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デジットの味をご家庭で

 大阪日本橋の電子パーツのお店,デジットが6月で閉店することになりました。

 閉店と言っても入居していたビルが老朽化のため取り壊しになり,移転することになったということなので心配することはないのですが,1980年代から変わらずあの場所で営業していた老舗ですし,私もよく通い,日本橋の巡回ルートに入っていたことはもちろん,あげくアルバイトまですることになったほどですから,感慨もひとしおです。

 昔話は程ほどにしておきますが,当時は新品の部品などほとんどなく,訳ありのジャンク品が所狭しと並んでいて,まあ次に買うわと店を出たら最後,同じ物には二度と出会えないという,非常にスリリングで面白いお店でした。

 折も折,ちょうど消費税が導入された時期ですが,同じ商品がシリコンハウスで買うと消費税がかかるのに,デジットで買えばかからないということで,消費税分だけ安く買うことの出来るというノウハウは,当時のマニアの間ではよく知られたことでした。

 リースの終わった汎用機やオフコンからCRTやFDDを外してきて,これを安価に販売する貴重なお店でもありましたが,とにかく当時の店長さんがその道に詳しく,1つ1つの商品に技術的な根拠を持って売っていたことが思い出されます。

 彼とは,それはもうたくさんのエピソードがあって,それぞれが10代だった当時の私の人間形成に大きな影響を与えていると思うのですが,秋葉原に行ったことがなく,もっぱら秋月電子で通販をすることを楽しみにしていた私に,昔の秋月はこんなもんじゃなかった,いつかうち(デジットですね)もあれくらいになれたらな,といっていたこともありました。

 果たしてデジットは全国区の電子部品店となりました。

 そんな私の知るデジットもこの6月でとうとうお別れです。そう,シリコンハウスも大きなお店になっていますが,私の知るシリコンハウスは東海電子の2階と3階であって,そこから移転してしまった現在のシリコンハウスは,私にとって新しく出来たお店に近いのです。

 おそらく,新しいデジットはもっと大きくもっと小綺麗になるでしょう。それはそれでとても良いことですし,私も愉しみなのですが,私の「デジット」が永遠に消えてなくなることには,やはりさみしい気持ちが大きいです。ああ,歳は取りたくないですね。

 とまあ,そんなデジットがファイナルセールを3月からやっています。いよいよ6月になり,セールも最終段階に入っているのですが,これまでもジャンク屋らしく,入っている数が多いかわりに,1つあたりは無茶苦茶安いものばかりが並んで,私もめぼしいものがあったときにはメモを取っていました。

 そして先日,いつか出るだろうと思ってずっと待っていた商品が登録されます。そう,「デジットセレクション ランダム部品箱」です。

 これぞジャンク屋の真骨頂。お値段は500円で,一人2個までの限定です。

 まず,ジャンク屋というのは,精機の部品屋さんと違って,仕入れのルートが多彩です。正規ルートなら注文できないような部品も入荷したりします。

 それから,訳あって廃棄されたものが流れてくることがあります。カスタム品などが大量に入ってきます。部品に限らず基板や完成品も流れてきます。

 再生品や廃棄物からも,使えそうなものが商品になりますが,いずれも共通するのは,正規品よりも極端に安いと言うことです。

 そんなお店の福袋ですからね,面白くないわけがありません。

 他に欲しいもの,例えば500個入りのLED(500円)を3袋とか一緒に買って,今日その「デジットセレクション ランダム部品箱」が2箱届きました。

 中身を細かく公開するのはルール違反なのでやめておきますが,少しだけ入っていたICやLSIについては,ちょっとここと紹介してもいいかなと思います。なかなか面白いものが入っていましたよ。

HD637B01X0P
 日立の8ビットワンチップマイコンです。SDIPの64ピンで,多ピンのマイコンとしてはよく使われた68系のCPUです。ただしマスクROM品なので,自分でプログラムを書いて使うのは絶望的,残念ですがゴミです。

Z8 BASIC Z0867108PEC
 これはあたりかも。Z8671,Z8 BASICです。Z8はザイログの8ビットCPUなのですが,ワンチップマイコンとしての印象が強いせいで私には馴染みがありません。そんな中でも異色なのはこのZ8 BASICで,内蔵ROMにBASICインタプリタを書き込んであり,RAMを繋げばBASICが動くそうです。

TC5054
 東芝のTC5000シリーズのCMOSで,4桁の10進カウンタ/7セグデコーダ/ドライバです。東芝はRCAのCD4000シリーズが出た当時,独自のCMOSプロセスにC2MOSという名称を与え,大々的に展開をしていました。モトローラがMC14500シリーズというオリジナルを開発したのと同じように,東芝はTC5000シリーズをオリジナルとして開発していました。TC5000シリーズはCMOSらしく大規模なLSIを揃えていたのですが,TC5054もその1つ。10進のカウンタを4桁,ダイナミックスキャンの7セグメントLEDのデコーダとドライバを内蔵し,ワンチップで4桁のカウンタを作る事が出来たLSIです。

TMP47P440AN
 東芝の4ビットワンチップマイコンです。正確なことは調べていませんが,型番からおそらくワンタイムPROMを内蔵したものだと思います。類似品種を調べると32kbitのROMらしく,2764と同じ方法で書き込みが出来るとあります。

HM62256LP-12
 言わずと知れた,日立のCMOS SRAMです。256kbitですので,1980年代中頃にはとにかく目にすることの多かったSRAMです。

TC8801N-0903
 東芝のASSPで,なんと音声合成LSIだそうです。内蔵のマスクROMに書き込まれた音声データを再生するものなのですが,名前の「-0903」が示すとおり,どこかの製品用に音声データを書き込んだ訳あり品です。音の出し方はわかったので再生してみても面白いかも知れません。

