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理想のフードを探す旅

 レンズのオプションに,フードというものがあります。

 若かりし頃,フードのような邪魔なものは付けずに,ストイックに現場に挑むことが格好がいいことであると,私は勘違いをしていました。

 当時に私に若干の同情が許されるとすれば,その当時のフードというものは,プラスチック製で不細工な花びらのようなものをはめ込むものであり,多くはレンズの付属品,すなわちオマケであって,それそのものに興味などわこうはずもありません。

 しかし,私は思い出したのです。中学生の時,運動会を撮影していた写真屋さんのカメラのレンズに角形フードが取り付けられていて,それが妙に格好良かったことを。

 さらに私は思い出しました。一ノ瀬泰三のニコン(正確にはニコマート)が,ベコベコに変形したフードを実に誇らしげであったことを。。

 つまり,私は14歳にして,フード病に感染していたのでした。

 フード病・・・ほとんど顧みられることのない,ジャンクワゴンのマジョリティであるフードに,異様に執着する病気です。「レンズはフードとセットで完成する」やら「フードの良し悪しで格好の良さは決定的になる」などと,フードに比重を置いた発言と共に,以下の症状が見られます。

・中古レンズのお店に行くと必ずフードを買っている
・フードが別売りのレンズには納得出来ない
・1つのレンズに複数のフードを用意していて,気分で付け替えている
・フードが用意されていないレンズを不憫におもい,似合うフードを捜す旅に出る
・フードを含めたレンズとボディの姿形に,美意識を強く持っている
・ライカやオールドニッコールのフードが高価な事を心底理解している

 フードはなにかと軽く見られがちな存在ですが,機能的にとても重要なものです。

 1つには光学特性の改善です。レンズには画角というものがあり,画角の内側の光が画像を作り出します。画角の外側の光が無視されてしまうだけなら平和なのですが,それらの光が硝子の表面や鏡筒内部で意図しない反射を繰り返して,画像に写り込んだりして悪さをするから,困った事になります。

 もともと画像に関係ない光ですから,それらをカットすればよいわけで,必要な光以外は遮ってしまうために,いわば「手をかざす」ことをやれば有害な反射をする光を防げます。これがフードの大切な役割です。

 ということは,もともと反射が少ないレンズにはフードはいらん,ということになるのですが,実際に最近はその通りになっており,設計者が「優れたコーティングと設計で反射の影響はほとんどないのでフードはいらない」というものも登場しています。

 しかし,もう1つのフードの役割を聞けば,あなたもフードをしようという気になるはずです。それは,レンズの保護です。

 レンズは高価です。しかも,重くて長く,およそ人間が持ち歩くに適切な形状とは言えません。自分の体の動作範囲から大きく外れたレンズは,とにかくぶつけたり落としたりするものです。

 悪いことに,レンズにとってぶつける,落とすは最悪の事故です。壊れてしまえば高額な修理代がかかり,最悪修理が不可能なこともあり得ます。しかし,フードがあれば,衝撃をフードの変形という形で受け止めてくれるので,レンズ本体への襲撃が衝撃が随分と緩和されるのです。

 もちろん,身代わりになったフードは交換が必要でしょうが,それは一般に安価です。

 それだけではありません。画角の外側からやってくる光を遮るなら,光以外の水や砂なども防いでくれるでしょう。レンズを守る働きもあるのです。

 こんな大切な役割のフードを粗末にするなんて,ひどすぎます。

 フードの役割はわかった。しかし,それは結局レンズ設計者の力不足を,後付けの部品でごまかそうとした薄汚い行動に過ぎないのでは?

 鋭い,しかし,こう考えて下さい。高額設計者は,最初からフードを含めて成功の性能を出すように設計したのだと。フードを付けない事こそ,設計者の想いを踏みにじる行為であると,そしてその結果,性能が出ないと揶揄されることを設計者は甘んじて受けねばならないことを。

 かくして,フードはレンズの一部であるとの結論に至るわけです。

 望遠レンズほど長いフードを,広角レンズほど浅いフードを使わないと画角に引っかかってしまうわけで,フードを見れば画角もわかるというメリットもあります。

 ところで,レンズは円形ですので,当然フードも円形になるのが正しいわけですが,実際に画像を描くのは円形ではなく,その内側の四角形です。6x6版のようn正方形のこともあるし,ライカ版のように3:2のこともあれば,4/3のように4:3の場合ありますが,厳密に言えばそれら四角形の外側の光は不必要な光ですので,フードも円形ではなく,四角形の方が,さらに言えば四隅は浅く,編の真ん中ほど深いものが理想となります。

