周波数カウンタを買った
- 2016/06/13 15:51
- カテゴリー:散財
結局買ってしまいました,周波数カウンタ,HP53131Aです。
実のところ,20年近く前に買った秋月の8桁周波数カウンタキットを,数年来レストアしたり改造したりして楽しんできたわけですが,使用頻度を考えても,8桁という精度を考えても,こればかりは既製品を買うことはないだろうなあと思っていました。
しかし,目の前には53131Aがあります。いわゆるジャン測なので,安かったです。
8桁の周波数カウンタに対しての不満点ですが,やっぱりレシプロカル式じゃないというのが,最大の問題でした。
レシプロカル式?
周波数は1秒間に繰り返す回数を示しているわけですが,例えば1MHzだと1秒間に1000000回の数を数えて表示すれば,周波数カウンタが作れます。これで7桁ですね。
では,ちょっと応用して0.1秒の間で数を数えたらどうなるかです。100000回の数を数えることが出来ると思いますが,これを便宜上10倍して表示すれば,測定が短時間で終わります。ただし一桁精度が落ちてしまいます。
逆に10秒かけて数を数えてみます。10000000回の数を数えることになりますが,これ,10秒で1回とか2回という,1Hz以下の周波数も数えていますね。つまり一桁精度が上がっているという事です。
とまあ,直接式というのは,ゲートタイムと呼ばれる「数を数える時間」の間,数を数えて表示する物です。ゲートタイムが狂ってしまえば測定結果も狂うし,早く結果が見たければ精度は落ち,精度を高めたければ時間がかかるという,まあ常識通りの測定器といえるでしょう。
ところが,ちょっと考えてみると分かるのですが,1kHzとか100Hzとか,低い周波数の測定をしようと思うと,この直接式では全然精度が出ないのです。1回の測定に10秒かけても,1000.0Hzです。小数点以下一桁しか測定出来ません。
もっと極端な例でいえば,1Hzの測定は,10秒かけても1.0Hzです。しかもゲートタイムを0.1秒にしてしまうと,そもそも測定ができません。
ということで,実は直接式の周波数カウンタといのは,かなり使い方に限定があるものなのです。
これを打破するのに,周期を計って表示する時にその逆数を表示するような周波数カウンタが生まれました。誰が考えたんでしょうね,これをレシプロカル式といいます。
周期の測定というのは簡単で,入力される信号をゲートとして,その間正確なクロックの数を数えてやればいいのです。1msのクロックを1000個数えたら周期は1秒,ゆえに周波数は1Hzですね。もし1001だったら,1.001Hzということです。
お,小数点以下3桁まで出ているのに,測定にかかる時間はほとんど変わりません。これがレシプロカル式の威力です。
レシプロカル式では,測定時間が短くても精度の高い測定が可能です。また,同じゲートタイムであれば,量子化誤差に周波数依存性がなくなります。
量子化誤差というのは,数を数えた時の最小桁が,1つ増えたり減ったりすることです。数えはじめと数え終わりを示すゲートパルスと,測定したい信号とが同期していないから,数えはじめるタイミングによっては,最後に1つ数え損ねてしまうことがありますけど,これが量子化誤差です。
1MHzで最小桁が1つずれても大した差はないと言えますが,1Hzで最初桁が1つずれると,これはもうえらいことです。
しかし,レシプロカル式のばあい,クロックを高くしておけば,測定信号の1周期の間にかなりの数のクロックをカウント出来るので,量子化誤差を相対的に小さくできます。
ん?でも,高い周波数を測定する時には,量子化誤差が見えてくるだろうって?そう,その通りなんです。でも,ここでもう1つの前提条件である,ゲートタイム(言い換えれば測定にかける時間)が同じなら,と言う話が出てきます。
高い周波数というのは周期が短いです。ですので,同じゲートタイムなら,低い周波数よりも高い周波数の方が,何周期もたくさん数えることができます。
そもそも,周期を測定するためのクロックは,測定信号が高いか低いかに関係なく,一定です。これを同じゲートタイムで数えるのですから,量子化誤差はそりゃ一定になりますよね。
