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OP-AMP低ひずみ選手権@自作発振器

  • 2011/08/31 00:06
  • カテゴリー:make:

 今日は思い立って,帰宅後に少し検討をしました。

 自作の状態変数型CR発振器のひずみ率が今ひとつな話は先日書きましたが,その対策としてOP-AMPを変えるとどれくらい改善するかが気になったのです。

 室温は30℃,1KHzで出力はアッテネータなしの約8Vです。OP-AMPは2つ同時に交換し,交換の度に再調整を行うことはしません。ひずみ率測定は先日動き出した歪率計を使いますが,これも室温が30℃になっていますし,調整が完全ではないので参考値として評価すべき値であることを前置きします。

・NJM4580D
 もともと指定されていた,日本を代表するオーディオ用OP-AMPです。4558系の素直な音に,低ひずみが誇らしげな定番品種で,また安いんです。
 この値は,0.00876%でした。先日よりも悪い値ですが,これが一応基準となります。

・NE5532
 便利だけどいまいち,とオーディオ用途では敬遠されがちなOP-AMPが,一気にスターダムにのし上がるきっかけになったOP-AMPです。1980年代に彗星のごとく現れ,4558しか知らなかった中学生の私にはまぶしくて直視できませんでした。当時のオーディオ機器にはよく使われたので,我々の世代は知らず知らずのうちに,このNE5532の音をすり込まれたことになりますね。
 なお,今回のNE5532は,シグネティックス製です(ちょっと自慢)。値は0.00868%です。いいんじゃないですか。

・LM4562
 秋月でもさえも1つ250円という高価な新世代OP-AMPです。圧倒的な低ひずみを誇るオーディオ用で,その評判も固まってきました。流れとしては4558系という事なので,音も私の好みかもしれません。
 値は0.00855%。さすが突出した低ひずみ率を誇る最新OP-AMPです。

・TL072
 TIが生んだ,J-FET入力OP-AMPの定番です。それまで高価だったFET入力OP-AMPを,なんと4558と張り合えるくらいに安価にした立役者です。私も大好きです。
 値はちょっと悪くて,0.00945%です。まあ,こんなもんでしょう。

・OPA2134
 こだわりのバーブラウンが生んだ,オーディオ用途を狙った低ひずみOP-AMPです。NE5532をターゲットにしたと思われるFET入力のOP-AMPですが,オーディオ以外の用途には案外使い道のない,しょーもないOP-AMPと言えるかも知れません。私にとって「BB」といえば,それはもうOPA627であり,それ以外は「その他大勢」ですが,それでも「OPA」で始まる型番には,不思議な神通力があります。なぜか面実装品が数百個あるので,もう一生かかっても使い切れません。
 値は,0.00887%です。あれ,こんなもん?

 うーん,まとめると,今時のOP-AMPはどれも低ひずみで,OP-AMPによる性能差というのは,厳しい条件でないと顕在化しない,ということでしょうか。周波数が高いとか,負荷が重いとか,負荷容量が大きいとか,そういう時に差が出るのは当然として,このくらいならそんなに差はでないんですね。

 世代が明らかに古いTL072が一番悪いですが,悪いと言ってもこの程度です。LM4562とNJM4580Dは秋月価格で5倍違いますが,性能差は(今回のケースでは少なくとも)僅かです。

 ということで,LM4562を使うほどでもないですから,OP-AMPについてはNJM4580Dで行くことにしましょう。ちゃんと調整を行ってやれば,ちょっと結果が変わるかも知れません。その時はまた考え直します。

 うーん,OPA2134がもう少しいくと思ったんだけどなあ。

 ・・・ここから先の低ひずみを狙うには,やはりAGCのFETをなんとかしないといかんということか。手持ちのFETに総動員をかけて試してみて,それで駄目なら回路変更でフォトカプラを考えて見ましょう。

1631Bの調整,VP-7201Aの修理,そして歪率計のとりあえずの完成

  • 2011/08/29 19:30
  • カテゴリー:make:

 この土日は,懸案事項がいくつか進みました。

(1)菊水1631Bの調整

 先日,400kHz-3mVという厳しい値で調整を行うのに失敗をしたという反省から,真面目に600Ω・40dBの減衰率のアッテネータを作る事にしました。

 600Ω・40dBのπ型アッテネータには,30kΩと612Ωの抵抗が必要ですが,手持ちの関係で15kΩの金皮を2本で30kΩ,612Ωは620Ωのカーボンと47kΩの金皮を使いました。標準電圧生成用のアッテネータですから,620Ωについては実測をして619Ωのものを2本選別しました。この際温度特性の悪さは目をつぶりましょう。

 こうして作った40dBのアッテネータですが,思いの外上手くできました。一応500kHzまではフラットなようです。また誤差も小さく,ちゃんと1/100の電圧になってくれています。(せっかくですので分解せずこのまま使う事にしましょう)

 土曜日の夜は涼しかったので調整を決行することにしました。室温はちょっと高くて27度ですが,まあ仕方がありません。

 この調整も何度目でしょうか。すっかり慣れてしまい,手際も随分良くなりました。アッテネータ無しで調整出来るところはさっさと済ませて,いよいよ400Hz-3mVと400kHz-3mVの調整です。

 まず,400Hzで300mVを用意します。この周波数ならマルチメータで測定できるので,300mVにあわせます。このとき負荷に600Ωをぶら下げたいので,1631Bに直結しておきます。

 そしてアッテネータをいれて,マルチメータで3mVになっていることを確認しつつ,オシロスコープでも電圧を読んでおきます。

 ここで1631BのVRを調整し,400Hzで3mVになるようにします。

 次にレンジを切り替え,400kHzにします。アッテネータ無しの状態にもどし,オシロスコープで400Hzの時と同じ電圧になるよう,発振器の出力を調整します。

 そしてアッテネータを入れます。この時,アッテネータの出力からは3mVの電圧が出ているはずです。これを直接測定する方法はありませんが,発振器の出力とアッテネータの減衰率が決まっていますので,その出力も3mVになるはずです。

 そして1631Bのトリマコンデンサを調整し,3mVになるようにします。400Hzと400kHzの調整を何度か行うと,綺麗にどちらの周波数でも3mVを示すようになります。

 いやー,気持ちのいいものです。すっきりです。

 最大の山場をクリアし,残りの調整もさくっと済ませて,予想以上に手早く終了。試しに発振器とつないでいろいろな周波数で測定してみましたが,大きなズレもなく,概ね良好な結果になっています。マルチメータの実効値にあわせてありますので,両者がほぼ一致してくれています。

