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年末年始の修行

 この年末年始は長いお休みを頂いた上に,娘がほぼ家におらず,随分のんびりとさせて頂きました。ふとしたきっかけでひたすらアナログレコードをかけまくっていた年末年始でした。

 デジタル音源,特に配信では音楽を集中して聴かないことに私は以前から気が付いていたのですが,アナログ,それもノイズや針飛び,録音時のレベルの確認でリアルタイムで音をモニターし続けなくてはならないレコードの再生や録音に伴う時間的肉体的な制約は,期せずして新たなる音楽の発見の機会となることがあります。

 私はこれを,良い意味でも悪い意味でも「修行」と呼んでいますが,修行である以上まとまった時間は必要ですし,健康状態も精神状態も良いものでなくてはなりません。この年末年始はその絶好の機会であったということが結果的に言えそうです。

 そのふとしたきっかけというのが,嫁さんが「サウンドバーガー」を買ったことでした。オーディオテクニカのサウンドバーガーは1980年代に登場した小型のレコードプレーヤーですが,1980年代らしい知恵と工夫によって安価で手軽にもかかわらず,音も操作性も優れている名機です。それが昨年復刻したことは話題になり,当初限定生産だったものが常時販売されるようになったことも記憶に新しいところです。

 さすがにカートリッジの世界的メーカーで,今でもカートリッジを生産し続けるオーディオテクニカだけあって,搭載されたカートリッジは同社の金看板であるVMカートリッジですから,音質的にも問題はありません。

 今どきのオーディオ機器らしく,Bluetoothでワイヤレス,バッテリーはリチウムイオン電池で長寿命と,まさに現代にアップデートされたサウンドバーガーですが,見た目は当時のままのかわいらしさと実用性を備えており,久々に「わかってるなあ」と唸ったプロダクトでした。

 嫁さんがこれを買った理由というのが,手持ちのレコードを聴きたかった,というものでした。私のプレイヤーはややこしく,およそ手軽に聴けるような代物ではなかったからなのですが,その結果彼女が押し入れから発掘してきたレコードに,なかなか面白そうなものが揃っていたので,ここは気合いを入れて24bit/96kHzで録音しようという話になったのです。

 その作業が一段落して,今度は自分のレコードラックを探してみると,録音を済ませていないレコードがチラホラと発掘されました。

 はて,と経緯を思い出すと,話は高校入学時まで遡ってしまいました。

 父が知り合いから,当時ですらすでに粗大ゴミ扱いされるような古いシステムコンポを私の入学祝いにと調達してきました。

 体よくゴミ処理を押しつけられたんだなと今ならわかりますが,お人好しで物を知らない父親は,ご丁寧にお金まで払って嬉々として持ち帰っては,私にそのお金を請求して喜んでおりました。正直クズだと思います。

 とはいうものの,当時の我が家にはまともなオーディオ機器はなく,ヘッドシェルを交換出来るベルトドライブのレコードプレイヤーや25cmウーファーを持つスピーカーなどは,その金額でも十分元が取れると私も判断してお願いした経緯があったりします。

 そのプレイヤー(オンキヨーのCP-6000Aだっと思う)は性能的にもゴミ同然なのですが,とにかくカートリッジを交換出来るものとして私に新しい世界を見せてくれたことは確かで,ここから私のカートリッジを探す旅は始まったといえるでしょう。

 余談ですが,初めて購入したカートリッジ「VMS30mk2」は,このプレイヤーのために購入したものです。ただ,思ったほど音質が変わらず,その理由が結局の所プレイヤー(トーンアーム)の基本性能とイコライザアンプによるものであるとわかるのは,もう少し後になります。

 で,父親は変に気が回る人だったので,せっかくプレイヤーを手に入れてもレコードがないのは寂しかろうと,何枚か用意してくれました。(ちなみにこの代金は請求されませんでした)

 ただ,そこは父親らしく,これらが当時隆盛を誇っていたレンタルレコード店の在庫処分品だったのです。いわゆるレンタル落ちというやつで,それもトコトン売れ残ったものでした。当時はCDへの移行期でもあり,こうしたレンタルレコードの処分があちこちで見られたものです。

 1枚1000円(これは正直ぼってますね)から3枚1000円に手書きで書き換えられた値札が妙にリアルだなと思うのですが,問題はそのラインナップです。演歌しか知らない父親が精一杯頑張った結果選んだのは,松山千春となんと三田村邦彦。松山千春はともかくとして,三田村邦彦ってアルバム出してたんだ・・・TDKコアから出ていますが,大丈夫かTDK?

 布施明もありました。ちょうどアメリカに移住し,帰国直前に作ったアルバムのようです。彼はこのあと離婚して,破格の慰謝料を請求されるんですよねー。

 そんな「猫またぎ」な有名人に加えて,生沢祐一のデビューアルバム・・・加えてモンタ&ブラザースのラストアルバム・・・

 更に面白いのは,黒人アーティストの見分けがつかない人らしく,マイケル・ジャクソンと間違えて買ってきたと思われるジャーメイン・ジャクソンのデビューアルバム。漂うコレジャナイ感に窒息寸前です。

 そしてとどめを刺すのが大量の12インチシングル。初耳の方もいらっしゃるでしょうが,30cmのLPレコードを45回転で再生するフォーマットを12インチシングルと呼んでいて,当時ちょっとしたブームになっていました。

