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DE50落成

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 先日から復活した鉄道模型,その理由の1つに,DE50のキットを組み立てるというのがありました。

 かのワールド工芸から2016年に発売になった時には,まさかこれがキットになるなんてと驚いた物ですが,かつてはDE10とDD51を使ってスクラッチするかと思っていたほどでしたので,速攻で購入したのでした。

 ただ,引っかかったのは,プラスチックとエッチングのハイブリッドのキットであったことでした。すべて真鍮で出来たキットならと思ったのですが,プラスチック,それも不慣れなABSですので,どうも上手く作れそうな気がしないのです。

 その上,私が買ったのは動力ユニットも自作するクラフトキットなるものであり,走行用の線路がなければ作る事が出来ません。すでにレイアウトを分解してしまっていた私にとって,線路の準備が最大の問題だったのでした。

 レイアウトを組み上げた現在,もうDE50から逃げる理由を失ってしまい,あまり気が進まない中で部品の確認をしたところ,エッチングパーツが曲がっているのを発見,ここでくじけてしまいそうになりました。

 ですが,そこは冷静にワールド工芸に連絡し,部品を分けてもらう相談をすることにしました。破損した部品を1つだけ分けてもらう事は出来ず,エッチングパーツ丸ごとを買うことになったのですが,ともあれ4月上旬にはすべての部品も揃いました。

 ところで,DE50ってなんだ?という人もいると思いますので,簡単に紹介しておきます。

 DE50は1972年に1両だけ製造された,国鉄の大型ディーゼル機関車です。当時は本線用の大型機としてDD51が量産されて全国で活躍していましたが,2000馬力級の大型機の初号機みたいなもんですから,問題点も残っているし,その後開発された新しい技術を使えばもっとよくなるというものもあったりするので,それらを一気盛り込んだ最新鋭機を作りましょうという話になったのです。

 DD51の最大の問題は,エンジンが2つ搭載されていたことです。DD51はエンジンや変速機,足回りもすべて2セットもつ機関車で,いわば1000馬力の小型機を2台くっつけたような構成です。これでは大きく重くなるので運用線区に制限が出ますし,製造はもちろん,保守や点検にもお金や手間がかかります。

 そこでエンジンを1つにして,駆動系も1つにまとめてしまいたいのですが,DD51の後継機にするには2000馬力のパワーが必要です。当時は1350馬力のDE10が精一杯だったわけですが,DD51のV12エンジンに4気筒追加してV16にて2000馬力のエンジンを作る目処が立ち,その大出力を受け止める液体変速機も開発に成功,足回りはDE10で実績のある軸重と横圧の軽減と高い粘着力を持つAAA-Bという軸配列を採用して,当時の最新技術を結集したディーゼル機関車の集大成として誕生したのが,DE50です。

 DE50は試作機ではなく,量産機として誕生しているので,トップナンバーは1です。試験の後,営業運転もスタート,それまでDD51では厳しかった亜幹線で大型機の運用が実現し,開発陣の面目躍如となったわけですが,鉄道貨物の需要減少,客車列車から電車や気動車への移行,そしてオイルショックとディーゼル機関車に吹き始めた逆風にはあらがえず,量産に移行する事なく,1両だけが製造されたにとどまりました。

 DD51との協調運転を行う機能も持っており,かなり柔軟な運用が可能な万能機だったのですが,1両限りというのはなにせ現場には嫌われるもので,ある時圧制した故障をきっかけに運用から外れ,廃車されました。

 私は国産にこだわる人ではないので,純国産技術にそんなに価値を感じないのですが,ドイツ本国では故障も少なく現場で重宝されたロングセラー機であったのに,その技術を日本に持ち込んで作ったDD54があの体たらくだったことを考えると,純国産のDE50が50両ほど配備されたらどんな風になっていたかなと,ふと思ったりします。

 DE10をそのまま引き延ばしたような外観で,特徴あるセミセンターキャブですが,長い方のボンネットにはV16,81400ccの巨大なエンジンが1機格納されています。これで2000馬力ですからね,音を聴いてみたかったものです。

 台車はDE10とほぼ同じで軸配置もC-BではなくAAA-Bですが,左右のラジエータは2倍の面積を持ち,空冷ファンも2台が前後に並んでおり,大型機に相応しい迫力があります。

 運用は伯備線を最後に,廃車後は津山に長く留置されて非公開とされていましたが,有志が保存に務め,やがて正式に保存機となり公開されるに至りました。

 少し前までは知る人ぞ知る機関車だったのですが,近年は広く知られるようなり,勝手に留置場に侵入してくるマニアもいたらしく,今は展示の目玉として大事にされているというお話です。

 EF500-901もそうですが,こういう技術的な理由以外で日の目を見なかった鉄道車両というのは私は大好きで,ぜひDE50も自分のレイアウトを走らせたいと思っていました。それでスクラッチを考えていたところへ,まさかのキット発売だったのです。

