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カテゴリー「マニアックなおはなし」の検索結果は以下のとおりです。

GX-Z9100EVのメンテ

 さて,私の相棒GX-Z9100EVですが,右チャネルの録音が出来ない問題はさすがに放置できず,とりあえず分解することにしました。

 しかし,何度か録音を続けているうちに正常に録音出来るようになってしまいました。問題が出なくなってしまったので対策が打てなくなってしまい,残念ですがこの件はこのまま終了してしまいました。

 これでしばらく使っていたのですが,巻戻しと早送りが満足に出来ない問題が気になって不便で,これはもうアイドラーゴムを交換しないといけないだろうと,交換用の部品を手配しました。

 久々のメカデッキの分解ですのでもう忘れていますが,ヨタヨタしながらアイドラーを交換し,メカデッキを組み立て直します。が,なかなか上手く組めません。こんなに下手だったかなあと呆れてしまいますが,2時間もかかってどうにか組み立てました。

 次は起動時のカタカタ対策です。モード切替カムの調整不良と考えて,サービスマニュアルに従ってVR1とVR2を調整しますが,むしろ悪化してしまいました。プーリーを触ってみるとピタッと止まるので,単なる調整不良とは言えないようです。

 ちょっと詳しく書きますが,モード切替カムにはボリュームが同軸に繋がっていて,回転角に応じた電圧が制御回路に入ってきます。各モードに応じた電圧がマイコンによって生成されますが,これとボリュームが作った電圧が一致するようにサーボがかかってモーターが回転してモードが切り替わるという仕組みです。

 このサーボというのがミソでして,カタカタ音というのは行きすぎと戻りすぎを繰り返してしまうことで発生しています。行きすぎと戻りすぎというのはつまりサーボの発振ですから,位相かゲインを調整しないと根本対策は難しいです。

 では劣化が進むとなぜカタカタ音がするのかといえば,おそらくこれはベルトが緩むからだと思います。ベルトがきついと回転負荷が大きく,これにあわせたゲインでは当然問題はありませんが,ベルトが緩むとゲインが大きすぎて発振するというわけです。

 調整点をずらすなどいろいろ試しましたが,カムの位置がずれるなら本末転倒ですし,かといってベルトはまだまだ使えますから,ここはサーボのゲインを落とす事をやってみました。R420の300kΩを小さくするとゲインは下がります。そこで820kΩをパラ付けしたところ,カタカタ音はなくなり,ピタッとカムが所定の位置からずれることなく止まるようになりました。気持ちいいですね。

 本当はアジマスも調整したいのですが,ちゃんとしたテストテープもありませんし,これでこれまでのテープの再生に支障が出てしまえばそれも悲しいですから,実害がないうちはこのままでいくことにします。

 これでまだデジタル化できていないテープを再生して取りこんでいくのですが,さすがに録音から30年も経ているとテープそのものの劣化も進んでいます。レベル変動も左右別々で起きますし,そのことでDolbyも正しく動いてはくれません。カビなどはありませんが,前回(2016年)に行った時に比べて,やはり劣化は進んでしまっているというのが印象です。

 前回はすべてのテープを録音することが出来ずに途中で投げ出してしまいましたが,今回はそういうことを言ってはいられません。とりあえず手元にあるテープはすべて取りこんで,どうしても程度の悪いもの(こういうものが出てきたのも今回の録音が初めてでした)でCDが手に入りそうなものはCDを買うと言うことを行うようにしました。

 それにしても,1990年代中頃,土曜日の夜にNHK-FMで放送されていたジャズのライブ番組をたくさん残してあったのですが,そのクオリティの高さには驚くばかりです。今や大ベテランとなった方々がまだ30代という脂ののった時期に行ったライブは,とても貴重だと思います。

 すでにこの番組はなくなっているようで,とても残念な気がするのですが,結局CD化されているものについては後でお金を出せば手に入るわけで,お金を出しても手に入らないFMのライブ番組というのはとても貴重なものだったと思えるだけに,こういう点だけは昔の方が良かったなあとしみじみ思います。

Walkmanの修理~その6~WM-805(2つ目)編

 8月から突然始めたWalkmanの修理ですが,今回のWM-805(2つ目)で一区切りです。もともと最初に手に入れた赤のWM-805が再起不能なものだった場合を考えて予備(と部品取り)で2台も手配した黒のWM-805ですが,赤のWM-805が苦労の末復活したことと,黒のWM-805が2台もあることから,せめて1つくらいは復活させようと思ったのでした。

 2台の黒のWM-805は,1台は筐体の程度が悪く印刷がなくなっています。もう1台はキャプスタンが派手に錆びていてこのまま利用するのは難しいでしょう。ピンチローラーはどちらも片側が変形しています。

