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ユーザー「gshoes」の検索結果は以下のとおりです。

私に荷物が中国とアメリカから届いた話

 性懲りもなく無駄遣いをしてしまっているのですが,先日以下の2つを注文しました。

・Si5351A : Aliexpress(中国)
・ポケコン用LCD : Tindle(アメリカ)

 SI5351Aはここでも何度か書いていますが,SiliconLabのPLLです。秋月で安価に売られていたので喜んで使っていましたし,昨年末には専用の基板まで起こして私の「標準品」として格上げしていたのですが,昨今の半導体逼迫や円安もあって,秋月での購入も出来なくなりましたし,価格も随分上がってしまいました。

 せっかく基板を起こしたのに,これはもったいない。しかもSi5351Aは壊れやすく,これまでも何度も無駄死にさせています。(壊れやすいというのはちょっとミスで簡単に壊れるという意味で,正常に動作しているときに壊れるというわけではありません)

 こういう時はAliexpressです。ここにはなぜだか,ないはずの半導体が揃っています。しかも安価です。もちろん偽物も含むのでそのリスクは考えないといけませんが,おかげさまで私もこれまでに何度も助けてもらいました。

 以前は日本に届くまでに3週間も4週間もかかったものですが,最近は速い人では3日くらいで届くケースもあるといいますから,さすが中国企業らしい改善スピードだなと思います。

 速いだけではなく事故も減っているようで,届かないとか詐欺に遭ったという話も随分減ったように感じます。これは本気で日本市場に入ってくるかもと,私も期待しているところです。

 ですが,今回の買い物は結構心配しました。

 まず,発送がなかなか行われなかった点です。中国では1月末から2月の頭が旧正月でお休みですので,お願いごとはここを避けるのが鉄則です。ということでSi5351Aの注文も1月23日という旧正月の影響を受けないぎりぎりのところで注文をしました。

 中国を旧正月前に出てくれれば,あとは日本国内の話なので上手くいくだろうと読んだのですが,この目論見は外れてしまい,旧正月に入っても発送してくれていません。

 2月3日に念のために「私の荷物は発送してくれた?」とショップに取ったのですが,同日ショップから「送ったよ」と返事がありました。ステータスが発送済みにならないのでおかしいなと思いつつ,「じゃもうちょっと待ってみるよ」と返事をして待ってみました。

 すると2月5日にショップから「2月1日に同じ商品を買った別の日本の客に先に送ってしまった」と連絡がきました。先方が見せてくれたオーダーによると,私と名前がよく似ています。まあ,これは勘違いするかもな,と思いつつ,ここは厳しく文句をはっきり言おうと,「なんちゅうことをするんだよ,で結局あんたはどうすんだ?」と返事をしました。だって,あと5日で自動キャンセルになる期日を迎えるんですからね,そりゃこっちもムキになります。

 そしたら向こうもまさかの逆ギレ。「ならキャンセルするのか!」とけんか腰です。ほほー,さすがだな。

 ここは冷静に,「いや,キャンセルはしない,私がして欲しいことはすぐに発送してくれることだ。私はあんたを信用しているので,これ以上私を失望させないで欲しい」と返事。

 すると先方は「今日は祝日なんだが,出社して発送しようか?」というので,そこまではいい,お祭り(Chinese lantan Festivalとのこと)なんだから楽しんでね,と返事をしました。

 週が明けた2月6日にすぐに連絡があって「明日送るよ」,2月7日には「今日送るよ」,そしてこの日のうちにステータスが発送済みに変わりました。いいですね,こういうやりとり。

 先方は中国語しかできず,私は日本語,英語が少々という感じですので,本来コミュニケーションが上手くいくとは思えないわけですが,そこは自動翻訳の進歩で互いに英語でやりとりです。ただ,中国語というのはなかなかニュアンスの難しい言語のようで,同じ言葉でも相手の意思を問う(キャンセルするの?)ものになったり,自分の宣言になったり(キャンセルするぞ!)となったりするようで,でもこれって正反対の意味だったりしますから,きちんと前後の意味を考えて話さないといかんなと思った次第です。

 で,2月8日にようやく運送会社が引き受けてくれ,2月9日にはなんと中国を出発,早いですねー。

 翌日には日本に入り,2月11日には通関手続きまで終わり,国内の運送会社に引き渡されたんです。ならあと数日で届くと思いますよね。

 しかしここからが長かった。しかも不安でした。ここからステータスが全く動きません。荷物のトラッキングも出来なくなりました。日本での運送会社は佐川急便とということで,その連絡先も表示されています。しかし佐川ではこの荷物の番号は登録されておらず,それは手元に届いた現在も変わっていません・・・

 では誰が届けてくれたのかというと,なんと聞いたこともない「AZ Project」なる謎の会社です。ググっても大分の会社としか出てこず,天然水やらほかの商品やら出てくるような,運送会社ではなく運送も仕事の1つとしてやっているという,よくわからん会社のようです。

 2月19日,国内に届いてから8日も経過して,ポストに突っ込まれておりました。この間全く荷物は追跡できず,またこちらから連絡することも出来ないという薄氷を踏むような状態で待ち続けた8日間でした。

