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カテゴリー「make:」の検索結果は以下のとおりです。

digikeyでお買い物

  • 2016/10/12 14:08
  • カテゴリー:make:

 私が電子部品を買うお店は,昔は住んでいた大阪日本橋のパーツ屋さんでしたが,引っ越しして秋葉原になり,今は時間がないのでもっぱら通販です。

 販売店側も通販の比重が増えているということもあり,通販はお店にとっても「ついで」という感覚ではないと思います。

 秋月などは送料は無料になりませんが,1000円でも10000円でも送料は500円ですので,ついついたくさんまとめ買いをしてしまいます。以前にも書きましたが,部品の在庫が増え続けていて,おそらく死ぬまでに使い切ることは不可能だと思います。

 ところで,秋月にも共立にも若松にもマルツにも売っていない部品が最近チラチラと出てくるようになりました。子供の頃は,国産の部品ばかりで工作していたので海外の部品などは目にすることもなかったのですが,1つには国内メーカーのラインナップが整理されたこと,1つにはパーツ屋さんも在庫をたくさん持たなくなったこともあってか,日本のメーカーの部品でも海外のお店なら在庫があるという事が起きるようになっています。

 先日,VP-7722Aが故障した際に,リレーを交換した話をここに書きました。パナソニックのDS2G-S-DC5Vという黄色いリレーが壊れていたので,似たような品種に交換して治ったという話なのですが,このリレーが中国製で秋月価格で100円くらいのものです。

 スペックを比較してみても,やっぱり接触抵抗が大きいようで,オーディオアナライザという測定器にはちょっと気になるポイントでした。動いているから問題ないし,このスペックの差が結果に出てくるようなこともないので別にいいと言えばいいのですが,やっぱり同じ部品に交換したいものです。

 ですがこのDS2G-S-DC5Vというリレーは,主立った日本のパーツ屋さんには売っていないのです。売っている店もあるのですが,高価な上に取り寄せになっていて,納期に数週間以上かかるという,なんとも気の長い話です。

 で,この品種をそのままgoogle先生に尋ねて見ると,digikeyなるアメリカの部品屋さんに在庫があるというではありませんか。しかも値段も高くありません。(かといって安いわけでもありませんが)

 以前,RSコンポーネンツで買い物をしようとした際,個人ではダメと言われてしまった事がありました。digieyもきっとそういう,素人お断りのお店なんだろうと決めてかかっていたのですが,調べて見るとそういうことではないらしいです。

 といいますか,ホビーストの間でdigikeyは絶賛されています。

・検索がやりやすく部品がすぐに見つかる
・在庫が膨大でここでダメならあきらめるしかないと言うレベル
・アメリカから発送されるのに,中1日で届くくらい早い。
・個人も大丈夫。
・アメリカから発送なのに,7500円以上買えば送料無料。
・支払いは銀行振り込みを使える。
・銀行振り込みならなんと後払い。従って最速で発送される。
・安い。価格表示は日本円。

 日本語で部品を検索できますし,サポートも日本で大丈夫なのですが,それでもアメリカの業者ですし,アメリカから発送されるものです。飛行機に乗って成田までやってきますし,税関を通って,「輸入」されるものです。

 10000万円以内の場合,受取人の消費税支払いを免状されるというルールもありますし,7500円以上を買えば送料を含め,税金等もすべてfdigikey持ちですから,7500円以上10000円未満であれば,本当に商品の代金だけ支払えばよいことになります。これ,結構大切なことです。

 というとで,ものは試しです。digikeyで買い物をしてみましょう。手続きは水曜日の夜9時過ぎに行いました。

 買ったものは,まずリレーのDS2G-S-DV5Vです。これを10個。そして電子負荷キットのアップグレード用に大型のMOS-FETとしてインフィニオンのBTS141を買いました。

 BTS141はTO220タイプがディスコンになっていて,ネジ留めできない面実装品のTO262しか買えませんでしたが,国内では手に入らないものなので文句は言えません。

 SI5351Aも買いましたが,秋月が250円,digikeyなら200円です。これは安い。

 あとは,先日のDC45の修理で壊れた部品です。MOS-FETのSI4652と,コモンモードチョークのWL2シリーズです。

 これらを数個ずつ買って,8600円ほどでした。秋月でもこのくらい買うことを考えると,まあこんなものでしょう。

 明けて木曜日の深夜2時過ぎには発送完了のメールが届き,朝起きてからその早さに驚愕した訳ですが,到着予定がなんと金曜日とあるではありませんか。水曜日の夜中,実質木曜日にお願いした部品がですよ,海を越えて金曜日に届けると言うんですから,魔法でも使うのかと思ってしまいます。

 UPSのトラッキングをしていると,本当に金曜日の朝には成田に到着,そこから国内配送になりました。そして16時前には自宅に配達に来てくれたようです。帰宅すると不在票が入っていました。

