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ミラーレスを使うようになって新しく覚えたこと

 ミラーレスのカメラを使うようになって,覚えたことがいくつかありました。長く使った一眼レフからすんなり移行出来るようにしてあるのがカメラメーカーのミラーレスだろうと思っていたのですが,そういう配慮はZ6やZ7などの第一世代に向けてのようで,すでに離陸したあとのZfcなどでは,ミラーレスになって考慮しないといけない点が「新しい常識」として浸透していました。

 興味深かったのが,シャッターの仕組みについてです。

 一眼レフ時代の常識は,メカシャッター万能論です。とにかくメカシャッターが最強であって,これを中心に機能が組み立てられていますから,電子シャッターなどは静音動作などの特殊な場合に使い分けるものだと考えていました。

 ところが,Zfcでは可能な限り電子シャッターを使うのが初期設定なんですね。それも「オート」なる設定です。オート?なにが??

 ということで,調べてみました。

 CMOSセンサは(一般的にデジタルカメラに使われる)CCDと違って,外部へのデータの出力は横一列分(ラインといいます)ごとに行われます。厄介なのは,読み出されたデータはそのときの露出によるものである,ということです。

 1つ前のラインの出力が終わったらようやく出力を行うことが出来るのですが,ラインごとに露出時間が異なっていると明るさが変わって来ますので,露光開始も遅らせねばなりません。

 つまり,ラインのデータ出力時間だけ露出開始が遅れるわけです。

 それが最終ラインまで続けば,当然一番上と一番下の間には時間差が生まれるわけで,その結果高速で走る被写体を撮影すると,長方形のものが平行四辺形に撮影されてしまいます。

 我々が普段耳にする「ローリング歪み」というのはこれです。ローリング歪みを根本的に防ぐには,ラインごとの露出時刻を揃えることに尽きますから,データの転送を全ライン一気に行うか,データを画素ごとにメモリに一時的に蓄えて,それを後でゆっくり読み出すか,くらいしかありません。

 どっちもなかなか非現実な方法なのですが,これがかつてのCCDだと全画素をメモリに蓄えてゆっくり転送できたので,ローリング歪みは発生しませんでした。

 もちろんCMOSセンサでも転送を高速で行うことで目立たなくすることは出来るのですが,根本的な解決ではありません。

 そこで,現実解としてメカニカルなシャッターを用います。フィルムも露光時間によって明暗が記録されますので,シャッターの開閉によって積分時間を調整しているわけですが,同じ仕組みをCMOSセンサでも使うというわけです。カメラの象徴である「カシャッ」という音は,メカシャッターの音でもあるのです。

 さて,一眼レフではフィルムをCMOSセンサに置き換えた構造ですのでこれで問題解決です。しかしミラーレスはそうはいきません。

 ミラーレスでは,ファインダーに投影する画像を光学的に導くのではなく,CMOSセンサが取りこんだ画像をディスプレイで表示することで作り出しますから,撮影していない時でもシャッターは開けておかねばなりません。

 いざ撮影となったらシャッターを閉じて,改めてシャッターを開いて露光,終わったらまたシャッターを開けるという面倒な動作が必要です。一眼レフに搭載されたライブビューというのは,こういう仕組みだったことを思い出した方も多いでしょう。

 そのライブビューが,今のミラーレスの仕組みそのものであるわけですが,常時開けてあるシャッターを閉じて開いてまた閉じて開いて,という非合理的な動作によって,タイムラグやレスポンスと言った時間的な問題,シャッター稼働による振動によるブレの発生,そしてシャッターの耐久性が半分になるという信頼性の問題がついて回り,これがミラーレスカメラの魅力を半減していました。

 ここからミラーレスは,一眼レフの作り上げた道から分岐します。

 実は,CMOSセンサは,露光の開始は全画素一斉に行うことが可能なのです。露光開始をずらしているのは,露光完了が1つ前のラインのデータ出力が終わってからでないとダメだったからで,そのせいで露出時間を揃えるために露光開始もずらしたからでした。

 ならば,シャッターの先幕の代わりに露光開始を一斉に始めることで行い,露光の終了をメカニカルなシャッター後幕で行えば,撮影前にメカシャッターを閉じる動作はいらなくなります。そして撮影時は後幕だけをメカで動かしてやればよいのです。

 これが電子先幕シャッターです。

 電子先幕シャッターは,露光開始を行うシャッターという点で,メカシャッターの先幕となにも変わりません。しかも撮影前にシャッターを閉じなくてもいいので,タイムラグもなく,ブレも軽減(撮影時のブレというのは露光時のブレですので先幕による振動が原因であって,後幕による振動は原因ではありません),しかもシャッター寿命が延びる(とはいえ後幕の寿命は同じなんですが)と,すべての問題を一気に解決します。しかもそのために,新しい回路を仕込んだ専用のCMOSセンサを開発する必要もないのです。

 これほど美しい解決策にも,やはり弱点がありました。露光ムラです。

 電子先幕シャッターはCMOSセンサの画素の中身をリセットすることで行われます。なのでシャッターとセンサとの間の距離はゼロです。これに対してメカシャッターを使う後幕との距離は数ミリ程度あります。わずか数ミリですが,なにせ相手は電子先幕シャッターのゼロミリですので,無視できません。

 CMOSセンサへの露光は,フォーカルプレーンシャッターである以上は,それが電子であろうとメカであろうと,先幕が開いて後幕が閉じるまでの時間で作られるスリットの幅でその時間が決まります。

 光がスリットに対して真正面から来ているときは別に問題はありません。しかし,スリットが上または下に(そう,今のカメラのほとんどはシャッターが下から上に走るのです)ある時,センサから離れたところにある後幕がセンサに密着していると見なして良い先幕よりも先に光を遮ってしまうので,スリットの幅に差が出来てしまうのです。