 うちは近所に同じ名字の人が住んでいて,そちらの方がわかりやすいらしく,とにかく私の荷物が彼らに渡ることが多いです。その都度私は大げさに文句いうようにして印象づけを行う努力をしているのですが,今回同じ事が起きたら,私は泣き寝入りになるところだったと思います。

 届いた荷物には,国内で改めて貼られたラベルがあって,ここには「荷物のお問い合わせ先」としてフリーダイアルの番号が書かれています。

 自分自身の備忘録として,ここにも書いておきましょう。

 AZ Project : 0120-437-327

 5chなどを見ていても,このAZ Projectはトラッキングが出来ない上に遅いという事でとかく評判が悪く,これまでなら佐川であっという間に持ってきてくれたのに昨年秋頃から時間がかかるようになったと,文句が出てくるようになっています。私もまさにこれにあたったみたいです。

 Aliexpressには届くまでに時間がかかる,届かないリスクもある,それでもチャレンジするかい?という覚悟が必要で,むしろそれらのトラブルを楽しむくらいの余裕がないとねと言われたものですが,それが中国側が原因ではなく,日本側が原因になるとは,夢にも思いませんでした。

 大丈夫か,日本?
 もうなにもかも中国に追い抜かれているぞ?

 さて,もう1つの注文はポケコン用のLCDです。これも2年ほど前に同じお店にお願いをしていて,見事にPC-1251とPC-1211を復活させることが出来ました。この時は本命のPC-1245のLCDはこのお店では作っておらず,日本のお店から買ったのですが,久々に覗いてみるとPC-1245はもちろん,PC-1246のLCDまで用意してくれていました。これはうれしい。

 PC-1246はPC-1245によく似ていますが,内部は全然異なっており,CPUは4bitですし,BASICからマシン語を使うことも出来なければ,メモリに直接アクセスすることも出来ません。マシン語を使えるから人気のあったPC-125xシリーズにおいてこれは致命的で,いくらBASICが高速でもねーと,当時は大変不評だったことを覚えています。

 しかし今となっては小さく高速で,わざわざマシン語を使う人もいないという事もあってか,それなりに人気が出ているようです。なのに,LCDの持病はPC-1245から引き継いで閉まっており,多数のPC-1246が再起不能になっています。

 かくいう私も縁あって2台持っており,どちらのLCDも真っ黒です。一時期PC-1245の代替機として常用していましたので,これも復活させたいところでしたが,ようやく願いがかなうことになりそうです。

 価格はわずか$20/枚。某オークションではこれを5000円で売る輩がいますが,なんで直接買わないのかなと思います。オークションでもリスクはありますからね。

 ということで,前回は本当に使えるのか心配だったこともあり数を減らしましたが,今回はちゃんと買うことにします。PC-1251用を1枚,PC-1211用を1枚でそれぞれ予備として,同じく予備としてPC-1245用を1枚とPC-1246用を修理用として2枚です。PC-1251用はすでに予備があるのでこれで2枚の在庫,PC-1211用は壊れた本体がもう1つあるので復活出来るでしょうし,PC-1245用は日本製の予備がもう1枚ありますが,これとはデザインが少し異なるようですので,比較検討の意味も込めています。

 PC-1246用は予備も含めて3枚にするかどうか迷ったのですが,これについては予備を持つ必要はないかもなあとケチってしまいました。送料までいれてしめて$119,地味に円安が効いてきますねー。

 2月2日に注文を出しましたが,このお店は月曜日にまとめて発送するそうなので,焦らず待ちます。米国時間の2月6日にUSPSで発送したとの連絡がありました。

 USPSの引き受けが2月10日,ロサンゼルス空港から飛び立ったのが2月11日,日本に到着したのが日本時間で2月16日ですから,郵便にしては上出来でしょう。

 良く2月17日には通関手続きが終わり,国際交換局である川崎東郵便局を出たのが2月18日,近所の郵便局に届いたのが2月19日で,本日2月20日の午前中に私の手元に無事に届きました。

 こちらは,USPSと日本郵便ですし,番号できちんと追跡が出来ますからなにも心配していませんでした。時間が少々かかるのは郵便だからですし,日本郵便は海外の郵便も土日に配達はしません。だから結局3週間もかかりましたが,1つ1つを見ていくと決して滞留していたわけではないとわかります。

 時間はかかってもよいので,荷物が追跡出来ること,そして何かあったときにこちらから連絡が出来る事というのがとても大事な事で,安心に繋がるものであるということを改めて感じたわけですが,それって確実に届けてくれるものであるなら本来必要のないものでもあるわけです。

 その点で言えば,後者のUSPSと日本郵便は追跡でなくてもむしろよくて,逆にAliexpressこそきちんと追跡ができないといけません。まして日本国内で追跡出来ないなんてのは,ちょっと話にならないと思います。

 一応,私は追跡可能という運送手段を選んであります。ですから途中から追跡できないことは想定していませんし,納得もしていません。ですので,Aliexpressのショップに,改めてお礼のメッセージを送ったついでに,途中から追跡出来なくなった,佐川に引き継いだといってるけど違うところがもってきた,文句をいったほうがいいよ,と言っておきました。