 シングルで45回転と言えばいわゆるドーナツ盤のEPレコードですが,45回転という高速でLPレコードと同じ大きさの円盤の外周部にカッティングして高音質を狙い,かつ収録時間も10分近いということで,新しいシングルとして注目を集めていたのです。

 ジャケットもLPと同じで視覚効果抜群,お値段も1200円程度といいお値段で売れるとあって,一時代を作ったメディアでした。

 ただ,そんなものを父親が知るよしもありません。案の定,12インチシングルをLPレコードと信じて,これはお買い得だと大量に買ってきたのでした。

 当時から私はフルアルバム信奉者かつオリジナル原理主義者でしたので,12インチシングルの,原曲にない間延びした間奏であるとか,イントロの前の変な朗読とか,そういうものをとにかく毛嫌いしていましたから,もう見るのも嫌で捨ててしまおうかと何度も思ったものでした。

 それが今,まだ目の前に残っています。どれどれ・・・

 The JacksonsのBest4You,・・・マイケル若いなー。
 鈴木茂のBeing70's・・・あのはっぴいえんどの鈴木茂のレアシングル!
 Face To FaceのTell Me Why・・・こんなバンドしらんな。
 ラッツ&スターのグラマーGUY・・・裏ジャケの汚い写真はどうにかならんか。

 そう,これらは何度も聴こうと覚悟を決めては,とうとう音を出すことが出来なかった,そんな苦杯の歴史そのものでした。しかし,今の私は年齢を重ね,おかしなこだわりもなくなっています。再生してみましょう。

 まずThe Jacksons。これはいい。本物ですから当然ですが,有名な4曲を安価なパッケージにした良心的な企画で,非常に素晴らしいです。

 鈴木茂は,今聴いてみるとそんなに悪くはありません。当時は退屈だったんじゃないかと思われる曲調ですが,ベテランらしく良く出来た楽曲で,もっと評価されてもよいと思います。

 Face To Faceは,当時アメリカでも流行っていたシンセサイザーを多用したポップとロックの中間で,粗製濫造な感じは否めません。今さら学ぶものもなし。

 最後にラッツ&スター,さすがに和製ソウルの先駆者だけに良く出来ていますが,やっぱり裏ジャケが汚すぎて直視できません。

 とまあ,気を取り直していろいろ調べてみると,12インチシングルというのは日本独自の文化だったようで,海外では珍しい物なんだそうです。なので,The Jacksonsのような有名どころではマニアがレアアイテムとして集めているらしく,それなりの価格で取引されていることがわかりました。ありがとうDiscogs。

 ところで,これとは別に始めた修行があります。

 一昔前,会社では主に女の人を中心とした「千趣会」がはびこっていました。今でも千趣会と言えばカタログ販売の大手ですが,1970年代でもそれは変わらず,むしろ買い物の方法が限られていた当時において職場斡旋のカタログ販売というのはありがたいものだったらしく,独自企画のシリーズ物などはそれなりに数が出たようです。

 折も折,当時は百科事典ブーム。読みもしない百科事典を全巻揃えて応接間にどーんとおくという見栄っ張りなことをやるのがステータスシンボルだった時代だけに,毎月1枚,様々な音楽を家庭に送り込むという企画は今では考えられません。

 そんな企画の1つが,「虹の音楽シリーズ」で,今でもヤフオクあたりでは定番の遺品処理の対象として安価に流通しているようです。

 他例に漏れず,我が家にもそんなレコードが全巻揃っていたわけですが,その内容はやっぱり今ひとつで,よほどNHK-FMの方が楽しく様々な音楽が楽しめたと思います。こうした企画ものというのは,結局の所選曲がすべてであると我々を諭すのでした。

 もちろん,オリジナルが収録されているものもありますし,そうでないものは大御所の石丸寛率いるケイ・ストリングスによる演奏ですのでハズレはありませんが,繰り返すように選曲がいまいちなことと,やっぱり録音が1960年代のそれということで,音源としてどうも物足りません。

 そんなアルバムが14枚あったわけですが,この中で2枚だけ,幼少期の私がよく聴いたというものがあります。「Beautiful Nippon」と銘打ったわらべ歌と,ビートルズナンバーの2つで,どちらも石丸寛とケイ・ストリングスです。

 母が言うには,言葉も満足に話せないころの私がこのレコードを聴くと首を前後に振った(いわゆるヘッドバンキングですな)そうで,まだ若く幸せだったころの母の日常を思うと,ちょっともの悲しくなります。同時に私のまさに音楽の原体験とも言えるのですが,そんなレコードだからもう傷だらけです。

 この2枚は他の12枚とは別に保管されていたので,実家の処分を行ったギリギリのタイミングで発掘されたため,私の手元にも遅れて届いたという経緯があるのですが,他のレコードは一度も再生していなかったものが大半で盤面も良好だったのに,この2枚については傷と汚れがひどい状況でした。

 特にわらべ歌については大きなキズで針飛びが起きるほどでした。しかし,これは復活させたいところです。

 とりあえず針飛びを起こさない程度に修復できることは分かっているので,顕微鏡を見ながらまち針を使って溝を修復します。音質云々は諦めて,とにかく連続して最後まで再生出来ることを目指した結果,これは上手くいきました。

 後はバランスウォッシャーで丁寧に清掃し,再生します。

 うーん,確かによく聴きました。なつかしい。

 わらべ歌も今聴いてみると,なかなか高度なアレンジで聴き応えがありますし,ビートルズナンバーも,これこそ私のビートルズの原点で,Please Mr.Postmanなんかはこっちの方がいいんじゃないかと思うほどです。

 使っている楽器がロックのそれではないので残念ですが,Hey Judeなんかもちゃんと要所を押さえていて,オリジナルに対するリスペクトを失ってはいません。このあたりが,歯医者さんで流れてくるイージーリスニングとは違う所です。

 これらの修行が一段落してみると,急に寂しくなって嫁さんと一緒に渋谷に出かけて,新しいレコードを買ってくる始末(リー・リトナーのジェントル・ソウツ)です。

 そしてそれも終わって,もう満腹となった時,またも嫁さんがレコードを押し入れから引っ張り出してきました・・・なになに,The Beach Boysだと!

