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F2フォトミックA完調

 フォトミックAファインダーの修理をなんとなくでっち上げ,実用レベルで使い物になりそうだからこれにて終了と,なんだか後味の悪い形だったAi対応のF2ですが,γが0.5と低いCdSを安価に入手できたこともあり,もう一度きちんとした修理を試みることにしました。

 私が行った修理というのは,2つあるうち1つが劣化したCdSをもう1つのCdSに似た特性の動作品に交換して調整を追い込むという物でした。

 で,今回はフォトミックAファインダーだけではなく,きちんと動作してることがはっきりしているフォトミックファインダーのCdSも,特性を測定してみることにしました。

 とはいえ,明るさのはっきりしている光源はないので,真っ暗と普段の部屋の手元の明るさと,デスクライトから10cmほど離したところの抵抗値を記録するだけです。

 細かい数値は意味がないので省略しますが,わかったことは,フォトミックファインダーとフォトミックAファインダーというCdSを使ったニコンのファインダーは,左右で特性が全く異なるCdSを使って,この1つを並列に接続しているという事です。

 特性は,同じ明るさで抵抗値が違うことは当然ですが,γも異なるので,とにかくもう別物です。

 非常に単純に考えると,γが異なるCdSを並列に繋いだ場合,低輝度側ではγが小さい方が支配的に,高輝度側ではγが大きい方が支配的になりますので,どちらか1つを使うよりも広い測光範囲を得られる事になります。

 そういう意図があるという文献を見たこともないし,世界中の修理を嗜む識者の意見も聞いたことがありませんが,とにかく事実はそうです。

 測定ミスかもしれないなと思ったりもしましたが,そもそも特性の違いに気が付いたのは,左右のCdSで見た目が異なることに気が付いたからです。

 CdSの受講面には,硫化カドミウムがウネウネと引いてあります。曲がりくねっているのは長さを稼ぐためですが,このウネウネとした長さが左右で違っているのです。

 もちろん,長さの違いが直ちに特性の違いにはなりませんが,同一メーカーの同一品種で,しかも同一ロットであれば,ほぼ間違いなく同じ長さであるべきでしょう。それが異なるというのですから,特性が違うと考えるのが自然です。

 で,実際に測定してフォトミックファインダーのものと比較してみると,先日のフォトミックAファインダーの劣化したCdSは,γが大きいものでした。γが小さい物は劣化しておらず,初期性能を保っているようです。

 とはいえ,その左右の違いはそんなに大きな物ではなく,せいぜいγが0.65程度の物だと思います。手持ちのCdSの多くはγが0.85であり,これは本当に急激に値が変化し,暗部では10MΩを越えてしまうこともあります。

 フォトミックAファインダーの劣化したCdSと交換した手持ちのCdSは,たった1つだけ見つかったγの小さい物だったのですが,これは本来,もう1つのCdSと特性が似ているからという理由で起用したものです。

 しかし,フォトミックファインダーの劣化していないCdSと比較すると,ウソのように特性が一致します。もう同一と言っていいくらいです。

 フォトミックファインダーが調整を追い込んでほぼ満足な動作をしていることを考えると,フォトミックAファインダーでも劣化していないCdSと今回のCdSの組み合わせでちゃんと追い込む事ができるはずで,特に低輝度と高輝度の補正用半固定抵抗の位置は,そんなにクリティカルに変化する物でないことを考慮すると,似たような位置にしておくだけで問題ないのではないでしょうか。

 とまあ,その前に,200kΩのソリッド抵抗を交換しておきます。もともと230kΩくらいの実測値で,10%の許容誤差を越えてしまっていますからね。

 と,基板から外すときに,この抵抗を壊してしまいました。というか,ポロッと端子がもげてしまいました。劣化が激しいです。

 まあ,ソリッド抵抗は見つけ次第交換せよと,昔の人達もいっているくらい,経年変化が大きく,信頼性も低いです。交換しておいて良かったです。

 そのせいもあるのでしょうが,組み上げてからの調整が,なんとまあ楽ちんなこと。低輝度高輝度の補正はフォトミックファインダーと同じ位置に合わせておくだけでOK。

 その上で,露出計の調整はF3でグレイカードを測定し,その結果であわせ込むだけで,低輝度から高輝度,開放F値の異なるレンズでも,いつもズレのない値を示します。こんなに簡単に調整が出来てしまっていいのだろうかと不安に思うほどです。