 さて,届いたものはまだ試せていません。Si5351Aも偽物かも知れませんし,LCDだって上手く交換作業が済むかどうかは私次第です。

 まだ寒いので作業をする気にもならず(ちょっと体調もよくありませんし),もう少し暖かくなったら作業を始める事にしましょう。

唯一無二のレンズ

 気になっていたレンズを,とうとう買うことにしました。

 厳密に言うと,変わったレンズだなと気になっていただけであり,買うか買わないかで気になっていたわけではなく,それこそ買おうと持ってから実際に購入鉄津起きに至るまでの行動は15分にも満たないものでした。

 AF Zoom-Micro Nikkor ED 70-180mm F4.5-5.6D,という長い名前のレンズです。

 Nikkorというほどですので,もちろんニコン。1997年生まれといいますから,ちょうど名機F5と同じ時期に投入されたレンズです。

 F5と同じく,高い理想を技術と材料で実現した贅沢なレンズと言えると思いますが,先に結論を書いてしまうとあまり売れなかったそうで,中古市場では幻のレンズになる一歩手前の印象があります。少なくとも,欲しい時にいつでも買えるレンズではないですし,同時に複数のレンズを比較して一番良いものを選ぶ事の出来るようなレンズでもないということです。

 ではなにが高い理想だったのか。それはZoomでMicroだったことです。

 1990年代の終わり頃というのは,まだまだズームレンズの画質が単焦点のそれには届かないものであるのが常識で,どちらかというとズームであることの利便性を訴求した商品が多数派だったと記憶しています。

 それは1本で広角から望遠までとりあえずカバーする便利ズームであったり,ボディとのセット価格を引き下げるためにとにかく安く作った標準ズームであったりしました。

 性能ではなく,それ以外で選んでもらえるレンズである事が,当時のズームレンズだったのです。

 この時期のズームレンズは,ビデオカメラの製品開発の過程で鍛え上げられたそうです。コンスーマー向けのビデオカメラの市場が大きくなり,開発競争が激しくなるにつれ,画素数が限定されるビデオの世界で倍率とコストで競争が起きるのは自明です。

 一方で,21世紀には当たり前になる,単焦点に迫る高画質ズームの萌芽もこのころで,それらは新しいチャレンジとして自ずと高額になる運命を背負い,しかし高額商品を手にできる「保守的なユーザー」の厳しい評価に挑み続けねばなりませんでした。

 そんな中で生まれたのが,このAF Zoom-Micro Nikkor ED 70-180mm F4.5-5.6Dです。

 今さら説明の必要もないでしょうが,随分昔に書かれた「ニッコール千夜一夜」の第18話に登場するこのレンズは,当時の記述らしく,この商品が持つ可能性や開発者の熱量を考えた時に,これが今の「ニッコール千夜一夜」に採り上げられていたら,と残念でならないほど,実にあっさりと,別の言い方をすれば禁欲的にまとめられています。

 曰く,花のマクロ撮影が流行していた,花の撮影こそズームが便利なはず,しかしズームとマクロ(マイクロ)レンズとは両立しない難しい技術,しかもフィールド撮影が目的なんだから持ち運び出来ないとダメだ,と言う制限のなかで,2年歳月を経て完成したのが,このレンズだとあります。

 14群18枚,重さは1kgを越える,まるでガラスのかたまりで,最終的な価格は168000円とあります。前述の通り1997年に発売され,2005年に販売が終了したという短命なレンズです。

 正確なことは分かりませんが,当時はまだニッコールという名前に厳しい基準があり,焦点移動があったらZoomを名乗れないとか,様々な性能の基準があるなかで,Zoomと歪曲収差があってはならないMicroとの両立は,さすがに困難だったのではないかと思います。

 そしてその性能は,70mmから180mmまでのズームをF4.5から5.6まででカバーし,全域で37cmまで寄れ,倍率は180mmでは1/1.32倍と立派なマクロレンズです。しかも通常のマクロレンズと違って被写体との距離によって露出倍数が変化しません。どこでも露出倍数は1なのです。

 ZoomでありMicroであるこの見事のレンズは,新しいマクロ領域の撮影方法を開拓しました。マクロ撮影を行った人なら経験があると思いますが,構図を先に決めるとフォーカスが合わず,フォーカスを先に合わせると構図が狂うということが多いです。

 構図の調整だけではなく,フォーカスも被写体との距離で調整することがあるマクロ撮影では,自分が動けなければ手も足も出ません。さらに相手が動く被写体ならまずます難易度が上がります。

 そこでズームです。ズームが出来れば構図も拡大率も思いのままです。ズームレンズは撮影者が動かずに済むため,多くの名のある写真家が単焦点レンズを使って「自ら動け」と若者を鼓舞した時代にあって,実は自ら動けないマクロ撮影こそ,ズームが欲しい撮影の代名詞だったというわけです。

 とはいえ,設計はとても難しいものだったそうです。噂に聞くに,メーカーを越えたレンズ設計者のとある座談会では「真似の出来ないレンズ」というお題でこのレンズが筆頭に上がったとか,似たようなレンズが他社から全く出なかったのは売れそうにないからというより,そもそも作れなかったからじゃないかとか。

 実際,このレンズは発売時にいくつかの賞を受賞していますし,学会発表では第一回光設計大賞という名誉ある賞も手にしています。このエピソードを聞くと,このレンズの設計は同業者を震撼させたレンズだったと言えそうで,写真家よりも設計者の心に響いたレンズだったということでしょう。