LH52256N-90LL
 これも256kbitのCMOS SRAMです。シャープ製のSRAMも当時はよく見ました。これはフラットパッケージのものなので,同社製のポケコンでもおなじみです。

TC9217
 東芝のラジオ用のICで,データシートにはPLLとあります。おそらく海外のデジタルラジオ用じゃないかと思うのですが,よく分かりません。

T3605
 東芝の時計用のLSIです。デジットではかつて,専用のVFDとセットにして販売していたことがあるようです。自動車用の時計に採用された定番品らしいです。たくさん入っていたのですがVFDがないので,使うには一工夫が必要でしょう。ただ,この手の時計用ICは絶滅していますし,7セグメントのスタティックドライブが出来るものは特に貴重です。

MB74LS30
SN74LS32
HD74LS145
SN74LS74
HD74121
DM7414
 TTLですね。特に注目するようなものはありませんが,ナショナルセミコンダクタのDM7414が懐かしいパッケージで出てきたのが,個人的には興味をそそりました。

TC35300
 DTMFレシーバです。プッシュホンのデコーダも1980年代に流行って,電子工作の定番だったものですが,今どき若者はDTMFの音など聞いたこともないでしょう。

MB88331
 富士通のNTSCシンクジェネレータです。かつて秋月電子の定番キットの1つ,ブルーバックジェネレータにも使われていたので知名度もあると思います。しかし,アナログテレビが絶滅し,NTSCの信号もほぼ消えた現在,このICにどれほどの意味があるのか疑問です。

TC74ACT02
 東芝の汎用ロジックで,ACシリーズです。まあ,ACとはいえ汎用のCMOSロジックですので,なにかに使えるでしょう。

TL497
 TIのスイッチングレギュレータICで,定番中の定番です。これは5つ手に入りました。

S2924
 メーカーは不明ですが,シリアルEEPROMです。おそらく128ビットでしょう。

PC725V
 シャープのフォトカプラです。通信用ではなく,スイッチングレギュレータに使うような絶縁用のようです。

PIC12C509
 PIC12シリーズです。名前の通りワンタイムROMです。20年ほど前はホビーストの間でもよく使われた8ピンのPICですが,今はもう全然見ませんね。私もPICは16F84ばかりでしたので,PIC12は使った事がないのですが,そもそもこのPIC12C509,書き込み済みだったらただのゴミです。


 というわけで,とても楽しく部品の仕分けをした結果,IC/LSIは以上のものが入っていました。もちろん,これ以外の部品もたくさん入っていましたし,値打ちのあるものはむしろそれ以外だったりしたのですが,見た目では判断出来ない半導体は意外なお宝だったりするかもしれないというワクワク感が楽しくて,これを肴に飲み会をやったら盛り上がるだろうなと思いながら,仕分けをしていました。

 使ってみようと思ったのはZ8 BASICとT3605,そしてTC5054くらいで,強いて言うならどんな音が入っているのかを確かめるためにTC8801を一度動かす位のものでしょうか。

 でも,この感じがデジットです。あのデジットの味をご家庭で,なのです。いやはや,満腹になりました。

 

DCCデコーダを手作りする

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 安価な製品の入手が現実的に難しい中,実質的に倍近い値段になってしまったDCCデコーダをなんとかしないといけないと,意を決してDCCデコーダの自作をやってみることにしました。

 かつて,海外のサイトで自作デコーダの回路とファームウェアが掲載されていて,私もこれを作ってみたことがありました。PIC16F84Aという懐かしのマイコンにディスクリートのフルブリッジを組み合わせてあります。

 PICは面実装品が手に入ったのですが,三端子レギュレータはTO-92の78L05でしたし,Hブリッジは配線ミスで火を噴いてしまい,面倒になってパワーオペアンプを使うことにしたせいで小型化できませんでした。

 動いたとはいえ,PWMの周波数が低かったらしく滑らかさな動作が出来ませんでしたし,結局高く付いたこともあって,1つ作っておしまいにしました。

 あれから15年,えらいもんですね,日本の方が実用になる小型のデコーダをちゃんと継続的に作ってらっしゃいます。多くのフォロワーがいて,実績もたくさんありそうです。

 私もこの回路とファームウェアを,そのまま利用させて頂く事にしました。

 こういう場合問題になるのは基板で,この方は親切に専用の基板を頒布なさっています。それでも部品代の合計が500円程度に収まるというのですから素晴らしいのですが,私の場合万能基板で手配線することが楽しく,それこそ電子工作の醍醐味と思っている変わり者なので,秋月電子で面実装用の万能基板も合わせて購入しました。

 20セットくらい作る事が出来ればと思ったので,ざっと10000円ほどの部品代を支払って待つこと数日,届いた部品を早速確認して,組み立てを始めます。

 基板を細長く切り出し,ここに4つの主要ICを並べていきます。ブリッジダイオードと三端子レギュレータが上手く配置できずに悩んだのですが,ブリッジダイオードを裏返してハンダ付けという禁じ手でしのぎました。

 基板を起こさず,万能基板で作るというのは手間がかかって大変ですし,ミスもしがちです。ですが,好きな大きさと形で作ることが出来るので,いわば車両ごとにカスタムメイドできます。

 ということで,部品を一列に並べた細長いものをまず1枚。少し小さく作って7枚,基板の切れ端を使って両面貼り合わせで超小型を2つ,正方形に近いものを3つ,合計13個を作ってみました。

 万能基板を使うと,パターンの面積を考えずに済みますので,場合によってはかなり小さく作る事も出来ます。写真にある超小型のものは電源で1枚,マイコンとHブリッジで1枚の基板を貼り合わせて作ったもので,これってDZ123よりも小さいです。

