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カテゴリー「気楽なはなし」の検索結果は以下のとおりです。

痩せたトラ技

 先日,ふとしたことから20年以上前の「トランジスタ技術」を何冊か古本で購入しました。切り抜きもなく,多くの人が収納のために捨ててしまう「広告」も完璧に温存されている,今時珍しいものです。

 「トランジスタ技術」は1964年10月の創刊です。まだまだ真空管が全盛の時代で,電子回路もまだまだこれから新しい回路やデバイスが登場するという,とても面白い時代だったのではないかと思います。

 私は生まれていないので伝聞に過ぎませんが,当時の電子回路技術者は,原理も使い方も全然違い,不安定で壊れやすい固体素子「トランジスタ」に対して,相当の焦りがあったそうです。

 真空管ならお手の物だったベテランほど,トランジスタには手こずったと聞きますし,口の悪い人の中には,まだまだこれからというトランジスタにあった,あまたの欠点をあげつらい,「だからトランジスタはダメ」と結論したりしたそうです。

 デバイスを作る方もしかりで,当時の精鋭が終結した真空管の設計や製造部門が,半導体の部隊を非常に低く見ていたことはよく知られた話です。

 ただ,そういう逆風が殊更強かったのも,一方でトランジスタの可能性を認めざるを得なかったからだったのでしょう。ベテランほど危機感が強く,そんな人ほどトランジスタが使いこなせず,この時に一斉にエンジニアの世代が入れ替わったと聞きます。

 新しい時代のデバイスの使いこなしでふるいにかけられたエンジニアが,今の我々の大先輩に当たるわけですね。

 閑話休題。

 「トランジスタ技術」といえば,あの分厚い広告で知っている方も多いでしょう。当時広告が多いことで知られた「マイコン」や「I/O」をも寄せ付けない分厚さで,他を圧倒していました。

 それほど広告が効果的だったのでしょうし,また「トランジスタ技術」がプロのエンジニアが読む雑誌だったということでしょう。子供だった私も,トラ技の広告を眺めていると,なにか背伸びをしたような気分になったものです。

 正確に調査をしたわけではありませんが,1970年代のトラ技は15mm程度,これが20mmを越えるのは1980年代に入ってからで,最も分厚かったのはおそらく1985年くらいではないでしょうか。

 手元にある1987年12月号の厚さを測ってみると,なんと26mm。

 ちなみに今月のトラ技(2009年1月号)は,13mm。実に半分になりました。

 1980年代中頃,日本の半導体産業は売り上げで世界の頂点に立ち,日本の電子工業界はまさに肩で風を切っていました。Japan as No.1などと言われ,自動車を含むあらゆる分野で日本の存在感が増した,そんな時代でした。

 LSIの集積度はどんどん上がり,新しいことがどんどん出来るようになりました。コンピュータがワンチップに収まり,後にマイコンブームと呼ばれる時代がやってきました。

 今回購入した1984年から1987年までの7冊のトラ技の広告を見ていると,そんな当時の空気を感じることが出来ます。

 300MHzを越える帯域とリードアウトカーソル付きのアナログオシロスコープは計測器メーカーなら登らねばならない山であり,菊水,リーダー,松下通工,日立,ケンウッド,岩通,YEWと,国産の計測器メーカーが果敢に挑戦していました。そのほとんどがオシロスコープから撤退した現在を,誰が想像できたでしょうか。

 LSIメーカーも,マイコンや周辺のチップで攻勢をかけていて,32bitのCPU,256MbitのDRAM,ISDNコントローラやLCDコントローラなどを積極的に展開,冷蔵庫くらいの大きさのコンピュータがいよいよデスクサイドにおけるくらいになる現実に,明るい未来を見ていました。

 今や押しも押されぬOrCADも,当時はまだまだキワモノソフトの時代です。パソコンでCAD?値段が168000円?そんなCADつかえるかよ,と当時の人はみんな思ったでしょう。

 やたら目に付くのはフロッピーディスクドライブです。秋葉原の部品屋さんの広告は例外なく自作マイコンの部品供給源となっていて,そこには必ずといっていいほどフロッピーディスクドライブが出ています。ほとんどが5inchですが,YD-274なんていうフルハイト(今で言う5インチベイ2つ分の高さです)の2Dドライブが84000円に斜線となっています。ううう。