 まだまだ修行は終わりそうにありません。

 

古いテスターMD-150Cをレストア

 少し前の話になるのですが,古いテスターを手に入れました。サンワのMD-150Cです。

 1982年生まれですから実に40年も前のもので,わずか3.5桁,レンジ切り替えは手動ですし,導通チェッカーもブザーもありません。当然容量計もダイオードチェッカーもありませんし,高圧に対する安全規格が出来る前なので,カバーなどの対策もないくせに1000Vまで測定可能という恐ろしい仕様です。

 兄弟機としてMD-200Cがありますが,これはテスターの手前側にオプションを取り付けると,温度やhFEなどを測定する事が出来るという拡張性を備えていました。MD-150Cは拡張性がない代わりに,DC20uAのレンジを備えています。

 今のテスターが持っていないもので,MD-150CやMD-200Cが持っているのは,その薄型のデザインでしょう。私は小学生だった当時,MD-200Cをみて格好いいなあと思ったのですが,それが今でも心のどこかに引っかかっていたようで,同じデザインを持つMD-150Cを手に入れた時は,久々にワクワクさせられました。

 思えば,当時はアナログテスター最後の時代で,CMOSタイプのLSIによってデジタルテスターが作られるようになったこの時期,ようやく安価で実用の高いデジタルテスターが登場して,徐々に置き換わりつつありました。

 アナログテスターは測定器の定番として,プロも現場で使っていますから,その形や操作方法はどれも同じようなものになっていて,あまり代わり映えがしなかったように思います。(しかしサンワのBX-85TRのようなアナログテスターは,薄型で色も形も格好良かったです)

 しかし,デジタルテスターはメーターのような可動部がないので部品レイアウトの自由度も高く,高さに制約のある部品がなかったことから,大きさも厚さもデザインもいろいろ試せたんじゃないかと思います。

 それから40年,今見るデジタルテスターは,どれも同じようなものになっています。プロが現場で使うと,安全で確実なデザインになっていくということでしょう。

 MD-150Cは,そうした試行錯誤があった時代の製品です。なんと言っても厚さがわずか20mmしかありません。カード型のテスターならこれくらい珍しくもなんともないのですが,テスターリードが交換可能なテスターでこの厚さは今はもうないでしょう。

 LCDは数字しか表示されず,単位の表示さえないシンプルなものですが,文字の大きさは今のテスターと変わりません。余計な情報が出てこないだけ視認性は高く,当時のLCDらしい独特の下地の色がレトロっぽくて好印象です。

 レンジ切り替えは自動ではなく,アナログテスターと同じく手動切り替えです。しかしこのロータリスイッチは良く出来ていて,そのまま回せばクリック感がありますが,少し押し込めばクルクルと軽く回転するので,レンジ切り替えもスムーズです。しかも大きくて操作しやすいです。

 電源スイッチは側面のスライドスイッチなのですが,これがまた使いやすいです。オートパワーオフがないのもよいです。

 もう1つ特徴的なのは,抵抗レンジで印加される電圧を2種類から選ぶ事が出来ることです。Hiだと1.2V,Loだと0.35Vで,通常は精度と速度から1.2Vを使いつつ,回路に入ったままの状態で抵抗を測定するときや,定格電力の小さいものを測定するときなど,電圧を下げたいときにはLoに切り替えます。

 この機能は使う人も少ないのか,今どきのテスターには搭載されていませんが,使いこなしという点で私は今でも欲しい機能です。

 そしてなにより,この格好良さです。色はクリーム色で,僅か20mmの厚さに今のテスターに見慣れた目からは平べったく目に映る幅広のボディです。レンジ切り替えが手動ですから,機能ごとに淡い色でまとめられた,たくさんの文字がわかりやすく書かれたパネルが,いかにも測定器らしくてワクワクします。

 この時代の測定器ですから,調整や自分で出来るように配慮されていました。内部の2つのVRで,直流電圧と交流電圧を調整する方法が説明書に記載されていました。

 さて,手に入れたMD-150Cは随分汚れていて,触るのも憚られるほどでした。傷だらけでしたし,クリーム色の筐体はすっかり日焼けして茶色くなっていますし,パネルの文字も薄くなっています。テスターリードもありませんでした。

 電池をとりあえず入れてみると動くようなので,早速分解して洗浄しました。そしてこの忌々しい日焼けをなんとかするために,レトロブライトを敢行しました。

 結論から言えば今回のレトロブライトは失敗です。漂白の程度が上ケースと下ケースで違ってしまったので組み立てるとツートンカラーになってしまいました。

 それに,パネルの文字はますます薄くなり,特に赤の文字はほぼ消えてしまいました。SANWAのロゴも消えましたし,淡い色のグルーピングもすっかりなくなっています。

 かなりがっかりしましたが,これを対策するのは難しいので,LCDの上にかかっている風防を磨き,組み立てを済ませました。一通りの動作確認をした後調整を済ませて,精度の確認です。

