PC-1245の奇跡の復活
- 2021/01/17 14:45
- カテゴリー:散財, マニアックなおはなし, make:
ある日,PC-1245などLCDに持病を抱えるポケコンの現状が気になり,google先生に尋ねてみました。
すると,なんとPC-1250系に互換LCDを作った人がアメリカにいて,その人から購入したLCDでPC-1251を復活させた人の話が飛び込んで来ました。
いやー,とうとうこういう人が現れましたか。交換するしか修理の手立てがないLCDの問題を,こうして根本的に解決するというのはなかなか出来ない事ですが,昨今のレトロPCブームのおかげで個人ではなく会社やお店がやってくれるんじゃないかと,ちょっとだけ期待してはいました。
でも,まさか個人でやってるとは。
考えてみれば,LCDのカスタムメイドは初期費用も大きいですが,1回で製造される数が膨大です。1つ1000円で作れたとしても,最低3000個とかいわれたら,それだけで300万円ですからね,ポケコンの修理代として300万円はあまりに非現実です。
ですが,昨今中国でLCDを作ることが当たり前になりました。初期費用も数万円程度,単価も100円とか200円とか,そんなもんで,数も少なくて済むケースがあると思います。仮に1000個で作ってもらえたら,30万円ほどで作れちゃうんじゃないでしょうか。
そしてそのLCDを欲しい人に3000円くらいで買ってもらえて,そんな人が100人もいれば元は取れてしまいます。中国でLCDが作れることが,これだけ物事を変えていくと言うことでしょう。
このアメリカの方はPC-1250系だけではなく,PC-1210系のLCDも復刻させています。価格は良心的な$17程度で,送料を入れても悔しくない価格です。
私はPC-1251とPC-1211を持っていて,どちらもLCDが死んでいるので迷わず注文しました。
そして,ついでにPC-1245のLCDも同じように作っている人がいるかもと思って調べてみたのですが,そうするとなんと,日本の方が作ってくれていました。昨年あたりから一部の人の間で話題になっていたようで,私は乗り遅れていたような感じです。
あわてて注文をします。価格は5500円と結構高価ですが,修理代として出せない金額ではありませんし,なにより自分では出来ない事をやってくれているのでから,そこは感謝です。
4つまでの購入制限があるので,我が家の3台のPC-1245に予備を1枚でなんとかギリギリ。金額的にも厳しいので4つだけ買うことで辛抱しましょう。
さすがに日本だけって数日で到着。うれしくてその日のうちに交換作業を敢行しました。
(1)MC-2200
いきなりこれか,という声が聞こえてきそうですが,そう,セイコーにOEM供給されたPC-1245である,MC-2200です。
同じ大きさ,同じキーボード配列ですが,真っ黒なボディカラーにクリーム色と真っ赤なキーがアクセントになった,なかなか格好いいマシンです。PC-1245のLCDが左にオフセットしているのに対し,MC-2200は中央に配置されています。
実物を目にした人が少ないということでなかなか貴重なマシンとして扱われているようなのですが,これもPC-1245と同様にLCDが劣化しますので,完動品はほぼ絶滅でしょう。
私はLCDが死んだものを安く入手してありました。もしかするとLCDを復活させる方法が見つかるかも知れない,もしかするとLCDだけ生きている壊れたPC-1245が手に入るかもしれないと,入手しておいたのです。
それがこうして役に立ちました。
湿気を吸っているため,基板にゆがみが出ていますが,慎重に作業を進め,復活しました。最初の交換作業ということもあり,上手く表示が出ずに何度かやり直す羽目になりましたが,最終的には上手くいきました。
MC-2200がちゃんと動いているなんて,夢を見ているようです。
(2)PC-1245
2台目は,私が中学生の時に買ってもらったPC-1245,そのものです。10代の私は常にこれを鞄に入れていました。中学でも高校でも大学でも,いつもこれが私の計算機能を担っていました。
処分価格で出ていたものをねだって買ってもらったのですが,これがこんなに長年の友となるとはその頃思っていませんでした。
面白がって改造し,RAMは10.2kBまで増設してあります。これも若気の至りと言いますか,結構乱暴な改造をしてあったりしますし,使っているSRAMもよく分からずに選んでいた感じもあって,恥ずかしいものです。
社会人になって日頃の仕事にも活躍してくれていましたが,10年ほど前からLCDが黒ずみ始め,現在は真っ黒になってしまいました。少しずつLCDが見えなくなるのを見るのは辛く,不治の病に冒されて朽ちてゆく長年の友をなんとかしようとするも,交換以外に方法がないという現実を受け入れ,同じ大きさで同じように使えるPC-1246を主力機にするという決断をしたのでした。
それがまたこうして,甦ります。感激です。
で,会社に置いてあるPC-1246は,気分だけでもPC-1245を継承したいと,PC-1245オリジナルのゴムキーを,PC-1245が持つプラスチック製のキートップのキーボードに交換してしまいました。
手元のPC-1245は確かに中学生の頃から使うPC-1245に間違いはないのですが,キーボードだけはPC-1246のものに交換されてしまっています。
いずれPC-1246は会社から取り返してくるとして,先にこのPC-1245のLCDを交換しましょう。
MC-2200で困った点を注意して,作業を進めます。
