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今さらAi-Nikkor28mmF2.8Sを入手

 今さらですが,Ai-Nikkor28mmF2.8Sを中古で買いました。

 25年ほど前に中古のF3を買ったほぼ同時期に,50mmの次は28mmだと中古で買ったAi-Nikkor28mmF2.8をずっと使い続けていて,28mmの話はこれでおしまいと思って気にもかけてなかったのですが,先日偶然,そう簡単な話ではないことを知りました。

 私が持っているものはNewNikkorAutoをAi化したもので,7群7枚です。ところがこの後「Nikkor」を名乗れない廉価版の「シリーズE」に5群5枚の28mmF2.8が登場,しかしこれが思いのほか性能が良く,Nikkorの立場を危うくするというので,Ai-Nikkorがリニューアルされることになりました。

 ちょうどAi-S化(AF-Sではないですよ)されるタイミングだったので,リニューアルされた8群8枚のレンズは,Ai-Nikkor28mmF2.8Sとなったのですが,これが1981年のお話だそうです。

 いちいちそんな理由でお金をかけてリニューアルすんのかよと,ニコンの生真面目さにクラクラしますが,こだわったのは0.2mmまで寄れるという近距離撮影距離で,そのために超広角で行われているような近距離補正まで行っています。

 基本性能は申し分なく,近距離撮影にも強いという28mmレンズは実は珍しい存在で,今でもこれを持ち出してマクロ的に使う方がいらっしゃるそうです。

 私はそんなことも知らず,古いAi-Nikkorを使い続けていましたし,そのAF-Nikkorも適当に買っては手放してをしていました。

 ついでにいうと,AF-Nikkorはもっと変な話になっていて,どういう訳だか初代のAF-Nikkor28mmF2.8SはシリーズEと同じ5群5枚,これで新時代のニコンを背負っていたというのですから驚きで,これが7群7枚のAF-Nikkor28mmF2.8Dになるのが1994年といいますから,随分あとになります。

 私は5群5枚のAF-Nikkor28mmF2.8Sを安いからと喜んで買ったのですが,今ひとつしっくりこなくて売ってしまいました。惜しいかなと思いましたが,今この事実を知って,完全にい吹っ切れました。

 とまあ,28mmが好きでF2とF3が好きな私としては,この28mmレトロフォーカス最終進化形を買わないわけにはいかないとなり,中古を捜す旅に出たのです。

 しかし,このレンズはなかなか人気で,値段があまり下がっていません。ただ,販売期間が30年近くあり,程度も大きく違いますし,当然価格も変わってきます。総じて3万円くらいのものは美品であり,普通に使える良品は2万円,それ以下は何らかの訳ありという感じです。

 でもですね,今このレンズに3万円を出せるかと言えば,それはちょっと・・・割り切って新品を6万円というなら考えもしますが,中古で3万円はちょっと考えていまいます。

 探したところ,あるところに13000円でクモリなし,カビなしの商品が見つかりました。破格値だと思ったのですが,これ,フィルター枠が大きく変形していて,フィルターが付きません。ぶつけたんだろうと思いますが,これだけぶつけたという事は,光学系にも影響があるんじゃないかと思います。

 しかし,問題点として上げられているのはフィルター枠の変形のみ。なんとかなるだろうとポチってしまいました。

 商品の到着までに修理方法を考えていたのですが,均等に広げるような工具って私は1つも持っていません。探してみるとあるんですね,フィルター枠の変形を治す専用工具が。

 中国製で3000円ちょっと。これなら買ってもいいかもしれないとこれも購入。考えてみると総額17000円ほどになってしまい,探せばまともな中古が買えたかもしれません。

 届いてから早速修理です。

 いきなり広げるのではなく,少しずつゆっくり広げていきます。変形した部分だけを広げると楕円になるので,少しずつ広げる部分をずらして一周させて,均等に広げるのがコツです。

 とりあえずフィルターが付くくらいには修理出来ました。実用上は問題ない程度の変形をしつこく直そうと頑張ったのが裏目に出て,違う部分に僅かな変形がでてしまいました。余計な事をしなければという,いつものやつです。

 あとは塗装のハゲをタッチアップして完成。ちょっとの歪みが残っていますが,まあそれはフードをつけてしまいますので目立たないでしょう。

 ということで,早速D850に取り付けて撮影です。最新のデジタル一眼レフでも使う人がいるという定番レンズだけあって,性能はまずまず。最新のレンズに比べたら解像感は今一歩ですが,そんなことはどうでもいいくらい,寄れます。28mmで20cmまで寄れるというのは,大げさに言うとちょっと別世界の視野を手に入れたような気がします。面白いです。

