28mm頂上決戦
- 2021/10/19 10:37
- カテゴリー:カメラに関する濃いはなし
Zマウントデビューの私は,レンズがない,という窮屈さを,大昔に味わった懐かしさと共にちょっと心地よく味わっているのですが,Zマウントはフランジバックが特に短く,マウントアダプターで使用可能になるレンズが理屈上は最も多くなるはずです。
ということで,Eマウントの人がレンズ遊びを楽しんでいるのをFマウントの私は羨ましく思っていたのですが,いざZマウントを使うようになって直面したのが,似たような焦点距離のレンズをどうやって使い分けようかという悩ましい問題です。
私は28mmが好きなので28mmはいろいろあるのですが,DXフォーマットにとって28mmは35mm換算で42mmとこれまた大好物な画角です。「この一本」を探し当てたいと思うのは,無理からぬことです。
そこで,とりあえず28mmに限って撮り比べを行って,常用レンズを探り当てることにしました。それにしても,よくもこれだけ個性が出てくるもんだなと思います。
なお作例は自宅の窓から撮影した風景なのですが,そのまま掲載できない事情もあり,中央部のピントを合わせた周辺を等倍で切り取りました。コメントはこの作例についてではなく全体的な印象を書いたものである事をご承知おき下さい。
・NIKKOR Z 28mm/2.8SE
まずはキットレンズでいきましょう,最新の設計でZマウント,Zfcのために生まれてきたレンズですから,これをまずは基準におきましょう。
作例はF4まで絞り,中央部を切り出しています。
印象としては中庸のコントラスト,やや線の太さがあります。しっかり色も乗っていますし,しゃきっとしていますので決して眠いわけではありませんが,少々緩い感じがするレンズです。
暗部も潰れずボケもうるさくありません。情報量も豊富で,中央部の立体感はもちろん,そこからの破綻もなく滑らかにボケていくあたり,素晴らしいバランスです。
よく言えば優しい感じ,悪く言えばつまらない画像といえますが,絞りによる画質の変化が少なく,開放から余裕で仕事をこなすあたり,緩さというより,本当は出来る子が手抜きして涼しい顔をしている感じさえします。
・7Artisans 28mm F1.4 ASPH
ライカMマウント用のレンズで,本家Summilux-M 28 mm f/1.4 ASPH.の十分の一のお値段で手に入る高級レンズです。
だって,中華製レンズで6万円を越えるお値段ですからね,私だってなんでこんなレンズを買ったのか,よく思い出せません。
プアマンズズミルクスといわれながら,似ているのはスペックと外形くらいのもので,レンズ構成も性能も全然違います。MTFは本家に勝るとも劣らないですが,もはや100万円のレンズにMTFがどうのという話はナンセンスで,どんな画質であってもそれは「ライカで100万円の画質」なのです。
なにを言っているのかわからなくなってきましたが,Artisans 28mm F1.4 ASPHは28mmでF1.4という明るいレンズであり,しかも開放から使えてしまう高性能レンズです。これをZfcに使ってみましょう。
作例はF2.8まで絞っています。
開放からキレのある画像ですが,F2.8まで絞ると無理がなくなり,F4あたりでほぼ完全です。あらゆる収差が押さえ込まれてきます。
そして線画のような線の細さが特徴的です。しかしコントラストは低く,黒が浮き気味です。同じ露出でもハイキー気味で写りますが,それでもしっかり線が飛んでしまわず,繊細な描写は残ります。
色のりはやや薄く,淡泊な味わい。繊細ですが滑らかという感じはしませんし,かといってカリッとした硬質な感じもありません。なかなか立体感もあるし情報量も多いあたり,モダンなレンズだなあと思います。
ですが,それ以前の問題として,なんといっても寄れません。広角の大口径レンズで寄れないってねぇ・・・うーん,どうしましょうかね・・・
・ColorSkopar 28mm/F3.5