 ヒューレットパッカードの広告も目立ちますね。電卓のHP-16Cの広告なんか初めてみました。それにミニコンの広告も出ています。HPPAですか・・・これはもしかすると,後にPA-RISCと呼ばれるものの源流,ですかね。でも冷蔵庫並みにでかいですよ。

 ラジオ会館の広告では,店主の似顔絵が描いてあります。なるほど,これが,あんな風になるというわけですね・・・でも,なくなった店もあるので,とても寂しいです。

 こういう雑誌ですから非常に少ないのですが,時におねいさんが出てくる事もあります。いやー,80年代ですねえ。逆にいいですね,ここまでくると。

 今はつぶれた会社,お店もたくさんありますね。藤商電子,Otec,コムスポット寝屋川,ニノミヤ,亜土電子,SNKなんかは求人広告が出てますね。日本テクサですか・・・そうですか,200人近い社員がいたんですね。あ,キーエンスが大証二部に上場したと広告が出ていますよ。

 秋月の広告は別格ですね,当時も。今も昔もぎっしり細かい文字で書いてあったように思うのですが,昔の方がはるかにスカスカです。しかし昔の方がはるかにマニアックで,今読んでいてもワクワクするのはなぜでしょうか。

 80年代に30mm近い分厚さを誇ったトランジスタ技術ですが,その後のバブルの崩壊と「失われた10年」と呼ばれた不況の中,広告はどんどん減って,トラ技は薄くなっていきました。

 トラ技は景気の変動をその分厚さに反映することが多く,薄くなってもまたしばらくすると分厚くなるものでした。分厚くなると「もうかってまんな」という気分になったものです。しかし,今回は違っていました。

 景気の低迷と海外半導体メーカーの台頭により,トラ技の広告が減っていく中,インターネットの普及という大きな流れが押し寄せます。広告媒体の変化,雑誌の売り上げの低迷という雑誌一般に見られる影響を受け,前半のメーカーによる広告に加え,後半の部品屋さんなど小売りの広告も軒並み削減。

 そして,景気の回復した(といわれている)ここ数年も厚さは回復せず,現在も薄くなり続けているようです。おそらく,ですが,30年前の水準になっているのではないかと思います。

 どおりで,2009年1月号の広告を読むのは簡単だったのに,1987年12月号の広告は,たっぷり1時間以上もかかってしまいました。面白かったからいいのですが,この読み応えは確かに往年の「トラ技」です。

 以前は一度目を通した広告はゴミとして処分していましたが,今にして思えば本文と同じくらい面白いだけに,もったいないことをしたと思います。前述の通り,トラ技は買ってすぐに「三枚に下ろす」のが流儀なので,広告の生存率も低いでしょうから,せめて今回の広告だけは,スキャンして残しておこうと思います。

1950年代から60年代の902回路を味わう

 6月と7月と続けて,誠文堂新光社から復刻になった「無線と實驗401回路集」と「無線と實驗501回路集」,私はオリジナルはみたことがなく,復刻を渇望していたわけでもないのですが,復刻されるにはそれ相応のニーズがあったということでしょうし,なにより熱い時代だった1950年代から60年代にかけての電子回路技術に触れる絶好の機会と,両方とも買いました。


・無線と實驗401回路集 復刻版

 まだ「無線と實驗」よ呼ばれていた頃に別冊として出ていた回路図集です。1950年代ということですので,デバイスなら真空管の回路が全盛,製品としてはテレビ(もちろん白黒)のキットが出始めたころではないかと思います。

 誠文堂新光社は,割とこの手の回路集をちょくちょく出していたようで,私も電子展望別冊の301回路集と333回路集は見たことがあります。

 私は,回路図を見るのが大好きなのですが,こうした古い回路図をまとめて見る機会が得られたことは非常に楽しくありがたいことですし,また当時は便利な実用書として誕生したはずのこの本が,復刊の段階でアーカイブとしての機能も期待されている事実が,非常に興味深いです。

 実際に登場する回路が今使えるのかと問われれば,ほとんどだめでしょう。そんな中で,ラジオ受信機の発展の歴史を回路図で追いかけるというページがあり,これは今も立派に通用すると思いました。