 四隅も綺麗に出ていますし,変な滲みも片ボケもなく,心配していた故障や不良はなさそうです。以前の28mmでもよく写るなあと思っていましたが,新しい28mmはそこにモダンな感じが追加されたような印象です。良く写ります。

 長年ニコンを使ってきましたが,こんなことも知らなかったのかと笑われるような話です。でもあれですね,なかなかこういう話が尽きないのがカメラとレンズの世界で,恐ろしい沼だなあとつくづく感じます。

 これでAF-Nikkor28mmF2.8S(たしかこれも訳ありでフィルター枠が欠けてしまってました)を手元に残してあれば,すべてのレンズ構成がそろったので撮り比べとかでネタがもう1つ作れたのかも知れないですが,仕方がありません。

 こんな話,ライカにはいくらでも転がっているんだろうなあ。

 

 

ニコンF2が復活

~前回のあらすじ~

 幕速測定を偶然行ったところ,F3に比べて速すぎるという結果が出たF2。このままでは壊れるかもしれないと慌てた私は,幕速をF3程度に落とす。

 すると低速側のシャッタースピードが全然合わないのでスローガバナー分解清掃を試みるも改善せず。原因は後幕のテンションを落としたことにあるとわかり,元の幕速に戻す。

 しかし,シャッタースピード高速側も低速側も壊滅的状態。調整を試みるも悪くなるばかりとなったF2の,それまで手を入れてなかった部分にも分解の魔の手が迫る。

 シャッタースピードダイヤルの中板を外され,何度も死線を彷徨うF2。なんとかシャッター幕が走るようになったとはいえ,もう二度とシャッタースピードが合うこともない。

 どうなるF2!


 ということで,幕のテンションを元に戻したのに低速側も高速側も調整出来ません。高速側は1/2000秒のカムのすり割りを迂闊に広げてしまったせいもあり,これを元に戻そうとカムを傷つけてしまったように思います。

 低速側は,ガバナーの音がおかしいので,壊れてしまったのかも知れません。機械式と系と同じ微妙な仕組みですので,壊れるのも無理はないです。

 そこで,私はとうとう最後の手段を考えました。別のF2から部品を移植します。

 私が手に入れたF2は最初期のF2で最初のフォトミックです。Ai対応のフォトミックAが欲しくてボディが壊れているジャンクを探したところ,ボディもファインダーも壊れているというハズレを引き当て,とりあえずフォトミックAファインダーだけ修理を行いました。

 ボディは右肩を強打し変形させていますが,動作そのものに問題はなく,製造時期も少しだけ後のようです。内部の機構も比べて見ると結構違います。

 このままボディごと交換してしまうことも考えたのですが,ぶつけているのはもうフレームに歪みが出ている可能性があると考えて,部品取りにおいてあったのです。

 ここから,まずは復活出来そうにないシャッタースピードダイヤルとカムを中板ごと移植します。最初バルブや高速側が全然動作しなくなったので焦りましたが,なんとか組み直して動くようになりました。

 これで1/2000秒が無理なく出ます。次は低速側です。

 低速側も全然合いません。これもあきらめて,ガバナーを移植します。するとまあうそのように,綺麗にシャッタースピードが合うようになりました。

 理由はともかく,これらの部品が私の分解によって壊れてしまったということです。最初に幕速など確認しなければよかった。シャッタースピードがきちんと出ているんだからわざわざ幕速をいじることなどなかったのです。

 ということで,数日かけて幕速を元の速度(さらにいうとこれは部品取りF2の幕速でもある)にあわせ込み,シャッタースピードを根気よく合わせていきます。

 上手くいったらペイントで固めます。

 そして以下の結果となりました。

1 1030ms
1/2 540ms
1/4 236ms
1/8 122ms
1/15 63.58ms
1/30 33.58ms
1/60 13.38ms
1/80 12.38ms
1/125 9.38ms
1/250 4.18ms
1/500 1.94ms
1/1000 1.17ms
1/2000 0.54ms

 なんか良い数字が並んでいますが,実は1/1000秒と1/2000秒は大きくばらつきます。1/2000秒は0.3msから0.8msくらいまで,1/1000秒は0.8msから1.3msくらいまで,特に違う速度から切り替えた一発目は大きく狂います。

 この数字は一応すべてJIS規格に入っていますので,これが安定して出ているなら満足なんですけどねえ。

 この前日に測定した結果を参考までに。なんと1/1000秒がJIS規格外です。

1 969.9ms
1/2 495.9ms
1/4 227.9ms
1/8 122.9ms
1/15 62.32ms
1/30 32.72ms
1/60 13.12ms
1/80 12.12ms
1/125 9.02ms
1/250 4.04ms
1/500 1.88ms
1/1000 1.34ms
1/2000 0.67ms
 
