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2024年12月の記事は以下のとおりです。

ワンダースワン復活の道~その2

 ワンダースワン復活計画,まずはスワンクリスタルの復活に成功しました。過去最大級の盛大な液漏れによる基板の破損に絶望的なレベルのビネガーシンドロームによるLCDの損傷という致命傷からの復活です。

 これはうれしいですよ。ワンダースワンシリーズの最も完成度の高い機種であり,無改造品では最も実用性が高く,そのせいもあって最も高価な値段で取引されているものですので,これが復活出来たというのは,液晶の劣化(ビネガーシンドローム)が避けられないものであるスワンクリスタルとしては,非常に意味のあることだと思います。

 と大きな事を言ってますがやったことは実に簡単で,基板についてはジャンク品の基板を移植,LCDについては劣化した偏光フィルムを貼り替えただけです。

 まず基板。これはもう偶然としか言えなくて,使用感ありありで傷だらけの,動作未確認のジャンク品を手に入れました。価格は8000円くらいだったと思います。ちょっと高いなと思いましたが,LCDの程度もそんなに悪くなさそうだったので,どっちも使えたら儲けものだとさっさと購入しました。

 数日後に届いたものを確認したところ,わずかな電池の液漏れがあったみたいですが基板は無傷,幸い正常に動作しました。ジャンク品ということで動作しない場合は面倒だと思っていましたが,それでも修復できるだろうと思っていたところ,正常に動作してなによりでした。

 さて次はLCDです。このジャンク品についてきたLCDも,真ん中に少し膨らみがあり,色も全体に黄色くなっているのですが,目障りなほどではありません。十分にゲームを楽しむ事が出来る状態だと思いますが,せっかくですしビネガーシンドロームで完全に死んでしまった私のスワンクリスタルのLCDを復活させてみます。

 この場合,なにより難しのは,新しい偏光フィルムを手に入れる事で,10年前なら絶望的だったでしょう。

 しかし今は世界の工場,中国から誰も簡単に部品を手に入れる事の出来る時代です。円安かつ,中国の経済力が上がったとは言え,それでも小分けされたものを安価に手に入れる事が出来る状況は非常にありがたく,私もなにかとお世話になっています。

 最大の問題は,その種類があまりに膨大であることです。これほど多いと何を買っていいやら,何が適合するやら,さっぱりわかりません。検索するのも一苦労なら,検索後に絞り込むのも至難の業です。めぼしい物が見つかっても試すわけにはいきませんし,気軽に返品できるわけでもないので目利きが重要という事になるでしょう。

 私の場合,LCDにそんなに詳しいわけではないのですが,とにかく情報を集めてスワンクリスタルの反射型TFTに適合しそうな偏光フィルムをいくつか選び,一か八かで購入して試すことにしました。

 aliexpressは安いし品数も膨大,しかしも最近は早いし信頼性も高いという事ですでに当たり前になった感がありますが,もう一度同じ物を買おうと思っても売っていなかったり,以前購入した業者があっという間になくなっていたりするので,まさに一期一会。リサイクルショップで掘り出し物をつり上げるくらいの気分で買い物をすることになります。

 なので,例えば「これが使えたよ」というありがたい情報を入手しても,その通りの物を入手することはほぼ不可能です。仮に手に入ることがあっても値段が大きく変わっていることも多くて,実質的に入手出来ないことも多いですし。

 しかし,有益な情報であることは変わりません。それを手がかりにあれこれ探ったところ,いけそうなものを2つほど選んで購入,価格もピンキリなので出来るだけ安いところを選んで購入しました。

 最近は本当にaliexpressも早くなった物で,1週間かからない場合もあります。小さな物でもロストせずきちんとポストにはいているのを見ると,ここまで多くの人の手にわたって海を越えここまでやって来たんだなあと,しみじみ思ったりします。

 さて,どの偏光フィルムを買ったのかですが,あいにく私もわからなくなってしまいました。スワンクリスタル用と書かれたものを買って,結果的にこれが一番マッチしたわけですが,それがどういう商品名だったか,どのお店で買ったかはもうわかりません。

 で,届いた偏光フィルムを早速試してみようと,古い偏光フィルムを剥がしたLCDを繋いで動作させ,新しい偏光フィルムを上に重ねてみました。

 しかし,残念な事に全く表示が出てきません。裏返しても,クルクル回してもだめです。

 うーん,やっぱりそんな簡単な話ではないなあと心底がっかりしたのですが,晩ご飯を食べてから,ふと保護フィルム(というか糊のある面の剥離シート)を剥がしてみたらどうだろうと思い立ち,試してみたら綺麗に表示が出ました。

 すごいですね,まさにあのスワンクリスタルの画面が復活です。感動しました。

 確かに位相差フィルムを使って表示を出しているとは思いますが,まさか保護フィルムも位相差を作り出しているとは思いませんでした。保護フィルムを剥がすと正しい位相差になるというのが理屈だと思いますが,これはさすがに事前にはわからないですよね。

 ということで,適当なサイズに切り出してLCDに貼りますが,糊のついた偏光フィルムはホコリが入ったり気泡が残ったりとなかなか難しく,悉皆するとやり直しが利かないので,実は私は1度失敗しました。2回目は綺麗に貼れたので良かったのですが,ちょっともったいないことをしました。

