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PC-386 Book Lの復活劇

 ある時,急にPC-9801を動かしてみたくなりました。

 私にとってのレトロPCというのは8ビット機までであり,それ以後の16bitマシンはPC-9801やX68000を含めて,レトロなんていったらあかんよな,と思うところがありました。(あ,ただしインテレビジョンとぴゅう太は別です)

 X68000はともかくとして,PC-9801というのは現在のPCに繋がるハードウェア構成であり,WindowsやDOSが走るという点でも,ビジネスマシンとして進化してきたという点でも,使った時の感触というか手触りに,本質的な違いがないように思います。

 当時も道具として割り切って使っていたPC-9801シリーズに対して,ホビーとしての懐かしさを感じることはなかったわけですが,しかしながらPC-9801全盛期だった1990年代前半からすでに30年です。

 割り切って使っていたものであっても,懐かしいと思うに十分な時間が経っていることに,私は今さら気が付きました。

 つらつらと考えると,初代PC-9801というのは1982年に誕生したマシンであり,まだ8ビットマシンの考え方やシステム構成を引き摺っています。

 ついでにいうと,1990年代前半というのは私にとってもちょっと特別な時期であり,大阪日本橋のパソコンショップで中古パソコンの担当をしており,最新のマシン,高価なマシン,珍しいマシン,そして懐かしいマシンまで,本当にたくさんのマシンを実際に動かすチャンスに恵まれていました。

 なかでも,王者NECのPC-9801に挑む,EPSONのPC-286/386シリーズは私も注目していました。PC-9801の殿様商売を悪く言う人も当時はいたのですが,今にして思うと,価格に相応しいお金のかけ方をしていて,当時のPC-9801は本当に堅牢でした。

 PC-286/386は,同じかちょっと上くらいの性能のものを安くした主力製品と,NECが出さないだろう個性的な機種やEPSONが得意とする小型モデルという,独自製品の2本立てでした。

 主力機種はPC-9801VMの互換機であり,VX以降との互換性は完全とは言えません。しかし,実質的にVM互換機であれば主なソフトはちゃんと動いてしまうので,CPUに高速なものを用いて全体を安く作る事が出来れば,決まったソフトしか動かさず,しかもそのソフトが高速で動作して,かつ安く買えるなら,事務機器としてはむしろ好都合だったはずです。

 個人的にはPC-286/386には頑張って欲しかったのですが,DOSのプロテクトを外すのが面倒くさい,フォントが気に入らない(好みの問題ですが私はEPSONのフォントは嫌いでした),なによりキーボードが気に入りませんでしたから,最初に買ったPC-386VRは数ヶ月で売り払い,NECのPC-9801RS2を買い直しました。

 ですが,一方の個性的な独自路線については,注目すべきマシンも多かったように思います。ラップトップもノートもEPSONが先でした。キーボード一体型もEPSONでしたし,今で言うタブレットのようなモデルもEPSONでした。

 なかでも,PC-286Bookという,ノートより一回り大きなマシンが印象に残っています。フロッピーディスクを2台装備したポータブル型で,NECだと完全なラップトップに相当するモデルを,随分小さくまとめてあります。

 ノート型の色が黒や紺などの暗い色だったのに対し,PC-286Bookはアイボリーを明るくしたような色で爽やかでした。

 実はこの後,PC-386NoteWという機種で,ノート型なのにフロッピーディスクを2台装備した完全版が登場するのですが,それまでフロッピーディスクを2台つ買いたいなら,このBookシリーズを選ぶ事になるわけです。

 PC-286Bookの後継機種でありPC-386BookLは,名前の通りLスロットと呼ばれた拡張スロットを持ち,拡張性さえも備えた完成形です。HDDも内蔵可能,メモリも専用スロットを持ち,バッテリー駆動も可能ということで,とても魅力的だったことを覚えています。

 数あるPC-9801でも,このPC-386BookLは,今でも手に入れたいマシンです。

 手に入れたい・・・探してみるか。

 そしてやってきたのが,満身創痍なPC-386BookLでした。某オークションで約5000円。送料まで入れると結構高い買い物だったと思います。

 ACアダプタがありません。なんとかなるだろうと思っていたのですが,コネクタが特殊と聞いて軽いめまいがします。ピンを差し込んで安定化電源から15Vを供給して様子を見ます。