 しかし,それから5年,模型を作るために必要な気力,体力,技術,そして道具と材料のすべてが失われており,作り始めるには想像以上の手間がかかってしまいました。

 まずは動力ユニットの製作です。しかしここでも問題発生です。なんとエッチングパーツを切り離すニッパーがありません。そこから買い直しです。

 金属に塗装するためのプライマーもありません。ABSも使いますので,これは今どきのモデラーに常識であるミッチャクロンマルチを導入します。

 勘を取り戻しながらのつたない作業ではありますが,なんとか動力ユニットは完成,どこにDCCデコーダをおさめるか,考えながら走行試験を行います。

 次にボディです。ABSの接着剤が必要ということなので,20年前にはなかったABS用接着剤を購入。臭いといい粘度といい,プラモデルに同梱されていた小型チューブに入っていた接着剤そっくりです。

 すぐに固着しない接着剤で,なかなか苦労しながら組み立てて行きます。キャブと前後のボンネットを接着すると塗装が大変なので,ここは分割して塗装です。

 側面の複雑な造形や空冷ファンの表現は緻密なエッチングパーツを貼り付けます。G17クリアで接着するのですが,手持ちのG17クリアがもう古くて,粘って粘って大変です。

 ある程度組み立てたところで塗装ですが,先にミッチャクロンマルチを軽く吹き付けておきます。そして,あらかじめ固着しかかったグリーンマックスの鉄道カラーを薄め液で溶かしておいたものを引っ張り出し,実車の写真を見ながら色合わせと塗り分けの確認です。

 グリーンマックスの朱色4号は似ていないというのがモデラーの定説で,私はこれに京急バーミリオンを混ぜて使っています。これ,明らかにたらこ色なんですが,白帯を入れると不思議と朱色4号っぽく見えるので不思議です。

 グレーはニュートラルグレーですが,私が基準とするトミックスのDD51(HG)のグレーに比べて,やや濃いようです。

 DE50は白帯が一周しておらず,キャブだけにあります。これも特徴的です。このキットでは,帯とナンバープレートはエッチングパーツを貼り付けることになっていて,曲げてから白で塗装することになります。

 ・・・そして,いよいよ,目をそらすことが出来なくなってきました。実際の塗装をどうするかという問題です。

 もちろんエアブラシを使うのですが,一人暮らしの時に作っていた自作の塗装ブースはすでに捨ててしまいましたし,あれでは家族からの非難が殺到しそうです。そこでまずは塗装ブースの手配です。

 定番のタミヤかクレオスと思っていましたが,ここはエアーテックスのレッドサイクロンに決定。騒音が大きい以外に悪い評判を聞かないこと,値段が下がっていたことでこれに決定です。当てにしてなかったLEDライトは非常に便利で,うれしい誤算でした。

 次に目に入ったのは,コンプレッサーです。数年前から,時々中国製のコンプレッサが安く高性能だという評判を聞いていたのですが,私はタミヤのREVOを使っていたので,気にしないでいたのです。

 しかし,本格的な模型作りをするにあたって,20年選手のREVOはいつ壊れてしまうからわかりません。壊れてから慌てるのも嫌なので,いい物があったらこの際買ってしまいましょう。

 すると,1万円ほどでタンク付きのコンプレッサーがあります。ハンドピースは買い換える必要がなかったのですが,コンプレッサー単品とハンドピースのセット品とではコンプレッサーが異なり,セット品の方が静かというレビューを信じて,セット品を買いました。

 11000円ほどでしたが,これならハンドピースはオマケで付いてきたと思っても十分ですよね。一切,付属のハンドピースは使い心地も悪く,使う気も起きずにそのままです。

 次の問題は塗料です。まずプラサフですが,これも今は番号できめの細やかさを選べるんですね。いい時代です。クリヤー塗装も悩ましく,以前はスーパークリアーUVカットを使っていましたが,今はいろいろあるようで迷います。スーパースムースクリアーのつや消しに,スーパクリヤーIIIを混ぜて使ってみようと思っています。

 これらが相次いで届き,もう言い訳無用になったところで,塗装ブースを設置です。屋根裏の倉庫にブースを設置,排気用の換気扇にダクトを取り付けて排気します。

 コンプレッサーも想像以上に静かで,REVOと同じくらいです。パワーもありますし,タンクがあるので脈流も少なく,しかも圧力が上がればコンプレッサーは自動停止しますから,連続使用時間も延びますし,これはいい買い物をしました。

 プラサフを吹き,まずは白を塗り,次に朱色4号を塗ります。マスキングしてグレーを塗り,最後に黒で塗装は終了。でも楽しい作業なので,ついついのんびりやってしまいます。1色あたり2時間かけてしまいました。

 その後最終組み立てを行います。手すりやサッシを取り付けていきますが,このあたりから急激にそれらしくなっていきます。筆でレタッチを行って整えて行きますが,最後にクリアーを塗装してボディは完成のはずでした。

 ところが,まさかのクリヤー塗装に失敗。表面はザラザラ,黒い部分は白っぽくなってしまい,隙間には白い粉が溜まっています。

 塗料の調合や濃度を調整してリカバーを試みますがすべて失敗。これほどクリヤー塗装って難しい物かと頭を抱えましたが,これまでと変わったのはコンプレッサーです。圧力が大きく吐出量も大きいのですが,さっと吹いてさっと乾かし,何度も重ねることを心がけたこともあり,どうも空気の吐出量が大きすぎて,表面に載る前に乾いてしまったようです。

