。しかもバッテリーチェックをしている間,ジワジワと電圧が下がっているので,これはかなり電池がへたっているんだと思います。

 ES2の電池ブタを外し,電池を取り出します。そういえばダイソーで売っていた酸化銀電池を奢ったことを思い出しましたが,嫌な予感がしつつそれぞれの電池の電圧を測定すると,1つは0.4Vくらいまで下がっています。あとの3つは1.57Vくらいあるので,まだ使えそうです。

 その下がった電圧の電池をよく見ると,粉ふきいものように粉が付いています・・・「も,もしやこれはっ!」

 そう,液漏れでした。

 ボタン電池で液漏れしたことがないのでちょっと驚きだったのですが,油断しました。酸化銀電池でも液漏れってするんですね。

 幸いカメラ本体への被害はなく,電池を1つだけ新しいものに交換するとちゃんと動きましたので助かりました。ちゃんと1秒の低速シャッターも切れましたので,一安心です。しかしあらためて,このES2というカメラには一種の麻薬が潜んでいますね~。手に収まる感じ,音,振動,ずっしりとした重さと妙なハイテク感,最近の高級機とは違った厚ぼったい重量感・・・

 そんなことはどうでもいいのですが,他にも同じような液漏れを起こしている可能性が急に心配になって,防湿庫内の全てのカメラを点検することにしました。

・NikonF100・・・自作のCR2電池ケースに入れていた,マクセルのCR2は電池が切れて動かず。F100って結構電池を食うカメラなんですね。単三電池で動かすと問題なしなので,この際だから電池は抜いて保管しましょう。しかし,このシャッターの切れ味といいボディの剛性感といい,さすがF100です。このカメラには一種の麻薬(以下略)

・NikomatEL・・・高価な4LR44を入れていますが,これは国産だけに液漏れはありません。電圧もやや下がっていますが,一応動作はします。しかしあらためて,このNikomatELというカメラには一種の(以下略)

・NikonF3・・・全く動作しなかったため電池を取り出すと,GoldenPowerのSR44が出てきました。1つは液漏れしており,粉を吹いています。カメラは無事で,LR44に入れ替えると問題なく動作しました。しかしあらためて,このF3というカメ(以下略)

・NikonFE・・・バッテリーチェックはギリギリ大丈夫という所だったのですが,動作は問題なし。電池を確認すると,なんとCR1/3が入っています。私がこれを買うことはおそらくないので,最初に入っていたのでしょう。しかしあらため(以下略)

・PENTAX SuperA・・・一応動作はしたのですが,確認するとやはり電池の1つが粉を吹いていました。電圧を測定するとどちらの電池も1.55V以上あります。一応1つだけ入れ替えておきましょう。しかしあ(以下略)

・MinoltaCLE・・・動作確認を行うともんだいなく動いていますが,電池はやはり1つだけ粉を吹いていました。電圧は下がっていないのですが,粉の吹き出し方が激しく,かなり中身が吹き出したようです。とりあえず1つだけ交換しました。このCLEはご存じの通り,私がPICマイコンを使って電気部分を作り直したものですが,コトリという音を発して走る上品な横走りシャッターが,実はPICマイコンで制御されているというのは,ちょっとうれしいです。しかし(以下略)

・MinoltaXE・・・このカメラも動いたのですが,やはり電池は1つだけ粉を吹いていました。粉を吹いた電池も電圧は1.55V以上あるのですが,やはり気持ち悪いので交換しないといけません。XEは無骨でそんなに美しいカメラとは思えませんが,巻き上げ,シャッターの落ち方など,とてもスムーズで癖になる味わいです。しか(以下略)

・OlympusPEN EED・・・Autoモードでは一応シャッター速度が可変しているようなので動作しているように思うのですが,スポンジテープを外周に巻いたSR44を取り出して見るとやはり粉を吹いています。さらに悪いことに,電池バネに使ったリン青銅板に緑青が浮いています。とりあえず紙やすりで削り落とし,電池を交換して同じように動作していることを確認しました。し(以下略)