 しかし,一部の写真家はこのレンズの優位性に気付いており,もともと数が少ない上に分かっている人は手放さず使い倒しますので,中古市場にも出にくく,まして新品同様の程度のいいものなど期待薄なわけです。

 登場が1997年というのもまた問題で,18枚ものレンズに世代の古いコーティング,プラスチック製の鏡筒に塗装の劣化,華奢なスイッチやレバーの経年的な劣化と破損,VR非搭載は当然としてAFモータすら内蔵ではないと,明らかに旧世代のレンズなのです。加えてとっくの昔に修理可能な時期を過ぎており,つまり壊れたらもうおしまいです。

 かように厳しいレンズではありますが,世界初のズームのマクロレンズは,今のところ唯一のレンズでもあり続けており,これを使いたいならFマウントを選ぶしか選択肢がありません。

 とまあ,私の事情に話を移すと,やっぱりマクロ撮影は難しいのです。MicroNikkor60mmF2.8Gは性能は申し分ないのですが,いざマクロ撮影をやろうとすると思い通りにいきません。三脚を使えば大丈夫なのですが,小さい相手に大げさな準備というのも敷居が高く,だったらスマホで十分か,といういつもの結論に流れてしまいます。

 そんなとき知ったのがこのズームです。マクロ領域こそ望遠だ,と言うニコンの設計者の主張を頭の片隅に残っており,でも本当ならズームこそ最強なんじゃないかと,もしかしたらマクロ領域の撮影を根本から変えてくれるんじゃないかと,そんな風にストーリーが組み上がって,中古市場を探して回ることになったのです。

 とはいえ中古は縁のものです。いいものがなければ諦める予定だったのですが,幸い自称Aランクの中古がキタムラの地方のお店に安価に出ており,クモリもなく大きな傷もなく,フードも付いているというので買いました。マップカメラではフードなしの使用感あり,でこれよりも高い値段がついていました。

 しばらくして届いた個体は,Aランクと言うよりBランクという感じの使い込まれた1本で,細かい擦り傷も多いですし,プラスチックのテカリもあるし,スイッチも動きが渋く,値段相応だなという感じです。でもいいんです,私も使い倒すつもりで買いましたから。

 幸い小さいホコリはあるものの,クモリもなく,性能も出ているようです。光学的には問題なく,実用品として使うにはなんら問題はありません。

 ただ,そもそもD850のお奨めレンズリストからには記載がない(これはこのリストが作られた当時にすでに販売が終了していたからかも知れませんが),そんなに高解像度なレンズでは覚悟しておくべきだとも思います。

 試写してみましたが,まずマクロ領域では申し分ないです。解像度も十分,歪曲などの収差も問題なく,なにより撮影が想像以上に楽ちんです。撮影倍率が変化しないことも想像以上に便利です。

 一方でAF-S MicroNikkor60mm2.8Gのような切れ味はありませんし,あと一歩寄りたいというところで限界を迎える点で,やっぱ等倍撮影というのはいいなあと思い直した次第です。

 AFが遅いことはなにも問題はありません。確かに静物ならAFは便利ですが,相手が動くならもうMFであわせた方がずっと楽です。

 絞り開放のF5.6でもF8でもF11でもそんなに画質に変化はありませんから,確かに絞り開放から使えるというのは嘘ではありませんが,F11まで絞ってこれか,というがっかり感があるのは事実です。

 ということで,VRがない事を加味すると,F8くらいで撮影するのがこのレンズの良い使い方ではないかと思いますが,総じて本来のマクロ領域の撮影については期待通りです。

 ではもう1つ,一般撮影ではどうでしょうか。実はマクロレンズというのは一般撮影でも好ましい結果を得られることが多いです。やや暗いので敬遠されがちですし,一般撮影用にはもっと良いレンズがたくさんありますのでわざわざマクロレンズで撮影することもないのですが,ボケ味といい解像度といい色のりといい,なかなか高い次元でバランスしているのがマクロレンズです。

 MicroNikkorを名乗る事の出来るほど収差が補正されているズームですので,私はかなり期待していました。しかしこの期待には少々届かなかった様です。

 まず,全体に眠いです。解像度が不足し,線が太いです。それから若干ハレ気味で,白く飛びがちです。またコントラストも今ひとつで,このあたりは当時のズームレンズらしい個性を引き摺っているように思います。

 これらは絞れば改善しますが,F11あたりまで絞ってしまえばVRがないこのレンズではかなり撮影可能な状況が限定されてくるでしょう。歪曲収差がソフトウェアによって完璧に補正される現代において,光学的に補正することに主眼を置いたこのレンズの出番は,もうないのかも知れません。

 とはいえ,ボケはなかなか良好です。自然ですし,滑らかです。そしてちゃんと光を読めば立体的な表現も十分可能なレンズだと思います。

 ちなみにAIですので,F2にも使えます。実際撮影してみましたが,まったく問題なく使用することができました。

 でもさすがに25年前のレンズですね,これを現代にも通用する等とはちょっと言えないですし,はたまたこれに10万円の価値があるかと言えばないと思います。マクロ撮影はセンサのサイズが小さくても構わない撮影領域ですし,持ちやすいことやブレの防止,拡大率やフォーカスの合わせやすさという点が重要ですから,実質的にもうスマホに任せるべき世界なのかも知れません。