 そして試し撮りです。とにかくレンズをとっかえひっかえ,テンポ良く撮影します。いや,楽しいです。巻き上げレバーにグリスを塗りすぎたせいで柔らかくなってなりすぎたことを除けば,感触も音もメカが動く実感もすべて,写真を撮るという行為にプラスの力を与えてくれます。

 AEで撮影することになれているので,ついつい露出を確認しないでシャッターを切りそうになりますが,被写体中央で露出をあわせておけば,構図を変えてもいちいち補正をしなくて済むテンポの良さはとても楽しく,軽快です。

 露出計は全く問題なく動作しています。Aiニッコールとの連動もズムーズで,1972年に製造された私のF2は,クラシックなカメラと言うより現役バリバリの実用機と言っても違和感がありません。

 F2はよいカメラです。F3もよいですが,実際に使ってみるとF2の方が手に馴染みます。F3の発売当時にF2とF3で迷っていたら,F2を買っていただろうと思います。そして,それから30年たち,結局F3と買った方が賢かったと悔やむことも,きっとしただろうと思います。

 そんなわけで,一気に100枚ほど撮影してしまうという,とても贅沢な時間を過ごしました。あとは現像して確認が必要ですが,まあ多分大丈夫でしょう。

 気になっている巻き上げレバーの,ロック位置からの動きが柔らかすぎる問題は,そのうち上カバーを開くときにでも確認しようと思います。今は巻き上げが終わった位置から指を離すと,勢い余ってロック位置までレバーが動いてしまうほどなのですが,これだとやっぱり使いにくいです。

 で,足下には,フォトミックAファインダーがついてきた,肩の派手にへこんだF2が転がっています。これも一応練習がてらオーバーホールをしようと思っていますが,すでにセルフタイマーのネジを傷つけてしまい,モチベーションがだだ下がりになっているので,困ったものです。

 部品取りとしてこのままにしておくべきか,予備機として復帰させるか。大いに迷うところですが,苦手なマイナスネジと格闘すると考えただけで,二の足を踏んでしまいがちです。さて,どうしたものか・・・

 

 

F2がAI対応に

 先日,生きていれば格安,死んでいれば高価なゴミというF2を買ったわけですが,週末に時間が出来たので,様子を詳しく見てみました。

 まず手始めにボディからです。シリアルから1972年ごろの製造で,マイナスネジが使われる初期型です。確かに低速のシャッター速度もきちんと出ているようですし,ぱっとみてわかるようなおかしな所はないようです。

 しかし,裏蓋を開け閉めしている時に,裏蓋がやや斜めになって閉じることに気が付きました。可能性は2つ,フタがゆがんでいるか,ボディがゆがんでいるか,です。

 右肩の大きな打撃痕があるのですが,これだけのへこみを作るんですから,かなり強くぶつけた(あるいは落下させた)のでしょう。外側だけで済むはずもなく,おそらくボディが歪んでしまっているんじゃないかと思います。

 ボディが歪んでいると,フィルムに平面が出ません。フォーカスが周辺でズレるとか,どこかから光が漏れるとか,そういうトラブルが発生します。そうした致命的な問題を出すボディの歪みは,修正する方法がありません。

 よって完全なゴミになってしまうのですが,このF2はおそらくボディが歪んでしまっていると思います。価格のうち,ボディは0円になりました。

 次は,お目当てのフォトミックAファインダーです。

 とりあえず明暗に反応してメーターが動きますし,AI連動レバーを回してもスムーズにメーターが動きます。致命的な故障は起きていないと思っていました。

 一安心してメカを分解,注油してスムーズに動作するようにしましたが,続けて調整を行ったところ,レンズを交換すると調整が大きく狂うことに気が付きました。

 詳しく調べてみると,明るい場所と暗い場所で全然値が違ってきます。

 これは電気系に問題があるということです。まず200kΩのソリッド抵抗を確認しますが,ちょっと大きめ(220kΩ)ではありましたが,一応問題なしです。

 そうなるとCdSです。祈るような気持ちで左右のCdSを取り外してテスターで確認すると,やはり片側のCdSが死んでいました。真っ暗にしても抵抗値が上がり切りません。

 困りました。

 まさかCdSの不良だったとは。これでこのファインダーも0円になりました。つまり,今回の買い物は全くのゴミに高価なお金を払ったことになりました。やっぱり中古カメラ専門店はよく分かってますね。

 カメラ用のCdSは,リニアリティのある測光範囲を広く取る必要があるので,γ(簡単に言うと100lux時の抵抗値と10lux時の抵抗値の比率)が小さい事が望ましく,市場で流通していたものとしては最も小さい0.5くらいの物を使うことが多かったようです。