 ところで,リスク回避という事でゲームボーイアドバンス用の偏光フィルムも買ったのですが,こちらも同じように保護フィルムを剥がすとスワンクリスタルでも綺麗に表示が出ました。ただ,よくよく見ると少し色が異なっていて,スワンクリスタル用として購入した物に比べて,黒が青みがかってしまいます。

 おそらくですが,縦位置と横位置に合わせて,位相差を調整して色味を合わせているんだろうと思いますが,オリジナルのスワンクリスタルと比較して,黒がしっかり出ているものが近い方を選んで貼りました。

 貼った物を早速動作させましたが,スワンクリスタルを初めて起動したときの感動が甦りました。ジャンク品についてきたギリギリ使えるオリジナルのLCDと比べてみましたが,地色の透明度が高く,発色も素晴らしいです。オリジナルは20年以上経過しているので,地色が黄色くなっていますし,透明度も下がっているのでコントラストも低く,色も良くありません。

 見ていて惚れ惚れしてしまい,しばらくGUNPEY EXを夢中で遊んでしまいました。

 ということで,まずは1台,スワンクリスタルが復活しました。これでとりあえずワンダースワンのソフトをプレイできる実機を1台確保できたので一安心です。

 ちなみに,今回入手した偏光フィルムは,ワンダースワンカラーのFSTNカラーLCDの偏光フィルムとしても使えそうです。きちんと試したわけではないのですが,簡単に試したところネガポジ反転もなく,正しい色で表示が出来るとことまでは確かめました。ただ,オリジナルに比べて発色やコントラスト,明るさが十分かどうかは自信はありません。

 もともと見にくいLCDでしたので,偏光フィルムを交換したくらいで実用レベルに達するとも思えませんから,これはもう深追いする予定はありません。IPS化する予定ですし。

 それからやはりビネガーシンドロームでLCDが死んだモノクロの初代ワンダースワンですが,これもFSTNの白黒LCDがオリジナルで,巷でよく見るTN用の偏光フィルムによる緑/青のなんちゃって修理ではだめだと,なにか良い方法はないものかと考えていました。

 もしかして今回のTFT用の偏光フィルムが使えたりしないかなと期待したのですが,これは全くダメでした。位相差フィルムを通した,白/黒モードの表示こそ,初代ワンダースワンのこだわりの1つで,安易に緑/青で修理出来たことにはしたくはないのですが,これを実現出来る偏光フィルムの入手がもう絶望的で,実はもう諦めかけています。

 多くの修理例のように緑/青でいいか・・・なんて日和りつつあります。

 さてさて,今回甦ったスワンクリスタルはうちのリファレンス機としてオリジナルの状態を保つ動態保存機の位置付けです。実用機はあくまでワンダースワンカラーのIPS改造品であり,これは割ってしまったLCDが届いてから作業開始です。
 
 気長に続きます。

ワンダースワン復活の道~その1

 ワンダースワンのお話,まず第1話です。失敗というか,恥ずかしい話です。

 作戦その1として,とにかく動くワンダースワンの確保をということで,仮にオリジナルに戻せても実用性に乏しいワンダースワンカラーをバックライト付きの見やすく綺麗なIPS液晶に換装することにしました。

 これ,数年前から死んだワンダースワンカラーを復活させる方法としても,あるいは貴重なスワンクリスタルを越える実用機を手に入れる方法としても注目されている方法で,多くのワンダースワンカラーが実用機へと生まれ変わっています。

 中国生まれのこの画期的な改造について,私は残念ながら詳しいことをよく知りませんが,液晶そのものはゲームボーイアドバンスのIPS換装キットと共通で,ワンダースワンカラーもしくはゲームボーイアドバンスのLCD出力信号を変換し駆動するコントローラ基板を,本体基板とLCDの間に挟むことでIPS化を実現しています。

 もちろん,コントローラ基板は機種ごとに違っているのですが,ワンダースワンの特徴であるセグメントによるステータスアイコンを,画面の端っこにドットマトリクスで表示することも,このコントローラの役割です。

 コントローラ基板そのものはワンダースワンカラーもゲームボーイアドバンスの共通のようで,コントローラLSIが違うのか,あるいはLSI自身はFPGAで,その中身を機種ごとに変えてあるのかは不明ですが,どっちにしてもLCDは共通,コントローラ基板は機種別になっているようです。

 キットとして売られていてamazonだと12000円くらいなのですが,aliexpressだと8000円弱,特価で6000円程度で売られています。すでにaliexpressに抵抗のない私は,もちろんaliexpressに注文です。

 1週間ほどで届いたものをテストしましょう。本体とコントローラ基板,そしてLCDをフレキで繋いだだけではだめで,フレキの途中に出ている2箇所のランドに5Vと3.3Vを供給するため,DC-DCコンバータモジュールから2本ジャンパを飛ばします。

 電池を繋げてスイッチを入れると,鮮やかな表示が正常に行われました。いやー,この綺麗さはモチベーションが上がります。素晴らしい。フレキの途中にあるタッチセンサに触れると輝度が変わり,長押しでカラーと白黒が切り替わります。

 説明によると,バックライトへの電流が多すぎて問題がでているらしく。電流を減らすための抵抗が同梱されているのでコントローラ基板にある10Ωを51Ωに交換しておきます。