 UPSは土日祝日は配達をしません。再発をするには,WEBからか電話で,ヤマト運輸で土曜日に再配達してください,とお願いすると,以後はUPSからヤマトに荷物が完全に渡ってしまうので,いつものクロネコヤマトと同じ感覚で受け取ることが出来ます。

 私の場合も,土曜日の夜の時間帯に無事受け取ることが出来ました。

 届いた部品も全く問題なく,支払った金額も予定通り,さっさと銀行に振り込んで,digieyでの買い物は完了です。

 日本国内ではなかなか買えない部品を,とても検索しやすく,しかも安い値段で買うことが出来て,支払いも受け取りも納期も国内業者となにも変わるところなく,本当にこれがアメリカなのか,これで本当に儲かっているのかと,不思議になるくらいでした。

 特に,海外製の家電製品の部品については,有効な購入先となりそうと思って開拓したdigikeyですが,部品小売りの世界的勝者として知られるだけあって,その利便性には感心しました。

 それでもまあ,国内の部品屋さんでの買い物が中心になるとは思いますが,digikeyとの上手な使い分けで,欲しい部品が買えないというストレスから脱却しようと思います。

 なお,今回買った部品を使った検討の結果は,後日。

DC45をまた修理する

  • 2016/09/27 13:32
  • カテゴリー:make:

 クリアビンを交換して絶好調なうちの主力掃除機ダイソンDC45ですが,先日の休みの日にまたまた壊れてしまいました。モーターヘッドのモーターが回らなくなってしまったのです。

 最初は,逆に回りっぱなしでした。トリガをゆるめて本体が止まっても,モーターヘッドだけは回り続けているという奇妙な状態だったのですが,とりあえず掃除だけ先にすませてしまおうと,そのまま掃除を続けていたのです。

 そのうち,別の部屋でゴム紐のようなものを巻き込んでしまいました。止まってしまったモーターヘッドからゴムを取り外したものの,今度は全く動かなくなってしまいました。

 DC45などのコードレスクリーナーは,吸引力の低さを,モーターヘッドでゴミをかき集めることでカバーして掃除機としての能力を維持していますから,モーターヘッドが壊れてしまえば,それはもうただのハンディクリーナーに過ぎません。

 これは困った。

 時間のない中で修理を試みます。

 まずはモーターヘッドが壊れていないか確認です。安定化電源を繋いだところ元気に回転しましたので,これはシロ。

 次に本体から電源が供給されているかどうかを確認します。そうすると電源ONでも0Vのままです。これならモーターは回るはずがありません。

 そして接点を確認です。確認したところ,クリアビンと本体との間の接点には問題がなく,やはり本体から電源が来ていないことがわかりました。

 こうなると分解です。

 ダイソンの製品はかなりしっかりと爪で引っかかっていますので,分解はかなり大変ですが,なんとかこじ開けました。見れば,トリガスイッチ付近に小さい基板があります。本体のモーターは元気よく回っていますので,どうもこの小さな基板があやしいです。

 基板は小さく,回路規模も大きくはありませんが,今どきの製品らしくマーキングのないチップ部品が多用されていて,回路図や部品の仕様が見つからないDC45の修理は,どうもお手上げになりそうな予感がします。(この段階で私は8割方あきらめていました)

 とりあえず,クリアビンのコネクタと基板の間の配線の断線を確認しましょう。結果はシロ。となるともう基板の中の話になります。

 パターンを追いかけていくと,8ピンのSOPの半導体にモーターヘッドが繋がっています。これがスイッチング用のMOS-FETでしょう。モーターが回らないのですから,これが壊れている可能性が大きいです。

 この半導体の品名を見ましたが,パッケージには「4620」と見慣れないロゴが刻印されています。これではさっぱりわからないのですが,試しにgoogle先生に4620で聞いてみたら,SI4620とAO4620の2つが,このパッケージでFETであると教えてくれました。

 SI4620はビシェイのN-ch MOS-FETですが,3Aクラスのショットキーダイオードも一緒に入っています。一方のAO4620はAlpha&OmegaSemiconductorという私の知らないメーカーのもので,N-chとP-chの両方が入っています。

 基板のパターンから推測するに,どうもSI4620ではないかなあという感じです。それに単純なブラシモーターを一方向に回転させるだけの話ですので,N-chとP-chを組み合わせる必要はありません。

 もう一度ロゴを見てみます。レーザーマーキングですので細かいところは潰れていますが,よくよくみると左右に膨れた中に縦棒が1つ入っています。

 もしやと思って,SI4620のオリジナルメーカーを調べて見ると,シリコニクスでした。シリコニクスはビシェイに買収されたのですが,そのシリコニクスのロゴが,まさにSの中にiが入っているものだったのです。