 Fマウントが徐々に終わりの時を迎える中で,これは私が買うおそらく最後のFマウントレンズとなることでしょう。実際の稼働率は上がらないとは思いますが,なにより技術的に大変興味深い唯一無二のレンズですし,また評価が大きく分かれるレンズとして,おそらく最後まで持っているレンズになるんじゃないかと思います。

 春になったら外に持ち出してみます。

PC-386BookLのバックアップ電池を単3に

 PC-386BookLの最後の改修を行いました。バッテリバックアップの電池を,これまでの単4から単3にしました。

 先日,PC-376BookLを立ち上げようとしたら,起動しません。原因はメモリスイッチが初期化されてしまったからで,このマシンはIDEからのブートでは,セクタサイズをデフォルトの256バイトから512バイトに変更しないといけません。

 バッテリが切れるとメモリスイッチが初期化されてしまい,セクタサイズが256バイトに戻ってしまうので,起動できなくなってしまうのです。なんと面倒な。

 こういうメモリスイッチは低消費電力でバックアップされるものなので,下手をすれば何年も無事なものなわけですが,PC-386BookLではなんと500uAも消費し,しかも電圧が6Vと破格のものが必要です。バックアップに3mWもの電力が必要ってなんなのよ。

 しかもこの電力をカバーするための大きさを持つNi-Cd電池から派手な液漏れがあって(サイズがでかいと当然中野電解液もたくさん入っていますのでね)基板は壊れるしで,ろくなことがありません。

 一般的なマシンは3.6Vの小型のNi-Cdか,コイン電池を使うことが多いバッテリバックアップの電池ですが,PC-386BookLの場合はおそらく,5Vのマイコンを常時動かしているのではないかと推測しています。PC-386BookLではなんと当時としては画期的なレジューム機能を搭載しているのですが,これのために単なるCMOS-SRAMではなく,マイコンを使っているんじゃないかと思っています。

 当時のマイコンは低消費電力のC-MOSでも5Vが当たり前でしたので,6Vということになったんじゃないのかな,と思います。そうなるとマイコン内蔵のRTCがまた結構な電力を食うので,500uAというのもあり得るかなと言うのが私の結論です。

 それはまあいいとして,問題はそんなでかい電池をどこに格納するのかという問題です。もともとバッテリでの駆動はあきらめていますので,駆動用の電池のスペースに入れればそれで済むと言う気もするのですが,それはちょっと美しくありません。

 なので,これまではLスロットの空きに押し込めるサイズとして単4のNi-MHを5本しまい込んでいました。700mAhの電池ですので,ざっと1400時間のバックアップが可能です。だいたい2ヶ月です。

 しかし,歳を取ると2ヶ月なんてのは2週間くらいに感じるものです。あっというまに切れてしまい,起動不能になったというわけです。

 この問題を解決するには,さらに大容量のバッテリを使うしかありません。そこで考えたのが単3への換装でした。これだと2400mAhですので4800時間,実に半年以上もバックアップ可能です。

 考えてみると,駆動用電池でさえもこれ以下の容量しかありませんでした。もちろん数時間しか使えないものでしたが,それをバックアップ用にあてがうというのですから,そりゃ長持ちするでしょう。

 さらにいうと単4のNi-MHは劣化が早く,すぐに充電出来なくなります。これが単3だと長く使えるのでありがたいです。

 問題は収納場所ですが,電池ケースを工夫すると元の場所に上手く格納出来る事もわかりました。さっと分解して問題なく改造が済みました。

 当然ながら起動も日時も正常で,これが最後の改造になると思います。

 しかしながら,200日というのは,長いようで短いような・・・

 

x265のAppleM1対応はどうにかならんのかい

 2020年末にAppleSilicon(AppleM1)を搭載したMacBookAirを購入して,その性能とバッテリライフに心底驚いたわけですが,大きく期待を裏切るものがffmpegによるH.265のエンコード性能の低さでした。

 H.265もだいぶこなれてきましたし,フルHDのMPEG2のトランスコードのパフォーマンスも,実時間の5倍10倍は無理としても,2倍程度は出てくれるだろうと思っていたところ,まさかの0.7倍という実時間を下回る速度でした。

 Rosetta2によるIntelエミュレーションの方が実時間近く出ていたので,ARM64のネイティブでこれっていうのは,Rosetta2の優秀さを示すものであると同時に,x265のARM対応の悪さを示していて,ここまでひどいとさすがにすぐに改善されるだろうと思っていました。

 そもそもM1にはH.265のハードウェアアクセラレータも搭載されているので,これを使えば10倍20倍も夢じゃないとワクワクしていただけに,この期待外れは強烈なものでした。おそらく私だけではなく,世界中の多くの方がそう思ったことでしょう。

 2023年1月現在,未だに未対応のままです。

 結局うちでは,2016年モデルのMacBookProというインテルCPU(2.6GHz)のエンコードが最も高速で,上記と同じ条件だと1.6倍くらい出てくれるので,インテルMacはまだまだ捨てられないなあと言う結論になっています。