 長細いものでも片面ですので,DZ123の半分以下の分厚さです。Nゲージはスペースが厳しいのですが,特に隙間がないので,小さい事も大事ですが薄いことも大事です。

 注意しないといけないのは,ランドを一部剥がしておかないといけないことです。三端子レギュレータは背面のフィンと2番ピンが繋がっているので,背面にハンダが回ると予期しないところが繋がってしまいます。

 同じ事はHブリッジにも当てはまります。Hブリッジの底面には放熱のために金属が露出しています。ここはどの端子にも繋がっていないので放熱も考えてそのままにしていたのですが,2,3,6,7番ピンのランドにかかってしまい,ショートするという問題が発生して困ったことがありました。

 こういうICは放熱しないと性能を発揮しませんので悩んだのですが,上手くショートの方が深刻だと考えてランドを剥がすことにしました。

 で,電気的な性能ですが,Hブリッジにしっかりした保護回路があるので,ミスによって焼損することが今まで起きていません。これは助かります。

 小さいですが駆動能力も大きく,発熱も小さいです。LEDなら直接駆動出来るファンクション機能もあるそうです(私は使っていません)

 欠点は,まず加速率と減速率が設定出来ないこと。DZ123を含む多くのデコーダは,加速率と減速率を設定出来ます。私もこれをすべての車両で設定しているのですが,この自作デコーダは設定出来ないです。

 あと,BEMFが使えません。これはDZ123にもないので仕方がないのですが,EM13には搭載されている機能で,しかも効果絶大ですので,ぜひ欲しい機能です。

 そうそう,ちょっと気になる事があります。グリーンマックスの旧型の動力ユニットなんですが,どうもガクガク動いてしまうのです。3つある同じ製品のうち,1つは問題なし,1つは注油で改善,しかしもう1つはどうしても改善出来ませんでした。

 集電不良かと思って何度も磨いたりしたのですが,デコーダに直接電源を入れてもギクシャクします。

 モーターを直流電源に繋いでみればスムーズに回転するのでモーターの問題ではないでしょうし,DZ123にすれば綺麗に動くのできっとデコーダの性能なんだろうと思っていました。

 しかし,スムーズに動く動力ユニットもあるので,これはおかしいと考えて調べたところ,直流では上手く回るモーターも,PWMではギクシャクするものがあるとわかりました。

 試しにユニクリーンオイルをブラシに注油すると,ウソのようにスムーズに回り出します。モーターが汚れていて,高速回転では上手くPWMについて行けないのかも知れません。

 しかし,トミックスの旧製品のモーターで試すと,今度はユニクリーンオイルでもダメ。正常に回転する回転数がどんどん低下しています。

 そこで,パーツクリーナでモーターを洗浄してみたところ,かなり改善されました。PWMでは上手く回らないこともあるんですね・・・

 それと,やっぱりモーターに注油は御法度みたいです。綺麗に洗浄した方がずっと上手く回ります。モーターといえばミニ四駆で,あちらの世界では注油は普通に行われているようなのですが,おそらく数年もすると上手く回らなくなるんじゃないのかなあと思います。

 まあ,文句があるなら自分で設計せんかい,という話で,加速率も自分でソースをいじって書き換えようかと思ったのですが,ROMサイズに収めるのが大変そうでしたし,面倒だったのでやめました。

 ということで,DCCデコーダが500円で出来ました。DZ123である必要も,EM13である必要もない車両はこれに置き換えていこうと思います。これでデコーダの入手と価格の問題は,とりあえず解決です。

 

PC-1245の奇跡の復活

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 ある日,PC-1245などLCDに持病を抱えるポケコンの現状が気になり,google先生に尋ねてみました。

 すると,なんとPC-1250系に互換LCDを作った人がアメリカにいて,その人から購入したLCDでPC-1251を復活させた人の話が飛び込んで来ました。

 いやー,とうとうこういう人が現れましたか。交換するしか修理の手立てがないLCDの問題を,こうして根本的に解決するというのはなかなか出来ない事ですが,昨今のレトロPCブームのおかげで個人ではなく会社やお店がやってくれるんじゃないかと,ちょっとだけ期待してはいました。

でも,まさか個人でやってるとは。

 考えてみれば,LCDのカスタムメイドは初期費用も大きいですが,1回で製造される数が膨大です。1つ1000円で作れたとしても,最低3000個とかいわれたら,それだけで300万円ですからね,ポケコンの修理代として300万円はあまりに非現実です。

 ですが,昨今中国でLCDを作ることが当たり前になりました。初期費用も数万円程度,単価も100円とか200円とか,そんなもんで,数も少なくて済むケースがあると思います。仮に1000個で作ってもらえたら,30万円ほどで作れちゃうんじゃないでしょうか。

 そしてそのLCDを欲しい人に3000円くらいで買ってもらえて,そんな人が100人もいれば元は取れてしまいます。中国でLCDが作れることが,これだけ物事を変えていくと言うことでしょう。

 このアメリカの方はPC-1250系だけではなく,PC-1210系のLCDも復刻させています。価格は良心的な$17程度で,送料を入れても悔しくない価格です。

 私はPC-1251とPC-1211を持っていて,どちらもLCDが死んでいるので迷わず注文しました。

 そして,ついでにPC-1245のLCDも同じように作っている人がいるかもと思って調べてみたのですが,そうするとなんと,日本の方が作ってくれていました。昨年あたりから一部の人の間で話題になっていたようで,私は乗り遅れていたような感じです。

 あわてて注文をします。価格は5500円と結構高価ですが,修理代として出せない金額ではありませんし,なにより自分では出来ない事をやってくれているのでから,そこは感謝です。