 基板のパターンを追いかけても矛盾はありません。

 これで間違いないでしょう。このFETは,ビシェイのSI4620DYと断定しました。

 SI4620のデータシートを見て,これに相当するものがないか探しましたが,残念な事にショットキーダイオードも入っているようなものはありませんでした。

 もうちょっと真面目に探したところ,どういう訳だか旧NECのMOS-FETが見つかりました。uPA1727です。耐圧60Vでドレイン電流が10Aもありますので,SI4620に比べると余裕があります。

 ショットキーダイオードは別に用意して外付けしますが,3Aクラスのですので手持ちのCMS01を使います。

 SI4620とuPA1727とは,FETの部分はピン互換ですので,そこも考えながらさっさと交換です。外したSI4620を半導体チェッカーで調べると,壊れていることがわかりました。uPA1727はちゃんとMOS-FETと判定されますので,チェッカーを信じてよいでしょう。

 交換が終わってドキドキしながら通電します。バッテリを差し込んだ瞬間,バッテリ端子から火花が出ましたが,まあそんなこともあるだろうと気にしません。そしてスイッチを入れますが,やっぱり電圧は0Vのまま。当然モーターも回りません。

 やっぱりダメか,と思ったところで,突然基板から「ぱちっ」という嫌な音がしました。すぐに電池を外しましたが時既に遅し。あの嫌な独特の臭いがします。

 外したuPA1727をチェッカーで調べると,ショートしていると出ました。ショットキーダイオードは無事だったのですが,MOS-FETは壊れてしまったようです。

 ということはですね,モーターが回らないのはMOS-FETの不良ですが,そのMOS-FETを壊してしまう別の理由がどっかにあるということです。その根本原因を見つけないと,修理は出来ません。

 ここで9割方くじけていたんですが,もうちょっと頑張って見ようと,改めてモーターヘッドの配線を調べて見ました。これまでここに電圧が出ているかどうかだけを見ていましたが,ふと導通を見てみたところ,ショートしています。

 MOS-FETもショットキーダイオードも外し,それでもショートしていますから,これはおかしいです。

 そこで,途中に入っている5mm x 10mmくらいの大きな部品を外してみました。すると導通はなくなります。なんとなく手応えを掴んだ私は,その部品のパターンを追いかけてみました。

 4端子のその部品はどうやら,コモンモードチョークのようです。コモンモードチョークですから,端子間の導通はあって当然なのですが,この部品については,4つの端子がすべて導通しています。LCRメーターで確認すると,長手方向の端子間には12uHのインダクタンスが見えていますが,短手方向の端子間は完全にショートです。

 ここまでの推測に自信はありますが,断定するにはまだ弱いです。そこでこの部品を分解してみました。すると,やっぱり2組の巻線がトロイダルコイルに巻かれている,コモンモードチョークで間違いありませんでした。

 そうすると,2点間のショートは部品の不良ということになります。

 どうせこの部品は壊れているんですから,さらに分解です。巻線を少しほどくと,ショートがなくなりました。どうも,巻線の被覆がちょっとだけむけてしまう,レアショートが起きてしまっているようです。

 この前提で,これまでに起こったことを整理します。

 まず,なんらかの原因でモーターヘッド制御用のMOS-FETが壊れてしまい,常時ONになってしまいました。このためトリガースイッチを離して本体のモーターを止めても,モーターヘッドだけは回り続けていました。

 そしてそのまま掃除を続けたわけですが,ゴムを巻き込んでしまいました。ここで普通なら保護回路が働き,モーターヘッドは止まるのですが,MOS-FETが壊れているため,保護回路によってモーターへの電源供給を止める指示をマイコンが出しても,モーターは止まってくれません。

 そのうち過電流がばーっと流れてしまい,コモンモードチョークの温度が上がっていきます。やがて高温のために被覆が溶け,ショートしてしまったところでモーターは停止,そして今度はMOS-FETに大電流が流れてMOS-FETが常時OFFで壊れたというわけです。

 だからモーターヘッドへの配線は導通してしまっていますし,MOS-FETを交換してもすぐに壊れてしまいます。

 ここで,私が推測したモーターヘッドの制御回路を記します。

20160927133331.jpg
 BBというのはモーターヘッドに繋がる配線で,基板にあったシルク印刷をそのまま書いています。

 ドレインと電源の間に入っている低抵抗(R050と書いてあるので0.05Ωでしょう)は,おそらく電流検出用の抵抗です。この抵抗に発生する電圧をマイコンが監視し,過電流を検出しているんだと思います。

 モーターとFETはバッテリーに直結されていますから,事故が起こると大惨事になるかも知れず,ちょっと怖いですね。

 さて,修理を続けましょう。まずはこのコモンモードチョークをどうするかが問題です。マーキングを見ても「WE 100」と書かれているだけでどんな部品かよくわかりません。

