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ネットワークオーディオの導入

  • 2012/03/22 12:53
  • カテゴリー:散財

 以前から狙っていた,パイオニアのN-30というネットワークオーディオプレイヤーをとうとう買いました。いやー,無駄遣いが止まりません。

 お値段は約3万円。随分安くなったと思うのですが,これも3月という季節を反映しているのかも知れません。

 ネットワークオーディオプレイヤーという言葉は最近よく耳にするようになりました。ネットワークの帯域が広くなり,家庭内のLANでもオーディオデータくらいは何でもないという状況になっているわけですが,ご存じのようにこの機械単体では全く動いてくれません。

 考え方としては,CDプレイヤーの円盤を回す部分がそのままLANのポートになったものであって,つまりLANのポートからデータを流し込まないと,全く動いてくれないのです。

 冷静に考えると,FMチューナーなんかも(ローテクですが)同じものかも知れません。FM放送の電波は我々が意識しないうちに「誰かが」ちゃんと飛ばしてくれているのでFMチューナーは機能してくれますが,これを自前で用意するのがネットワークオーディオプレイヤーと言えるかも知れません。

 必要なものは,

・ネットワーク環境
・NASなどのネットワークストレージ
・オーディオデータ
・設定をこなす知識

 ということで,これはなかなか普通の人には敷居が高いです。この壁を乗り越えて手に入れる事の出来る世界の新しさは否定しませんが,CDを入れて再生ボタンを押す方がよっぽど楽です。

 まずネットワーク環境ですが,N-30は有線LANしか対応しないので,Ethernetのコネクタが出ていない場所(普通そうですわね)に設置する場合には,無線LANでの接続のための工夫が必要です。

 巷にはメディアコンバータなるものが売られていて,有線LANのコネクタを無線LANにしてくれる優れものがあります。小型のルータなどと同じ部品で構成されていて,違いはソフトだけだったりするので,最近はとても安く,小型になりました。

 私は先日,5GHz帯で利用出来る300Mbps対応の802.11nメディアコンバータを3000円で買うことが出来たので,これで運用することにします。といいますか,これが安価で入手出来て,2階のLAN環境が改善したことが,ネットワークオーディオプレイヤーを購入するきっかけになったといってよいです。

 メディアコンバータのメリットは,ややこしい設定がほとんどいらず,本当に変換をするだけに特化されていることです。ここでルータなどを持ち出して難しいネットワークを作る事も出来るでしょうが,ネットワークオーディオプレイヤーはなにかとトラブルが多く,音が素直に出てくれないものです。トラブルの原因は1つでも減らしておきたいところです。

 次にストレージです。ネットワークに繋がりさえすれば,インターネットラジオを楽しむことは可能です。これはこれでとても楽しいわけですが,いかんせんビットレートが低く,音質的には厳しいものがあります。

 音質を確保すること,そして自分の気に入った音楽をぱっと再生できることは是非実現せねばなりません。そのためには,ネットワーク経由で参照できるストレージが必要です。

 これはPCでも構いませんが,いちいちPCを起動するならPCで音を出せばよいわけで,ここはやっぱりNASを用意したいところです。N-30の場合,DLNAに準拠していれば再生が出来ますので,(いろいろクセはあるようですが)多くのNASが対象に入ってきます。

 私の場合,あまり例が挙がっていないPogoplugを使って見る事にしました。

 Pogoplugは,あまり知られていないように思いますが,DLNAに対応しています。完全対応ではないし,検証もしていないでしょう。結果DLNAのロゴも取得できていないわけで,対応を謳うわけにはいかないのでしょうが,PS3やXBOX360のサーバーになる機能はDLNAで実現されています。

 事実,私の家のテレビでは,Pogoplugが参照できます。

 しかし成功例がありませんので,ちょっと冒険です。

 次にオーディオのデータです。実はこれが一番厳しいと言って良くて,ネットワークオーディオプレイヤーの利点を楽しむには,ストレージに蓄えたオーディオデータが多ければ多いほどよいのです。