 もともと3.5桁ですから精度もクソもないのですが,一応いつものようにHP34401との比較をやってみたいと思います。

 いつもの標準電圧発生器の出荷時の値は以下の様な感じです。

2.500V・・・2.50165V
5.000V・・・5.00302V
7.500V・・・7.50454V
10.00V・・・10.00533V

 測定日からすでに7年も経過しているので,ズレていても仕方がないのですが,あらためて現在のHP34401Aを調べてみますが,1年前の値と比べてもほとんど変わっていません。

2.5018V
5.0034V
7.5052V
10.0063V

 次にHP34401Aの現在の値と,MD150Cとの比較です。

2.50V -1.8mV -0.0719%
5.01V 6.6mV 0.132%
7.51V 4.8mV 0.064%
10.02V 13.7mV 0.137%

 桁数が少ないのでどうしても差が出てしまいますが,それでもこの精度です。HP34401Aを3.5桁に丸め込んだら5Vと10V以外はドンピシャ,十分実用レベルです。

 表示の更新速度はこの時代のものとしてはごく普通の2回/秒で,この点は少々残念ですが,連続した変化を読み取るにはアナログテスターを使えと,使い分けが当たり前だった時代であることを考えると,特に悪い物ではないように思います。

 使い勝手でいえば,繰り返しになりますが横にある電源スイッチが使いやすいです。ロータリスイッチを回すタイプの淵源スイッチが多い中,片手で電源を入れることが出来るというのはなかなか便利です。

 そんなわけで,制度面でも問題なく,電流を含めた豊富なレンジを持ち,使いやすく見た目も格好いいMD-150Cは出番が多くて,すっかり私の常用機になっています。これ一台で何でも出来るという絶対性能の高さはありませんが,ちょっとした測定に便利で,いつも私の手元においています。

 逆の言い方をすれば,テスターなんてのはこの程度の性能があればそれでもう十分なんじゃないかということでしょう。

 昨日,MD-150Cを使っていてふと思ったのは,高価でもこれを当時手に入れていれば,もしかしたら別の人生があったかもなあ,ということでした。高校生の時に手に入れた初めてのデジタルテスター(そして人生で2台目のテスター)であるRD-500も随分と活躍してくれましたが,これがMD-150Cだったら,もっと測定作業が楽しくなったんじゃないかと思ったのでした。

 

XC-HM86が壊れた

 XC-HM86がまた壊れました。今度もCDのトレイが出てきません。

 前回壊れた時は保証期間内だったので無償修理,しかしその修理があまりにずさんで,LCDの画面と正面のパネルに大きなキズ,背面はACコードを挟み込んでケースの外にはみ出していましたし,全体に傷だらけ,指紋でベタベタになって戻ってきました。

 新品を買って,1年以内に壊れたので修理に出したらこの有様ですから,それはもうがっかりしました。この時は,使い続けるには危険があるということで新品交換となったのですが,それでももう私に取って,パイオニアとその修理を引き継いだオンキョーへの信頼は崩れていました。

 その後,結局両社は消えてなくなってしまったわけですが,どちらももともと大好きなメーカーだっただけに残念でなりません。

 そのXC-HM86が,また壊れました。前回はモータードライバの破損で部品交換となったのですが,今回もそういうことじゃないかなと目処を立てます。

 すでに保証期間は過ぎていますし,ようやく修理を引き継いだTEACが修理可能機種としてアナウンスするに至ったくらいですから,修理をするにしても有償になることは間違いありません。2017年製造のシールが貼ってあるので,すでに6年も経過したいますから,もう自分で修理するのがベストでしょう。

 さっとgoogle先生にこの件を尋ねると,どうも同じような状況で壊れたケースが多数見つかります。設計の問題なのか,部品の不良なのかわかりませんが,どっちにしても傾向不良である可能性は高そうです。

 問題の破損箇所はやはりモータードライバで,AM5869Sという聞き慣れない型番のICの破損ということです。AMTECという中国のメーカーらしいので知らないのは当然として,このICのちゃんとしたデータシートが見つからないのも問題です。

 XC-HM86についても,回路図は見つからなかったのですが前の機種であるHM72なら見つかりました。概ね同じはずで,実際CDの制御部についてはほぼ同じでした。

 で,このドライバICはちょっと面白くて,フォーカス,トラッキング,スレッド,スピンドルの4つのサーボのドライバに加えて,トレイを動かすローディング用のモーターのドライバの5つをワンチップにしたICです。

 なかなか集積度の高いICだなと思うのですが,サーボに関係ないローディングモーターのドライバまで一緒にされてしまうと,今回のようなケースでサーボのループに入っているドライバもろとも交換することになり,サーボの再調整が必要になるんじゃないかと心配していました。

 しかし,よく考えたら今どきのサーボはデジタルサーボで,自動調整されるものがほとんどですからね,ドライバが変わってトータルのゲインが変わってしまっても,そんな程度なら自動調整で吸収されるはずです。

 そんなわけで,こういうややこしい部品はaliexpressで調達です。5個で1000円,送料まで入れて1600円ほど(円安はやくおわんないかなー)しましたが,1週間ほどで無事到着,早速交換作業に入りました。