 ところが,単なるON/OFFのスイッチとして使う場合にはγは大きい方が設計が楽で動作も確実であり,通常簡単に手に入るものは0.7とか0.8とか,使いやすい大きめの物ばかりだったりするのです。

 それにCdSはばらつきが大きく,20%程度のバラツキは普通にあります。出来れば選別して似たような物とペアにしたいところですが,そのためには数を買って実測してペアを組むしかありません。

 壊れたCdSを交換出来ればよいのですが,同じ物は手に入らないので,理想的にはペアを組み直して2つとも一気に交換するのがベストです。しかし,そもそもW他足は手持ちで使えそうなCdSを持ってはいません。以前,NikomatELを修理するのに,秋葉原で様々な種類のCdSを買ってきましたが,どれ一つ使えそうなものがなかったのでした。

 NikomatELと同時代のフォトミックファインダーですから,CdSも同様の特性である可能性が高いと思うのですが,つまり残っているCdSに使えそうな物はないということです。

 そうはいっても一応確かめてみます。生きているCdSは,真っ暗にすると500kΩ以上の値を示します。15Wの蛍光灯に15cmくらい近づけると1.5kΩくらいになります。

 これに近いものを探してみると,1つだけ見つかりました。しかも外形は6mmのメタルCANでガラス窓です。ただ,値は常に20%ほど大きめに出ます。しかしγは揃っているような感じです。

 これくらいならなんとかなるかもしれないと,早速交換してみます。

 一応,明るさに応じてメーターが適切に振れるようになってくれました。動作そのものは治ったようなのですが,問題は調整が可能かどうかという問題と,精度の問題です。

 試行錯誤をしたのですが,やはり完璧に調整することはかなわず,被写体の明暗によって,測光値に半段ほど差が出ています。これくらいの違いならまあ実用上は困らないので,とりあえず良いとします。

 いろいろな開放F値のレンズを試したり,いろいろな明るさの被写体で試したりと何度か繰り返していますが,全然ズレてしまって困るという問題は起きてはいません。

 というわけで,完璧とは言いがたいですが,とりあえず実用レベルに復帰したフォトミックAファインダーですが,実際に使ってみた感じでいうと,F2がクラシックカメラから現行機種になったような錯覚をしてしまいます。

 なんといっても,AI方式に連動するようになった事が大きいです。うちでいえば,AI45mmF2.8Pも,AIAF85mmF1.8Dも普通に使えます。試していませんが,AIAF300mmF4Sも使えるでしょう。

 ガチャガチャをしなくていいと言うのも地味に便利ですし,デザインも少し変わっていて,おでこの部分がやや狭くなっているので,バランスが良くなって見た目も格好いいです。

 ただ,ファインダー内に表示される絞りの値が見にくくて,F3に持ち帰るとその見やすさに驚きます。F3はやはりF2の改良型だったんだなあと思われる瞬間です。

 もちろん,現像して結果を見なければ使えるかどうかわかりませんが,完璧を求めなければ使えそうな感じですので,これで一旦修理を終わります。

 それにしても,いくらメーター不良と書いてあっても,CdSが死んでいるファインダーにおそらく歪んだボディを組み合わせて12000円というのは,もっとあこぎなカメラ屋さんでも付けない値付けじゃないですかね。

 いくらF2とはいえ,基本的に修理不能なジャンク品ですからね,逆説的な言い方をすれば,こういうお店でそれなりの保証のある高価なものを買えば,自分に見る眼がなくても失敗しないという事になるでしょう。

 さて,CdSをどうにか調達しないといけないですね。F2用として売られているものを探すのもいいですが,汎用の物から使えそうな物をストックしておき,他のカメラの修理にも使えるとよいと思うのですが,そもそもCdSのことを私はあまりよくわかっていません。

 実はCdSって,詳しい文献が少ないのです。RCAが開発したことになっていますが,登場は1960年代のようですし,1970年代中頃にはフォトトランジスタが使われるようになって,どちらかというと光センサとしては安かろう悪かろう的な扱いだったようです。

 ただ,人の目に近い感度特性を持っていたり,抵抗が変化する受動デバイスだったことで,詳しいことを知らなくてもそれなりに使える,手軽な光センサだったことは事実で,カドミウムが規制対象になる2000年頃までは,割と目にすることも多かったように思います。