古いLCDをフレームから取り外すのが難しいのですが,私はアセトンなどの溶剤を使わず,ドライヤーで熱を加えて外しました。この時,腕時計の裏蓋を外す工具をLCDの表面からフレームに差し込み,少しずつ隙間を広げていくと上手く外れます。
裏側からこじるとガラスが割れてしまいますので,無理はしない方が安全です。
ゼブラゴムは同じ場所,同じ面を使わずにローテーションすると上手くいきます。それから汚れを綺麗にアルコールで拭き取らないと,表示が書けたりリークで余計なドットが表示されたりします。特にLCD側に接触する面にゴミがあると,簡単に表示不良になりますので注意が必要です。
それから偏光板です。オリジナルはLCDの表面に偏光フィルムが貼り付けられておらず,偏光板が鉄のフレームの上から重ねられています。しかし今回のLCDは偏光フィルムが最初から貼り付けられているので,オリジナルの偏光板は必要がなくなります。
もちろんあっても表示は出るのですが,暗くなるので外さないといけません。そうすると偏光板の厚みだけ薄くなりますので,LCDの表面を覆うプラスチックの透明カバー(風防と言います)がガタガタします。でも,それはそれで大した問題はないのでOKとします。
そして,組み込みの際には,電源を入れて動かしながら行います。鉄製のフレームから出ている爪は基板の穴に差し込んで裏側で折り返すわけですが,先にすべての爪を曲げてしまわず,左側から表示を確認しながら1つずつ曲げていくのです。
爪をさらにきちんと曲げて強く固定し,交換完了。最終組み立てを行って電源を入れますが,起動しません。あちゃー,壊してしまいました。
ああ友よ,さっきまで君は元気に動いていたじゃないか。
なのにリセットをかけてもBUSYと出るばかり。
なにせ私にとっては特別な1台ですから,急遽修理を始める事にします。まずは電源とリセットですが,これは大丈夫。ならばクロックを確認しないととオシロスコープの電源を入れて確認をすると,これも大丈夫です。
バスのアクセスはどうなっているかと確認すると,これはリセット解除後からずっとパタパタ動いており,少なくともCPUやROMが死んだというわけではなさそうです。
概ね,基板,それもスルーホールやパターンが切れたんだろうと今度はテスターでパターンを追います。回路図を見ながらCPUとROMとRAM, そしてLCDCのデータバスとアドレスバスを見ていきます。
すると,一部データバスがショートしているのがわかりました。これは面倒くさいです。バスのショートはハンダのブリッジが主な原因ですが,どこでブリッジしているかは目で追いかけるしかないからです。
それでも見つからないと,今度はICの不良の可能性を疑うことになりますが,その段階で修理を終わらせるのはかなり困難になってしまうことが確定です。
バスのショートは,どういう訳だか2本ではなく3本のショートであることがわかりました。そして偶然,LCDのフレームともショートしていることがわかったのです。
取り付け中までは正常動作していたのですから,問題が起きたのはその後,つまり爪を曲げ直ししたところで起きたのでしょう。強く曲げすぎたせいで鉄製のフレームが基板のどこかに接触してしまったのかも知れません。
そこで爪を少し起こして緩めてやると,今度は無事に起動しました。あー,よかった。
同じような失敗をしないように慎重に最終組み立てを行って完成。今度はちゃんと動きます。
13歳の私が初めてにしたモバイルマシン。私の計算能力のほぼすべてと記憶の一部を担った真のポケットに入る小型コンピュータがここに復活です。
(3)PC-1245
PC-1245は特別なマシンですので予備機を1つ,機会があるときに購入してありました。程度は良く,綺麗な状態で手に入ったので無改造のままです。部品取りになるか,置き換えになるかはわかりませんでしたが,もう1つあるという安心感こそが重要でした。
これがやはり,LCDの劣化という不可避の病を発病してしていました。
分解と交換作業は手慣れたもので,手際よく進みます。爪を曲げすぎると暴走するという問題もそのまま再現し,爪を起こして正常動作をするようにしてから最終組み立てを完了です。
この個体は常用しませんので電池は入れないのですが,少し使ってみると程度の良かった昔のPC-1245を思いだし,そういえば中学生の時の病院の待ち時間で,随分活躍してくれたなあと,懐かしい思い出が蘇ってきました。
ということで,うちにあるすべてのPC-1245が復活しました。もう完全にあきらめていただけに,この喜びは大きく,こういうチャンスをくれたことに本当に感謝しています。
期間限定であり,これを超える形での修理はもう二度と出来ないだろうと思うのですが,今回はうまくチャンスをつかまえることが出来ました。
高価だとは思いましたが,5000円で修理出来ればありがたいくらいです。そして今後は,別の機種にも手を広げて下さるとうれしいのですが,PC-1245やPC-1250のような数の出たモデルではあなく,品種も増え,しかもそれぞれに異なるLCDを持つものばかりですので,難しいだろうと思います。
私が持つLCDに持病を持つポケコンは,PC-1401,PC-1246です。どっちも不人気機種でしたし,LCDの交換をしてまで修理しようという熱意のある人はいないと思います。PC-1246はマシン語が走りませんから不人気と言うよりも悪者扱いでしたので,私は好きなマシンですがこれはもうこのままになってしまうでしょう。
さて,次はアメリから届く予定のPC-1211とPC-1251です。まだ発送もされていませんし,海外から届くので時間もかかるでしょう。本命はPC-1251ですが,性能面で実用性の乏しいPC-1211も,実はあの独特の表示を見るのが楽しみです。