広角レンズは,レンズをフィルム面に近づけることで実現されてきた歴史がありました。しかしミラーボックスのせいでバックフォーカスに強い制限を受ける一眼レフの時代になってから,新しいレンズ構成と収差の補正が確立して,現在のような高性能レンズの時代になっています。
しかし,ミラーレスの時代になり,またもレンズと撮像面が近づくことになり,過去のレンズを楽しめるようになってきました。
特殊な硝子も非球面も使わず,コーティングをふんだんに使って枚数を増やすこともしないクラシックな設計の広角レンズは,それはそれで味わい深いものがあります。
このColorSkopar 28mm/F3.5もそうしたレンズで,これまではレンジファインダーのCLEでしか私は使えなかったのですが,Zfcでは使うことができます。ワクワクしますね。
印象ですが,コントラストは強めで陰影がはっきりしているのと,解像感もあります。明るさを欲張っていないので全体に良くまとまっていますが。立体感はやや薄く,写実的な印象です。
このレンズは小さく軽く,クラシックなたたずまいが格好いいレンズです。Zfcにもよく似合いますし,パンフォーカスでバシバシ撮影するのも楽しいレンズです。
無理のない設計で安心して使える一本ですが,なにせ開放でF3.5で,F5.6くらいまで絞って使うことが多いので,それだったら他でもいいんじゃないかと思わなくもありません。(作例はF5.6まで絞っています)
・SMC PENTAX FA31mm F1.8AL Limited
さあ,評判の良い銘玉が来ました。 FA31mmF1.8です。このレンズ,悪く言う人が誰もいないんです。姉妹であるFA43mmは私も大好きなのですが,FA77mmは気に入らずに売ってしまいましたし,それほどいうなら試してみるかと2週間ほど前にようやく買ったという感じで,早速Zfcで試してみました。
で,その印象ですが,私の中では今ひとつ。性能も悪く,使い方が難しいという印象ですが,これを無理に使い込む必要などなく,もっといいレンズがあるじゃないかという冷めた感想しかありません。
まず目に付くのは,ピントが外れたところの画像の流れです。もやっと雲がかかったようなボケも厳しいし,二線ボケもあってうるさいです。しかも色ズレも派手に出ていて,これはじゃじゃ馬じゃないですか。
かといって中央部のピントが来ている部分がすばらしいかといえばそんなこともなく,解像感はなく,コントラストも低め。立体感は感じられませんし,明部は飛んでしまっていて,昔のレンズの描写そのままです。色も濃厚というわけではありませんしねえ。
作例ではF2.8まで絞っていますが,左下の木の幹にもやがかかっていて,かつ流れています。中央部の切り出しでこのざまですが,周辺部はもっとひどいです。これ,もしかして個体不良?
もっとも,FAリミテッドレンズは,収差をわざわざ残して撮影結果を重視する設計思想ですので,この画像が好ましいと思う人に取っては唯一無二なんだろうと思います。しかし,私の場合,このなんとも面倒くさい画像の印象が悪く,使おうという気も起きません。FA43mmはあんなにお気に入りなのになあ。
・シグマ17-50mm F2.8 EX DC OS HSM
APS-C専用の標準ズームで,F2.8遠しなのに2万円ほどで買えたという,実に財布に優しいレンズです。しかも手ぶれ補正まで入っていて,これで画質がいまいちでも誰も怒らないだろうというお買い得なレンズです。
しかしその実,画質も素晴らしく,近年のシグマの個性である高コントラスト,高解像度,淡色系,というキレキレの画像をきちんと作ってくれます。
F4まで絞った作例を見てもおわかりと思いますが,一連の撮影結果のなかで,おそらくもっとも高画質と言っていいんじゃないでしょうか。ボケもうるさくなく,滲みももやもかかっておらず,画像の流れもありませんし,解像感も高く,高コントラストで切れもすごいです。