 このうち,ハードウェアアクセラレータについては早い段階で使う方法が明らかになっているのですが,高速である代わりに画質がひどく,実質的に使い物になりません,ここで世界は2度目のがっかりを経験することになったのです。

 Rosetta2によるインテルエミュレーションの方が高速というおかしな事が起こるのは,x265のARMのSIMD拡張命令セットへの未対応が原因でしょう。NEONは,SIMDという命令の通り複数の計算を一撃でこなすもので,行列計算に威力を発揮します。これがないと一々計算のための命令を記述しないといけないわけで,それだけで数倍の差がつくことは自明でしょう。

 聞けば2.5倍程度高速化されるという事ですので,ようやくうちのインテルMacに並ぶことになります。クロックはM1の方がずっと高速ですので,M1にも苦手なものがあるんだなあと思うのですが,この時に必要な電力がまさに桁違いですので,やはりM1の優秀さは変わりません。

 さて,そうなってくると私もNEON対応のx265を試したいじゃないですか。

 これまでは,組み込み済みのバイナリを取ってくるか,自分でビルドをしないとダメだったのですが,私はAACのエンコードにfdk-aacを使っているので,どうしてもソースからビルドしないといけません。

 かといってスタティックビルドなんていう面倒な事をやる気もなく,Homebrewで対応してくれることをずっと待っていたのでした。

 x265のM1のNEONパッチはAppleから出ているそうなのですが,いろいろ事情があってHomebrewでの正式なリリースには組み込めずに長い時間放置されているとのことで,実は昨年秋頃に一度だけ組み込まれた事があったそうです。その後現在はまた外されてしまったようですので,私はこのタイミングを逃していたことになります。

 ですが,Homebrewかつ,fdk-aacが組み込める形で,NEONパッチがx265に適用できる簡単な方法が分かったので,ここにメモしておきます。本当に簡単です。

(1)まずこれまでのx265をアンインストールする。
brew uninstall --ignore-dependencies --force x265

(2)次に以下をエディタでひらく。
/opt/homebrew/Library/Taps/homebrew/homebrew-core/Formula/x265.rb

(3)このうち,
head "https://bitbucket.org/multicoreware/x265_git.git", branch: "master"
という行を探して,以下に入れ換える。
head "https://bitbucket.org/multicoreware/x265_git.git", revision: "0b75c44c10e605fe9e9ebed58f04a46271131827"

(4)x265をインストールする。
brew install --HEAD x265

(5)もし元に戻したいなら,編集箇所を元にもどしてから,
brew install homebrew-ffmpeg/ffmpeg/ffmpeg --HEAD


 たったこれだけです。これで特別なオプションを付け足すこともなく,x265がNEONに対応して2,5倍ほど高速にエンコード出来るようになります。

 先程の条件だと,実時間の0.7倍から1.7倍程度に,2.4倍ほど高速化されました。

 NEONの効能はこんなもんではないはずで,もっとコードを最適化すればさらに高速化されると思うのですが,今のところはこの程度です。ようやく7年前のインテルCPUに速度的には並んだというのが情けないなと思うのですが,繰り返すようにこれがファンレスで動いていることがすごいと思います。

 はやくNEONへの対応,そしてM1およびM2への最適化をして欲しいなと思います。

 

電子工作ってちょっとしたブームになってますよね

  • 2023/01/18 14:20
  • カテゴリー:make:

 1月の下旬に,ある展示会の「にぎやかし」として,電子工作を行っている人の作品を展示する企画に偶然声がかかって,急遽展示品を用意することになりました。

 知人からの声かけだったので,他の出展者はすでに知っている人ばかりで,その実力も行動力も十分に知っているだけに,私のような引きこもりで自分のためにしかやらない(=困ってなければなにもしない)工作を趣味をする人間は,正直困ってしまいました。

 そう,今や電子工作もプログラミングも,人付き合いが上手で明るく人間的に素晴らしい人でなくては,務まらない時代です。

 私が若い頃はですね,こちらにその気があってもむしろ向こう側が避けて(以下略)

 てなわけで,人から逃げるようにこの趣味に閉じこもってきた私にとっては,ちょっとした災害レベルの出来事です。これは困った。

 一応主催者は「なんでもいいですよ」「これまでに作ったものでもOKです」「自分のための工作?いいじゃないですか」とニコニコと全肯定してくれるわけですが,今どきの若い人のコミュニケーション術を言葉通り鵜呑みにすると,年寄りは痛い目に遭います。

 ただ,私も電子工作をはじめたのが10歳の頃,以来40年にわたって続けてきた歴史があります。この中でも「これなら十分使えるな」と思えるものをいくつか,出してみることにしました。

(1)歪率計

 2011年3月に完成とありますので,もう12年も前に作ったものです。子どもが生まれる前のものですから,彼女にしてみれば自分の知らない父親が作ったもの,ということになります。

 当時オーディオ機器を作る事を積極的にやっていましたが,電圧電流,として波形とくると,次は歪みが数値化したくなります。他の測定器ではどんなに工夫してもきちんと測定できず,とても重要な評価項目なのに,でもその測定器は簡単には手に入らないというラスボスが,歪率計です。