 ですが,DCブラシモーターに入っているコモンモードチョークと言えば,ノイズ対策です。ブラシと整流子が擦れるところで発生するノイズを押さえるために入れるものなので,私(というか我々家族)が使う分には,気にしなくていいでしょう。

 ゆえに,ここは直結です。

 あとはFETを交換して,一応完成。

 またもドキドキしながら動作確認をすると,今度は無事にモーターヘッドが回転します。よかった。修理出来ました。

 元のように組み直して(これがまた大変でした),動作確認をしてみると問題なく動作してくれています。

 ということで,どうも『巻物」に苦手意識がある私ですが,今回の故障もこいつが話をややこしくしたということで,やっぱり苦手意識は払拭出来そうにありません。

 今後,ノイズがひどく出ていて実害か出たらチョークを取り付けることにしますけど,それもまあ安全性との兼ね合いもあることですし,頭が痛いところです。

 先日のクリアビンに続き,基板のモーターヘッド制御回路まで無理に修理して延命されてしまった,我が家のDC45。私は不可能を可能にしたスーパードクター気取りで達成感もあったりするのですが,考えてみたらDC45は可愛そうなもので,そう簡単に死なせてもらえず,何度も何度も組成されて酷使されるというのは,なんだか不憫に思えてきました。

 まあ,DC45に変わる最新機種は随分と高価ですし,まだまだ頑張って欲しいというのが本当の所ですので,本体のメインモーターが死なない限りは,出来るだけ頑張って修理しようと思います。

 それにしても,回路図もない中で,よく修理できたと思います。

 

追記:

 コモンモードチョークですが,少し調べて見るとWurth Elektronikという会社のWE-SL2という部品の10uHのものであることが判明しました。データシートをみると,形状といい大きさといいマーキングといい,まさにビンゴです。


 でもこれ,信号用のもので,パワー用ではないんですよ。電流も1.6Aが最大ですし,これを1Aくらいまで流れてしまうモーターのラインに入れるのは,ちょっとどうかなあと思います。

 

 

Nutubeでヘッドホンアンプを作る

  • 2016/09/26 15:58
  • カテゴリー:make:

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 コルグがノリタケとタッグを組んで作った,21世紀の真空管であるNutube。発表から世界中で注目され,コルグからNutubeを搭載した楽器やアンプが出ることを心待ちにする人達がいる一方で,部品としてNutube単体をぜひ買いたいという声も強くありました。

 そんな中でコルグが一般販売を計画中である事を発表,そしてついにさる9月23日に大手部品販売店で一般販売が始まりました。搭載製品よりも先に部品単体での販売が始まった事に,私などはおかしな勘ぐりを入れてしまうのですが,コルグは当初から一般販売を視野に入れていたようで,決して数は多くない自作を楽しむ人達を,ちゃんと見てくれているんだなあと,とてもうれしい気分になります。

 価格は5400円と結構高価ですが,粗悪な12AX7が2000円とか3000円とかすることを考えると,まだ大量生産もおぼつかないであろうNutubeが,全数検査済みでこの値段で買えるというのは,むしろリーズナブルと言って良いんじゃないでしょうか。

 かく申す私も,Nutubeには並々ならぬ興味を抱いており,データシートを見てはあれこれと思案し,評価ボードを測定しては膝を打ったりしてして過ごしておりました。

 そしてとりあえず習作として,Nutubeのヘッドホンアンプを作ってみました。

 習作ということで,結構気軽に作ったものの,これがなかなか良く出来ていて,聞いていてとても楽しいのです。

(1)Nutubeとは

 楽器メーカーのコルグと,蛍光表示管メーカーであるノリタケが共同で開発した直熱型の双三極真空管です。開発にいたった経緯はあちこちの媒体に出ていますのでここで触れる必要もありませんが,原理的にも構造的にも真空管そのものである蛍光表示管は,多くの家電製品や自動車に多用される表示デバイスであり,量産技術も品質管理も確立しています。

 一方の真空管は100年以上の歴史がありますが,ここ30年ほど大手メーカーでの製造は止まっており,設備ごと買い取った中国やロシア,東欧のメーカーが外貨を稼ぐために昔のまま作り続けている状況が続いていました。

 主にギターアンプに使われる真空管には一定の需要があるために製造は続いているのですが,それ以外は当時の流通在庫がすべてであると言われており,その多くはすでに取り尽くされたとされています。(特にバブル期の日本人はすごかったらしい)