 基板は1台が完全に壊れているのに対しもう1台は正常ですが,正常な基板にくっついているモーターは固着していて回転しません。

 ということで,文字通りニコイチで復活させることにしました。キャプスタンを選別し磨いて取り付け,モーターを交換してベルトをかけます。ピンチローラーも交換しておきます。

 これで動かしてみますがやはり基板の不良です。2枚あるどちらの基板も当時よく使われたの四級塩の電解コンデンサが液漏れしており,基板や部品を壊しているようです。もちろんそれらの電解コンデンサは交換してましたが,基板のうち1つはクロックの発振が安定しないという症状が出ており,直すのも面倒ということで別の基板と交換しました。

 とはいえ,基板の交換はフレキのハンダ付けを外して付け直す必要があるため,そんなに簡単にできません。壊さないように慎重に作業を進めて基板を交換し,通電して動かせばとりあえず問題なく動いてくれています。

 あとはテープスピードを調整し,完成です。

 一方,筐体の方は普段使いを考えていたため,綺麗に仕上げるつもりはなかったのですが,重曹につけ込んでベタベタを取り除いたら白っぽくなってしまい,結局クリヤーを吹き付けることになりました。

 抗して仕上げると,かなり綺麗になったと思います。ただ塗膜はただのラッカーですから,爪があたっただけで傷がついてしまいます。もったいなくて普段使いをしにくくなってしまったなと思います。

 ということで,これにて一時期夢中になったWalkmanの修理は一区切りです。あとは実際に使うことを考えたいところですが,そのためにはGX-Z9100EVで20年ぶりに録音をしないといけません。

 早速録音前の儀式であるキャリブレーションを行ったところ,BIASの調整が全然出来ない事が判明,調べてみると右チャネルの録音が全く出来ないことが判明しました。

 嫌な予感はしていたのです。製造から30年も経過したカセットデッキですし,10年ほど前に電解コンデンサの交換はしたものの,ゴム部品はそのままですから,どうしても不安はあります。

 調子を見てみると,かつて録音されたテープの音質は十分ではあるものの,前述の録音不良があります。しかも早送りや巻戻しが満足に出来ない状況ですし,電源投入時やストップモードにしたときの「カタカタ」が頻発してなかなか終わってくれません。

 そしてさらに,別件で押し入れを見たとき,大量の録音済みカセットテープが出てきました。A-450時代の録音も含め,テープはMA-Xを筆頭に,ハイポジションからノーマルポジションまで様々な種類がありました。

 中心はTDKで,MAとSA-Xです。そういえばSA-Xは物理的に弱いテープで,ドロップアウトが起きやすいテープでした。

 AXIAのPS-IIs(ダブルコーティングのやつ)も大量に出てきましたが,これは低音から高音までバランス良くとてもいい音で感心しましたし,マクセルの安定感は当時と変わらない素晴らしさです。XLI-Sはずっしりと重く,音も素晴らしいです。

 変わったところで,AIXAのSD-Masterが出てきました。これはFMエアチェック用のマスターテープに使っていたもので,わずか数回使ったところでテープのキズによりドロップアウトが発生し引退,FM802の開局記念放送をただ残しておくという次の役割に甘んじていたテープです。

 正直そんなに性能のいいテープではありませんし,当時のフラッグシップモデルというのもハーフにお金がかかっているからじゃないかと思うのですが,短命だったことを考えるとAXIAらしい垢抜けた感じもなく,音質もの特筆すべきものがありません。

 当時の事を思い出すと,PS-IやPS-IIが繰り返しの使用に耐える堅牢性を持っていたので,AXIAはエアチェック用のマスターに向いているかもと考えて,そのフラッグシップモデルを買ったということのようです。

 音質も普通でしたが,なにより期待していた堅牢性に裏切られたことで,私の中でAXIAは3番手に落ちたのでした。

 マクセルはUDIやUDIIでもいい音がしますが,XLIやXLIIは別格です。しかも安いテープでも物理的な堅牢性をちゃんと持っているので,結局ここが一番だったのかもなあと思います。

 TDKはMAとSA-Xが中心で,なかなかお金をかけていたんだなと思いますが,SA-Xはドロップアウトがすぐに発生しますし,MAもそんなに耐久性があるわけではありません。しかしMAはこれぞメタルテープと思わせる破綻のない音ですし,SA-Xは超低ノイズで繊細な音が素晴らしいです。

 今改めて聞いてみると,当時毛嫌いしていたノーマルポジションが実にいい音がしていることに気付かされました。ノイズの多さだけは問題ですが,大入力が入った時の破綻のなさからくるダイナミックレンジの広さは素晴らしいです。