 少し考えて見ればわかることですが,スリットが下にある時はスリットが広く,上に向かって走るに従ってスリットが細くなっていきます。これが露光ムラの正体です。

 この露光ムラは,スリットの幅が細いほど影響を受け,スリットの幅が広いほど影響が少なくなっていきます。また,スリットを通るときの光の平行度によっても違ってきます。

 後者については,純正のレンズのように既知のものであれば,レンズごとの平行度から露出の補正を行うためにシャッターの動作速度を調整することも可能ですし,ひょっとしたら現像時に露光ムラを補正するようなことも行われているかも知れません。

 しかし前者は,スリットが細いほど露出ムラが大きくなってしまいますから,自ずと使用可能な範囲が制限されてしまいます。スリットが細いというのはつまり高速シャッターということですので,ニコンなどは1/2000秒以上は電子先幕シャッターを動作させないようになっています。

 後者については,純正レンズであれば補正も可能なのですが,非純正のレンズだったりすると補正が出来なくなります。しかしもっと深刻なのは,ボケの形が変わることです。

 ボケというのは,ピントが合っていないことで点がぼやーっと広がって面になってしまうということです。点ならば前後に差があるシャッターのスリットを通ることに問題は発生しないのですが,面になるとそうはいかず,スリットが上にあるときと下にあるときで,ボケの一部が露光されないことが起きてしまうわけです。

 これも結局,突き詰めれば露光ムラと同じ事なのですが,ボケの形は画像処理による補正が難しいので,現実的には出来ません。ボケが欠けないように撮影するしか方法はないわけです。

 これも,光の平行度(射出ひとみまでの距離)が分かっていればシャッター速度の調整で回避出来そうなもんですが,非純正のレンズではどうにも出来ず,つまり影響が小さくなるまでシャッター速度を落とす事や,ボケ欠けが目立たないような被写体を選ぶ事が求められるということです。

 だったらもうこの際,電子先幕シャッターはやめて,メカシャッターを使えばいいじゃないかとなるのですが,それだと話が振り出しに戻ってしまいます。ここに至って,我々はなにを優先するかで使い分けを求められてしまったのです。

 ブレは低速でおきます。だからここは電子先幕シャッターを使いたい所ですよね。電子先幕シャッターは,スリットが発生すると露光ムラを引き起こすのですから,スリットが発生しないシャッター速度,つまりストロボ同調速度までは電子先幕シャッターを使わない理由はないでしょう。

 同調速度は多くのカメラで現在1/200秒くらいです。ここから影響のない程度のスリットまで許容して1/320秒くらいまでは,電子先幕シャッターにしておけば大丈夫でしょう。

 そこから上の速度は,完全にメカシャッターに頼らなくてはいけません。幸い,同調速度よりも高速なら,シャッター動作の完了時間は一定ですから,タイムラグが乗っかっても実際に露光を行っている時間が長い低速側に比べて,極端にタイムラグが遅いという印象を受けにくいです。

 こうしてシャッター速度で切り替える事でそれぞれのメリットを活かす必要があるのですが,これをユーザーが自分で判断して切り替えるのはかなり大変でしょう。

 さすがミラーレスの始祖であるオリンパスは,すでにこうした自動切り替えを実装しているので,ユーザーは気にしなくても良くなっています。ニコンは第一世代のZ6とZ7ではマニュアルで切り替えることを求めていましたが,電子先幕シャッターの上限が1/2000秒になることやブレを押さえる必要があることなどで,ファームウェアのアップデートで自動切り替えが実装されました。

 ここで素朴な疑問が。シャッターブレも手ぶれ補正で打ち消せないのか,という疑問を私は感じたのですが,これはある方が実験を行っていて,1/80秒をピークとして,1/60秒から1/100秒くらいの間では,手ぶれ補正によって補正しきれないということが起きているそうです。

 これ以下になると手ぶれ補正で補正出来ているようですが,結局Z6やZ7というニコンのミラーレスでは,メカシャッターと手ぶれ補正の組み合わせでも1/80秒付近のブレが大きいという結果になり,その根本対策として電子先幕シャッターが最も効き目があるという結論になっているのだと思います。

 そうそう,キャノンの場合,電子先幕シャッターの動作上限が制限されないそうで,そうなると1/8000秒などではボケ欠けなどが目立つらしく,かつシャッターの振動が小さいこともあるので,積極的に電子先幕シャッターを使わなくてもよいそうです。

 そう考えると,カメラとしての完成度の高さはキヤノンが最高,親切さでオリンパス,誠実さでニコン,という感じでしょうか。まあニコンはそのうち完成度を上げてくるだろうし,Z9などの上位機種では変わってくるんじゃないかと思いますが,こういうことが起きてしまった時のユーザーへの「見せ方」には,ちょっと興味深いものがあると思います。

 さてさてZfcですが,一眼レフと同じと思ってメカシャッターで使ってきたのですが,やはり低速側でのブレが抑えきれず,下手になったなあと落ち込んでいたのですが,実はシャッターが原因のブレとわかって,オートに設定し直しました。

 するとブレもかなり軽減されるようになりました。特に1/50秒から1/100秒付近というのは室内撮影で多用するシャッター速度ですので,ここでの撮影結果が大きく改善するのは,とてもありがたいことです。

 オートの設定は工場出荷時の設定ですので,わざわざいじらなければ良いという話ですが,設定を変更出来るようにしてあるからには,変更するとどうなるか,あるいは初期設定になっているのは何故なのかをきちんと説明してくれないいかんのじゃないかと,そんな風に思います。

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