 4つまでの購入制限があるので,我が家の3台のPC-1245に予備を1枚でなんとかギリギリ。金額的にも厳しいので4つだけ買うことで辛抱しましょう。

 さすがに日本だけって数日で到着。うれしくてその日のうちに交換作業を敢行しました。

(1)MC-2200

 いきなりこれか,という声が聞こえてきそうですが,そう,セイコーにOEM供給されたPC-1245である,MC-2200です。

 同じ大きさ,同じキーボード配列ですが,真っ黒なボディカラーにクリーム色と真っ赤なキーがアクセントになった,なかなか格好いいマシンです。PC-1245のLCDが左にオフセットしているのに対し,MC-2200は中央に配置されています。

 実物を目にした人が少ないということでなかなか貴重なマシンとして扱われているようなのですが,これもPC-1245と同様にLCDが劣化しますので,完動品はほぼ絶滅でしょう。

 私はLCDが死んだものを安く入手してありました。もしかするとLCDを復活させる方法が見つかるかも知れない,もしかするとLCDだけ生きている壊れたPC-1245が手に入るかもしれないと,入手しておいたのです。

 それがこうして役に立ちました。

 湿気を吸っているため,基板にゆがみが出ていますが,慎重に作業を進め,復活しました。最初の交換作業ということもあり,上手く表示が出ずに何度かやり直す羽目になりましたが,最終的には上手くいきました。

 MC-2200がちゃんと動いているなんて,夢を見ているようです。


(2)PC-1245

 2台目は,私が中学生の時に買ってもらったPC-1245,そのものです。10代の私は常にこれを鞄に入れていました。中学でも高校でも大学でも,いつもこれが私の計算機能を担っていました。

 処分価格で出ていたものをねだって買ってもらったのですが,これがこんなに長年の友となるとはその頃思っていませんでした。

 面白がって改造し,RAMは10.2kBまで増設してあります。これも若気の至りと言いますか,結構乱暴な改造をしてあったりしますし,使っているSRAMもよく分からずに選んでいた感じもあって,恥ずかしいものです。

 社会人になって日頃の仕事にも活躍してくれていましたが,10年ほど前からLCDが黒ずみ始め,現在は真っ黒になってしまいました。少しずつLCDが見えなくなるのを見るのは辛く,不治の病に冒されて朽ちてゆく長年の友をなんとかしようとするも,交換以外に方法がないという現実を受け入れ,同じ大きさで同じように使えるPC-1246を主力機にするという決断をしたのでした。

 それがまたこうして,甦ります。感激です。

 で,会社に置いてあるPC-1246は,気分だけでもPC-1245を継承したいと,PC-1245オリジナルのゴムキーを,PC-1245が持つプラスチック製のキートップのキーボードに交換してしまいました。

 手元のPC-1245は確かに中学生の頃から使うPC-1245に間違いはないのですが,キーボードだけはPC-1246のものに交換されてしまっています。

 いずれPC-1246は会社から取り返してくるとして,先にこのPC-1245のLCDを交換しましょう。

 MC-2200で困った点を注意して,作業を進めます。

 古いLCDをフレームから取り外すのが難しいのですが,私はアセトンなどの溶剤を使わず,ドライヤーで熱を加えて外しました。この時,腕時計の裏蓋を外す工具をLCDの表面からフレームに差し込み,少しずつ隙間を広げていくと上手く外れます。

 裏側からこじるとガラスが割れてしまいますので,無理はしない方が安全です。

 ゼブラゴムは同じ場所,同じ面を使わずにローテーションすると上手くいきます。それから汚れを綺麗にアルコールで拭き取らないと,表示が書けたりリークで余計なドットが表示されたりします。特にLCD側に接触する面にゴミがあると,簡単に表示不良になりますので注意が必要です。

 それから偏光板です。オリジナルはLCDの表面に偏光フィルムが貼り付けられておらず,偏光板が鉄のフレームの上から重ねられています。しかし今回のLCDは偏光フィルムが最初から貼り付けられているので,オリジナルの偏光板は必要がなくなります。

 もちろんあっても表示は出るのですが,暗くなるので外さないといけません。そうすると偏光板の厚みだけ薄くなりますので,LCDの表面を覆うプラスチックの透明カバー(風防と言います)がガタガタします。でも,それはそれで大した問題はないのでOKとします。

 そして,組み込みの際には,電源を入れて動かしながら行います。鉄製のフレームから出ている爪は基板の穴に差し込んで裏側で折り返すわけですが,先にすべての爪を曲げてしまわず,左側から表示を確認しながら1つずつ曲げていくのです。

 爪をさらにきちんと曲げて強く固定し,交換完了。最終組み立てを行って電源を入れますが,起動しません。あちゃー,壊してしまいました。

 ああ友よ,さっきまで君は元気に動いていたじゃないか。

 なのにリセットをかけてもBUSYと出るばかり。

 なにせ私にとっては特別な1台ですから,急遽修理を始める事にします。まずは電源とリセットですが,これは大丈夫。ならばクロックを確認しないととオシロスコープの電源を入れて確認をすると,これも大丈夫です。

 バスのアクセスはどうなっているかと確認すると,これはリセット解除後からずっとパタパタ動いており,少なくともCPUやROMが死んだというわけではなさそうです。

 概ね,基板,それもスルーホールやパターンが切れたんだろうと今度はテスターでパターンを追います。回路図を見ながらCPUとROMとRAM, そしてLCDCのデータバスとアドレスバスを見ていきます。

 すると,一部データバスがショートしているのがわかりました。これは面倒くさいです。バスのショートはハンダのブリッジが主な原因ですが,どこでブリッジしているかは目で追いかけるしかないからです。

