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PC-386 Book Lの復活劇 その3 ~外付け5インチドライブを動かす

 PC-386 Book Lを手に入れようと思った動機は5インチフロッピーを読みたいからでした。なら5インチのモデルを買うのが正解だという突っ込みもわかるのですが,それだとデスクトップモデルしか手に入りません。

 キーボードも別になっているし,ディスプレイも外にという事になると,置き場所の問題が深刻です。かといってノート型ではいろいろ制約もありますので,ここは中途半端なPC-386 Book Lを選んだというわけです。

 しかし5インチのフロッピーディスクドライブも買わねばなりません。

 5インチのフロッピーディスクドライブなんて,2Dも2HDもかつては実家にゴロゴロしていました。FD-1157DもYD-380もありましたし,FD-55BVやYD-274も持っていたのですが,もったいないことに全部処分してしまいました。

 仕方がないのでこれも某オークションで無理して落札。VFO付きのドライブを使った外付けドライブはつぶしが利かないので,ここはFD-55GFにVFO基板を内蔵したものを選んで入手しました。ACコードが付け根で切られていることに少し不安がありましたが・・・

 派手に汚れていた本体を出来るだけ分解し水洗いします。ドライブ自身はかなり綺麗になりました。内部も綺麗です。ファンがないと汚れないもんですね。

 ACコードを付け直して通電。電源ユニット単体では正常に電圧がでています。気をよくしてドライブに接続して通電すると,今度は電圧が全然出なくなりました。デンゲニュニットの故障です。

 良く眺めてみると,これもまあ派手に電解コンデンサの液漏れが起こっています。電源に使われる電解コンデンサはサイズが大きいので電解液もたくさん入っていますから,漏れるとかなりの電解液が外に出てきます。厄介です。

 とりあえず電解コンデンサはすべて交換します。交換してから組み立て直し通電チェックをしたところ,残念ながら出力が出てきません。1次側のコンデンサには100V近い電圧がしばらく充電されたままですので,発振そのものをしていないんじゃないかと思います。

 まずパターン切れを確認しますが,これはなさそうです。次に部品の不良ですが,もし1次側のダイオードに問題があればヒューズが飛ぶのでこの可能性は低いです。一応すべてのダイオードを調べますが問題なし。トランジスタも壊れていません。

 では電解液による腐食も含めて部品をチェックしていきます。抵抗をピンセットでつまんでみると,1つだけポロッと取れてしまったものがありました。これは同じ値に交換です。

 コイルやコンデンサも問題なし。いよいよ追い詰められてきました。

 この段階で何度か通電したのですが,出力が出る時もありました。しかし負荷を繋ぐと出力が止まり,その後は負荷を外しても出なくなります。
 
 最後に残ったのはTL431とフォトカプラです。TL431はNECの互換品が使われていましたが念のため交換。フォトカプラも交換する予定で外したところ,下側に電解液が溜まっていたのを発見しました。

 これを綺麗に拭き取り,同じフォトカプラを取り付けたところ,出力が出るようになりました。TL431に不良があった可能性はそんなに高くはないと思いますので,おそらくですがフォトカプラの下側に溜まった電解液がフォトカプラの端子をショートさせたんだろうと思います。

 ということで電源は復活。組み立て直して通電しても問題はありません。

 あとはケーブルを用意すれば,PC-386 Book Lで5インチのフロッピーディスクドライブが使えるようになるはず・・・なのですが,このケーブルの問題が結構難しかったりします。

 かつて実家には,ありとあらゆるケーブルが揃っていました。アンフェノールの50ピンはもちろん,ハーフピッチは櫛形のものまで用意していましたし,フロッピーディスクドライブのコネクタは5インチのものも3.5インチのものも揃えていましたので,どんなものも繋げる自信がありました。