 環境規制が理由だとすればこのまま絶滅するだろうと思っていたのですが,どういう訳だから未だに入手可能で,中国あたりで現在も生産されていると聞きます。保守用の部品として作られるにしては規模も大きいようなので,手軽で安いというのは,それなりに需要があるのかも知れません。

 

2台目のF2がやってきた

 5月の連休に手に入れたニコンF2フォトミックは,オーバーホールを経て現在2本目のフィルムを通しているところです。

 F2は70年代らしい装飾のない上品なデザインで,なにが素晴らしいといって本体に数字以外の文字がほとんどないのです。

 今どきのカメラは文字だらけです。ひどいものは日本語です。

 文字が書かれていないと操作することが出来ないほど多機能になっているのだろうと思いますが,写真を撮影するという目的は変わらず,F2とD850を並べてみると,なにがこんなに違っているんだろうと,ふと考え込んでしまいます。

 いや,iPhoneのような文字がボタンがないデザインを洗練されているだのシンプルだのと賛美するのではありません。iPhoneが操作系をソフトウェアに丸投げしたに過ぎず,機能は数え切れないほどあるのに対し,F2はカメラとして備わっているべき機能がすぐに引き出せるようになっていて,機能の少なさに誰も文句を言わないことに,根本的な違いがあります。

 いつからだろう,カメラに文字がごちゃごちゃ書かれるようになったのは。

 まあ,そんなわけで,F2はさすがにプロ機です。使い込まれていてもちゃんと動き,整備すれば完調に戻るという夢のような堅牢さを誇る機械式カメラです。(私個人はこれをオーバースペックとも考えるので,現在の価値観ではこれを賞賛することは出来ないかなあ,とも思っています)

 で,メーター不良と書かれた1972年頃製造のF2フォトミックを相場よりもやや高いくらいで購入した私は,特にフォトミックファインダーDP-1の整備に苦労して,ようやく実用レベルに追い込んで使っています。死ぬまでに本物のガチャガチャのお作法を体に染み込ませたいという夢は,なんとか叶いそうになってきました。

 後で知った事ですが,DP-1のメーターは固着が問題となっていて,これを対策したメーターが後期から使われているんだそうです。このメーターは右側が細く絞られていて,まるでワインのボトルを横倒しにしたような表示になっています。

 私のフォトミックファインダーは前期型ですので,その見た目から「アンプルメーター」と呼ばれる固着対策済みのメーターではなく,振動を与えないと針が動いてくれないという問題に頭を抱えていたことは,すでに周知の問題だったということでした。

 少し振動を与えればちゃんと動きますので,気にしなければいいだけのことです。何度もばらして組み立てたことで,シャッタースピードダイヤルを巻き戻すバネが緩くなり,ちょっとだらしない感じもするのですが,とりあえず動いているのでよしとします。

 ところが,あれだけ憧れたガチャガチャなのに,面倒になってきました。

 1つは,カニ爪のあるレンズが少なくなっていることです。例えばAi45mmF2.8PなんかF2で使うと面白いだろうなと思うのに,カニ爪がありません。

 AiAF85mmF1.8Dもそうです。あるいはAiAF-S300mmF4もそうです。タムロンのSP90mmF2.8も使えたら面白そうです。

 これらを使うにはそう,Aiに対応したフォトミックAが必要です。

 しかし,Aiに対応したファインダーはF2を実用機として使う人にとって最善の選択肢であるだけに,比較的高価です。ただ,微妙にファインダーのおでこの部分が狭くなり,個人的により格好良くなったと感じるフォトミックAは,是非欲しいアイテムでした。

 そんなおり,ふと三宝カメラのサイトを見ていると,F2が安く出ていることに気が付きました。本体をひどくぶつけた安いF2は,メーター不良のフォトミックAを乗っけて,破格の安さです。さらに割引もありました。

 ボディはシリアルから前期型ですので,この値段なら最悪部品取りでいいや,動けば儲けものくらいで買うことにしたのです。

 果たして届いた格安のF2は,すべてがちゃんと動いていました。

 ボディは右肩がへこんでいますが,動きはややぎこちないものの,へんな引っかかりもなく巻き上げからレリーズまで一連の動作が出来ます。シャッター速度も低速はきちんと出ています。

 シャッター幕も綺麗ですし,塗装の剥げも擦り傷も少なく,下手をすると私のF2よりも素性がいいかもしれません。

 心配していたメーター不良のファインダーですが,本体に電池が入っていたこともあり,動く事がすぐにわかりました。もちろん狂ってはいますが,そんなものはどうとでもなります。部品レベルで生きていることが,修理には不可欠なのです。

