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10MHzの基準クロック

  • 2011/09/14 17:34
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 もう20年近く前のことですが,その当時秋月電子のキットの定番,周波数カウンタキットのフラグシップであった,8桁周波数カウンタ2.4GHzプリスケーラ付き,を買って,さくっと作ったことがあります。

 当時の秋月電子で5000円を超えるキットというのは,結構手強いキットでした。その上貧乏学生にとって,この出費はちょっとしたチャレンジでした。

 キットの概要はICM7216BというインターシルのユニバーサルカウンタLSIが主役で,これにスタンレー製の高輝度7セグメントLEDが8桁で,その値段のほとんどを占めていたように思います。10MHzまではこのカウンタICで直接カウント,10MHzから2.4GHzまでは1024段のプリスケーラを通してカウントするという仕組みでした。

 10MHz以上の場合は表示を1024倍しないといけないことになり,これはかなり面倒という事から,このキットでは10MHzの源発振を1000/1024倍した9.765625MHzに切り替えるという工夫をしてありました。

 しかし,どちらも普通の水晶発振子を使っており,せっかくの8桁カウンタでも,その精度はせいぜい6桁から7桁ではなかったかと思います。

 当時から精度を上げるには源発振を高精度化するしかないと思っていましたが,安価に手に入るTCXOは12.8MHzでしたし,9.765625MHzに至っては手に入るかどうかすら怪しいものです。キットの説明書にあるように,そこそこ発熱するICM7216をオーブン代わりに水晶発振を安定させ,調整はテレビのカラーサブキャリアを使うという方法で完成させました。

 今にして思うと,当時の秋月のキットというのは難易度が高いとはいえ,素人の設備でもなんとか完成まで持って行けるように作ってあったんだなと思います。他のキットでも,最終的に手詰まりになることがなかったですからね。

 せっかく作った周波数カウンタでしたが,低周波の周波数はオシロスコープで測定するようになりました(2465Aは300MHzあたりまで観測出来ますから)し,その後私はGHz帯域の高周波など全く手がけなくなりましたから,結局ほとんど出番がないまま20年が経ちました。

 ところが先日手に入れたマルチメータの周波数カウンタ機能が案外便利だったのです。ただ残念な事にこの機能が1MHzくらいまでしか使えないため,少なくとも10MHzくらいまでは測定出来る環境が欲しいと,この周波数カウンタキットを使えるようにする方法を考えるようになりました。

 当時の鉄製のケースはもうボロボロですし,それはまあ作り直すこととして,問題は精度です。アナログテレビ放送が終了したこともあって高精度な周波数が手に入れにくくなっている昨今,どうにか10MHzの高精度発振器を手に入れたいなあと思っていた所,なかなかいい方法がありません。

 幸い,手持ちに20年ほど前に秋月で買った12.8MHzのTCXOがあまっていて,これを使って10MHzを使えるようにする方法を考えていたところ,google先生は偉大な先輩の製作例を探し出してくれました。

 12.8MHzを1/128し100kHzを作りこれを基準とし,10MHzのVCO出力は1/100して,100kHzがロックするようにPLLを作っている例でした。PDにはTC5081という80年代の定番を使っています。ぱっと見るととても簡単な回路です。

 しかし,面白い工夫があります。VCOの可変範囲が広いと,ロックした後でもジッタが多く,とても周波数カウンタの源発振には使えないそうで,水晶発振回路にバリキャップを付けて,狭い範囲で周波数が可変するようなVCOを採用しています。

 もともと,10MHz固定で周波数の可変をしないPLLですので,VCOの可変幅は大きい必要はなく,ジッタ軽減のために狭い範囲で可変するという方法は理にかなっています。そしてループフィルタのカットオフを10Hzと極端に下げ,位相余裕の十分な確保と,100KHzのカットを行っています。なるほど,こういう設計もあるのかとPLL初心者の私は感心したわけですが,その代わりロックアップにかかる時間は長くかかることになります。

 周波数を可変するシンセサイザではないのでロックアップが遅いことはそれほど問題にならず,またアマチュアが使うものですので,なにを重視するのか,という設計の目標の結果であると理解すると,なるほどと頷けます。

 部品点数も少なく,実用的な価値もあり,経験値も稼げますので,是非作ってみたくなりました。早速サトー電気に部品を注文です。

 TC5081はさすがに古いICで,もうとっくの昔にディスコンになっています。スタンダードCMOSと同じようなプロセスで作られているので,果たしてこの遅いPDが,どれほどの性能を持っているのか私にはわかりません。

 ふと思ったのは,PLLの定番である4046は使えないのか,と言う事です。VCOは使わないとして,PDくらいは使えそうでしたが,PLLの素人がいきなり応用をやってしまうと失敗するので,まずは実績ある回路できちんと作る事にします。

