エントリー

カテゴリー「make:」の検索結果は以下のとおりです。

3Dプリンタで大失敗

  • 2018/01/15 14:06
  • カテゴリー:make:

 3DプリンタとFusion360に慣れるために,いろいろとテーマを決めては出力しているのですが,今回はBNCコネクタカバーを作ってみました。

 BNCコネクタはとても便利で性能の高いコネクタで,締め付けトルクの管理もいらないし,使わないときにも放置で良いので,気分的にも随分楽です。

 しかし,BNCコネクタのメスコネクタは案外錆びやすく,オスコネクタを付けないでいると,簡単に曇ってしまいます。

 これで測定結果に影響がでた経験はないのですが,よくないことは事実ですし,できるだけBNCカバーを取り付けるように私はしています。しかし,コネクタの数に対してカバーの数が圧倒的に足りません。

 買えば安く売っていることは分かっているのですが,ここは1つ3Dプリンタで作って見ることにしました。

 Fusion360でサクサクと図面を描き,3Dプリンタで出力したところ,若干寸法の調整が必要になりました。何度か修正を繰り返してうまく嵌合するようになったところで,量産開始です。

 全部で9個作る事にして,3行3列に並べて出力開始です。4時間以上かかるということでしたので寝る前に仕掛けておきました。

 果たして朝,ワクワクしてテーブルを見ると,なんとくしゃくしゃになった紐の塊が鎮座しているではありませんか。大失敗です。

 どうも,9つのうちまず最初に1つテーブルから剥がれてしまい,これがヘッドにくっついて他をなぎ倒したりひっかいたりして,すべてがテーブルからはがれてしまったようです。

 そして,ヘッドの先端のノズルには直径2cmくらいになった,溶けたフィラメントがコッテリくっついていました。

 フィラメントをアンロードしたのち,ノズルを加熱してこびりついたPLAを拭いとり,見た目は大丈夫そうです。テーブルにこびりついたカスや,周囲に飛び散った破片を掃除して,これで再スタートをしました。

 ところがやっぱりダメです。突然3mm程の塊が吐き出されたPLAの上に乗っかっています。そしてこれがノズルにくっつき,周囲を巻き込みながら,毛糸の玉のようなものが出来上がってきます。

 今回ロードしたフィラメントはクリアで,これまでのいろはクリアイエローだったのですが,失敗に終わった塊を見ていると,どうも黄色が混じっています。まだノズルに残っているのかもしれないなあと,気を取り直して掃除をし,再スタート。

 しかし結果は同じです。これはいよいよあやしいです。

 テーブルに糊を塗ったり,作る数を1つに減らしたりするのですが,それでもダメです。やっぱり黄色のPLAが出てきて,大きな塊を塗りつけていき,これをきっかけに全滅しています。

 テーブルに張り付けた3Mのシート(1枚600円以上する)を泣く泣く剥がしてテーブルから飛び出た取り付けねじを緩めて穴をねじ穴を丁寧に探り,再度慎重に締め直して新しいシートを貼り付けますが,やはり改善しません。

 こうなると,ヘッドがまずいとしか言いようがなく,やむを得ずヘッドと取り外してみます。

 すると,ノズルがヘッドの底面から飛び出している,そのノズルの周囲の1mm程の隙間に,ちらっと黄色い色が見えます。もしや・・・とあわててヘッドを分解して,私は血の気が引きました。

 なんと,ノズルとヒーターに,まとわりつくように溶けたPLAがこびりついています。大きさにしてくるみくらいの大きさになっています。

 どうやら,9つの出力中に塊になったPLAに熱せられたノズルが繰り返し行き来しているうちに,ノズルがPLAを掻き取るようにしてヘッドの中に隙間から入り込んで固まったようです。

 そして,出力中にヘッドの内部が熱せられると,この大量のPLAが溶けて隙間から流れ出して垂れてきます。これがある時出力中の造形物に落ちてくっついてしまうのです。だから途中までクリアで出力されていたのに,失敗する直前には米粒のような黄色い塊が出ているんですね。

 いやはや,これではどうにもなりません。数時間の出力をずっと監視する人などそんなにいないはずで,その途中でトラブルが発生することは珍しくもないのが3Dプリンタの世界だと思いますけど,そのトラブルの結果がこれほど甚大なものになるとは,寒気がします。

 仕方がないので,ヒーターとノズルの周囲に固着したPLAを剥がすため,ヘッドを完全に分解します。

 実は,先日から小児がんの本を読んでいたのですが,がんは「臓器を取り囲むようにぐるっと周囲を取り巻いていた」という描写が多く,私は人の内臓の実物を見たことなどありませんので,あくまで想像しては怯えておりました。

 その描写そのものの光景が目の前にあるので,さながら私は外科医の気分です。ヒーターや熱電対(温度センサです。ここからのケーブルは細い単芯のケーブルで切れやすいのですが,ここにもPLAが固着していました)を傷つけないように,慎重にPLAを剥がしていきます。

 どうにかPLAを除去できたノズルのユニットをヘッドに戻し,元のように組み立てます。本体にセットして試運転しますが,加熱エラーが発生。壊したのか!?