 プリズムの剥がれもありませんし,アイピースの割れもなく,ぶつけた跡もありません。もしかすると分解痕くらいはあるかもしれませんが,とりあえずちゃんと動いてそうなので,安心しました。

 うーん,確かに右肩のへこみは強烈なので,これをそのまま常用機にするのは厳しいですが,それでもこの程度でこのお値段は,安くないかい?しかも新しい電池にボディキャップまで付けてくれています。

 まずは,ファインダーをオーバーホールして,完調に戻しましょう。調整まで済ませれば,晴れてAi対応のF2の完成です。レンズ互換性がMF最終モデルのFM3Aと揃ってしまうなんて,なんと痺れる展開でしょう。

 ボディはさすがにこのまま使えませんが,まず右肩のへこみをたたき出して直して見た上で,少し内部を観察しダメージがなさそうなら,練習も兼ねてオーバーホールをやってみましょう。

 これから涼しくなり,夜の楽しい秋がやってきます。ちょうどいいパズルを手に入れた気がして,今からワクワクしています。

 


 

日本カメラ博物館とワークショップ

 子供が自らの最大の関心事となり,かつ生活の中心に居座っていると,子供の「夏休み」がまるで自分の夏休みのような感覚に囚われます。いやはや,面白いものです。

 その開放感も,高揚感も,なにやら自分の事のような気分です。自分の生活はなにも変わっておらず,大人には夏休みはないのに,まるで夏休みを過ごしているような気持ちになるのはなんだか得をしている感じがして,これも子供を持つことの特権の1つかなあと思ったりします。

 もちろん,子供は自分で面白い事を見つけてきますし,勝手に面白おかしく夏休みを過ごしてくれるものなのですが,大人は大人の仕事として,子供たちの手の届かない範囲にある「面白い事」を,ぐっと彼らの近くに引き寄せることも,やるものです。

 だからこそ,夏休みになるとあちこちで子供たちを対象としたイベントが開かれるわけで,本気のものから形だけのものまで,それはもう玉石混淆です。

 私は出不精ですし,暑いのも人混みも嫌いなので,子供を外に連れ出す事はあまりありません。学校や地域でちょっとしたイベントが行われることもあり,夏休みはそれはそれで毎日忙しいわけですが,今年に限っていえば,子供が通っている小学校で夏休み期間中に工事があり,イベントのすべてが行われないことになったのです。

 このイベントは近隣の小学校と合同で行われていたのですが,我々の学校で開催できなくなったことで,我々の子供が他の学校のイベントに参加出来なくなってしまうという事態まで招きます。その大人の論理の全開っぷりに,誰のためのイベントやねんと,思ってしまいます。

 なんと世知辛いことか。

 実際には私の想像も及ばない事情があって,やむなき判断という事なんでしょうが,残念な事に本来味方であるべき大人に,こうして「世知辛い」なんていわせてしまうあたり,推して知るべし,というものです。


 そんなわけで,一番割を食っている子供に何かをしようと奮起した私は,ふと目にしたイベントに足を運んだのでした。

 日本カメラ博物館にて,8月17日に行われた「暗室で写真影絵アートを作ろう」です。

 写真影絵アートはフォトグラムとも呼ばれている,印画紙の上にものを置き,上から光を当てて現像し,影絵を作るという立派な芸術作品です。

 ピンホールカメラだのカメラの分解だのというわかりやすいワークショップはすぐに満席となっていましたが,私に言わせればこれらは比較的簡単で,どこでもやろうと思えば出来ます。その気になれば,家でも出来ますし。

 しかし,フォトグラムはそうはいきません。

 今や貴重となった大きなサイズの黒白印画紙がまず必要ですし,光源である引き延ばし機も必要です。現像液や停止液,定着液といった薬剤も必要ですし,これらを扱うために上下水道が完備した作業スペースが必要です。

 しかも,そこは真っ暗でなければなりません。

 そんな場所,あるかいな!