 マルチメータでは300kHz以上の測定は出来ませんから,それ以上の周波数の電圧については「あってるはず」で使わねばなりません。このあたり,ちょっと自信がないのですが,基本的にはオーディオ帯域向けの電圧計と割り切って,まあ100kHzくらいまでで測定値を信用することにしたいと思います。

 ところで,発振器(VP-7201A)は,ステップ式のアッテネータがついています。VP-7201Aの0dBは1V,1631Bの0dBレンジもフルスケールは1Vですので,VP-7201Aの0dBが1Vになるよう,発振器も調整しました。これで3つの機械が一致したわけです。

 で,VP-7201Aのアッテネータを-20dBにして,1631Bも-20dBレンジにすると,100mVでフルスケールになります。これはほぼ正確です。-40dBでもほぼ一致です。

 しかし,VP-7201Aのアッテネータを-10dBに切り替えて,1631Bのレンジも-10dBにしても,メータがフルスケールである300mVを越えて,振り切ってしまうのです。うーん,1631Bが狂っているのか,それともVP-7201Aがあてにならないのか・・・

 賢明な皆さんならおわかりのように,300mVにしたいなら,アッテネータは-10dBではなく-10.46dBにしないといけません。-10dBにしただけだと3.16Vとなり,3Vを越えるため振り切って当然です。「デシベル」がわかってないなんて,情けなくてorzです。

 ということで,アッテネータを-10.46dBにすると,ほぼ0.3Vを示し,-10dBレンジでもフルスケールになりました。1631Bの場合,-10dBレンジで3.16Vを入れると0dBレンジ(1Vレンジ)のフルスケールを示すようになります。VP-7201Aも1631Bも,ちゃんと10dBを扱ってくれているんですね。安心安心。

(2)VP-7201Aの改良

 これは土曜日のうちにやったことなのですが,VP-7201Aのメインダイアルの改善をおこないました。

 というのも,私のVP-7201Aのメインダイアルは,ぽっきりと折れてしまい,全く動かなくなったことがあるからです。

 減速機構を持つメインダイアルはユニット交換ではないので,修理には壊れた部品を交換するしかありませんが,なにせ専用のメカ部品を使って作ってありますので,素人には修理は無理です。

 減速機構はなくなるけど,つまみでも付けとくか,と思っていたのですが,ダメモトでアキバでバーニアダイアルを買ってきて,無理矢理くっつけたのが,前回の修理でした。

 この時,シャフトの長さの関係で,ダイアルとボリューム軸を繋ぐジョイントを付けることが出来なかったのです。結果,ツマミを回してもすぐに周波数が変わらず,手を離しても周波数の変化が止まりません。ボディエフェクトもあるし,そもそも高価な2連ボリュームに応力がかかってしまっています。

 これはいかんと,もともとついていたジョイントを探しますが,どうも捨てたらしく見当たりません。仕方がないので,タイトカップラをサトー電気に注文しました。

 タイトカップラは,絶縁性の高い磁器の円盤の両側にバネ性のある金属を取り付け,これにシャフトを繋いでやると,左と右のシャフトが電気的にも絶縁され,かつ機械的にも分離できるという優れものです。

 こんな部品,私は写真でしか見たことがなかったのですが,今回初めて買ってみました。このタイトカップラにあわせてボリュームの位置を調整し,上手く間に挟み込むことに成功しました。

 結果ですが,なかなか良い感じです。回転は相変わらずスムーズではありませんが,これはバーニアダイアルの素性なのでやむを得ませんが,ちょっと手で触ったくらいじゃ周波数は動きませんし,手で回せばさっと変化し,手を離せばぱっと変化が止まります。

 こういう問題が解決することはわかっていたのですから,どうしてもともと付いていたジョイントを使わなかったのかと理解に苦しむところですが,当時の私がVP-7201Aをなめていたというのは,事実でしょう。


(3)歪率計をとりあえず完成

 翌日の日曜日には,電源と発振器,そしてBEFだけ出来上がり,あとはアンプ基板と全体の配線を残すのみとなった(しかしこれが一番きつい)歪率計の組み立てをしました。

 おかげさまで,2時間ほどで完成,ややこしいロータリスイッチの周辺もなんとか乗り越えました。

 ただし,この日の室温は30度近くあり,ここで調整を行うのは無理ですので,前回エアコンで25度にしたときの調整をそのまま利用して,暫定的に測定をしてみることにします。

 どうも,時々フィルタが発振したり,ノイズが乗って値が狂ったり,10%レンジで調整不良があって10%レンジでの測定値が大きく狂ったりと,問題がないわけではありませんが,1%レンジでマルチメータを繋げば,歪み率が直読できます。

 VP-7201Aの1kHzを測定すると,0.0012%。0.1%レンジでも似たような値が出てきましたので,これはほぼ実力でしょう。なかなかいいんじゃないですか。100Hzも10kHzもなかなか良いのですが,10kHzについては歪率計の周波数特性が高域で落ちている可能性があり,もし落ちていたら低めに出ますので,これは確認してからにします。100Hzは1桁ほど悪いのですが,これも50Hzのハムが載っている可能性があるので,調べてからにしましょう。

 VP-7201Aがなかなかよかった事に気をよくして,自作の発振器の測定もやっています。ところが,100Hzは発振しない,10kHzは異常発振する,1kHzは結構歪みが大きいのです。

 1kHzを発振ギリギリに調整するとかなり歪みも小さくなりますが,この時10kHzが異常発振します。そこで収束時間の調整を行うとなんとか異常発振が収まりました。しかし相変わらす100Hzは発振せずです。

 100Hzが動作しないのはハンダくずによるショートか異常発振か,まあなんかだろうと思っていましたが,OP-AMPを指で触ってみると,あっちっちです。発振を疑ったのですが,オシロスコープには何も波形は出ていません。電源電圧は+15Vが1v近く下がっています。これはおかしい。

 ハンダくずのショートを確認するために,ネジを外して基板を裏返し,目視で確認しますが問題はありません。このまま通電すると,なんと100Hzが機嫌良く発振しているではありませんか。


 ますと,金属製のスペーサが100Hzの回路の一部に接触していて,ケースと繋がっていました。OP-AMPの出力がGNDに落ちてしまい,それで発振が止まってOP-AMPが発熱,電源電圧も下がってしまったんですね。

 こういうストレスがかかった部品を計測器に使うというのもどうかと思うのですが,気を取り直して再調整,そして測定です。

 100Hzと10kHzは前述の理由で後日計り直しますが,1KHzについては0.0063%でした。まあ,悪くない数字ですが,VP-7201Aに比べて6倍も悪い数字です。100Hzでの発振を無視するのなら,0.0002%くらいまで下げることが出来ることは確認したのですが,これでは1kHz専用になってしまいますからだめです。