 ただ,現在も製造されている真空管も安泰ではなく,製造設備の老朽化による量産効率の低下や品質の劣化など,真空管を巡る状況は年々悪くなっています。

 ある楽器メーカーの方のお話では,購入した新品の真空管のうち半分くらいが不良品であり,生産台数の倍の数の真空管を調達することになってしまう,そうすると真空管1本あたりの価格は倍になってしまうので,とても高価なデバイスになってしまうのだ,ということです。性能のばらつきも大きく,経験変化も大きいので,設計者としてはこんなもの,使いたくないというのが本音のようです。

 しかし,真空管というデバイスは,原理的に半導体では考えられないほど,素直で綺麗な動作をしていて,非常によい特性を示すのです。負帰還なしでもリニアリティに優れ,歪みは出力に対して緩やかに増え,そしてその歪み成分は耳に心地よい2次高調波を多く含んでいます。

 こうした特性によって作り出される音を好ましいと思う人は多く,楽器の一部としてのギターアンプは言うに及ばず,オーディオマニアの間でも真空管のアンプは非常に好まれています。

 消費電力が大きく,特性のばらつきも大きく,寿命が短く,入手が簡単ではないという真空管には大きな魅力がありますが,かといって量産品に使うにはかなり難しい部品です。
 
 そこで,コルグは蛍光表示管に着目,すでに大量に生産され,品質にも問題がないこの表示デバイスで真空管を作る事を実現してしまったわけです。

 旧来の真空管よりも消費電力が低く長寿命,小型で熱の発生も少なく,品質のばらつきも少ない上に大量生産が可能という,夢のような真空管が,Nutubeです。


(2)Nutubeの特性

 Nutubeは直熱型の三極管なので,三極管に準じた特性を持っています。しかし1つだけ特徴的なのは,グリッドにかけるバイアスがプラスであるという事です。

 通常,グリッドはマイナスにバイアスします。もしグリッドがプラスになっていると,カソードから飛び出した電子がグリッドに吸い込まれてしまいますよね。むしろ電子を通りにくくするように,マイナスのバイアスをかけて電子の通る量を調整しないといけないわけで,それが真空管の基本的な動作原理です。

 しかしNutubeはプラスをかけます。それも,+2.0Vのバイアスの時にもっとも歪みが小さくなるんだそうです。グリッドに電流が流れても,もともとフィラメントから出てくる電子の量が少ないので大した問題にならないんだろうと思いますが,なんでバイアスをプラスにすると歪率が小さくなるのかは,不明だそうです。

 調べてみると,このバイアスによって,大きく特性が変わることがわかりました。


(3)Nutubeの考え方

 Nutubeは双三極管ですので,12AX7や12AU7,6SN7などの真空管と同じ電圧増幅管をイメージしがちですが,ここで積極的な電圧ゲインを稼ぐと言うよりは,真空管と同じ入出力特性を持つ「フィルタ」として考えるのが一番すっきりします。

 後述しますが,電圧ゲインはたかだか5倍程度です。電流も引っ張れませんので,Nutubeだけで出来る事は限られます。

 世の中には,真空管の音を再現するために,DSPを使ったエフェクタが存在しますが,このDSPの代わりにNutubeを使うという感じです。当然Nutubeだけではスピーカーもヘッドホンも鳴りません。

 ですので,Nutubeは増幅をするデバイスと言うより,真空管の音に加工するエフェクタと考えて,増幅は他のデバイスにやらせるという役割分担が最適です。

 事実,コルグの評価ボードでは,ヘッドホンはTIのヘッドホンアンプICで鳴らしています。


(3)Nutubeの使い方

 基本的には,データシートにある回路と定数を使うのが最もよい性能を引き出します。あれこれいじっても良いのですが,結局悪くにしかならないですし,無理な動作はNutubeを劣化させてしまうので,私は怖くて出来ませんでした。

 負荷抵抗は300kΩから330kΩ程度,電源電圧は12Vから15Vくらいで動かします。フィラメントは0.7Vで17mA流します。そしてグリッドのバイアスは+2.0Vが一番良くて,この状態でゲインは約14dBというのが,コルグのオススメです。

 フィラメントは,3Vで150Ωの抵抗を直列に入れるとちょうど17mA程度流れるんだそうです。2つの三極管が入っているNutubeの場合,フィラメントは並列に繋ぎますので,この抵抗は75Ωになります。

 そしてバイアスは安定化してある必要がありますので,12VからLDOを使って3.3Vを作り,フィラメントとバイアスに使う電圧を作る事にします。

 そして,Nutubeの特性を維持するため,出力にはFETによるバッファを1つ入れるのが良いようです。


(4)回路

 回路図は以下のようになります。

20160926160110.jpg

 全段のNutubeはデータシートにある回路そのままです。結局これが一番良いという事になりましたが,なにせバイアスによって大きく特性が変わるデバイスですので,私はバイアスを2つ切り替えられるようにしてあります。