 さて,これを本体に組み込むのですが,ここからが地獄の始まりでした。

 まず風防(透明パネル)です。これ,先日某ゲームショップで買った物がもったいないのと,ガラス製で高級感があるので再利用を考えていたのですが,あいにく剥がしたときにアルコールで融けた両面テープの糊がベタベタとついていて,これを取り除く必要がありました。

 見た目に綺麗に取れたようでも,LCDを取り付けて見ると拭きムラが残っていたりと,とにかく綺麗にし切れません。静電気でホコリもつき始めて,すでに混乱気味です。

 そのうちLCDにもホコリがついたり,うっかり触って指紋がついて,これを拭き取ると簡単に擦り傷がついてしまい,またパニックに。

 かなり目立つ傷がついてしまったのでデジカメ用のLCD保護フィルムを貼り付けて傷を消しますが,キズは綺麗に消えるものの,微妙にサイズが小さくて一部そのままになってしまう部分もあります。不細工ですがやむを得ません。

 風防もガラス製の物は諦めて,今回のキットに付属していたプラスチック製の新品に変えることにしました。ホコリも傷もなく,綺麗に組み込めたので,最初からこうすれば良かった。

 ボタンと基板を組み込み,ケースをビス留めして完成です。

 しかし,いざ電源を入れてみると画面にゴミが出ています。画面の右に2本ほど,まるで天の川のような帯が縦に2つ出ています。綺麗な線ではないので最初はLCDの破損だとは思わなかったのですが,ルーペで見るとその帯は点灯しているピクセルの集まりでした。

 こまめに表示テストを行って作業を進めたので,最後の最後に表示不良が出ることにがっかりしたのですが,取り付けに失敗しているのかも知れないとLCDを剥がしてみますが,やはりゴミは同じ場所に出ています。

 まだLCDの問題だと断言出来ないので,フレキやドライバICをぐいっと指で押して表示の変化を見ますが変化なし。とはいえなかばLCDの破損だろうと思っていた私は,思わず不用意に指に力を入れてしまい,ペキッとLCDを割ってしまいました。

 万事休す。

 そもそもこの某ゲームショップのガラス製の風防には振り回されっぱなしです。サイズがやや大きいので取り付けに苦労し,そのせいでオリジナルのSTN液晶が死にました。今回もコイツのせいで何度も何度もLCDを付けては外し付けては外しを繰り返し,擦り傷を付けたあげくに割れてゴミです。時間も手間も費用も浪費してこの有様です。金返せー。

 とまあ,物に八つ当たりするのは筋違い。すべては私の鈍くささが真因です。ここに至って結局ワンダースワンカラーのIPS化は失敗に終わりました。私は悲しみあまり,倒れるように布団に入り,己の力のなさに打ち震えながら,意識が薄れていくのを待つほかありませんでした。

 しかし,このまま終わってしまうのは実に悔しい。そこでaliexpressでLCDだけを注文しました。3000円ちょっとだったので,合計でここまで合計9000円ほど。それでもamazonよりも安いのでなんとか納得していますが,一応小型機器の商品設計をやってきた私のプライドはすでにズタズタです。もとい,これは今の自分を冷静に見つめ直すチャンスとすべきでしょう。

 新しいLCDが届くのは10日ほど後です。ただ,この見た事もないようなまだらにピクセルが点灯して出来た帯は,明らかなLCDの破損で出てくる症状と違っているので,どうも解せません。LCDの問題なら新しいものが届けば問題は解決ですが,もしこれがコントローラ基板の問題なら問題は解決しないでしょう。

 昨日のうちにとりあえず1台が復活するかと期待しました。実際,あとは組み込みという所まで来ましたが,そこから急にゴールは離れていきました。いい夢を見られると思って頑張りましたが,慌ててやるとろくな事はありません。やっぱり作業そのものを楽しむくらいの余裕を持たないと失敗するなと,つくづく思った次第です。

 ワンダースワンの次の復活のチャンスは,数日以内に中国から届く,別の作戦用の部品です。実はこれが本命。しかしこれも一か八かの大ばくちですので,上手くいくとは限りません。作業前に詰む可能性も高いので,作戦から考え直す必要があるかも知れません。

 ともかくも,焦らず気長にやってきましょう。いやなに,どんくさいのはいつものことですし。

 

ワンダースワンも死んだ,なぜだ!

 私がこれまでに見て来て,その生い立ちに共感したものの1つであるワンダースワン。先日のスワンクリスタルの電池液漏れ(とLCDのビネガーシンドローム),ワンダースワンカラーのLCD破損によりカラーモデルを失った私に,更に追い打ちをかける事実が発覚しました。

 ひょっとしてと胸騒ぎがして倉庫から出してきた初代ワンダースワン(クリスタルブラック)のLCDが,見るも無惨に死んでいたのです。グレーだったLCDはなぜか黄緑色に変色し,ひび割れています。こんなものでもビネガーシンドロームは容赦なく襲いかかり,その命を奪ってしまうのか・・・

 しかし,私はこれを割に軽く考えていました。モノクロ液晶でしょ,なら手持ちのモノクロ用の偏光フィルムに交換すれば済むよ,と。

 ですが,その考えは甘かったと言わざるを得ません。劣化したLCDを見て,あれ,ワンダースワンのLCDって緑色だっけな?と思ったのですが,これはきっと偏光フィルムが劣化しているからだと都合良く解釈して,自分の浅はかさを押し隠しています。