 しかしほぼすべてを処分してしまったので,必要なものを揃えないといけないのですが,昔ほど簡単に手に入るものでもなくなっているので厄介です。

 PC-386 Book Lの外部フロッピーディスクドライブのコネクタは,36ピンのハーフピッチです。ハーフピッチと言うだけでも難易度が上がる昨今,36ピンなんてのはもう世の中には存在していないんじゃないかと思うほどの稀少品です。

 しかも,反対側は50ピンのアンフェノールで,エプソン専用の配線が必要です。結局専用のケーブルしか使えないことになるわけで,そんなものを探し当てるのは最初からあきらめた方がよいでしょう。

 ないものは作るしかないのですが,36ピンのハーフピッチのコネクタの入手がとにかく難しいですから,ここは別の方法を考える事にします。

 36ピンも端子があるコネクタですが,半分はGNDですので実質20本弱の信号しかありません。なら信頼性に欠けますが,入手容易なコネクタに交換してしまうのはどうでしょう。

 数的にDサブ25ピンが手頃ですね。ケーブルも全線結線のケーブルが今でも安価に入手可能ですし,これに交換すればどうにかなりそうです。場所の問題は使う予定のないLスロットを使いましょう。ここにコネクタを出しておき,内部で36ピンコネクタから配線してしまいます。

 こうして作業をさっさと済ませて,本体の改造は済みました。あとはドライブ側です。

 ドライブ側は50ピンのアンフェノールがついています。最初はこれもDサブ25ピンに交換しようと思ったのですが,VFO基板に直接マウントされていることがわかったので,急遽変換ケーブルを作る事にしました。圧着型のオスコネクタを偶然持っていたので,これを使って作ります。

 完成したケーブルを使って試してみましたが,上手くいきました。外付けドライブですので2DDには対応しませんが,5インチで2DDなんて利用価値がありませんので,これは手を付けないことにします。

 これでPC-386 Book Lの当初の目的は果たせそうなのですが,人間欲が出てくるものです。まだまだ続きます。

 

PC-386 Book Lの復活劇 その2 ~フロッピーディスクドライブ

 PC-386 Book Lは,とりあえず本体が動き出しました。

 しかし,完成までは多くのメニューをこなさねばなりません。私の前に立ち塞がった次の壁は,フロッピーディスクドライブでした。

 PC-386 Book Lは可搬型デスクトップにこだわっていて,フロッピーディスクドライブも2ドライブ搭載しています。エプソン製のSMD-1000という3.5インチが使われているのですが,コイツが標準的な34ピンのコネクタの癖に,電源まで一緒に供給出来る珍しいものです。

 ドライブ1を試したところ,とりあえず読み書き出来ます。よしよし。しかしドライブ2を試すと,読み込みは出来るのですが書き込みが出来ません。これは典型的な4級塩電解コンデンサによる故障です。

 ということで,ドライブ2を分解したところ,予想通りコンデンサが派手に液漏れしていました。これはいかんということで,120uFのものは同サイズの220uFに,10uFのものは積層セラミックに交換しました。

 これで読み書きが出来るようになったので,ドライブ1も予防的に同じように交換をしました。しかし,ここからが茨の道になります。

 交換を終えたドライブ1を試したところ,最初の30分ほどは問題なく読み書き出来るのですが,暖まってきた頃になると読み書きのエラーが増え始め,1時間もすると半分以上のトラックでエラーが出ます。これでは使い物になりません。

 基板を改めて眺めてみると,電解液がかなり広範囲に広がっていて腐食しています。基板のパターン切れも心配ですし,フレキのコネクタへの影響も大きいでしょう。

 まずはハンダの付け直しです。スルーホールへもきっちり流し込みます。しかし効果なし。

 無視できないのが,ICの下側に回り込んだ電解液です。なかなか蒸発しないので影響も長く続き,パターンの腐食やICへの進入など深刻な問題の原因になります。モータードライバのICを剥がして清掃して付け直しますが,これも効果なし。