 ということで,ダイソーか秋月で購入したGoldenPowerの刻印のある電池が軒並み粉を吹いていたわけですが,とりあえずカメラ本体に甚大な被害を出さなかったことは幸いでした。

 それにしても,電圧にバラツキがあったり,粉を吹くものと吹かないものとあったりして,どうもばらつく印象ですね。

 確かに,自分で修理したカメラですから,動態保存していつでも空シャッターが切れるようにしておきたいものです。しかしそのことで今回のような液漏れが起こるとなると恐ろしいですし,最近はそんな取り出して空シャッターを切ってニヤニヤすることもなくなっています。安全のため電池は一度全部取り出しておくのが良いように思えてきました。

 ところで,その中国製のあやしげな酸化銀電池ですが,その後の調査で,ダイソーで購入してあった10個の新品のストックのうち,なんと5つがパッケージに入った状態で液漏れしていました。有効期限が2008年までですので怒る気にもなりませんが,結局100円ショップで買ってきた電池のうち半分が死んでしまい,単価は200円になりました。これだと一頃目にしたマクセル製のものと,そんなに値段が変わらないですよね。(今もこの値段で売られているかは知りませんが)

 どうせ水銀もバンバン使っているんでしょうから,この液漏れ電池はまずいです。まさかボタン電池,それも高級品の酸化銀電池でも,安物買いの銭失いが通用するとは思ってませんでした。まじで中国の人たちは,こんな低品質な電池を普段使わされているわけでしょ,もう気の毒としか言えません。

 なお,紛らわしいのですが,GoldPeakのLR44については,どれも全く液漏れしていませんでした。なぜか大量にストックがあるLR41についても,同社製のものは全く無事でした。GP社といえば「ははーんあれか」と思う人もいると思いますが,なんだかんだでここは電池メーカーとしては大手ですし,豊富なOEM実績があるので,性能はともかく品質は大丈夫と思われます。

 そうそう,レンズ関係も一通り確認してみましたが,どれも無事でした。時々風を入れて上げないとカビも出ますし,悩ましいところですが,AiAF-Nikkor85mmF1.8Dや,FA77mmF1.8の大きな前玉を見ていると,まさに吸い込まれそうになります。至福の時,ですね。

 確かにレンズの数は増えました。よくあることだと思うのですが,必ずしもそれらレンズの癖を覚え,出てくる画の特徴がレンズ本体と紐付けされているわけではありません。その意味で,FA43mmF1.9やPlanar50mmF1.4ZF,SMCtakumar28mmF3.5,NoktonClassic40mmF1.4あたり,本当に個性的で大好きな,それぞれに記憶がちゃんとあるレンズで,決して高価なものではありませんが,宝物として絞り込まれて来ているんだなあとつくづく思いました。(というか全部マウントがバラバラというのはどういうことでしょうね)

 minoltaのMC/MDレンズやAsahiPentaxSP,NikonF70Dあたりの防湿庫に入れることが出来なかったものは未確認ですが,今度の休みの日にでも確認しようと思います。

GreenFan2で酷暑に備える

  • 2011/04/15 17:06
  • カテゴリー:散財

 関東地方に住む私は,この夏の電力不足に今から恐れおののいています。冬は寒ければ着込めばいいし,部屋に閉じこもっていればなんとかなります。しかし夏の暑さは素っ裸になったらそれ以上脱ぐものはありません。私が夏が嫌いな理由です。

 私は10年ほど前までは,夏でも冷房を入れることはほとんどありませんでした。しかしここ数年はもうどうにもならないくらい暑くて,エアコン無しでは過ごせません。昨年の夏,私が作業をする部屋は42℃を記録し,調子に乗ってエアコンを使わずにいたら2時間ほどで気分が悪くなって,動けなくなりました。まじで死ぬかと思いました。