 もう少し良い数字が欲しいですから,この発振器の改造も視野に入れて検討したいと思います。やるべき事は2つ。1つはOP-AMPをもっと低歪みなものに交換することです。現在のNJM4580Dもかなり良いOP-AMPですが,これを例えば同じく低歪みで知られるOPA2134(手持ちがあります)にするというのも手です。ただ,面実装品なので変換基板を作らないといかんですね。それに,オーディオ用と狙ったOPA2134は,案外こうした用途には弱かったりします。NE5532や実はTL072なんかの方が良かったりしますので,これはもうやってみるしかありません。

 もう1つは,AGCにJ-FETを使わず,フォトカプラを使う方法です。これはもう回路が違った物になるので,真面目に検討しないといけませんが,もし歪みが減ったらいいなと思います。

 実は,AGCのJ-FETは,同じ品種,同じランクのFETと差し替えても歪み率が変わるくらいのものなのだそうです。言ってみれば当てずっぽうという気もしますが,それがFETを使った回路の限界と言うことかも知れません。だから他のFETに交換するだけで結果が大きく変わる可能性もありますが,それならいっそのことフォトカプラに交換してもいいかな,と思っています。

 どちらにしても,歪率計がちゃんと信用出来るようにならなければいけません。まだまだやらねばならないことがありますが,これまで見えなかったデータが見えるようになるというのは,なんと面白いことかと思います。

 完成したら,いろいろやりたいんですよね。先日作ったHT82V739のアンプやら,先日メンテしたばかりのMOS-FETアンプ,300Bのシングル,6V6シングル,5998プッシュプルなど,作ったアンプの素性を調べたくて仕方がありません。

夏だ!一番電子工作祭り!

  • 2011/08/22 18:32
  • カテゴリー:make:

 先週はまるまる1週間,夏休みでした。

 私は学生時代はフルタイムで働いていたので,夏休みなどはありませんでした。そういう意味では,丸一日家に閉じこもって,好きなことをただひたすらやるだけの生活をこれほど毎日堪能した夏休みというのは,実に高校生の時以来だと言えます。

 社会人になってから,これほど印象深い夏休みになったことは,私にとって大きな意味を持ちます。

 というわけで,この長い夏休みの成果を列挙しようと思います。この夏休みのテーマは「夏だ!一番電子工作祭り!」でした。いやー,中学生以来だなあ。


・松下 RC低周波発振器VP-7201Aのメンテ

 VP-7201AはRC発振器の癖に,なかなかの低歪みをたたき出す,当時の定番でした。出力レベルが0.1dB刻みのアッテネータで調整出来ることもなかなか素晴らしいのですが,10年ちょっと前に私の手元に来たときには満身創痍。

 周波数調整用のダイアルは根本から折れてしまい,アキバで売っていたバーニアダイアルを分解して取り付けてなんとか修理をしましたが,徐々に100Hz以下で発振しにくくなってきたのと,各レンジの4xから5xあたりで突然発振が止まるなどの問題を出していました。

 もともとRC発振だし,どうせ歪み率も0.1%くらいだよ,と調べもせずに放置していたのですが,偶然仕様を見たところ,なんと1kHzで0.002%を実現していました。うーん,このだと修理しないともったいないですね。

 回路図が手に入らなかったので,回路をざっと見た限りですが,状態変数型の発振回路で,フィードバックにモリリカのMCD521という有名なフォトカプラを使って,低歪みを実現しているようです。トラッキングも管理された2連ボリュームも奢られています。現在でも中古品が15000円以上するということからも,この手の発振器としては,なかなか良くできた人気機種です。

 とりあえず,劣化していると思われる電解コンデンサを全て交換しました。交換して見ると,足下から電解液を出しているものも多数見つかりました。危ない危ない。

 電源を入れてみるとさっと発振を開始して,壊れている様子はありません。オシロスコープで波形を見ると,波形も綺麗です(まあ0.5%でも目視で分かるほど歪みはしませんが)。

 100Hz以下での発振も安定していますし,なんといっても面倒だった4xから5xでの発振が止まりません。電解コンデンサを交換しただけで,これだけ状況がよくなるとは,ありがたい話です。

 この勢いで調整まで済ませてしまいたい所ですが,サービスマニュアルが手に入らなかったのであまり適当にいじるとかえって状況を悪くします。とりあえず電源電圧を測定して出力レベルを校正(0dB = 1.0V),DCオフセットを0Vにしてから,フォトカプラのフィードバックを調整してギリギリ発振するところを狙っていきます。こうすると歪みが小さくなるのです。

 10Hzと500KHzで同じレベルになるように,それらしいトリマやらボリュームをちょっとずつ回していきます。あとは,レンジを切り替えたときに,2,3かい程度で振幅があるレベルに終息してくれればそれでもう大丈夫。

 歪率計がないので,私ができる事はここまで。後述する自作の歪率計が完成したら,まず調べてみたいですね。


・菊水 交流電圧計1631Bのメンテ

 中越地震の日に蒲田のカマデンで買った1631Bです。平均値を正弦波の実効値で目盛ってあるなんちゃって実効値電圧計ですが,見やすいアナログメータに-80dBまで測定出来る高感度,それに見た目にかっちょいい(これとオシロスコープを並べておくと,大体の素人は「おおおー」と声を上げます)ので,なくてはならない測定器です。

 これも電解コンデンサを交換しましょう。こちらの電解コンデンサはそんなに劣化している様子はありません。もともとそんなにおかしな動作をしていたわけではないのですが,菊水のホームページで取説と調整法も手に入ったことですので,調整をしてみます。

 詳しい手順は書きませんが,実はなかなか難航しました。まず,基準となる電圧計を決める必要がありますが,実効値が測定出来て1MHzあたりまで帯域が伸びているのは,先日購入したDL2050だけです。これを信じるしかありませんが,考えてみると長い単線で繋がった電圧計が,特に高域かつ低レベルの状態で正確な値を表示するとは思えず,発振器の正弦波を測定しているのやら,ノイズを測定しているのやら,わからない状態でした。おかげで,400KHz・3mVでの校正で調整範囲を超えてしまい,作業を翌日に持ち越す羽目になりました。

 ずるい方法なのですが,発振器からは1V程度とノイズの影響を受けにくい電圧を取り出し,外部に用意したアッテネータで3mVを作る事にします。400Hzで3mVになれば,400kHzでも3mVになるはずと言う間接的な方法に頼ることにしました。