 それだけではなく,これらを使うこなすための指導をする人もいないと困ります。しかも専門的な知識や技術が必要で,そこら辺のおっさんをつかまえてきて,頭数だけ揃えて済ませるわけにはいかんのです。

 どうですか,これは激しく大変そうでしょう。

 しかも,出来上がる作品は写真用の印画紙を使うだけに,白は純白,黒は漆黒と,見事なコントラストを駆使できます。拡大して投影するのではありませんから,くっきりとエッジも立ち,素晴らしい解像感が得られます。影絵という言葉に連想される,あのぼやーっとした投影とは,もう格が違うのです。

 事実,これは芸術家が作品作りとして取り組むもので,子供の遊びではありません。

 これを,かの聖地「日本カメラ博物館」がやってくれるというのですから,たまりません。まるで子供をダシにしたみたいで,私がワクワクしていることが,なにやら後ろめたい気持ちでした。

 8月17日は,東京でこの夏一番の猛暑となった日です。体温を超える気温で,天気予報のお姉さんは「なにもしなくても熱中症になる」と,いわれたところでどうにもしようのない警告を繰り返していましたが,幸いにして誰も倒れることなく,無事にカメラ博物館でワークショップに参加してきました。

 印画紙は四つ切りとキャビネを何枚かもらえるのですが,最初は持参した小物が,どんな影絵を作るのかを試してみる感じで,創造というより実験という感じです。

 しかし,何枚か作るうち,それらを工夫して並べて,物語を考えたりある状況を再現したりと,表現を始めるようになります。そうです,これこそ芸術です。

 慣れない暗室で,薄暗い赤い光を頼りに,触ったこともない液体と格闘し,出来上がった作品は,子供たちにも大いに驚きと感動を与えたようです。

 後述しますが,娘は私が高校生の時に愛読した「究極超人あーる」を,暇さえあれば読んでケラケラ笑っています。わかりやすいギャグで笑っているだけだった娘も,そのうち「暗室って暑いの?」とか「バットってなに?」などと聞いてきます。

 一応説明をしますが,こういう部分はその当時から,写真を嗜むものだけが理解出来る,いわば作者からのメッセージだったわけで,デジカメしか見たことがない8歳の子供が,現物も見ないで理解出来ようはずがありません。

 そんな口惜しい思いをしていた私も,今回のワークショップでは現物を見て触って,使う経験をしてもらえます。これほど血肉になる体験は他にないでしょう。

 私が知る「臭くて暑くて狭くて汚くていつもなぜか薄暗い」暗室とはおよそ反対の,実に快適な暗室での2時間余りの作業はあっという間に終わってしまい,娘は無事に夏休みの自由研究としてキャビネサイズの組み写真を完成させたのでした。

 このワークショップ,形だけの参加費が必要なのですが,そのこともあってか隣接する博物館にも無料で入館できます。特別展も子供向けでしたし,私は私で図録がほしかったので,ちょっと遅くなってしまうのですが,博物館にも立ち寄ることにしました。

 そうするとまあ,娘はどういうわけだか,大はしゃぎです。

 一時期流行したステレオ写真が面白いらしく,ずっと見ています。私にもしつこく見ろ見ろといってきます。

 そしてカメラの展示です。

鰯水のF-1ってどれ?
曲垣が使っていたAE-1はこれだ!
成原博士が持って池から出てきた「ハッセル」と「ローライ」というのは,これな。
えりかが持ってきた6x9のカメラって,こんなに大きいのよ

 とまあ,こんな調子で,あーるの世界が目の前に現れます。私もクラクラしてきました。

 かなうなら,17歳の私に,やがて君の娘は8歳になると,一緒にあーるの話で盛り上がることになるぞ,だから毎日楽しみに生きろよと,教えてあげたいです。

 なお,鰯水のF-1はNewF-1で,博物館にあったF-1とは違っていました。説明に書かれていた当時の価格が鳥坂さんのF3に比べて随分安いのに気が付き,「なんだ安いのか」と小馬鹿にしていたあたり,本能的に鰯水を小馬鹿にする鳥坂さんとお金にうるさい小夜子の両方の素質を持っているように思えてなりません。

 そして,子供向けに,古いカメラを実際に手に取って動かせるようになっていて,物珍しい娘は出ているカメラをひととおり触って喜んでいました。

 いわゆる一眼レフは見慣れているし,私のF3やF2を触っているので珍しいこともないのでしょうが,およそカメラに見えない2眼レフのリコーフレックスを,どうやったら動かせるのか不思議でならないようでした。

 かくいう私も2眼レフは扱ったことがありません。説明書きを見ながら恐る恐る,親子で2眼レフを触って見ます。6cmx6cmの正方形のファインダースクリーンに投影される天地逆転の画像の緻密さに驚き,鉄板を組み合わせた四角柱を上から覗き込むようなカメラが存在したことにも,好奇心が刺激されたようでした。

