DP2Merrillをやっぱり買った
- 2015/06/29 15:37
- カテゴリー:散財
迂闊でした。
シグマの尖ったコンパクトデジカメであるDPシリーズのうち,1世代前のDP2Merrillが,4万円台半ばになっていることに気が付いていませんでした。
DPシリーズもQuatrroになり,DPから小文字のdpになりましたが,まさかのdp0まで登場し,ますますその尖りっぷりにブレーキがかかりません。
新しい世代になるたびに,延長線上ではなく否定から登場するかのような変貌ぶりに驚くのですが,それでもDPらしさを失わないあたりの妙技に,私はいつもやられっぱなしです。
とはいえ,価格は10万円のデジカメです。そうそう簡単に手を出すような手軽さはありません。いつも憧れだけが残ります。
かつてDP1sの時にも価格が大幅に下がった時があり,私はこの時に32800円でオーナーになっています。調べてみると2010年の6月という事ですから,なんとまあ5年も前の話なのですね。驚きです。
このDP1s,じゃじゃ馬というか,もうまともな写真が全く撮れる気がしないデジカメでして,出番はまったくありません。この世代のDPシリーズの最大のメリットはRAW現像がLightroomで出来ることくらいで,UIは整理されておらず,動作も緩慢,レスポンスは悪く,AFもあわない,ISO200以上は使いものにならず,しかもレンズは切れ味はともかくF4と暗いので,フィルムカメラ以上にストレスのたまるカメラでした。
それだけの制約がある中で,出てくる画像はやっぱり首をかしげたくなるようなもので,特に緑と赤の不自然さには辟易したことを覚えています。
ローパスフィルタが存在しないFoveonX3であることは興味深いとしても,画素数が実質400万画素クラスであり,やっぱり情報量の少なさはいかんともしがたいものでした。
それでも,この初代DPには熱烈なファンがおり,彼らが支えたおかげで,全面改良された次世代機Merrillが登場するのです。
Merrillとは,惜しまれながらなくなったFoveonX3の生みの親からもらった名前です。実質的な画素数は実に1400万画素を越え,以前は少し小さかったセンササイズも,ようやくAPS-Cになりました。
この段階で,最も深刻と言われた画素数由来の情報量の少なさは解決し,むしろ演算で埋め合わせをしない4600万画素のデータの大きさと情報量に,皆度肝を抜かれるわけです。
SD1という,これも当時話題になった強烈な一眼レフに搭載されたMerrillが,DPシリーズに展開されてその能力を爆発させたのは今から3年ほど前の話です。
F2.8と一段明るくなったのに,開放からキレキレの高性能レンズを搭載,使いやすくなったUIに高レスポンス,起動の速さやAFの精度も向上し,しかもLCDが92万画素にアップすることで,一気にDPシリーズが「使えるカメラ」に進化したのです。
酔狂な人々が次々にその可能を述べていますが,私の目から見るとそのほとんどが「駄目だ」といいつつ,嬉々としてその画像を褒めています。どうも自虐的な人に好まれるカメラなんだなあという,そのコミュニティに本質的な共感を感じながら,その入会金として10万円払うことが難しいことも,承知していました。
それが,私の前の前のノートPCに,46800円で出ています。
きっかけはフジヤカメラのツイッターだったのですが,送料と代引き手数料込みでDP2Merrillが46800円でした。DP1MやDP3Mはすでになく,DP2Mだけが残っている状態でこの値段でしたから,処分もいいところでしょう。
DPシリーズは,世代を経るごとに劇的に改良され,使いやすくなっていくのですが,むしり窮屈な制約や不条理も個性と考えると,それらを乗り越えた先にある超高画質を手に入れる旅を楽しむならば,純粋に画質だけ考えればいいわけですから,もはや私がDP2Merrillをこの値段で購入することに,何の障害もありません。
ところが,この値段は別に今だけのものではなく,もう半年ほども前からこの値段で売られていたらしいのです。このことを知らなかったことに,私は迂闊だったと思ったのです。
そんなわけで,DP2Merrillを,今さら買いました。
Quattroは,少し辛抱すれば普通のカメラとして使えると言われていますが,Merrillはとんでもないじゃじゃ馬らしく,しかしそれをいなして手に入れた画像には,他の追随を許さない,圧倒的な解像度を持つと言われています。
