Ankerのリコール手続きを終えて
- 2025/07/14 14:37
- カテゴリー:できごと
昨年の夏のことですが,防災を目的として区民にカタログギフトが配布されました。こういう性格ですから斜に構えた見方しか出来なかったのですが,防災に関する意識を少しは高められた気がしています。
そこに掲載されていたのがモバイルバッテリーです。いわく,スマートフォンは命綱,電池が切れないようにモバイルバッテリーを用意しておきましょうとのことでした。
そもそもスマートフォンみたいなシステムの大部分を営利目的の私企業に握られた仕組みに命など委ねたくはないのですが,行政としてもスマートフォン前提でサービスを行っている側面もあり,インフラとして割り切った上で「助かった」と感じているのが本音でしょう。(いや,スマートフォンを盲信されるよりむしろそうであって欲しいですよ)
現実には確かに社会のシステムがスマートフォンを前提に組み立てられている訳ですから,電池が切れたら情報の収集をはじめとして,なにかと不利を被るのは必至でしょう。
一方,モバイルバッテリーには危険な物も多くて,私のように滅多に使わない人間からすると爆発物を保管しているような物で落ち着きません。それに,いずれ廃棄することを考えると,自治体がリチウムイオン電池の扱いに右往左往している現状では,手軽に手を出せないとも思います。(そう,うちの区は防災用品にモバイルバッテリーを推奨するくせに国の指導にも頑なにリチウムイオン電池の回収を拒んでいるおかしな区なのです)
以前購入したノーブランドのモバイルバッテリーを廃棄するのに往生した私は,今回は自主的に回収までやってくれるメーカーの製品を買おうと誓ったのですが,その1つにAnkerがあります。
ユーザーのニーズに応えるラインナップが面白いですし,安い割には製品もしっかりしています。自社製品の積極的な回収も好印象で,次に買うならここかなあと思って,昨年の冬に買ったのが,Anker Power Bank(10000mAh)です。容量は小さめですが,その分大きさも小さくて,機能も十分。なによりストラップがUSBケーブルになるという,誰でも一度は考える仕組みを実現してしまうというのが面白いじゃないですか。
価格も3500円ほどで,廃棄の問題を心配しなくていいなら,保険として1つくらい持っておくのもいいと,買ってみたわけです。
実際使ってみると,なかなか良く出来ていて便利です。ちょっとしたピンチに適した容量。手頃のサイズに重さ,充電の速度も悪くないですし,対象機器への柔軟な対応も高評価です。
これで一安心だと思っていた所,なんと6月にリコールのニュースを目にしました。ばっちり大量機器に含まれており,シリアルを調べると私の買った個体がリコールの対象になっていたのでした。
多めに見積もって,3.7V*10Ahですから40Wh近い電力量ですから,事故があると結構大きな物になるでしょう。私は高電圧も怖いですが,大電流も怖いです。
さっさと手続きをして交換してもらいましょう。
まず,ホームページから対象製品であるかどうかを確認します。該当していたらシリアルを調べて入力します。シリアルは背面に小さく書かれているので虫眼鏡が欲しくなるかも知れません。
ここで個体の識別が行われます。私は該当シリアルでした。
でも,かすれていても読めなくても大丈夫。そういう場合はとりあえず返送すれば向こうが判断してくれます。読めないからと言って手元に置いておくのは危険です。
リコールの申し込むフォームに住所や名前などを記入したら,レターパックで返送用のレターパックの入ったキットが1週間ほどで送られて来ます。フォームを記入するとき,代替品を送ってもらうか返金してもらうかを選ぶのですが,私はこの製品が気に入っていたので交換してもらう事にしました。
しばらくして届いたレターパックには名前やシリアルなど個々人ごとに内容の異なる書類は入っていないので,対象者全員に共通なのだと思いますが,返送用のレターパックの送り主を自分で記入しないといけないなど,返送が私から行われたとか,代替品を誰に送るかなど,きちんと管理出来ているのかなと心配になりました。
キットには防火用のフィルムも入っていて,これで包むと万が一の場合にも発火を防ぐことが出来るそうです。耐熱性のフィルムで密封すれば,確かに発火はしないでしょう。
なお,説明書によると,ストラップのUSB毛0ブルは外して送れとありました。そこでケーブルを外して本体だけをフィルムでくるみ,返送用のレターパックに入れて返送しました。