 どうしようかと迷ったのですが,ここは面倒くさがらずに可能な限り後戻りが鉄則です。手すりなどを取り外し,キャブとボンネットと台枠を分解して,白い粉の吹いてしまった黒い部分はガンダムマーカーエアブラシシステムでさっと塗り直しました。

 同時にオレンジやグレーの部分もタッチアップして,綺麗に修正をした後に,今度は分解した状態でつや消し塗装を試みます。

 今回はエアーの吐出量を少なめにした上で,スーパースムースクリアーつや消しのみを吹き付けることにしました。

 鉄道車両というのは,実物はつやあり塗装を行います。しかし自動車と違って磨き上げることをしませんので,数日もすると半光沢になりますし,廃車されて放置されればつや消しになってきます。

 なので,つやの調整は個人的には非常に難しい調整の部分だと思っているのですが,新製時を再現することを基本とするうちの鉄道模型も,あまりテカテカではリアリティが出ませんし,かといってつやを消すと軍用車両やメンテされていないボロボロの車両になってしまうので,半光沢を狙っていく必要があるのです。

 このあたり,さすがにKATOやTOMIXは心得ていて,うまい表現を安定的に行っています。

 私もかつてはスーパークリアーを調合し,独自のつやになるようにしたものをボトルに入れておいたくらいなのですが,それでもメーカー品の塗装のつやの表現には及びません。

 今回,スーパースムースクリアーがどのくらいの物かを確かめせずにいきなりつやありのクリアーを混ぜて失敗しているので,今回は混ぜることなしに,純粋なスーパースムースクリアーだけで試しました。

 すると,これが非常に良いのです。メーカーの塗装と同じレベル,あるいはそれ以上の質感です。ガンプラのような架空の存在か,衣服の表現に使って好印象というレビューばかりが目に付き,鉄道車両への応用はあまり語られていないように思うのですが,私が試したところ,非常にリアルで,しっとりとした質感が重量物である鉄道車両にマッチして,重量感も出てきます。(つやありはどうしてもプラスチッキーになりがちで,オモチャっぽくなったり,重量感がなくなったりします)

 結果として,いろいろ迷走しましたが,うちはスーパースムースクリアーつや消しで行くことにします。ちょっと特殊な塗料なので,ディスコンが怖いです・・・

 今回は綺麗に吹きつけも出来ましたし,キズもタッチアップの跡も目立たなくなっています。

 満を持して組み立てを行い,手すりなども綺麗に取り付けて,いよいよ完成,のはずだったのですが,あろうことかグレーのタッチアップ時に筆がキャブの側面に触れたらしく,汚れてしまっていました。

 エナメル溶剤では拭き取れず,アルコールでは取れたのですがスーパースムースクリアーも溶かしてしまったので,結局やり直し。キャブだけ取り外してスーパースムースクリアーを塗り直しです。

 今回こそと,慎重に組み立てて,ボディは完成です。

 一方,動力ユニットはDCCデコーダをどう搭載するか考えておきます。電車用のEM13が安くて,しかもライト点灯をしないので好都合なのですが,大きさがどうしても入りません。そこでDZ123を使いますが,これも厚みが少し厳しくて,ボンネット内には収まりません。

 キャブに入れるしかないのですが,キャブも案外狭くて綺麗に収まりません。しばらく悩んだのですが,DZ123の端っこの厚みのある部分だけをキャブ内に逃がし,あとはボンネットに納めることにしました。

 最初に取り付けたデコーダが故障品であることを見逃してしまい,動かずに四苦八苦したのは内緒ですが,新しいDZ123にすれば問題なく走行しました。よし,これでいけそうです。

 そして連結器。これは結構私は軽く考えていたのですが,アーノルトカプラーではない別のカプラーを取り付けるには,結構加工が必要になりました。それでも勾配を登るときには,連結が外れてしまいます。解決は難しく,このままとします。

 そして最後に足回りとボディを組み合わせて,試運転です。

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 走行系も自分で作る必要があるクラフトキットですが,上手く走ってくれています。前後ともスムーズですし,脱線もしません。ボディも今の私にはこれ以上のレベルは無理だと思います。手はかかりましたが,今出来ることは全部やったという気がします。

 客車を牽引させてみますが,連結器に問題があること以外は大丈夫。幻のDE50による列車が目の前で走っていることには,なかなか感動的なものがあります。

 今回のキットはABS製のプラ部品と,エッチングパーツの組み合わせによるキットでした。鉄道模型ではこうしたキットは珍しいと思うのですが,自動車や飛行機のプラモデルには時々見かけるものです。

 とはいえ,これほどエッチングパーツを多用するキットはあまりないと思いますが,このキットではラジエータの細かいディテールやの再現に適したエッチングパーツと,曲面の再現に長けたプラスチックのいいとこ取りを狙っていて,上手く作ればメーカーの完成品に迫る仕上がりになると思います。

 さすがにワールド工芸だけあって,エッチングパーツは手慣れたもので,破綻がありません。手すりなどもエッチングで作ってありますので,実に精密な印象です。

 ただ,プラスチック成形品の精度がいまいちで,気を付けて組み立てないと隙間が出来てしまいます。私もキャブの組み立てに問題があって,塗装前に修正するのが大変でした。

 あと,前後の手すりがちょっとなあと思いました。エッチングパーツですので複雑な形状の再現は難しいとしても,チェーンが省略されているのは残念でした。

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 つくづく模型というのは,手をかければかけるほど仕上がりが良くなっていくもので,妥協すればそこでもうおしまいというのを実感した製作でした。失敗しても後戻り出来るし,後戻りした結果以前よりもずっと良くなることもしばしばあります。失敗をネガティブにとらえず,永く楽しむ時間をもらったと思って取り組むといいのかも知れないですね。