 しかし,そのデータの入手,あるいは作成には手間もお金もかかります。CDを1000枚以上所有する人にとって,これをすべてリッピングするのは膨大な時間がかかりますし,それなりに知識も必要です。

 すでにリッピングを済ませてある人でも,実はAACだったりMP3だったりすると,音質面から専用のオーディオプレイヤーで鳴らすデータとしてはかなり惜しいわけで,そうするとロスレス,あるいは非圧縮のフォーマットで再度リッピングを行うことになるわけです。

 私の場合,バックアップという目的で全ての所有CDをコツコツとFLACでリッピングしてあったので,これをそのまま流用しようと考えました。N-30はFLACには対応しているのですが,CUEシートには対応していないかもしれないので,その場合は考え直します。

 最後にネットワークに関する知識です。これは場数を踏むしかないです。私の場合,家のケットワーク機器はすべて固定IPで運用していますので,全て自分の手中にあります。管理が面倒ではありますが,手間を辛抱すればそれなりに安定した運用が可能です。

 こうした準備と覚悟を済ませた上で,N-30のレビューです。

(1)全体の印象

 全体の印象は,大変安っぽいです。実際安いので仕方がないのですが,PD-D9に重ねて置いてみると,電源ボタンなど同じようなデザインモチーフを持つにもかかわらず,別メーカーの製品のように見えるほどです。プレーンなデザインだといえばその通りなのですが,天板に傷がついていたのはいただけません。

 それと,同じパイオニアなのですが,PD-D9よりも少しだけ横幅が大きいのです。ちょっと不格好ですね,重ねて使うと。

 もう1つ,ディスプレイはこの製品の性格を象徴する装備ですが,小さく見にくく,はっきりいって役には立ちません。


(2)接続

 接続はとてもシンプルで,電源とラインアウト,そしてLANケーブルを繋ぐだけです。前述のようにメディアコンバータを用意してありましたので,ここに繋ぐだけです。


(3)設定

 設定も問題はなく,特別なことはなにも考えていません。最近,機種によっては固定IPを設定出来ないものもちらほらあって,大変困るわけですが,N-30はそんなことはありません。

 DHCPをOFF,割り当てた固定IP,ルータのアドレス,DNSのアドレスを設定するだけです。この段階でインターネットラジオは問題なく鳴り出しました。


(4)Pogoplugとの接続

 さて,ここからが未知の領域です。Pogoplugがまず認識出来るかですが,これは問題なさそうです。DLNAですから,トップの階層からMUSICに下りて,そこからはアルバムやアーティスト,ジャンルによるカテゴライズを選択すれば,音声ファイルに到達できます。

 しかし,残念な事にAACのファイルしか出てきません。これはPogoplugの仕様ですから仕方がありません。

 気を取り直し,今度はPogoplugに繋がっているHDDをそのままアクセスしてみます。トップの階層からPogoplugに繋がっているHDDを選択すれば,そのHDDのフォルダ構造がそのまま参照できます。ここからFLACを保存してあるフォルダを選んでみたのですが,残念ながら再生不可。CUEシートも全く扱う事が出来ません。
 
 しばらくあれこれやってみましたが,これもPogoplugとの組み合わせではFLACを再生できないと断定して,あきらめました。

 そこで,FLACを解凍し,1曲単位でWAVファイルにしました。非圧縮のWAVファイルが再生できることは確認済みですので,手間がかかりますがさっさと片付けます。

 44.1kHzで16bit,2chの非圧縮データは,ざっと1200kbpsです。実力で20Mbps程度しか出てこない悪条件の無線LANでも,十分なゆとりがあるで音切れも心配ないでしょう。

 1曲単位でファイルを作ると,曲名などがメタデータではなく,ファイル名で表示出来ます。メタデータのメリットは大きいですが,編集に手間もかかるしファイルを見ただけでは何が書かれているか分かりません。N-30のような小さいディスプレイしか持たない機器が相手ですから,ファイル名で管理する方が楽ちんです。