 分解してLCDを取り外し,酸っぱい臭いも強烈な劣化した偏光フィルムを剥がしてみると,見慣れたグレーの画面が出てきます。確かこのグレーに黒の表示だったと思うんだけど考えながら,手持ちの偏光フィルムを重ねてみます。

 すると,緑色に・・・これで動かしてみると,緑バックに青色で表示されました。ああ,なんと,昔々のゲームボーイか,昔々のワープロ,あるいは昔々のPC-98LTじゃないですか。

 だんだん思い出してきました。TFTのLCDが高価すぎて高嶺の花だった20世紀末,庶民にとっての現実解はSTN液晶でした。

 STN液晶はTN液晶の改良版で,どちらもパッシブマトリクス液晶の代名詞となっていますが,これは液晶の動作モード(ねじれ具合とでもいいますかね)の分類です。

 一方のTFTというのは駆動方式による分類であって,実は動作モードとしてはTNであることを,ちょっと液晶テレビに詳しい方ならご存じでしょう。

 TN液晶は,あらかじめ90度ねじってある液晶に電圧をかけると液晶の並び方が変化してねじれがなくなることで,表面の偏光フィルムを光が透過したりしなかったりすることで表示をします。しかし,90度しかねじる事が出来ないために問題がありました。

 それは,解像度を上げるとコントラストが下がる事。解像度と言うよりも走査線の数なんですが,パッシブマトリクスでは全ラインにまとめて電圧をかけることになるので,1ラインあたりの電圧はラインの数が増えるほど小さくなります。

 この小さい電圧で液晶をねじる必要があるので,少しの電圧でも急峻にON/OFFする特性がなければ,コントラストが下がってしまって,やがて何も見えなくなってしまいます。

 これを打破するために登場したのが,STN液晶です。

 SはSuperのSで,ねじる角度をアップして,なんと260度とか270度くらい(ただしねじりの向きはTNの逆です)です。

 TN液晶は単純なシャッターで表示を行っていましたが,STNではこのねじれのせいで生ずる複屈折による色の変化で表示が行われます。

 この結果,電圧の変化に対するON/OFFを急峻にすることができ,コントラストが向上しますし,解像度も上げられるというわけです。

 しかし,STNには致命的な欠点がありました。白黒表示ができないのです。TN液晶は文字と背景を白と黒に出来るのではっきり見やすいのですが,STNでは背景と文字が黄緑と青になってしまうのです。これは先程書いたように,STN液晶は複屈折を利用しているため,避けようがありません。

 この複屈折というのは,屈折する光が1つではなく,2つになることを言うのですが,2つがどれくらいずれるかは,その光の振動面にも物質にもよります。

 そして,ずれた2つの光には速度差があるので位相差が生まれます。これを最終的に1つの偏光板で合わせると,位相差によって色がついてしまうというわけです。

 色がついてしまうという事はカラー化は無理ですし,モノクロであっても見にくいですよね。初期のSTN液晶を搭載したワープロやラップトップPCに,黄緑色と濃い青の表示のものがあったのは,そういう理由です。

 そこで,もう1枚液晶を重ねる方法で白黒にする方法なんかも開発されたのですが,決定打になったのはFSTNというものです。位相差が原因で色がつくなら,その位相差を打ち消すような逆の位相差を生む複屈折を起こすようなフィルムを挟めばいいんじゃないか,という発想で生まれた技術です。

 プラスチックには大なり小なり複屈折性を示すものが多いので,都合のいい物を上手く選べばそんなに高価でもありません。これを偏光フィルムの前に置きさえすれば,あのSTN液晶が白黒で表示出来るんですから,こんな美味しい話はありません。

 このフィルムを位相差フィルムとか,補正フィルムと呼びます。偏光フィルムとLCDのガラスの間に挟んで使うとあら不思議,綺麗な白黒になってくれるというわけです。

 こうすることで見やすいモノクロLCDとして,あるいは安価なカラーLCDとして,一気に普及し始めます。カラー化したガラケー,小型のノートPC,ゲームマシンと,市場が望んだカラー表示の時代がやってきました。

 しかし,それもTFTが安くなるまでの話。応答速度が極端に遅く,角度によって色が大きく変わってしまう,発色もコントラストも悪いし,暗い所で良く見えないというSTN液晶を,今見る事はほとんどありません。ああ,ロストテクノロジー。

 さてさて,ワンダースワンのモノクロLCDも,実はFSTNです。だからきちんと白黒ひょうじだったのです。しかし,そのキーテクノロジーだった位相差フィルムこそが,実はビネガーシンドロームの張本人で,偏光フィルムを剥がした後にもガラス面に残って,酸っぱい臭いを放っているのです。

 もちろん,位相差フィルムがなくても偏光板だけで表示は出ます。出ますが,コントラストは低いですし,色も緑と青になり,およそ見やすいとは言えません。某レトロゲームショップが公開しているワンダースワンの修理はこの方法なので,オリジナルから遠い,品質の低い修理方法と言えるでしょう。

 同じ理由でワンダースワンカラーも単なる偏光板では修理出来ません。スワンクリスタルが採用しているTFT液晶でも,見る角度によって色が変わることを防ぐ目的で位相差フィルムが使われていて,これがビネガーシンドロームの原因になっています。。

 つまるところ,セグメントやパターン,ポケコン程度の解像度のLCDの修理に使う偏光フィルムでは,STNやTFTのLCDの修理は出来ないという事になってしまうわけです。

 さて困りました。これで,我が家のワンダースワンは,カラー/モノクロを問わず,すべて死んでしまいました。グンペイもワンダースタジアムもギレンの野望もMSVSも,もう遊べません。

 なんと言うことか!

