802.11acのAirMac Extreme
- 2013/06/14 17:37
- カテゴリー:散財
先日開催されたWWDCで,数々の発表がありました。その後数日はこの話題がトップニュースとして扱われていたので,特別興味のない方でも,耳にされた話もあったと思います。
私はiOSのユーザーではないので,自分に直接利害関係のある話題とはいえず,どうしても距離感が出ますが,OSXについては自分の生活を支えるOSですので,やはり心配です。
Finderのタブとタグによるファイル管理方法の変更は,便利になるよと言う話の奥に,Macintoshが長年不変の思想として遵守してきたオーバーラップウィンドウとフォルダというシステムが,抜本的に見直されたことを意味します。
それは,この2つを軸に持たないiOSが,進化の過程で生み出した新しい概念に,旧来のシステムが上書きされるという現実です。
ここで,OSXとiOSは別々に進化(あるいは保守)してもよかったはずですが,良し悪しは別にして生みの親であるAppleはこの1つを統合することにしました。生み出す利益の大きさ,社会的影響の大きさ,(事実かどうかは別にして)エース級の人材が投入されているiOSに,OSXが近づくことは自然であり不可避であると思いますが,これは同時にパーソナルコンピュータという装置の進化は,一端ここで終わるということと読み替えできます。
僅か数百バイトのメモリにスイッチとLEDで始まった個人用コンピュータは,BASIC言語,CUIを持つOS,そしてマウスとGUIに進化したところで,極論すればそれ専用の技術開発は終了したのだと,いえるでしょう。
それが,コンピュータと人間との付き合い方なのですから,私は否定も肯定もしません。ですが,無常観は強く感じてしまいます。
見失ってはいけない事はただ1つで,それが人間の創造性をアシストし,人間の活動を疎外しないものなのかどうか,です。そのためにMacがオーバーラップウィンドウを失っても,むしろ歓迎されるべきであるということを,我々は忘れてはなりません。
閑話休題。
そのWWDCで発表になったプロダクツの中で,私がひときわ待ちわびたものがありました。新しいAirMac Extremeです。
我が家は今年の春に新築した一戸建てですが,ネットワーク環境の見直しも念頭に置いて進めてきました。各部屋にCAT6のEthernetが出ているのはその最低限の施策ですが,実際に生活を始めると無線LAN環境の見直しも急務になってきました。
かつて,無線LANはそれほど重要な位置付けではなく,狭く平面的な家で,10Mbpsも出ていればストレスのないものばかりがつながっていたに過ぎません。電子レンジで切断されることが問題になり,5GHzへの移行こそしましたが,速度的には問題を感じませんでした。
むしろ,AirPlayが使える事を重視し,伝統的にAirMac Expressを使って来たのですが,この廉価版アクセスポイントの問題点は,Ethernetが100BASE-TXであること,アンテナの本数が少なくMIMOでの接続が実質的に難しく速度が出ないこと,2.4GHzと5GHzは排他であることでした。
最新のAirMac Expressはデュアルバンドですが,相変わらずEthernetが100Mbpsです。仮に,802.11nが300Mbpsでリンクして,実行速度が150Mbpsとしても,なんと有線LANがボトルネックになって,実質さらにその半分程度の速度しか出ないことになってしまうのです。なんのための802.11nですか!
まあ,実際に300Mbpsでリンクすることはまれで,200Mbpsくらいでリンクすることもそんなにありません。これだと有線LANがボトルネックになることもありませんから,気分の問題と言われればその通りの,些細な問題であることは否定しません。
なら,なぜ上位機種であるExtremeがあるのか。
バンド当たり3本のアンテナを持つMIMOで最大450Mbpsとなれば,さすがにGbitEthernetは有利でしょう。高速の有線/無線LANを支えるシステムは,それ自身が高速で動作せねばなりませんから,足腰の強さがレスポンスにと言う形で顕在化するとも思います。
ということで,春の段階でAirMac Extremeを買うことを考えたのですが,やめました。次世代規格である802.11acの足音が聞こえてきたからです。
802.11acは最大6.9Gbpsを実現する802.11nの正統後継者です。
余談ですが801.11は世代が進むとサフィックスのアルファベットがa, b, c, dと順次送られていきますが,1文字を使い切ったら次は2文字になって送られていきます。
ですから,802.11bの次が802.11g,その次が802.11nで,最新が802.11acとなっても,サフィックスに意味はありません。
8x8のMIMO,最大160MHzの広帯域化,256QAMによる変調方式の多値化と,802.11nとの親和性を考慮しつつ現在考え得る技術を盛り込んだ骨太な規格です。
しかも,802.11nでは見送られたビームフォーミングの必須化など,電波の飛び方そのものにも手が入り,先の高速化により有利に動こうとします。
残念ながら802.11acはまだ正式なものとはなっていませんが,ほとんど最終版としてドラフトが出ています。各社これに従って製品化し,販売されるようになったのがここ数ヶ月の話です。
製品化と言っても,結局802.11acに対応したLSIが出てこないと話にならないわけですから,昨年の秋頃にLSIの発表があったことから考えて,そろそろ製品が出てくることは予想されたことでした。
802.11acは高速化のために様々な技術を駆使していますし,お金のかかる方法も使っています。ですので,速度と引き替えにどこまで対応するかは,ある程度自由です。安いモデルと高いモデルは,速度で差別化が行われるということですね。
年明けくらいから,AirMac Extremeが802.11acになるという噂はあったため,当時現行だったAirMac Extremeは買わずに,AirMac Expressと安い2.4GHzのアクセスポイントでここまでしのいできた私としては,802.11acのAirMac Extremeが出るのを待ちわびていたのです。
