Optio RS1500を5000円で買う
- 2011/12/16 17:21
- カテゴリー:散財
昨日のことですが,GOPANの小麦グルテンとプリンタ用の写真用紙を買って帰ろうと,家の近所の家電量販店に寄り道しました。小麦グルテンは三洋からパナソニックに発売元が変わるらしく,面倒なので三洋製の物があるうちに1つ買っておこうと思いました。
幸い在庫はいくらでもあり,1箱手にとって写真用紙を選び,レジに向かうとなにやらタイムセールをやっています。
目をやると,デジカメ5000円!と書いてあります。何人か人が群がっていますが,そこにあるカメラはカシオのカメラです。全く個人的な理由で,カシオのカメラはただでもいらないと思っているので,その場を立ち去ろうとしたのですが,目に入ってきたのは「PENTAX」と書かれた箱でした。
1つだけあったその箱には「Optio RS1500」と書かれており,カラフルな着せ替えカメラが印刷されていました。なかなか楽しそうです。
どさくさに紛れて5000円の対象ではないカメラが混じることはしばしばあることで,一応箱を見てみると5000円の値札が貼ってあります。元々の値段が安いカメラでしょうが,それでも5000円ですからね,安いです。
なんとなく気になって箱を手に取りましたが,スペックは14MピクセルでHD動画撮影可能,3倍ズームで広角27.5mm相当という具合に,基本性能は十分なものを持っています。
しかし,いくら5000円とはいえ,使う予定もないデジカメを増やすというのもなんかもったいない話です。
先日嫁さんのお母さんが家にやってきたときの「カメラだらけね」というつぶやき(でも防湿庫を見たわけではなかったそうです)がリフレインし,そもそも使うのか?と自問した結果,私はその箱をそっと元の位置に戻すことにしました。
すると突然,はっぴを着た威勢のいい店員さんが「色は白です!手ぶれ補正もあります!」と,そんな売り文句で誰が買うねん,と思うような声をかけてきます。あと少しでタイムセールは終わりのようで,出来るだけ売り切ってしまいたいのでしょうね。
買わないでおこうと思った私ですが,店員さんの声で反射的に,箱を置こうとした手を引っ込めてしまいました。これは,もう何かの縁です。このPENTAXは私に買って欲しいと訴えています。
ということで,買うことにしました。この猥雑な空間から,助け出すに等しい行為でした。店員さんは,「クリスマスですから」と小さいチーズケーキを手に取り,一緒にレジに列んでくれました。
店から出ると,私は冷たい風に顔をなでられ,我に返りました。
確かに,5000円という値段で日本メーカーの現行のデジカメというのは,安い。しかし,安いものにはそれなりの理由があるもので,それが残念な結果になる可能性は否定できません。
ただ,ふと私(我々)の持っている小型デジカメのラインナップを思い出すと,
PENTAX Q
SIGMA DP1s
・・・なんじゃこりゃ。
OptioSもありますがやっぱ300万画素は心許ないですし,CoolPixS6は,どうもレンズ性能が今ひとつで,画質も気に入りませんし,レスポンスが悪すぎて撮影する気が失せます。
PENTAX Qは,嫁さんが使うのに,という理由で買買ったわけですが,嫁さんはどうもPENTAX Qに手軽さを感じないらしく,あまり使ってくれません。やっぱ,魚眼がどうの,AdobeRGBがどうの,RAW現像がどうの,と嬉々としてPENTAX Qをいじくり回す私を見ていて,なんか違うと思ったのでしょう。そう,なんか違うのです。
小型軽量,ズーム搭載,JPEGオンリー,押すだけで綺麗に撮れる,というごく普通のコンパクトデジカメが我が家には1つもなく,それが嫁さんの撮影意欲を削いでいたのかも知れません。
嫁さんに限らず,カメラを趣味として使っていない人は,時に素晴らしい写真を撮影することがあります。視線が新鮮ですし,褒められるように撮ろうなどというスケベ心がなく,実に素直です。
彼らは難しいことを考えないので,カメラにとってはかなり不利な条件で撮影されることがありますけども,それも技術の進歩で問題にならなくなっていきます。手ぶれ補正,高感度,顔認識AF,オートホワイトバランスなどなど,技術的な失敗が少なくなるように進歩したコンパクトデジカメには,強い存在感があると思います。