 とまあ,特に塗装は準備に手間もかかりますし,あまり間が開くと腕が落ちますので,もう1つくらいなにか作っておきたいところです。

WX310にDCCデコーダを内蔵する

 カトーの両渡りクロスポイント,WX310のDCC化が次のテーマとなった再開Nゲージですが,思った以上に上手くいきました。

 今回のキモは,新たに導入したDCC出コータ,ロクハンのA060です。コイツはなかなか優秀ですよ。設計者の高い志も感じられます。

 WX310はユニトラックの両渡りクロスポイントですが,その構造は6番ポイントを向かい合わせに4つくっつけたものです。ポイント駆動用のコイルもそれぞれのポイントに1つずつ付いているので,合計4つが同時に動くことになります。

 そしてそのコイルはすべて並列に繋がっており,駆動電流も4倍になります。

 後になって発売された片渡りクロスポイントSX248は4番ポイントを2つ組み合わせたもので,しかも1つのコイルで2つのポイントを動かしますから,電気的には通常のポイントと変わりません。

 バネが強いこともあって,WX310は走行安定性に定評がありますが,設計の古い6番ポイントがベースなので非選択式に設定を変更出来ませんし,なんと言っても全長が長く,310mmもあります。

 一方のSX248は4番ポイントがベースなので全長は248mmと随分短く使いやすいのですが,バネが弱いことと4番ポイントの持病である脱線が多いことで,私にはいまいちな印象です。

 でもやっぱり最大の違いはポイントの駆動コイルの数でしょう。WX310は4つのコイルが動きますので,0.5A定格の現行のポイントデコーダDS51K1なら4つも必要になります。ただでさえ高価なWX310にデコーダが4つとなると金額的にかなり厳しいですし,そもそも内蔵できるスペースもあやしくなります。

 以前使われていたDS51という古い型番のデコーダは駆動電流の定格が1Aまで許されていたので,2つまでならコイルを駆動出来ました。それでカトーが販売していた古いデコーダマニュアルには,DS51を2つ内蔵する改造例が掲載されていました。

 しかし,現在無料で配布されている改訂版のデコーダマニュアルでは,DS52という外付けの大型デコーダを使うように変更されています。

 しかし,せっかくデコーダを内蔵できるユニトラックを使う意味が半減します。なんとしても内蔵し,レイアウトに組み込めば配線不要でポイントを動かす事ができるようにしたいところです。

 で,実はSX248を購入するとき,私はてっきり,これがコイルを2つ持つ物だと思い込んでいたのです。なのでDS51K1では駆動出来ず,なんとかしないとなあと思って探したところ,ロクハンという新しいメーカーさんの,A060というなかなか優れもののポイントデコーダを見つけました。

 A060は実売2000円くらいの安価なデコーダですが,ユニトラックのような極性を替えることで開閉するシングルコイルのポイントマシンだけではなく,モーター駆動のポイントマシンを制御するモードにも切り替える事が出来る上,LEDや電球などのアクセサリを制御するデコーダにもなる,汎用性の高いものです。

 シングルコイルのポイントデコーダとしても,駆動時間を調整出来る上,駆動電流が1.0AとDS51K1の2倍で安心,しかも規格上250ms以内なら2.5Aまで許容するとわざわざ明記していて,なかなかしっかり検討されているものだと感じました。

 このデコーダをSX248用に購入したのですが,コイルが1つだけだったので,無理にA060を使う必要がなくなってしまいました。ですが,手持ちのDS51K1が1つしか残っておらず,かつ新しく買うのが難しい状況なので,壊すと怖いという理由からA060を内蔵することにしたのです。

 まずは,これが本当に使える物なのかをチェックします。A060を内蔵しないでポイントを駆動してみますが,完全に切り替わってくれません。コイルが鳴いているので配線はされていると思うのですが・・・

 そこで,A060の設定をいじってみます。A060はDS51K1と違い,CV値で設定を変更して調整が出来るようになっています。これが汎用性の高さ実現しているんですね。

 取説によると,駆動時間がCV03で設定されていて,初期値は20msです。DS51K1が300msですから,20msというのは随分短いです。(ただ,300msというのは長すぎでコイルの焼損になるという話も耳にします。)

 なら,CV03を変更してみましょう。最大値は250msまでですので,とりあえず100msにします。

 ですが,どうやってCVを変更するのか・・・私が使っているカトーのD101というセットは,デジトラックスのデコーダを前提にしていますし,私自身もデジトラックス以外を使った事がありません。同じような方法でCVにアクセスするのですが全くダメで,アドレスも読み出せません。

 目を皿のようにしてA060のマニュアルを読むと,「ダイレクトモードのみをサポートします」とあります。そういえばデジトラックスはページモードだったなあと思いだし,D101のマニュアルを読みますが,詳しく書かれた箇所はありません。