 これで正確な10MHzが得られるとよいのですが,なにせ20年前のTCXOを使いますので,温度特性は別にしても,絶対値が狂っているかも知れません。どっかで確認しないといけません。

 仮にこれが正確だったとして,次に問題となるのはプリスケーラを使った場合の源発振である9.765625MHzが問題です。これはもう,10MHzの源発振で9.765625MHzを調整するしかありません。


 さて,揃った部品を数えてみると,案外少ないなと印象です。小さく作りたいので出来るだけチップ部品を使って組み立てます。

 最初,バリキャップ周辺の配線が間違っていたのですが,修正をすると一応100kHzでPLLがかかってくれているようです。

 問題だなと思った事がいくつかあり,まず秋月で25年も前に買ったTCXOの12.8MHzが全く信用出来ないということ(仮に1ppm/年として,25ppmずれているわけですから,そこら辺の水晶発振器と同じくらいのズレになってるわけですよ)が最大の問題です。

 これは,高精度の測定器を使ってTCXOの調整をするしか方法がありません。

 次に,PLLの収束時間が結構長く,数秒かかるということです。もちろん,数秒たてば安定してくれますが,それもオシロスコープで見た限りの話です。8桁の周波数カウンタの基準クロックとしてふさわしい物かどうかは,ちょっと怪しいです。その分,ジッタは少ないのでしょうが。

 最後に,PLLのロックを示す端子の動作が期待はずれだったことです。PLLがロックしたらLEDが点灯するように,TC5081のPhaseOut端子を使ってみたのですが,ロックしたらHighになると言うより,ロックが外れてもLowにならず,いわばLowになる時間が長くなっているだけですので,LEDがちょっと薄暗くなるという感じです。

 これではロックしたかどうかなんて,わかりません。せめて,完全にロックが外れたときにLEDが消えて欲しいのですが,今ひとつです。

 ということで,さっと組み立てが終わっても,今ひとつ完成に持っていくことが出来なかった私は,今ひとつ達成感を感じることなく,休日を過ごしたのでした。

これまで見えなかったものが見える感激

  • 2011/09/12 17:24
  • カテゴリー:make:

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 夏休みの工作に作った歪率計&低歪み低周波発振器ですが,先日のお休みで完成としました。

(1)ノイズ対策
 アナログ回路でノイズ対策は大なり小なり必要なものですが,今回は信号の切り替えにせっかくリレーを使っているのに,そのリレーがシールドされていないため,指でリレーを触ると出力の値がパラパラと変化します。

 気分の物かもしれませんが,リン青銅板でリレーを覆って,シールドしました。全てのリレーを対策しましたが,案外リレーの発熱があって,リン青銅板のケースがほんのり暖かいです。

 このケースをしっかりとGNDに落とし,さらに鉄製の板を被せました。基板の半分ほどを覆うほどの鉄板でしたが,これで手をかざしても出力値が変わるという状況はほとんどなくなりました。最初から金属ケース入りのリレーを使えば良かったのかもしれません。


(2)値がレンジで異なる
 この歪率計は10%,1%,0.1%の3レンジを持っていますが,特に1kHzでは1%と0.1%で示される値が大きくずれています。1%の方がかなり小さく出るので,私はこちらを勝手に信用していましたが,どうして値が異なるのか,異なった場合どちらの値を信じるべきなのかに決着を着けないとまずいわけです。

 ふと思ったのですが,例えば0.0005%の歪み率の場合,1%では0.5mV,0.1%では5mVを示すことになります。なら,入力をGNDに落として0Vとした時,それぞれのレンジで本当に0Vとなってくれるのでしょうか。

 やってみると,なんと1%レンジは0.24mVを示しています。これが残留ノイズと考えると,この残留ノイズに対して十分大きな高調波でないと,信用出来ないということになります。そりゃそうですね,0.0005%の歪みなら,1%レンジで0.5mV,0.1%レンジでは5mVの出力です。どちらにも残留ノイズが0.24mVあるとしたら,どちらを信用出来るかなど,明らかです。

 ちなみに,TrueRMSのデジタルマルチメータDL2050ではレンジで異なる値を示していても,アナログの電子電圧計だとレンジに関係なく,どちらもだいたい0.0006%位を示してくれています。ノイズが2つの電圧計の値にどれくらいの差を作るのかは,スペアナを使って見てみないとよく分からないのですが,とりあえず0.1%レンジが信用出来るというのは正しい様に思います。

 これで,歪み率が一桁悪い100Hzと10kHzで,1%レンジと0.1%レンジで値が揃うことの理由もはっきりします。よって,回路の問題ではなく,1%レンジで測定出来る範囲を大きく下回る値だったというのが,正解です。