 加えて,7月末には嫁さんが産休に入るので,これはもう死活問題になりかねません。もし計画停電なんてことになると,本当に年寄りや子供から死者が出るような気がします。快適になるまで冷房を入れず,みんなが死なない程度に冷房を入れるようにして,全員が生き残らないとまずいなと思います。

 救いなのは,まだ3ヶ月ほどの猶予があることでしょうか。3月末から停電がなくなり,電気については平常を取り戻しつつあるのですが,日本人の悪い癖で,喉元過ぎれば・・・と危機感が薄れていくのですね。確実に電気の足りない夏はやってくるというのに。

 そんなわけで,私はいざというときのために,蓄電する仕組みを用意することにしました。キャンプ用に売られているもので,鉛蓄電池とインバータを備えた電源装置です。

 品薄で私もまだ手配をしたに過ぎませんが,バッテリーの容量は約20Ahと言いますから,インバータの効率を85%とすると,ざっと245W/hです。インバータの定格が100W程度ですから,仮に100Wの電化製品をこの電源で使い続けると,ざっと2時間半ほど動かせる計算です。

 これを長いと見るか短いと見るか,非常に微妙な所です。

 今時100W程度の電化製品っていうのは結構ないんですね。電子レンジも冷蔵庫もテレビもだめだし,エアコンなど論外。ドライヤーも掃除機もダメですし,洗濯機もダメ。もしかしたら給湯器の電源くらいはまかなえるかも知れません。

 ああ,ネットワーク機器は大丈夫ですね。ADSLモデムとか無線LANは大丈夫でしょうが,まあそこまでして使いたいかどうか・・・

 停電すれば貴重な電源になるこれを,どうやったら有効に利用出来るか,とりわけエアコンを動かせない状況で,どうやって涼むのかが一番の課題です。

 そう考えると,今年は私も扇風機の導入が避けられないと腹を決めました。扇風機は私は大嫌いでして,夏しか使わず邪魔で,鬱陶しい割には効果も少なく,所詮気休めという感じがしていました。それに扇風機の風は強すぎて,どうにも疲れてしまうし,本や新聞などの紙類を吹き飛ばしてしまうので,気に入りません。

 しかし,死ぬよりましかと,今年は15000円の予算を組んで,扇風機を買うつもりをしていたのです。

 と,そこに飛び込んできたニュースが,GreenFan2という扇風機が登場したというものでした。

 昨年,実は扇風機には文字通り新風が吹き込んだ年でした。ダイソンの羽根のない扇風機は見た目の斬新さで話題になりました。これに加えて密かに話題になっていたのが,GreenFanという扇風機でした。

 ぱっと見るととてもちゃちな扇風機で,聞いたことのないような小さいメーカーが作った,眉唾扇風機だと思って私は相手にもしなかった(そりゃそうです,何度も言うように扇風機の効能に疑問を持つ扇風機嫌いな人なのですから,私は)のですが,消費電力がわずか3Wと非常に低いという,他にはない特徴があるのです。

 これの2011年モデルがこの4月に発売になりました。お値段は34800円と扇風機にしては非常に高価で,その金額に見合うメリットが本当にあるのかどうか,よく分かりません。それにこの会社の社長は私なんかと同世代で,どうも信用ならんのです・・・

 しかし評判はよいようです。

 このGreenFanなるもの,回転する羽根が内側と外側に分かれており,外側の羽根で作られた風量が内側の羽根で作られた風量の2倍あるように作ってあります。

 扇風機の風も,直接あたれば疲れますが,一度壁に当ててからだとそよそよと過ごしやすい風になるのですが,GreenFanはこれを参考にしたものらしく,内側の羽根で作った風を外側の羽根で作った風にぶつけることで,自然に吹いてくる風に似たようなものに変えるんだそうです。

 まあ,言ってることはわかるのですが,そんなうまい話があるだろうか,それに流体力学がこれだけ進歩して,今時スーパーコンピュータで擬似的な風洞実験もやれるのに,今さらこんな話が信じられるのか,