 某レトロゲームショップによると,ワンダーウィッチプレイヤーのカートリッジの買い取り価格が3万円だそうです。私,持ってるんですが・・・


 そんなわけで,全滅したワンダースワンたちが三枚おろしになって眼前に広がっています。どうすることも出来ない状態ですが,オリジナルの状態への復活は難しくとも,なんとか自分なりの方法で決着を着けねばなりません。

 ついでにいうと,昭代のゲームボーイアドバンスのLCDも,ビネガーシンドロームで死んでいました。一応表示は出るのですが,フィルムが浮いたり,ひびが入ったりしています。

 GBAについてはゲームボーイアドバンスSPがありますし,NintendoDSで代用が利くのでとりあえずいいとしても,ワンダースワンが全滅していることはかなり深刻な問題です。

 これは長期戦になるかもしれません。

ダイソンV10 Fluffyに買い換えました

  • 2024/12/05 14:33
  • カテゴリー:散財


 ダイソンのコードレス掃除機を最初に買ったのが2013年10月。当時36000円で購入したDC45という機種でしたが,それまで5万円を越えていたダイソンのコードレス掃除機が36000円で買えることをきっかけに,ハンディクリーナーとして役に立てば位の気持ちで買ったところが,コードレスのくせに家中の掃除に十分対応出来る能力がある事が判明,以後我が家の掃除という家事は根底からひっくり返ってしまったのです。

 それまでのキャニスター型を使った掃除の,あの重く大きな物をゴロゴロと引き摺る,果たして掃除をしているのか掃除機を運んでいるのかわからない重労働から解放されたことは,私にはとても画期的なことでした。(残念なのはその革命が日本の家電メーカーによるものではなかったことでした)

 大きく重たい本体が階段の上から転がり落ちてくることからも,突然ACコードにぐいっと引っ張られることからも,そして抜けたACプラグを再び刺しに隣の部屋に行くことからも,完全に無縁のものとなりました。

 実用的な吸引力と20分という稼働時間の実現は,ハンディクリーナーとの使い分けを考慮しなくてもよくなり,一気にACコードついたキャニスター型を追放することになりました。うちは以来ずっとダイソンです。

 ただし,主力機としてラフに使われると案外簡単に壊れてしまうあたり,さすがに日本製の頑丈な掃除機とは違って,消耗品と考えないといけないという気もしていました。

 DC45は致命的な故障で修理を何度か施しては延命,2019年3月にV7を28000円ほどで購入して入れ換えています。DC45はその後私の作業部屋で,集じん器として活躍しています。

 そのV7,パイプの破損で中国製のパチモンに交換,電池も互換品でしのいでここまで来ましたが,モーターヘッドもボロボロでしたし,パチモンのパイプも折れてしまって,時間の吸引力も落ちています。なので次に壊れたら買い換えることにしようと,タイミングをうかがっておりました。

 とはいえなにかとセールで安売りされる(最新機種とは限りませんが)ダイソンですので,なにも慌てる必要はありません。

 そうして迎えたamazonのブラックフライデーに,V10が33000円で出ているのを見つけました。ミニモータヘッドなどの付属品は邪魔なのでその分安くして欲しいところですが,5%のポイントがつくことを考慮して,このタイミングで買うことにしました。

 そう,V8までは安売りされるのですが,V10という,あのまっすぐになったタイプがようやく安くなってきたと思ったので,買うことにしたわけです。直販サイトでも38000円ほどで買えるそうですので,値下がりは以前からあったようですが,今回はそこから5000円ほど安く買えたことになりますか。

 正式には,Dyson Cyclone V10 Fluffyというやつです。型名はSV12 FF LF。本物のV12は一回り小さくなって軽い上,ゴミセンサで吸引力を最適化したり,LCDがついていたり,遠心力が向上しているらしいのですが,モーターは同じ物のようですので,私はこれで構いません。。

 2年保証も続いていますし,ダイソンはしっかり日本の市場に根を下ろした感じがします。いやはや,日本の家電メーカーはなにをやってるんでしょうかね。

 ということで,V10です。DC45も5年半使いましたが,V7も同じくらいの時間を使って買い換えということになりました。


・取り回し

 DC45とV7は同じような形状だったので違和感はなかったのですが,V10は全然形が違うので戸惑いました。これまでならぶつからずに振り回せたところでも,本体がぶつかりそうになります。慣れるまでは注意して振り回さないといけません。

 重量物の位置が変わったことも大きいと思います。モーターや電池の位置はそれほど変わっていないように思いますが,ビンが随分前方に伸びました。これまで,ビンは握った拳のすぐ先にあって,下にぶら下がっていたわけですが,V10ではパイプと同軸にありますから,拳の上側で,前方に伸びているのです。これは結構な差です。