 NormalとHighの2つのポジションで,Normalは歪みが最小になるようにバイアスを調整します。およそ+2.0Vになります。

 一方のHighは聴感上で「これはいい」と思われるところに合わせたものです,およそ+2.3Vになりました。ゲインは実測で13dB程度で,5倍弱に増幅します。

 そして2SK30ATMのソースフォロワを通し,後段のダイヤモンドバッファにはいります。ここでしっかり低いインピーダンスの負荷もドライブするのですが,このダイヤモンドバッファ,実は以前嫁さんに作ったヘッドホンアンプの回路そのままです。

 というのも,あまりに無味無臭であり,これを音楽プレイヤーの間に挟んでも挟まなくても全く違いが分からないと酷評され,引き出しの奥にしまい込んだ回路なです。

 ですが,今回のように音の加工はあくまでNutubeであり,後段は勝手な色づけをしないことが望まれる用途においては,無味無臭はむしろ有益な個性といえて,今回まさかの大抜擢となりました。

 トランジスタは下手なオーディオ用よりもローノイズで高音質と言われる2SC1815と2SA1015のコンプリ,終段は2SC3422と2SA1359です。この2SC3422と2SA1359は耐圧が低いのでオーディオ用にはあまり出てきませんが,その分電流が流せる構造になっているので,特にコレクタ電流に対してのhFEの変動が小さく,オーディオ用によく使います。

 この終段のトランジスタのエミッタには1Ωが入っています。これ,小さくすると確実に熱暴走しますので,1Ωくらいが限界だと思います。


(5)測定結果

 測定した結果です。

 消費電流は200mA@12Vです。結構電気を食ってますが,ほとんどがダイヤモンドバッファのアイドル電流です。

 周波数特性ですが,40Hzから100kHzまで-3dB以内に入っていました。アナログ入力でハイレゾ対応もクソもないんでしょうけど,これくらいワイドレンジだと今どきの音楽もちゃんと聞こえるんじゃないでしょうか。

 S/Nは1kHz,800mV出力で82dB程度です。バイアスを切り替えてもほとんど変わりません。コルグの評価ボードでは60dB程度でしたので,まずまずの性能です。

 セパレーションは1kHz,800mVで約80dBです。これもなかなかよいと思います。

 さて,問題の歪率ですが,これは手っ取り早くグラフをご覧下さい。まずはNormal Biasから。

20160926160205.jpg

 

 次はHigh Biasです。

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 Normal Biasにおける最小歪みは,1kHz,120mVでの0.05%です。これがHigh Biasになると1kHz,800mVで0.46%となります。はっきりいえば,High Biasの方が元気もツヤもあり,前に音が出てくる感じがします。ただ,繊細さは失われ,解像感も減ってしまいます。

 特徴的なのはグラフを見れば一目瞭然で,High Biasの方が歪みは多いのですが,歪みの増加は緩やかです。Normal Biasは歪みは少なくとても優秀なのですが,急激に歪みが増えてしまいます。

 とはいえ半導体アンプほど急激に増加することはなく,Normal Biasでも300Bにあっさりと負帰還をかけたくらいの特性です。

 こんな風に,出力に対して歪みが直線的に増えるアンプというのは,我々はあまり体験しません。これが結構心地よく,私はもっぱらHigh Biasで使っています。

 なおバイアスの切り替えは,バイアスの回路に大きめの電解コンデンサが入っているために,すぐに変化しません。2秒くらいでゆるやかに変化します。そのため,バイアスを切り替えたことで急に音質の変化は起こりません。

 しかし,その変化は大きく,しばらくしてから「今どっちのポジション?」と聞けば,ほぼ100%正解します。


(6)まとめ

 習作という事で,前段はデータシートそのまま,後段は過去に作った無味無臭な電流バッファで,その間をカップリングコンデンサで繋ぐという芸のない回路ではあるのですが,一応部品は厳選し,GNDをしっかり取って,モノアンプを2台で構成するイメージで作りました。

 おかげでNutubeのカラーが素直に出てきて,半導体アンプにありがちな鋭角的な音が引っ込み,ヘッドホンで直熱3極管の音が楽しめるようになりました。もう手放せません。

 また,独自の工夫としてバイアスの切り替え機構が大変面白く,歪みの乗り方でこんなに音が変わるものかと,はっとさせられました。

 世の中には,わざわざ2次高調波を付加して,音に元気やツヤを与えるエフェクタがあります。エキサイターというのがそれなんですが,うまく使うと音が前に出て,太くなるんですね。

 真空管のアンプにはこうした「穏やかな歪み」が多く含まれていて,それが心地よさを作ると昔から言われていますが,Nutubeが目指したのはまさにこれで,ヘッドホンアンプのようなものでも,その効果が大きいことには驚きました。