 原因は単純で,温度センサと空冷ファンのコネクタを入れ替えて差し込んでいました。ヒーターの温度が10℃と出ていたのでおかしいと睨んでいましたが,その通りでした。

 配線を入れ替えて無事に試運転は終了。これでうまくいくだろうと思っていたところ,なんとノズルのクリーニングをしろとメッセージが出てきました。

 面倒だけどもう一度フィラメントをアンロードし,指示に従ってノズルの掃除をします。そして改めてフィラメントをロードして出力しますが,今度はうまくいきました。

 さらに3個出力しますが,これも問題なし。ふう,ようやく問題が解決したようです。

 確かに,ノズルからPLAが飛び出る直前までは200℃ほどに加熱されていますが,外に出てテーブルに接触するまので温度変化は,当然外気温に大きく左右されます。気候で成否が分かれるあたりで「3Dプリンタは農業と同じ」と揶揄されるのも頷けます。

 とりあえず今回はトラブル発生の前の状態には戻せましたし,テーブルデコボコもほぼ修正できました。高価な3Mのシートも交換したので,しばらくはうまくいくはずです。


 今回のミスをまとめてみます。

・無人で失敗,大量の溶けたPLAがヘッドの隙間から入り込んで,少しずつ溶けて出てくる。

・シートを貼り付けない状態でテスト校正したが,シートを張り付けてから校正するのを忘れてしまい,シートの厚みの分だけテーブルとノズルの隙間が縮んでしまった。おかげで塗り重ねるというより削り取るような動作をしてしまい,結局ノズルが憧憬物をテーブルから剥がしてしまい,全滅。

・テーブルとノズルのクリアランスが小さかったこともあり,高温のPLAがシートに付着することになり,シートが溶けてしまった。もったいない。

・一度に複数の出力をまとめてしまえば楽だが,失敗した時の被害が大きく,プリンタ自身が使用不能になることもある。面倒でも少数を何度か繰り返した方が被害を小さく出来る。失敗しないという前提はしないようがいい。

 とまあ,こんな感じで苦労しました。おかげで日曜日ほぼ一日潰れてしまいました。

 先日も書きましたが,日本のメーカーが民生用3Dプリンタに参入しないのは,こういうところが日本のクオリティに届かないからでしょう。台湾や中国のメーカーなら,それでも売っちゃいますし,ユーザーもいちいち文句をいったり修理に出すことなく,自分でなんとかしてしまいます。

 日本では,いってみればこうした不完全な商品を受け入れる度量が失われてしまったといってもよくて,日本で買えるものは完璧なものであると安心出来る一方で,不完全だが面白いものは日本では買えないと言うことが起きてしまいます。

 
 モデリングから印刷まで2日間で作ったBNCカバーは全部で9個ほど。その倍は失敗を作ったわけですが,自分で考えて作ったものが実用になるのは面白いとしても,これだけの時間がかかってしまうことに疑問がわいていて,こういう標準サイズのものは作るより買うのが一番だと確信しました。

 なら,売っていないもの,自分作らないとどうにもならないものなら,価値があるんじゃないかという話です。

 ということで,今作っているのは,昔のポケットラジオのリアカバーです。

 父親が若いときに買ったであろう,ナショナル(今のパナソニック)のトランジスタラジオです。

 6石のトランジスタはすべてゲルマニウムで,電池は006Pです。電解コンデンサの容量は33uFではなく30uFの時代です。

 実家の,かつての私のガラクタ箱から出てきたので持ち帰ってレストアしたのですが,アンテナコイルが断線していたので巻き直し,SGで調整をして動くようになりました。

 このラジオは私が子供の頃でもすでにデザインが古くさく,006Pという電池も勝手が悪くてあまり使わなかったのですが,それでも感度は良く,いろいろあったラジオでも結局生き残っているのはこれだけになってしまいました。

 ところがこのラジオ,リアカバーがなくなっています。この頃のラジオは電池の交換の時にはリアカバーがまるごと外れるようになっています。そのリアカバーがなくなってしまうと,基板がむき出しになってしまうのです。

