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Walkmanの修理~その2~WM-805編

 さて,次に取り組んだのが本物のWalkman,WM-805です。

 WM-805は1990年の発売で,「ワイヤレスウォークマン」と呼ばれたシリーズの4代目にあたります。今ならそれ自身が音楽再生能力を持つくらいの大きなワイヤレスリモコンから無線で操作をしつつ,本体から無線で音もリモコンに飛ばすというはじめての双方向を実現した画期的な高級モデルでした。

 高級と言いつつ,当時の事ですので無線はFMラジオをベースにしたアナログ方式ですし,回路が大幅に増えるために大きくなり,無線ゆえに筐体はプラスチックでどうしても厚ぼったくなります。消費電力も大きいですし,リモコンにも電源が必要ということで,私は当時冷ややかな眼で見ていました。

 ある時,某オークションを見ていると,真っ赤な格好いいWalkmanが目に入ってきたので調べてみると,それがWM-805という当時無視していたモデルだったと知り,ジャンクを手に入れました。

 手に入れたWM-805は,表面のゴム塗装が加水分解でベトベトになるというWM-805の持病は当然として,電池の液漏れは派手に起きている(これがあとで地獄を見る)上,リモコンは付属していないというゴミのような状態でした。

(1)分解とベトベト対策

 分解は手がベトベトになるので大変だったのですが,幸い石鹸で落ちるのでこまめに手を洗いつつ分解します。分解が終わったらハンドソープで洗った後に重曹に2時間ほど漬け込んで対策します。重曹ですが,本当にベトベトがなくなります。これで加水分解の対策は決定だと思います。

 分解途中で筐体を割ってしまったのでこれを補修し,つや消しのクリヤーを吹き付けます。すると細かい傷も消えて,とても上品で新品のような見た目が甦りました。しかし,そこは模型用のスプレーラッカーですから,擦れば剥げてしまいますし,角から剥がれていってしまうことは覚悟しないといけません。

 分解して見ると,想像以上に電池の液漏れが広がっているようで,なかなか難しい修理になりそうな予感です。


(2)モーターの修理

 分解をして駆動系を確認しますが,モーターが軽く回りません。これは内部でローターのマグネットが錆びて膨らみ,ステータのコイルに接触しているのが原因です。こうなったモーターは交換しかないのですが,交換出来るものもないのでモーターそのものを修理します。

 モーターを分解し,ローターのマグネットの錆びた部分をヤスリで削り取り,接触しないようにします。マグネットが割れていないので助かりました。

 元通り戻し,エポキシ接着剤で固定して修理完了。モーターは滑らかに回るようになりました。


(3)でも全く動かない

 モーターを戻し,プーリーを綺麗に清掃してベルトを掛け,電源を入れてみますが,うんともすんともいいません。ここで数日足踏みしましたが,どうやらマイコンが動いていないみたいです。

 そこでセオリー通り電源とクロックとリセットを確認します。電源はDC-DCが動作していて3.2Vが出ています。OKです。

 リセットは解除されているのでここも問題なし。残念なのはクロックで全く発振していません。クロックは500kHzのセラロックで作っていますが,これが発振しないというのはセラロックの不良に始まり,果てはマイコンが死んだまで考えないといけないので,ちょっと大変です。

 セラロックの不良から疑ってみますが,似たような周波数のものと交換しても動きません。どうもセラロックではなさそうです。そうこうしているうちに,時々発振するようになったり,ゆっくりと発振が始まったりするようになりました。

 セラロックに繋がっているとコンデンサの不良を疑いますがこれはシロ。少し値を前後させますが変わりませんので,発振条件から外れたとかそういうことではなさそうです。

 どうも電池の電解液が悪さをしているような感じなので,疑わしいところをハンダゴテであたっていると,発振することが増えてきました。上手くするとソレノイドの初期化まで進むことも出てきました。

 さらにあたっていくと,あるスルーホールを触ると確実に発振することを見つけました。ここが怪しいので細い線材でバイパスしたのですが,これだと全く発振しなくなりました。

 このスルーホールとその周辺に熱を加えてやると,安定して発振するようになってきました。原因ははっきりしませんが,どうも電解液が染み込んで配線容量が大きく変わってしまい,発振しなくなっていたのではないかと思います。

 とりあえずこの段階でモーターが回り,テープが走るようになっていました。


(4)ミュートがかかっていない

 ヘッドフォンを繋げてみると,テープを止めてもノイズが出ていますし,FFやREWでも再生音がキュルキュルとなっています。ミュートがかかっていないようです。

 本来あるべきミュートのトランジスタのベースに繋がる抵抗(100kΩ)が外れていたので,これを取り付けるとミュートはかかるようになりました。しかし何でだろう,外した記憶はないんだけどなあ。