 ただ,これもシールドを行う対策を行ったから,残留ノイズを0.24mVまで減らすことが出来ました。


(3)低周波発振器の最終的な歪み率

 上記を踏まえ,低歪み低周波発振器の最終スペックを確定させました。

。発振周波数・・・100Hz,1kHz,10kHzの切り替え式
・周波数偏差・・・±0.2%以内
・出力電圧・・・約8.0Vrms
・歪み率・・・0.0005%(1kHz)
       0.0022%(10kHz)
       0.0031%(100Hz)

 1kHzの低歪みが光ってます。これはかなり満足な値です。10kHzや100Hzも決して悪い数字ではないと思いますが,これくらいなら普通に作れば達成出来てしまう数字ですし,1kHzとの差が大きいことも,ちょっと残念です。

 それと,私が使うという限定の回路ですので,特に100HzでのAGCの収束時間が10秒以上かかります。下手をすると30秒ほどかかることもあって,振幅が安定しないうちに測定を始めることがないように,気をつけなければなりません。

 ちなみに,VP-7201Aは1kHzで0.001%程度,10kHzと100Hzは同じくらいの値でした。メーカー品に勝利したと思うなかれ,VP-7201Aはこれを10Hzから500kHzの連続可変でやっているのですから,たいしたものです。

 そうそう,まともな検討をして訳ではないのであくまで参考に,ですが,スペック上はNJM4580Dよりも低歪みなLM4562に交換してみたところ,NJM4580Dよりもずっと悪い数字(倍近く悪い)が出てきました。

 それでも十分低歪みといえばそうですが,スペックを誇らしげに歌う最新世代OP-AMPで,それなりに高価なものだけに,この結果には拍子抜けすると共に,NJM4580DというJRCの実力の高さを思い知りました。

 まあ,発振器の歪み率は負荷のドライブ能力なんかにも影響があるので,NJM4580DとLM4652の単純比較は出来ませんが,安くて高性能でタフなNJM4580Dのバランスの良さには,感心しました。


(4)歪率計のクセ

 ここまで分かったところで,実際に歪率を測定してみることにしました。

 まず,気をつけないといけないことがあります。それは,発振器の出力レベル調整によって,発振器の歪み率が大きく変わってくるのです。単純なボリュームを使っているのですが,ここでそんなに大きく歪むとは考えられず,おそらくインピーダンスが変わることで,ノイズを拾うのではないかと思っています。ノイズは高調波ではありませんが,フィルタをすり抜けますので見た目の歪率を悪化させます。

 同じ事が,歪率計の入力レベル調整のボリュームでも起きているようです。

 フィルタをスルーさせた電圧を1Vrmsに調整してから,フィルタを通した高調波の値を測定すれば,その電圧の値がすぐ歪み率として直読出来るのですが,この1Vrmsにするためのボリュームを絞ると,歪率の値が随分悪化します。原因が同じかどうかわかりませんが,1Vrmsにするのは直読するという目的のためであり,あとで計算するという手間をかければ,別に何ボルトでもいいわけです。

 使い方の工夫として,出来るだけツマミの位置は半分を割らないように工夫をするということが大事です。大きな電圧を測定するときは出来るだけ内蔵の-20dBアッテネータを使用するのがよいようです。

 最後に,これはクセでもなんでもないのですが,この発振器と歪率計はGND基準で動くものですので,BTLのパワーアンプを接続すると,アンプの出力がショートしてしまいます。私はこれに気が付かず,うっかりHT82V739のアンプの歪み率を測定しようとして,出力が出てこないことにしばらく悩んでいました。1W位の小型アンプで良かったです。


(5)実測例1・真空管アンプ

 と言うことで,パワーアンプの実測例です。

 まず最初は,10年ほど前に自分でゼロから設計し,途中でNFBの帰還率を調整した,6V6シングルアンプの歪率です。きめの細かい,しなやかな音がするので気に入っていますし,6V6という小型出力管がなぜ今でも愛されるのか,よく分かったアンプでした。また,スクリーングリッドの電圧の設定と安定化が5極管の使い方のキモであると知ったのも,このアンプでした。

 出力が1W+1W程度の割には猛烈な発熱をするアンプで,私以外の人は怖がって使いませんが,本音を言うと私も怖いです・・・

 そのアンプの歪み率です。負荷は8Ωです。

・0.1W
0.232%(1kHz)
0.486%(100Hz)
0.224%(10kHz)

・0.5W
0.594%(1kHz)
1.49%(100Hz)
0.51%(10kHz)

・1W
1.03%(1kHz)
3.24%(100Hz)
0.71%(10kHz)

・1.5W
4.9%(1kHz)