 ただ,この話がウソであっても,消費電力が小さい事は事実でしょう。私自身は,なぜ扇風機に隈取り式の交流モーターがしぶとく使われ続けているのかが全然理解出来ず,速度制御も簡単で,消費電力も小さくできるDCモーターをどうして使わないのか,疑問でした。

 このGreenFanは,私が長年感じていた疑問をあっさり打破し,実際にDCモーターを使っ手消費電力を下げた例として存在しています。仮に3Wの消費電力であるなら,この夏私が用意する240Wの電源なら,なんと80時間も駆動できるではありませんか。しかもその制御特性から,超低速回転を実現し,柔らかい風も期待できそうです。

 実際に3Wで済むことはなくとも,それでも消費電力を気にしなくてはいけないほど大きな電力になることはないでしょう。

 確かに高価ですが,この超低消費電力と弱い風を作ることが出来る基本性能については,他に変わるものはありません。

 ただ,現物を見ないとちょっと買えないなあというのも本音のところで,先日アキバのヨドバシにいって,現物を見てきました。

 デザインはそんなによいとは思えず,どちらかというと格好悪くて嫌いなデザインです。なにが嫌いといって,このパクリ感がたまりません。そして35000円もするのにこの剛性感のなさたるや。質感の高さが所有欲を満たすものなのに,このプラスチッキーでたわみの多いひょろっとした扇風機は,見た目にも情けないです。

 しかし,やっぱり消費電力の低さと微風を作る性能はすばらしい。この点に私はかけてみることにし,購入しました。在庫がなかったので,先にお金を払って入荷次第送ってもらうことにしました。

 先日,予想外に早く届きましたので,早速使ってみました。

(1)デザイン

 評判の良いデザインですが,組み立てて対峙すると,やはり嫌な印象しか沸きません。不格好で安定感がなく,剛性感も希薄でソリッドな感じがまるでありません。まるでAppleの製品のようだと賛辞を送る人もいますが,おそらくこの人はAppleの製品を長く使ったことがないのでしょうね。


(2)組み立て

 組み立ては扇風機にしては難しい方でしょう。それほど分解されているわけではないのですが,なにせ箱から出して部品を取り出して並べてみると,バラバラになっているという印象が強くあります。


(3)構造

 うーん,これは,大手メーカーからは絶対に出ない構造ですね。あまりに華奢で,確実にここが壊れるだろうという予感のする構造です。モーターと台座を接続する部分は,重たいモータを支える部分ですし,ユーザーの操作や転倒などによって大きな負荷のかかる部分です。曲げやねじれなどで応力が集中し,まずここから壊れることは避けられません。

 実際,この接続部分が壊れてしまった例がWEBで見られますが,さもありなん。私ならこういう設計は絶対にしないなと思うくらい,頼りない部分です。


(4)風の質

 これは,感動しました。いい意味で完全に期待を裏切られたと思うくらい,良い風です。

 まるで木ねじのようにねじられ,回転した強い風がやってくるこれまでの扇風機とは完全に違い,まるで風全体が1つの大きな塊になってやってきます。風に動きがなく,そのまま吹き抜ける感覚は,まさに自然の風という印象です。

 しかも弱い風が作り出せるDCモーターのおかげで,とても優しい微風が届きます。風の質が高いからでしょうか,微風でもしっかり届くし,十分さわやかで快適なのです。これはよいです。

(5)音

 昨年のGreenFanは,低速時にモーターがジジジと音を出したそうですが,GreenFan2ではそんな音はほとんどしません。弱い風なら風切り音も回っているのか回っていないのか分からないくらいの程度ですし,ホントに窓を開けているかのような錯覚に陥ります。

(6)首振り

 昔の扇風機は,羽根を回すモーターで首振りもやっていたので,風の強さで首振り速度が変わったものでしたが,GreenFan2はそんなことありません。独立したDCモーターで首振りをしますので,なめらかで静かです。ただ,ジジジという音は少ししますね。こういう風の質ですので,無理に首振りをする必要はないように思います。