陰影が強すぎて立体感は控えめではありますが,これはこれでシグマの個性です。木のような生き物でさえ人工物のようなソリッドな感じで撮影出来るのは,この安いレンズでも同じです。
個人的にはこのレンズの性能に目を見張るものがあり,FTZとの組み合わせでも持ち歩きできるギリギリの大きさという事で,常用レンズにするつもりでしたが,冷静に考えて,これを使うならZfcの個性が死ぬなあと,考えなおしています。
これは28mm相当ですが,望遠側の50mm(75mm相当)も素晴らしく,ズーム全域で全く躊躇なく使っていけるという懐の深さもあります。シグマはすごいですね,本当に。
・Ai Nikkor 28mmF2.8S
さあ,ニコンの新旧対決です。「寄れる広角」として名高いAi28mmF2.8Sです。
作例はF4まで絞っていますが,高コントラストで画像も流れておらず,ボケも自然で立体感もあります。黒の沈みがやや残念ですが,しゃきっとした画像がなかなかいいですね。
ただ,やっぱり時代的に解像感が今ひとつ。それがまたこのレンズらしさでもあるのですが,今のところ積極的に使おうという感じはしません。
・SMC Takumar 28mm F3.5
最後は私にとって最も重要な28mmである,SMC Takumar28mmF3.5です。レトロフォーカスの黎明期に誕生したF3.5世代のレンズで,今回のレンズの中では最長老です。1971年生まれと言いますから,50歳ですか・・・
この時代のレンズとしては驚異的な解像感とコントラストを誇り,良く写るレンズとして知られていますが,やっぱりこの時代のレンズらしく逆光に弱く,フレアも出やすいので万能という感じではありません。
しかし,何よりこのレンズが素晴らしいのはそのデザインとたたずまいです。49mmのフィルター径に標準レンズかと思うほどの短い全長を,クラシックレンズらしいデザインでまとめていますが,これに純正の角形フードを組み合わせてやれば,これがまたストイックな感じで実に格好が良いのです。
もちろん当時の代表機種であるSPでも格好いいですが,少し高さのあるESやES2ならさらによく,自慢したくてウズウズします。
私にとっては28mmでもっとも好きなレンズなのですが,作例はF5.6まで絞っています。
写りは50年前のレンズとは思えないほどよくまとまっていて,FA31mmの方がよっぽど破綻していますよね。色ズレは結構出ていますが,シャキッと気持ちよく写っています。解像感は今ひとつですが立体感もありますし,コントラストが高いことが硬質な印象を与えます。
暗部の処理はちょっと乱暴な印象で,情報量も少なめですが,そもそも私が28mmで欲しい結果はこれですので,やっぱりこれが一番なんだなあと思った次第です。
私は確か,純正フードの付いた程度の良い個体を5000円ほどで買ったのですが,今でも十分使える頼もしい相棒です。
とまあ,こんな感じでした。今回は絞りを含めた露出を統一しておらず,私が実際に使うであろう状況を再現して比較してみたのですが,やはり新しいレンズはさすがで情報量の多さには舌を巻きます。
どのレンズも個性がしっかりしていて好印象なのですが,期待が大きかったこともあってFA31mmのだめっぷりには落胆しました。どの方もこのレンズを褒めていますが,その褒め方が手放しに近く,こういう被写体には向いているとか,そういう褒め方をしていないんです。
Zfcに取り付けてみると,あまり格好が良くありません。フォーカスも合わせにくいですし,35mm換算で47mmくらいですから,まんま標準レンズです。画角的にも面白味が少ないので,どうやって使うか難しいなあと思います。
さて結論。無難なのは純正。ぱーっと明るい写真を撮りたいときは7Artisans,便利なくせに画質がいいのはシグマの17-50mmです。結局,ハンドリングと利便性を天秤にかけて選ぶというつまらないオチになってしまいましたが,Zfcは手に取った感じが良いカメラなので,レンズ探しの旅はまだまだ続きそうな気配です。