 調整をしてみると,なんとなくそれらしい値を示すようになり,各レンジ間でのバラツキも小さく収まっています。DL2050のようなデジタルメータに比べて読み取り誤差が大きいと言われるアナログメータですが,ほんの少しの変動でも針が動くので,正確な値は分からなくても相対的な状態の確認には,やっぱりアナログがよいなあと,再認識しました。

 とはいえ,やっぱり400KHzの3mVなんてのは,なかなか素人では用意が難しい信号です。今回の校正の結果としては,実用になるのは可聴帯域である20KHz位までだなと,ある程度割り切って使う必要があるかも知れません。


・ハンダゴテのパイロットランプ増設

 私はハッコーの936というハンダゴテを使っていますが,このハンダゴテの欠点の1つが,通電中を示すランプがないことです。唯一のLEDはコテのヒーターがONの時に点灯するものなので,電源が入っていても消えるときがあります。

 実は先日,一晩電源が入りっぱなしだったことがありました。しっかりしたコテ台もありますし,滅多なことはないと思いますが,先日オシロのプローブを溶かしたこともあり,ぞっとしました。

 そこで,切り忘れがないよう,目立つパイロットランプを用意することにしました。穴を開けてLEDを増設する手もありますが,基板から直流電源を探し出すのも面倒なら,その改造で特に安全性に影響がないとも限りません。

 そこでAC側で光るネオンを使います。また,私は936の本体を,電源スイッチが上に来るように横に倒して使っています。このスイッチをネオンランプ内蔵型にすれば,綺麗に収まりますね。

 偶然,手持ちに同じサイズの波動スイッチで,ネオンランプ内蔵型がありました。2回路タイプですので,2極を同時に切ることができて安心ですし,抵抗とネオンランプも配線済みですので,スイッチを取り付けるだけで光ってくれます。これ,また買っておこう。

 1時間ほどの改造で,どこにも穴を開けずに,目立つパイロットランプを取り付けることが出来ました。切り忘れはありませんが,トイレに行くときもこまめに電源を切る癖が付きましたし,チラチラとパイロットランプを見ることも多くなったので,この改造は本当にやって良かったと思います。


・安定化電源器の検討

 小学生の時に,共立電子のキットで作った1-14V・3Aの安定化電源器は,今でも重宝しています。精度やノイズ,安定性,電流の制限機能がないなど,それほど高いスペックではありませんが,普段使っていて特に問題を感じません。

 ただ,よく使う電圧調整用のボリュームが16型の安物で,25年も交換していないので,気になっていました。

 偶然,30型の2kΩで日本メーカーの高級品を手に入れたので,これに交換しようと思ったのですが,もともと10kΩですので,無改造というわけにはいかんでしょう。

 当時の説明書をみると,5kΩのボリュームが入ったキットもあったようで,その場合にはある抵抗の値を変えるようにと指示がありました。

 まあなんとかなるだろうと2kΩにしてみましたが,電圧可変範囲が狭くなり,ちょっと使い物になりません。さらに手持ちを探して24型の5kΩを見つけ,説明書通りに改造しましたが,やっぱりだめです。

 基板も古くなっており,簡単にパターンも剥がれてしまうので,無理に改造をしないで,潔く10kΩのボリュームを買って来ることにします。この時,同時に電解コンデンサも交換することにしましょう。


・GPS時計の改良

 以前,GPSモジュールを使って時計を作ったわけですが,私の作例ではLCDに大型のものを使いました。このLCD,大型は結構なのですがバックライトがなくて見にくく,結局見る事がなくなっていました。

 そこで手持ちの,バックライト内蔵の物に交換することにしました。秋月で売られている,白色LEDバックライトで,文字が白抜きになるやつです。

 抵抗を入れていたのに,勘違いして電源直結でLEDに過電流が流れて大ピンチ,とか,さすが鈍くさい私だなと思うような事故も起こしつつ,1時間ほどで作業完了。おかげでとても見やすく,作業台に置いてもさっと視線を動かすだけで正確な時刻がわかります。これも改造して良かったと思います。

 それにしても,雑誌に出ているGPS時計の作例は,相変わらず1PPS出力のないGT-720Fばかりです。これで原子時計の精度!なんていうのは超ウソっぱちだと思うのですが,そういう意味では最近の電子工作の世界は,とてもレベルが下がったなあと思います。そういえば,「最先端の有機ELを使った工作」といいつつ,実は発光原理も歴史も異なる無機ELを使った工作だった,という詐欺まがいの素人工作も雑誌に出ていました。

 そういうならおまえが雑誌に載せろ,となるわけですが,機会さえあればぜひやりたいです。アマチュアの心を知るプロのエンジニアが最大の配慮を行ってウソのない電子工作を行うとどんな物が出来るか,見せてやりたいところです。ふふ。


・歪率計の自作

 テスター,オシロスコープ,低周波発振器,そして交流電圧計が手に入り,オーディオ機器の自作が一通り出来るようになると,次に欲しくなるのは,歪率計です。文字通り歪みを測定する測定器ですが,これは系の直線性を確かめるために必要で,他に代用品がありません。

 原理は簡単で,例えば1kHzの正弦波を系に突っ込み,出てきた信号に1kHz以外の周波数の成分が出てきたら,それがすなわち系の非直線性から生まれた,いわゆる「歪み」の成分です。

 そこで,歪みを含んでいない系への入力の信号をある電圧に決めておき,系からの出力信号から1kHzをフィルタでカットして,その電圧を測定してから,入力の電圧との比率を出してやると,歪み率が求められるというわけです。

 とはいえ任意の周波数で歪み率を測定出来るようにするには,周波数の可変が可能な低歪み発振器と,カットする周波数を可変出来るフィルタを用意しなければならず,しかも測定時にはこの周波数をぴったり同調させなければならないので,操作がとても大変です。

 これらを自動化した測定器が「オーディオアナライザ」と呼ばれるもので,特にCDが登場してからの低歪みアンプを測定するために,新しいオーディオアナライザはとても高性能な発振器とフィルタを内蔵しています。

 しかし,このオーディオアナライザは新品を買えば軽く100万円,中古でも20万円近くします。最近安くなったとはいえ,それでも10万円程度は最低覚悟しないといけない測定器の最後の砦なのです。

 それでいて使用頻度は低く,アンプを作ったときに1度か2度使うだけ,と言う状況ですから,価格もそうですし置き場所ももったいないです。そこで自作という話になるわけです。

 私の場合,トランジスタ技術の2000年6月号に掲載されたものを,そのまま作る事にしました。ここまでの高性能なアナログ回路をきちんと設計して製作できるほどのスキルは,私にはありません。