(7)リモコン

 リモコンは便利です。母の実家に,有線のリモコンが付いた扇風機があったのを私は知っていますが,有線でも結構便利でした。21世紀ですのでそこはもちろん赤外線ですが,やはりリモコンは便利です。ただ,受光部が下の方にあるらしく,そこに向けないと反応しないので,これはモーターのある部分に受光部を付けるべきです。

(8)ACアダプタ

 このGreenFan2は,12V-2AのACアダプタによって動きます。別にそれは構わないのですが,ちょっとACアダプタが邪魔になります。黒の無骨な不細工なデザインは見た目にも見苦しく,デザインにこだわったというのであれば,ACアダプタにこそこだわって欲しいなと思いますし,専用品を起こすことは出来なくても,12Vで2Aクラスならもう少しスマートなものもあったでしょう。私がAppleの製品のパクリだというのはまさにこの辺の話で,Appleの細部にわたるこだわりに対する理解の不足が,こうした見た目をまねればいいやという安易な発想を生んでいるのだと思えて,残念でなりません。

(9)箱

 箱と言えば,箱が2重になっていて,外側の箱は運送用の箱,内側の箱は収納用の箱となっていました。「箱も商品」というのは小売店の常識で,段ボール箱に直接宅急便の送り状貼り付けるなど言語道断なわけですが,作り手が箱を商品として扱うために,わざわざもう1つ外側に箱を用意するというのは,なかなか珍しいのではないかと思います。まあ,果たしてここまでやってGreenと宣うのも,ちょっと無理があるかなと思ったりします。


(9)総合的に

 まず,未体験のさわやかな風は素晴らしいです。お店で体験して欲しいし,体験しなくてもこれを嫌がる人はいないと思います。DCモーターによる低消費電力にウソはありませんし,超低速で制御されることも本当で,この扇風機なら疲れません。これは断言出来ます。

 ただ,つくりはあまりに華奢で,おそらくですがすぐにこわれると思います。所有欲を満たす質感もなければ,使っていて安心感を感じる剛性感もなく,この辺はダイソンの扇風機や大手メーカーの高級品にはかなわないでしょう。

 それと,収納が問題です。箱を捨てないようにしろと書かれていて,収納時にはこの箱を使えとあるのですが,箱が大きいのです。それもそのはずで,箱を眺めてみれば,梱包材がしっかり入っており,かなり隙間があります。

 いわば,本体の収納に貢献しない空気を箱に閉じ込めているようなもので,これは狭い部屋に住んでいる我々には厳しいです。箱を捨ててしまいたいのですが,それではどうやって収納するかについて,私はまだ最適解を見いだせていません。

 結局,製品そのものはそれほど大した作りではありませんが,これが作り出す風は確かに素晴らしく,消費電力が極めて低いという特徴とあわせて,ここに35000円を気前よく出せるかどうかが鍵になると思います。

 他にない特徴ですので,35000円が高いか安いかは,もう本人次第です。

 最後に私の感想を。買って良かったと思います。35000円の価値は微妙ですが,まあ3万円までなら納得の商品だったんじゃないかなと思います。


 
 

ナショセミが現金で買われる

 大きなニュースが飛び込んできました。ナショナルセミコンダクターがテキサスインスツルメンツに買収され,TIの一部門となる事が決まりました。買収金額は65億ドルで,TIは全て現金で支払うという話です。

 いや,これはびっくりしました。ナショセミといえば名門中の名門,半導体の黎明期から現在に至るまで倒産も買収もなく,連綿とその伝統を受け継いできた老舗です。

 1959年にシリコントランジスタの生産を目的に設立されたナショセミは,1960年代にはもはやオペアンプの創造主と神格化されたボブ・ワイドラーによって,次々と画期的なアナログICを誕生させ,安くて便利で面白いアナログICのメーカーとして,それこそプロからラジオ少年の心にまで深く入り込むことになります。