 1.5Wの測定はちょっと怖いのと,1kHzで5%にもなっているので,100Hzと10kHzでの測定はしませんでした。これを見ると,1Wと1.5Wの間,おそらく1.2Wあたりで3%になっていると思われます。大体設計通りですね。

 そして,常用域である0.5Wくらいで,0.5%前後という値は,とても真空管アンプらしい値で,なるほどなあと思います。今回はリサージュを出しませんでしたので,偶数歪みか奇数歪みか確認していないのですが,まあこのくらいならいいんじゃないでしょうか。100Hzでの悪化が気になるところです。


(6)実測例2・MOS-FETパワーアンプ

 奥澤清吉先生の「はじめてつくるFETアンプ」に掲載されていた,40W+40Wのプリメインアンプを高校生の時に作った事は何度か書きましたが,あれから25年,一度も歪み率を測定したことがなかったのです。

 というか,ダミーロードを繋いで,最大出力も試したことがありません。

 今回,そんなことを考えながら,測定の準備をしていました。時間がなく,1KHzだけの測定になってしまったのが残念ですが,なにせアンプのセッティングを場所から長いケーブルを這わせて測定しましたので,なかなか手際が悪く時間がかかったのです。

 負荷は8Ω,Rchだけ測定しましたので,電源の負担は軽いはずです。これを2chで同時に行ったら,もっと値は悪化することでしょう。

・MOS-FET(1kHz)
0.1W 0.016%
0.5W 0.023%
1.0W 0.024%
3.0W 0.022%
5.0W 0.027%
10W 0.17%
20W 0.255%
30W 0.324%
40W 7.8%

 うむ,初めて値を取りましたが,悪くない数字ですね。5Wまでの値が0.03%以下ですので,常用域は変化が少ない,安定した性能を維持しているようです。

 一方で30Wまで0.3%程度と,これもかなり粘っています。30Wっていうとかなりでかい音ですよ。それで0.3%ですから,ちょっと安心しました。

 そして40Wになると,7.8%と急激に悪化します。さすがハードディストーションの半導体アンプだなと思いますが,これを見ると3%の歪み率は大体35W位になるような感じですから,まあ設計通りということになるでしょうか。

 本当は100Hzで低域のパワー感,10kHzで高域の純度の目安が分かるものなのですが,機会があればまた測定したいところです。


 ということで,歪率計が手に入ると,これまでどうやっても見えなかった領域の素性が見えるようになりました。うれしいですね,自作の測定器がこんな風に私の新しい目や耳になってくれるなんて。

 電圧や電流の測定は基本ですし,波形の確認も必須です。しかし,直線性が大事なリニアアンプにおいて,歪み率というのはとても大切な値です。しかしその値を測定するには,ノウハウも必要だし,高価な機材も必要です。私のように自作をすれば安くは出来ますが,膨大な手間がかかる上に,必ずしも実用レベルの物が完成するとは限りません。

 聴感上の良し悪しに感覚的に頼ることも否定しませんし,人間の耳はかなりの違いを聞き分けられるものですが,他との比較や経年変化などを評価する場合,やっぱり数値化できないとだめです。

 なかなか大変な工作でしたが,一応アンプの歪み率を測定出来るところまで来たことで,これにて終了です。

 今後のこの歪率計でしたいこと,ですが,まずは300Bシングルアンプと5998のプッシュプルアンプの歪み率を測定しておきたいです。

 そして,自作D-Aコンバータのポストフィルタに使っている,私が設計したディスクリートのOP-AMPの歪み率を見ておきたいと思います。これ,実は市販のモノリシックOP-AMPに気に入ったものが見当たらず,ディスクリートで設計した方がいい物を作れるとふんで,バラのトランジスタを使って設計したものです。聴感上,歪み率はかなり優秀と思っていましたが,測定しないうちに自慢するわけにもいきません。

 今回の工作は,従来のノウハウの積み重ね以上に,根気が要求されるものでした。部品点数の多さ,実装の工夫,基板配置や配線の引き回し,そして部品選びと,アナログの醍醐味を味わった,大作だったと思います。

 部品集めを始めてから3年以上が経過し,もう完成しないのではないかと内心思っていましたが,これだけの成果が出て,本当に良かったと思います。

発振器の改良と歪率計の再調整

  • 2011/09/04 23:55
  • カテゴリー:make:

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 夏休みの電子工作で意を決して作り始めた歪率計と低ひずみ発振器ですが,今日一応の完成を見ました。

 実は,まだまだ実装上の問題を綺麗に潰して,ノイズの影響を押さえ込まないといけないのですが,実用上ほぼ問題なしというレベルになったので,今日完成としました。

(1)発振器

 OP-AMPを交換してもそれほどひずみ率に変化がなかったのですが,それならAGCのJ-FETを交換して見ました。FETはもともとばらつきの大きい部品で,同じ品種,同じランクのものでも交換すればひずみ率が改善されることがあります。