 ピーと電源が鳴き,ドライブがガコガコいったかと思うと,沈黙。以後うんともすんとも言いません。甘かったですねえ。

 分解して内部を見てみます。

 まず,バックアップ用のNi-Cd電池が盛大に液漏れしていてドロドロです。メイン基板に電解液が流れています。

 そして問題の電源基板ですが,この頃のマシンによく使われていた4級塩の電解コンデンサがことごとく液漏れを起こしています。

 4級塩の電解コンデンサについては詳しい説明が他にありますのでここでは省略しますが,液漏れ被害が市場で頻発した1990年代後半は,各電機メーカーが戦々恐々としていました。今もって公式にこの問題を認めたメーカーはないと思いますが,その筋では常識となっている問題です。

 運が良ければコンデンサを交換するだけで動き出しますが,多くは電解液が基板のパターンを壊したり,他の部品に染み込んでショートさせたりと散々な悪さをします。覚悟していたとはいえ,かなり見通しは悪いです。

 とにかく電源基板のコンデンサを交換します。

 しかし結果は変わりません。メイン基板のヒューズの1つが切れているのを発見しましたが,これを交換しても変化はありません。

 電源基板を分解し,可能なものは部品を取り外して部品レベルの破損チェック,そして基板の清掃とパターンの確認をしていきます。それでもなかなか解決してくれません。

 嫌気がさしてきたので,とりあえずハンダで端子をなめて基板との接続を確実にしたのと,メイン基板とサブ基板のすべてのコンデンサを交換したところ,幸いなことに起動に成功しました。ピッとシステムディスクを入れるようにとの警告音が出たときには,信じられないような気持ちでした。

 しかし,喜ぶのはまだまだ。LCDを取り付けても表示は出てきません。CRTに繋いでもなにも出てきませんが,これは[GRPH]キーと[CTRL]キーで出てくるメニューで設定を変更し,表示が出ていることは確認出来ました。

 フロッピーディスクも接続し,DOSあ立ち上がるところまではなんとか進みました。

 ここからトントン拍子かと思ったのですが甘かったです。

 まずLCD。なにも表示が出ないので途方に暮れていたのですが,オシロスコープで信号を追いかけていきました。

 このマシンは,LCD制御用の回路をCRT用途は別に独立して持っており,LCDコントローラと専用のVRAMが存在しています。そこでLCDコントローラとVRAMの端子を見ていたところ,バスが衝突している箇所を発見。電解液によるショート(300kΩくらい)があったので当該箇所を清掃しました。これで波形は正常になったのですが,問題は解決しません。

 そこで徹底的に清掃を試みたところ,突然画面がパッと現れました。驚きました。

 これで直った,よかったと思っていたのですが,1時間ほどすると画面が乱れ始め,横方向に8ドットずつ2回表示されるようになってしまいました。ゴミも出ています。さらに時々表示が出なくなります。

 この問題がなかなか大変だったのですが,まず表示が出ない問題は,水晶発振子の株に染み込んだ電解液でした。これが発振を止めてしまうので,外して清掃。これで直りました。

 次にゴミですが,これは先程の電解液によるレアショートが復活していたので,再度清掃しました。これで直りました。

 最後に苦労したのが表示の乱れです。これ,8ドットごとというのがミソなのですが,LCDコントローラの端子を慎重にお隣同士でショートさせたところ,規則性のある似たような画面の乱れが起きる場所を探し出し,ショートさせても変化しない箇所を探し出しました。

 たどっていくと,VRAMのA0です。ここの波形を見ると,なにも出てきません。A1やA2は出ているのにです。ならばと,A0をLCDコントローラと繋いでやると,ばっちり画面が出るようになりました。

 つまり,A0のパターンが電解液で切れてしまったのです。LCDのVRAMは1バイトで8ピクセルだと推測されますが,A0が変化せず固定されるので,8ドットずつ同じ物が表示されるというわけだったのです。

 これでとりあえず本体は直りました。

 しかし,次なる問題が・・・続く。

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