Stereo付録のLXA-OT1を組み立てる
- 2012/01/05 13:34
- カテゴリー:make:
昨年末のことですが,「ステレオ」という雑誌にディジタルアンプが付録で付いてきました。最初はノーマークでしたが,友人から「なかなかよさそう」という話を聞いて,買うことにしました。
付録のアンプ基板はその名も「LXA-OT1」。実に覚えやすい名称ですが,なんとラックスの設計になるとのことです。部品点数も少ないし,コストのかなりの制約もあるでしょうから,出来る事も限られているとは思いますが,音の方向性や定数の決め方,部品の配置方法などは,やはりラックスの文化を反映しているのではないかと,期待したいところです。
パワーアンプICはSTマイクロのTDA7491で,最近の定番になりつつあるようです。元々テレビのオーディオアンプとしてこの手のICは新しいものが次々生まれていますが,TDA7491もその1つでしょう。しかしその素質はかなり高いレベルにあるとの評判です。
本来,このアンプに直接ライン入力を入れても良いはずなのですが,わざわざオペアンプによるプリアンプを前段に入れています。ぱっと回路図を見るとゲインは1.118倍という事ですので,ほとんどバッファのような感じですね。
ちょっと面白いなと思ったのは電源の部分です。付属のACアダプタはスイッチング式の安定化電源で,12Vの出力があります。これからまず抵抗分割で6Vを作り,プリアンプ用のオペアンプの中間電位を作っています。
さらに12Vからツェナーダイオードで3.3Vを作っています。この3.3VはTDA7491のミュートとスタンバイの制御用端子を叩くための電圧で,特になにかを駆動しているようなものではありません。
この3.3Vを使ってトランジスタによるスイッチを動かし,スタンバイに入れることで電源をOFFにするという仕組みを使っています。パワーアンプ用の12Vを直接ON/OFFするのではなく,12Vは常に通電してありますが,スタンバイ時の消費電流は限りなくゼロに近いので無視できます。
こうすることで大電流用の大きなスイッチは必要なく,また電源ON/OFF時のポップノイズをある程度防ぐことを狙っているのでしょう。実際,かなり小さいポップノイズに収まっています。
そしてこの信号でLEDのON/OFF制御も行っています。このあたり,中途半端なアマチュアが作ると,ついつい手を抜いたりする部分ですが,さすがにちゃんと作られています。いいですね。
前述のオペアンプはわざわざDIPのパッケージをソケットを使って実装してあり,交換可能になっています。マニアックですね。このくらいのオペアンプの使い方で,そんなに音質が変わるとも思えませんし,いわばオペアンプの味をわざわざ付けるような回路ですから,本当にここまで必要なのかどうかは,ちょっと疑問が残ります。
そのオペアンプには,NJM4558Dという定番が使われていますが,丁寧に回路を組んであるので,どんなオペアンプが挿されても問題なく動作するのではないでしょうか。
音質に影響しそうなコンデンサ類は,特にオーディオ用のものではないし,国産品でもありませんが,そこはコストとの兼ね合いです。気になる人は自分で交換すればよいだけの話です。効果がありそうなのはC9とC10,C4とC11,C45とC6がまず挙げられると思います。
私の場合は,コンデンサの交換は見送りました。交換用の部品が手元になかったですし,わざわざ買って交換しても気のせいで終わりそうな予感がしたからですが,オペアンプについては,死んでも使い切れない程の数を在庫しているOPA2134に,とりあえず交換しておくことにしました。NJM4558Dの元気のある音も好きなのですが・・・
で,基板むき出しのバラックで鳴らすのも気が引けたので,最初からケースに入れて使う事にしました。大阪の部品屋さんで適当なアルミケースを探し,ついでにデテントタイプの2連ボリューム,40mmの大型ツマミ,そしてオルタネートタイプの押しボタンスイッチ,RCAの2Pジャックと出力用のスピーカターミナルを手配しました。
数日後部品が届いたので確認すると,なんと押しボタンスイッチがオルタネートタイプではありませんでした。私の注文ミスです。いやー,押しボタンスイッチはしょっちゅう買い間違いしますね。
もともと,内部にサブパネルを用いて,ボタンの頭の部分だけパネルから飛び出させるつもりでいましたから,この使い道のないスイッチを分解して,ボタンの頭だけを取り出し,これを手持ちの感触のいいスイッチに取り付けて見ました。かなり大型のスイッチなので場所は取りますが,基板を横にして格納できたので,スペースは十分そうです。
そして40mmのツマミです。アルミの無垢からの削りだしは高すぎるので,安い台湾製のものを買ったのですが,これってボリュームの軸がローレットを切ってあるもの専用であることをうっかりしていました。一緒に買ったボリュームはストレートの軸なのではまりません。
そこで,ツマミの穴を6mmのドリルで軽くなめて,ボリュームの軸に圧入する方法で対応します。これも適当にやったのでセンターが出ず,ぱっと見はわからないのですが,ツマミを回すと偏心していることがばれてしまいます。
ただ,このケースに40mmはちょっと大きすぎました。30mmも一緒に買いましたが,これは小さすぎます。35mmならちょうど良かったのですが,まあ今度アキバに行ったときにでも,良さそうなものを探してきましょう。
