3Dプリンタで大失敗
- 2018/01/15 14:06
- カテゴリー:make:
3DプリンタとFusion360に慣れるために,いろいろとテーマを決めては出力しているのですが,今回はBNCコネクタカバーを作ってみました。
BNCコネクタはとても便利で性能の高いコネクタで,締め付けトルクの管理もいらないし,使わないときにも放置で良いので,気分的にも随分楽です。
しかし,BNCコネクタのメスコネクタは案外錆びやすく,オスコネクタを付けないでいると,簡単に曇ってしまいます。
これで測定結果に影響がでた経験はないのですが,よくないことは事実ですし,できるだけBNCカバーを取り付けるように私はしています。しかし,コネクタの数に対してカバーの数が圧倒的に足りません。
買えば安く売っていることは分かっているのですが,ここは1つ3Dプリンタで作って見ることにしました。
Fusion360でサクサクと図面を描き,3Dプリンタで出力したところ,若干寸法の調整が必要になりました。何度か修正を繰り返してうまく嵌合するようになったところで,量産開始です。
全部で9個作る事にして,3行3列に並べて出力開始です。4時間以上かかるということでしたので寝る前に仕掛けておきました。
果たして朝,ワクワクしてテーブルを見ると,なんとくしゃくしゃになった紐の塊が鎮座しているではありませんか。大失敗です。
どうも,9つのうちまず最初に1つテーブルから剥がれてしまい,これがヘッドにくっついて他をなぎ倒したりひっかいたりして,すべてがテーブルからはがれてしまったようです。
そして,ヘッドの先端のノズルには直径2cmくらいになった,溶けたフィラメントがコッテリくっついていました。
フィラメントをアンロードしたのち,ノズルを加熱してこびりついたPLAを拭いとり,見た目は大丈夫そうです。テーブルにこびりついたカスや,周囲に飛び散った破片を掃除して,これで再スタートをしました。
ところがやっぱりダメです。突然3mm程の塊が吐き出されたPLAの上に乗っかっています。そしてこれがノズルにくっつき,周囲を巻き込みながら,毛糸の玉のようなものが出来上がってきます。
今回ロードしたフィラメントはクリアで,これまでのいろはクリアイエローだったのですが,失敗に終わった塊を見ていると,どうも黄色が混じっています。まだノズルに残っているのかもしれないなあと,気を取り直して掃除をし,再スタート。
しかし結果は同じです。これはいよいよあやしいです。
テーブルに糊を塗ったり,作る数を1つに減らしたりするのですが,それでもダメです。やっぱり黄色のPLAが出てきて,大きな塊を塗りつけていき,これをきっかけに全滅しています。
テーブルに張り付けた3Mのシート(1枚600円以上する)を泣く泣く剥がしてテーブルから飛び出た取り付けねじを緩めて穴をねじ穴を丁寧に探り,再度慎重に締め直して新しいシートを貼り付けますが,やはり改善しません。
こうなると,ヘッドがまずいとしか言いようがなく,やむを得ずヘッドと取り外してみます。
すると,ノズルがヘッドの底面から飛び出している,そのノズルの周囲の1mm程の隙間に,ちらっと黄色い色が見えます。もしや・・・とあわててヘッドを分解して,私は血の気が引きました。
なんと,ノズルとヒーターに,まとわりつくように溶けたPLAがこびりついています。大きさにしてくるみくらいの大きさになっています。
どうやら,9つの出力中に塊になったPLAに熱せられたノズルが繰り返し行き来しているうちに,ノズルがPLAを掻き取るようにしてヘッドの中に隙間から入り込んで固まったようです。
そして,出力中にヘッドの内部が熱せられると,この大量のPLAが溶けて隙間から流れ出して垂れてきます。これがある時出力中の造形物に落ちてくっついてしまうのです。だから途中までクリアで出力されていたのに,失敗する直前には米粒のような黄色い塊が出ているんですね。
いやはや,これではどうにもなりません。数時間の出力をずっと監視する人などそんなにいないはずで,その途中でトラブルが発生することは珍しくもないのが3Dプリンタの世界だと思いますけど,そのトラブルの結果がこれほど甚大なものになるとは,寒気がします。
仕方がないので,ヒーターとノズルの周囲に固着したPLAを剥がすため,ヘッドを完全に分解します。
実は,先日から小児がんの本を読んでいたのですが,がんは「臓器を取り囲むようにぐるっと周囲を取り巻いていた」という描写が多く,私は人の内臓の実物を見たことなどありませんので,あくまで想像しては怯えておりました。
その描写そのものの光景が目の前にあるので,さながら私は外科医の気分です。ヒーターや熱電対(温度センサです。ここからのケーブルは細い単芯のケーブルで切れやすいのですが,ここにもPLAが固着していました)を傷つけないように,慎重にPLAを剥がしていきます。
どうにかPLAを除去できたノズルのユニットをヘッドに戻し,元のように組み立てます。本体にセットして試運転しますが,加熱エラーが発生。壊したのか!?