 まだデジタル録音できていないテープがザクザク出てきました。懐かしいNHK-FMのセッション93などもたくさん出てきましたので,コツコツと録音していきましょう。

 GX-Z9100EVのメンテもやり直さないといけないですし,なかなか大変です。

Walkmanの修理~その5~WM-FX70編

 これまでいくつかのWalkmanのレストアに取り組んできましたが,今回で一応一区切り,WM-FX70にとりかかります。

 WM-FX70は当時ちょっと欲しいなと思ったモデルでした。私がその当時新品で購入したのがWM-EX60で,これはWM-EX70の兄弟モデルでした。そしてWM-EX70のラジオ付きモデルが,このWM-FX70です。

 当時の私はFMラジオが大好きで,時間があればFMを楽しんで聞いていました。どんな音楽が流行っているのかを知るだけではなく,実際にその音楽を聴いて気に入れば買ってみると言ったカタログ的な要素が,私にとてもあっていたのだと思います。

 もちろん,流行していなくても初めて耳にする音楽との出会いもありましたし,FM放送でしか聴く事の出来ないスタジオライブなどは,その録音を今でも楽しく聞くことが出来ます。

 うちにはもともとHi-Fiなオーディオ機器などありませんでした。FMだってモノラルの安いラジカセがあるくらいで,ちょっと音がいいくらいのラジオでしかなかったのですが,父が借りてきたステレオでFMを受信できるラジカセ(なんと8トラック)で初めて「立体音響」を体験して感動したことから,私のオーディオはスタートしました。

 買ったものよりただで聞ける放送がいい音のはずがない,などという思い込みもあり,内心馬鹿にしていたFMラジオでしたが,実はちょっとやそっとじゃ手に入らないような最高の機材を使って高音質の音を放送していることを知るにつけ,FM放送への信頼がますます強まっていったのでした。

 だから,初歩のラジオに掲載されていたFMステレオラジオ(TDA7000とTA7343でした)は作ったものを持ち歩いて使っていたくらいでしたし,後年FMチューナーを買うときも良いものを買おうとF-757を買ったりしました。

 外にカセットテープの音楽を高音質で持ち出せるようになると,同時にFMラジオもと思うのは自然の流れですが,2万円も高いラジオ付きは買えないなと断念した記憶があります。というより,いくら高音質とは言え,据え置きのオーディオの音質や信頼性を知っていた身としては,中途半端な性能のものにプラス2万円は出せないと考えていたのが大きいでしょう。

 てなわけで,WM-EX60を買い直すことと,当時欲しかったラジオ付きを手に入れることの両方を実現するのが,WM-FX70のレストアなのです。

 ですがこのWM-FX70,はっきりいって難航しました。まずメカ。最初に手に入れたWM-FX70は液漏れが少しだけありましたがキャプスタンもほとんど錆びておらず,走行系は簡単に復活出来ると思っていました。

 ところが清掃と注油とベルト交換ではテープが走ってくれません。ピンチローラーが劣化していたので少し削りましたが効果はなく,仕方がないので新品に交換しようとするもぴったりなサイズはなく,直径が同じで厚みが0.5mmだけ分厚いものを削ることにしましたが,今度はテープがガイドを乗り越えて走ってしまい,テープをボロボロにしてしまいます。

 それもフォワードの時だけの走行不良という事で,ピンチローラーを左右入れ換えたりしましたが解決しませんでした。キャプスタンを磨いたり,最後の手段としてメカ全体の歪みを疑い,歪みを取ろうと頑張っていましたが,ピンチローラーを取り付けるピンが根元から曲がってしまい,ここで詰んでしまいました。

 ラジオが生きていただけに残念だったのと,WM-EX70や60,FX70のメカは結構デリケート(キャプスタンも他より細いしピンチローラーも小さいです)だと思い知りました。

 同じ物をもう1つ落札(こっちは1000円未満)して再チャレンジをしたのですが,この個体は電池の液漏れこそなかったものの,キャプスタンは真っ赤にさび付いていますし,再生状態で放置されていたのでピンチローラーはハート型に変形していました。

 メカとしてはこちらの方が明らかに程度が悪いのですが,これをベースに闘うしか手は残っていません。分解と清掃,注油を丁寧に行って軽く回るようにしたところで,キャプスタンを取り外して磨きます。

 このキャプスタンは両方とも真っ赤に錆びていて固着していた程でしたから,まず最初にアルコールで余計な錆を取り除き,この後紙やすりで慎重に磨いてデコボコをなくしていきます。

 削りすぎるとキャプスタンの径が変わってしまいテープ速度に影響が出ますからそこは慎重に行うのですが,これでいいかと思ったところで組み立ててベルトをかけ,試しにテープを再生してみます。