 V8は手首とパイプが同一線上にありますから,手首をひねってヘッドを左右に回転させることも苦になりません。更にいうとその回転中心に対して地面側にビンがぶら下がっていますから,力を抜くと自然と自己復帰してニュートラルになります。だから手首も疲れません。

 一方のV10は,手首とパイプが同一線上にありません。手首をひねってヘッドを左右に回転させるのがしんどいのは,これが理由でしょう。しかもそのパイプの一部がビンになっているので,重量物が回転中心よりも上にあり,手首の回転で重量物が下に引っ張られるため,余計に回らないように手首にぐっと力を入れないといけなくなります。

 慣れていないせいかなあと,強く感じた違和感を良く考察してみると,こういう結論になりました。回転中心がズレてること,しかも重量物が上にあるので,落ちないように手首に力が入るというのが,違和感の正体でしょう。


・モーターヘッド

 うちはフローリングよりもカーペットが多いのですが,Fluffyという新しいヘッドがカーペットに不向きであることを知りませんでした。これって,フローリングに最適化されているんですね。知らんかった。

 一応,回転するブラシがあるのでカーペットでも使えそうなものですが,ゴミを集める能力は過去のモーターヘッドの方が高いらしく,これは失敗だったかも知れません。

 とはいえ,ダイソンとしてはこちらを標準と考えているようで,キットして付属するモーターヘッドを選ぶ事は出来ないようですし,両方ついてくるものは非常に高価だったりするので,どうしたものかと思います。

 で,吸引力の差もそうなのですが,Fluffyは前に進む力が強すぎて,前に出て行かないように押さえるのにまた力が入ります。自分で進んでくれるのは楽が出来そうなものですが,ヘッドを手前に引き戻すときに大きな力が必要ですので,私のように往復させて掃除をする人はかなりしんどいです。

 加えて,左右にヘッドを回すときの問題です。なんだか左右に簡単に首を振るようになってしまい,それを押さえるのにまた力がいるなあと思っていたら,Fluffyヘッドは関節が上下と左右の2軸になっていて,左右方向に簡単に傾くようになっていたのです。

 以前のヘッドでは左右ではなく,L字になった部分が回転するようになっているだけでした。だから,パイプを左右に回すことだけがヘッドを左右に動かしていたのですが,Fluffyヘッドはパイプの回転以外でも左右に首を振ってしまいます。つまり,ヘッドの首振りを手首だけで制御出来なくなってしまったわけです。

 それを防ぐのが前に進む力のアップなんでしょう。でも,変な方向に向かないように,かつ前に進みすぎないように,かなり手首に力が入ってしまいます。これは慣れの問題では解決しないかもしれないですね。


・吸引力

 V7もなかなか良かったですが,さすがにV10はその上です。最新のモデルはどうだか知りませんが,空気の流れが直線だと効率がいいというのは,V10が出た時のうたい文句でした。これはその通りだと思います。


・ゴミの捨て方

 V7なら出来た,パイプやブラシを外すことなくゴミを捨てることが出来なくなりました。私はどのみち外して捨てていたので問題はないのですが,一々外さずに捨てていた人にとってはとんでもない改悪でしょう。

 ビンが開くレバーの動きも渋いので,この点でもV7騎方が良かったなあと思います。

 加えて,ビンの底を開くときに本体を持つ右手が,V7の方が自然でした。マグカップを持つような握り方でゴミを捨てられたことは,V10のように拳の親指の方向からゴミが出ていく不自然に対し,どれだけ自然に思えることか。


・まとめ

 こうして改めて見ていくと,新しい物が必ずしもいいとは限らないんだなあと思います。V10は空気というそこそこ慣性のあるものをまっすぐに通すことにこだわった,掃除機の理想を追求したエンジニア魂あふれる物だと思いますが,そのせいで使い勝手を犠牲にしているように思います。

 Fluffyヘッドもそうです。柔らかい素材でフローリングに最適なのはわかりますが,柔らかいという事はそれだけ傷みやすいということです。掃除機で一番壊れるのは,はやり先端のモーターヘッド(とパイプ)ですから,ここを丈夫に作るのがまず先だと私は思います。

 V7の吸引力が落ちてきたと実感したので買い換えを考えたわけですが,これならモーターヘッドとフィルターを新調するか,もうちょっと安いV8を選ぶんだほうが史為替だったかもしれません。

 慣れてくれば印象も変わるかも知れませんし,高効率&駆動時間が長い,というV10のメリットを感じるほど使えば,手放せなくなるかも知れません。

スワンクリスタルとワンダースワンカラーを失った週末

 ワンダースワン,今なかなか人気のある携帯型のゲーム機です。

 「枯れた技術の水平思考」を是としたゲームボーイの生みの親,故横井軍平さんが任天堂退社後に立ち上げたコトが開発,当時のバンダイから発売になったワンダースワンですが,安く,低消費電力で,手軽に買えて,だけど楽しく面白くを具現化したワンダースワンは,当時の私の商品設計に対する考え方に近かったこともあり,大好きなハードウェアとして,特別な思いがありました。

 今にして思えば初代が一番洗練されていて,バランスも素晴らしかったと思うのですが,市場はそんな設計者の思いなど知らずに,当然の如くカラー化を望みます。当時の技術ではカラー化によるコストと消費電力の増大が非常に大きく,登場したワンダースワンカラーは市場の要求に,なんとか折り合いを付けた妥協の産物であると,私には見えていました。