 これ以外にも気付いたことをいろいろ試してはみますがどれも効果がなく,万策尽きたように思えてきました。そこでふと基板を取り出すときに外したフレキを見てみると黒く汚れていることに気が付きました。腐食もあるようなのですが,なにより導電性のある電解液がフレキとコネクタに回り込んでいるということは,特に小さい信号を扱う部分では正常に動作しないであろうということです。

 特にひどかったのが,どうやら製造チェック用に用意されたジャンパコネクタのフレキです。これを外してみるともう真っ黒です。IPAを清掃して差し込んでみたところ,やや効果ありで,エラーは減りましたし時間も長く動くようになりました。

 これはこれで関連がありそうだと,コネクタを外してしまいジャンパの接続を直接基板上でハンダ付けして見る事にします。すると嘘のように問題が消えました。

 詳しいことは調べていませんが,このフレキを通っているのはどうもヘッドとのやりとりを行っている信号のようで,当然微弱です。これが電解液でレアショートして誤動作していたのでしょう。

 これで完成と思っていたら,今度はドライブが不調です。ドライブ1からドライブ2に切り替わった時の最初のトラックで,時々リードエラーを起こしています。

 切り替え時の電流変化が悪さをしているんだろうとコンデンサや電源ラインを追いかけますが改善しません。不思議なことに書き込みでは全くエラーは起きません。

 ドライブ1と同じようにジャンパコネクタを外して基板上で配線してみますが,これも効果なし。いろいろ試してみようと何を調整するものかわからない半固定抵抗を少しずつ動かすと,エラーの頻度が上がったり下がったりします。


 回路図もないのでこれ以上は面倒になり,エラーが最も少なくなるところで調整をすませて,終わりにしました。エラーが出る頻度は少ないですし,リードだけならリトライでカバー出来るでしょう。

 一応これでフロッピーディスクドライブの検討は終わりにします。完全とは言いがたい結論に少々不満ではありますが,たかだかフロッピーディスクドライブに時間をかけるのも面倒ですし,ごまかして使うことも出来るので,もうこれくらいにしておきます。

 まだまだPC-386 Book Lのメンテメニューは終わりません。続く。

PC-386 Book Lの復活劇

 ある時,急にPC-9801を動かしてみたくなりました。

 私にとってのレトロPCというのは8ビット機までであり,それ以後の16bitマシンはPC-9801やX68000を含めて,レトロなんていったらあかんよな,と思うところがありました。(あ,ただしインテレビジョンとぴゅう太は別です)

 X68000はともかくとして,PC-9801というのは現在のPCに繋がるハードウェア構成であり,WindowsやDOSが走るという点でも,ビジネスマシンとして進化してきたという点でも,使った時の感触というか手触りに,本質的な違いがないように思います。

 当時も道具として割り切って使っていたPC-9801シリーズに対して,ホビーとしての懐かしさを感じることはなかったわけですが,しかしながらPC-9801全盛期だった1990年代前半からすでに30年です。

 割り切って使っていたものであっても,懐かしいと思うに十分な時間が経っていることに,私は今さら気が付きました。

 つらつらと考えると,初代PC-9801というのは1982年に誕生したマシンであり,まだ8ビットマシンの考え方やシステム構成を引き摺っています。

 ついでにいうと,1990年代前半というのは私にとってもちょっと特別な時期であり,大阪日本橋のパソコンショップで中古パソコンの担当をしており,最新のマシン,高価なマシン,珍しいマシン,そして懐かしいマシンまで,本当にたくさんのマシンを実際に動かすチャンスに恵まれていました。

 なかでも,王者NECのPC-9801に挑む,EPSONのPC-286/386シリーズは私も注目していました。PC-9801の殿様商売を悪く言う人も当時はいたのですが,今にして思うと,価格に相応しいお金のかけ方をしていて,当時のPC-9801は本当に堅牢でした。

 PC-286/386は,同じかちょっと上くらいの性能のものを安くした主力製品と,NECが出さないだろう個性的な機種やEPSONが得意とする小型モデルという,独自製品の2本立てでした。