 さらに,いじる前の状況は以下だったのです。なかなか良いですよね。
結構安定して出ていましたし,中古で無保証のF2をなにもいじらずこれだけ出ていたんですから,大したもんですよ。つくづくいじらなければよかったなあと思います。

1 1050ms
1/2 496ms
1/4 254ms
1/8 124ms
1/15 60.0ms
1/30 33.0ms
1/60 14.2ms
1/125 8.60ms
1/250 3.90ms
1/500 1.80ms
1/1000 1.00ms
1/2000 0.39ms


 ところで,今回の修理は改善がまったくなかった訳ではありません。

 1つは巻き上げレバーの予備角について。これまではロック状態から引き上げるときのトルクが小さくて,巻き上げ角一杯にレバーを巻いて,そこから指を離すと勢いでロック位置までレバーが動いてしまうほどでした。

 明らかにおかしいなあと思っていましたが,今回きちんと確認すると,ロック位置のバネを固定するネジの中板側に作られたネジ山が,なめていました。

 そのせいでバネが浮いて弱くなってしまったようです。なにせ中板のネジ山ですので巻き上げ部を全部交換しないといけなくなりました。しかし意を決して交換してみると,良い感触になりました。

 もう1つもやっぱり巻き上げレバーなんですが,ロック位置でレバーが止まらず,シャッタースピードダイヤルにレバーがぶつかっていたんです。そのせいでダイヤルを回すとダイヤルのローレットがゴリゴリとレバーの指あてを削っていました。

 ニコマートやFEでもカリッとロックがかかるのに,フラグシップのF2がこんなにルーズでいいんかいな,と思ったんですが,どうにもならないのでそのままでした。

 今回,結局原因はわからなかったのですが,ロック位置はシャッタースピードダイヤルの裾の部分にある飾り環と指あてがぶつかるところで決まるみたいで,今回は組み上げるとちゃんとロック位置が出ているようです。

 というわけで,幕速をいじらなければ,あるいはマーキングをしておいて引き返すことができれば,こんな大ごとにならずに済んだんじゃないかと思います。面倒くさがらずにマーキング,面倒くさがらずに写真を残す,これはとても大事なことだと思いました。

 部品取りのF2が役立ったのは事実ですが,やっぱり交換の必要が発生したのは私が部品を壊したせいでしょうし,いくらF2とはいえ製造後50年近くも経過したカメラですから,ちょっとしたことで壊れてしまうものなのでしょう。

 今回は怖かったのでいじりませんでしたが,シャッター幕やドラムや軸,テンションを出すスプリングもちょっと触れば交換しないといけないくらいになっていた可能性があります。今シャッタースピードがばらつくのは,それらがすでにおかしいからかも知れないと思っています。

 どちらにしても,完全メカ式のカメラとしての魅力あふれるF2を元にも戻せてなにより。結局幕速は謎のままになりましたが,もうこれ以上あれこれといじることは控えたいと思います。

 それでも,F2をかなり分解しました。シャッターが走る仕組みも概ね理解出来たと思いますし,それはよく出回っている某修理本やサービスマニュアルには書かれていないもので,しかもネットでも出てこないようなものです。おそらく修理屋さんの秘伝なんでしょうね。

 せっかく修理が出来たんですから,今度持ち出してみようと思います。

 

ニコンF2が大変なことに

 「勇者よ,本体のみ,ズームキット,28mm単勝単キットの3つから,好きな武器を1つ選べ・・・」

 私が選んだ28mmキットだけ発売延期になり,結局後の2つを選んだ人はスイスイ先に進んでいます。そう,Zfcの話です。

 そんなわけで,お盆にはZfcで遊べるだろうと思っていたあてが外れ,少し手が空いてしまいました。

 そんなおり,宿題となっていたレンタルサーバへの移行も落ち着き,記念に1つ新しい記事を作ろうと思って用意したのが,シャッター速度を簡単に測る,という記事です。

 作った治具は現在はバージョンアップしており,フォトトランジスタを2つ持ち幕速を測定する機能が加わっています。

 記事を作成する時に,幕速を測定する機能のきちんとした検証を行っていないとわかり,波形の写真撮影もかねて,F2とF3の幕速を測定したのです。

 どちらも横走チタン幕で最高速が1/2000秒というシャッターで,幕速もおそらくこの仕組みの限界値である10ms/36mmです。なので,F3とF2を比べたら,治具の確からしさと個体の調子が判断出来ると思ったのです。

 結果ですが,36mm換算でF3が8.96ms,F2は7.6msとなりました。

 F3はまあこんなもんでしょう。しかしF2はかなり高速側にズレていて,このままでは壊れてしまうような気がしました。少なくともF3と同じ程度にしないと・・・新たな宿題が生まれた瞬間でした。