 性能を重視すれば花形になりますが,花形フードの弱点は,性能を追求するあまり敬樹が複雑になり,金属では加工出来ず,現実的にプラスチック製になってしまうと言うことでしょうか。

 不細工な上に安っぽく,しかも最初はそもそもの性能が十分ではないズームレンズに付属されていたという経緯もあってか,特に望遠側では全く役に立たない花形フードはとにかく馬鹿にされ続けていました。
 
 ひいてはそれがフード全体と貶める結果になったことに,共感される方も多いのではと思います。

 しかし,これまでに多くの美しいフードが,レンズの先端を飾ってきたことを思い出して欲しいのです。

 ファインダーを隠してしまうので穴を開けてあるフード。
 鏡筒が短い広角レンズのフードは広く深いのが特徴です。
 角形フードは取り付け後に位置を調整する機構が備わっています。
 外側に広がるのではなく,内側にすぼまるフジツボフード。
 レンズ内蔵のフードの,あの滑らかなスライド感覚。
 二眼レフのフードは正方形です。

 アルミにはアルミの,真鍮には真鍮の,そしてプラスチックにはプラスチックの,それぞれに趣があります。それは良し悪しではありません。

 性能と格好の良さ,つまり機能性と芸術性の按分は,レンズやボディのように性能が重要視されるものとは違って,ずっと芸術よりだと想うのです。

 なのに,フードはなかなか顧みられません。最近は別売りになることも増えました。ひどいものは,フードが最初から用意されないことも散見されます。

 これでよいのでしょうか。一部の重篤なフード患者が騒いでいるという現状は歪んでおり,もっとフードにお金をかけ,性能と美しさが高い次元で両立する独自の世界を,我々は求めていかねばならないのではないでしょうか。

 閑話休題。

 TTArtisan 17mmF1.4です。

 35mm換算で25.5mmの大口径レンズとしては破格の安さ,性能も良く良く写り,ビルドクオリティも素晴らしくて,この値段で量産できるなんておかしい,と,昨今の中国の人権侵害の話まで飛び火しそうな素晴らしいレンズで,私もすっかり常用することになっています。

 しかし,悪いことが2つ。1つは決定的に不細工なデザインです。先端がすぼまった形状は,大口径レンズに一般的なたくましさに背を向けています。

 そして,似合うフードがありません。専用のフードが用意されていれば,少々不細工でも使うでしょう。しかし専用フードがないことは,好きなものを選べるという自由度以上に,似合うものを探し当てる苦労の方が勝ってしまうものです。

 こうして,私はまたもフード探しの旅に出ることになりました。

 最初に考えたのは,40.5mmのフィルター径にねじ込める広角レンズ用のフードを試すことです。amazonを探すと,丸形の浅いフードと,角形のフードが広角用として販売されていました。しかし,焦点距離が17mmでかつ鏡筒が長いレンズのですで,ケラれる可能性が高いです。

 しかも私は保護フィルターまで付けないと気が済まない面倒な人です。試して見るしかないと言うことで,とりあえず両方買うことにしました。フード病の患者は,ダブってしまうことを恐れません。

 届いた2つのフードは,悪いことにどちらもケラれてしまいました。

 それは,フィルターにフードを重ねても,逆にフードにフィルターを取り付けても同じでした。

 ならばやむを得ません。ステップアップリングを使いましょう。広角レンズにはフィルター径を大きくしてケラれることを防ぐといういにしえより伝わる先人の知恵があります。

 40.5mmをニコンの標準である52mmと,タクマーの標準である49mmにする2つを注文します。ダブっても恐れないのがフード病患者です。

 52mmだとニコンの金属製のねじ込みフードが使えます。49mmなら私の大好きなタクマー用の角形フードが使えるでしょう。確実なのは52mm,攻めるなら49mmです。

 結果は,52mmは余裕でOK。思った以上に格好良く,首から提げればまるで一ノ瀬泰三です。

 49mmはギリギリOK。ちょっと取付位置がずれるとケラれますが,正面からの格好良さは,思わずため息が出るほどです。

 これで勝負あり,このレンズには49mmのステップアップリングにタクマーの角形フードで決まりです。

 ここまで2週間。無駄なお金も時間も使いましたが,すべてはフード病の急性発作を抑えるための負担です。やむを得ません。

 そして,傍らには,まるでジャンクワゴンのように山盛りにあふれたフードとフィルターが満載の,ヨドバシの段ボール箱がひっそりとたたずんでいます。

 

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