LEDは頭が1.5mmになっているオレンジをパネルに差し込んで使いますが,このLEDはおとなしい発光で頭の形状も好ましく,私のオーディオ機器用電源ランプはこれで統一しています。これに手持ちのパネル取り付け型のDCジャックと電源強化用に追加する3300uFの電解コンデンサを用意して,部品は揃いました。
それで,冬休みに入った12月26日の朝から3時間ほどの作業で穴開けを行い,組み込みをしました。パネルには最初から大きな傷があり,そのままでは使えそうになかったので,前回の周波数カウンタのパネル用にプリンタで印刷してステッカーを作り,これを貼り付けることで対応しました。レタリングも出来るので一石二鳥ですが,銀色のパネルも捨てがたく,ちょっと惜しい気がしています。
基板からボリュームとスピーカ端子,RCAジャック,LEDとDCジャックを取り外します。そしてNJM4558Dを抜き取って,OPA2134に交換します。
あとは穴を開けたパネルにステッカーを貼り,部品と基板を組み付け,配線を進めます。配線作業は翌日の朝に持ち越しましたが,のべ3時間ほどで完成です。電源スイッチも案外綺麗にまとまって,押し心地もばっちりです。
作例をいくつかネットで見ていると,最初から基板についているボリュームの軸を延長し,ツマミを取り付ける例がありました。これだと,背面から端子を出す位置に基板を置いても,フロントパネルにツマミを配置できますし,電源スイッチ用の穴を開けることも必要ありません。随分簡単にケースに入れることが出来るのですが,私にはその発想は最初からありませんでした。
さて,配線のチェックをして電源を入れてみます。波形を見ると,無負荷ではキャリアと思われる300kHzがちょっと漏れているようです。全然問題ないレベルですし,負荷を繋げば消えるかも知れないので私は気にしません。むしろ直流がのってスピーカを燃やしてしまう事が心配でしたが,これも問題なし。
もともとこのアンプは,昨今の電力事情を勘案して使用を自粛していた300Bシングルアンプの代わりに,うちで一番いい音が出るB&WのCM1を鳴らす常用アンプを想定していましたから,ちゃんと動くことがなにより求められます。
真空管のアンプは通常スピーカを危険に追い込むような故障(あくまで故障であって調整不良や設計ミスは論外です)はほとんどないので安心していましたが,ディジタルアンプを含む半導体アンプは,このあたりを少し気にかけておくべきでしょう。
完成したので,置き場所を確保して設置し,スピーカとプリアンプをつなぎ直して,いよいよCM1を鳴らします。
第一印象は,あまりに普通,という印象でした。CM1は結構立派に鳴っていますので,まず第一関門は突破。300Bのアンプに比べてとてもソリッドで,ゴツゴツした印象を持ちますが,だからといってスピード感があったり切れ味の鋭さがあったりというわけではなく,本当に普通です。
ハムやノイズも全然なく,実に安定で快適ですが,どうも面白味に欠けます。特にボーカルの表現力が乏しいのですが,その代わり大きな編成のオーケストラなどでも表情を変えず,300Bのアンプのように音を上げるようなことはありません。実のところ,300Bのシングルアンプの個性の強さと好ましさを再認識することになりました。
ですがなにより,この音でこの消費電力の小ささですからね,大変なものです。どんなソースでも普通に鳴って,CM1をちゃんとドライブ出来るのですから,オマケとバカにせず,しっかりしたケースに入れて良かったと思います。
以後,毎日のように使っています。冬休みの間,テレビも面白くないし,ながらが出来るので,ずっと毎日NHK-FMを聴いていたのですが,それこそあらゆるジャンルの音をしっかり鳴らしてくれました。300Bのように得手不得手が目立つ訳ではありませんし,消費電力の低さで長時間使用も気にならず,精神的な負担の軽さもあってとても快適です。
聞くところでは,すでに在庫が払拭しているらしく,今から手に入れるのは難しいかも知れません。もし手に入れるチャンスがあったら,わずか3000円弱ですので,手に入れられることをおすすめします。
・・・でも,私が今回のアンプを完成に持って行くのにかかった費用は,アンプの3000円に,ケースや端子類で3000円ちょっとですので,合計6000円ほどです。ケースが安かった上,配線材料は手持ちのものがありましたからこのくらいで済んでいますが,実際はもう1000円ほど余計にかかるでしょう。
このくらいの金額になると実は完成品が買えますし,もう少し出せば穴開け加工済みのケースまで付いたキットが買えたりします。ケースの加工を楽しみと考えるか,手間と考えるかで変わってくると思いますので,結局バラックで鳴らすのが一番賢い使い方だったのかも知れません。
冬休みの工作としては簡単なものでしたが,実用性も高く,使って楽しいものですので,私として大変満足です。
そうそう,せっかく作った歪率計で歪み率を測定しようかと思ったのですが,なんとこのアンプはBTL接続でGNDが浮いているため,現状の歪率計では測定出来ませんでした。最近のアンプは電源電圧が低いのでBTLが普通になっていますから,せっかく作った歪率計に出番がなく,ちょっと悲しいところです。