 これではせっかく電気的に修理出来ても,実用にはなりません。似たようなサイズのプラスチックケースを被せていましたが,サイズが合わず乗っかっているだけの状態です。

 3Dプリンタで樹脂成形品を自作出来ると喜んだとき,私はこのカバーを作る事を考えました。しかし,当時のようにCADを使っていない成形品でも,それなりに複雑な形状をしていますから, もう少し慣れてからと思っていました。

 先日から図面を描き始めていますが,難しい事はしないで,できるだけ簡単な形で済ませることにしています。簡単なこともなかなか出来ずにすったもんだしていますが,少しずつ形になっていくとさすがに面白く,時間が経つのを忘れてしまいます。

3Dプリンタ元年

 今年最初の艦長日誌は,私らしく散財のお話です。

 今年はヨドバシの福袋も外れてしまい,買い物しようと街まで出かけることもなく家にこもっていたのですが,世の中少しずつ計器とやらが上向きになっているらしく,初売り,お年玉,というキーワードを何度も目にしました。

 正月明けのある朝,いつもなら開かずに捨ててしまうとある通販ショップからのダイレクトメールを,その時は偶然開いて見ていたら,3Dプリンタが税込み,送料無料で24800円で出ていました。

 3Dプリンタ・・・言葉がやや一人歩きをしたかなと思われるmakersブームの片棒を担いだ,そう,アレです。

 原材料を供給してデータを送り込めば,実体を作る事が出来るという,まさにSFに出てきそうな夢のマシンなわけですが,「これで工場はいらなくなる」だとか「ものをやりとりするのではなくデータのやりとりをする時代が来た」という話に始まり,あげく「大量生産大量消費の資本主義はこれで終焉を迎えた」などと仰々しいことを言い出す人もいたりして,なにやらすごいものらしいと言う印象だけを心の隅っこに残して,人々の記憶から消えていったアレです。

 消えたというのは全くのウソで,業務用とでは必須のマシンとなっていますし,個人用途についても低価格化が加速,昨年には3万円で買えるようになりました。

 3万円を割ってくると個人でも無理なく買うことが出来るようになってくるわけで,あとはその価値を高め,知らしめることが必要になってきます。今はまさにその大事な時期です。

 かつて,コンピュータの周辺機器としてのプリンタは,本体,ディスプレイ,ディスクドライブに次ぐ,末席の周辺機器でした。大きく重く,うるさく高価な割には,紙に印刷する時にしか使わないので出番も少ないという特殊な周辺機器だったわけですが,プリンタメーカーの高画質化と低価格化という技術的な進歩に加え,初期は日本語が綺麗に印刷出来る力の獲得によって「日本語ワードプロセッサ」の出力機器として,後に高解像度なフルカラー印刷能力を手に入れて「写真の印刷」という,いずれもそれまでは専門の業者に頼むしかなかった仕事を,ご家庭で出来るようにするという「用途」の提案の結果,コンスーマ製品として家電量販店で大量に販売されるようになりました。

 要するに,安いだけではあきません,性能がいいだけでもあきません,それで出来る事にそこらへんのおっさんが「ええな」と思わないと,個人への普及は望めないということです。

 3Dプリンタについては,この「ええな」がなかなか見えてこないのです。

 オーケー,好きな形がプラスチックで作れることはわかったよ,じゃ,そのデータはどうすんのさ?

 ちょっと考えれば分かりそうな,この大きく高い壁を見上げて,私も何度も先に進めず,引き返していました。私が初めて3Dプリンタを見たのは,2009年に東工大で行われたMakeTokyoMeeting04でしたから,10年近くも引き返し続けていたのです。

 いや,自分でデータを作れなくてもいいんです,有償無償を問わず,データが手に入ればそれでいいのです。しかし,そうしたデータはあまり増える事なく,3Dプリンタを手に入れても,ホコリをかぶってしまう事は,明白でした。

 データを自分で作れるようになったらいいじゃないかという事もあるでしょうが,思うにメカ設計というのはセンスと慣れがものを言う世界だと思っていまして,私のように絵心もなく,空間の把握が苦手で,学生の頃には随分このあたりの科目で煮え湯を飲まされた記憶しかない人間には,とてもとても厳しいものだと思っていたのです。

 この歳で,今さら苦手意識の強い全く新しい分野に踏み込むほど,今の私は暇ではありません。お金を出せば手に入るこの時代,苦労してデータを作る勉強を一から始めるには,相応の勇気が必要です。

 しかし,翌日には,その24800円の3Dプリンタの巨大な箱が,私の家に運び込まれていました。

 やってしまいました。

 新年早々,ややこしいマシンを買ってしまいました。

 購入したのは,XYZ Printingのda Vinch miniMakerという最廉価のモデルで,普段でも3万円弱で買うことが出来るものです。カラフルな筐体に親しみやすさを感じつつ,そこはメカメカした3Dプリンタの姿そのものです。