 交換作業はうまくいき,綺麗に出来上がったのですが,組み立てて動かしてみるもやはりトレイは出てきません。スレッドもスピンドルも起動時に動くのでドライバは問題ないのですが,交換前の状態は,交換前に通電しなかったのでわからず,悔やまれます。

 こうなってくるとドライバから後の話だろうと,メカデッキを外してトレイを動かすローディングモーターを調べます。ゴムベルトは生きていますし,手動でトレイを動かす事は難なく出来ます。

 そこでモーターの導通を調べると導通していません。正常ならここは導通状態でなければならないのですが,これだとモーターに電流が流れないのと同じなので,回らないはずです。

 モーターを外して指でシャフトを回すと,どうもスムーズに回りません。コリコリという引っかかりがあります。電源器に繋いで見ますが,やはり回りません。大きな電流が流れている様子もないので,ショートはないようです。

 この状態で指で少しシャフトを回すと,ガタガタと回り始めました。電圧を上げると異音をさせながらもなんとか回っている感じですが,一度止めてしまうと再起動しないので,これではだめだと思います。

 こういう場合は即モーターの交換ということになるんでしょうが,同じ定格の同じモーターが手元にある訳ではないので,私はまずはモーターそのものの修理を試みます。

 よく見る小型直流モーターですので,さっさと分解しますが,別におかしいところはありません。整流子が異常に汚れているので,もしかするとゴミか金属片が引っかかっているのかも知れません。

 整流子とブラシを清掃,ベアリングに注油して組み立てると,嘘のようにスムーズに転がります。電源を繋げば滑らかに低い電圧から回ってくれます。これなら大丈夫でしょう。

 メカデッキに取り付けて組み立て直して通電すると,何事もなかったかのようにトレイが出てきました。あとはさっさとテストをして組み立て直して,修理完了です。

 心配していたサーボですが,こちらも問題ありません。CDは問題なくかかりましたし,サーチもジャンプも素早く出来ているので,サーボも問題ないでしょう。

 ということで,ドライバICは黒でした。まさかモーターが問題とは・・・

 私の印象ではありますが,どうも中国製のモーターというのは信頼性が低く,壊れやすいように思います。壊れた時に,オープンで壊れる今回のようなケースもあれば,ショートで壊れる厄介なものもあり,傾向不良として表面化しているドライバICの問題というのは,実はモーターの不良で過大電流が流れたことによるんじゃないかと,疑ったりもします。(そんなことはさすがにないでしょうけど)

 わざわざ中国から入手したドライバICは役に立たず,タダで治ってしまったことに拍子抜けしつつ,とりあえず直って良かったなあと思います。

 それにしてもですね,この全体に漂う品質の低さはなんでしょうか。

 まず,使われているビスがタッピングビスではなく,ただの木ネジってやつです。2本ほどネジ山が潰れていましたし,それ以外もほとんどのネジが斜めに入っていました。

 無駄なネジも多いですし,綺麗なのは基板だけで,手作業が必要な部分は非常に厳しいものがあります。先日,A&DのGX-Z9100EVを分解しましたが,この丁寧さとは雲泥の差です。

 今回初めてXC-HM86を分解しましたが,これは申し訳ないですが,私の知るパイオニアが作ったものではありません。安い値段で買った物ですので文句は言うまいと思いますが,不思議なことにこれでもちゃんとパイオニアの音が出てくるんですよね。

 ネットワークプレイヤーとレシーバーを組み合わせた商品は海外製を含めるといくつか現在でも売られていますが,CD等の光学ディスクを再生出来るものということなると,ほとんど見なくなりました。

 その点で言えば,この機種はそれなりに貴重であって,CDが多い我が家では壊れると困るものです。壊れやすいとされているドライバICも予備を含めて5個も確保しましたので,しばらく困ることはないでしょう。もう少し付き合ってもらう事にします。

 

XD-S260の修理

 先日からカセットやLPレコードなどの音源をデジタル化してFLACにするということをコツコツとやっているのですが,この作業はとにかく時間がかかるのが問題です。

 楽しい音楽ならいいのですが,必ずしもそうではないところが「すべての音源」を目標にすることの厳しさで,まるでお経を聴いているかのような気分になることもしばしばです。

 だから途中で嫌になってやめてしまうのですが,数年するとまた「そろそろやるか」と重い腰を上げることになります。今回もわりとそういう間隔で始まった気がします。

 ここで数年というブランクが引き起こす悲劇があります。FLACにしたファイルの格納場所を忘れてしまい,デジタル化していないと勘違いしてもう一度取り込みをやり直してしまうことです。

 今回も,ふとDATの音源を探してみると,なんとMP3に変換した物しか見つかりません。当時はMP3で圧縮するのが容量的にベストであったとしても,今はそんなことで情報量の欠落を言い訳出来ません。やり直すしかないなあと,うちのDATデッキに目をやります。

 うちのDATデッキは,ソニーのDTC-59ESJと,アイワのXD-S260です。XD-S260の方が先に購入し,DTC-59ESJはいよいよDATが市場から消えるというタイミングで,バックアップとして買いました。

 このXD-S260は私にとっては画期的な一台で,これが当時のエアチェックの問題のすべてを解決してくれたのでした。

 FM放送を録音することをエアチェックといいました。今でこそFM放送は録音する価値などないものになりましたが,1980年代や1990年代は,FM放送でしか聞けない音源が流れていました。代表的な物はスタジオライブでしょうか。