 オペアンプは,かのワイドラーの手になるLM101,単電源の先駆けLM358,クワッドの定番LM324,バイポーラとFETを混載したBi-FETによる高級オペアンプのLF356,C-MOSでも超高性能なLMC660,新世代の高速オペアンプLM6361,Bi-FET入力オペアンプの新世代品LF411,TO-3パッケージに入ったパワーオペアンプのLM12C,電子楽器で多用されたトランスコンダクタンスアンプの超定番LM13600,そして忘れてはいけないのが超高性能ハイブリッドオペアンプで唯一の生き残りLH0032など,どれも定番,どれも有名,そしてどれもその時々に画期的な最先端技術の結晶でした。

 ワイドラーの偉大な業績は,モノリシックオペアンプの基本設計を編みだしたことに加え,バンドギャップリファレンスを作り出したことでしょう。温度特性を持たない安定した基準電圧は,古くは水銀電池を使うしかなかったのですが,その後ツェナーダイオードが登場,そしてモノリシックICだからこそ可能になったバンドギャップリファレンスへと進化します。より安定し,より低い電を発生させるバンドギャップリファレンスの発明によって,三端子レギュレータやADコンバータが誕生することになるのです。

 シリーズレギュレータの世界では,固定電圧の3端子ならフェアチャイルドの78xxが有名ですが,可変電圧タイプだとフェアチャイルドは4端子だったのに,ナショセミは3端子でやってのけました。それが今でも定番のLM317です。

 かつてビデオ信号と言えばNTSCだった時代,同期信号を分離するにはそれなりに面倒な回路が必要だったのですが,これをワンチップでやってのけるLM1881は登場するやたちまち定番になり,アマチュアにもおなじみになりました。

 アナログのICは本当に面白いものがあって,ラジオ少年たちに一番よく知られた海外メーカーではなかったでしょうか。ちょっとしたスピーカアンプならLM386,5Wくらいまで欲しいならLM380,まだまだオペアンプでは厳しかったHi-Fiのプリアンプ用にはLM381,ダイナミックノイズリダクション用のLM1894というのもありました。

 1.5Vの電池でLEDを光らせるLM3909は生産中止になった現在でも少ない在庫を探し回っている人がいるそうですし,電源同期式の時計用LSIのMM5311も定番でした。そうそう,コンパレータといえばLM311,LM339でした。

 74シリーズとピンコンパチなCMOSロジックを先駆けて投入したのもナショセミで,MM74Cシリーズの開発メーカーです。その後74HCに変わられ,ほとんど知られない存在になりましたが,ある時期のエンジニアにとってはとても懐かしいICなんだそうです。

 Ethernetの10Base-Tで定番化したNE2000というNICは,実はナショセミのDP8390を使って作られていました。AT互換機のシリアルポートで有名な16550もナショセミがオリジナルですし,その源流となったINS8250も,もちろんナショセミがオリジナルです。最近だと,LVDSという伝送方式はナショセミの開発です。

 ADコンバータ,DAコンバータもナショセミが定番でした。ADコンバータはADC0801やADC0809,DAコンバータならDAC08は必ず出てきたものです。

 また,ナショセミはCPUのメーカーとしても大きな足跡を残しています。i8080とMC6800に続く第3の8ビットプロセッサとして期待されたSC/MP,Z80のソフトがそのまま動くC-MOSのCPUとして,電池駆動でZ80マシンを作る唯一の手段だったNSC800,もっとも早く市場に投入された32ビットCPUのNS32032と,アナログとデジタル両面で大変強力なラインナップを誇っていたのです。

 こんな風に,工業用,軍用から民生品に至るまで,32ビットプロセッサからゲートICまで,高速オペアンプからオモチャ用のICまで,どんなものでも揃っていて,しかも他の会社にはない個性的な,でも入手は難しくなく安価な,そんなメーカーでした。