 私は3Dプリンタのこともなにも知りませんし,分かりません。使った事もありません。データの作り方も分かりませんし,手に入れる方法もよく分かりません。とにかく買ってみた,と言う状態ですから,Windows95ブームの時にとりあえずパソコンを買ったおっさんと何も変わりません。

 それはともかく,定評あるXYZ Printingの3Dプリンタが手に入ったのです。全く何も分からない状態で高額なオモチャを手に入れた子供のように,久々にワクワクが止まりません。

 初日はセットアップと,どこかでダウンロードしたデータを試しに打ち出してみました。説明書を見てもよく分かりませんし,言葉も今ひとつピンと来ません。それでもえっちらおっちら3時間ほどかけて,セットアップとキリンのオモチャを打ち出してみました。

 6歳の娘は大喜びです。私も大喜びです。

 その夜,何か実用的なものを打ち出してみたいなといろいろ考えていたのですが,WEBを見ていると,SR43というボタン電池を,MR-9という製造されていない水銀電池を使うカメラに使う事の出来るような,アダプタを3Dプリンタで作っている例を見つけました。

 うちには,オリンパスPEN EEDというカメラがあり,これがMR-9です。よし,このアダプタを打ち出して見る事にしましょう。

 データはSTLというファイル形式でダウンロード出来ました。STLとは3Dデータのファイル形式としては最も広く目にするものらしく,多くのCADがこれを吐き出すことが出来,多くの3Dプリンタがこれを受け付けるんだそうです。

 daVinch miniMakerも当然対応しているので,さっさと印刷してみます。

 いろいろ試行錯誤があったのですが,数個の打ち出しが済みました。バリもあるし,あなが繋がっている部分もあるのですが,PLAという素材で作られたアダプタは意外に強度もあり,いい感じで使えそうです。

 これを見て思いました。H-Bという水銀電池のアダプタはどっかに落ちてないものかと。

 私にとって思い入れの強いAsahi PENTAXのSPにはこのH-Bが使われるのですが,H-Bが製造中止になるときにペンタックスが安価で販売していたアダプタを手に入れそびれてしまった私は,ポリパテで自作したアダプタでお茶を濁していました。

 しかし,経年変化で割れてしまい,今は使えずじまいです。

 3Dプリンタを手に入れた今こそ,データの頒布による実体の配布という近未来を実体験するチャンスです。

 ・・・で,データを探してみたのですが,案外見つからないものです。

 結局データを手に入れる事が出来ません。

 ないものはつくる。

 改めてMR-9アダプタを見ていると,非常に単純な図形の組み合わせで構成されていることがわかります。これなら自分で作れるんじゃないのかと,ちょっと思ったのです。

 とはいえ,私はCADから学ばねばなりません。CADはおろか,基本的なメカ設計の仕方がわかりません。

 3Dプリンタの全容を掴もうと参考程度に購入した,ブルーバックスの3Dプリンタの本を見ていると,数ページだけデータの作り方が書かれているのに気が付きました。Fusion360という高機能なCADを使い,円柱や直方体を組み合わせて図形を作って行きます。

 たった3つの図形を組み合わせるだけで,こんなに複雑な構造を作る事が出来るのか,と何の知識もない私は単純に感動したわけですが,これを見ていると,H-Bアダプタなんてのも非常に簡単にデータが作れるんじゃないかと思えてきます。

 早速Fusion360をインストール,クライドベースのCADに少々面食らいましたが,積み木なんかと同じように組み合わせを考えていじっていると,なかなか面白いじゃありませんか。

 習うより慣れろ。かの宮永好道先生もおっしゃっていた名言を思い出し,H-Bアダプタを見る事にします。

 まず仕様です。ドーナツのような方をしたアダプタで,外側はH-Bの外形と同じ,内側はSR41やLR41をはめ込むことが出来る穴を開けておきます。

 電圧の調整はSP専用と割り切れば全く必要がありません。外形寸法の辻褄さえ合わせれば大丈夫です。

 手描きで図面を書き,これを元にFusion360でデータを作って行きます。1号機は簡単で,H-Bの縁とLR41の縁を直線で繋いだだけの台形のアダプタです。この形状のアダプタは実際に市販されていますので問題はありません。

 円柱を置き,中心部を小さい円柱でくりぬきます。そして面取りをして完成,全く初めての私でも,30分ほどで作業終了です。

 これはこれでいいとして,もう少し手の込んだものをつくってみたくなりました。直径の違う円柱を2つ積み上げて,防止のような形を作ります。中央部にLR41がはまり込む穴をあけてから,角を丸めます。そうすると,さらにH-Bに近い外形になってきました。