上等です。
届いたDP2Merrillですが,まず手にとって分かったことは,大きいということです。DP1sに比べると一回り大きくなっており,小型一眼レフくらいある感じです。これでコンパクトというのは,もはやウソです。
しかし,ミラーボックスのない,レンズ固定式のカメラでこの大きさというのもまた強烈で,一体中に何が入っているんだろうという疑問さえわきます。
電池は2つついてきます。いわく,電池の減りが強烈で,2つないと話にならないからだそうです。私は,電池寿命が延びないならもう1つつけてしまえという考え方は,大好きです。
ただ,どっちの電池も空っぽなので,充電時間も倍かかるということを見落としてはいけません。
充電が出来たので早速起動です。なんと,UIまわりは普通のデジカメになっています。サクサク動くし,おかしなクセもありません。設定項目も少なく,よく整理されています。
ひととおり設定も済んだので,早速撮影してみます。
メモリカードに書き込み中は画像を再生出来ないとか,消費電力がすごくて,本体がかなり熱を持ってくるとか,ISO800以上の画質はあまりにひどくて,壊れているのかと思ったほどでした。
D800の気分でDP2Merrillを使い始めましたが,それでは1枚も写真が撮れない事態になります。動きに追従しない,シャッター速度が上がらずぶれまくり,ホワイトバランスも無茶苦茶です。GRの時は,少し使っていれば慣れるもので,D800と同じように撮影が可能だったのですが,さすがDP2Merrillは慣れとかそういう問題ではなく,無理だとあきらめるだけの強烈さです。
ちょっと気分を変えて,DP2Merrillにふさわしい撮影方法を模索します。まず,晴れた日であること。感度とシャッター速度を稼ぎ,かつホワイトバランスの狂いを防ぎます。
そして動かないこと。じっくりねらって撮影出来ること。
こうして撮影をしていくと,わずか数枚の撮影に1時間近くかかっていることにはっとします。そうです,いいカメラ,使いやすいカメラは,コマ数は増えていくのですが,果たしてそれはフィルム時代に許されたことだったかどうかです。
1枚1枚を大事に撮影する気持ちが失われて久しく,いきおいファインダー像を吟味する時間も短くなっていきます。写真を撮影することの楽しみ,シャッターをレリーズするまでにジワジワと出てくる脳内麻薬が,最近不足していると,改めて気付かされました。
そしてそうして撮影した画像を,印刷するまでがもう大変です。
D800やGRは,Lightroomを使って,高速に管理し,高速に現像が可能です。もともとの状態が良いので,手を入れる箇所も少なく,大量の写真を処理する面白さを堪能出来ます。
しかし,DP2MerrillはLightrommが使えません。最新の現像ソフト,SIGMA PhotoPro6.3は,以前より随分ましになりましたが,それでも使い勝手が独特で,現像に時間がかかりすぎます。全部の写真を現像するなど不可能で,小さいサムネールから厳選して,現像することになります。
そして,これをTIFF16bitで現像し,Lightroomに引き渡して,レタッチと印刷というのが私のワークフローなんですが,わずか数枚現像しただけで,やはり1時間経過しているのを見て愕然としました。
出来上がった写真は,非常に高画質で,DP2Merrillならではの写真になりました。その解像度の高さ,情報量の多さに思わず唸ってしまいましたが,これ1枚を仕上げるのにかかった時間はやはり2時間近くで,およそ商用には使えない,手間のかかるカメラという事になるでしょう。そしてこの間に,電池が一度切れています。
私は思いました。
これはもう,完全に趣味のカメラであると。実用性を無視して,とにかく良い写真を撮影することだけに専念せねばならない,不便きわまりないカメラであると。
歩留まりの高い安定した性能で,日々の記録や決定的な瞬間を逃さないことも大事ですが,じっくり被写体を向き合い,自分の心の中に見えている画像が現実に切り取られることを,試行錯誤を重ねて取り組む事を味わうカメラです。
そうして,誰かのためではなく,自分の為だけにに撮影するカメラであることに気が付くと,なんと肩の荷が軽くなることでしょうか。
DP2Merrillとは,のんびり過ごすことになりそうです。