 実は後述するフォトカプラを本命と考えていたので,FETの交換で改善することはそれほどあてにしていませんでした。

 もともとの2SK30A-GRで0.00273%@1kHzになるように調整をした後,これを手持ちの2SK160Aと,別の2SK30A-GRに交換してみます。結果,どれも同じ0.00273%となりました。なお,2SK107では発振することすらありませんでした。

 確かに,FETを交換すると歪み率は変わるのですが,再調整をすると似たような収束時間で似たようなひずみ率になるので,結局同じなのです。構造的に三次ひずみを作るFETを使う以上,これ以上の改善は難しいと判断しました。

 そこで本命の,フォトカプラです。LEDとCdSのフォトカプラは,少なくとも国内での生産はなく,ほとんど使われる事もなくなった絶命種です。そもそもCdSが環境対応できない部品なので,使いたくても使えない国がほとんどでしょう。

 ですが,半導体を使わない抵抗素子ならではのリニアリティは他に変わるものはなく,ギターのエフェクタでもキーパーツの1つとして珍重されています。

 で,半年ほど前にアキバで手に入れたP873-G35-911という,浜松ホトニクス製のフォトカプラを,今回使ってみようと思ったわけです。フォトカプラの使い方としては,まさにぴったりです。

 しかし,本を見ても,google先生に聞いてみても,案外フォトカプラを発振器に使った例というのは出てこないものです。仕方がないので,自分で設計します。

 FETを外し,代わりにフォトカプラをつないで,電流制限の抵抗として3.3kΩをLEDとOP-AMPの間に入れておきます。やったことはそれだけです。これでさくっと発振しました。

 CdSには直列に5kΩのボリュームをいれてありますが,CdSの可変抵抗の動作範囲が大きいおかげで,ボリュームをどこに回しても,ほとんどひずみ率に変化がありません。さすがです。

 で,結局最終的に得た数値は,0.00046%@1kHz,0.0032%@100Hz,0.00238%@10kHzというところです。100Hzと10kHzは平凡な数字ですが,1kHzの低ひずみはなかなかのものだと思いました。ただ,上手な人が作るとFETでもこのくらいの数値をたたき出すものなので,フォトカプラを使ってこれ,というのはちょっと情けないといえるかも知れません。

 ところで,周波数の安定度はそれなりによくて,0.1%くらいのずれがあるかどうか,という程度です。

(2)歪率計

 フィルタの調整を行ったとき,VP7201Aを使った関係で周波数がどんどんずれてしまうのでうまく出来なかったのですが,今回は発振器が完成しましたから,これで調整をやり直します。

 しかし,調整がとにかく大変でした。ちょっとボリュームに触れるだけで,大きく電圧が変化します。これだけ急峻な特性だとやむを得ないところもありますが,それにしても,時間が経つとじわじわ調整がくるってきますし,もう二度とやりたくないというのが正直なところです。

 調整が終わって,ひずみ率の再測定を行ったのですが,1kHzの0.1%レンジの値が,1%レンジの測定値と大きくずれるのです。ノイズを拾っているようなので,対策をするのですが,原因はリレーにありました。リレーを指で触ると,大幅にノイズが増えて,値が悪化します。そこで,リレーの上に鉄板を張り付けてGNDにおとしてやると,少し収まりました。それでも最終的に2つのレンジで値が一致しないので,まだまだ対策が不十分なのだと思います。

 10kHzと100Hzについては,レンジが異なってもおおむね値が一致するので,これは安心です。もしかすると1kHzの配線が間違っているのかも知れません。その方向でも確認をしてみます。

 ということで,現時点で真空管のアンプくらいは測定出来そうです。でももう少し頑張りたいと思います。

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OP-AMP低ひずみ選手権@自作発振器

  • 2011/08/31 00:06
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 今日は思い立って,帰宅後に少し検討をしました。

 自作の状態変数型CR発振器のひずみ率が今ひとつな話は先日書きましたが,その対策としてOP-AMPを変えるとどれくらい改善するかが気になったのです。

 室温は30℃,1KHzで出力はアッテネータなしの約8Vです。OP-AMPは2つ同時に交換し,交換の度に再調整を行うことはしません。ひずみ率測定は先日動き出した歪率計を使いますが,これも室温が30℃になっていますし,調整が完全ではないので参考値として評価すべき値であることを前置きします。

・NJM4580D
 もともと指定されていた,日本を代表するオーディオ用OP-AMPです。4558系の素直な音に,低ひずみが誇らしげな定番品種で,また安いんです。
 この値は,0.00876%でした。先日よりも悪い値ですが,これが一応基準となります。