 ということで,この本を買ってなにか作ろうと思っても,何の役にも立たないでしょう。バーボン片手に楽しむのがおすすめです。


・無線と實驗501回路集 復刻版

 先の401回路集に遅れると約1ヶ月で復刻されたこの本は,401回路集に100回路追加したものではなく,全く新しい501回路を集めたものです。1960年代を中心とした回路が集められていますが,この本は実は1970年代初頭まで版を重ねて売られていました。ロングセラーには訳があり,これもやはりプロ向けの実用書だったということでしょう。

 401回路集とは違い,501回路集は1960年代ですから,真空管回路はもはや完成の域に達しており,半導体による回路が時代の先端を走り始めます。そして今でも時々目にするような回路に出くわすこともしばしばです。

 401回路集は娯楽であるのに,501回路は勉強になります。アナログ回路がある意味で頂点に達したと言える時代でもあるわけですから,ここから得られるヒントも多く,なるほど30年ほど前まで売られていたというのも分かる気がします。

 後半に出てくるテレビの回路図は,401回路集とは比べものにならないほど高度化し,いかにテレビが当時の先端産業であったのかを感じます。また,巻末にはRCAのカラーテレビの回路図が出ています。モノクロテレビとは比べものにならない複雑さ,巧みに組み合わされたアナログ回路の妙技を見ていると,これが当時のアメリカの実力だということと,当時の日本はこれをモノマネしていただけなのだ,ということを思い知ります。やがて日本に追い詰められたアメリカはテレビの製造から撤退しますが,その生まれはアメリカにあることを,我々は時々思い出す必要があると思います。

 こちらも,この本で何かを作るのは難しいでしょう。作り方を具体的に書いていないこともあるし,実はミスも結構あります。この本くらいになると酔っぱらって読むのは難しいので,寝る前にちょっとずつ読み進めるというのが,おすすめです。


 とまあ,こんな感じで,とても楽しく見せてもらいました。実用的に使えるかといえばどちらもNoでしょうし,資料的価値があるかと言われても,それほど大げさでもないように思います。

 ですが,誠文堂新光社はこの時代,電気電子関係の書籍を多く出しており,当時を知らない私も「おもしろい」と思える本があります。図書館などでたまに目にするとワクワクするのですが,そうした本が当時を知る人たちの懐古主義を直接のきっかけとして,もう一度世に出ることは,それらを初めて目にする私のような人たちにも新しい勉強のきっかけを与えるものかも知れず,歓迎されるべき事だと感じます。

エンジニアのみなさん,心の準備は出来てますか

 一応プロの設計者として,こんなことを書くのは恥をさらすようで迷いましたが,要するに私の不勉強なだけのお話なので,ネタを投下します。私と同じようなオッサンどもは認識の甘さに絶望して涙せよ。

 さてさて,それなりに知られた回路図の回路記号,最近ちょっと様子が変わったことにお気づきでしたか?

 私の場合,そもそもの始まりは先日の「電子工作マガジン」でした。回路記号が一部変わっているという記事が出ていたのですが,なるほど他の記事中の回路記号もよく見ると随分変わっています。

 例えばある技術系の出版社なんかでは,JISの規定には正確には従っていないものを慣例として使い続けていたりするそうですが,これはわかりやすさを優先した結果とのことです。少ない例ですが,設計の現場でも会社によって,同じ部品が微妙に違う記号になることもあり,そのへんは割に緩やかなものなのかも知れないと思っていました。(JISに従わないことはやっぱりダメなんですよ,基本的には。)

 それでも,電気回路が生まれると同時に回路記号が誕生したと考えると,もう100年近い歴史があるわけで,その間電気回路に関わる人間の共通言語として,それほど大きな変化もなく今日まで受け継がれているわけです。

 こういうことを実感するのは,戦前の技術関係の書籍を見たときですが,70年前の旧字体の本文を読むのには苦労しても,回路図は私でもさっと理解できます。楽譜にせよ,回路図にせよ,記録はただ残っているだけでは意味はなく,相手に読まれねばならないわけですから,変わらないことも大事なことです。