・幕のテンションを下げる

 早速F2の底板を外しました。実は幕のテンションはこれまで一度もいじったことがなく,それで全速きちんとシャッタースピードが出ていたので問題ないと思っていたわけです。

 勇気を出してネジロック剤を除去してロックネジを緩めて,テンションを下げていきます。先幕も後幕も9ms程度の合わせます。簡単簡単。

 続けて高速側のシャッター速度を出していきます。これも先幕のテンションを微調整すれば簡単に合います。楽勝。

 しかし,悲劇はここから。低速側を確認すると,1秒が1.5秒と大幅に狂っています。他の速度も全滅で,全部かなり長くなっています。

 ここで私は重大な判断ミスをしました。きっとスローガバナーが悪くなったのだろう,と。


・スローガバナーを清掃

 というのも,思い当たる節があったからです。かつて分解清掃したミノルタオートコードのシャッターも,1年ほどしてからスローが遅くなったのですが,これはベンジンで清掃した後の注油が足りなかったせいでした。

 F2も時期的に同じような注油方法で修理したものだったので,きっとこれだろうと思い込んでしまったのです。

 そこで,ミラーボックスを取り外し,ガバナーを取り出しました。ベンジンで清掃,注油を行います。

 そして元の通り組み付けて動作確認を行いますが,状況は全く変わりません。

 仕方がないので,スローの調整を行います。シャッタースピードダイアルの近くに調整用の偏心ビスがあるのですが,これを回します。うーん,はじめて回すのでこわいです。

 調整は案外簡単に済み,きちんと1秒が出ます。しかし,1/4秒だけが全然だめで,ガバナーが動作していません。困りました。

 ガバナーの取り付けビスもネジロックが行われているので,その跡に従って組み付けたのですが,どうもこの取付位置も調整の必要があるという話ですので,なんどか位置を調整します。

 しかし上手くいきません。1秒が出るようにすると1/4秒が機能しません。1/4秒が動くようにすると全速遅めに出ます。

 さあ困った。

 ふとガバナーの音を聴いてみると,随分弱々しい音です。まてよ,ガバナーを回しているのは,なんの力だ?

 そう,後幕のテンションです。なるほど,これが弱すぎるせいでガバナーを回しきれず,速く回せないのでしょう。そこで1秒が出るように後幕を調整すると,もとの幕速に戻ってしまうのでした。


・幕速を戻して再調整

 そこで幕速を戻すことにしたのですが,馬鹿な私は元の位置をマーキングしていないばかりか,分解前の写真さえ残していません。こうなるともう手探りです。

 幕速を出して,まずはスローを調整します。調整ネジをいじった後ですので元の状態に戻せる保証はありませんでしたが,なんとか低速側は調整終了。

 今度は高速側ですが,こちらがボロボロです。そこでこちらも調整用のビスをいじって調整しますが,これがまずかった。

 もう手に負えないくらいに,ボロボロになっていきます。1/1000秒を合わせると1/2000秒が短くなりすぎです。

 1/2000秒の微調整は,カムのスリットにマイナスドライバーを突っ込み,少しずつ隙間を広げて調整するそうなのですが,広げると高速になるということですので,私の個体は広げすぎていることになります。

 分解なんかしなくてもスリットの隙間を縮めることが出来るに違いないと思いましたが,上手くいきません。


・シャッタースピードダイヤルの中板を外す

 こうなるともう,このカムを取り出すしかありません。そのためにはシャッタースピードの中板を外す必要が出てきます。これも初めての分解です。

 ビスを4本外してみたのですが,まだ何かに引っかかっているようで外れません。少し無理を外れたので,早速カムを押し込んで縮めたのですが,どれくらい縮んだかは組み立てるまでわかりません。

 ということで組み立てますが,苦労して取り付けたのに,シャッターが走ってくれません。かといって巻き上げも出来ません。やばい・・・ロックしてしまいました。


・巻き上げ中板を外す

 巻き上げが出来ないか,シャッターがリリースされないのですから,さらに分解を進めるしかありません。まず巻き上げレバーの中板を外してみますが,こちらは異常なし。


・先幕リリース爪を探す

 そうなると先幕をとどめている爪を探していくことになります。どうも底部にあるようで,ここを勇気を出して分解します。するとすでにリリースされた状態になっていました。

 改めて幕を見ると,走った後の位置になっています。ならなんで巻き上げが出来なかったのかわかりませんが,もう一度試してみると巻き上げ出来るじゃありませんか。

 元のように組み上げて,ようやくシャッターが動くようになりました。しかし,低速も高速も破滅的に狂っています。


・そして今ここ

 泣きそうになりながらもがいてようやく,数日前の状態に戻りました。まだシャッタースピードは全然出ておらず,1/2000秒は時々開かなくなっています。

 幕速に疑問を持つことがなければ,以前のような完調のF2を使えたのにと後悔しても遅く,あちこちが連動して悪くなってゆく状況は,まさに高度な次元でバランスしているメカ設計のたまものなんだろうと思います。