 主力機種はPC-9801VMの互換機であり,VX以降との互換性は完全とは言えません。しかし,実質的にVM互換機であれば主なソフトはちゃんと動いてしまうので,CPUに高速なものを用いて全体を安く作る事が出来れば,決まったソフトしか動かさず,しかもそのソフトが高速で動作して,かつ安く買えるなら,事務機器としてはむしろ好都合だったはずです。

 個人的にはPC-286/386には頑張って欲しかったのですが,DOSのプロテクトを外すのが面倒くさい,フォントが気に入らない(好みの問題ですが私はEPSONのフォントは嫌いでした),なによりキーボードが気に入りませんでしたから,最初に買ったPC-386VRは数ヶ月で売り払い,NECのPC-9801RS2を買い直しました。

 ですが,一方の個性的な独自路線については,注目すべきマシンも多かったように思います。ラップトップもノートもEPSONが先でした。キーボード一体型もEPSONでしたし,今で言うタブレットのようなモデルもEPSONでした。

 なかでも,PC-286Bookという,ノートより一回り大きなマシンが印象に残っています。フロッピーディスクを2台装備したポータブル型で,NECだと完全なラップトップに相当するモデルを,随分小さくまとめてあります。

 ノート型の色が黒や紺などの暗い色だったのに対し,PC-286Bookはアイボリーを明るくしたような色で爽やかでした。

 実はこの後,PC-386NoteWという機種で,ノート型なのにフロッピーディスクを2台装備した完全版が登場するのですが,それまでフロッピーディスクを2台つ買いたいなら,このBookシリーズを選ぶ事になるわけです。

 PC-286Bookの後継機種でありPC-386BookLは,名前の通りLスロットと呼ばれた拡張スロットを持ち,拡張性さえも備えた完成形です。HDDも内蔵可能,メモリも専用スロットを持ち,バッテリー駆動も可能ということで,とても魅力的だったことを覚えています。

 数あるPC-9801でも,このPC-386BookLは,今でも手に入れたいマシンです。

 手に入れたい・・・探してみるか。

 そしてやってきたのが,満身創痍なPC-386BookLでした。某オークションで約5000円。送料まで入れると結構高い買い物だったと思います。

 ACアダプタがありません。なんとかなるだろうと思っていたのですが,コネクタが特殊と聞いて軽いめまいがします。ピンを差し込んで安定化電源から15Vを供給して様子を見ます。

 ピーと電源が鳴き,ドライブがガコガコいったかと思うと,沈黙。以後うんともすんとも言いません。甘かったですねえ。

 分解して内部を見てみます。

 まず,バックアップ用のNi-Cd電池が盛大に液漏れしていてドロドロです。メイン基板に電解液が流れています。

 そして問題の電源基板ですが,この頃のマシンによく使われていた4級塩の電解コンデンサがことごとく液漏れを起こしています。

 4級塩の電解コンデンサについては詳しい説明が他にありますのでここでは省略しますが,液漏れ被害が市場で頻発した1990年代後半は,各電機メーカーが戦々恐々としていました。今もって公式にこの問題を認めたメーカーはないと思いますが,その筋では常識となっている問題です。

 運が良ければコンデンサを交換するだけで動き出しますが,多くは電解液が基板のパターンを壊したり,他の部品に染み込んでショートさせたりと散々な悪さをします。覚悟していたとはいえ,かなり見通しは悪いです。

 とにかく電源基板のコンデンサを交換します。

 しかし結果は変わりません。メイン基板のヒューズの1つが切れているのを発見しましたが,これを交換しても変化はありません。

 電源基板を分解し,可能なものは部品を取り外して部品レベルの破損チェック,そして基板の清掃とパターンの確認をしていきます。それでもなかなか解決してくれません。

 嫌気がさしてきたので,とりあえずハンダで端子をなめて基板との接続を確実にしたのと,メイン基板とサブ基板のすべてのコンデンサを交換したところ,幸いなことに起動に成功しました。ピッとシステムディスクを入れるようにとの警告音が出たときには,信じられないような気持ちでした。