・NE5532
 便利だけどいまいち,とオーディオ用途では敬遠されがちなOP-AMPが,一気にスターダムにのし上がるきっかけになったOP-AMPです。1980年代に彗星のごとく現れ,4558しか知らなかった中学生の私にはまぶしくて直視できませんでした。当時のオーディオ機器にはよく使われたので,我々の世代は知らず知らずのうちに,このNE5532の音をすり込まれたことになりますね。
 なお,今回のNE5532は,シグネティックス製です(ちょっと自慢)。値は0.00868%です。いいんじゃないですか。

・LM4562
 秋月でもさえも1つ250円という高価な新世代OP-AMPです。圧倒的な低ひずみを誇るオーディオ用で,その評判も固まってきました。流れとしては4558系という事なので,音も私の好みかもしれません。
 値は0.00855%。さすが突出した低ひずみ率を誇る最新OP-AMPです。

・TL072
 TIが生んだ,J-FET入力OP-AMPの定番です。それまで高価だったFET入力OP-AMPを,なんと4558と張り合えるくらいに安価にした立役者です。私も大好きです。
 値はちょっと悪くて,0.00945%です。まあ,こんなもんでしょう。

・OPA2134
 こだわりのバーブラウンが生んだ,オーディオ用途を狙った低ひずみOP-AMPです。NE5532をターゲットにしたと思われるFET入力のOP-AMPですが,オーディオ以外の用途には案外使い道のない,しょーもないOP-AMPと言えるかも知れません。私にとって「BB」といえば,それはもうOPA627であり,それ以外は「その他大勢」ですが,それでも「OPA」で始まる型番には,不思議な神通力があります。なぜか面実装品が数百個あるので,もう一生かかっても使い切れません。
 値は,0.00887%です。あれ,こんなもん?

 うーん,まとめると,今時のOP-AMPはどれも低ひずみで,OP-AMPによる性能差というのは,厳しい条件でないと顕在化しない,ということでしょうか。周波数が高いとか,負荷が重いとか,負荷容量が大きいとか,そういう時に差が出るのは当然として,このくらいならそんなに差はでないんですね。

 世代が明らかに古いTL072が一番悪いですが,悪いと言ってもこの程度です。LM4562とNJM4580Dは秋月価格で5倍違いますが,性能差は(今回のケースでは少なくとも)僅かです。

 ということで,LM4562を使うほどでもないですから,OP-AMPについてはNJM4580Dで行くことにしましょう。ちゃんと調整を行ってやれば,ちょっと結果が変わるかも知れません。その時はまた考え直します。

 うーん,OPA2134がもう少しいくと思ったんだけどなあ。

 ・・・ここから先の低ひずみを狙うには,やはりAGCのFETをなんとかしないといかんということか。手持ちのFETに総動員をかけて試してみて,それで駄目なら回路変更でフォトカプラを考えて見ましょう。

1631Bの調整,VP-7201Aの修理,そして歪率計のとりあえずの完成

  • 2011/08/29 19:30
  • カテゴリー:make:

 この土日は,懸案事項がいくつか進みました。

(1)菊水1631Bの調整

 先日,400kHz-3mVという厳しい値で調整を行うのに失敗をしたという反省から,真面目に600Ω・40dBの減衰率のアッテネータを作る事にしました。

 600Ω・40dBのπ型アッテネータには,30kΩと612Ωの抵抗が必要ですが,手持ちの関係で15kΩの金皮を2本で30kΩ,612Ωは620Ωのカーボンと47kΩの金皮を使いました。標準電圧生成用のアッテネータですから,620Ωについては実測をして619Ωのものを2本選別しました。この際温度特性の悪さは目をつぶりましょう。

 こうして作った40dBのアッテネータですが,思いの外上手くできました。一応500kHzまではフラットなようです。また誤差も小さく,ちゃんと1/100の電圧になってくれています。(せっかくですので分解せずこのまま使う事にしましょう)

 土曜日の夜は涼しかったので調整を決行することにしました。室温はちょっと高くて27度ですが,まあ仕方がありません。

 この調整も何度目でしょうか。すっかり慣れてしまい,手際も随分良くなりました。アッテネータ無しで調整出来るところはさっさと済ませて,いよいよ400Hz-3mVと400kHz-3mVの調整です。

 まず,400Hzで300mVを用意します。この周波数ならマルチメータで測定できるので,300mVにあわせます。このとき負荷に600Ωをぶら下げたいので,1631Bに直結しておきます。