 この回路は,100Hz,1kHz,そして20kHzの3ポイントの歪み率を測定出来るもので,最小レンジは0.1%です。0.1%レンジで1Vを示せば0.1%ですから,もし100mVなら0.01%,10mVなら0.001%,1mVならなんと0.0001%まで測定可能です。

 ただし,20kHzよりは10kHzの方がありがたいので,ある方の改造例を参考させて頂いて,10kHzに回路を変更しました。

 同時に低歪みの発振器も必要なので,これもトランジスタ技術2003年7月号のある発振器を作る事にしました。抵抗とコンデンサをロータリースイッチで切り替える事にし,必要な3つの周波数を発振できるようにしました。フィードバックの電圧制御抵抗にJ-FETを使っていますので,実はVP-7201Aの方が低歪みかも知れません。

  3年ほど前からコツコツと部品を集めてありましたが,なにせ部品点数も回路規模も難易度も過去最大級の工作です。時間が取れないという理由で尻込みし,なかなか取りかかることが出来ませんでした。

 そこでこの夏休みを使って,作ってしまおうと考えたのです。

 しかし,実に手強い相手でした。1枚の基板にフィルタが3つ,これが3つの周波数で9個の回路ブロックが存在します。これにリレーを使った全体のコントロールブロックにプリアンプと出力バッファ,そして電源回路に発振器と,基板の数は全部で6枚,すべて手で配線です。

 1日6時間頑張っても,最終日までに完成しませんでした。

 結局出来たところまで,ということになりますが,ケースの穴開けは完了,各周波数のフィルタは動作確認と調整を完了してあり,あとはコントロールブロックの動作確認と配線を行えば,一応完成となります。

 実は残った作業がなかなか面倒で,時間がかかります。週末にコツコツとやっていくしかないですね。


・低歪み発振器の製作

 先程のひずみ率計のケースに内蔵する,低歪み発振器です。先に書きましたが,トランジスタ技術の2003年7月号に掲載された回路で,状態変数型の低歪み発振器です。

 3つの周波数を切り替えられるようになっているのですが,アッテネータは面倒くさいので普通のボリュームを使っています。

 ただ,周波数の調整と歪み率の調整については,バーンズと東京コスモスの多回転型を奢りました。こういうのを使うのが,夢だったんだよなあ。

 基板が狭かったせいで無理な配線を強いられてしまい,安定して動くか心配になりましたが,いくつかの配線ミスを修正すると,スパッと発振してくれました。周波数の調整は多回転ボリュームのおかげでなかなかうまくいきそうです。

 あっさり動いてしまいましたが,オシロスコープでの波形を見る限り歪みもなく,かなり期待できそうな感じです。歪率計が組み上がったら,この発振器の歪率を測定してみたいと思います。


・ん,まてよ?

 これを書いていて気が付いたことがあります。

 1kHzの正弦波が0.9V,2kHzの正弦波が0.1Vの波形があったとします。1Vのこの波形の歪み率は,(0.1/0.9)*100=11.1%です。これが高調波歪み率の定義に従った真の値です。

 この波形を,自作の歪率計に入れてみますと,1kHzと2kHzの和である1Vを分母に,2kHzの高調波である0.1Vを分子にして,(0.1/1.0)*100=10%となります。1.1%もズレが出るのですね。

 測定器で有名なエヌエフ回路ブロックのホームページの解説を読むと,この方式の歪率計では,30%以上の歪率では誤差が大きくなるとあります。1kHzが0.9V,2kHzが0.3Vだったら真の歪み率は(0.3/0.9)*100=30%ですが,これが自作の歪率計では(0.3/1.2)*100=25%となります。なるほど,5%も少なめに出てくるとさすがに問題ですね。

 では,0.1%あたりだとどうでしょうか。1kHzが0.999V,2kHzが0.001Vとすると,真の歪み率は(0.001/0.999)*100=0.1001001%です。自作の歪率計では(0.001/1.000)*100=0.1%となり,その差は0.0001001%とごくわずかです。これなら無視しても構わないでしょう。

 同じように1%だとどうでしょうか。1kHzが0.99V,2kHzが0.01Vとすると,真の歪み率は(0.01/0.99)*100=1.0101%です。自作の歪率計だと(0.01/1.00)*100=1%で,その差は0.0101%です。まあ,このくらいなら読み取り誤差に埋もれてしまうでしょう。

 次に,真の歪み率が0.01%の信号を使って,0.1%の歪み率の系を測定するケースを考えます。

 まず0.01%の信号ですが,1kHzが0.9999V,2kHzが0.0001Vの波形の真の歪み率は0.0010001%です。自作の歪率計では0.01%となりますね。その差はわずかです。

 測定対象の系の歪み率は0.1%です。これは1Vの1kHzを入れると,2kHzが0.001V発生する系です。

 この系に,0.01%の信号を入れて見ます。1kHzは0.9999Vのまま変わりませんが,2kHzは0.0001V+0.000999V=0.0010999Vになります。真の歪み率は0.110001%,自作の歪率計では(0.001099/1)*100=0.1099%となります。両者の差はごくわずかですが,本来0.1%となって欲しいところが,発振器の歪みである0.01%がのってしまいました。

 まあそれでもこの程度なら許せるでしょう。では0.1%の発振器しか手に入らなかった場合はどうなるでしょうか。

 同様に計算をします。1kHzが0.999V,2kHzが0.001Vで,真の歪み率は0.1001%です。自作歪率計では0.1%です。

 これを0.1%の歪み率の系に入れると,2kHzは0.001999Vになります。1kHzには変化はありません。よって真の歪み率は0.2001%となります。自作の歪率計では0.1999%です。同じように,両者の差はほとんどありませんが,発振器の歪みがそのままのってくるため,実際には0.1%の系が0.2%と測定されてしまいました。

 ノッチフィルタを使った歪率計など,私はほとんど使ったことがありませんから,測定結果が真の値からどのくらいずれるのかを意識したことなどありませんでしたが,今回の自作歪率計を使いこなすには,このあたりもちゃんと整理しておくべきでした。

 結論としては,

(1)今回自作する歪率計は,分母に入力信号の電圧がそのまま入るため,高調波の電圧も含んでいる。本来の歪み率の定義から考えると分母には基本波のみの電圧が入るべきであり,この歪率計は正確な歪み率を測定できない。