 特にNHK-FMのスタジオライブは,当時でも音の良さで定評のあった505スタジオで録音されたものが毎週かかっていて,出演者のレベルの高さと相まって,本当に素晴らしい音源でした。今でも楽しく聴けてしまうのがすごいです。

 問題はこれをどう残すか,でした。もちろん,FM放送をそのままカセットに録音すれば良いだけなのですが,1時間の番組を切れ目なく録音することは出来ません。必ず裏返す必要があります。

 しかし,きっちり30分で演奏を切ってくれるわけもありませんし,裏返す時間がかかってしまうと,次の演奏の頭が切れます。それに,ただただ裏返しただけだとB面の録音時間が短くなってしまいますから,出来ればギリギリ,ベストなのはB面を巻き戻してから録音することです。(この点で言えばオートリバースデッキは役に立たない機能だったと言えます。)

 最後まで録音できなかったという最悪の事態はもちろん,ライブですから,MCも含めて切れ目がないのが楽しいのに,切れ目があるととても残念ですよ。

 そこで,一度出来るだけ長い高音質のテープに録音し,あとでダビングすることを思いつきました。とはいえ,当時のカセットデッキはA-450と,ジャンクの再生専用の改造カセットデッキだけですし,高音質のテープに120分のテープは売られていませんから,90分のテープを使っても,どっかで一度は裏返す必要があるのです。(裏返すのではなく別のテープの交換すればよかっただけではないかと,今思いつきました・・・)

 ところが,そうやって時間の問題を解決しても,ダビングによる音の劣化が問題です。まともなカセットデッキがなかった当時はもう深刻で,せめてメタルテープが使えたらと何度持ったかしれません。(A-450はメタルテープは使えないのです)

 ある日,日本橋でアルバイトをしていた私は,休み時間に近くのニノミヤムセンのオーディオ売り場を見ていました。すると,特価品としてXD-S260が忘れもしない,39800円で売られていたのです。夢にまで見たDATが,たった4万円で買える!

 悩むことなく買って帰ってから,その素晴らしさに感動しました。DATは標準録音時間がが120分ですから,1時間の番組など余裕です。16ビット/48kHzのリニアPCMですから,FMの音なんか「そのまま」です。いわば,私のためだけに再放送を何度もやってもらうような感覚なのです。

 ここから劇的にスタジオライブの録音品質が向上しました。当時の録音を聴いていると,A-450しか持っていなかった時でもDATからの録音だと十分音楽として聴くに堪えうるものが残っています。

 使っていて思ったのは,XD-S260はなかなか優秀で,ミニコンポサイズで安っぽい外観ではありましたが,音質もナチュラルでしたし,なんといっても信頼性が抜群でした。ドロップアウトもほとんど経験していませんし,DATにありがちなテープを傷めることはなく,安心して使うことが出来ました。

 その割には動作はキビキビしており,DTC-59ESJ等ではイライラさせられることもしばしばです。

 DATは,一応互換性は保たれている物の,やはり録音したデッキで再生するのが一番安定します。XD-S260で録音されたテープが多いのですから,XD-S260を出来るだけ維持しておきたいと思うのも人情です。

 一度,大がかりなレストアを数年前にやってはいるのですが,この時はベルトの交換と電解コンデンサの交換だけでした。電解コンデンサはこの当時の常として四級塩電解コンデンサの漏液がありましたが,基板の破損まではなかったので軽く見ていたのです。

 今回,久々にXD-S260を引っ張り出してみたのですが,やはり動きません。

 あれ,なんで私ワクワクしてるんだろう・・・・

 そんなわけで,修理開始です。症状はテープのトレイが出てこないからスタートです。

 トレイが出てこないのは想定内で,これはベルトが切れているか緩んでいるかです。交換すれば済むだけの話なので簡単で,あとは外観を綺麗にしたら終わりかなあなどと緩く作業をやっていました。

 しかし,テープが無事にロードされても,再生をしようとするとCAUTIONが出て全く動きません。これはなかなか面倒な事になってきました。

 注意して見ていると,早送りや巻戻しは出来る時があります。しかし再生は全くダメで,テープが回っている様子もありません。ということはキャプスタンかピンチローラーです。
 
 指でキャプスタンのモーターを回してみますが,なにから擦っているような感触があります。キャプスタンもーたーをメカデッキから取り外してみると,やはりローターがなにかと擦れているようです。

 モーターの故障ですから,普通はここでもう終了なのですが,諦めないのが私の良いところ。モーターを分解して見ると,ステーターのコイルに擦れた跡があります。何らかの理由で,どうもローターとコイルが接近しすぎたようです。

 理由が思いつかないのも気持ち悪いですが,ローターのマグネットを貼り付けた両面テープが膨らんだとか,コイルが広がったとか,いろいろこじつけることは出来るでしょう。とにかく擦れないようにスムーズにキャプスタンを回すことが最優先です。

 よく観察すると,キャプスタンの端っこを固定するベアリングは,スリーブの先端にねじ込む構造になっていて,ネジロックのペイントで固定されています。ここを調整すればいいんじゃないかと回してみますが,すでに目一杯回っています。ぐいっとねじ込んだらローターの擦れは軽減されますが,どう頑張ってもこれが限界です。