 すると,とりあえずフォワードもリバースもテープが走ってくれます。ただ,ピンチローラーを軽く押し当てないとテープが止まってしまいます。

 試行錯誤の結果,どうも新品のピンチローラーが柔らかすぎて,キャプスタンに押し当てられたときに変形して,ピンチローラーのケースを擦ってしまうようでした。

 そうなるとピンチローラーをもう少し削る必要がありますが,これがまた難しい。あまり削りすぎると押圧が足りなくなり,テープが走らなくなります。それに均等に削るのはなかなか出来るものではありません。

 少しずつ削っていきますが,なかなか上手くいきません。そしていよいよ擦らなくなるところまで削ったのですが,それでもテープが安定せず,ギリギリ走行している感じなのです。

 そこでふと閃きました。これはテープがスリップしているせいかもしれない。だとすればスリップしないように,キャプスタンに傷を付けてみようと,400番の紙やすりで傷を付けました。

 しかし,あまり変化はありません。ここでもう一度発想を切り替えて,今度は回転方向に付けるのではなく,回転方向とは垂直に傷を付けることにしました。

 すると嘘のようにテープが安定して走ってくれました。ワウフラッタもかなり小さく押さえられています。

 とはいえ,あまり強くピンチローラーを押しつけるとワウフラッタが増えるので,0.2mmのプラ板をヒンジの部分に貼り付けて,テープが本体に強く押しつけられないようにしました。これで一応スムーズになったということで,速度調整まで行ってカセットテープのメカについてはレストア終了。

 次にラジオ部分です。ラジオはメカがないので調整など必要ないと思われがちですが,高周波の回路はなにせコイルやトランスといったアナログ部品が多用されていて,それぞれ最適な状態に調整されて出荷されます。

 調整箇所は複数ありますし,コイルは経年変化による調整点のずれも大きい部品なので,本来の性能を出そうと思ったら5年に一度くらいは調整をやり直さないとダメだと思います。

 一応現状でもAM/FM共に受信していますが,FMはスキャン時に100Hzほどずれるようですし,AMもあまりよい感じではありません。ここは調整でビシッといきましょう。

 なお,ラジオの調整について記述されたサービスマニュアルは入手できなかったので,回路図や使っているICから推測して行っているところもあります。正しい方法かどうかはわかりませんので,ご注意ください。

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(1)まずバリキャップの電圧を調整します。ラジオ基板に「VT」と書かれたランドがありますので,こことGNDの間に電圧計をいれて,AMでは531KHzに設定して電圧が1.0VになるようT2を,FMでは87.5MHzに設定して電圧が3.4VになるようL4を調整します。

(2)AMのトラッキングを調整します。SGを400Hz,30%変調で出力し,なにか適当なコイルに入力します。コイルはAMの受信コイルとしてつかえるものなら最高ですし,ない場合でもそこら辺に転がっているコイルでよいと思います。

(3)SGを1395kHzにし,先程のコイルをバーアンテナ(L8)に近づけて結合させ,ヘッドフォン出力に電圧計を繋ぎます。1395kHzを受信して出力(400Hzが出ているはずです)が最大になるように,CT3を調整します。

(4)本来だと621kHzで出力が最大になるよう,バーアンテナのコイルの位置を左右に動かす作業をしないといけないのですが,バーアンテナのコイルはパラフィンで固定されていますので,ここはこのままとします。

(5)次にAMのIF調整です。ちょうど中間の周波数である999HzにSGをセット,ラジオも999kHzに設定して受信出来たら,出力が最大になるようにT1を調整します。これでAMラジオの調整は終わりです。

(6)続けてFMのトラッキングの調整です。SGを400Hz,22.5kHzのデビエーションで変調し,出力を80dbにして基板のアンテナ入力に繋ぎます。SGの周波数を76MHzにしラジオで受信し,その出力が最大になるようにL3を調整します。

(7)次にSGを90MHzに設定し,ラジオも90MHzに設定して受信出来たら,出力が最大になるようにCT2を調整します。

(8)これを何回か繰り返して76MHzも90MHzも最大になるように調整します。

(9)次にFMのIFと検波の調整です。SGを83MHzに設定,ラジオもこの周波数を受信しておきます。そしてその出力が最大になるようにT4とT5を交互に調整します。

(10)最後にステレオ復調のVCO調整です。先程の83MHzが受信出来ている状態で,IC2の14ピンに周波数カウンタを繋いで,19kHzちょうどになるよう,RV1を調整します。


 これで終了です。なお,今回調整しなかったL1,L2,CT1はTV(4ch - 12ch)の受信使われるものです。これらの電波が停波している現状では,もう二度と使われる事はないと思いますので,なにもいじらず放置しておきましょう。