 DCCでは,CVのアクセスにページモード以外の方法も規定されていて,互換性はありません。ページモードとダイレクトモードで何が違うのかはわかりませんが,D101でもダイレクトモードが使えるようなので,PROGボタンを何度か押して「dir」表示にしてから,CVアドレスを入力してCV値をリードしてみます。

 するとうまくいきました。書き込みも出来るので,これでCV03を変更出来るでしょう。

 しかし,値が残ってくれません。ここでまたしばらく悩んで,A060の取説を読んでみます。すると,CV03を変更するには,CV33を1にしないといけないとありました。

 CV33は動作モードを決めるCVで,初期値は0です。0もしくは1がCV33に設定されているとユニトラックで使われるコイル駆動のモードで動作するのですが,0ではCV03は書き込み不可となり,20msに固定されます。これはきっとコイル焼損を防ぐための安全策だと思います。

 なので,CV33を1にし,CV03を100にしてみますが,今度は無事に書き込みが出来たらしく,読み出し値も一致します。これでポイントを駆動すると,見事にカシャッとポイントが動いてくれました。

 破損を防ぐため,ここから少しずつ駆動時間を減らしていき,私の場合は少し余裕をみて60msに設定しました。これで十分駆動出来ます。

 さて,これで動作確認は出来ました。次は内蔵です。

 A060の最大の欠点は,厚みが大きいことです。これは電解コンデンサに円筒型の物を使っているからですが,あえてこれを使っているのはそのタフさからだと思います。デジトラックスのデコーダのようにタンタルコンデンサを使う手もあったでしょうが,タンタルコンデンサは電圧オーバーに弱いですし,しかも壊れるとショートしてしまうので,なかなか怖い部品です。

 ならば最近使われるようになった積層セラミックコンデンサならいんじゃないのかと思いますが,これはこれで大容量品は耐圧が低いですし,印加する電圧が上がると容量は減るし,高温になっても容量が減るので,実力は7割,最悪半分くらいになると思って使わないといけません。

 しかし,今回はNゲージで用途限定ですので,ギリギリのところを狙って小型化するため,電解コンデンサを積層セラミックコンデンサに交換する改造をします。

 電解コンデンサは2つ使われており,22uF25Vと,47uF16Vでした。

 NゲージのDCCですので,電圧は15Vを越える事はないですから,どちらの耐圧も16Vでギリギリ許すとし,また容量も22uFで統一します。そもそも電解コンデンサも誤差が大きいので,47uFよりも小さめなことも多いです。

 ということで,手持ちの22uF16Vの積層セラミックに付け替えてみたのですが,とりあえずコイル1つは問題なく駆動出来ました。

 この段階でSX248に内蔵してレイアウトに組み込んだわけですが,先日書いたようにやはり両渡りにした方がおもしろく,WX310への置き換えを行う事にしたのです。

 早速WX310を手配したのですが,やはりコイル4つの同時駆動というのは不安があります。規格上は2.5AまでOKなのですぐに燃えてしまうことはないでしょうが,使っている内に壊れてしまうことはあるでしょうし,そもそも駆動出来ないかも知れません。

 ちょっと計算するとわかるのですが,20Ω程度の直流抵抗を持つコイルが4つ並列なので,約5Ωです。この数字ですでにびびっていますが,デコーダのFETのオン抵抗はこの値よりもずっと小さくないと,電圧が下がって動かなくなります。仮にオン抵抗が5Ωだとすれば,コイルにかかる電圧は半分になってしまうわけです。

 なので,駆動電流の定格も大事ですが,オン抵抗の低さもとても重要です。

 これはもうやってみるしかないなということで,WX310をA060で駆動してみました。結果は,あっさりと駆動出来てしまいました。確実に動作するので,このままいけそうです。すごいぞA060!

 あとは内蔵です。WX310の底板を外し,入りそうなスペースにA060を納めて配線します。それでも厚みがあるので,底板のアルミを切り抜いて,デコーダを避けるようにしておきます。

 同時に,非選択式への改造も行い,元通り組み立てます。そしてレイアウトに仮で組み込み,動作テストです。

 結果は問題なし。綺麗に切り替わりますし,脱線もおきません。小さいレイアウトに無理に310mmの線路を組み込みましたので,高架やカーブの接続点で無理をしていて,いびつな隙間もあるのですが,なんとかごまかして使えるような感じです。

 ということで,最終調整は後日として,とりあえずA060はWX310を駆動出来ること,そして内蔵出来ることが実証できました。

 それにしても,DS51K1が入手困難な状態が続いている昨今,同じような価格でさらに高性能なA060は大変貴重な存在です。車両用デコーダのように数が出るものではないと思いますが,引き続き入手しやすい状態が続くことを願っています。

 ついでにいうと,もうちょっと小さく出来るとうれしいですし,なにより厚みを薄くしてくれないと,内蔵が難しくて大変です。かといってA060から性能を落としてしまうとDS51K1となにが違うねん,という話になりますから,A060の性能を維持しながらの話になるわけですが・・・

 

Nゲージ再開とC62-17のモータ交換

 今から15年も前の事ですが,一時期Nゲージ鉄道模型に夢中だった時期があります。

 小学生の時とは比べものにならない財力と知力,そして急激に進歩した業界と,なかなか良い条件で5年ほど遊んだ覚えがあります。

 この時のきっかけは,DCCという車両コントロール技術に触れたことでした。

 通常,鉄道模型の車両はレールに流れた直流電流を車輪を介して集電し,内蔵のモータを回します。ということは同じ線路に動力車を2台置けば,どちらも同じように動いてしまうわけです。