 電源はスイッチング式の12VのACアダプタですから,音質改善にはまだまだ余地があると思います。
 
 ということでNutube,そのうちこれで差動を組んだり,NutubeだけでOP-AMPを作ったりする猛者が現れるでしょう。もっと電圧ゲインを取り,後段もしっかり作って,スピーカーをドライブするパワーアンプに仕上げても面白いと思います。

 Nutubeがいつまで販売されるか分かりませんが,一過性のブームで終わることなく,自作のジャンルの1つとして定着することを願ってやみません。


NECのTCXO

  • 2016/09/13 13:53
  • カテゴリー:make:

 NEC製のTCXO(と推測される)ものを先日の秋月での買い物でいくつか手に入れました。スペックもさっぱりわからず,壊れている覚悟も必要という事で,1つ200円となかなかお安いです。

 周波数調整用と思われるトリマーの調整穴をシールで塞いであるあたり,おそらくTCXOと見て間違いはないと思うのですが,とにかく買ってみるしかありません。

 というわけで全部で5つ買いました。

 DIPのロジックICと同じで,右下をGND,左上を5Vにつなぎ,右上から出力を取り出します。5つ全部,とりあえず発振しました。周波数も振幅も思ったほどばらついておらず,周波数はかなりよい精度で12.8MHzにあわせてあり,振幅は歪んだ正弦波で2.8Vp-p程度出ていました。

 どうも50Ωくらいで終端しないと波形が暴れてしまうようで,周波数カウンタでも終端抵抗なしでは,高調波をカウントしてしまいました。

 電源電圧を5V(5.0428V)にして周波数を測定すると,12.8000038MHzとなりました。12.8MHzに対し,+3.8Hzのズレです。他の4つも±5Hz以内に入っていました。5Vぴったりに対して0.04V高い電圧でしたので,5Vジャストではもう0.3Hz程低めに出るのではないかとおもいます。

 いずれにせよ初期精度は±0.5ppm以内というところでしょうか。なかなか優秀です。

 このうち1つを再調整したのですが,少し動かしただけで大きく周波数が変化してしまうため,元の精度を超える調整はなかなか難しいと感じました。出来る事なら再調整をせずに使うのが良いと思います。

 一番気になっていた電源電圧に対する周波数の依存性についてです。先程のサンプルで実測したところ,

4.8049V : 12.8000026MHz
4.9027V : 12.8000029MHz
5.0428V : 12.8000038MHz

 となりました。

 4.8Vから4.9Vの0.1Vで0.3Hz変化していますが,4.9Vから5.04Vへの0.14Vでは0.9Hzずれています。0.1Vあたりで計算すると0.64Hz変化していることになります。

 同じ0.1Vでも,0.3Hz変化するポイントと0.6Hz変化するポイントがあるというのが不思議ではありますが,どちらのケースでも変化は1Hz未満です。5.1Vに振った測定はやっていませんが,1Hz未満ではないかと思いますので,0.1Vに対して0.1ppm以下です。

 何度かここでも触れた,秋月の正規品であるTCXO,VM39S5Gもついでに測定してみました。

4.8041V : 12.799987MHz
4.9044V : 12.799991MHz
5.0432V : 12.799997MHz

 桁数が一桁少ないのは,NECのものと同じ桁数では最下位が暴れて読み取れなかったからです。この段階ですでに部品としての性能の差が見て取れます。

 4.8Vから4.9Vの0.1Vで4Hz,4.9Vから5.04Vの0.14Vで6Hzずれています。0.1Vあたりで計算すると4.3Hzとなりますので,0.1Vあたりほぼ4Hzとなり,リニアな特性を示しています。他の方が発表している結果と一致しています。

 それでも,12.8MHzの1ppmが12.8Hzですので,0.1Vの変化に対して0.3ppmということになりますから,大したものではあるのですが・・・

 この結果から分かることですが,NECのTCXOはVM39S5Gに比べて,電圧の変動による周波数の変動が一桁小さく超高安定である,そして初期値もかなりの精度で調整がなされているということが言えます。

 ゆえに,これはお買い得です。

 うちでは,すでに引退してサブ機になってしまった自作の周波数カウンタのタイムベースを,VM39S5GからこのTCXOに交換しました。おかげで電圧に対する周波数の変動がぐっと少なくなり,また12.8MHzに再調整をかけることで,絶対精度と安定性の両面でやっと安心して使えるようになったと思います。

 そんなに数があるわけではないですが,電圧変動による周波数変化が大きく出るのが当たり前なTCXOのなかでも,貴重な存在だと思いますので,欲しい人は早めに手配された方がいいと思います。

小ネタ3連発

  • 2016/09/12 14:40
  • カテゴリー:make:

