DiskIIの国産コンパチドライブを入手し苦労する
- 2022/09/19 18:20
- カテゴリー:マニアックなおはなし
PC-386 Book Lにかまけている間に,次の課題としてAppleII用のディスクドライブを入手していました。わざわざDiskIIと書かないのはそれが互換品だったからなのですが,結構よい値段で落札することになってしまいました。
PAXエレクトロニカという会社の互換ドライブなのですが,この会社,1980年代の前半には雑誌に広告を良く出していた周辺機器のメーカーでした。調べていませんが,PAXソフトニカというソフトハウスもあり,私はここのベースボールというゲームを散々遊んだ覚えがあります。
閑話休題。フルハイトのドライブはすでにDiskIIを復活させて(これも壊れているのにいいお値段でした)調子よく使っているのですが,もう一台のドライブがハーフハイトの互換品(チノンのドライブです)で,高さが揃っていないがちょっと気に入りません。
ドライブの信頼性としてはハーフハイトの互換品の方が優れているので外したくはないのですが,このドライブは壊れてしまうと修理が難しそうで大事に使いたいという気持ちもあります。
かといって高額になりがちなDiskIIをもう一台というのはさすがにしんどいので,安く手に入るだろうと今回の互換品を落札したというわけです。
届いてみると,結構丁寧に扱われていて程度は良さそうです。分解するとドライブは松下のJK870というドライブです。これは初めて見たかも。しかしSA-400のデッドコピーじゃないかと思うほどそっくりで,当時のドライブはアルプスのものも含め,特にヘッドのシーク機構がどれも同じです。それだけSA-400の完成度が高かったという事なんだろうと思います。
アナログボードはDiskIIのコピーのようですが,よく見ると一部異なる点もあります。真面目に調べるとリファレンス(部品の番号ですね)は同一,しかし基になったアナログボードのリビジョンが古いらしく,部品がいくつか減っていますし抵抗の値も古いものがついています。
また,本家は精度の高い部品を使っている箇所も,安価な一般品をそのまま使うなど結構雑な印象をうけますが,それでも当時は純正よりも精度が高い等と言われたそうですので,わからんものです。
ベルトはちょっと伸びていますが再利用可能,ケーブルも問題なしですが,ドライブ自身は油が抜けているので動きがちょっと渋いです。
さっと清掃と注油を行って試しに通電です。とりあえず回転数はきちんと出ていますし,読み書きも一見すると問題なしでした。これはあたりかもと思ったのですが,locksmith6.0で確認すると,やはり読めないトラックがポロポロと出てきました。
ヘッドの清掃等も行いましたが改善せず,試しにと半固定抵抗をいじるとエラーの頻度が下がってきました。これで騙し騙し使えるかもと思ったのですが,さすがに気持ちが悪いのでもう少し調べてみましょう。
とにかく波形を見ないとと,TP5の波形を確認します。DiskIIなら1周期4us,ピークは2.5us程度になるはずなのに,ピークの位置が大きくずれています。しかしこれを調整する半固定抵抗がこのアナログボードでは省略されているので,手が打てません。
ならばと半固定抵抗を取り付けて,ここを2.5us程度になるよう調整をしました。これでいけるだろうと思って試すと,全く読み込み出来なくなっていました。これは深刻です。
波形を慌てて確認すると,1周期の長さが5us以上になってしまっていました。AppleIIのディスクは4usが1つの単位ですので,ここが狂うのはまずいです。そこでここを4usにすると嘘のようにエラーがなくなりました。
しかし,ピークまでの時間は2usを割っています。これでいいのかなあと思っていたのですが,この波形はワンショットマルチのタイミング回路の波形で,コンデンサの充放電の状態が出ています。
ここでリードデータの波形(TP7)と比べて出せばもっとよく分かるんじゃないかと思いますが,仮にわかったとして具体的な手を打つにはMC3470の中身をもっと詳しく調べないといけませんし,実質的なリードエラーがないならそれでいいかと,なんだか低い方に流れてしまっています。
しかし,samsのサービスマニュアルではTP5の波形を確認することはやっていないんですよ。正確に言うとピークの値を2.5usにせよとか,そういったことは書いていないのですが,TP7との差を表示してクロスオーバー歪みが小さくなるところに調整するのだそうです。でもこれで時間の調整って出来るのかなあ。
まあやってみるのがよいだろうと,samsのサービスマニュアルに従って試してみましたが,ピークの位置は相変わらず2usを割っていて,うまく調整も出来ません。もう一台ある本物のDiskIIを波形を比べて見ると,その違いは一目瞭然です。エラーは出なくなっていますし,実用上はなにも問題はないのですが,やはり気持ち悪いです。
そこで勇気を出して,本物の基板を互換ドライブに取り付けて動かして波形を見ます。完全互換のコピー基板かどうかわかりませんので,最悪壊れることもあるかも知れないのですが,とりあえず動いています。もし波形がおかしければドライブのメカに違いがあるという事になります。
結果,綺麗な正しい波形が出てきました。つまり,違いはメカでは鳴く,基板にあるという事です。そこでここからは作戦変更。DiskIiの基板と同じ動作,同じ波形になるように,徹底的に合わせて込んでいくことにします。
まずはワンショットのタイミング。調べてみると回路や定数は同じですから,同じ波形が出ないといけないですが,そうはなっていません。そこで,タイミングを作るコンデンサ(330pF)も含めた端子の容量を確かめて見ると,本物は340pFくらい,これに対してコピー品は420pFと大きく異なっています。120pFも違ってくればそりゃタイミングも変わってくるだろうと,コンデンサの容量を減らしてみました。80pFほど多いので220pFに交換してみます。