 頑張っても最初の状態に戻すだけで,残ったものは私の分解の知識だけという状況に,どうもやる気も下がってしまいがちですが,F2を失う事に焦りを感じては,自分を奮い立たせて調整に挑むことにします。

 それにしても,サービスマニュアルに書いてある通りに調整が進みませんし,組み立ても難しいなと思います。

 F2の分解修理や調整は世界中で行われているはずですが,詳しい情報がなかなか見つかりません。素人さんがチャレンジしないせいなのか,プロがノウハウを秘密にしておきたいからなのか,販売されている修理マニュアルのような本でも,F2は分解される程度が浅くて,あまり参考にならないです。

 もう一台ある部品取りのF2は,現時点ではうちで一番程度のいいF2になっていまいました。もしかしたらコイツが主役に抜擢されることもあるかも知れません。


・すっきりしないこと

 すっきりしないのは,結局幕速はどうすればいいのか,です。治具がおかしいという可能性は大いにありますが,F3とF2が一致するようにするというのは正しいアプローチのはずで,それやるとガバナーを駆動出来ないというのは,何かがおかしいような気がします。

 良いか悪いか別にして,とにかくかつての完調の状態に戻すことを目標にしていますが,散々適当に分解した結果,そこにたどり着かないくらい精度が落ちているということを思い知らされています。

 なんとしないとなあ。

 

ORWOのUN54とGR1の修理

 たまりに溜まった未現像のTRI-X(15年ほど前にヨドバシで購入した長巻)を,意を決してようやく現像を始めた結果,あいたパトローネがゴロゴロ発生,ようやく20本ほど確保出来たところで,次に控えるORWOのUN54を巻き終わりました。

 どうしてだかわからないのは私の知識不足と経験不足なので恥ずかしい限りですが,とにかくこのUN54のグラデーションが好印象で,白と黒のレンジの広さと滑らかなグラデーションを見て,ようやくこれを手にしたとしみじみ思うのです。

 いやね,きっと他のフィルムでも上手く扱えばこういうネガって作れるはずなんだと思うのです。それは私が知らないだけの話であって,決してフィルムの個性に逃げてしまったらダメなんだと,それは強く思います。

 でも,TRI-Xを温度や時間を変えてもこんなネガにはならないですし,Plus-Xにしても眠いだけのネガになります。似たようなフィルムであるイルフォードのHP5やFP4でも同様で,白と黒のレンジを広げれば粒子は荒れて,グラデーションも美しくありません。

 ほら,1960年頃までの自動車や鉄道車両,大型の工業製品などの写真で,カタログに載せたりするような形式写真って,まるでイラストやCGのような精緻な感じがあるじゃないですか。あれってきっと大判で撮っているんだと思うのですが,高度成長以降はああいう精緻な写真がなくなってしまい,我々が目にする普通のものに切り替わったような気がするわけです。

 以前少し昔の写真について調べたのですが,よく分からないまま終わってしまったので大ハズレかも知れないのですが,何が言いたいかと言えばORWOのUN54というのは,こういう精緻な写真を簡単に撮影出来る,私にとっては魔法のフィルムであるということです。

 最大の難点は長巻しかないこと,それと購入出来る場所が極めて限られていることですが,普通の撮影と普通の現像でこれだけ沈んだ黒と抜けた白,そしてその間を滑らかに繋ぐ濃淡の変化を手に入れられるというのは,私にはちょっと他を思いつかないのです。

 出来る事なら中判があったり,そこら辺でも手に入る有名なフィルムだといいなと思うのですが,みなさんどうしてらっしゃるんでしょうね。

 閑話休題。

 TRI-Xは使い慣れたフィルムで結果が予測出来ることがメリットですし,私にとってはISO400を常用するきっかけとなった偉大なフィルムですが,今のして思うと私好みの画質ではなく,なんか無理して使ってたような気もします。

 そんなフィルムで既存のカメラやレンズを評価してきたわけですが,このORWNのUN54を使ってみたら,なんとまあ目の覚めるようなモノクロ写真が上がってきます。そしてこう思う訳です。これこそが本当のレンズの実力ではないのかと。

 なら,これまでどうも苦手意識があり,でも世の中の評判は抜群というレンズを,このUN54で試すべきなんじゃないかと考えるわけで,その時真っ先に閃いたのが,GR1です。