そしてとうとう発表,即日発売になりました。
デザインは平べったいものから,AppleTVが成長したような縦長のデザインになりました。こんな製品,他に見たことがありません。初めて見た人は,なんだこれはと首をかしげることでしょう。個人的には,前の方が良かったかなあと思います。
会社の帰りにビックカメラに寄り道しますが,あいにく在庫切れ。だったら店頭に空箱を置いておくなよ,と思ったのですが,他のお店に聞いてもらったら1つだけ在庫ありとのことで,押さえてもらいました。
旧機種が15000円,最新機種が2万円なので随分値上がりしたように思いますが,まあそこは初物ですし,802.11acですからね,こういうインフラ関係は,そうそう買い直すわけにも行かず,長く使えるものを選ばないと大変です。
実物は結構大きく,重いものでした。
帰宅して箱を置いておくと,娘が両手で掴んでトコトコ歩いて遊んでいます。
箱が面白いんだなあと思って,開封してあげたのですが,彼女は箱ではなく,電源ケーブルに興味を持ったらしく,クルクルと綺麗に巻かれた電源ケーブルを振り回して遊び,箱には目もくれません。
本体を取り出し,保護フィルムを剥がします。本体を覆う白いフィルム以外に,底面に貼ってある黒い丸いフィルムは,リングのマークまで転写されていて,なかなか良い感じです。
早速娘はその黒いフィルムをいろいろなものに貼っては剥がし,貼っては剥がしを繰り返して遊んでいます。相変わらず箱には興味はないようです・・・
今回は,現在使っている802.11nのAirMac Expressをリプレースすることが目的です。IPアドレスの設定やアクセス制限の設定など,なかなか面倒で手間のかかる作業があるのでうんざりという感じだったのですが,意を決して移行作業を開始です。
しかし,すぐに私は拍子抜けすることになります。
なんと,AirMacユーティリティを立ち上げると,自動で新しいAirMac Extremeを見つけ,しかも設定のアシスタントには他のAirMacベースステーションからの移行という選択肢が用意されていたのです。
1回目はなぜか途中で止まったのですが,2回目はまさにあっという間に作業が自動で終わり,その後AirMac Expressは電源を落とされました。代わりに動き始めたAirMac Extremeは,ほぼ完全に設定を移行して稼働しており,iPadを使っている嫁さんは移行作業があったことすら気が付かないでしょう。
そういえば,Macは新しい機種に買い換える際,現在のマシンから環境を新しいマシンに移行させるアシスタントがありました。実際に使ったのはiBookG4からMacBookProへの移行の時だったのですが,拍子抜けするほど簡単で,またその後も問題らしい問題も出ずに,安心したことを思い出します。
AirMacはそんなにたくさんの設定項目があるわけではありませんが,試行錯誤を繰り返してなんとなく動いている場合もあるでしょう。そういう場合,こうやって機械的に移行作業が出来るなら,確かにそれはありがたいと思います。
このあたりの配慮は,Appleらしいです。
ということで,まさかシリーズも世代も違っているAirMacベースステーションからの移行がこんなに簡単にできるとは思っておらず,この点だけでもApple製の無線LAN機器を使い続ける理由になるなあと思いました。
さて,動き始めましたが,使い心地です。
まず,見た目に結構目立つので,置き場所は気を遣うと思います。高さがあることと,真っ白なので,これに違和感のない部屋というのはちょっと特殊でしょう。また,Appleらしいシンプルなデザインではあるのですが,どうも私には今ひとつ格好良く見えず,1周してなんかおかしなことになったなあと,思っています。
そうそう,ファンが常時回るようになりました。ファンは静かなので,音は耳を近づけないと分からないくらいです。底と接地面のわずかな隙間から排気されますので,特に設置に気を遣うことはないと思います。
それと,大きさは結構大きいと思います。すでにばらした記事がWEBに上がっていますが,3.5インチのHDDが内蔵できる大きさですので,それなりに大きいことが想像出来ると思います。
性能については申し分無しです。5GHzは以前よりも随分高速でリンクするようになっています。2階に設置したAirMac Expressと,3階で使っているMacBookAirは,300Mbpsで安定してリンクしています。アンテナの位置とビームフォーミングが効いているようです。
実効速度も上がっています。NASにTimeMachineのバックアップを取る時間も短くなりました。ファイルのコピーも高速になったと思いますし,やはりGbitEthernetの力もあると思います。
アクセスポイントとして使う場合には,4つあるEthernetのコネクタはハブとして機能します。うちはハブとしても使うように複数の機器をここに繋いでいますが,パフォーマンスの問題は全くありません。
ところで,今回の導入は,5GHzと2.4GHzの2つを1台でまとめてしまうことにありました。これがまたとても簡単なのです。
ワイアレスの詳細設定を見ると,5GHz専用のSSIDを設定出来るようになっています。ここに5GHz専用のSSIDを入れれば,移行されたSSIDは2.4GHz専用になってくれます。以前のAirMacユーティリティでは,Optionキーを押しながらとか,いろいろ作法があったようですが,少なくとも現在の最新バージョンではOptionキーは使わずとも,2.4GHzと5GHzを別のSSIDで管理できます。
ですから,MacBookAirとiPad2は5GHzで,ScanSnapやNintendo3DSは2.4GHzできちんとつながりました。
ということで,ここまでで目的は達成出来ました。高速で安定した通信が出来るようになったこと,当分の間使い続けることが出来るだろうということで,まずは満足な結果です。
今後は,例えばUSBでHDDを繋いで共有するとか,プリンタを繋ぐとかあると思いますが,前者は既にNASが稼働していますし,後者はプリンタを置く場所がなく,邪魔になるだけですので,あまり考える事はないでしょう。
これで当分,無線LANは心配ありません。