 それは乾電池1本で動作するという目標のために,徹底したパッシブ動作へのこだわりにも現れていました。バックライトはコストも大きさも消費電力も大きいので使わない,LCDも美しいが高価なアクティブマトリクスのTFTを使わずパッシブマトリクスのSTNカラーです。

 確かにこれでワンダースワンの目指した安く消費電力が小さいという優先度には矛盾しないものが出来ましたが,結果暗く発色も悪い,とても見にくい画面のゲーム機が出来てしまいました。見やすさだけで言えば,初代のモノクロ機にもかなわないでしょう。

 それでも私は発売前からコトが出した答えが楽しみで,予約して買いました。以後はガンダムのゲームを中心に持ち歩き,暇さえあればゲームを楽しんでいました。実家に帰る新幹線で3時間近くひたすらゲームをやったことも良い思い出です。

 これだけ持ち運んでいれば傷むのも道理で,風防(フロントパネルのことです)の真ん中に大きな傷を付けてしまい,ゲームに没頭できなくなってしまいました。ワンダースワンカラーはパッシブのLCDで,明るさだけではなく色味も改善しなければならなかったので,LCD表面のフィルムはもちろん,風防の表面の反射防止コーティングにもかなりのお金をかけていたように思います。

 それでもバックライトを付けるよりはいいと,パッシブにこだわったのでしょう。でも,もともと暗い所ではいかに反射防止をしても見えるようにはなりません。単三電池1本で動く事にこだわった結果,ワンダースワンカラーは,普通なら市場に出ないだろう形で販売された,珍しい携帯機器だったと思います。

 そして時は流れ,ワンダースワンというプラットフォームに終焉が近づいた時,ようやくワンダースワンの理念を満足な表示品質で実現出来るときが来ました。今ではすっかり珍しくなった全反射型のTFTを搭載した,スワンクリスタルの登場です。

 ようやく価格もこなれてきた鮮やかで見やすいTFT液晶を採用しながら,消費電力の大きなバックライトを使わない反射型にこだわり,画質と消費電力をバランスしたスワンクリスタルは,確かに劇的に見やすさを改善していました。

 名前に与えられた「クリスタル」が,とても誇らしく感じました。

 全反射型のTFTはゲームボーイアドバンスでも使われていたものですので,当時としては珍しい物ではありません。でも,やっぱり周囲の環境に左右されてしまう反射型が淘汰されるのは目に見えていました。

 バンダイらしく,版権物のキャラゲーが主力となった末期のソフトラインナップには興味はなくとも,ワンダースワンに共感し,ワンダーウィッチにも手を出していた私は,スワンクリスタルも迷いなく入手します。

 しかし,以後ソフトも出てこず,私も別の事に興味を持つようになり,私のスワンクリスタルはほとんど稼働することはありませんでした。しかし,自分の身内のように感じられたワンダースワンだけはすべて大切にしておこうと誓い,スワンクリスタルを含むすべてのワンダースワンは,大切に元箱に収納されて保管されていました。

 事が動いたのは実家の荷物をすべて引き上げるときです。当然処分されることなく自宅に運び込まれたワンダースワンですが,動作の確認のためと娘の興味を惹くかもと,電池を入れて動かしてみました。

 グンペイを遊んだのですが,娘は関心を示さず,私も30分ほど遊んでまた箱にしまい込んだのですが,この時私は重大なミスをしていました。

 また近いうちに遊ぶからと,電池をそのままにしてしまったのです。

 それから3年,先日の話です。

 あるお店で,最近人気が高まっているワンダースワンカラーの,交換用の風防が売られていました。ガラス製なのでキズもつきにくく,見た目にも綺麗なのでちょうどいいと手に入れ,これで20年越しの「キズ」に決着を着けることが出来ると喜んで交換作業を始めました。

 傷ついた風防を取り外すのですが,風防の裏面の印刷と両面テープが本体に残ったままになってしまい,これを取り去るのに随分手間がかかったのですが,どうもこれが良くなかったらしいです。

 交換作業は終わったのですが,おそらくその時に指で触ったりねじったりしたせいで,どうもLCDにまだら模様が残っているのです。電荷が残っているせいかもと思いましたが一晩経っても消えず,よく見るとピクセルにまたがっていますので電荷によるものではありません。

 ならば偏光板の劣化だろうと思ったのですが,ここはあまり深追いせず,ワンダースワンカラーはこのままとして,スワンクリスタルで遊ぼうと箱から取りだしました。

 するとなにやら,白い結晶のような物がパラパラと出てきます・・・

 何だろうと思って本体をよく見ると,本体の通信コネクタに結晶がびっしり,隙間からも透明とライトブルーの粉が出てきています。何だろうとしばらく考えて,まさかと思って電池ケースを外してみました。

 そのまさかでした。盛大に液漏れしていました。

 元の電池の形をとどめないくらいにぐじゅぐじゅに融けてしまっています。これほど強烈な液漏れは私も見たことがありません。さすが,電池1本にこだわって昇圧のDC-DCコンバータを常時動作させる電源システムを持つワンダースワンです。電源OFFでも微弱電流が流れ続けます。