 速度も方向も個別に制御出来ないので,実質2つの線路には1台のみしか置けません。この問題を一気に根本的に解決したのが,アメリカの鉄道模型愛好家の団体が提案した規格,DCCです。実質これが世界標準になっています,

 簡単に言えば,レールにはPWMされた電圧が印加されており,これが駆動用電力として使われますが,PWMの波形には信号も重畳されており,これを車両に内蔵されたデコーダで解析してモータを動かすというものです。

 デコーダにはIDが割り当てられており,手元のコントローラはアドレスを指定してその車両をコントロールします。一致しないアドレスのコントロールは無視されます。

 モータだけではなくライトや警笛も制御可能,ポイントレールを動かすポイントマシンも,電源と制御信号をレールから直接受け取れますので,ポイントマシン用の配線もなくなります。

 どんなに複雑なレイアウトでもギャップを用意する必要はなく,すべてのレールに同じ電源を通電しておけばよいです。ただしループ線が出来てリバースがした場合はちょっと考えないといけないのですが・・・

 とはいえ,国内メーカは参入しておらず,唯一カトーがアメリカのデジトラックから輸入を行っているという感じです。本腰を入れない理由はいろいろあると思いますが,やっぱりお金がかかるということではないでしょうか。

 そう,お金はかかります。デコーダは安い物でも2000円,高いものだと4000円ほどします。これをすべての動力車にいれないといけない訳ですから,たまったものではありません。

 それに,ほとんどの場合,組み込むには改造が必要です。そしてその改造は非常に難しく,元に戻せない改造が必須ですので,リセールバリューが下がります。

 そんなわけで,メリットは大きいのですが,相応の技術力と財力,そして勇気と覚悟も必要という,非常に敷居の高いものとなっています。私がDCCを始めた15年前に比べても,普及は進むどころかますますマイナーになっている感じも受けていて,肝心なデコーダの入手も難しくなっているようですし,デコーダそのものを自作出来るような高度な技術力を持つ本当に好きな人の楽しみになっている感じがします,

 で,そんなNゲージの線路を,私は引っ越しをした10年ほど前に処分しました。荷物を減らしたかったこと,900x600mmの超小型レイアウトに高架まで持たせた無理な路線であったことが原因だったのですが,再開するときにはもう少しましなレイアウトにしたいとも思っていました。

 線路の廃止に伴って,DCC改造前のDD54もそのまま放置されていたのですが,当時新発売になったワールド工芸のDE50も組み立てられずに15年経過しました。

 先日,そのDE50を偶然みたところ,エッチングパーツの一部が変形しており,そのままでは組み立てられなくなっていました。

 急いでワールド工芸に連絡を取ってパーツを分けてもらいましたが,組み立てるにも線路がないので,走行系の製作も出来ません。

 そのうち,購入した車両の状態も気になりましたが,これも実際に走らせて確認することが出来ません。ということで,意を決して線路を用意して,Nゲージを緩やかに再開することにしました。

 今回のレイアウトの目標は,カーブと高架をもっとゆとりのあるものにしたいということです。そのためには大型化が一番の手ですが,定尺のサイズ以外は入手性もあるので,難しいだろうと思っていました。

 とりあえず板を探そうと,ヨドバシを見ていたら,ポスター用のパネルがあります。お値段はそこそこしますが,きちんと枠まで付いているので便利でしょう。

 そしてなんと,1000x700mmという,ちょっと大きめのサイズを見つけたのです。縦横それぞれ10cm大きいと,もう一回りゆとりが生まれます。これはうれしい。早速購入です。

 そして,前回捨てずに残してあった一部の線路を押し入れかrあ引っ張り出して使えるかどうかを確認しますが,道床は変色していますし,もうジョイナーも曲がっています。これは再利用は限定的にしないといけないでしょう。

 大きくなったレイアウト向けに設計もやり直しです。CADを使って線路を引いて試行錯誤を行います。時間をかけて楽しもうと思っていたのですが,どういうことだかAKTOのユニトラックに販売休止が増えています。1本足りないという理由で建設が出来ないのも困ると,あわててレイアウトを作成し,線路を揃えました。間違えて購入するとか,ダブったりという失敗もやらかしましたが,とりあえず揃いました。

 仮組みをして試験走行をしてみますが,車両も劣化していますし,線路も調整が出来ておらず,上手く走りません。なかなか難しい作業になりそうです。

 昨日,もう大丈夫だろうということで娘と釘打ちを行ったのですが,その日のうちにトラブルが発生,そして改良案も出てきたという事で,一部やり直しになりそうです。

 次に車両の確認です。こわごわ動作チェックを行っているのですが,C62-17(KATOの2019-2)が全く走行しません。

 分解すると,モータが固着して発熱しています。よくよく見れば,マグネットを包んでいるアルミテープらしき物がグズグズに崩れていて,ロータとの隙間に挟まっているようです。

 とりあえずモータを取り外してみますが,これはもう交換しかなさそうです。あわててモータを探してみますが,KATOはTOMIXと違ってモータの販売をやっていないんですね。動力ユニットとして入手は可能ですが,70000円近くもします。これは困った。