(5)音が割れる

 めでたく音が出るようになったのですが,電源電圧が1.4Vになると音が割れて,ボゴボゴという音になってきます。どうも電源の変動で発振しているようです。

 この場合,電解コンデンサがあやしいので回路図を見ていくと,DOLBYのICに繋がっている電解コンデンサがどうも臭います。外して見ると液漏れしていました。(本当に臭いました)これを交換すると音が割れるのはなくなりました。


(6)スタンバイのまま

 これでテープも走行し,音も出るようになったので組み立ててみたのですが,よく考えると一度テープを再生すると停止してもスタンバイ(リモコン操作可能な状態)のままなので,LEDもついたままですし,消費電流が70mAほど流れたままです。こんなに流れるとテープを止めたままでも電池が一晩でなくなってしまいます。これはおかしい。

 これがなかなか難問で,なかなか解決しませんでした。数日間またも足踏みしたのですが,最悪の場合も考えてもう一台WM-805を手に入れて,波形を比較していきました。

 そもそも取説がないので正しい操作も挙動も分からないままでしたが,ちゃんと動く基板を見てスタンバイのスイッチはONとOFFをオルタネートで切り替えるものとわかりました。

 おかしい基板では,このスイッチを動かしてもスタンバイがOFFになりません。波形を見ると,本来1.4Vにならないといけない波形が,3V近くでています。これもおかしいです。

 そもそも回路図を見ていると,ここに3V系は繋がっていないのです。どこからか3Vが回り込んでいるという事だと思うのですが,そのせいでスイッチ操作によって次のトランジスタを叩くほど電圧が下がらず,結果DC-DCコンバータを停止できないようでした。

 このおかしな回り込みを調べてみますが,なかなか尻尾がつかめません。部品を外したり違う値に交換したりして変化を見ますが,どうもわからないのです。トランジスタの故障,特にPNPのトランジスタはよく壊れるので外してチェックしますが問題ありませんし・・・

 そろそろあきらめようかと思った時にもう一度回路図を見て,この回路に3Vが回り込んでくる可能性を1つ1つ見ていきましたが,どうもDC-DCコンバータを停止するトランジスタの周辺からしか回り込みようがないことがわかってきました。

 そこでそのトランジスタのベースに繋がる時定数のコンデンサ(セラミックの1uF)を調べてみました。すると,容量が全然なくなっていて,コンデンサとして機能していません。しかも,外した基板を見てみると端子間にべっとりと電解液が染み込んでいて,これがどうも導通の原因のようです。

 この電解液によるショートで3Vがベースから入り込み,前段のコレクタから周辺の回路に3Vを与えるという事が起きていたようです。

 基板を綺麗にしてコンデンサを交換すると,あれほど苦労したスタンバイのON/OFFが上手く出来るようになりました。

 要約修理完了です。ふー。


(7)とはいえ

 組み立てて動かしてると,ワウフラッターも小さく(実はピンチローラーも新品に交換しています),最盛期としてとても優秀です。筐体も新品同様の綺麗さですし,電池接点などはもう一台のWM-805かと取り替えました。

 電解コンデンサはすべて交換しましたし,これだけ手間をかけたのですから愛着もあり,これで使おうと思うのですが,心配なのはやっぱりクロックで,原因不明なままなんとなく直ってしまったという悪い状況です。

 この場合,大体あとになって問題が復活することになるので,その場合は基板も交換することになりそうです。


(8)次のテーマ

 新品で購入し(よく覚えていますが特価で1万円を切っていました),その後数年間私のオーディオ環境の一翼を担ったのにあっっさり捨ててしまったWM-EX60が欲しいのですが,兄弟モデルのWM-FX70を手に入れています。これ,当時欲しかったラジオ付きで,ラジオは動いているのですが,テープは動きません。

 これを直すのが1つ目,もう1つは新しめでWM-EX666です。回路はシンプルになっていますし,実用機としてはちょうど手頃ではないかと思います。問題はヘッドフォン端子が特殊なので,どうやって汎用の3.5mmジャックにするかを考えないといけないです。


 という感じで,WM-805は3桁の数字で命名されるモデルとしては後期のものになりますが,回路はこれでもかと思うほどバイポーラトランジスタが多用されていますし,部品の隙間もないほどびっしりと並んでいます。

 1980年代の小型化技法として見るべきものがあるなと感心しますし,これが2,3万円で売られていた事もちょっと感心しますが,この後部品は小さくすると同時に,点数を減らすことを中心に行われていきます。まだ点数が多い時代の小型化というのは,なかなか興味深いものがあり,手にしたときの密度感も,心なしか高い様に思えてくるから不思議です。これが1980年代の魅力なのかも知れません。

 

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