 しかし,喜ぶのはまだまだ。LCDを取り付けても表示は出てきません。CRTに繋いでもなにも出てきませんが,これは[GRPH]キーと[CTRL]キーで出てくるメニューで設定を変更し,表示が出ていることは確認出来ました。

 フロッピーディスクも接続し,DOSあ立ち上がるところまではなんとか進みました。

 ここからトントン拍子かと思ったのですが甘かったです。

 まずLCD。なにも表示が出ないので途方に暮れていたのですが,オシロスコープで信号を追いかけていきました。

 このマシンは,LCD制御用の回路をCRT用途は別に独立して持っており,LCDコントローラと専用のVRAMが存在しています。そこでLCDコントローラとVRAMの端子を見ていたところ,バスが衝突している箇所を発見。電解液によるショート(300kΩくらい)があったので当該箇所を清掃しました。これで波形は正常になったのですが,問題は解決しません。

 そこで徹底的に清掃を試みたところ,突然画面がパッと現れました。驚きました。

 これで直った,よかったと思っていたのですが,1時間ほどすると画面が乱れ始め,横方向に8ドットずつ2回表示されるようになってしまいました。ゴミも出ています。さらに時々表示が出なくなります。

 この問題がなかなか大変だったのですが,まず表示が出ない問題は,水晶発振子の株に染み込んだ電解液でした。これが発振を止めてしまうので,外して清掃。これで直りました。

 次にゴミですが,これは先程の電解液によるレアショートが復活していたので,再度清掃しました。これで直りました。

 最後に苦労したのが表示の乱れです。これ,8ドットごとというのがミソなのですが,LCDコントローラの端子を慎重にお隣同士でショートさせたところ,規則性のある似たような画面の乱れが起きる場所を探し出し,ショートさせても変化しない箇所を探し出しました。

 たどっていくと,VRAMのA0です。ここの波形を見ると,なにも出てきません。A1やA2は出ているのにです。ならばと,A0をLCDコントローラと繋いでやると,ばっちり画面が出るようになりました。

 つまり,A0のパターンが電解液で切れてしまったのです。LCDのVRAMは1バイトで8ピクセルだと推測されますが,A0が変化せず固定されるので,8ドットずつ同じ物が表示されるというわけだったのです。

 これでとりあえず本体は直りました。

 しかし,次なる問題が・・・続く。

DiskII インターフェースカードの修理

 さて,前回のDiskIIの話に入る前に,実は私はもう1つ宿題を抱えていました。

 おそらく飛鳥に付属してきたものと思うのですが,日本製のコンパチのインターフェースカードがある時を境に動かなくなってしまったのを,なんとかしないとと思っていました。

 私は純正のインターフェースカードも持っているので,ずっとこっちで使っていましたが,いつ壊れるかわかりませんし,ドライブが増えたらこのインターフェースカードも使わないといけなくなりますので,動くようにしておけるならその方が好都合です。

 コネクタの接触不良で動かなくなったように思っていたのですぐに修理出来ると思って居たのですが,何度やってもシークも起こらなければ,リードも出来ていません。

 こういう場合はPROMが怪しいです。このインターフェースからPROMの6番(P6A)をはずし,純正のインターフェースのP6Aと交換してみたら,同じ現象が発生しました。P6Aについて回っているようです。

 P6Aって,MMIの型名で言うと6309というTTLのヒューズROMなんですよ。こんなもの,手に入るはずありません。書き込み済みの6309を喜んで買って,書けないと嘆くものが後を絶たず,新品を手に入れても書き込む手段がなくて涙を流すという悲劇が,今でも世界中で起きています。

 幸い,DiskIIのインターフェースカードは数がたくさんあるので,PROMが壊れても安く買い直すことが出来るわけですが,私はこれをなんとか修理したいと思うようになりました。

 PROMですからね,ROMならいいはず。容量は256バイトですので今どきのROMに比べればゴミみたいなもんなんですが,たった1つEPROMが6309にかなわないのが,アクセスタイムです。

 通常のEPROMは,アドレスの確定からデータが出てくるまで150nsとか200nsかかります。しかし6309はたった70nsです。CSからだと35nsですよ。めちゃめちゃ速い!さすがバイポーラ!

