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Walkmanの修理~その7~WM-F701C編

  • 2025/11/28 12:23
  • カテゴリー:make:

 Walkmanの修理に没頭したのが2年ほど前のこと,完全な修理は難しく,また手間をかけても実用性に乏しいこともあり,以来完全に遠ざかっていました。

 ところが,先日偶然にもWM-F701Cというモデルが入手出来たことで,久々に修理をやってみることにしました。確かベルトは在庫があったよな,ガム電池も大丈夫,ヘッドフォンの特殊コネクタもケーブルを作ったよなと,一応考えてのことでしたが,それでも3桁型番時代のWalkmanですから,モチベーションはそれほど上がりませんでした。

 しかし,調べてみると数の少ないDolby-C対応モデルである事がわかりました。WalkmanではDolby-Bまでの対応がほとんどで,私個人はそれでも十分だろうと当時も今も思っているのですが,それでもDolby-Cにはノイズリダクションの強さに加えて,自然な効き具合というメリットもあります。

 Dolby-Cで残してあるテープをわざわざDolby-Bで録音しなおすのも手間でしたし,それも結局劣化コピーですからバカバカしいなと当時も思った事を覚えていますが,期待したのはDolby-Cを搭載するほど高音質にお金をかけているという事実でしょう。

 私が手にしたモデルは安いモデルばかりで高音質を謳っていませんでしたから,今回のモデルがどんなものかは興味がありました。メカはWM-805などと同じと思いますが,電気回路でどれくらいこだわっているかも見物です。

 回路図をざっと見ると,やたらと部品が多いことに気が付きます。まずプリアンプはなぜかフラットパッケージをQFPに変換する基板にマウントし,基板に実装してあるのが気になります。MHC8570EQ01という珍しい名前を検索してもDatasheetはおろか,ほとんどひっかかりません。歴代のWalkmanでもこれを採用したのはWM-701C,702C,703Cという回路を共用している兄弟機のみのようですし,なかなか興味深いところです。

 推測ですが,これ,もともと高音質部品としてICの開発段階から評価をすすめていたんじゃないでしょうか。開発中はセラミックのQFPで試作を進め,量産ではフラットパッケージに移行するのに基板のパターンは再設計しないで流用するため,変換基板をはさんだんじゃないかと思います。

 そんなことより,それまで(そしてこの後)国内の東芝やロームのプリアンプを使っていたWalkmanが,わざわざ違うメーカーの部品を変換基板をもちいてまで使ったのか興味のあるところで,それが音質に起因する物だとしたら,このモデルは特別なものだと言えるんじゃないかと思います。

 そして,DolbyのICが2つも搭載されています。通常DolbyのICは2ch入ったICを1つだけ使うのですが,このモデルではDolby-Cに対応するため,当時はまだなかった2chのICではなく,1chのICを2つ搭載するという策に出ています。これ,電気設計的には苦渋の選択で,担当者の悔しさが伝わって来ます。

 しかも,そのICがなかなか巨大な面積を専有するんですね。おかけで本体側の基板は2枚にわかれ上下に重なって搭載されました。製造も大変だったはずで,これしか方法がなかったんだから仕方がないんでしょうけど,それでもDolby-Cに対応しようという気迫のようなものは感じました。

 ラジオはAM,FMに12chまで対応したTVの3バンドですが,これもかつて私が修理したWM-FX70とは違う構成になっています。ただこれは時代的なものが多いように思えていて,長く使われていたCX20111というラジオ用のICが使われているあたり,他のソニー製のラジオを基本に小型化した物じゃないかと思います。

 さて,入手した個体は,電池からの液漏れで周辺が錆びてしまっているような個体ですが,あまり使われていなかったものらしくキャプスタンもヘッドも綺麗ですし,ピンチローラーも新品のようです。もしかしたらベルトを交換するだけで動くかも知れません。

 ということで分解し,グズグズになったベルトを除去してから,プーリーを綺麗に磨いて新しいベルトをかけますが,残念ながらまともに動いてはくれませんでした。テープはかろうじて走るのですが,ワウフラッターが非常に大きい上,REWもREVの再生も出来ません。

 指で回してみると,巻取側のハブが固着していました。そこで各部のグリスアップと注油を行ったところ,ワウフラッター以外は解決してくれました。

 ワウフラッターの問題で気になるのはプーリーの汚れによる回転ムラですが,これはかなり押さえられているようです。そうすると次はキャプスタンとピンチローラーですが,キャプスタンは綺麗ですし,プーリーの清掃で取り外して注油してから組み立てていますので,ここは問題なし,

 だとすればピンチローラーが問題なはずなので,外して確認するとカチカチに固まって表面もツルツルになっていました。これじゃテープがしっかり進むはずもありません。

 幸か不幸か,かつて修理したWM-805(赤)が壊れて動かなくなってしまったので,ここに奢った新品のピンチローラーを移植します。この結果ワウフラッターもかなり小さくなり,実用レベルになりました。(ちなみに外したピンチローラーは紙やすりで磨いた後にWM-805に戻しました)

 これでテープは一応決着。アジマスがおかしいようで高域が落ち気味ですが,このWalkmanはアジマスを調整出来ないのでこれは割り切ることにします。Dolby-Cもちゃんと有効になっていて,その効果を実感したときにはちょっと感激しました。こんな小さいのにDolby-Cか,と。音質もかなり高く自然で,これは当時評判になっただろうなと思います。