 問題はジャケット写真をどうするかで,N-30のディスプレイに表示できれば,15mmx15mm程度の小さいものとはいえ,楽しいでしょう。しかしあまりに小さいし,ディスプレイを普通は見ないですから,手間を考えると今回はあきらめます。

 こうしてアーティスト,アルバム,曲データというルールに従ってファイルを置き,Pogoplugを使ってN-30で音を出すことに成功しています。


(5)Pogoplugの問題

 問題点がないわけではありません。まず,認識しないことがあるという問題です。特にN-30を高速起動設定にして,スタンバイから復帰させると,かなりの率でpogoplugを見つけてくれません。そればかりかサーバーの検索画面のままなかなか戻ってきてくれません。こうなると,電源をばちっと切って,約2分かけて再起動です。

 Pogoplugから再生中にスタンバイに入れても,復帰時にはPogoplugを見失ってしまうので,N-30の問題と言うよりはPogoplugの問題かなあと思っています。

 確実な方法は,高速起動を行わず,毎回最初から起動させることです。これならほぼ確実にpogoplugを見つけてくれるのですが,2分あればCDをセットできてしまうわけで,ネットワークオーディオプレイヤーの手軽さが損なわれてしまうと言う点で,ちょっと残念です。

 Pogoplugにはもっといろいろ問題があって,信頼性が低くてHDDの破損がしばしば起こること,厳密にはNASではないので,PCとのデータのやりとりが結構面倒なこと,特にドライブとしてマウントした場合にはファイルのコピーに失敗することが多くて,専用アプリかWEBベースでファイルのアクセスをしないと駄目なことが辛いところです。

 これは運用の問題ですのでN-30とは関係ありませんが,パーソナルクラウドというPogoplug本来の機能が必要ない人は,普通のNASを使った方が賢明です。

 あと,Pogoplugの問題ではありませんが,非圧縮のWAVをN-30で演奏する場合,ポーズが出来ません。これも案外残念なものです。情報によるとN-30の仕様らしいですから,アップデートで改善されることを期待したいと思います。


(6)使い勝手

 まず,レスポンスが悪いです。サクサク感がなく,常にワンテンポ遅れる感じです。反応があるのが遅いので,リモコンの赤外線が届かなかったのかと思ってもう一度押したりします。まあ,悪いUXの見本というところでしょうか。


 そのリモコンはお金がかかっていない割にはよく頑張っていて,ボタンのクリックやヘアラインの入ったケースが,なかなか好印象です。PD-D9のリモコンもこのくらいだったらよかったのになあと思います。

 繰り返し書いていますが,ディスプレイは小さく,視認性も悪いです。ディスプレイがなければ操作できない機器であることを考えると,ここはもう少しどうにか頑張って欲しかったと思います。今時4:3のLCDというのはちょっと見た目も悪くて,ここはワイドにすべきだったと思います。

 さすがに日本語に対応しないという事はなく,文字化けもなく日本語の表示も出来ています。ただ,表示文字数が少なすぎて,ちょっと長いだけの曲名が途中までしか表示されず,何を演奏しているのかが事実上わかりません。

 スクロールして曲名を表示する工夫もあるにはあるのですが,スクロールに至るまでの待ち時間が非常に長く,見続けているうちに「もうええわ」とあきらめてしまいます。

 これはフォルダ名の場合致命的で,再生したいアルバムを選ぶのが非常に困難です。アルバムタイトルだけ,それも出来るだけ短く命名するなどの工夫が必須でしょう。

 表示そのものについては不満も多く,設定や操作がほとんどできないことも深刻だと思います。文字サイズを変える設定があったり,スクロールして全体を見ることの出来るボタンや操作があるだけで,随分違ってくるんだけどなあと,とても残念です。