原因は単純で,温度センサと空冷ファンのコネクタを入れ替えて差し込んでいました。ヒーターの温度が10℃と出ていたのでおかしいと睨んでいましたが,その通りでした。
配線を入れ替えて無事に試運転は終了。これでうまくいくだろうと思っていたところ,なんとノズルのクリーニングをしろとメッセージが出てきました。
面倒だけどもう一度フィラメントをアンロードし,指示に従ってノズルの掃除をします。そして改めてフィラメントをロードして出力しますが,今度はうまくいきました。
さらに3個出力しますが,これも問題なし。ふう,ようやく問題が解決したようです。
確かに,ノズルからPLAが飛び出る直前までは200℃ほどに加熱されていますが,外に出てテーブルに接触するまので温度変化は,当然外気温に大きく左右されます。気候で成否が分かれるあたりで「3Dプリンタは農業と同じ」と揶揄されるのも頷けます。
とりあえず今回はトラブル発生の前の状態には戻せましたし,テーブルデコボコもほぼ修正できました。高価な3Mのシートも交換したので,しばらくはうまくいくはずです。
今回のミスをまとめてみます。
・無人で失敗,大量の溶けたPLAがヘッドの隙間から入り込んで,少しずつ溶けて出てくる。
・シートを貼り付けない状態でテスト校正したが,シートを張り付けてから校正するのを忘れてしまい,シートの厚みの分だけテーブルとノズルの隙間が縮んでしまった。おかげで塗り重ねるというより削り取るような動作をしてしまい,結局ノズルが憧憬物をテーブルから剥がしてしまい,全滅。
・テーブルとノズルのクリアランスが小さかったこともあり,高温のPLAがシートに付着することになり,シートが溶けてしまった。もったいない。
・一度に複数の出力をまとめてしまえば楽だが,失敗した時の被害が大きく,プリンタ自身が使用不能になることもある。面倒でも少数を何度か繰り返した方が被害を小さく出来る。失敗しないという前提はしないようがいい。
とまあ,こんな感じで苦労しました。おかげで日曜日ほぼ一日潰れてしまいました。
先日も書きましたが,日本のメーカーが民生用3Dプリンタに参入しないのは,こういうところが日本のクオリティに届かないからでしょう。台湾や中国のメーカーなら,それでも売っちゃいますし,ユーザーもいちいち文句をいったり修理に出すことなく,自分でなんとかしてしまいます。
日本では,いってみればこうした不完全な商品を受け入れる度量が失われてしまったといってもよくて,日本で買えるものは完璧なものであると安心出来る一方で,不完全だが面白いものは日本では買えないと言うことが起きてしまいます。
モデリングから印刷まで2日間で作ったBNCカバーは全部で9個ほど。その倍は失敗を作ったわけですが,自分で考えて作ったものが実用になるのは面白いとしても,これだけの時間がかかってしまうことに疑問がわいていて,こういう標準サイズのものは作るより買うのが一番だと確信しました。
なら,売っていないもの,自分作らないとどうにもならないものなら,価値があるんじゃないかという話です。
ということで,今作っているのは,昔のポケットラジオのリアカバーです。
父親が若いときに買ったであろう,ナショナル(今のパナソニック)のトランジスタラジオです。
6石のトランジスタはすべてゲルマニウムで,電池は006Pです。電解コンデンサの容量は33uFではなく30uFの時代です。
実家の,かつての私のガラクタ箱から出てきたので持ち帰ってレストアしたのですが,アンテナコイルが断線していたので巻き直し,SGで調整をして動くようになりました。
このラジオは私が子供の頃でもすでにデザインが古くさく,006Pという電池も勝手が悪くてあまり使わなかったのですが,それでも感度は良く,いろいろあったラジオでも結局生き残っているのはこれだけになってしまいました。
ところがこのラジオ,リアカバーがなくなっています。この頃のラジオは電池の交換の時にはリアカバーがまるごと外れるようになっています。そのリアカバーがなくなってしまうと,基板がむき出しになってしまうのです。
これではせっかく電気的に修理出来ても,実用にはなりません。似たようなサイズのプラスチックケースを被せていましたが,サイズが合わず乗っかっているだけの状態です。
3Dプリンタで樹脂成形品を自作出来ると喜んだとき,私はこのカバーを作る事を考えました。しかし,当時のようにCADを使っていない成形品でも,それなりに複雑な形状をしていますから, もう少し慣れてからと思っていました。
先日から図面を描き始めていますが,難しい事はしないで,できるだけ簡単な形で済ませることにしています。簡単なこともなかなか出来ずにすったもんだしていますが,少しずつ形になっていくとさすがに面白く,時間が経つのを忘れてしまいます。