 この調整によってFMラジオのスキャンは正常に動作するようになりましたし,感度も上がっているように思います。一方のAMラジオは相変わらずですが,まあAMですのでよいとします。

 しばらくラジオを聞いていましたが,やっぱりラジオは面白いものです。ケースを組み立て直して完成しました。

 残念だったのは,この後再度テープをかけたところ,ワウフラッタが大きくなっていたことです。なにが原因なのかはわかりませんが,ここであきらめずに試行錯誤に入り,結局壊してしまうことも多いので,余程の事がない限りこれでいこうと思います。


 ということで,ラジオがついたWalkmanは厚みがあり,しかもカセットの走行状態が見えないと言うことあり,価格のこともあって当時としても中心的なモデルだったとは言えないと思います。

 しかし,オマケ扱いではない本気のPLLシンセサイザーチューナーをこの大きさで実現し,Walkmanにくっつけたというのは技術的にも面白いものといえて,これでカセットが完璧だったらと,悔やまれてなりません。


 あらためて出来上がったWalkmanを並べて,実際に再生して程度を比べて見ました。一番良いのはWM-EX666で,ほぼ同じ程度でRQ-SX11。RQ-SX11の方が音質は好みですから,こちらを常用してもいいかなと思います。

 そしてテープが安定しないのはWM-FX70とRQ-SX35です。WM-FX70はいろいろいじった結果ですので仕方がないとしても,RQ-SX35はワウフラッタも大きく,フォワードのトルクが小さすぎてリーダーテープを越えられませんし,しかもフォワードとリバースでテープスピードが大幅に違っています。

 これがなんとか解決すれば,すでに傷だらけですから,躊躇なく常用出来るのですが・・・

 

Walkmanの修理~その4~RQ-SX11編

 今回の修理は,パナソニックのRQ-SX11にしました。1995年の発売のようですので比較的新しい年式で,カセット関連では眼中になかった松下電器の製品にあって,SX11という型番だけは広告による露出度のせいもあってか,良く覚えています。

 最初に修理したRQ-SX35が1998年のモデルでしたから,RQ-SX11はその3年前のモデルになりますが,実はこの3年間の間にメカデッキが一新されていました。SX11はAR-90,SX35はAR-10です。

 一説によると,ライバルのソニーが超低消費電力を達成したのに追いつくには,もうメカデッキを作り直すしかないという判断で開発されたのがAR-10メカだったという話で,なるほどワウフラッタは大きめですし,ギアによる動作音も耳障りです。トルクも小さいのでテープによってはリーダーテープを残り得られません。

 ならばとAR-90メカを試してみたくなり,SX11を手に入れてみたというわけです。

 SX-11はなかなかデザインも秀逸で,特にブルーがよいなと思うのですが,手に入れたのはブラックです。それでも精悍ですし,特に蓋を開くと,蓋が縮んで短くなる仕組みには思わず唸ってしまいました。

 しかし,裏側に返して操作ボタンを見てみると,安っぽいギラギラのメッキのボタンが楕円状に配置されていて,このあたりは格好悪いと思います。パナソニックは丸いのが好きなんでしょうけど,反対面とのアンバランスを考えないのかと思います。

 さて,手に入れた段階では液漏れはなかったものの,フォワード側のキャプスタンに少し錆がありました。この影響でピンチローラーにもフォワード側に結構なへこみがあります。リバース側は無傷です。

 落下も打撃痕もなく,程度は良さそうなのですが,なんと早送りボタンを押してもクリックがかえってきません。

 ここで通電してしまうと,融けたベルトがモーターに巻き付くのでそれはやめて,分解に入ります。内部は比較的綺麗なもので,ベルトさえ交換すれば動きそうです。

 基板を外すために一部ハンダを取り除き,慎重に基板を外します。並行して筐体を分解し,ハンドソープで洗って乾かしておきます。

 先程の早送りボタンの破損ですが,完全に壊れていてスイッチ上面のペコ板が完全にへこんでいました。強く押さえつけられたからだと思うのですが,さらによく観察すると,ケースも変形してへこんでいました。ボタンが強く抑えられたというよりは,ケースが強く圧迫されたんだろうと思います。踏んづけたとか,そういう感じですかね。

 フライホイールやプーリーの融けたベルトを綺麗に除去し,モード切替のクラッチのプーリーのグリスが固着していたので清掃して,適当な長さのベルトを試してかけてみます。

 AR-10のモータはベルトが太いとモーターの内部で接触して回転不良を引き起こします。だからRQ-SX35の時には0.5mmのベルトをわざわざ買ったのですが,AR-90ではどうだろうかと手持ちの0.7mmで試したところ,接触もなく上手く回ってくれました。試しに再生するとワウフラッタはリバース側は小さく,ゴムベルトはこれで大丈夫なようです。