 そしてアッテネータをいれて,マルチメータで3mVになっていることを確認しつつ,オシロスコープでも電圧を読んでおきます。

 ここで1631BのVRを調整し,400Hzで3mVになるようにします。

 次にレンジを切り替え,400kHzにします。アッテネータ無しの状態にもどし,オシロスコープで400Hzの時と同じ電圧になるよう,発振器の出力を調整します。

 そしてアッテネータを入れます。この時,アッテネータの出力からは3mVの電圧が出ているはずです。これを直接測定する方法はありませんが,発振器の出力とアッテネータの減衰率が決まっていますので,その出力も3mVになるはずです。

 そして1631Bのトリマコンデンサを調整し,3mVになるようにします。400Hzと400kHzの調整を何度か行うと,綺麗にどちらの周波数でも3mVを示すようになります。

 いやー,気持ちのいいものです。すっきりです。

 最大の山場をクリアし,残りの調整もさくっと済ませて,予想以上に手早く終了。試しに発振器とつないでいろいろな周波数で測定してみましたが,大きなズレもなく,概ね良好な結果になっています。マルチメータの実効値にあわせてありますので,両者がほぼ一致してくれています。

 マルチメータでは300kHz以上の測定は出来ませんから,それ以上の周波数の電圧については「あってるはず」で使わねばなりません。このあたり,ちょっと自信がないのですが,基本的にはオーディオ帯域向けの電圧計と割り切って,まあ100kHzくらいまでで測定値を信用することにしたいと思います。

 ところで,発振器(VP-7201A)は,ステップ式のアッテネータがついています。VP-7201Aの0dBは1V,1631Bの0dBレンジもフルスケールは1Vですので,VP-7201Aの0dBが1Vになるよう,発振器も調整しました。これで3つの機械が一致したわけです。

 で,VP-7201Aのアッテネータを-20dBにして,1631Bも-20dBレンジにすると,100mVでフルスケールになります。これはほぼ正確です。-40dBでもほぼ一致です。

 しかし,VP-7201Aのアッテネータを-10dBに切り替えて,1631Bのレンジも-10dBにしても,メータがフルスケールである300mVを越えて,振り切ってしまうのです。うーん,1631Bが狂っているのか,それともVP-7201Aがあてにならないのか・・・

 賢明な皆さんならおわかりのように,300mVにしたいなら,アッテネータは-10dBではなく-10.46dBにしないといけません。-10dBにしただけだと3.16Vとなり,3Vを越えるため振り切って当然です。「デシベル」がわかってないなんて,情けなくてorzです。

 ということで,アッテネータを-10.46dBにすると,ほぼ0.3Vを示し,-10dBレンジでもフルスケールになりました。1631Bの場合,-10dBレンジで3.16Vを入れると0dBレンジ(1Vレンジ)のフルスケールを示すようになります。VP-7201Aも1631Bも,ちゃんと10dBを扱ってくれているんですね。安心安心。

(2)VP-7201Aの改良

 これは土曜日のうちにやったことなのですが,VP-7201Aのメインダイアルの改善をおこないました。

 というのも,私のVP-7201Aのメインダイアルは,ぽっきりと折れてしまい,全く動かなくなったことがあるからです。

 減速機構を持つメインダイアルはユニット交換ではないので,修理には壊れた部品を交換するしかありませんが,なにせ専用のメカ部品を使って作ってありますので,素人には修理は無理です。

 減速機構はなくなるけど,つまみでも付けとくか,と思っていたのですが,ダメモトでアキバでバーニアダイアルを買ってきて,無理矢理くっつけたのが,前回の修理でした。

 この時,シャフトの長さの関係で,ダイアルとボリューム軸を繋ぐジョイントを付けることが出来なかったのです。結果,ツマミを回してもすぐに周波数が変わらず,手を離しても周波数の変化が止まりません。ボディエフェクトもあるし,そもそも高価な2連ボリュームに応力がかかってしまっています。

 これはいかんと,もともとついていたジョイントを探しますが,どうも捨てたらしく見当たりません。仕方がないので,タイトカップラをサトー電気に注文しました。

 タイトカップラは,絶縁性の高い磁器の円盤の両側にバネ性のある金属を取り付け,これにシャフトを繋いでやると,左と右のシャフトが電気的にも絶縁され,かつ機械的にも分離できるという優れものです。

 こんな部品,私は写真でしか見たことがなかったのですが,今回初めて買ってみました。このタイトカップラにあわせてボリュームの位置を調整し,上手く間に挟み込むことに成功しました。

 結果ですが,なかなか良い感じです。回転は相変わらずスムーズではありませんが,これはバーニアダイアルの素性なのでやむを得ませんが,ちょっと手で触ったくらいじゃ周波数は動きませんし,手で回せばさっと変化し,手を離せばぱっと変化が止まります。

 こういう問題が解決することはわかっていたのですから,どうしてもともと付いていたジョイントを使わなかったのかと理解に苦しむところですが,当時の私がVP-7201Aをなめていたというのは,事実でしょう。