ここですでに気が付いたかと思いますが,直接式に比べてレシプロカル式というのは,周期を測定するためのクロックと,測定にかかる時間であるゲートタイムが,独立した値を取る事が出来るというのが味噌なのです。
直接式の場合,精度の高い基準クロックからゲートタイムを生成し,その間の数を数えるので,クロックとゲートタイムが切り離せません。でもレシプロカル式は,クロックの数を数えるわけですから,数える時間がゲートタイムであり,クロックとは独立して設定出来ます。
この,ゲートの開け閉めを行うことを,アーミングといいます。
正確に言えば,直接式でもアーミングを実現したものはあります。でも,レシプロカル式の方が,量子化誤差が周波数に依存しないという特性や,クロックとゲートタイムの独立性が高いので,ずっと自由度が大きいのです。
蛇足ですが,レシプロカル式にクロックの周波数が低いと,高い周波数で数をたくさん数えられないので量子化誤差が大きくなってしまいます。そのために測定時間をかけるようなことをやってしまうと実用性がなくなってしまうので,クロックを十分に高いものにすることが行われます。
また,誤差と測定時間のバランスから,測定周波数があるレベルを超えると直接型に切り替わる周波数カウンタも存在します。
長くなりましたが,簡単に言えば周波数を定義通りに測定するのではなく,周期を測定し,逆数にして表示するという仕組みを使って,高精度な測定結果を短時間で手に入れる事の出来るのがレシプロカル式です。
これ,実際には,もうレシプロカル式でないと話にならないところまで来ているんですよ。
先日,GPSで8MHzを生成して,TCXOやOCXOを調整しました。8MHzですので,これで8桁精度を出そうとすれば,ゲートタイムは10秒です。10秒かけて測定しても,捉えることの出来る周波数は0,1Hzまでで,精度としては10E-8なのです。
しかし,OCXOで10E-7や10E-8ですよね,この程度の精度ですら,8桁の直接式では10秒かかるんです。GPSだってうまくすれば10E-12の精度の周波数を作る事だってでくるわけですが,もはや8桁の直接式では測定するのは不可能な領域なのです。
ということで,レシプロカル式が欲しいなあと,この際10桁の53131Aを買おうかという流れになるのは当然と言えて,10桁の精度を1秒で出せると言うのですから,これはとても素晴らしいです。
しかもプリスケーラを使わずとも,直接200MHz以上の周波数をカウント出来るし,ユニバーサルカウンタとして周波数比やパルス幅の測定にも使えたりするので,確かに業界標準器になるのも分かる気がします。
さて,届いた53131Aは,Hewlett-Packard時代のもので,中をあけてみると1996年頃の製造のようです。古いですね。
すぐに動作確認を行ったのですが,とりあえず問題なく動作している感じです。セルフテストもパスしましたし,キーも表示も問題ありません。ファームのバージョンは当然ですが,古い物でした。
そしてファンが強烈にうるさくて,完全に寿命です。53131Aは,AC電源を繋いでいるときには,内部の水晶発振器に電源が入っていて,温度が上がりすぎないようにファンが常時回転する仕組みになっています。
ですから,ファンがうるさいという事は,24時間うるさいという事です。これはこまりました。
常時ファンが回っている機器にありがちな話で,内部がとにかく汚いです。分解掃除をしないとなあ・・・
とまあ,早速分解を始めたのですが,あわてていたのでリアのバンパーを外す時に,プラスチックの枠を割ってしまいましたし,フロントパネルを外すときに電源スイッチのノブを外さなかったせいで,電源スイッチをこわしてしまいました。
うーん,困った。
今,スイッチとファンを手配中です。どのみち平日は忙しいですから,あんまりあわてても仕方がありません。まあぼちぼちとやっていきます。
いろいろ考えていることもあるんです。プリスケーラを使えば53131Aは3GHzまで測定出来るようになりますが,これも完成品を買わずに自分で作ろうかなと思っています。しかし,うちには1GHzを越えるような周波数源などありませんので,必要ないといえば必要ないですね。
次にOCXOの内蔵なんですが,これはこれでなかなか面倒な感じです。それくらいなら,外部クロックとして外から突っ込んだ方がなにかと便利ですよね。無理に内蔵する理由もないなあ。