 ここで興味深いことがあったので書いておきます。実は最初,再生速度が強烈に速くて,速度調整ボリュームでも出来ないほどでした。これはキャプスタンが滑っているからだろうと思っていたのですが,よくよく考えてみるとモーターの上側のローターを外していました。

 パナソニックのブラシレスモーターは面白い構造をしていて,コイルの並んだステータをマグネットのついた上下2つのローターが挟み込んでいます。おそらくメカW全体を薄く作る事が出来るのだろうと思うのですが,ベルトの交換は上側のローターを外さないと出来ません。(出来なくはないが失敗しやすいし難しい)

 それでローターを1つ外して通電したのですが,これで速度が強烈に速くなったというわけです。ピンと来た人も多いと思いますが,直流モーターは磁石(界磁と言います)が弱くなると回転数が上がります。

 そこでローターを戻して2つで回転させると,ちゃんと正規の回転数で回ってくれるようになりました。いやー,面白いです。

 これ,なぜそうなるのかという話です。直流モーターは電圧を上げると回転数(もトルクも)が上がるので,磁石を強くしても回転数は上がると思いがちですがさにあらず,回転数は下がるのです。

 これは,直流モーターは回転するとき,同時に発電も行っているからです。磁界の中をコイルが動いているのですから,当然電圧が発生します。これは与えられた電圧とは逆になるので,逆起電力と言います。

 モーターを回している電圧は逆起電力と相殺されて,電圧が下がったのと同じようになり,回転数が上がらないのです。理屈では知っていましたが,実際にこういう現象を体験すると,ちょっとした感動があるものです。

 さて,フォワード側のワウフラッタが大きいのはピンチローラーの変形が原因でしょう。これは基本的には新品交換が一番よいのですが,外してみると5.5mmという小さい径です。手持ちもないし入手が難しいかなと悩んでいたのですが,かつてWM-805から外したピンチローラーを削って6mmにしようとしたところ削りすぎたものが出てきました。

 ゴムも柔らかいので,もうちょっと削って5.5mmにすれば大丈夫そうです。そこでさらに削ってみたのですが,削りすぎてアウト。そんな失敗を何個か作って,ようやく5.5mmのローラーを作る事が出来たので,少しだけあったキャプスタンの錆を取って,組み立てて動かしてみます。

 ワウフラッタはかなり押さえられたのですが,よく見るとフォワード側のピンチローラーが上下に1mm程動いています。見た目に最悪な動きなのですが,ワウフラッタは出ていません。

 おそらくですが,ピンチローラーを削るときに,真円に削ることができなかったのだと思います。この場合,ピンチローラーを押さえる付ける圧力が変動するのでワウフラッタは当然出るものだと思っているのですが,結果はそんなことなくて,なかなか良好です。

 これほど動くんですから異常な動作であることは間違いなく,なんとかしないといけないとは思うのですが,実害はありませんし,最終的に見えないようになるので,もうこれ以上追い込むのはやめようと思います。うーん,気持ち悪いなあ。

Walkmanの修理~その3~WM-EX666編

 WM-805の修理が難航して,いよいよあきらめるかと思っていたときに私が取った行動は,別のWM-805を手に入れてニコイチを作る事と,比較的年式の新しいWalkmanを手に入れる事でした。

 WM-805は調子に乗って入札しまくったことで,修理が出来てしまったにもかかわらず2台(どちらも黒色)も手に入ってしまい,合計3台という陣容です。いずれも塗装は劣化しているのですが,1台は前オーナーが根性で塗装を剥がしたらしくシルク印刷もなくなっていますが,もう一台はベトベトがなくなるまで放置されていたもののようで,白く粉を吹いたような状態になっていますが,印刷は綺麗に残っています。

 メカの様子は先日修理した赤色のWM-805が一番程度が良く,sきあもピンチローラーも新品ですので,一番性能が出ているように思います。残りの2台はキャプスタンが錆びていたり,ピンチローラーに変形があったりするので,これを修理しても今ひとつかなとモチベーションも上がりません。

 年式の新しいWalkmanを手に入れたいと思うのは,同じように年式の新しいパナソニックのRQ-SX35が修理が楽だったからなのですが,そうして手に入れたWM-EX666は予想に反して修理に大変手間のかかるじゃじゃ馬でした。

 WM-EX666・・・私はどんなモデルかさっぱり知らなかったのですが,どうもベーシックモデルで価格を下げたもののようでした。メカはプランジャを使わない興味深いもので,モーターを逆回転させることでモード切替を行い,そのためにリバース再生時でもモーターを正回転させるようにしてあるという,当時の設計者の創意工夫が感じられるものでした。