 そうして,想像以上に有意義で楽しかったカメラ博物館を後にしたのは,到着から3時間半も経過してのことでした。よく遊んだと思います。

 娘は今,家の大きなテレビに映る,呑み鉄本線日本旅で頻繁に登場するキハ40の走行シーンを,自らの愛機であるチェキで一瞬のシャッターチャンスをものにしようと格闘しています。面白い事に,撮影結果について彼女なりの振り返りがあり,これは今ひとつ,これは惜しいと,厳しめの自己評価を続けています。これはもう,立派な撮り鉄です。

 よく,世の親は,子供に芸術性を伸ばして欲しいというわけですが,それは私も同様です。ただ,それは子供のためという話だけではなく,私自身が彼女の作品をもっともっと見たいと思うからです。

 おそらくですが,成長に伴って,その作品はあるフォーマットに従うようになり,形式的な要素を強めることになるでしょう。それはそれで面白いのでしょうが,私個人は子供の自由さや柔軟性からくる予測不能な世界を見てみたいと思っていて,近い将来確実に見ることが出来なくなる前に,たくさん見ておきたいなと思っています。

 そのための表現手段,あるいは道具として,色鉛筆や折り紙があるのと同じように,デジタルカメラがあるというのは,興味深いことだと思います。ボタンを押せば写真が撮れる,しかしその結果には彼女なりの成功と失敗があります。果たして,ボタンを押すだけのカメラを小馬鹿にするマニアたちは,この成功と失敗の線引きを,どう考えるのでしょうか。

 

世にも珍しい魚眼ズームAT-X107DXを中古で買う

 突然魚眼レンズが欲しくなりました。

 チェキをオモチャ代わりに遊んでいる娘が,エフェクトの1つである「Fisheye」の面白さに目覚めてしまい,私も再発見の機会を得たというのが理由です。

 「魚眼」ではなく「フィッシュアイ」で,ひどく歪んだ画像を生み出すレンズを覚えた娘は,私よりもずっと先に特殊レンズの洗礼を受けました。

 ついでにいうと,B&Wというエフェクトも再発見の対象となっていて,なんでもないポートレートが,なにかを語ろうとする意味深なものに変わることに新鮮な驚きを感じてしまいました。

 なんというか,私がモノクロで撮影していた頃というのは,とにかく枚数を稼ぐことが目的だったので,そんなに感動的な説得力のある写真を撮ることは一度もありませんでした。

 加えていうと,さすがフジフイルム。デジタルなのに,そのコントラスト,その階調には,思わず笑ってしまうほどの再現性があります。
 
 話を戻すと,私はこれまで魚眼レンズを使ったことも欲しいと思った事もありませんでした。高価ですし,ほぼ例外なくデメキンレンズなので神経質になるし,その割には使い道は限られてしまい,常用出来るレンズではないというのが,興味を全く持たなかった理由です。

 だから,PENTAX Qのトイレンズで,数千円の魚眼レンズがでた時には,真っ先に買いました。結果,面白いと思いましたし,案外使えるもんだなあと思いましたが,やっぱり常用出来ないので,一眼レフ用のまともな魚眼レンズには手を出しませんでした。

 そして,偶然見かけたのが,ペンタックスがコーティングを変更して発売した,魚眼ズームの記事でした。

 APS-C用の10mm-17mmというズームですが,10mmだと180度の対角魚眼,テレ側になると歪みが減り超広角ズームとして使えるという,面白い一本です。

 これ,トキナーとの共同開発らしく,同じ光学系のレンズが他のマウント用に,トキナーから発売されているのですが,これもペンタックスの旧製品も,10年以上前から売られるロングセラーです。(なにせ作例がD200とか,そんな懐かしい時代の作例です)

 ですので,定価はは8万円ほどですが,実売は45000円以下と安くなっています。AFもボディモーターで駆動するものですし,デザインも垢抜けていません。光学特性もずば抜けているとはいえず,この当時の平凡なものですので,今どきの基準で見れば全然ダメなんじゃないかと思います。

 なにより,APS-C用というのが厳しいです。海外版はフードが取り外せて,フルサイズでも使えるようになっているそうですが,国内版はフードが作り付けですので,ケラれてどうにも使えません。

 でも,魚眼ズームだと,ズームによって魚眼と超広角を切り替えて使う事が出来るわけで,魚眼だけではどうにも使えない状況でも,このレンズであればさっと広角に切り替えて使う事ができます。