 それでも見つからないと,今度はICの不良の可能性を疑うことになりますが,その段階で修理を終わらせるのはかなり困難になってしまうことが確定です。

 バスのショートは,どういう訳だか2本ではなく3本のショートであることがわかりました。そして偶然,LCDのフレームともショートしていることがわかったのです。

 取り付け中までは正常動作していたのですから,問題が起きたのはその後,つまり爪を曲げ直ししたところで起きたのでしょう。強く曲げすぎたせいで鉄製のフレームが基板のどこかに接触してしまったのかも知れません。

 そこで爪を少し起こして緩めてやると,今度は無事に起動しました。あー,よかった。

 同じような失敗をしないように慎重に最終組み立てを行って完成。今度はちゃんと動きます。
13歳の私が初めてにしたモバイルマシン。私の計算能力のほぼすべてと記憶の一部を担った真のポケットに入る小型コンピュータがここに復活です。


(3)PC-1245

 PC-1245は特別なマシンですので予備機を1つ,機会があるときに購入してありました。程度は良く,綺麗な状態で手に入ったので無改造のままです。部品取りになるか,置き換えになるかはわかりませんでしたが,もう1つあるという安心感こそが重要でした。

 これがやはり,LCDの劣化という不可避の病を発病してしていました。

 分解と交換作業は手慣れたもので,手際よく進みます。爪を曲げすぎると暴走するという問題もそのまま再現し,爪を起こして正常動作をするようにしてから最終組み立てを完了です。

 この個体は常用しませんので電池は入れないのですが,少し使ってみると程度の良かった昔のPC-1245を思いだし,そういえば中学生の時の病院の待ち時間で,随分活躍してくれたなあと,懐かしい思い出が蘇ってきました。


 ということで,うちにあるすべてのPC-1245が復活しました。もう完全にあきらめていただけに,この喜びは大きく,こういうチャンスをくれたことに本当に感謝しています。

 期間限定であり,これを超える形での修理はもう二度と出来ないだろうと思うのですが,今回はうまくチャンスをつかまえることが出来ました。

 高価だとは思いましたが,5000円で修理出来ればありがたいくらいです。そして今後は,別の機種にも手を広げて下さるとうれしいのですが,PC-1245やPC-1250のような数の出たモデルではあなく,品種も増え,しかもそれぞれに異なるLCDを持つものばかりですので,難しいだろうと思います。

 私が持つLCDに持病を持つポケコンは,PC-1401,PC-1246です。どっちも不人気機種でしたし,LCDの交換をしてまで修理しようという熱意のある人はいないと思います。PC-1246はマシン語が走りませんから不人気と言うよりも悪者扱いでしたので,私は好きなマシンですがこれはもうこのままになってしまうでしょう。

 さて,次はアメリから届く予定のPC-1211とPC-1251です。まだ発送もされていませんし,海外から届くので時間もかかるでしょう。本命はPC-1251ですが,性能面で実用性の乏しいPC-1211も,実はあの独特の表示を見るのが楽しみです。



浴室乾燥機を交換する

 ここ数年,風呂場の換気/浴室乾燥機が異音を発生していて,困っていました。

 最近はすっかり慣れてしまったのでいつからこんなにひどくなったのか,もう覚えていないのですが,あのベアリングが劣化したゴロゴロいう大きな音に加え,ここ1ヶ月ほどは「チリチリ」という金属が当たるような音まで出るようになりました。

 そんなにうるさければ止めろという声も聞こえてきますが,我が家も24時間換気が必須となっている住宅で,風呂場の換気扇がそれを担っている以上,止めるわけにはいきません。

 モーターのベアリングが悪いことは明白ですので,交換用のモーターが手に入ればそれで修理出来そうなものですが,残念な事にそういう対応を行ってくれるメーカーは限られているでしょう。

 ならば交換か出張修理となるわけですが,この手の住宅設備というのはなにかと高額なもので,私はやむを得ないと思いつつも,これだけ家電の値段が下がっている昨今にあって,どうも割高感を拭えずにいます。

 だって,枯れた技術で作られた,なんでもないファンモーターのベアリングが死んだだけで,交換費用も含めて10万円コースですよ?

 とまあ,そんな事情もあって,今まで面倒で放置していたのです。

 問題となっているのは,マックスという会社のBS-141H2という製品です。24時間回り続けるファンですから壊れてもおかしくないのですが,設計寿命を10年としているのに5年ほどでゴリゴリ言い出すというのは,ちょっとマズいんじゃないかと思います。

 調べてみるとこのシリーズの製品に同様のトラブルは定番らしく,あちこちで「壊れた」「うるさい」といった文句を目にします。うーん,住宅はどんどん壊れるようになってきているような印象です。

 せっかく電気工事士の資格を持っているのですから,自分で交換することも考えてみます。水栓を交換したときにも書きましたが,以前は専門家しか取り付けできないものは市販されておらず,製品の値段で工賃を捻出するような感じだったわけですが,最近はありがたい事に製品だけ販売してくれる業者が増えてきました。

 BS-141H2は製造中止品でした。後継はBS-161になるとのこと。取り付け穴もほぼ同じで,交換にはうってつけです。

 個人的には,モーターの寿命を見積もれなかったマックスは敬遠したかったのですが,他のメーカーにだと取り付け穴が異なるので,かなり大がかりになる上,失敗のリスクも大きくなります。不本意ながら,マックスのものを第一候補とします。

 結局,amazonが一番安いことがわかり,BS-161を発注しました。値段は36000円ほど。言ってみれば電熱ヒーターとシロッコファンに4万円ですから,ボロ儲けだなあと思います。こんなの半額でなくっちゃ。