 なのに,まさか抵抗の記号が変わるとは・・・まずは下を見て下さい。

ファイル 211-1.jpg

 随分と変わっていますね。一番の衝撃は抵抗の記号でしょう。安くて地味な部品で影が薄く,その記号のインパクトで少年の記憶に残る抵抗が,あるいはベテランにとってはトランジスタよりもICよりも重要な意味を持つ抵抗が,とうとう四角い箱にまで貶められています。そりゃーないぜ。

 LEDの記号も微妙に変わってます。特に矢印の向きがミソなのですが,これは「非電離電磁放射を表す2本の矢印の図記号は,特定の照射体が示されないときは,矢先を右上へ向けること」なる決まりがあるそうなので,図記号の上下が反転しても,常に矢印だけは右上を指し示さねばなりません。

 ただし,JIS Z 8222-1の回転の例では,矢印も一緒に回っているので,右上を指し示していなくても間違いとはいえないみたいです。JISのうっかりミスだとは思いますが・・・電子工作マガジンを見てますと,ちゃんと右上を向いています。旧JISの記号では矢印が下に向くようわざわざ全体を回転させてあるので,これはちゃんとこの件を意識しているものと思われます。お見それしました。

 スイッチの記号もかわってますね。ここにはありませんがトランジスタの記号も少し変わっています。ここにはトランスを例として挙げましたが,コイルなどの巻物は,記号では巻いていません。これであの導線をグルグル巻いたコイルをイメージしろというのでしょうか。電子ブロックの説明書にあった,回路記号を擬人化したかわいいイラストもこんな無味乾燥な記号をベースにしないといけないというのでしょうか。

 
 ここまで変わってしまうと,もう少し経緯を調べたくなります。

 これらの新しい記号は,1999年にJIS C 0617シリーズとして制定されました。旧JIS(JIS C 0301-1990)については廃止されているので,原則的に併用は出来ないことになっていると考えるべきでしょう。

 変わった理由ですが,IECという国際規格にあわせた,というのが一番わかりやすい理由でしょう。なんでIECにあわせるの,と聞かれれば,それがルールだからです。

 GATT(関税と貿易に関する一般協定)には,工業分野における理不尽な参入障壁を除外する目的も含まれていて,工業規格とこれに基づく評価手続きについて1979年に合意されたものが1994年5月にTBT協定として改訂,合意されました。

 TBTとは貿易の技術的障害(Technical Barriers to Trade)という意味で,後の1995年1月にはWTO協定に包含されることになり,ここにTBT協定はWTO一括協定として加盟国すべてに適用することが決まったのでした。日本も言うまでもなく,WTO加盟国です。

 よって,新しく制定されるJISについては国際規格であるISOやIECに対し,内容や様式などに矛盾がないように作られます。また,制定済みのJISについても,順次改訂作業が行われています。どうですか,たかが抵抗の書き方1つで,WTOにまで話がいってしまいましたよ。

 今回の回路記号についても,IECによって決められた記号が存在し,以前よりJISとの乖離が何かと問題になっていました。旧JISであるJIS C 0301はどちらかというとJISとIECの両方の顔を立てるような思想があったそうですが,新JISであるJIS C 0617はIECそのまんま,ということのようです。

 旧JIS時代にもよく言われたのがゲートICの記号です。我々が見慣れているANDゲートやORゲートの記号はMIL記号といわれ,元はアメリカの軍用規格でした。

 実際,ANDゲートはICで供給されるわけですが,IECはこの点を合理的に考えて,四角い箱に入力と出力を設け,箱の内側にその機能を記述することが基本になっています。だから,IECの決まりに従うと,四角い箱の左に入力,右に出力を出し,内側に「&」と書くのです。

ファイル 211-3.gif

 そんな・・・まるでキン肉マンやないか・・・

 IECに準拠した回路図やICの仕様書は度々目にしていましたから,私も戸惑った記憶があります。MIL記号は日本ではJIS X0122として規格化されていましたが,こうした論理回路の図記号もすべてIECに倣うことになって,新JISであるJIS C0617に統合された際に廃止されてしまいました。もしかすると若い人たちは,80年代のパソコンの回路図を肴にちびちびやる楽しみを持てなくなるかも知れません。