 本当に仕方がないので,壊す気持ちで紙やすりで削り,ネジがもう少し奥まで回るようにしました。これで組み立てると擦れることはなくなりました。

 しかし,あまりスムーズに回りません。どうも,ねじるときに歪んでしまったようで,軸受が一直線上に並ばなくなってしまったようです。モーターにとっては致命的でしょう。

 これももう仕方がないので,スムーズに回る向きと角度を出しながら,少しずつ指で曲げていきます。かなりスムーズになったところで深追いはやめました。やり過ぎると,ポロッと折れてしまいますからね。

 で,この修理したキャプスタンとモーターをメカデッキに戻してみますが,ローディングが完了せず,時間表示も出ないうちにCAUTIONが出ます。これもまた厄介です。

 よく観察すると,ドラムが回転していません。おかしい。再生でなくとも,ローディングした最初にはドラムは回っているはずです。そうしないと時間を読み取ることが出来ないからです。

 ということは,ローターを回すモーターです。ローターから出るフレキを見ると,もう切れそうになっています。何度も付け外した結果です。

 ルーペで見ると,1本は既に切れているようです。フレキ切れは致命傷ですが,この頃のフレキは太いので修復が可能です。フレキの被覆を削って銅箔を出し,ここに直接細いウレタン線をハンダ付けして修復です。

 組み立ててみるとローターは回っており,ローディングから時間の表示まで問題なく進みます。これで治ったかなあと思ったのですが,再生すると3秒ほどでCAUTION表示が出て止まります。いや,テープのたるみもなくて,なにもCAUTIONになるような状況はないんですが・・・

 早送りも巻戻しも7秒ほどでCAUTIONですので,これはリールのセンサだろうと思いつきましたが,センサ自身がどこにあるのかわからなかったのと,きっと光学式だろうからちゃんと回路図を読まないとダメだろうなと,ここで一度諦めました。

 翌日,回路図を眺めつつ,海外のオーディオ機器の修理趣味人が集まる掲示板を見ていると,全く同じ症状をXD-S1100という機種で経験し,修理を完了した人を発見しました。

 XD-S1100はXD-S260の兄弟モデルで,メカデッキと主要な電気回路は共通です。この人によると,巻取側か供給側のどちらかのリールのセンサからの入力が基板の腐食で断線していて,これをくっつければ治ったということでした。

 回路図を追いかけると,確かにリールセンサはTR8とTR9というトランジスタで受け
マイコンに入っています。早速マイコンとトランジスタとの接続を見ますが,ここはOK。

 続けてセンサが繋がるコネクタとトランジスタを見ますが,こちらもOK。ならばとトランジスタ周辺の回路を見ていると,供給側のリールセンサ出力とTR8のエミッタ(つまりGND)との間に入る22kΩの抵抗が浮いているようで,エミッタはGNDに繋がっているのに,抵抗は断線してGNDから浮いています。

 これが原因です。おそらく電解コンデンサの漏液で,電解液が基板を腐食し断線を招いたのでしょう。抵抗の値も25kΩとおかしくなっていたので交換し,抵抗とエミッタと配線して繋ぎました。

 組み立てて試すとバッチリOK。再生も巻戻しも早送りも問題ありません。ドロップアウトなどの経年劣化による症状もなく,すっかり元通りです。

 丸一日ずれ込みましたが外観を綺麗にして,それからベトベトになったACコードも交換して,修理完了です。

 これで気持ちよく使えるなあと思っていたのですが,一部耐久性の良くない酒類のテープでドロップアウトが発生してしまうようです。同じテープはDTC-59ESJでは跳ばないので,再調整が必要になっているのだと思います。(DTC-59ESJは再調整を数年前に行っていますがXD-S260は全くやっていません)

 しかし,通常のテープは全く問題ありません。夢のDAT同士のダビングも出来るような環境に戻ったことに満足し,このプロジェクトは終了。

 ちなみに,MP3にしてしまったという音源は,再録音を終えた後でサーバーの置くからFLACになった物が発掘され,結局DATを修理する意味がなくなってしまいました。

 XD-S260の調子は以前ほど良くはないようです。DTC-59ESJの調子が良いのでまだ安心していられますが,もう30年も前のメカものですからね,いつ壊れてもおかしくありません。

 でも,DATは私の音楽生活を一変させた,夢のマシンです。ゆっくりゆっくりテープが回って,そこからとんでもない音が帯出すという不思議な体験は,今もってしても新鮮な感激があります。

 メカですから,いつかは壊れます。致命的な故障は簡単に起きるでしょう。それまでは,なんとか維持しておきたいと思います。修理は楽しいですしね。

 そうそう,そういえば,XC-HM86がまた壊れたようなんです。新品を買ってすぐに壊れた時と同じ,CDのトレイが出てこないというやつです。

 この時はモータードライバの破損という事だったのですが,あまりに修理がずさんで新品に変えてもらうというすったもんだがありました。

 同じ問題がまた起きたので,調べてみると同じような故障が頻発しているようです。傾向不良というやつですね。設計ミスなのか部品の不良なのかはわかりませんが,回路図を見る限りこんなところが壊れまくるというのは,メーカーの設計技術も下がった物だと思います。

 代替品で修理出来るかと思いましたがそういうわけにもいかないようで,同じ部品を手配中です。11月上旬には届くと思いますので,届き次第修理に取りかかりましょう。

 

DL-103の針交換

 なんやかんやで私の話のネタになることが多い,浅からぬ縁の山下達郎さんが,満を持してアナログ盤で過去のアルバムを復刻させるというニュースを小耳に挟んだのが春頃のことだったと思います。