 これを作るのにまた30分ほど。とりあえず両方打ち出してみます。小さいものですから,どちらも短時間で問題なく印刷出来ました。

 ちょっと窮屈ではありますが,LR41もSR41もはめ込むことが出来ましたし,ちょっとバリを削り取ってやれば,SPにきちんと収まります。露出計も完璧に動きます。

 20180109151902.jpg

 すばらしい。まさに新しい世界の夜明けです。

 この間,わずか2時間ばかり。数時間前にはデータを作る事など全く想像してなかった私が,もっといえば数日前には自分でプラスチック部品を作るなど考えつかなかった私が,今こうしてH-Bアダプタを手に入れています。

 自分で図面を描き,それがそのまま出てくる世界。

 頭の中にある形が,誰にでも見えるものとして出てくる世界。

 この感激には,既視感があります。

 それまでプロに頼むしかなかったものが自分で出来るようになった時の感動です。思い出せば,それまで印刷屋さんにお願いしないといけなかった明朝体の印刷が出来るようになったとき,それまで限られた人か作る事の出来なかったCDを自分でCD-Rに焼いてみたとき,それまで写真屋さんにお願いしないといけなかった写真のプリントが美しく印刷出来るようになったとき,雑誌の記事として目にしたプリント基板が,光基板でそのまま自分で作れた時,こうした感動があったことを思いだしました。

 そして,その感動を。久しく味わっていませんでした。というより,もうこういう感動をすることは,ないと思っていたのです。

 全く新しい事を始めた時の,それが知識だけではなく経験として地と肉となり,全く新しい世界が見えてくると言う経験は,いつ味わってもいいものです。

 こんな簡単なものではありますが,データを公開します。ご自由にお使い下さい。ただし,自己責任でお願いします。

20180109151935.zip


 さて,これに気をよくした私は,翌日別のテーマに取り組みました。

 ニコンの名機,F100のリチウム電池ホルダーの作成です。

 F100は単三4本で動作するのですが,単三4本は重いですし,寿命も短く,温度変化に弱いです。そこで内部抵抗の低いリチウム電池CR2を2つ使う電池ホルダーが純正で用意されていました。

 しかし私がF100を手に入れた時にはすでにディスコン。入手出来ない私は,当時入手可能だった単三4本のホルダーを改造して使っていたのです。

 しかし,あまりに不細工で,危険な香りがします。ホルダー全部を3Dプリンタで作るのは無理でしょうが,CR2をうまくはめ込むアダプタのようなものは,作れそうです。

 必要な部品は,CR2を単三電池と同じ長さにするダミー電池です。これを2つ。もう1つは単三電池と同じ長さのダミー電池です。これは本来2本必要なのですが,大きいものの打ち出しは時間もかかり失敗しやすいので,F100本体の接点があたるものだけに用意することとし,もう1本分はリード線を直接ハンダ付けします。

 ダミー電池はプラスとマイナスが導通する必要があるので,銅箔テープを両端に回して張り付けます。この時,銅箔テープと絶縁用のカプトンテープの厚みを考える必要があるので,この部分は平面で削り取っておきます。

 ささっと図面を描き,印刷をします。今回は高さもあるし,内部を充填したので時間がかかります。途中で倒れてしまい失敗した物が1本でましたが,後は無事出力が終わりました。

20180109152022.jpg

 写真は出力中の様子です。これ,見ているだけで飽きないんですよ。そして次の写真が出力終了後のものです。単三電池ですが,見事に平面で切られています。これ,削って作るのはちょっと大変ですよ。

20180109152052.jpg

 バリを取ったりテープを貼って加工して,ホルダー側も少し削りましたが,すべてきちんと収まりました。

 そしてF100に装着して動作の確認を済ませました。めでたしめでたし。

 数日前まで,その辺にあるものを加工したり工夫したりして使うことしか手がなかった私ですが,これからは必要なものを作り出すことが手段として加わりました。

 もちろん,素材や成型方法に起因する,熱や強度への耐性や精度の問題は無視できませんが,使えそうなものを探し,それを切って貼ってすることしか出来なかったこれまでとは,もう根本的に違います。

 そのために図面の用意が求められますが,幸い高機能なCADが実質無料で利用出来る世の中になり,後は自分の腕を磨くだけという恵まれた状況でこの世界に足を踏み入れたことはとても幸福なことだと思います。

 データの作成にはもちろん困難がありますし,印刷には印刷の難しさがあります。なかなかうまくいかず,今回のような簡単なものでも,試行錯誤が必要でした。しかし,それまで世の中に存在しなかったものが目の前に現れるというのは感動があり,その存在によって得られる成果も一段高いものがあります。