 いやはや,海外製の設計ツールなどを使っている人の中にはすでに見慣れた人もいるかもしれませんが,それでも長年親しんできた回路記号を手放すのは抵抗があるものです。なかには意地になって使い続ける職人堅気な人もいたりするでしょう。

 しかし,そんな旧世代なオッサンを屈服させる仕組みを,お上はきちんと仕込んでいました。学生への洗脳です。

 実は,2004年以降の高校の教科書は,新JISに従った記述がなされています。ということは,抵抗はギザギザではなく四角い無愛想な記号に,ANDゲートは額に&マークに,すでになっているのです。

 てことはですね,もう2年ほどすると,ギザギザの抵抗を見たことがない学生が社会に出てくることになるのです。すでに大学の授業では,先生が黒板に書いた抵抗の記号に「なんすかそれは」と質問が飛んでいるという話ですし,これは非常に困った事になる可能性があります。

 新人:先輩,回路図にあるこのギザギザはなんですか?
 先輩:ん?これはよ,抵抗だよ,なんだ,こんなもんも知らずに卒業したのか!
 新人:抵抗はこう書くことになってるんですが。
 先輩:んなわけあるか。ったくゆとり世代もここまできたか・・・
 新人:ほら,JISを見て下さい。
 先輩:(うわ,ほんまや)
 新人:これだからファーストガンダム世代はよ・・・

 という,血で血を洗う世代間闘争に発展する可能性が高く,電子工業界は分裂の危機に瀕します。

 抵抗もコイルもひどいですが,極めつけはこれです。

ファイル 211-2.jpg

 これ,なんの記号かわかりますか?オペアンプです。額には無限大の増幅率を示す「∞」マークが!嗚呼!

 オペアンプの回路はただでさえややこしい場合が多く,回路図を使っての世代間交流はかつてのようにスムーズには進まなくなったといってよいでしょう。我々が使い慣れたあの三角形の記号は,いずれ消えゆく運命にあるのです。嗚呼,なんたる悲哀!

 ただ,IECの記号には,そこまでやるか,と思うほどの合理性や厳密さがあり,その筋のマニアにはたまらないものがあると思います。図記号は単なる象形文字ではないということでしょうか。

 ここでは詳しくは書きませんが,これら図記号を回転させて書く場合にも,制御フローとプロセスフローが直交するよう意識した上で正しく回転させる必要があります。これが徹底されれば,確かに見やすく,書く人の癖に依存しない回路図になるでしょう。回路図は芸術作品とは違いますので,個人的にこの思想には賛成です。(回路図から人となりが見えにくくなるので面白味は失せてしまいますが)

 その上で,全世界のエンジニアと回路図で交流できることが保証される世界というのも,良いものであるかも知れません。特に新興国であるインドや中国では,今後ますます若い優秀なエンジニアが育ってくるでしょう。彼らと意思疎通が出来ることは,なにかと便利でありがたいことかも知れませんね。

 それはそれとして,IECの抵抗の記号,昔のままではいけなかったんでしょうか。私の知るところ,アメリカでもヨーロッパでも,やっぱり抵抗はあのギザギザなんです。無理に四角い記号にすることはなかったんじゃないのかなと,今でも思うのです。

 最後にもう1つ,こういう大事な話をきちんと啓蒙するのが役割であるはずのトランジスタ技術と日経エレクトロニクスに「なにやっとんねん」と声を大にして言いたいです。

バナナ存亡の危機

 ちょっとした雑談。

 バナナが絶滅の危機なんだそうです。

 その昔高級品だったというバナナがそこら辺で安価に手に入る果物になって随分経つわけですが,そのバナナがまさか絶滅とは。

 現在食べられているバナナは,昔食べられていた種類のバナナとは違うのだそうですが,昔のバナナはなんと病気(パナマ病といってバナナのガンと言われているんだそうです)によって絶滅したんだそうです。

 それでバナナ栽培の会社がなんとか探し出して,その病気に耐性のある種類のバナナを作るようになったとのこと。ところが最近,今のバナナにも耐性がなく,治療法もない新パナマ病が流行しているらしく,主な生産地であるラテンアメリカへの上陸も時間の問題ということです。