 なにもめんどくさいLPを,しかも4000円も出して買うもんか,と思っってほったらかしていたのですが,発売が近づくにつれ,どういうわけだか広告を目にすることが増えました。

 発売後も目につく広告に閉口し,ええいチラチラと鬱陶しいと,もう10年ぶりくらいに渋谷のタワーレコードに出向いて「FOR YOU」と「RIDE ON TIME」を買ってきました。そして,勢い余って「GREATEST HITS」まで予約してしまい,これで文句はなかろうと,私の中では解決済みの話になっていたのでした。

 時は流れ,9月末に予約していた「GRATEST HITS」が発売になったのですが,今年の夏は特に暑く,お作法の厳しいアナログ盤を聴こうという気が起きませんでした。それに,きっとこの暑さですから,カートリッジのダンパーのゴムがグニャグニャになっているに違いありません。もう少し涼しくなってから,という言い訳には十分です。

 かくして朝晩が少し肌寒く感じるようになった先日,ようやく重い腰を上げてアナログ盤を聴くことにしたのです。

 ところが,前回アナログ盤を聴いたのがもう4年も前の話。ちゃんと音が出るのかも怪しい中で,のんびりと準備を始めることにしました。カートリッジは邦楽ですから,もうDL-103一択です。

 身に覚えのないイコライザアンプの改造を分解して知った時には,「アルツハイマー病になるとこんな感じなんかなあ」と考えてみたり,グレースのトーンアームは右と左が逆になってることをすっかり忘れていたりと,なかなかスムーズに事が運ばない中でようやく音出しです。

 しかし,音を出してみると,左右の音量のバランスがおかしいです。片方だけ2dBくらいレベルが低いです。レベルを合わせてみても,どうも高音の伸びが悪く,周波数特性もアンバランスになっているようです。

 カートリッジをSPU#1に交換するとバランスは正常になりますので,問題はDL-103になると考えて良いでしょう。2時間ほど再生していると左右の音量バランスは1dBくらいになってきたのですが,相変わらずヌケが悪くて,これは我慢なりません。

 針の寿命でこういうことが起きるという話はあまり耳にしませんので,きっとダンパーの劣化か,内部機構の故障でしょう。

 こういう場合,カートリッジ本体の買い直しとなるわけですが,幸か不幸かDL-103はMCカートリッジで,針交換はすなわち本体交換です。MMカートリッジの針交換ほど安くはないのですが,本体を買うよりも随分安いので,DL-103所有者の特権とも言えるかも知れません。

 値段を調べると34000円ほど。うーん,以前このくらいの価格でDL-103を買った覚えがあるのですが,あれから何度も値上げがありましたし,致し方ないか・・・

 そんなことより,在庫です。在庫があれば店頭でその場で交換してもらえるはずですが,在庫というのはあくまで針交換用に準備された本体であり,通常の製品とは区別されています。交換品の在庫を持っているお店なんかそうそうあるわけなく,期待しないで調べていると新宿や秋葉原のヨドバシにあるじゃないですか。

 新宿なら1時間かかりません。DL-103を購入したのが2007年5月ということですので,今年で16年を経過していますから,新品に交換するというのも良い選択です。ちょっともったいない気もしますが・・・

 ということで,先日の日曜日の午後,DL-103の針交換品を購入してきました。

 久々の新宿だったので疲れてしまいましたが,戻ってきて早速取り付けて聴いてみましょう。

 どこかで読んだのですが,DL-103は,針交換をする度に感動する,らしいです。果たして,私も感動してしまいました。そう,DL-103の音です。

 新しいカートリッジに交換すれば,音が良くなって初めて感動するものです。しかし,今回はあくまでDL-103の元の音に戻っただけであり,良くなったわけではありません。それでもこの感動はなんでしょう,変わらないことに対する驚きでしょうか。

 工業製品ですし,ばらつきもあれば,長年の製造で材料が変更されることもあります。そんな量産品の宿命を乗り越えて,変わらないこと,つまりいつも同じ音を出すと言う安定性や信頼性を特徴の1つとしていることが,素晴らしいと感じました。

 DL-103の良さは,なにも足さずなにも引かず,刺激の少ない自然な音をそのまま出す事にあり,それはもちろん体験済みです。これい加えてよく言われるのが安定性や信頼性ですが,これを今回味わうことができたと思います。

 確かにMC-20もSPUも素晴らしいのですが,あれこれ交換しても結局最後にはDL-103に戻してしまいますし,録音していつも聴く音源にするときにはDL-103を選んでいますから,DL-103に対する信用というのは,絶対の物があるんだなと思います。

 悪く言えば地味な音ですから,DL-103には音をグレードアップするという魅力はありません。しかし,この高いレベルで標準器が存在し,それが長年変わらず生産されて入手が容易であることは,実は改良品を作る事よりも難しいんじゃないかと思いました。

 私のように,アナログ盤をたくさん持っておらず,聴く機会も環境もそんなに整っていない人間にとって,カートリッジを持つことの意味は,その違いを楽しむことにあります。

 違いを楽しむには,標準的なものが1つ定まっていなければなりません。それがこのDL-103なんだと思います。

 おそらくですが,針を折ってしまうとか,断線するとか,そういうことでもない限りDL-103の針交換品を買うことは,もうないでしょう。ですが,価格が上がっても,DL-103が作り続けられて,今と同じように入手も容易であることを願ってやみません。そう,日本にはDL-103があるのです。

 

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