 一般的ではないのは,高価であり,汎用性がないからでしょう。原理そのものは簡単で,歪み率の定義に従った回路が組まれているだけのものですが,規模がとにかく大きいのです。

 歪みのない正弦波をある回路に突っ込み,波形が変わったとします。波形が変わったと言うことは,単一の周波数を持つ正弦波に別の周波数が加わったことになるわけですから,出てきた波形から正弦波の周波数だけをカットするフィルタを通してやれば,増えた余計な周波数成分だけが抽出できます。

 その電圧を測定して,元の正弦波の電圧との比が歪み率です。仕組みは簡単ですよね。

 しかし,例えば0.1%の歪率を測定しようと思ったら60dBものフィルタを用意しなければなりません。

 それだけではだめで,元々の正弦波に歪みがあったらアウトですから,フィルタの性能よりもずっと歪みの少ない正弦波の発振器が必要です。

 当然ですが,正弦波の周波数とフィルタのカットする周波数は完全に同調しないといけませんし,さらにこれを任意の周波数で行えなくてはなりません。

 正弦波の発振器はまだどうにかなるとしても,特定の周波数をカットするBEFと呼ばれるフィルタの周波数は可変出来ないといけないし,しかも60dBのフィルタというのは単一では難しいので実際には何段かにするわけですが,それらもすべて同じ周波数に一致させねばなりません。

 これはあかん,絶望的に難しい。

 こういう特殊な測定器ゆえに代用が利かず,高価とくれば,ラスボスの名にふさわしいものになりますわね。ということで,歪率計を持つことは,その人がどれくらい本気でアンプ作りをやってるかを見る,試金石になるわけです。

 当時の私は,歪み率を測る道具としてどうしても歪率計が欲しくて仕方がなかったのですが,新品は50万円から100万円でとても買えず,程度のいい中古品(それでも20万円近くした)も何度も買い逃し,よくよく縁がないと入手をあきらめていました。

 ある時トランジスタ技術に製作記事が載っていたことを思い出し,中古品を買う予算があれば部品にお金をかけたよい歪率計が作れるはずと,部品集めを始めました。

 この記事では,20dBのフィルタを3段繋いで60dBを実現したもので,0.1%レンジでフルスケールの1/100まで読める電圧計を用いれば0.001%の分解能を誇るものです。ただし測定可能な周波数は10kHz,1kHz,100Hzの3点だけ。

 だけど普通はこの3つで十分アンプの性格はつかめますし,仮に任意の周波数の歪率が測定出来ても,結局のこの3つだけ測定しておしまいになることも多いです。

 発振器は別に作る必要がありますので,やはりトラ技の過去記事から0.0005%までいけそうなウィーンブリッジ発振回路を作る事にしました。もう1つ重要なミリバル(ミリボルトメーター)は手持ちの高感度のものがありますので,これは大丈夫です。

 部品はコツコツと揃えたのですが,なにせ規模が大きく,しかもデリケートなアナログ回路です。なかなか最初の1つがハンダ付け出来ないまま時は過ぎていきましたが,意を決して組み上げて,完成したのが2011年の春だったというわけです。

 思った以上に消費電流が大きくて電源電圧が下がってしまい,仕方がなく電源トランスを一回り大きくしたら今度はレギュレータへの入力電圧が上がって,パスコンの耐圧を越えて焼損,と言う情けない事故を起こしたことも良い思い出になりました。

 出来上がった歪率計は,想像以上に高性能で,私自身も驚きました。これなら十分表に出せるデータが取れます。原理的にこの測定器では,実際よりも良い数値は出てきません。現在測定された歪率がとてもよい値だったとしても,それは決して嘘ではなく,実際はもっと良い数値の可能性だってあるのです。

 分解能である0.001%も真空管アンプには十分過ぎるもので,これまで波形の観測と視聴で決めていた負帰還の抵抗も,きちんと数字で議論出来ます。

 もちろん欠点はたくさんあって,まず3点の周波数しか測定出来ないこと。そして発振器の性能が今一歩で,半導体アンプの測定にはもうちょっと歪みの小さなものが欲しいと言うことと,さらに100Hzでは安定した発振状態に収束するのに時間がかかるという問題がありました。

 加えて致命的だったのは,出力がGNDから浮いている場合,例えばBTLの場合は測定不可能であるということです。この測定器はあくまで入力と出力のGNDが共通である回路の歪率を測定するものであり,対GNDではない電圧を測定することはできません。

 そしてその後少しして,VP-7722Aを手に入れます。中に泥が詰まっていて,電源すら入らない,まさに産業廃棄物を3万円で買った私は,悔しさから心血を注いで修理して,復活させることに成功しました。

 そうなると,この自作の歪率家の出番はなくなり,引退することとなりました。短い期間でしたが,そこでの経験はとても印象的なものでした。

 低周波アナログ回路の集大成となる歪率計を実用レベルで完成させたことで,私は十分な自信を持つことができました。音質云々は別にして,低歪み,低ノイズの回路設計と実装の技術を,それなりに手に入れたと思っています。


(2)Si5351Aを使った任意周波数発振モジュール

 これは昨年末に基板を作ったやつです。Si5351Aという便利なPLL ICを使って,異なる3つの周波数をTCXOの精度と安定度で作ることのできるモジュールです。

 ミソは3つ,Si5351Aでは不可能なはずの外部クロック入力,Si5351Aでは許されていないはずの26MHzを源発振にすること,そして起動時に一度だけ使われる設定用のマイコンに米粒AVRことATTiny10を使っていることです。