 続けてラジオの調整です。実はここで私は一度絶望に沈んでいました。というのは,全く動かなくなってしまったからです。ラジオを調整するつもりで基板が露わになった状態でテープを再生していたのですが,この時邪魔になったつっかえ棒を中途半端に外していたので,基板の部品に接触していた可能性がありました。

 このつっかえ棒はGNDに落ちていますので,例えばマイコンの足に触れたらマイコンが壊れる可能性があります。そうなるともう修理は不可能で,私はてっきりそれで動かなくなったんだと思っていました。

 一晩がっかりしたあと,翌日にもう一度試すと動いてくれたので小躍りしたのですが,オチはOPENレバーに連動したLOCKスイッチの誤動作でした。この個体はLOCKスイッチが緩くて,少し動いただけでLOCKされてしまいます。位置としては正常な位置にありながら,実はLOCKされていたというのが原因でした。

 ということで,気を取り直してラジオの調整です。

 なお,サービスマニュアルを見たわけではないので,ICのデータシートや他の機種の例から推測で行っています。結果肝心のFMのトラッキング調整が出来ていませんし,完全な状態になっているとは思えませんので,ご承知おき下さい。

(1)まずAMからです。AMで最初に調整するのはバリキャップの電圧です。本体を531kHzにしてVTと書かれたTPの電圧を1.1Vに合わせます。

(2)次にSGを400Hzの30%変調にセットし,何かコイルに繋ぎ,本体のバーアンテナと結合します。周波数を621kHzと1395kHzに交互に設定し,CT3を回して出力電圧がサイダになるようにします。本当はバーアンテナのコイルも動かして調整するべきなのですが,パラフィンで固定されているので今回は割愛します。これでトラッキングは終わり。

(3)次にIFです。SGを999kHzに設定し,受信出来たらT1を調整して出力電圧が最大になるようにします。これでAMは終わりです。

(4)続けてFMです。まずはバリキャップの電圧を調整します。本体を87.5MHzに設定し先程のVTの電圧を3.5Vにします。

(5)次に,ラジオ基板とメイン基板を繋ぐフレキの右端,ANTと書かれたところに0.01uF程度のセラミックコンデンサを繋いで,ここにSGを繋ぎます。SGを22.5kHzのディビエーションにし400Hzを変調します。

(6)本来ここでトラッキングを調整したいのですが,残念ながらどのコイル,どのトリマコンデンサを触ってもトラッキングが調整出来なかったので断念しました。結論から言うとトラッキングを調整しなくても実用レベルだったので,これはこれでOKとします。

(7)次にステレオMPXの調整です。SGを無変調にして受信し,19kHzのTPの周波数を測定し,ぴったり19kHzになるようRV1を調整します。まあ,ここは普通にFM放送を受信しステレオになるように調整するだけでも十分実用になります。

(8)最後にゼロ調整というものを調整します。推測するにAFCがかからずに済むよう局発を合わせる物のようです。SGを82MHzにて受信し,CX20111の19ピンと20ピンの電圧がゼロになるよう,CT4を調整します。これを調整すると出力電圧が随分大きくなりますので,ぜひ調整したいところです。ちなみに私の個体では,ここがゼロになっても出力は最大にはなりませんでした。

 というわけで残念ながら,ラジオの調整はこれだけです。それでもAM,FMともにばっちり受信出来ていますし,オートスキャンも問題ありません。TVについてはそもそも現在は放送されていませんし,調整する意味もないので放置して構わないでしょう。

 最後に外観です。結構傷だらけになっているので分解して清掃したら,表面のプラスチック(ラジオ搭載のモデルの場合,ラジオ基板がおさまる蓋はプラスチックでないとだめなのです)に半光沢のクリアを吹いて傷を目立たなくして完成とします。

 WM-FM70のラジオ基板は調整が完璧に出来たので気持ちよかったのですが,この機種ではそうも行かず,ちょっと心残りがあります。ただ,ラジオの音質も良く,しばらく期言ってしまいました。ラジオだけでも価値があるんじゃないかと思うほどです。

 WM-F701Cは80年代最後のモデルで,80年代らしいヘアラインの装飾がありつつも90年代の曲線を融合した特徴的なデザインを纏った,小型軽量の魅力的なモデルです。音質も良く,なによりDolby-Cに対応した数少ないモデルです。

 メカは旧世代で消費電力も大きめですが,その分安定していますしキャプスタンが太いこともあってかワウフラッターも小さいですから,私は気に入っています。

 悔しいのはヘッドフォン端子が特殊であること,電池の蓋が欠品していることですが,どちらも普段使いに影響はないですから気にしない方が幸せです。

 久々に行ったWalkmanの修理ですが,電気的な修理はなく,メカも難しい作業はなかったです。簡単にできた部類でしたが,やっぱり楽しいものです。

 とはいえ,WM-805が動かなくなっているのをほっとくわけにもいきません。しかしこいつがなかなか手強そうで,プランジャが全然動いていないみたいなので,そのあたりから洗っていくしかないでしょう。いずれにしても面倒な故障なので,焦らず取り組んでいくことになりそうです。

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