 しかし部品箱を漁っていると,これをしのぐものが見つかりました。WinbondのW27C512です。これ,私は512MbitのEPROMと勘違いして注文し,届いたものに紫外線を当てる窓がないプラスチックDIPであることに絶望し,ワンタイムを買ったと後悔し放置していたものです。

 よく見ると中古品なので,もしやと思って調べると,27C512互換のEEPROMでした。で,このW27C512,なんとアクセスタイムが45nsと爆速なのです。これなら十分に6309の代わりが務まります。

 さっとブレッドボードで配線をして確かめて見ると,なんとまあ一発で動くじゃありませんか。これはもう,突き進むしかありません。

 しかし,こんな大容量品を使うのももったいない。そこで普通のEPROMを使うことを考えたのですが,やはりアクセスタイムが問題です。

 そこで,回路図と解析をしたWEBサイトを見ていたのですが,P6Aはステートマシンとして動作していて,そのアクセスのサイクルは500nsとわかりました。

 非同期で流れてくる信号を2MHzのクロックで叩いているので,出来れば10倍,悪くとも5倍くらいの余裕が欲しいところです。ならアクセスタイムは100nsですね。

 悪いことに100nsの手持ちがなく,見つかったのは日立製の27C256で120nsのものでした。

 まあなんとかなるだろうと早速作ったのが以下の写真です。

20220817101030.JPG

 これでちゃんと動いています。いやー,PROMの不良まで手持ちの部品で対応したのですから,もうAppleIIもなんとか維持出来るでしょう。(いや,キーボードのエンコーダが壊れたらアウトか)

 手をかけて修理したものが可愛いのは親心かも知れません。リスクはありながらも,私の常用インターフェースに昇格したコンパチカードは,DiskIIと飛鳥を今日も動かしています。

 

DiskIIを修理

20220817101032.JPG

 AppleIIの純正フロッピーディスクは,言うまでもなくDiskIIです。

 このDiskII,純正のフロッピーディスクという役割だけではなく,歴史的意味合いも持つ独特の存在意義があります。

 それは通常大規模な回路で制御されるフロッピーディスクをウォズニアックが知恵と工夫でとても簡単な回路でAppleIIに用意したとか,シュガート社の世界初の5インチドライブであるSA400の不良品を安く調達し内部の回路を独自のものに置き換えて出荷したとか,その仕組みはMac時代にも受け継がれていてSuperWoz Integrated Machine略してSWIMと呼ばれているとか,いくつかのエピソードと一緒に語られる,とても重要な製品です。

 ウォズニアック自身も,DiskIIの開発については生涯で一番素晴らしいものだったと語るほどのもので,実際その回路のシンプルさは,様々な切り口で今なお絶賛の対象です。

 本来なら,フルハイトの旧式ドライブを使ったDiskIIはさっさと日本製の高性能で安価なハーフハイトのドライブを使ったものに置き換わってもいいはずなのですが,そうならないほどの完成度を持ち続けていたこと,精度の低さをついたプロテクトのために,高精度な日本製ドライブだとかえってプロテクトに引っかかって起動しなくなってしまったりするというのも,よく耳にする話でしょう。

 私はチノンのドライブを使った「飛鳥」というコンパチドライブを1台だけ持っていますが,困った事がないのはもちろん,その安定性や信頼性には絶大なものを置いていますから,DiskIIなど別に欲しいと思っていなかったのです。

 ですが,やっぱり2ドライブあると便利だということで,もう1台のドライブを探し始めたところ,ジャンク品を7000円ほどで見つけて即買いしてしまいました。このくらいの程度のドライブなら,10年ほどの前のアキバなら1000円ほどで転がっていたものなのですが・・・