 これまで多くの液漏れを見て来た私ですから,分解掃除をすれば大丈夫,仮に基板のパターンが切れるほどの液漏れがあっても,少し確認して修復すればまた元通りになると軽い感じで開けてみました。

 これまで,たくさんの液漏れを経験してきましたが,これほどひどい液漏れは初めて見ました。もう,手の付けようがありません。基板が腐食しているというよりも基板に結晶が盛り上げられているのです。チップのトランジスタは,まるで砂糖菓子に埋め込まれたゴマのようです。

 こびりついた結晶を剥がそうとしましたが,それも難しい位基板に一体化して成長していました。様子を見たいということで紙やすりで結晶をはがしていきましたが,パターンもスルーホールも,もう手の施しようがないほど切れていました。

 当然電池を入れてもうんともすんとも言いません。修理不可能です。

 LCDもよく見ると,中央部が膨らんでいます。空気が入ったドームのようになっているそれは,LCDの不良を示していました。

 取り外してLCDを見てみますが,電解液が付着した形跡はありません。ただ,表面の偏光フィルムを剥がしてみると強烈に酸っぱい臭いがします。そう,ビネガーシンドロームを発症していました。

 21世紀のLCDにビネガーシンドロームが発生するとは思わなかったのですが,もしかすると電池の液漏れによって発生したガスがその引き金になったのかも知れません。

 ということで,LCDも基板も,たった1本の単三アルカリ電池を取り外さなかったことで,死んでしまいました。

 突っ伏した私を,妻と娘は,かける声も見つからないと,心配そうに遠くから眺めていました。

 ならば,せめてワンダースワンカラーを復活させよう,これでギレンの野望特別編を完遂しようと意気込んで,まだらの原因である偏光フィルムを剥がして交換することにしました。今思えば,その発想は自殺行為でした。

 しかして,これも大失敗。偏光フィルムを剥がしてみても,まだらは消えませんでした。あわてた私は反射シートを剥がしにかかりますが,なかなか剥がせません。仕方がないので糊を綺麗にすることにしたところ,まだらが消えました。

 そう,原因は糊にありました。糊をアルコールで完全に剥がすと,ようやくまだらはなくなりました。

 私はホッとし,新しい偏光フィルムを用意して,貼り付ける向きを確認することにしましたが,どの角度でも全然画像が見えてきません。裏返してもだめです。ようやく見えると思った角度でも,よく見ると色が反転しています。

 そうでした,STNのカラーLCDは,発色に複屈折を利用するので,白黒のSTNやTNで使われるような偏光フィルムを使うことは出来ないのです。

 糊に原因があるなら偏光フィルムそのものは再利用できるかも知れないと脇に無造作に捨て置かれたフィルムに目をやりますが,もはや傷だらけで再利用できる状態ではありませんでした。

 ここに至って,我が家のワンダースワンのカラー対応機は全滅し,カラー専用のソフトはゴミになってしまったのでした。

 ああ,なんと悲しい事か。

 当時の雰囲気を良く伝える部品や基板,LCDを見ながら,今も愛されるワンダースワンを愛でることは,とうとうかなわなくなってしまったのか。他のゲーム機はともかく,ワンダースワンだけは持ち続けようと最初から誓っていたのに,こんな不注意でだめにしてしまったのか。

 そもそも,貴重なスワンクリスタルをくだらない理由で失ってしまって,私はレトロゲームを持つ資格がないのではないか,そんな風に自分を責め,再び突っ伏した私を妻と娘は遠巻きに眺めていたのでした。

 ワンダースワンの設計のうち,まずかったなと思うのが,この電池1本で動作にこだわった点でした。いや,別に電池1本で動作させることそのものは問題ないですし,それで20時間も持たせる技術はさすがだと思います。電池1本にこだわる技術者の心意気に私も当時共感した覚えがありますし。

 しかし,1.5Vから3.3Vや5Vに昇圧する回路は,効率も良くないですし,電源OFFでも僅かとは言え結構な電流が流れ続けます。この僅かな電流というのが液漏れを一番誘発するのです。

 当時の私も液漏れを強く意識した設計を心がけていましたが,ワンダースワンでも液漏れを防ぐ為に,DC-DCコンバータの入力側,つまり電池とDC-DCコンバータの間を物理的なスイッチで切断することにして欲しかったと思います。この方法だと電池が完全に切断されますから,常時電流が流れることなく,仮に液漏れがあったとしても小さな被害で済むのです。

 しかし,ワンダースワンは電源ボタンを押しボタンにして,ソフトで管理することにしました。そのせいでCPUに電源を供給する必要が生じ,DC-DCを電源OFFでも常時動作させることになってしまったのです。

 電源スイッチをソフトではなく物理的なスイッチにするには,コストもかかるしデザイン面での制約もあります。でもですね,ワンダースワンには電池ケースが外れるのを防ぐスライド式のロックがあります。ここに電源スイッチを仕込んで主電源スイッチとしてくれれば,救えたワンダースワンもかなりあったんじゃないかと思うのです。

 あれこれ考えていてもどうにもなりません。

 スワンクリスタルは,基板とLCDの損傷。筐体は新品同様です。

 ワンダースワンカラーは,LCDが使えなくなりました。

 多数のカラー専用ソフトを楽しむために,今の私に出来る事は・・・

 続く。

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