 さて,届くまでにあれこれを作戦を立てるのですが,最大の難関は高さが十分ではない作業スペースで,どうやって排気口と本体をアルミテープで固定するか,です。

 アルミテープを貼り付けた裏側に手が回りませんし,眼で見ることも出来ませんので,多分上手くいったという想像で作業を進める必要があります。

 加えて,3kg以上もある大きなものを,片手で持ち上げつつ片手でネジを締めるという離れ業をやってのけなくていけなくて,ここがかなりきついだろうと思っていました。

 届いたBS-161は想像していたほど大きくも重くもなく,これなら3時間もあれば作業できるんじゃないかとふんで,夕方から交換作業を決行します。

 最初は古いBS-141H2の取り外しです。まず点検口から手を伸ばし,ダクトを外し,電気の配線を取り外していきます。アルミテープを剥がすのに苦労しましたが,まあこれは大丈夫。あとは電動ドライバーでさっさとネジを外し,落とさないように外してしまいます。

 次にBS-161を持ち上げ,元のネジ穴にネジを入れて固定します。

 しかしこれが大変でした。片腕で持ち上げて位置決めをし,もう片腕でネジを差し込み回さないといけません。最低2本はネジを締めておかないと,重さに耐えかねて落下する危険性もあります。

 なかなかうまく位置決めできず,もうヨレヨレになってようやくネジを差し込むのですが,大きくズレてしまっていて元のネジ穴に刺さりません。刺さっても少し斜めに入り込むと天井の裏側の穴からズレてしまうので,途中で回らなくなってしまいます。

 これを6本でやるんですから,もう大変です。

 しかも,このうち3本は点検口から見えない位置にあります。ネジがきちんと飛び出して固定されているかが目視できないのです。こわいです。

 しかも,頼みの綱の電動ドライバーは,力が強すぎてネジ穴を壊してしまいそうです。ここはしんどいですが,手で回すドライバ-を使いましょう。

 40分ほど格闘して,ようやく固定に成功しました。このうち1本はネジ穴を潰してなめてしまったのですが,ここだけの秘密です。

 次はダクトです。ダクトはフレキシブルパイプをそのまま流用し,本体にはめ込んでアルミテープで固定します。なにせ取り付け箇所が手に入らない場所ですし,目で見えない場所でもあるので,とにかく難しい作業になることを覚悟していました。

 その予想は当たり,ここも40分ほどかかってしまいます。しかも点検口から体を入れての作業で,少し高さの足りない脚立のせいもあって,作業は困難を極めました。

 アルミテープを少し長めに切って,ぐるっと向こう側を回して貼り付けるのですが,アルミテープの端がこちらに来てくれません。無理に回そうとするとくしゃくしゃになったり,他にくっついたりして手に負えません。

 脚立の関係で,片腕は体を支える必要があり,作業に使えるのは実質1本の腕だけです。何度もやり直して,ようやく固定できました。それでも見えているわけではないですし,5mm程の太さの電線を向こう側に回し,引っ張って押して接着したので,上手くいっているかどうかは自分の腕を信じるしかありません。

 心配していてもキリがないので先に進みます。

 次はリモコンです。元のリモコンケーブルは使えませんので,新しいケーブルを古いケーブルの先に巻き付けて,壁側から引っ張ります。すると新しいケーブルの先端が壁から出てきますので,新しいリモコンに取り付けて固定。

 まあ電気屋さんですからね,これくらいは休憩みたいなもんです。

 最後に電源の配線です。これも簡単。被覆を剥いて端子台に差し込むだけです。

 点検を目視で行い,ブレーカーを戻します。一通り動作確認を行い,本当にフラフラしながら作業を完了します。

 音が格段に静かになったことをエネルギー源に,散らかり汚れた風呂場を片付けて掃除します。この時すでに私の体力は限界近くになっていました。

 掃除まで終わったのが,作業開始から3時間後。ほぼ予定していた通りの時間だったのですが,プロはこれをもっと短時間で,しかも一日何件もやるんでしょう?すごいですよね。

 私は夕食も担当ですので,この力仕事の後ご飯も作りました。もう動けないんじゃないかと思うほど疲労していましたが,作業が上手くいき,家族の評判も上々とあれば,そんなに悪い気もしません。

 ということで,36000円ほどで交換作業が終わったわけですが,特別安いという気もしませんし,しんどかったこと,体が痛いことも含めると,なんと面倒くさい話かと思いました。

 静かなことは良いのですが,もともとこれが普通だったことを思い出すと,これまでなんと劣悪な環境だったのかとため息さえ出てきます。

 どうせ数年でまた壊れるでしょう。過度な期待をしないでおこうと思います。

 さて,前述の通り私は電気工事士の資格を持っているので交換作業を行うことが出来ました。これから死ぬまでの間に,こういうことを経験することもそうそうないと思います。壊れたこと,それが自分の手で交換可能なことは,なかなか体験出来ない作業を経験する希有なチャンスと考えて,今回の作業を楽しく行うことが出来ました。

 時間がかかっても,極端に言えば失敗しても自分だけの問題ですから,納得するまでやっても,せいぜい家族が文句を言う程度の話です。アマチュアとは気楽でいいものです。

 そして,私はつくづく体力がないなあと思いました。腕も知識も十分だと思う訳ですが,決定的に不足しているのは体力と経験。経験はやむを得ないとしても体力はもうどうにもこうにも足りないです。

 わずか1件,それもフラフラになりなりながらの作業です。これを毎日毎日何件もこなす仕事は,私には出来ないなあと思いました。別の人生は,こういう理由で閉ざされるものなんですね。