 GR1って,とにかくレンズがよいと言われています。でも私はそんな風には思っておらず,同じ28mmならSMC Takumar28mmF3.5が最高だと思う偏屈です。

 GR1はそのコンパクトさと軽快さに神髄があり,一眼レフを振り回すことに慣れた私にはそれほどのメリットとは思わずここまで来てしまいました。もちろん,レンズの性能が一定の水準を満たしていないとこういう話にすらならないので,28mmならなんでもいいかといえば,そんなことはありません。

 でも,出てきた画像はなんとなく凡庸ですし,そんなに切れ味も良くなく,透き通るような透明感もないですし,発色も今ひとつと,当時らしい写真になりがちだなと思っていました。TC-1なんかだと,どんな感じなんでしょうね・・・

 この印象は現在のデジタル化したGRでも同く変わらず,GRで撮った写真はどこか陰鬱で,華やかさに欠け,その代わり何かしらのメッセージを仕込むポケットが備わっているような気難しさがあり,私にはちょっとしんどいわけです。

 こういう傾向がずっとぶれないことはすごいと思いますし,さらにいうとこれを支持するファンが市場を維持できるくらい存在することも驚きで,一体写真のファンというのはどんだけどんだけレベルが高いのかと,見上げる高みに私などはため息が漏れます。(これは皮肉ではありません)

 何事も経験かと若いときは思っていましたから,理由も理屈もなくがむしゃらに立ち向かったときもありましたが,もうそんな年齢でもありません。終わりが見えてくれば,今あるもので何とかしようとまとめに入るもので,手元にあるものが僅かでも毎日新しい物に出会える若さが,とても羨ましいです。

 しかし,チャンスです。GR1にUN54です。もしかしたら,GR1の真実を見る事になるかも知れません。ずっと憧れた写真がいよいよ手に入る可能性があります。

 そんなワクワクで撮りだしたGR1。電池が切れていました。

 電池を購入して動かして見ると,案の定LCDが死んでいました。

 のみならず,ファインダーのブライトフレームも死んでいました。

 まあGR1の持病ですし,予想していた事ではあったのでそんなにショックでもなかったのですが,ファインダーは自分のGR1だけは台上だろうという根拠のない盲信があっただけに,落胆もそれなりにありました。

 一方で,なにか吹っ切れました。

 LCDで見たい情報ってなによ,そもそも煩雑な割には役に立つ情報が少ないGR1のブライトフレームって必要か?という根本的な話に立ち返ったところで,なら壊してもいいから,一発修理をやってみるかと思い立ったのです。

 以前,LCDについてはフレキを基板の接着を復活させるために,100℃くらいのコテで圧着して修理したことがありました。しかしこれは暫定的な物に過ぎなかったことがはっきりしています。

 ならば,この接着をやり直す,具体的にはこの接着剤を新品のものに帰ると言うことやればいいのではと思ったのです。

 そのために必要なのは,新品のLCDユニット。でもそれはもはや入手不可能です。でも同じような事を考えるのは海外にもいらっしゃるようで,有名なiFixitにも同じ例が出ていますし,台湾あたりでは修理業者もいるようです。

 iFixitの記事では,この手のフレキの接着に使われる定番の両面テープ,3Mの9703が使われていました。Z軸電気導電性テープとか,異方性導電テープとか言われている特殊なテープで,電気を通すテープなのですが,電気を通すのは厚み方向(Z軸)だけで,縦と横という平面の方向には電気を通しません。

 ということは,基板とフレキをただ位置を合わせて接着しさえすれば,端子の接続が一発で出来る上に,固定まで出来ちゃうと言う恐ろしい発明です。

 かつて,ゼブラゴムと言われた導電ゴムがありました。あれは液晶と基板を繋ぐ物だったのですが,電気を通すゴムなのになんで端子同士がショートしないのかと思った方も多いでしょう。

 あれも実は異方性導電ゴムと言われていて,横方向は絶縁されていて端子のショートはなく,縦方向には導通するという性質があるのですが,それの両面テープバージョンが,この9703というテープなのです。

 GR1のLCDのフレキはカーボンタイプで,電流は流せませんが薄く作れますし,曲げにも強いです。ただしハンダ付け出来ないですし,コネクタを使うことも難しいですから,実質この異方性導電テープで接着するしかありません。

 ただ,粘着テープですから,いずれ剥がれてきます。ならば交換すればいいでしょう。

 しかし問題が2つ。そもそも9703って手に入るのか,もう1つは交換する(リワークする)ことが出来るのかということです。

 入手については,最初は少量は難しいかなと思っていましたが,ありがたい事にスイッチサイエンスに少量の取り扱いがあり,簡単に入手出来ました。

 次にリワークですが,これはかなり難しそうです。基板から剥がすときに,フレキ側のカーボンを剥がしてしまいます。そうなるともうこのフレキはアウト。二度と使えません。

 やってみるしかないよなと,さっさと上カバーを外して,フレキを剥がしていきます。案の定,カーボンを剥がしてしまいました。幸い,フレキその物は無事でしたが,これではもう改悪になるかも知れません。