 とはいえ,3Dプリンタは大きな設置場所も必要ですし,安定動作の難しさ,メンテナンスの面倒臭さもあって,値段云々よりも,個人での利用がまだまだ難しいです。まずは3Dプリンタがコンビニ設置されるようにならないと,身近な存在にはならないでしょう。

 私も,これだけにどっぷりはまり込むつもりはありませんが,欲しい部品を手に入れる銃弾の1つとして,自分に必要なレベルでの鍛錬はしておきたいと思います。

 初めて目にして8年半。いたく感動した3Dプリンタを,とうとう手に入れました。そして3Dプリンタで自分で描いた図面の部品を打ち出し,実際にそれが役に立つことを経験出来ました。

 一年のスタートに,私も新しいスタートです。


 

ORANGE Picoを作ってみました

 IchigoJamというBASICが走る安価なワンボードマイコンに触発されてか,この手のマイコンボードがいくつか市場に出ています。

 その1つがORANGE Picoです。

 高性能化したワンチップマイコンでBASICインタプリタとスクリーンエディタが走り,ビデオ出力もソフトで作るというコンセプトは同じなのですが,そこはさすがに後発だけあって,浮動小数点が扱える,カラーグラフィックが扱える,といった特徴を持っています。

 このあたりまで来ると1980年代前半のパソコン程度の能力は持っているといってよく,あのころのBASICなら目を瞑っていても書ける,というおっさんどもには心強い味方になってくれそうです。

 IchigoJamを手に入れてみたものの,案外なにも出来ない事に気が付いてから,この手のコミュニティから距離を取っていた私ですが,カラーと浮動小数点にピクッとき,その上320x240のLCDまで搭載出来ると聞いて,これはもしかしたらポケコンの後継機になるんじゃないかと思って,結局買ってしまいました。

 買ったのはtypeDという最上位機種です。CPUを2つ搭載し,1つは主にUSBの処理を任せたものになっていますが,これっていわゆる「I/Oプロセッサ」ですよね。古くはメインウレーム,新しいところではソニーのNEWSなんかがこういう構成を取ります。

 USBキーボードが繋がり,LCDが搭載され,5V単電源で動いてくれれば,もうどこでも動作出来るフルスペックの8ビットパソコンです。

 私が買ったのはtypeDのキットと専用として売られていた2.8インチのLCDです。素早く送られて来たのはよいのですが,説明書がほとんどなくて,慣れていない人は途方に暮れるんじゃないかと心配になりました。

 部品表を見ながら組み立てるのはそんなに難しくはないのですが,問題はそこからで,どこにどんな電源を繋いで,どういう操作をすれば組み立て完了なのかとか,そういうことが全然わかりません。これホントに初心者向けなのかと思ったのですが,まあそれはそれ。

 MicroUSBに5Vを,ビデオ出力にモニタを繋いで電源を入れます。問題なく起動しました。キーボードはHappyHackingKeyboardLiteのUS版を繋ぎました。

 気になる配列の違いを設定しようと,kbset 1としたのですがキーのマッピングは変化無しです。すべてのキーボードがちゃんと動くわけではないので,まあこれも仕方がありません。

 電源を一度切って,LCDを取り付けます。電源を入れてもなにも表示されませんが,そこはspitft 1としてLCDをイネーブルにすれば,無事に表示されるようになります。

 あとはさくっとプログラムをいくつか入れてみて動作確認です。

 しかし,LCDを使った場合に厳しい制限がありました。スプライトが使えないのです。これは参りました。スプライトがなければ,この手のBASICではゲームを作るのが大変です。

 そしてスプライトが使えないと言うことは,turtle関連の命令が全滅だという事です。私は別にturtle graphicを使いたかったわけではないのですが,デモとしてはこれほど興味をそそるものもなく,使えないのはもったいないと思いました。

 結局の所,Bluetoothの小型キーボードも動作せず,US配列への変更も出来ず,スプライトも動作せずということで,どこでもBASICというポケコンの代わりにはなりそうもありません。

 もっとも,これをポケコン代わりにしようと思えば,ケースにいれて電池を組み込み,小型のキーボードを探さないといけませんから,なかなかハードルが高いです。

 かといって開発者が自らいう,教育用のコンピュータとしては,いまさらBASICもないよなーと思うこともあって,あまり価値を見いだせません。

 そもそもビデオ出力などもう必要なくて,その代わりにLCDをわざわざ取り付けているのですから,ソフトでNTSCの信号を合成することはもうそろそろやめにして。システムとして綺麗にまとめる事が出来るかどうかを,考えたものがあってもいいんじゃないかと思います。