(2)高調波が分母に含まれるとは言え,低歪みな信号ならその量は少なく,1%以下の信号なら歪み率の誤差は無視して良い。

(3)しかし30%を越えるような大きな歪み率の場合には,分母の値が大きく変わってくるので,実際の歪み率よりも小さく出るようになり,その誤差も無視できなくなる。

(4)今回自作する歪率計は,発振器とフィルタの間に挟んだ系で発生した高調波だけを測定するわけではないので,発振器そのものの歪み率を測定することも可能。

(5)系が発生する高調波は,発振器の高調波に加算されて測定されるため,発振器の歪み率以下の値を測定することは出来ない。従って入力される発振器は十分に低歪みである必要がある。


 どれも考えてみれば当たり前のことですが,では誤差が実際にどのくらいになるのか,発振器の歪みをどう考えればいいのかどうか,など,モヤモヤしたまま測定するのはよろしくありません。原理を知り,回路を知り,結果を知る。測定器自作の醍醐味というのは,実はこのあたりにあるのかも知れませんね。

「ステレオ」付録スピーカーの行き着く先

  • 2011/07/26 12:20
  • カテゴリー:make:

ファイル 494-1.jpg

 「ステレオ」の付録だったスピーカーキットと,これに合うように設計されたエンクロージャを手に入れたわけですが,その後の話です。

・アンプを作る

 なんといっても,アンプがなければ音が出ません。手持ちのアンプとしては6V6シングルがありますが,まさかこのスピーカーをでかい,おもい,熱いの三重苦の真空管アンプでならすわけにもいかず,どうしたものかと思案しておりました。

 もともと,音質に不満のあるテレビ用のスピーカーを考えていたので,そんなに爆音が出る必要もなく,また超高音質であることもないので,小さく気楽に作る事を念頭に置きます。

 最近,作りやすさ,値段の安さ,そして出来上がったアンプの音質の良さから自作愛好家に間で定番化しつつある,HT82V739を試してみます。秋月で1つ50円。大阪のシリコンハウスでもこんなもんでしょう。

 このIC,よく調べてみるとなかなか優れものです。現時点で欠点が見当たりません。電源電圧は5V単電源,出力は8Ωで1.2Wと電源電圧5Vの時に取り出せる出力としては目一杯です。

 BTLですので出力に大きなカップリングコンデンサは必要なく,部品点数も減って小さく作れる上に,低音再生能力を邪魔する物がありません。外付けの部品は入力のカップリングコンデンサ,基準電圧のカップリングコンデンサ,電源のカップリングコンデンサの3つだけです。

 CMOS構成なのでスタンバイ時の電流が少なく,わずか1uAです。CE端子を使ってやれば電源スイッチなどわざわざ設ける必要などなさそうです。

 それでいて,S/Nが70dB以上,歪み率が0.18%と,すでにHi-Fi領域といっていい性能を誇ります。部品の数が少ないという事は再現性も高いという事で,このICを5Vという低い電圧で使うだけで,十分な性能の高音質アンプをいとも簡単に作る事が出来てしまうんですね。

 しかも50円ですからね,これは安いですよ。

 実際,アンプ部を作ってみると,なかなかいい音がします。ノイズも聞こえず,歪みも少なく,低域も高域も素直に伸びており,位相特性もなかなか良さそうです。これは気に入りました。

 5V-2AのスイッチングのACアダプタを使う事にしましたが,電源の弱さとノイズが気になったので,3300uFの電解コンデンサを電源に追加しました。これでゆとりが出てきました。

 ケースはタカチの小型ケースに入れます。ABS製ですが,前後のパネルが分解できるので加工も楽です。実際の加工は基板に載せる部品が決まって,基板を固定する位置がきちんと判明する最後に行います。


・自動電源スイッチ

 テレビ用ですので,いちいち電源を入れるのは面倒ですし,音量がリモコンで変わらないのも面倒です。そこで,テレビのヘッドフォンジャックから音声信号を取り出し,音が出なくなったら自動的にスイッチが切れるようにする回路を作ります。

ファイル 494-2.jpg

 定数が中途半端な値になっているのは,あとでカットアンドトライを行ったためです。

 音声信号をまず増幅し,ダイオードで整流してからコンデンサで遅延を作り,これをもう1つのトランジスタで反転させて,アンプICのCE端子に入れてやります。

 お手本などありませんので,トランジスタを2つ使って自分でコリコリと設計します。時間のあるときにLTSpiceでシミュレーションをやりつつ,こんな物かなと言う定数を決めて,休みの日に作ってみました。

 結果,かなりの大音量を入れてやらないと,安定してスイッチがONにならないことが判明。というのは,せっかくアンプICのスタンバイ電流が1uA程度なのに,このスイッチ回路が何mAも食うようでは本末転倒なので,消費電流を絞り込んだ設計を行ったせいです。

 動作を確実にするならオペアンプを使うとか,デジタルICを使うとか手もあるのですが,それなりに大きな電流を悔います。そこでディスクリートで組んでみたのですが,なかなか上手くありません。

 消費電流と動作感度のトレードオフで,なんとか妥協できる抵抗を選んで,この回路は完成とします。

 当初の設計では,電源OFFじはアンプのスタンバイ電流も入れて28uA程度でした。しかしこれでは確実にONになってくれないので,上記の定数に変更しています。上記でおよそ60uAです。


・だがしかし

 バラック状態で音が出るようになったので,スピーカーに繋いでみました。先日エッジにドライバーを突き刺して穴があいたスピーカーは,ゴム接着剤の残りを塗って,穴をふさぎました。変なよじれも出ず,まともに音が出ているのでもう良いことにします。

 音を出してみると,どうも片側だけ歪みが大きいことに気が付きました。エッジの補修を行った方ではありませんので,原因は別です。

 最初アンプを疑いましたが,左右を入れ替えて見るとスピーカーについて回るため,スピーカーが原因と断定。このスピーカーだけでならしてみると,確かに音が歪んでいます。

 おかしいなあ,ボイスコイルのリード線でもコーンに触れているのかもと裏側を見ましたが接触はありません。

 手でコーンを前後に動かしてみると・・・カスカスとこすれる音がするではありませんか。

 やってしまいました。ボイスコイルがどこかに触っているようです。それだけはないようにと気を遣って作ったのに,これだけ派手にこすれるというのは,自らの鈍くささに嫌気が差します。

 しかし,あきらめるわけにはいきません。もうこのスピーカーはテレビ用に使い道が決まっているのです。今さら「あかんかった」では済まされません。そこで禁じ手です。

 まず,コーンをいろいろな方向から,少し斜めに押し込んで,こすれないところがないか調べます。幸い,狭い範囲ですが,こすれずストロークする場所が見つかりました。

 要するに,この方向にフレームをゆがめれば,こすれなくなるわけです。フレームを少しずつペンチでゆがめますが,さすがに手強いです。昨年のP650に比べて口径も大きい分,なかなかこすれが取れません。

 悪魔が耳元でささやきます。ハンマーでやっちゃえよ,と。

 私は言われるがままハンマーを持ち,ゴンゴンとフレームを叩きます。フォステクスのエンジニアが見たら気を失うような光景です。

 しかし,なんとこすれがなくなりました。こんなあっさり行くとは思いませんでした。音を出してみると,少なくとも歪みはなくなり,左右でバランスの取れた音が出ています。これで問題は解決です。

 しばらく音を聞いていましたが,フルレンジらしい定位のよさ,そして中域のエネルギーにバランス良い周波数レンジと,大変好ましい音が出ています。大変気に入りました。


・だがしかしっ!