 先日の秋月に続き,大阪の共立電子で買った部品も週末に届きました。大したものは買っていないのですべてをここに書くことはしませんが,すでに届いている秋月の部品とあわせてそろった事ですし,短時間で出来る作業をささっとやってみました。


(1)安定化電源器のリレー交換

 AD-8724Dという安定化電源に出力のON/OFFを行うスイッチを取り付けた話はすでに書きましたが,大きな電流を引っ張るとリレーでの電圧降下が大きくなってしまい,2A引っ張ると0.2V以上のズレが出てしまうことが問題でした。

 電流が小さい時には,内蔵の電圧計の指示と出力端子の電圧のズレはあまり出てこないのですが,電流が増えると内蔵電圧計を見ながらの電圧設定はあまり意味がないことになるので,電源器の出力端子に別の電圧計を常設しておき,これでモニターすることにしてありました。

 もともとパワーリレーではないものを使っていますので,ちょっと不安を感じていたのですが,秋月にLQリレーという小型のパワーリレーがあったので,買ってみました。

 交換作業は簡単で,10分ほどで終わったんじゃないかと思います。大きさはもとのリレーとそんなに変わらず,本当にこれで大電流が流せるんかいなと心配になるほどです。ACで10Aも流せるんですよ,これ。

 早速動かしてみたのですが,なんとなんと,電流を引っ張っても内蔵の電圧計と出力電圧の間の差がほとんどありません。ということは,リレーでの電圧降下がほとんどない,つまりリレーの接触抵抗が随分小さいということになります。

 これはいい,これは優秀ですよ。

 やっぱり,目的に応じた部品を使わないとダメですね。結局,これで外に常設した電圧計(ケンウッドのDL-2050)は意味がなくなってしまいました。


(2)MSG2170のロータリーエンコーダ

 これは共立電子で買った物なのですが,ロータリーエンコーダとしては珍しい,1回転あたり15パルス・30クリックというものです。広く出回っているものは1回転で24パルス・24クリックで,これはどこでも売っています。

 しかし,15パルス・30クリックは私はほとんど目にしたことがありません。

 ところで,昨年の夏にMSG2170というFMステレオエンコーダを買ったわけですが,ロータリーエンコーダの不調のために交換を試みました。しかしオリジナルのロータリーエンコーダは30クリックで,おそらく15パルスのものです。

 仕方がなくクリックのない24パルスのロータリーエンコーダを取り付けたわけですが,偶数から奇数への変化角度と,奇数から偶数への変化角度が異なるので,一定速度でつまみを回しても,数値の変化が一定になりません。

 そこで,機会があったら15パルス・30クリックのロータリーエンコーダを買っておこうと考えたというわけです。

 MSG2170を1年ぶりに分解してみたのですが,フロントの基板に取り付けるにはロータリーエンコーダのシャフトが短すぎて,どう考えてもツマミが取り付けられません。いろいろ考えましたが,これはもうパネルに直接ロータリーエンコーダをネジ止めネジ留めするしかないという結論になりました。

 基板との接続はケーブルで行う事になりますが,ハンダ付けはちょっと面倒なので,コネクタで取り付けます。

 作業そのものは30分ほどで終わりました。動かしてみると,確かに修理前のフィーリングに戻っています。

 ただ,これはもうバグなんだと思いますが,1クリックごとに回転方向を変えると,本来なら進んで戻って進んで・・・を繰り返すはずが,ずっと進みっぱなしになります。

 ここを改善するのはもう無理だと考えて,ここでやめることにしましたが,これでそんなに便利になったかと言われれば,少々疑問を感じざるを得ません。


(3)DTC-59ESJのメンテ

 これも昨年の話ですが,DATであるDRC-59ESJのコンデンサを交換しました。この時期の製品には4級塩の電解コンデンサが使われていて,これがことごとく液漏れをする物ですから,見つけ次第交換する必要がありました。

 ところが,手持ちの関係で,6800uF-25Vという電解コンデンサの代わりに,8200uF-16Vをつけてありました。オリジナルと同じ定格の物を機会があったら買っておこうと思っていたので,今回共立でかいました。

 交換しようと基板をみたら,どれが交換対象なのか忘れてしまいました。回路図を見て,8200uFを交換するんだなとわかったのですが,なんか急激に面倒になりました。

 電圧を測定すると,このコンデンサには11Vくらいがかかっています。16Vの定格でも3割ほど余裕があります。なら大丈夫でしょう。

 容量も6800uFから8200uFに増えていますので,かえって良い方向です。もうこれでいきます。


 というわけで,買った部品で3つほどら対策を打ちました。安定化電源器は効果覿面でしたが,他はちょっと微妙な結果に終わりました。

 もともとこの部品は,来週の連休に会わせて準備をしてあった部品ですので,慌てることはありません。そんなに時間もないことですし,コツコツやっていこうとおもいます。

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