 もしかしたら娘が興味を示すかも知れません。それまでは置いておこうと思いますが,私自身は積極的に使うことは残念ながらないだろうなと思います。

 と,そんなことを考えていたのですが,1つ大事な事を思い出しました。ORANGE Picoは教育用と書いてありましたが,実は組み込み用も想定してあるのです。I2CもGPIOもBASICから叩けるようになっていて,しかもIchigoJamほど制約が強くありません。

 なんといってもBASICインタプリタですから,どんどん修正もできます。そして完成すればそのまま組み込んでしまえばいいわけで,ちょっとした用途には便利に使えそうです。電源を入れたら自動的にプログラムを実行する機能も持っていますので,ディスプレイもキーボードも繋がなくて大丈夫です。

 大事な事は,作ったシステムを他の人が修正することが出来るわかりやすさを持っていることで,ソースコードがないと手も足も出ないとか,開発環境をインストールするだけで半日かかるとか,そういう面倒な事がないことはとても有意義だと思います。

 クロス開発が当たり前の組み込みで,ターゲットで直接開発ができ,しかもそれが安価で簡単だとくれば,これはもしかしたら組み込み初心者向けの学習用にぴったりなんじゃないかと思います。

 うーん,なにかこれでオモチャでも作ってみますかね。

 

54645Dのドナーを手に入れた

  • 2017/07/04 10:13
  • カテゴリー:make:

 今年の春に高速コンパレータの部品不良による,CH2のトリガがかからないという問題が修理された,私の愛機HP54645Dですが,さすがに20年近く経過したクラシックマシンだけに,あちこち具合が悪くなってきます。

 ツマミのロータリーエンコーダがおかしくなっているのはもう仕方がないことではあるのですが,不良のままではこれがまた使いにくくて,とりあえずあまり使わず劣化の程度がましなものと入れ替えて,垂直軸と水平軸とカーソルのエントリだけは,元の快適な操作に戻すことができました。

 そのあおりを食らって,ロジックアナライザのロータリーエンコーダがクリック無しのものに交換されていて,しかもこれが汎用品だったりするので,操作感覚が全然違ってしまいました。

 しかし,実際にはほとんど使わないツマミなので,実害なく一応修理は終わったことにしてあったのです。

 とはいえ,機会があれば交換可能なロータリーエンコーダを手に入れて交換しようとずっと思っていましたし,先日の修理の際にも「ここが壊れたらもうおしまいだなあ」と思うものも多数あったので,できればもう1台,壊れていてもいいので部品取りの個体を確保しておいた方がよいなあとも思っていました。

 余談ですが,2465Aの部品取りとして,2445を確保してあります。とはいえ,もっとも壊れやすい垂直軸のハイブリッドカスタムICには互換性がないので,あまりうれしくないのですが・・・

 そんなこんなで,偶然54600Aというデジタルオシロを安い値段で手に入れました。ジャンクなので故障していることが前提で買いましたが,筐体の割れ具合から落下があったようです。ひどいなあ。

 まあ,欲しいのロータリーエンコーダです。CRTも手に入ればうれしいし,メインボードもOP400などの入手の難しい部品がのっているので,この値段ならうれしいです。

 届いた日にとりあえず様子を確認してみます。雨風に晒されていたと思っていたので汚れがひどいことを覚悟していましたが,実際にはそれほどではありません。ただ,もともとの筐体の破損以上に,輸送中の破損もあったようで,これは残念です。

 つまみもロータリーエンコーダも機械的な破損はありませんし,パネルは全体に綺麗なのですが,CRTは焼き付きがあります。長時間使われたんでしょうね。

 とりあえず筐体をあけて,中を見てみます。ホコリはすごいのですが,泥や水の進入はなさそうで,おかしなサビも粉もみあたりません。これはいいかも。

 一か八か電源を入れてみると,あっさり起動しました。しかし波形はぐちゃぐちゃ。CH2の垂直感度を変えてもほとんど変化がないので,アッテネータがおかしいのかと目処を立てたのですが,なんとバーニヤモードになっていただけでした。波形がぐちゃぐちゃなのはトリガがかかってなかっただけの話で,これも正しく設定すると問題なく波形が出てきます。

 セルフテストも全部パス,セリフキャリブレーションも問題なく通ってしまい,普通の問題なく動く良品になってしまいました。

 使えそうな部品だけ取ったらすぐに捨ててしまおうと思っていたのですが,これだけ動いてしまうと,捨ててしまうのも可愛そうです。いろいろ考えたのですが,しばらくこのまま置いておくことにしました。

 仮に部品の交換をするにしても,動作している個体から外せば部品が死んでいるのか生きているのか,疑う必要がなくなりますからね。部品レベルにまで分解してしまうと,交換前に部品単体のテストが必要になったりします。

 で,54600Aを触って見たのですが,これってやっぱり54645Dよりも前の世代だけに,全体に速度が遅い上に,メモリも少ないんですね。1990年代の半導体の進歩というのは強烈なものがあって,この時代の数年はもう数世代の差になると言ってよいです。