 喜んでテレビに繋いで,その音の良さに期待を膨らませますが,いざスピーカーを置く場所を探すと,全くありません。

 試行錯誤をしますが,そのうち嫁さんの目が怒ってくるのがわかります。そして30分ほど格闘した後,「ただでさえ危険なものであふれる我が家が,これ以上危険なもので占拠されることに,私は耐えられない!」と,決定的な一言を吐き出し,このスピーカーは,職を失うことになりました。


・そして伝説へ

 失意のうちに検討部屋に撤収した私とスピーカーとアンプ。私は,MacBookProにまともなスピーカーがないことに気が付き,新しい活躍場所として彼らに与えることにしました。音声スイッチもちょうど便利に動くことでしょう。

 PCスピーカーである以上,ローカルの音量ツマミは必要でしょう。ケースに穴をあけ,ボリュームを取り付けます。自動電源スイッチがONになるとLEDが点灯するようにしてありますし,また強制的に電源をONにするスイッチも付けますので,3つの穴がフロントにはあきました。

 問題は背面です。DCジャック,スピーカー,そして音声入力です。DCジャックは手持ちのアダプタに合致したもの,スピーカーは3.5mmのモノラルジャックを2つ使い,入力は3.5mmのステレオジャックを使います。

 それぞれ端子を基板に取り付け,基板をケースに固定することにします。まずリアパネルに基準線を入れるのですが,ゆがんだので弾き直します。2本の基準線が出来てしまったので,気をつけて作業しましょう,。

 基準線上に,ジャックの1つに合わせて穴を開けます。いい感じです。もう1つあけましょう・・・あれ,なぜゆがんでいるの???

 基準線を間違えました。

 だーっ,気をつけようといった矢先に,違う方の基準線で穴をあけてしまいました。

 仕方がありません,穴を大きくしてごまかしましょう。

 次に,入力ジャックです。気をつけて,正しい基準線上に穴をあけます。が・・・なぜゆがんでいるの???

 このジャックは先程のモノラルジャックと違う品種なので,同じ高さではありません。

 だーっ,今度ばかりはもうだめだ!

 やむを得ません。もっと大きな穴を開けて,3つのジャックが通るようにしました。DCジャックの穴開けはうまくいきましたが,これはあまりに不格好です。

 そこで,カメラ修理用の薄いモルトプレーンをリアパネルと同じ大きさに切り出し,少し小さめの穴を開けて,ジャックの大穴を隠すことにしました。うん,これならばれません。

 アルミの大きめのツマミを取り付け,なんとか様になったところで,MacBookProの横に置いて音を出してみます。なかなかいい感じです。8cmのフルレンジですので,ニアフィールドでちょうどいい音がします。

 音量ツマミを付けましたから,Macからは最大音量を入れてやると,上手い具合に自動電源スイッチが動いてくれます。


・そして

ファイル 494-3.jpg

 P800というフルレンジスピーカーはバランスの取れたユニットで,これ用に作られたエンクロージャP800-EはP800をうまくならす箱に仕上がっています。設置のための底面積も小さく,MacBookProの横に置いても机が狭くなることはありません。

 1.2Wという出力には,少し小さいかなあと言う心配もありましたが,ニアフィールドで使っているとフルパワーで動かすことなど考えられません。それだけ十分なパワーを持っています。

 スピーカーが近いと気になるノイズや定位の問題も全く問題とならず,これだけ簡単にできるアンプとしては,あまりに良くできたものと感心します。

 惜しいのはテレビに使えなかったことですが,置き場所の関係ですのでこればかりはもうどうしようもありません。

 音楽を聴きながら作業をすると,私は気が散ってミスをするし,音楽も楽しめない不器用さですので,実はあまりスピーカーを欲しいと思った事はありません。しかし,作業をしないとき,BGMとして気軽に楽しむことや,他のソーズをスピーカーでちょっとならして見たいときなど,便利だと思います。

 お金も手間もかからなかったので,これはこれであり,でしょう。

さようならFCZコイル,ありがとうFCZコイル

  • 2011/06/08 16:45
  • カテゴリー:make:

 FCZコイルがとうとう製造販売停止になりました。

 今さら説明の必要もありませんが,かのJH1FCZ大久保OMが作った,アマチュアのための高周波コイルシリーズがFCZコイルです。中波,短波,超短波などのアマチュアバンドを網羅し,ケースのサイズも10mm,7mm,5mm角と揃っています。使いやすく,再現性が高く,設計する側も作る側もこのコイルを使えばもうコイルは心配なし,使いこなしのノウハウも蓄積され,全国のパーツ店で手に入る入手性の高さに安価なお値段と,至れり尽くせりのコイルです。

 その誕生は大久保OMいわく,「かつて雑誌の記事を書いたとき,コイルを自作するように書いたら,コイルがうまく作れずに,それが原因で動かないという人が出た,当時一般的だったコイルの自作は実は再現性に欠ける・・・」

 そこで,大手コイルメーカーの製品を使う事にしたのですが,コイルが結合しないようにシールドを考えないといけなくて,これもまた再現性に難あり。適当なものがないなあと考え込んだ大久保OMは,ないものは自分で作ろうと考えて,FCZコイルを手がけることになるのです。1977年の誕生から30年以上,もっとも厄介なコイルでアマチュアを支え続けてくれました。

 FCZコイルでは,アマチュア無線で使われる各バンドのコイルをバンドごとに1種類ずつ用意してあります。それぞれは突出した特殊な性能をもっているわけではありませんが,平均的性能で,むしろ汎用性を高めてあります。そして回路全体の性能は,トランジスタの性能の向上に任せています。

 そんなことが出来るのかと,高周波の素人である私などは???な訳ですが,結果は疑いようもなく,高い汎用性,シールドケースに入った使いやすさと再現性の高さで,アマチュアの電子工作には欠かせない部品となりました。