 水栓,浴室乾燥機とくれば,次は食洗機でしょう。

 重量物,電気工事,水道工事,狭い場所での作業と,その難易度はSクラス。本当に自分で出来るのかも疑わしいわけで,出来ればやりたくないものです。

 あと数年,寿命を迎えるまで動き続けてくれることを祈りたいと思います。


 

N-30がES9028で音を出す

 うちにはN-30という安いネットワークオーディオプレイヤーがあります。まだパイオニアがオーディオメーカーとして存在していた頃に,最も安い価格で登場したフルサイズのコンポーネントです。

 SACDの次はネットワークだと予想して,実際にその通りになった現実を見ていると,そのための再生環境がなかなか厳しい事に気が付きます。

 国内メーカーの製品はどれもマイナーな存在,一応10万円クラスの中級機はあるにはありますが選択肢が少なく,そこから上という事になると海外製の超高級機になりますが,そんなものは私にとってはないも同然です。

 中級機で気を吐くのがマランツですが,個人的に言わせてもらえばマランツと言うよりデノンのネットワークオーディオのUIや安定性がとにかく好きになれず,これが理由でマランツはアウトなのです。

 今さっと調べてみると,実売3万円でヤマハの製品が売られており,これがなかなか高評価です。ディスプレイを割り切ってスマートフォンで操作するというUIはこれはこれで潔いかも知れません。

 そんなことを考えていると,N-30を改造するネタを思いつきました。N-30が気に入らないのは音質ですが,これは本気のオーディオはアナログレコードかSACDと考えていた(別に言い方をすれば逃げていた)からで,音質よりはCDを持ってこなくて良いという利便性を優先していた結果です。

 しかし,新しいディスクは買うことがめっきりなくなり,手軽さとフォーマットによる制約から逃げるために私も配信の音楽を買うことが増えました。そうするともうこちらも本気のオーディオにするしかありません。

 かといって,今から20万円の予算を組んでネットワークオーディオを構築するのもなんだかもったいなくて,それならとN-30の延命を考えました。

 N-30の音質は重心が高く,ザラザラとして芯が詰まっていない印象があります。典型的な低価格機の音なのですが破綻はしておらず,安いなりに精一杯頑張っていると思います。

 ただ,これがRaspberryPiとVolumioで作ったプレイヤーに,安いDACを組み合わせたようなライトな感じをを漂わせていて,聴き込んでいこう気分を削いでしまいます。

 N-30はDACがAKMもAKM4480,後段のフィルタはNJM4580で構成されています。AKM4480は安価な機器によく使われているエントリクラスのDACです。悪くはありませんが,やはり軽い印象です。

 NJM4580は安いし手に入りやすいのでバカにされがちですが,私個人はとてもいい音がするOP-AMPだと思っていて,これを上手く使いこなした機器であればわざわざOP-AMPを交換することなどないと思っています。歪率などのスペックもデータシートに書かれた値よりも実力は良かったりするので,下手に海外製の高級OP-AMPにする必要などないなと思う訳ですが,音の傾向はやはり軽めです。

 アナログレコードの音を基準の1つとして考えている私としては,解像度よりも密度や重心の低さを楽しみたいわけで,ならばとN-30を改造することにしました。

 調べてみるとN-30はメイン基板からDAC基板への配線が判明していて,ごく普通のI2Sです。ただ,DAC基板にはそこで使う±15Vにアナログ用電源の回路も搭載されていて,電源の入力はAC30Vです。

 これにあうものを探してみると,ありましたりました。ESSのES9028Q2Mを搭載し,I2S入力のアナログ出力,電源回路込みというまさにおあつらえ向きのボードが3000円弱です。

 この手の基板モジュールは,最近特に中国のメーカーから有象無象に出ているものをよく見かけるようになりました。よく知られているのがLCDとコントローラ基板です。この2つがあればHDMI接続のディスプレイなどは簡単に作れてしまうわけで,私が以前購入した10インチのディスプレイも,これらを使ったものでした。

 コントローラとLCDの間は規格化されているので,まさに目的に応じた物を選んで差し込むだけで出来上がります。確かに中国では,以前ほどではないにせよ人件費も安いと言われていて,それがさも製品価格の安さの理由になっているような印象を受けますが,モジュールを大量に作るメーカーがあり,これを自由に組み合わせてさっと製品を作ってしまう水平分散の産業構造も安さの秘密ではないかと思いますし,そのために彼らは合理的なモジュールの規格化を進めてきたのだと思います。

 オーディオもしかりで,ES9028のような部品レベルで素人が手に入れる事が難しいものでも,こうしてモジュール基板で安価に手に入ります。安くて便利で,夢のようです。

 早速頼んでみましたが,良い設計をしていると一方で,品質管理や保管環境が今ひとつだと感じました。このあたりはもう一息だと思います。

 この基板が搭載するES9028Q2MというDACはかのESSのハイエンド向けDACです。前作のES9018はDACの世界を変えたと言われるほどの高音質で知られていますが,その後継品種として登場したものの1つです。

 2ch専用にすることで回路を簡略化し,小型化と低消費電力化を行ったものがこの基板には使われていますが,基本的な構成と性能は上位のものと同じとされています。この価格でESSの音が楽しめるなんて,ウソみたいです。

  ESS9028Q2Mからの差動電流出力は,NJM5532を使ったI-V変換に入り,差動電圧出力に変換されます。バランス出力端子にはここからの信号が出てきます。

 さらにNJM5534を使ったバランス-アンバランス変換とLPFを兼ねた回路に入力されて,シングルエンド出力として出てきます。

 電源はAC30Vでセンタータップが必要,これに加えてロジック用のACが必要で,これはAC7V程度もあれば十分です。

 入力信号はES9028Q2Mに直接入るもので,MCLK,BCLK,DATA,LRCK,DATAという普通のI2Sです。フォーマットは・・・調べてないのでよく分かりません。