 ズームレンズは単焦点レンズ数本分の役割をするといいますが,これこそその真骨頂でしょう。APS-Cなら17mmは25.5mm相当です。今どきこれは超広角とは呼びません。

 しかも幸いなことに,このレンズは欲しいと思っていたトキナーのレンズです。

 トキナーのレンズは,AT-X16-28mmF2.8PROを買った時,その色を大変気に入りました。あいにく,解像度が今ひとつで手放してしまいましたが,この青色には未練があり,安ければ買い直そうかなと思っていたくらいです。

 もちろん,この魚眼ズームが同じ「トキナーブルー」を出してくれるとは限りません。でも,時代的にも大なり小なり同じ方向を向いているでしょうし,少なくともタムロンのような傾向ではないと思います。

 だとすれば,この値段で,しかも広角域で,トキナーブルーが楽しめることになります。これはおいしい。

 ただ,今さらこのスペックのレンズを新品で買うのも,ちょっと勇気がいります。ということは,中古を探すことになるわけです。

 AT-X107DXという名前のこのレンズは,ロングセラーではありますが,大ヒット商品ではないでしょうし,そんなに球数があるとは思えません。でも,買った人の多くが「だめだ使いこなせない」とさっさと売りに出している可能性もあり,数は少ないけど値段は安いというレンズかも知れません。

 探してみると,中野の某店で,程度がAランクのニコン用が26000円。他に在庫はないようですし,他のお店では在庫すらありません。むむむ。

 現物を見ないままで中古を買うことは,必ず1つや1つがっかりさせられるものなのですが,いちいち中野に出向けませんし,確認したところで結局買うのですから,もう買ってしまいましょう。Aランクという言葉を信じて・・・

 届いたものは,キャップくらいしか付属品がない状態で,レンズ本体は綺麗で使用感も少ない良品でした。ちょっと当て傷のようなものがありますが,ほとんど気になりません。

 問題はフロントレンズキャップでして,フードに被せるものなのですが,分厚いアルミで出来た非常に質感の高いものなのですが,コイツの表面に傷がたくさんあるのです。

 なにか,シールでも貼り付けたものを無理に剥がして,ゴシゴシ擦ったような感じの擦り傷で,随分目立ちます。安いものならキャップだけ別に買うかと探してみましたが,あいにくアルミ製なので非常に高価とわかり,あきらめました。

 ちゃんと調べていませんがこれ,ペンタックスのFA43mmやFA77mmのキャップとよく似ています。

 手に取ってみると,これがなかなかずっしりとして,いい質感です。小型で取り回しもいいのですが,ちゃちな感じはせず,見た目に反して凝縮感があります。設計はペンタックスだということらしいですが,さもありなん,という感じがします。

 ズームもフォーカスも,可動部分も滑らかです。4万円そこそこで売っているレンズとは思えないです。

 実際に撮影してテストをしますが,光学的には問題なし。さすがに暗いですし,画像も高価なズームに比べるとさっぱりですが,そこはやはり一眼レフ用,ちゃんとした画像が撮影出来ます。

 D850はAPS-Cにクロップすると,撮影エリアの外側が黒く塗りつぶされてファインダーに投影されます。ですのでこのレンズでもなんら問題不自由を感じる事なく使えるわけですが,12mmという超広角の世界に見慣れた人でも,画面がグイーンと曲がる魚眼の面白さは,ファインダーを見ただけで感じられることでしょう。

 ということで,何枚か撮影してみます。このレンズは14cmまで寄れるありがたいレンズで,これだけ寄れれば魚眼も超広角も怖くありません。魚眼は,中央部は歪みが少なく,外に行けば大きく歪むレンズなわけですから,ぐっと寄って被写体を真ん中に据えることは必ず必要になります。

 くっつくんじゃないかと思うほどに近寄った娘の顔を撮影し,本人に見せてみると,にやっと笑ってから「フィッシュアイだ」とうれしそうにいいます。この歪みを表現手法として使うのは難しいですが,魚眼も含めた広角はとにかく「寄る」ことが基本です。

 その上で,180度言う視野角を使い,ぱーっと目の前の画像を一網打尽にするというのはなんと気持ちのいいことか。特に縦位置でいけば,足下から空まで全部入り込んできます。これは面白いです。

 機会があれば,D850をAPS-Cに固定して,このレンズだけで外に出てみたいところです。きっと面白い景色を切り取ることができるでしょう。同時に,バリエーションの少ない,どっかで見たことのあるような写真が量産されることにもなりかねず,そうしたつまらなさに,案外がっかりすることになるかも知れません。

 

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