(3)歪率計をとりあえず完成

 翌日の日曜日には,電源と発振器,そしてBEFだけ出来上がり,あとはアンプ基板と全体の配線を残すのみとなった(しかしこれが一番きつい)歪率計の組み立てをしました。

 おかげさまで,2時間ほどで完成,ややこしいロータリスイッチの周辺もなんとか乗り越えました。

 ただし,この日の室温は30度近くあり,ここで調整を行うのは無理ですので,前回エアコンで25度にしたときの調整をそのまま利用して,暫定的に測定をしてみることにします。

 どうも,時々フィルタが発振したり,ノイズが乗って値が狂ったり,10%レンジで調整不良があって10%レンジでの測定値が大きく狂ったりと,問題がないわけではありませんが,1%レンジでマルチメータを繋げば,歪み率が直読できます。

 VP-7201Aの1kHzを測定すると,0.0012%。0.1%レンジでも似たような値が出てきましたので,これはほぼ実力でしょう。なかなかいいんじゃないですか。100Hzも10kHzもなかなか良いのですが,10kHzについては歪率計の周波数特性が高域で落ちている可能性があり,もし落ちていたら低めに出ますので,これは確認してからにします。100Hzは1桁ほど悪いのですが,これも50Hzのハムが載っている可能性があるので,調べてからにしましょう。

 VP-7201Aがなかなかよかった事に気をよくして,自作の発振器の測定もやっています。ところが,100Hzは発振しない,10kHzは異常発振する,1kHzは結構歪みが大きいのです。

 1kHzを発振ギリギリに調整するとかなり歪みも小さくなりますが,この時10kHzが異常発振します。そこで収束時間の調整を行うとなんとか異常発振が収まりました。しかし相変わらす100Hzは発振せずです。

 100Hzが動作しないのはハンダくずによるショートか異常発振か,まあなんかだろうと思っていましたが,OP-AMPを指で触ってみると,あっちっちです。発振を疑ったのですが,オシロスコープには何も波形は出ていません。電源電圧は+15Vが1v近く下がっています。これはおかしい。

 ハンダくずのショートを確認するために,ネジを外して基板を裏返し,目視で確認しますが問題はありません。このまま通電すると,なんと100Hzが機嫌良く発振しているではありませんか。


 ますと,金属製のスペーサが100Hzの回路の一部に接触していて,ケースと繋がっていました。OP-AMPの出力がGNDに落ちてしまい,それで発振が止まってOP-AMPが発熱,電源電圧も下がってしまったんですね。

 こういうストレスがかかった部品を計測器に使うというのもどうかと思うのですが,気を取り直して再調整,そして測定です。

 100Hzと10kHzは前述の理由で後日計り直しますが,1KHzについては0.0063%でした。まあ,悪くない数字ですが,VP-7201Aに比べて6倍も悪い数字です。100Hzでの発振を無視するのなら,0.0002%くらいまで下げることが出来ることは確認したのですが,これでは1kHz専用になってしまいますからだめです。

 もう少し良い数字が欲しいですから,この発振器の改造も視野に入れて検討したいと思います。やるべき事は2つ。1つはOP-AMPをもっと低歪みなものに交換することです。現在のNJM4580Dもかなり良いOP-AMPですが,これを例えば同じく低歪みで知られるOPA2134(手持ちがあります)にするというのも手です。ただ,面実装品なので変換基板を作らないといかんですね。それに,オーディオ用と狙ったOPA2134は,案外こうした用途には弱かったりします。NE5532や実はTL072なんかの方が良かったりしますので,これはもうやってみるしかありません。

 もう1つは,AGCにJ-FETを使わず,フォトカプラを使う方法です。これはもう回路が違った物になるので,真面目に検討しないといけませんが,もし歪みが減ったらいいなと思います。

 実は,AGCのJ-FETは,同じ品種,同じランクのFETと差し替えても歪み率が変わるくらいのものなのだそうです。言ってみれば当てずっぽうという気もしますが,それがFETを使った回路の限界と言うことかも知れません。だから他のFETに交換するだけで結果が大きく変わる可能性もありますが,それならいっそのことフォトカプラに交換してもいいかな,と思っています。

 どちらにしても,歪率計がちゃんと信用出来るようにならなければいけません。まだまだやらねばならないことがありますが,これまで見えなかったデータが見えるようになるというのは,なんと面白いことかと思います。

 完成したら,いろいろやりたいんですよね。先日作ったHT82V739のアンプやら,先日メンテしたばかりのMOS-FETアンプ,300Bのシングル,6V6シングル,5998プッシュプルなど,作ったアンプの素性を調べたくて仕方がありません。

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