 プランジャは高価な部品ですので,コストダウンを動機とした斬新なメカだと思うのですが,修理後に使ってみると,モードの切り替えも滑らかで上品ですし,動作音も実に静かで,いいメカデッキだなと思いました。

 ただ,そこはコストダウンを目的にしたメカデッキだけに,耐久性というか,経年変化が起こる部品を肝心な部分に使ったりと,長く使うことは考慮されていないように思います。当時のソニー製品ならどれもそんなもんかも知れませんが。

 さて,そんなWM-666の修理の記録です。

(1)塗装の問題

 ゴムっぽい風合いの塗装は加水分解でベトベトになりますが,1990年代から2000年代にかけて流行しました。このころの製品は何十万円もするカメラでさえもベトベトになってしまい,現在の価値を下げてしまっているわけですが,当時の技術者は本当にこうなることを知らなかったらしく。罪悪感と言うよりも自ら被害者という意識が強いんじゃないかと思うほどです。

 WM-666も一部にこの塗装は使われていて,操作ボタンの周辺のプラスチックと,下ケースと蓋の間に挟まれる枠にべとつきがありました。

 気持ち悪いのでなんとかしないといけませんが,WM-805のようにクリアラッカーで仕上げると傷に弱い塗装になるので常用は難しくなります。そこで多少の傷は仕方がないとして(クリア塗装をすると小さなキズは綺麗に消えます),重曹でべとつきを抑えた状態で使うことを考えました。

 分解して該当する部品を取り外し,重曹に2時間ほど漬け込んで水洗いしたのですが,なんと操作ボタンの周辺の塗装が一部剥げてしまい,とてもみっともなくなってしまいました。

 こうなるともうクリアを吹き付けるしかありませんが,そのために元々の塗装を綺麗に剥がす必要があります。1500番の耐水ペーパーで塗装を剥がすことにしましたが,BATTとREPEATと書かれた印刷もなくなってしまいます。でもこれはあきらめましょう。

 枠も多少剥げていますが目立たないのでこのままとします。デコボコしているので塗装が剥がしにくく,しかもぶつけやすいのでせっかくクリアラッカーで仕上げても剥がれてしまうだろうと思ったからです。


(2)ギアが外れてガリガリ

 クリアラッカーの塗装が終わったら内部の修理です。ゴムベルトは使えそうなものが手持ちにあったのでこれを使うとします。電池の液漏れもないので基板は無傷ですから,ゴムベルトだけ交換すれば済むだろうと思っていました。

 ところがそう甘くはありません。早送りや巻戻しをすると,テープエンドでリールが止まる時に,ギアが飛ぶ激しい音がガリガリとしてからストップします。壊れてしまいそうな音ですから,おちおち使っていられません。

 分解してメカを確認しますが,動作状態を見られないので手で動かして想像するしかありません。分かった事は,再生時のリールの回転はスリップリングで空回りできる仕組みがありますが,早送りと巻戻しはどのギアもきっちりかみ合うので,リールが止まってしまうとモーターまで止まってしまうという,よく分からない仕組みだったことです。

 これではホールセンサがリールが止まったことを検知するまでギアが外れてガリガリ音がするのは正しいですが,本当にそんな設計をするもんだろうか,と随分悩みました。

 もしかするとゴムベルトを緩くしてあって,ゴムベルトのスリップを使うのかもと考えて少し大きいものを試したりしましたがスリップするよりギアが外れる方が先で,どうにもなりません。

 そこで外れて音を出しそうなギアの取り付け高さを厳密に調整しようと考えて,ギアの台座の部分を少し削って高さを揃えました。この結果走行は安定しましたが,テープエンドでもっと激しくギアが外れるようになってしまいました。

 もっとよく観察すると,スリップリングを持つギアの高さが問題のようです。モード切替時,再生モードの時にはメカの一部の突起がこのギアの高さを下げてギアのかみ合わせをリリースし,このギアの下側のスリップリングを介した別のギアとかみ合うようになっています。

 一方で巻き戻しや早送りの時はギアが上がり,スリップリングのギアは外れてギアが直結するのですが,直結の時の高さが足りずに高負荷時に外れてしまうようです。

 スリップリングが経年変化で薄くなり,摩擦が増えたり高さが低くなったりするのは良くある話なので,かさ上げを考えます。一番良いのはメカをいじってギアのリフト量を増やすことなのですが,それはちょっと難しいですから,スリップリングを分厚くする作戦を立てます。

 そこで,ポリイミドテープをスリップリングに貼り付けてかさ上げを試みます。何度かカット&トライをしてかみ合わせが確実になるようにしたのですが,それでも高負荷では外れてガリガリをイオンをさせますし,しかもスリップリングの摩擦が増えたことでワウフラッタが激増し,もう使い物にならないレベルです。