 しかも,この2019-2,動力に欠陥を抱えていて,後日改良品が出ているそうで,現行のC62はなんとコアレスモータまで搭載しているというではありませんか。

 高かったのになあ・・・

 悔しいので,意地でもモーターの交換です。調べてみると,カトーのポケットラインの動力ユニットに,コアレスモーターを持つ物があるそうです。2500円ほどもしますが,仕方がありません。

 これを分解してモータを取りだして,なんとかC62に納めるというのが今回の作戦です。

 まず,取りだしたモータからピニオンを引き抜きます。これは手で抜けます。するとフライホイールも抜けますので,なくさないように外しておきます。

 次に,オリジナルのモータ(GM3)から,フライホイールを抜きます。これは手では抜けませんが,ピニオンプラーかなにかで抜いて下さい。

 このフライホイールを,コアレスモータに付いていたフライホイールの固定用パーツを使って,コアレスモータに取り付けます。こうすれば本体側のシャフトに問題なく接続出来ます。

 オリジナルのフライホイールの穴を2.0mmの広げて貫通させます。そしてモータ側を4.8mmのドリルで座繰ります。これで先程の固定用パーツが上手くおさまります。このパーツはPOMかなにかなので,プライマーを使って瞬間接着剤でフライホイールに接着しておきます。

 次に,コアレスモータに付いていたフライホールです。これも2.0mmで貫通させて,モーターのシャフトを遠し,モータのボディにG17で接着します。これでモータの長さをかせぐわけです。

 あとはシャフトをニッパーで切断します。上手く長さを合わせないと失敗しますので,少しずつ切るのがよいでしょう。ちなみに私はこの作業で高価なニッパーの刃がこぼれてしまい,,1本ダメにしてしまいました。

 その後,先程のフライホイールをシャフトに接着してモータは完成です。

 これをC62のボディに取り付けます。モータのお尻に1mmほどの厚みのものをはめ込んで,モータを固定します。これで通電すれば,スムーズに動輪が回転するはずです。

 あとはDCCの配線をやり直して完成です。

 試運転すると,実にスムーズに走ります。コアレスモータはいつか使ってみたいと思っていましたが,こんな形で使うことになるとは思いませんでした。ただ,重量が軽くなるので,粘着性能は落ちるようです。

 GM3というKATOのモータは電車の動力にも多用されている物だそうです。まだ調べ切れていませんが,うちの他の車両のモータもダメになっているかも知れません。

 さて,思いがけずモータの交換までいきなりやる羽目になりましたが,線路の方も問題が残っています。

 詳細は後日にしますが,複線渡り線路での脱線が頻発していること,勾配が厳しく多数の車両が登り切れないことの対策をしなければなりません。根本的には,複線渡りを現在の片渡りから両渡りに変更することで,一気に解決出来そうです。

 しかし,両渡りのWX310はポイントマシンが4つ内蔵された特殊なもので,DCCデコーダをどうするかという問題もあります。それにサイズも248mmから310mmに伸びますので,レイアウトも考え直しになるかも知れません。

 そもそも論として,KATOのポイントデコーダであるDS51の入手が難しく,新興メーカーのロクハンが出してくれているA060を使ってみようという事も考えています。

 鉄道模型の世界は,DIYが公式に許された緩い世界です。知恵と工夫でどんどん面白くなるし,そのための素材も多く提供されているので,楽しいです。

 このネタ,しばらく続きます。

 

メルクリンが破産申請

 ちょっと心配なニュースです。

 鉄道模型にかかわるものなら,知らないものはいない,ドイツの老舗メルクリンが2月4日,破産申請をしたそうです。

 メルクリンにとって2009年は創業150年の記念の年です。にもかかわらず資金繰りに行き詰まり,破産するとはなんとも残念な事です。

 日本の鉄道模型も,かつては子供のおもちゃだったわけですが,当時の子供達が大人になり,少しずつ年齢層が上がって大人の趣味になってきたかなあと思うことがあります。

 HOゲージのような昔から高価だったものは今でもそうですし,Nゲージでさえも,最近は子供経済力ではついて行けないような金額になってきています。鉄道模型はおもちゃではないという主張がこういう形で裏付けられるのは,ちょっと複雑な気分です。

 メルクリンと言えば,やっぱりZゲージでしょうか。線路幅6.5mmの超小型模型ですが,ディテールはしっかりしており,しかも大した牽引力でなめらかに走行します。もはや精密機械といっても過言ではないと思いますが,よく考えてみると老舗のメルクリンのレベルに追いついたような模型を,私はまだ見たことがありません。

 Zゲージは,メルクリンの1万円ほどの最小キットを持っているにすぎませんが,世界のリーダーだったメルクリンには,早く再建し,また世界の模型人を唸らせて欲しいものです。

散々な出来の池上線1000系

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 久々にグリーンマックスの模型を買ってみました。

 一時,エコノミーキットを寝ても覚めても作っていたことをがあったりしましたが,近鉄の16400系の完成品を買ってから,あまり気になる物もなくて遠ざかっていました。

 完成品はそもそも高いし,実はKATOやTOMIXよりも出来は今ひとつですし,積極的に買おうという理由は見つからずにいたわけです。

 ところが,年明けにふと模型屋さんの案内などを見てみると,東急1000系の池上線仕様が出るといいます。完成品に準ずる組み立てフルキットということですし,それに池上線ですから3両編成でフルセットです。お金もかかりません。