 でももう進むしかありません。綺麗に剥がしてアルコールで糊を落とします。9703を切って基板に貼り付け,位置を確認しながらフレキを押さえつけます。

 しわになったりしてなかなか美味くいかず,10回ほどもやり直したと思うのですが,見た目には完璧でも全く表示が出てきません。指で押しても出てきません。

 これは根本的に何かを間違っているのかも知れないと焦りましたが,両面テープを使わず押しつければ綺麗に表示が出てくるので,フレキの問題ではなさそうです。

 それならと綺麗に接着したあと,加熱したらどうだろうと100℃ほどで熱してみました。最初の10秒ほどは反応なし。しかしその後はぱーっと表示が出てきました。

 9703のデータシートには,圧着だけでいいと書いてあったように思うのですが,場合によっては熱を加えることも必要かもとも書かれていました。

 熱はフレキも基板も傷めるのでやりたくなかったのですが,もう仕方がありません。30秒ほど加熱して,LCDは完全復活です。

 ブライトフレームは深刻で,なかなか上手くすべてのセグメントが点灯しません。キリがないので250と500の表示は薄いままですが,ここで手を打ちました。

 一晩放置して確認したところ,悪化するようなこともなかったのでそのまま組み上げて,念願のUN54を装填しました。

 今のところ問題なく動作していますが,まあもって半年,ってとこでしょう。今度はフレキが持たないでしょうから,もう一度修理するという事が出来そうにないですし,次ダメになったらLCDはあきらめるということになりそうな気がします。

 1990年代以降の工業製品というのは,長く使えるような素材だけで作られていなかったり,あるいは交換可能なものになってなかったりするので,ほかがどんなに優れていても,たった1つの安い部品で全部がダメになったりします。

 その安い部品のおかげで,その当時は高性能と低価格を満喫できた訳ですから文句も言えないのですが,いい物ほど残したいわけで,残す事も性能1つのだと認めてもらえるような時代になったらいいなあと,そんな風に思います。


 

新しいレンズをお迎えする

 ちょっと忙しいこともあって更新をサボっていたのですが,レンズを2本お迎えしておりました。どちらも試写は済んでいるのですが,現像がまだなので結果をレビューできません。

 ん?現像?

 そう,今回の2本のレンズは完全に銀塩向けで,(少なくとも私は)デジタルで使えないのです。こういう贅沢な(無駄な)投資は久方ぶりです。

・Super-Multi-Coated Takumar 105mm F2.8

 M42の中望遠です。85mmでもなく,135mmでもない,中途半端な105mmですが,私はなんとなくこの焦点距離に縁があり,苦手意識もなかったりします。むしろ85mmのあの距離感が苦手なくらいです。

 Takumarはどの焦点距離もハズレなし,どれもそつなくまとまっているということと,工業製品として良く出来ているので耐久性もあり経年劣化も少ないという印象があります。

 というより,1980年代の日本の工業水準で作られたM42のレンズですから,そりゃ良いはずですよね。ニコンでいえばF2やF3,キヤノンでいえばF-1の時代ですもん。

 ということなのですが,中古については難しいものがあります。例えばですね,Ai-Sニッコールをフジヤカメラで買うとします。最近まで新品が買えた現行品だったりすると,新品との比較で程度が示されています。しかし,M42のTakumarの場合,1960年代のクラシックレンズとみるか,まともなボディが存在しないジャンクレンズとみるか,あるいはまともな中古とみるかで,その程度の表示の意味が変わってくると思っています。考えすぎですかね。

 クラシックレンズとみれば,程度の悪いのは当たり前,写りも最新のレンズに比べて?なものもあるわけですが,それをわかった上で手を出す高級品の扱いです。値段が写りと直結しません。一般的な写真レンズの実用度と無関係に価格なわけです。

 ジャンクの場合やもうちょっとややこしく,名前の通りジャンクである場合もそうですが,結局の所まともな値段で売ることが出来ないならどんな理由でもジャンクです。

 壊れている,良くわからんので動作を確かめられない,というのは当然として,不人気,数が多すぎる,というのもジャンクになります。

 Takumarも,ちょっと前までこの扱いでした。

 でも,ここ数年でえらい人気が出ているようです。ミラーレスが一般化し,様々なレンズが楽しめるようになったこと,あるいは銀塩ブームでM42のシステムの人気が再燃したことがあると思いますが,その中でもTakumarは現代的なレンズで,クラシックレンズの味わいは薄く,また数もあるせいで安く,オールドレンズ入門用として人気があるのでしょう。