そんなことを考えつつ,とりあえず嫁さんに渡すと,珍しく興味を示し,充電を始めています。嫁さんは初代OptioSがお気に入りで長く使っていましたから,その末裔だと知ると,ぐっと親近感がわいたようです。
私も興味があったので手にとってみました。いくつか思った事を書いてみます。
・とってもチープ
発売時の価格が1万円ちょっと,現在は6000円台のカメラだけに,とってもチープです。とても軽く,プラスチッキ-で,極端に小さいわけでもなければ,ボタンの感触も心地よいものではありません。
ですが,これがこのカメラの持ち味だと思います。
むしろクセのないスクエアなデザインは,若い人から年寄りまで使う人を選ばず,下品なメッキパーツが全くないこともとても好印象です。
・手頃な大きさ
初代OptioSは今でも小さいなあと思うのですが,このOptioRS1500はそれほど小さいわけではありません。今時のデジカメとしては標準的な大きさでしょう。重さは120g程度ということで見た目よりもとても軽く,拍子抜けします。
大きさがある程度あるので持ちやすいのですが,左側の天面に指かけと思われるくぼみがあるのが,個人的には気に入りません。コンデジは右手でシャッターボタンに指をかけ,左手は大画面化したLCDを避けるため人差し指と親指でつまむように持つ人が多いのですが,これは脇も開くし,不安定で手ぶれがでがちです。
ですから,左手の人差し指と親指でL字を作り,ここにカメラをのせてから,右手をそっと添えるように持つのが理想です。PENTAXほどのカメラメーカーが,わざわざ指かけまで作って良くない持ち方に誘導するというのは,ちょっとどうかなあと思います。
・着せ替えは実に面白い
かなりの数の着せ替えシートが同梱されていますが,個人的にはクラシックカメラ風のシートが気に入りました。
AdobeAirをインストールしなければなりませんが,メーカーからもオリジナルのデザインシートを作るツールが用意されていますし,自分で作ってしまうことはなんでもありません。AsahiPENTAX時代のフォント,AOCOロゴ,そして瞳に王冠のマークなど,往年のPENTAXファンにはたまらないパーツを駆使して,思わずにやっとしまうようなシートを作りたくなります。
といいますか,個人的にはですね,初代OptioSのフロントパネルをスキャンして印刷するとか,秋月の透明プラケースに入ったキットを撮影して印刷するとか,ちょうど撮影者の目の部分にレンズが来るように構えたときにカメラに隠れた顔を印刷して「なんちゃって光学迷彩」にするとか,見た人が「あれっ」と思ってもう一度よく見てしまうようなデザインシートを作りたいです。
・レスポンスはいい
電源投入から撮影開始までの時間も短く,レリーズタイムラグも短いと思います。良く出来ているなあと感心しました。レンズが飛び出してくる時間も短く,なかなか軽快です。
・レンズ
35mm換算で27.5mmという広角域からの4倍ズームは,おいしい実用域をカバーします。一応smcPENTAXというブランドになっているので,一定の光学性能は満たしているのでしょう。
レンズ構成は5群6枚で,うち非球面を3枚使ったズームレンズですが,性能と言うより低コストを狙った非球面でしょうね。私も詳しいことは知りませんが,コンパクトデジカメはレンズ交換しませんから,そのレンズ専用の画像処理を行う事が出来ます。だから,画像処理で補正可能な収差はあえて光学的には改善させず,画像処理では向上が難しいレンズ性能を引き上げたり,コストダウンを行ったりするそうです。
・基本性能はもう十分
4倍ズームに14Mピクセル(これうちで一番多い画素数です),ストロボ内蔵,オートシーンセレクトに顔認識AF,ISO6400までOK,HD動画と,もう機能的には十分でしょう。手ぶれ補正は光学式ではなく画像処理で行うもので利き具合もいまいち,不自然な補正にちょっと常用は厳しいように思いますが,一応一通り揃っているという感じです。ここから先はもう,好みの問題になると思います。
・液晶は最悪
液晶は3インチで32万画素です。一昔前のアナログテレビ並みの解像度というのを割り引く必要はありますが,それにしても視野角の狭さ,色の悪さ,コントラストの低さには,ものすごく悪い印象しか残しません。安いカメラですからやむを得ませんが,これだけ悪い液晶が未だに存在しているんだなあと驚いたほどです。