 欲しいときにすぐに手に入ること,種類を無闇に増やしたり改良を小刻みに行うのではなく,古いコイルも新しいコイルも同じものとして扱えて,昔の回路にそのまま使えることも,大久保OMの人柄を見るようでした。

 私がこのFCZコイルについて感慨深いのは,アマチュアの電子工作のために生まれ,その存在感を放ち続けた部品だからです。

 以前にも書いていますが,電子工作という趣味は,その時々のプロが使う部品のおこぼれによって,成り立っています。真空管がゲルマニウムトランジスタになり,やがてシリコントランジスタになったり,ICがTTLからCMOSに移行したことは,アマチュアの欲しい部品をメーカーが用意してくれた訳ではなく,それがプロによって大量に消費されるようになって,値段が下がり、入手が簡単になったからです。

 2SC1815や2SK241が製造中止になってしまうことは,まさにこのことを象徴しています。

 アマチュアが使う数はたかが知れています。メーカーにしてみれば誤差のようなものです。アマチュア向けにある程度まとまった数をストックして小売りしてくれるパーツ店の存在があるから,我々は高性能な部品を,安価に使えるわけです。

 しかし,FCZコイルは違います。アマチュア(法人としてのFCZ研究所がアマチュアかと言われれば厳密には違うかも知れません)が,アマチュアのために,用意した部品です。FCZコイルはプロの設計者は使いません。カスタムで作る事ができるからです。

 FCZコイルは,汎用性の高いコイルを種類を絞って作る事で,アマチュアにも安価な価格で提供可能なコイルでした。これを使う事を前提に,多くの回路が誕生し,そしてそれらは一様に高い再現性を持っていて,作者の先生が苦心の末に練り上げた作りやすさと高性能を,全国のアマチュア達が追体験出来たのです。

 FCZコイルがあるから,アマチュアは安心して高周波の回路を作る事が出来ました。でもこれからはそうはいきません。

 大久保OMは,供給出来なくなる代わりに,コイルを手作りする方法を解説してフォローしたいと言われています。大久保OMには頭が下がります。

 かつて,初歩のラジオやラジオの製作などの雑誌がベテラン設計者の回路を掲載し,全国のアマチュアがそれを作ることが盛んに行われていました。設計者と製作者は分離していて,特に製作者のスキルには個人差がありました。

 故に誰でも完成できて,性能を出せる再現性の高さが設計者には求められたのですが,雑誌が消え,雑誌を見て製作する者がいなくなり,設計者と製作者が分離しなくなりました。

 今,部品レベルで自作が出来るのは,コイルだけです。コイルの製作と回路の設計を同時に行う方が,より性能を高めることが出来るのですから,回路設計が出来る人にとって,ただ作るだけの人のために再現性の高い汎用品のコイルを使う理由はないといえます。

 そう考えて,ひょっとすると時代が変わって,FCZコイルの役目は終わったのかも知れないなあ,と思いました。

 この30年の間,日本も世界も大きく変わりました。国内で製造するのが当たり前だった電子部品は,いつしか海外で生産されるようになりました。現在のFCZコイルも中国の部材を使って作られていましたが,ここ数年はそれら部材の度重なる値上げや仕様の変更,供給ルートの確保などでご苦労があったようです。

 部材の仕様が変わるたびに,それまでと同等の性能を維持するべくマイナーチェンジを繰り返して来られましたが,今回はどうしても元の性能を確保出来なかったとのことで,製造販売を中止するに至ったということです。

 そういう私は,結局FCZコイルを買って何かを作った事がありません。1つや2つ買った記憶はあるのですが,それが今どこにあるのか覚えていません。無線や高周波の世界に背を向けたアマチュアにとっては,FCZコイルは知っていても身近でなかったといえて,だけどもその功績はやっぱり知っています。

 大久保OMがFCZ研究所を解散したとき(2007年だったと思います)もショックでしたが,FCZコイルが過去のものになった今回の話は,確実に電子工作のフェイズが移り変わったことを示すものになったと思います。寂しいものですが,常にその時手に入る新しいもので工作するのが,これまでにも繰り返されてきた電子工作の進歩に繋がると考え,くよくよせずにいきたいと思います。

 ただ,アマチュア無線の高齢化が深刻で,近寄りがたい集団になっていることは否定できないでしょう。大昔,ラジオが最先端だった時代は,その延長にアマチュア無線がありました。オーディオとコンピュータの時代になり,アマチュア無線はそれらと接点を持たない独立国家となりました。

 携帯電話とワイヤレスデータ通信の時代がやってきて,アマチュア無線がまた最先端になるかとおもいきや,高度なディジタル変調技術のせいもあってか,同じ無線の世界でもアマチュア無線の人たちの視点と,最新の無線技術の人たちの視点にズレがあるように感じます。

 同じ無線局なのにアマチュア無線家は携帯電話には疎いですし,携帯電話大好きな人がアマチュア無線をやってるという話はあまり聞きません。私の目から見て,今のアマチュア無線に技術的に見るべきものはありません。

 ところで,PLCという,電灯線を使ってLANを構築するという仕組みが数年間にちょっとしたブームになりました。しかしこれは,アマチュア無線や短波ラジオで使われている周波数に大きな妨害を出す可能性があり,私も当時懸念していました。

 無論,アマチュア無線家や短波ラジオの愛好家が声を上げましたが,そんな声は無視され,公的機関からの認可を得て,各メーカーから一斉に機器が発売されたことを覚えています。

 あまり知られていませんが,理由もはっきりしないまま当局から認可の取り消しを受けた機器がいくつもありますし,実際にラジオの受信に妨害を受けたという事例もあるようですから,行政もメーカーもあまりにずさんだったといえるでしょう。

 PLCは結局,小さく安くなったWiFiに駆逐されるように,ほぼ消え去りました。懸念の声を無視してなかば強引に始めたにもかかわらずビジネスとしても失敗に終わりました。

 私は結構おおごとだと思っているのですが,社会一般の意識も低く,このことが話題に上ることはほとんどありません。大多数の人にとってアマチュア無線家や短波ラジオが関心の対象から外れていることを如実に示しているのではないでしょうか。

 果たしてこれでよいのかどうか。1970年代から80年代のアマチュア無線ブームで開局した人がほとんど電話級だったこと,JARLのやってきたこと,乱立したアマチュア無線機器メーカーのやってきたこと,電波を公共物として管理してきた行政のやってきたことなどなど,もう少し検証されてもよいのではないかなーと思います。

 ちょっと話が逸れましたが,FCZコイルの製造販売の停止と,アマチュア無線の衰退は,どうも無関係ではないと,そんな風に思うのです。

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