(7)音質

 192kHz/24bitに対応した機器だけに,44.1kHz/16bitくらいだと,特に悪い点は見つかりません。嫁さんも「CDの音そのまんまだ」と言ってましたが,本当にその通りの印象です。ちょっと固いというか,重心が高いなあという第一印象を持ちましたが,この値段でそこまで求めるのは酷でしょう。でも,普通にいい音ですよ。


(8)その他の便利機能

 まず,AirPlayに対応しています。私はAirMacExpressを初代から使っていまして,AirPlayの便利さをずっと満喫してきたわけですが,引っ越しで2階のAirPlayが使えなくなったことに不満を感じていました。

 N-30はAirMacに対応しているので,私のMacはもちろん,嫁さんのiPad2からでも,いいオーディオから音を出すことが簡単にできます。これは実際ありがたいですよ。iPad2ではiTunesに限らず,他のアプリの音もAirPlay経由で音を出す事が出来ますので,RadikoからAirPlayで音を出すことも可能で,そうなるともうFMチューナーはいらなくなります。(タイムラグや音切れ,音質の問題はあるのですが)

 次にUSBコネクタです。USBコネクタにストレージを繋げば,ここから音を出すことができます。説明書には記載がないのですが,対応フォーマットはFAT32のみで,NTFSやHFS-plusでは認識しません。ということは,HDDなどテラバイトクラスのストレージは実質使えないということですね。

 この端子にはiPodやiPhoneも繋がってきます。しかしAirPlayがあるので,これで繋ぐことはないと思います。

 ところで,N-30にはUSB-DACの機能がありません。ありませんが,フルサイズのオーディオセットに,PCを繋ぐ使い方が私には想像出来ませんので,全く必要はないと思います。


(9)まとめ

 まず,これを使えるようになるのに,手間はかなりかかります。しかもバックアップや壊れたファイルの修復など,日常的なメンテもゼロではありません。

 見方を変えると,その手間の大部分をプロが行ってくれた状態でCDというパッケージに入れたものが先にあって,我々はそれをただ再生するだけというのが,これまでのオーディオのあり方でした。

 パッケージに入れる前の形であるファイルという単位で管理するということは,この手間の一部をユーザーが引き受けたような形になるわけです。

 現状ではパッケージされたものをバラバラにする作業が余計に発生し,その上で再度の管理を行う事になりますので二度手間になっていて,いずれ音楽のネットワーク配信が中心となる時代には軽減されるとしても,こうした手間が面倒だと全く成立しませんし,手間をかければかけた分だけ,快適だったり高音質だったりするのですから,面倒くさがりな人には向かないと思います。

 手間をかけると,10曲程度の曲の束という制約を超えて,様々な楽しみ方が出来るようになります。これがそもそも,作り手の意図を反映しているかどうかはちょっと別の話としても,面倒だと思えばそれまで,ワクワクするという人には,ぜひネットワークオーディオを楽しんで欲しいなあと思います。

 私はワクワクする人ですので,今回の買い物は非常に面白いものでした。全く新しい体験ですし,あれこれと考えてそれを実現する楽しみは,非常に知的な遊びであると思います。私はたくさんのCDを全て捨ててしまっても構わない状況になりました。

 これまで,面倒という理由でついついCDを取り出さず,音質の悪い圧縮音楽で済ませることが多くなっていました。こういう音楽との向き合い方に対し,違和感がずっとあってしっくりこなかったのですが,CDと同じ音質を手軽に楽しむことが出来るようになって,ようやくすっきりしました。

 ネットワークオーディオプレイヤーは,これまでとは全く違う音楽再生機器です。音楽を入れたメディアとその再生装置という組み合わせは,エジソンの蝋管の時代から全く変わらず続いてきたのですが,これが完全に変わってしまうのです。

 100年以上続いたこの仕組みが変わるというのは,非常に大きな変化です。モバイルから先にやってきたこの流れは,いよいよリビングに鎮座する機器にも波及し始めて,これまでの常識が通用しなくなってきます。

 ただ,変わらないのは,音楽を聴く,ということです。そのための良い変化は,取り入れていってもよいのではないかと,私自身は思います。

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