 今年の春には中国でも大きな被害をもたらしましたし,発生地であるマレーシアから徐々にその被害は拡大しているそうですが,こういう話ってもっときちんと報道して欲しいなあと思うわけです。

 バナナを食べたときのことを思い出して欲しいのですが,種がありませんよね。食用のバナナは種なしなのです。つまり種では増えないということです。

 現在のバナナは,挿し木で増やされたもので,いわばクローンです。突然変異も耐性獲得も全く期待できないのはそのせいです。

 厄介なのはこの新しいパナマ病は,他の種類のバナナにも広がる可能性があったりするそうで,もし本当ならバナナ存亡の危機です。

 一方,バナナは遺伝的な多様性が乏しく,病気や環境の変化に対応するのが下手くそという意見もあり,ほんとかどうかは別にして,もはや遺伝子操作で強いバナナを作るしかないという意見も出る始末です。

 私個人はバナナが好きではないのですが,栄養価の高さ,独特のおいしさ,手軽さから見た実用的価値に加え,プランテーションの代表的品種であり,列強の支配と植民地の搾取の歴史の生き証人として,バナナが消えることには寂しいどころか,かなり問題だなあと思います。

インチキ科学に要注意

 今日は小ネタを1つ。

 理系の皆さん,もし子供に「電子レンジはなぜあったかくなるの?」と聞かれたら,きちんと答えられますか?

 「電子レンジは電波で食べ物の分子を振動させ,その摩擦熱であったかくなるんですよ」

 って,言えればとりあえず安心。もう少し突っ込む人は,

 「水分子の共振周波数が2.4GHzで,電子レンジはこの周波数の電波を使って,最も効率よく水の分子に吸収,振動させて,熱を出すようにしている」

 などというでしょうね。2.4GHz・・・共振周波数・・・水分子・・・いやー,難しそうな言葉だらけですね。子供もすっかり納得してしまうでしょう。


 実際,そうした説明をした専門書もあったりするので引っかかりやすいのですが,実は間違いです。ウソなのです。

 某教えてなんとか,にもしたり顔で間違ったことを書いている人がいたりします。これはちょっと恥ずかしい。

 では,正解はといいますと・・・

 導体に電波が吸収されると,導体に電流が流れます。電流が流れると,導体が持つ抵抗のせいで,熱が発生します。そう,この熱は紛れもなくジュール熱です。

 たったこれだけの話です。

 うそだ,水だからあったかくなるんだ,という人に反論。電気抵抗が無限大の純水を電子レンジにかけても,ほとんど暖かくなりません。この時電波は純水を透過しています。逆に電気抵抗が低い金属では,反射が起こってしまいます。どちらにしても吸収はされません。

 うそだ,水分子が振動するからだ,という人に反論。振動しても摩擦で熱が出るなどということは物理学で否定されていますし,冷静に考えてみると分子は絶対零度まで冷やさないと運動(振動)は止まらないのです。

 うそだ,2.4GHzは水分子の共振周波数なんだ,という人に反論。水分子の共振周波数は22GHzくらいです。それに,海外には900MHzの電子レンジもあります。

 じゃなんで2.4GHzなんだ,ということですが,これは暖める具材の大きさから,内部への浸透などを考えてこのくらいが適当だろう,で決まったものです。
 
 うそだ,絶縁物でも電子レンジであったかくなるぞ,という人に反論。先程書いたように,純水はほとんどあたたかくなりません。陶器のお茶碗やガラスのコップだけを電子レンジに入れてみると,実はほとんどあったかくならないことがわかるでしょう。


 さて,かくいう私も,こないだまで勘違いをしていました。

 この話は,先日発売になった雑誌「RFワールド」の初心者向け記事に書かれていたものなのですが,RF初心者である私は「そうだったのかー」と衝撃を受けたのです。

 ひょっとするとインチキ科学の最たる例として広く知られている話だったのかも知れませんが,子供の頃から信じていた電子レンジの動作原理が,まさかこの歳になって「ウソだった」と知ることは,感動的ですらありました。

 いや,きっと私と同じ間違いをしてる人がいるはず。さて,心当たりのある人,特に子供にウソを教えた記憶のある人は,今のうちにきちんと謝って,正しい動作原理を教えてあげてください。私のような不幸な子供を増やさないためにも。

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