 疲れ果てた末に私が下した判断は,スリップリングのテープを剥がし,元の高さに戻します。さらにおまじないとして,別のギアの台座を少し削っておきました。

 ポリイミドテープは糊が剥がれてスリップリングに付着していて,これを剥がすのも一苦労です。何度も空回りさせて糊を剥がして,軽くスリップするようになったことを確認してから組み立てます。

 期待していませんでしたが,これで再生すると恐ろしいほどワウフラッタが消えています。負荷が軽くなったのでBATTランプも明るく点灯しています。

 さらに巻戻しと早送りも,高負荷時にギアが外れることがなくなりました。これはおまじないの台座を削ったことがきいているのか知れません。

 そして緊張のテープエンドです。テープエンドになると,即座にストップしました。以前のようにギアが外れる時間もありません。なるほど,本来はこういう動作でギアが外れたり異音がしたり,ギアの歯が欠けたりすることを防ぐ仕組みなんですね。上品と言えば上品ですが,ギア欠けはいずれ起きるような設計だと思います。

 それでも条件が悪いと高負荷時にギアが外れてガリガリいいますが,以前のように100%ガリガリいうことはなくなりましたし,テープエンドでも高確率で止まってくれるので,もうこれでいきましょう。

 おそらくですが,スリップリングを綺麗にした時に,高さも復活,摩擦も軽減されたんじゃないかと思います。この結果初期の状態を取り戻したことで,ギアが外れにくくなり即座に停止できるようになったのと,ワウフラッタが大きく軽減されたんじゃないかと思います。


(2)他の問題

 ガリガリ音がする問題で心身共に疲れたのですが,問題は他にもありました。ヘッドから出ているフレキをコネクタに差し込むのに,どうにも刺さりません。どうもフレキの厚みがこのコネクタにあっていないようです。

 このままではフレキを傷めてしまうと考えて,おそらく元の付け方だと思われる(悪いことに写真を撮り忘れていましたし,パッパと外したので覚えてもいません)方法で差し込みました。方法ではクランプがしっかり出来ず,外れてしまうように思うのですが,フレキを綺麗に曲げてテープ(ヒメロンといいます)で固定してあるので,これでいきましょう。

 実は無理に正しい差し込みにこだわり,コネクタを基板から剥がしてしまいました。外れただけだったのでハンダ付けをやり直せば済む話でこれは大した問題ではなかったのですが,パターンが剥がれてしまうのはまずいので,もう正しい方法にこだわりません。

 モーターのフレキも壊れかけました。もう何十回も付け外しをしましたので銅箔が剥がれてしまうのは避けられませんが,これもなんとか壊れる前に修理完了です。


(3)リモコンの改造

 跡で気付いたのですが,このモデルは標準的な3.5mmのヘッドフォン端子を持たず,リモコン対応のために特殊な9ピンのコネクタを採用しています。リモコンから直接ヘッドフォンが出ているので交換出来ないのが当時から不評だったことを覚えていますが,30年も前のヘッドフォンを使うことは考えられないので,途中でケーブルを切断し,ここに3.5mmのジャックを取り付ける改造をしました。

 ちょうどよいサイズの熱収縮チューブがなくて不細工な外観になったのが残念ですが,当初の目標はクリアしたのでまあいいとしましょう。


 ということで,WM-666もなかなか手強い相手でした。電気のトラブルと違って見えるものが相手ですが,基板の下に隠れている以上は見えない相手みたいなものですし,交換部品が有るわけではありませんから,修理は本当に難しいなあと思います。

 あのままガリガリいったままつかっていたら,いずれギア欠けが起きて再起不能になっていたかも知れません。ギアが外れないことを前提に,即座にストップをかけるという電気回路の工夫でメカの破損を防ぐ思想は,一瞬でも大きなトルクがギアにかかるわけで,いずれ歯が欠けてしまうんじゃないかと思います。

 しかし,前述の通りプランジャを使わないモード切替は滑らかで動作音も小さく,とても上品で心地よいものです。ワウフラッタも気にならないくらい小さくて,後年の低消費電力モデルに見られる,低トルクのモーターと低マスのフライホイールのせいでワウフラッタが原理的に問題になるようなこともありません。

 外観も比較的綺麗ですし,テープの収まりも精度良く,使っていて気分のいいモデルだと思います。個人的にはこれを常用機にしてもいいかなと思っているのですが,それはこの後に続く,修理待機品の仕上がり次第というところでしょうか。


 さて,ここまででRQ-SX35,WM-805,WM-EX666と3台復活してくれました。次はどれにしようかなあ。

 

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