するとタイミングがかなり長くなり,規定の範囲を超えるくらいになりますが。ビンゴ,これが原因だったみたいです。
そこで今後は270pFに交換します。60pFくらい小さくしていますので,調整範囲に入ってくるはずです。これも正解,うまく調整範囲に入ってきました。半固定抵抗に交換して調整を試みると,1周期で4us,ピークまでが2.9usと,オリジナルとほぼ同じ波形になりました。
とはいえ,なんでこんな事になっているのかという気持ち悪さはのこります。MC3470の劣化が進んで端子の静電容量が増えてしまったのか,それとももともとこんなもんだったのか。こんなもんだったとして,今まで動いていたのは(前のオーナーも含めて)気のせいだったのかどうなのか。
劣化によって起きているなら,今後も進行するでしょう。気を付けておかねばなりません。
さて,2つの半固定抵抗を調整してエラーの出やすいディスクでも同じような傾向のエラーが出るように調整をすませて,オリジナルのDiskIIとほぼ同じ読み取り性能になるようにしました。これで基本的な問題は解決です。
しかし組み立ててテストを繰り返していると,気になる問題が・・・
インユースランプ(アクセスランプ)の点灯と消灯がゆっくりなのです。スパッとついたり消えたりではなく,ジワジワ明るくなったり暗くなったりします。うーん。
別に実害はなさそうなので放置することも考えましたが,同じ動作をする基板に仕上げると決めた以上,同じにしないといけません。
基板をよく見てみると,いくつかの部品がありません。回路図を見てみると,5回ほど修正が入っていることがわかりますが,修正箇所がことごとく入っていない事に気が付きました。つまり,この基板は初期型のDiskIIのコピー品だったという事です。
ならばと修正を追加していきます。本体とのインターフェース部分のプルアップ抵抗がいくつか違っていたこと,それと静電対策と思われるダイオードの追加をします。
しかしこれでもインユースランプはおかしいままです。これはいよいよ本腰を入れて調べようと波形を見始めますが,LEDの回路も電源のON/OFFを行うトランジスタも正常です。そこで基本に立ち返って本物の基板を確認すると,ドライブを繋がるコネクタのパターンがちょっと違います。
本物は13ピンが分かれていますが,コピーはわかれておらず,10,11,12,13ピンの4ピンが繋がっていました。これはおかしい。
回路図をみると,修正箇所に記述がありました。もともとこの4つはくっついていたが13ピンだけ分けた,と。
10,11,12ピンは12Vなのですが,トランジスタによるスイッチでON/OFFされます。13ピンは12Vが出っぱなしで,これはモーター駆動回路に供給されます。
で,この4本がくっついているということは,モーター駆動回路もON/OFFされた12Vで動作していたことになるわけで,さらに電源でLEDが点灯されていることから,電源の立ち上がりと立ち下がりがゆっくりになってしまい(モーター基板の電源ラインのコンデンサよるものでしょう),LEDもゆっくり明滅したということです。
回路図の修正指示通り,13ピンを分離し,ここを常時12Vに繋ぎます。ビンゴ,これでLEDが本物と同じようにスパッと明滅するようになりました。
しかし,今度は本体の電源を入れたときに一瞬インユースランプがちらっとついてしまうと言う新たな問題が発覚。これは12VをON/OFFするパワートランジスタのベース電位がエミッタの電位よりも低い状態が長く,12Vの立ち上がりまでON時間が続いてしまうことにありました。
PNPトランジスタには良くある事で,これを防ぐにはエミッタとベースの間に1kΩ程度の抵抗をいれて,ベースとエミッタと電位をあわせて確実にOFFしておくようにします。しかし,本物にも最新の回路図にもそれがありません。
それで本物は点灯せず,コピー品は点灯します。この違いは何だという事になるのですが,とりあえずこの1kΩは必要なものなので躊躇せずコピー品に取り付けますと,立ち上げ時に光ることが完全になくなりました。正解です。
ではなぜ本物は抵抗がなくても大丈夫なのか,なのですが,これはもうトランジスタの特性の違いとしか言えません。ベースとエミッタの電位差としてちょうど0.4Vあたりから0.6Vくらいの過渡的な変化の領域ですから,実はhFEが小さくてLEDを点灯できないくらいしかベース電流が流せなかったとか,トランジスタがONするベース電圧が高かったとか,そういう事情だと思います。
トランジスタは本物がモトローラのものだと思いますが,コピー品はソニーのものでした。このあたりの違いもあるんじゃないでしょうか。どっちにして,ベースとエミッタ間には抵抗は必要です。
あとは細かい調整を行って出来るだけ近づけていきます。コピー品はヘッドロード用のソレノイドは残っていて,本物の基板を接続するとカチャカチャと動くのですが,コピー品は動かないのでその原因も調べたところ,ソレノイドの片側のGNDがコピー基板では浮いていて動作しないこともわかりました。引っかかったのは,両面基板で裏と表が同じ場所にあったので目視では繋がっていると思っていたのに,テスターで調べてみると繋がっていなかったということでした。ここはスルーホールではなかったみたいです。
これでほぼ同じレベルになりました。
ここまでに電解コンデンサの交換や新しいリビジョンにあわせた定数の変更,必要な箇所のマイラコンデンサをマイカコンデンサに交換する,抵抗をカーボンから金属皮膜にするなどの改修を行ってありますが,随分安定性も向上したようです。
確かにDiskIIで揃えるのも気持ちのいいことなんですが,せっかくですのでいろいろな種類のドライブで試して違いを楽しむのも面白いでしょう。なにせ40年前のものですので,その頃の状況に思いを馳せて,DiskIIの半額で手に入った国産の互換品を味わってみたいと思います。