ここで困ったのが,品名です。レターパックは手軽ですし対面でやりとりしなくて済むので,オレオレ詐欺に使われたり危険な物を送ったりと悪用されることもありました。そこで品名は必須項目となっているのですが,ここに馬鹿正直に「リチウムイオン電池」と書いて良い物かどうか,悩みました。
どこにも説明はありませんし,書かないと確認の電話が来たり,最悪戻ってきてしまうかも知れません。かといって,リチウムイオン電池,それも回収品などと書いてしまうと発火する可能性のあるものを投函したことになるので,それはそれで大事故になるかも知れません。
少なくともフィルムで包んで対策しているので事故は起こりにくいと思いますが,品名に「リチウムイオン電池の回収品,でも対策済みなので心配無用」などと書くわけにもいきません。
悩んだあげくに,こういう時は正直に書こう,怒られたらあやまろうと,品名にはモバイルバッテリーと書きました。もちろんリチウムイオン電池にチェックも入れておきます。
これで投函したわけですが,翌日追跡すると,明日到着とのこと。無事に届くようでなによりでした。
そこからさらに1週間。代替品がヤマト運輸で届きました。新品交換のようです。ケーブルも付属していました。
使い勝手もなにもかわりませんし,交換してもらって特をした気も起こりませんが,わざわざ交換に手間とお金をかけたのですから,安全なものが届いたと信じたいところです。
そう,お金もかかるのですよ,こういう事態には。
今回の回収はなんと40万台以上にのぼるんだそうです。仮にその半数で交換の申し込みがあったとして,行きのレターパック430円,返送のレターパック600円,中に入れるフィルムなどに20円として合計1050円,さらに交換品の送付に500円として一人あたり1500円はかかります。
そこに電話窓口の設置,回収と返送の拠点の開設とで1000万円以上のお金がかかるとすれば,ざっくり3億円以上のお金が出ていきます。もちろんここに交換品費用に1台あたり1500円ほどかかるでしょうし,返金の場合には3490円の現金の持ち出しです。
交換と返金を半々として一人あたり2500円かかるとすれば,20万台で5億円。合計で8億円の損失です。もちろん10万台になれば損失も減りますが,回収率が25%と言うことになると,それはそれで国から怒られるでしょうし,なにより事故が起こるとメーカーの責任を問われますし誰も幸せにはなりません。
もっとも他で儲けているから破綻したりしないですし,回収対象の台数よりも遙かにたくさんの台数を売っているはずなのですが,そこでの利益が吹っ飛ぶくらいの費用がかかるんじゃないかと思います。
そう,こういう不良を出す事は,命を危険にさらすだけでなく,会社の屋台骨を揺るがす大事なのです。
でもこのあたりはさすがにAnkerのような体力のある会社だなと思います。お金はもちろんですが,様々な手続きや作業を行うにもそれなりの力が必要で,失礼を承知で言うと中国系の会社も本当に変わったなあと思います。製品の質も良くなりましたし,ユザーの気持ちに寄り添う会社が増えました。
のみならず,売っておしまいの姿勢から売った後の後始末まできちんとするという姿勢は,少し前の中国系の会社なら考えにくいと思います。ましてここは日本です。市場もそれ程大きくなく,その割には要求レベルは高くて文句も多い上,未だに偏見で物を言う人が多い国です。
別に感謝をしようという事ではないのですが,どの国なのかは関係なく,良いものは良いと素直に評価できる賢い消費者でありたいと私は思いました。
アメリカの消費者などはそのあたり公平で,非常に合理的です。安かろう悪かろうの代名詞だった日本の製品を,今や貿易赤字だというほど買って使ってくれています。彼らもアメリカ製の商品をひいきする気持ちはあるはずですが,日本,韓国,そして中国の製品を公平に比べて使ってくれています。かの国は消費者がとても大事にされていることで知られていますが,一方で消費者が自らの責任をきちんと全うしていることの裏返しであるように思います。
消費者がきちんと自分の責任を果たしているからこそ,その商品の責任はすべて製造者と販売者にあるわけで,ゆえにいかなる理由があっても返品を行うことを当然と考えているのだと思えば,日本の消費者は謙虚である一方で,消費者としての自律した意識がまだまだ足りないことに気付かされるのです。
消費という活動も自由主義経済の一翼です。さすがアメリカ。良し悪しと言うよりも,国ごと地域ごとに違いがあるというのが,非常に興味深いなと思いました。