 ですから,私がtakumarのレンズに1万円もの大金を躊躇なく払ったことに,自分が驚いていたりします。

 いや,F2.8という明るさは,ファインダーが暗いSPやES2では限界ギリギリの明るさでしょう。135mmはフィルター径が変わりますし,105mmは大きさも手頃で,うちには被るレンズもありません。(強いて言えばタムロンのSP90mmF2.8マクロがそれですが,なんとM42のアダプトールを持っているのでES2に開放測光にも対応しちゃうのですよ)

 とはいえ,最初は135mmF2.8と勘違いしていたのは内緒です。

 届いた105mmF2.8は,昔なら5000円だよなと思うようなレンズです。程度は良く,F2.8の中望遠らしい大きな前玉がチャーミングで,SPやES2によく似合います。

 私にはとても適当な焦点距離なので,撮影が楽しいのは本当で,背景の省略が自動的に行われる幅で,楽ちんだなあと思います。

 現像したネガを見てみると,やや線が太い感じです。背景のボケは柔らかく,綺麗だなと思いますが,絞ると急に説得力が出てくる印象です。F5.6くらいが美味しいんじゃないでしょうか。

 Takumarの不人気レンズと言えば,135mmF3.5,200mmF4ですが,これらも写りは悪くありませんし,とても素直で良いレンズだと思います。105mmF2.8もこの不人気レンズの系列なんでしょうかね。そのわりにはちょっと高かったかなあ。


・7Artisans 28mm F1.4 ASPH ライカMマウント

 なにを血迷ったか,28mmF1.4ですよ,しかもMマウント!

 実のところ,中華レンズメーカーの格安レンズが面白そうで,Fマウントの私は指をくわえてみている他ありませんでした。Eマウントはいいですよね,無駄遣い出来て。

 で,私は電気回路を入れ換えて復活させたミノルタCLEに特別な想いを持っているわけですが,D850を買うときの資金作りに15mmF4.5を処分したことを,ちょっと悔やんでいたりします。

 まあ,使用頻度も低く,持ち続けていても同じだったろうと思いますから買い直そうとは思わないのですが,それでも40mmと28mmの2本だけではちょっと面白くありません。新しいレンズがとにかく欲しい,そんな欲求が頭をもたげました。

 CLEは28mmと40mm,そして90mmのレンズでファインダーに枠が出ます。出来ればこの焦点距離で使いたいのですが,そこは我慢して35mmか50mmを買ってみるかなと思って探していたのです。

 ちょうどいいと思ったのがコシナのフォクトレンダーですが,ちょっとお値段は高め。デジタルで使えないレンズに出す金額ではないと思った事と,35mmも50mmもCLEらしくないと思ったので,やめました。

 そうすると28mmあたりですが,ここにはお気に入りのColorSkopar28mmF3.5が定位置にいます。F3.5でも28mmは絞って使いますし,レンジファインダーなので暗くても関係ありません。

 そう考えたのですが,これがF1.4だったらどうなんだろう,と思ってしまったから大変です。F1.4なら全く別の写真が撮れそうです。

 本家のライカなら100万コースのレンズですが,中国製なら6,7万円という破格値です。でも,中華レンズの7万円出すというのはなかなか冒険で,そういう事が出来る人こそ本当の金持ちなんじゃないかと思ったほどです。

 この7Artisans 28mm F1.4 ASPHというレンズ,Mマウントのくせに大きく重く,相手を威圧するようなレンズです。

 でも,面白そうです。探してみると,なぜだかamazonで52000円というのが偶然見つかりました。日本の代理店を経由しない並行輸入物です。あまり迷わず買ってしまいました。翌日には売り切れていました。みんな目ざといですよね。

 届いたレンズは心配をよそに新品で,不良もなく問題のない製品でした。同時に買ったフードも出来は悪くないのですが,いまいち格好よくありません。

 作りは良く,フォーカスも滑らかで大したものだなと思うのですが,それでもローレットの指の引っかかりに雑さがあったり,塗装のハゲがちらっと見つかったりと,ツメの甘さは感じます。

 CLEとは問題なく装着でき,撮影も気分良く出来ました。でも,CLEのコンパクトさに大きなレンズというのは,どうもミスマッチだなと思っています。

 こちらはまだ現像も終わっていないのでここから先は後日となりますが,実はこのレンズをCLEに取り付けていたとき,派手に転んで(転がって)しまいました。大したけがもなく,カメラもレンズもどこにもぶつけず,守り抜いたことへの達成感は大きいのですが,現像してみたらどんな風になっているんでしょうね。

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