 池上線というと,私がかつて世話になった社員寮の最寄り駅がある線区です。

 いよいよ生活の場を移すその日,つい3時間前には片道の新幹線の切符を自分の覚悟と共にポケットに詰め,やがて山手線で五反田までやってきた私は,そこから初めて乗り込む「東京の私鉄」に,目を丸くしました。

 およそ近代的とは言えないような古びた駅は,ホームが1つだけで両側に線路がある,折り返し運転前提の始発駅です。そこにいた3両編成の小さく短い電車は,私をどんな田舎に連れて行ってくれるのかと,相当の不安に陥れるに十分でした。

 ゴトゴトと小さな振動に揺られながら,昔ながらの町並みを抜けていきます。地下の駅は別ですが,地上の駅は柱も木のまま,まるでローカル線のようです。

 自分の降りるべき駅はそう遠くはなく,10分ほどで到着したのですが,そこで案の定道に迷った私は,散歩中の叔父さんに場所を尋ねることにしました。

 春から社会人だ,この木近くの寮に入る,という話をしながら道を尋ねた私は,「東京の人は冷たい」という固定観念を打ち崩すような,とても優しい口調で丁寧に場所を教えてくれた上,この街がどんなところなのかを教えてくれたりしました。

 そこが東京でも屈指の高級住宅街であることを,私はその時知ることになります。

 そして以後数年間,最も変化の激しかった新人時代に,私は毎日池上線を利用するようになります。時には反対側の蒲田に出かけ,あの独特な猥雑な雰囲気を楽しむこともありました。道中の小さな古びた駅を池上線の味として楽しむことも忘れませんでした。

 ある夜,酔っぱらいに絡まれ,成り行きから電車を一緒に降りることになったのですが,姿の見えないその酔っぱらいをきょろきょろ捜すと,駅の前の果物屋でミカンを買っていて,私が近づくと「食べるか?」と,おいしそうなミカンを手渡されたことを思い出します。

 今にして思えば,池上線ではいろいろな思いをしましたが,結局どれもほのぼのだったなあと,そんな風に思います。

 1000系は,ちょうどそんな私が乗っていた電車です。

 1000系に搭載されているVVVFインバータは1980年代後半のもので,その発振音が可聴帯域にあるため,加速時には独特の「音」がします。これが敬遠されて1990年代のVVVFインバータは可聴帯域よりも上の周波数を使うようになりました。

 1980年代後半という時期にVVVFをいち早く導入したのは,東急もそうですが関西の近鉄もそうでして,ちょうど私が高校生の頃,ピカピカの最新型の電車の証として,その「音」を鳴り響かせていましたから,普通は敬遠されるあの音は,私にとってはある種の郷愁と青春のほろ苦さを思い起こさせる物になっていたりします。

 前置きが長くなりましたが,発売日の前日にいつもの模型屋に予約を依頼,翌日無事に手に入れることが出来ました。

 エコノミーキットと違い,黙って説明書に従って組み立てれば完成品と同じ物が出来上がるというキットですので,あまり手を汚すことはないだろうなあと思っていたのですが,塗装を全くしなくて良いわけではなさそうですし,保護用のクリアは吹いておこうと考えたので,結構大事になってしまいました。

 冬場は塗料の乾きが遅い上,どうしても衣類からのホコリが多く出てしまいます。そのせいでホコリの付着が夏場よりも深刻なのですが,今回もかなりホコリに苦労しました。クーラーの塗装も何度もやり直す羽目に陥りましたし,それでも多少のホコリは割り切る必要がありました。

 そんなわけで,出来は今ひとつです。

 しかも,組み立てで普段ならやらないようなミスを連発。

 窓硝子のパーツをランナーから切り取るときに,うっかり割ってしまいました。ちょうどドアの窓です。割れた物をプラモデル用接着剤でくっつけようとしたのが初心者並のミスで,つなぎ目が目立って仕方がありません。

 クリア塗料を使ってごまかそうと思ったのですが,これがますます見た目を悪くする結果となりました。

 型を取ってプラリペアで複製も試みましたが,すでに溶剤が茶色く変色しており,まともな複製は作れませんでした。結局,0.4mmのプラ板を貼り付けるのが一番いいという結論に至ってショボーンです。

 また,ボディマウントTNカプラーを無理に付けようと改造したおり,動力台車のカプラー部分を削って加工した時の削りカスがギアに噛み込んでしまいました。

 スムーズに回らないことを発見して台車を分解したら,うっかりギアを紛失。動輪のうち片側は回転しません。

 こういう場合,すっかりモチベーションが下がって適当に作ってしまう物なのですが,意外にプロポーションもよく,DCCデコーダの組み込みもうまくいったので,ヤケにならず落ち着いて仕上げてました。

 たかが3両ですので,1軸くらい動軸が死んでいても,ちょっとした坂道くらいなら上ってくれます。

 そんなわけで,あの見た目につまらない東急の車両も,うちには8000系,8500系,8090系,そして1000系と揃いました。毎日見ていると,案外愛着がわくものです。

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