 よく分かりませんが,N-30から取りだしたI2Sをそのまま突っ込むと,都合良く音が出てきました。いろいろなサンプリングレートにも対応するので,問題なく動作しているようです。

 音が出るところまで確認出来たら,後はアナログ部分のアップグレードです。まずI-V変換のOP-AMPを交換です。I-V変換は音質への影響が大きいので,ここは高精度,高音質なものを使いたいです。PCM1704を使った自作のDACでは,迷わずOPA627を使ったところです。

 あいにくOPA627は手持ちもないですし,差動で使いますから合計4つも必要です。そこで手持ちのOPA604の2個入りであるOPA2604を使うことにしました。

 LPFのNE5534は,シングルの音質の良いOP-AMPが手持ちにないのでこのまま使うことにしようと思っていましたが,回路を追いかけると位相補償もオフセット調整も行っておらず,これらの端子はすべてオープンでした。

 ということは,2回路入りのうち1回路だけ使うという作戦がとれます。

 腐るほどある面実装のOPA2134を変換基板に取り付けてDIPにする時,ちょっと足を入れ換えてNE5534として使えるようにしたところ,これが上手く動作してくれました。よし。

 あとは音質に影響のありそうなコンデンサと抵抗を入れ換えていきます。

 まずコンデンサはLPFの時定数に関係する390pFと100pFをマイカコンデンサにします。手持ちの関係です。

 抵抗はI-V変換の560Ω,LPFの時定数に関係するものをすべて金皮に変えます。これも手持ちで済ませたいので,並列に繋いでなんとか値を作り出しました。

 電源は,AC30Vはそのまま流用,デジタル用の電源は流用出来るものがないため,AC8Vのトランスを1つ追加しました。


 少しずつ作業をして3日ほどで完成,今回はトラブルもなく,難しい改造もしないようにしたため,悩むことなく終了しました。

 さて,肝心の音ですが,狙い通りです。これまで硬質で薄い殻のようだった音が,しっかりと中身の詰まった重心の低い音に変わっています。ザラザラとした荒っぽさもとれ,滑らかで上質な音になりました。

 また,位相特性も改善されたのだと思いますが,定位感が抜群になりました。それぞれの楽器がバチッと定位するのはもちろんですが,知れらが平面的ではなく,ちゃんと奥行きが出ています。定位の精度が高まった結果,それぞれの音の発生機構の容積を表現出来るようになっているのだと思います。

 とにかく,密度の高い音である事が素晴らしく,簡単な改造でこれだけ改善するというのは素晴らしいです。

 うちではもっとも高性能なDACが作り出す音が,N-30から出てくる事になりました。N-30をもうバカには出来ません。うちのメイン機材に昇格することになりそうです。

 ところで,20年以上前に作ったPCM1704のDACのアップグレードも検討中です。このDACは私にとっては記念碑的なものであり,現在の私の有り様を決めてくれたありがたい存在です。

 製作当初はPCM1702にSM5842APという組み合わせで最高の音を狙っていましたが,10年ほど経過したところでPCM1704にアップグレードしました。

 8倍オーバーサンプリング24bitデジタルフィルタと24bitのマルチビットDACによる音は他を寄せ付けないものだったのですが,ハイレゾに対応しないため使うことがなくなりました。

 そこでハイレゾ対応にする計画を立てたのですが,あいにくSM5842APの後継に当たるチップはなく,TI純正のDF1706はすでに入手不可能,ここに至って現行システムをそのままハイレゾ化することはあきらめざるを得なくなりました。

 そうなると手は2つあり,1つはデジタルフィルタをなくして直接DACにPCMを突っ込む方法です。一部のマニアの間で評判の方法で,デジタルフィルタが発生させるプリエコーなどの有害な信号が原理的に発生しないことが評価を得ています。

 ハイレゾの時だけ直結という動作も考えたのですが,サンプリング周波数が変わってしまうとポストフィルタの設計を見直さなくてはならず,またここはディスクリート構成のOP-AMPに1次のLPFを担わせて,緩やかなフィルタリングを行うというコンセプトで作ったものですから,安易に変えられません。

 そうなるともう1つの手です。デジタルフィルタとして,非同期型のサンプルレートコンバータを使うのです。

 SRCというのは,極論するとDACで一度アナログにした音をADCで再度デジタルにする処理のようなものです。サンプリングレートを極限まで上げ,量子化ビット数を極限まで上げると,アナログになります。

 サンプリングレートを上げることも,量子化ビット数を上げることも,結局フィルタを通すことですので,SRCも結局はデジタルフィルタです。

 ただ,同期型ではなく非同期型というのは,入力側と出力側のサンプリングレートの比率によって波形や特性が変わってしまうことを覚悟しないといけないので,単純なデジタルフィルタの方がこういうケースでは望ましいと思います。

 非同期SRCを使うとは言え,出力のサンプリング周波数が192kHz止まりじゃ意味がありません。PCM1704が動作する768kHzまで上げられないとダメなのですが,そういうSRCってほとんど見当たりません。

 唯一見つけたのがAKMのAK4137です。ハイエンド向けのSRCということで性能も良いのですが,音質については今ひとつという評判です。

 このSRCを使った基板モジュールも中国製の物を見つけました。時間はかかるでしょうが届き次第,どんなものか確認してみたいと思います。

 同時に発注したCS8416と組み合わせ,192Hzの24bitでPCM1704をならしてみたら,どんな音になるのでしょうか。ワクワクします。

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