 外部クロック入力は水晶発振器の端子のうち入力端子に突っ込めばよく,26MHz入力は設定値を計算するソフトがはじき出した設定値の一部をマニュアルで修正して対応しました。なぜ26MHzなんだ,ですか?それは秋月で安く売っているTCXOだからです。

 ATTiny10は今回初めての試みでしたが,これもなんとか突破して,生まれて初めて基板を中国の会社に発注しました。

 結果,14ピンのDIPという一般的な水晶発振器と同じサイズ,同じピン配置で,好きな周波数をTCXOの精度で得ることが出来るようになりました。TCXO精度でなくても,好きな周波数の水晶発振器を手元で作れるというのは夢のような話ですが,それがTCXOという高精度なものなのですから,中学生の頃に夢見た欲しい部品をやっと手に入れたということです。


(3)006P Ni-MHチャージャー

 これも先日書きました。006Pの充電器です。定電流回路を長時間タイマでON/OFFするだけのものですが,10年前に作ったものに2種類の充電プロファイルに対応するための改造を今回おこないました。

 難しかったのは長時間タイマで,ATTiny2313のRAMが足りずに,不意に変数を壊してしまうというバグが発生,再現性がないこともあって解決に苦労しました。なにせ128バイトしかRAMがありませんから,スタックを小さくするしかありません。でもスタックは管理出来ないわけで,十分なゆとりをRAMに取ることしか解決しません。

 結局,足りないRAMはUSARTとGPIOのレジスタに置く事にして回避したのでした。


(4)Nutubeを使ったヘッドフォンアンプ

 一世を風靡したコルグのNutube,待望された一般販売が2016年の末だったので,2017年にはいくつかの作例が世に出ました。その後ブームは下火になってしまいましたが,唯一無二の部品として現在も独特の存在感を放っています。

 そのNutubeをふとしたことから手に入れた私は,無色無臭のダイヤモンドバッファを組み合わせてヘッドフォンアンプを作りました。2016年のことでした。

 面白いのはバイアス切り替えスイッチの搭載です。Nutubeはグリッドバイアスの電圧によって,大きく特性が変わります。そこで,300Bや2A3のような直熱三極管らしいソフトディストーションの特性と,低歪みをねらったハードディストーションの特性をスイッチで切り替えられるようにしてあります。

 どちらも楽しい音で,積極的に切り替えて使うものという位置付けをしていますが,個人的にはソフトディストーションが心地よく,良いヘッドフォンを使えば,直熱三極管のあの音が耳元で再現出来ます。

 

 他にも手作りDCCデコーダやら,ピポっと起動時にあの音が出るSDカードとか,485系や583系でおなじみの車内アナウンスのオルゴールをATTiny85で再現したりと,いろいろ用意はしたのですが,どれもぱっとしないのでやめました。

 また,TCXOなどは実際に12.288MHzと11.2896MHzと8.192MHzの3つを同時に生成するデモを行う予定だったのですが,電源を入れっぱなしで放置するのも気が引けるということで,今回は見送ります。

 先にも書きましたが,今どきの電子工作は見栄えのするものでなければなりません。きらびやかに光ったり,派手な音がしたり,奇抜な形をしていたりというわかりやすさが大切で,どちらかというと何の役に立つか,と言う実用面での評価は今ひとつ重視されていないように感じています。

 決して実用性をおろそかにしていると感じているわけではないのですが,私は動機さえも実用的なところから始まっていて,目的の達成こそが最重要なので,見た目は二の次になりがちです。

 もっとも,そういうアマチュアの工作がプロにかなわないのが見た目であり,それはもう戦前から言われてきたアマチュアの弱点だったのですが,最近は3Dプリンタやら中国での加工やら,良い素材や特殊な塗料も手に入るようになり,随分工作の可能性が広がってきたのは事実で,これまでやりたくても(あるいは出来るんだけども)材料や工作機械の関係であきらめていたことが出来るようになってきたことは,本当に素晴らしい事だと思います。

 しかしながら,かつてのアマチュアの弱点は「中身はプロ顔負け」という枕詞が必ずつくもので,もっと見た目に興味を持てよ,と言う指摘でもありましたから,中身が伴わなかったり,実用性がなかったりするのは,私の中ではちょっと違うかな,と思うところがあります。

 アマチュアですから,やりたいことをやりたいようにやればいいので,同じアマチュアの私があれこれいうのは当然間違っています。間違っているのですが,ゴールが単なるうけ狙いになったりお金儲けになってしまうと,自分は同じ電子工作趣味人に含めて欲しくないなと,そうしたところから距離を置くことを考えてしまいます。

 いかに電子工作が簡単に,手軽になったとはいえ,そこは物理と数学が横たわる世界です。いい大人が「習ってないから知らない分からない」なんてのは体のいい言い訳で,出来なくてもいいから,好きであって欲しいと思います。

 そしてこれから物理や数学を学ぶ子どもたちは,初めてそれらに触れた時に「あーこのことだったのか」とポンと膝を打って欲しいと思うのです。

 

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