・操作系
概ね他のPENTAXの機種と似たようなものなので混乱はしませんが,1つだけとても困ったことがあります。グリーンボタンです。
グリーンボタンはユーザーにはとても好評で,今やPENTAXのアイデンティティとも言えるものですが,その実ただのファンクションキーに成り下がったケースも少なくありません。
また,ただ緑色のボタンというのは,知らない人には全く機能を想像出来ないボタンな訳で,それが一等地に配置されていることには,なんだかPENTAX教に入信する熱心な信者を対象にしているような妙な囲い込みを連想して,ちょっと気分が悪いです。
そのグリーンボタンですが,このカメラでは設定を標準的な初期状態に一発で切り替えるボタンにアサインされています。どの設定を変えたかなあと思い出すのも面倒な最近の多機能デジカメにはありがたい機能のように思いますが,戻して欲しくない設定だってあるわけです。
私のケースでは,ストロボの発光禁止です。赤ちゃんの撮影にストロボは御法度ですが,発光禁止に設定したあと,うっかりさわったグリーンボタンのせいで設定が復活し,盛大にストロボが光ったのです。
ストロボの発光禁止というのは,ストロボを発光させてはいけない場合にわざわざ設定するものであり,その影響が自分ではなくむしろ周辺に及ぶために,マナーとしても失敗が許されないものです。
また,ストロボ発光禁止のような機能はマニュアルを読まなくても現場でさっと設定出来ることを望まれるもので,それが本人の意図しない形でいつの間にか解除されて光ってしまうということは,私は問題だと思います。
それに,グリーンボタンを押して設定が戻っていることを示す表示が,LCDの左上の緑色のマークというのは,何が何だかわかりません。緑色のマークからストロボ発光禁止が解除されたことを連想できる人は,説明書をきちんと読んで覚えている人だけでしょう。
グリーンボタンを,動画のボタンにアサインし直したために,うちではこういう問題は起きなくなったのですが,ストロボを光らせてはいけないところで光ってしまうと,カメラそのものを禁止するところも出てくるでしょう。
本人が気をつけることはもちろんですが,本人の知らないところで設定が「勝手に」変わることが,カメラそのものへの非難に繋がらないことを祈るばかりです。
・撮影画像
ちゃんと評価している訳ではありませんが,1万円程度のデジカメの写真は,随分良くなっているのですね。色や歪みの補正が強烈にかかった印象は否めませんし,ノイズを潰すために高域をカットしてなんとなく眠い画になっていることも,見た目のシャープネスを稼ぐためにエッジを微分で立てて白い縁取りが出ているのことも,安価なデジカメのお約束です。ですが,トイデジカメになる一歩手前で踏みとどまっているのは,やはり老舗カメラメーカーとしての良心でしょう。
・結局のところ
5000円なら間違いなくよい買い物ですし,現在の相場である7000円弱という価格なら十分納得のいくカメラだと思います。しかし,1万円を越えるカメラという事になると,ちょっと厳しいかなあというのが個人的な感想です。
液晶の悪さには我慢が必要ですし,全体的な質感の低さはラフに使える気軽さの源泉ですが,それには安いという事実がなくてはいけません。
それにつけても,この着せ替えというのは実に楽しいです。なかにはすぐに飽きるという人もいるようですが,コロコロと着せ替える楽しみもあるし,愛着のわくデザインシートで末永く使うというのもありでしょう。見方を変えるとメーカーがデザインを放棄したとも言えなくはありませんが,そのかわり工具無しで気軽にシートを交換出来る仕組みや,デザイン用のツールを無償配布しているのですから,積極的に楽しむべきでしょうね。
ということで,5000円ですからね,そこまで安くならなくてもいいんじゃないかと,そんな風に思いました。5000円で売ることが本当にメーカーの望みだったのか,そうしてまで売らねばならない理由とはなんなのか,ちょっとそんな気もしました。
同時に,カメラの価値がぐっと下がって,もしかすると写真の文脈が次の世代から違ったものとして解釈される可能性があるかも知れないなあと,そんな風にも思いました。
それはちょうど「写ルンです」が世の中に出てくる前と後,のようにです。