 MegaZoomがないのはまあいいとして,一番困ったのはリアルタイムベクターが使えないことでした。RUNモードで波形がリアルタイムで出ている間は点と点が繋がらず,どうも見にくくて仕方がありません。

 そこでVectorをONにするのですが,わざわざ「STOPモードにしないとONにならないよ」と警告されます。確かに表示画面はベクター表示されていません。STOPボタンをおして画面を止めると,昔の8bitパソコンのLINE命令のように,せっせと点が繋がって,ベクター表示が出てきました。

 なんじゃこりゃ。

 これでもないよりましでしょうけど,これではおよそアナログオシロの代わりにはなりません。なに,昔のデジタルオシロってこんなにひどいものだったのか???そりゃ,アナログ原理主義者が跋扈するはずだわ。

 これが数年後の54600Bになると,どうやらリアルタイムベクター表示が可能になっているらしく(とカタログに書いてある)ので,もしかしたらファームウェアを入れ替えたら動いたりするかもしれません。

 しばらく使ってみたのですが,私がかつて酷評していた横河のDL1500シリーズの欠点として挙げていた点が,ことごとくこの54600Aにも存在しました。この当時の水準としては,こんなもんだったんでしょうね。

 ということで,まずは54645Dのロータリーエンコーダを交換します。分解し,54600Aを綺麗に掃除してから部品を外します。54645Dの部品と入れ替えて,組み立てるのはとても簡単で,1時間ほどで完了です。問題なし。

 しかし,これで終わらないのが私です。54645Dのツマミが突然割れて外れてしまいました。綺麗に半分になっています。他のツマミも見ていると,ひびが入っているものが2つほどありました。うーん,傾向的な破損ですね。

 接着剤で割れが進まないようにした上で,54600Aのツマミと交換しました。しかし54600Aのツマミの色は54645Dの色とちょっと違うのですよ。このまま交換しても不細工なので,どうしたものかと思案中です。

電子温度計,その後

  • 2017/06/08 13:44
  • カテゴリー:make:

 秋月八潮店の温度計,その後です。

 訳ありとのことで,1つ100円で売られていた温度計を3つ買ってきたのはいいんですが,結局まともに動いているのは1つだけで,2つはおかしな温度を表示しているということで,がっかりしました,というところまで書きました。

 この温度計,DTM0503という名称なのですが,通販でも普通に購入出来る在庫品でした。1つ600円という値段なのですが,問題は性能が今ひとつな事。更新周期が3秒に1回というのはまだ許せるとして,分解能が0.2℃というのは,ちょっと寂しいです。

 600円で動作保証を行ったものでも,電池端子が腐食していますと注釈があります。ということは,100円で売られているこの特価品は・・・基本的に動作しないものだと考えて差し障りがないようです。

 むー,訳ありとはこういうことか。

 とりあえず,まともに動いているものを大事にし,いじったら壊れたものを修理することから始めます。C2というコンデンサを外してその容量を測定し,再度付け直してから調子が悪くなったので,クラックがあった場合の修復をねらって,このコンデンサをハンダゴテでいじってみます。

 すると,ポロッと壊れてしまいました。

 そこで,2200pFの新しいコンデンサに交換すると,問題なく動作しました。このコンデンサが壊れていたようです。

 これで動くようになったとはいえ,もう1つの動作品とはちょうど1℃くらいの温度差があります。気持ち悪いですね。そこで,修理した方の,温度センサ(サーミスタ)に入っている分圧抵抗の値を半固定抵抗で調整出来るようにして,-1.0℃くらい調整出来るようにしました。

 2つのセンサ部を接触させて同じ温度を表示するように調整します。分解能が0.2℃程度ですし,あんまり追い込んでも仕方がありませんから,ほどほどにしておきます。

 さて,壊れているのは残り1つとなりました。これも少し頑張ってみたのですが,どうにも直すことが出来ません。壊れ方は修理が出来たものが壊れていたときと同じ様子なのですが,コンデンサを交換しても直りませんし,センサの故障も疑いましたがそれもハズレ。結局原因がわからず,修理は断念しました。

 ということで,結局2つの温度計が使える状態になったのですが,この温度計はセンサ部が本体から離れているので,屋外の温度を測定するとか,そういうことが出来る事がポイントです。
 
 これから夏になり,気温も上がってきます。室内と室外の温度を同時に計測するというのは,なかなか面白いことだと思うので,まずはそれからやってみたいと思います。

ユーティリティ

2026年04月

- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -

検索

エントリー検索フォーム
キーワード

ユーザー

新着画像

過去ログ

Feed