 ラジオ少年だった私が好きなメーカーも,このナショセミでした。海外製のICは入手が難しいなか,なぜかナショセミのICは部品屋さんで普通に買えることが多かったのです。

 ナショセミのデータブックを見ていると,ICそのものの面白さ以上に応用回路として紹介された回路例がまた面白いのです。こんな使い方をするのか,本来の目的とは全然違うことが出来るんだな,と,ナショセミのデータブックだけは別格でした。

 1987年,名門フェアチャイルドセミコンダクタを買収します。当時富士通が買収すると言われていたのですが,アメリカ政府から待ったがかかりナショセミが買収したわけですが,1997年には株式を手放しています。

 製品に魅力的なものが多い会社ですが,個性あふれる優秀な人材が多くいらっしゃるのも,この会社の伝統でしょう。先程のアナログICの神,ボブ・ワイドラーもそうですし,全半導体関係者のアイドル,ボブ・ピースを先頭に,枠を窮屈に考えず,むしろ積極的に楽しむくらいのゆとりが,この会社の技術者には見て取れます。良い技術,先進的な技術を,普通の製品に生かすのではなく,ちょっと違った角度から応用して非常に面白いものを作り上げる,そのちょっと違った角度を許すか許さないかは,私はその会社の文化や雰囲気によるものだろうと思うのです。

 今回,TIがナショセミを欲しがったのは,TIがよりアナログICのフォーカスするという戦略がまず第一にあり,その魅力的な製品群が競合と言うよりむしろ補完になるという判断があったことは理解出来ます。

 同時に,その優秀な人材とノウハウ,つまり総合的な技術力によって今だけではなく未来においてもアナログICのリーディングカンパニーでいようという強い思いがあったと思います。

 実は,アナログICの分野というのは,CPUやメモリといったデジタルICと違って,それほど大規模な設備投資を必要としません。だからアナログの専業メーカーには小さなメーカーも生き残っていられるわけですが,同時に一人前になるには10年かかると言われるアナログICの設計者を育成するのがとても大変と言われます。

 日本の半導体メーカーもなんとか一部に食らいついている分野ですが,韓国や台湾,中国などのメーカーはもうアナログICについてはまるで存在感がありません。これは,彼らが最先端プロセスの導入という「お金で済む」話を拠り所にしているからで,おのずとメモリやシステムLSIといったデジタルICで勝負することになります。しかしアナログICにはむしろ最先端ではないプロセスを使わねばならないことがが多くて,枯れた技術が適している場合が多いのです。

 現実は買収ですが,別にナショセミはお金に困っていたわけではありません。むしろTIと結婚したくらいの気分でいるんじゃないでしょうか。65億ドルで結婚というと穏やかではありませんが,TIのような大企業には大企業なりのメリットがあります。これを利用出来ることはナショセミにはメリットのはずで,一方でその独立性が(ある時期までだったとしても)約束される買収であるなら,とても良い話だと考えたのではないでしょうか。

 事実,TIはバーブラウンを買収した際にも,その独立性を極力残そうとしました。高性能で高価な半導体を作ってきたバーブラウンは,今や高性能で安価な半導体を安定して供給出来るブランドとなりました。これに倣うなら,ナショセミのブランドを持つ半導体は,ますます面白くなのではないかと,私は思っています。

 TIもアナログに軸足を置くメーカーの1つです。おそらくTIの技術者も,ボブ・ピースに対して尊敬の念を持っていることでしょう。彼が自分達の仲間になると考えれば,おそらくTIのエンジニアも奮い立つことでしょう。

 TIとナショセミ,どちらも集積回路と半導体の分野を,前人未踏の状態から切り開いてきた偉大なパイオニアです。確かに老舗が減ってしまうことは寂しいことですが,消えてなくなるわけではありません。ワクワクするような,楽しく,創造的な半導体を,ますます作ってくれることを心から期待します。

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