 このDiskII,まずケーブルが付属していません。キズも多くて程度も良くなさそうですが,基板は綺麗ですし,メカ的な改造や修理を行った形跡もありませんので、その点では安心出来そうです。

 この手のジャンクの場合,メカの不良,例えばフレームの歪みであるとか,モーターの不良やベルトの破損が深刻ですし,ヘッドの断線などがあったらもうアウトです。

 そういう致命傷がない事を祈りつつ,手元に届いたDiskIIを見て見ると,とりあえずどうにかなりそうな雰囲気です。(のちのこれが誤りである事を思い知るのですが)

 偶然持っていた20芯のフラットケーブルと,これも偶然持っていた20ピンの圧着コネクタを使ってさっさとケーブルを自作します。モーターに12Vをかけて普通に回ることを確認し,Appleのインターフェースに繋ぎます。

 おお,とりあえずDOSが起動しました。致命傷はなさそう,というか完動品?ラッキー!

 んなわけありません。お約束のSpeedTestを行うと,Fastで振り切った値が出てきます。調整しようと半固定抵抗を回してみますが,全然調整出来ません。蛍光灯を取りだしてきてストロボで速度調整を行ったところ,リードも出来なくなってしまいました。

 そして,フォーマットがコケることが多いです。ライトも上手くいったりいかなかったりでとにかく不安定です。調整が狂っているのかも知れないと,恐る恐るサービスマニュアルの通りの波形が出るかどうかを確認して,調整を試みます。

 しかし,波形はきちんと出てきますし,調整もほとんど必要がありません。でもリードもライトも不安定ですし,安定するような速度は規定の回転数(300rpm)よりもずっと遅い速度でないといけなかったりします。そもそもSpeedTestはでたらめな値を返してきます。

 3日ほど悩んで,波形をじっくり確認したのですが,結局問題はわからず。もうダメかもしれないなあと思って改めて回路図を見ていると,どうも波形はリードを行っている時のもののようで,ライトの時の動作を確認出来るようなものではないようなのです。

 とりあえずコンデンサや抵抗を確認しますがこれらも問題はありません。疲れ果て風呂で頭を冷やしているときに閃いたのは,ライトの回路の不良なんじゃないかということです。

 ライトの回路は,CA3146というICが担います。ライト用のICといいつつ,このCA3146はトランジスタアレイで,1つのペアトランジスタと,3つのシングルトランジスタの,合計5個のNPNトランジスタを持つものです。

 これが壊れることはそんなにないそうなのですが,定番の故障である74LS125も壊れておらず,リード時の波形からリードアンプであるMC3740は無事なようなので,いよいよこれじゃないかと疑ってみたのです。

 ソケットからCA3146を取り外し,ブレッドボードに差し込みます。そしてトランジスタチェッカーを繋いで確認すると,なんとまあ,生きていたのは5素子中1素子だけ,あとは壊れていました。

 ICの破損とわかってホッとしたのも束の間,CA3146等という変なICは手持ちがないばかりか,入手不可能なんじゃないかと心配になりました。調べてみると案の定,どこにも在庫はなさそうです。DiskIIをもう1つ買って取り外すしかないのか・・・

 CA3146というICは,普通の小信号用NPNトランジスタを5つ持つICです。特徴と言えば300MHzあたりまでfTが伸びていることくらいで,高耐圧と言いつつ50V程度ですので2SC1815より低いくらいです。

 fTだって,条件によっては2SC1815でも十分対応可能ですし,DiskIIが300MHzの帯域を使うような使い方をしているかどうかが問題でしょう。

 DiskIIの回路を見ていて1つだけ注意するべきところがあるとすれば,エミッタを共通で持つデュアルトランジスタで,このペアは特性が揃っているということです。同じダイにあるので温度特性も良好でしょう。ここさえ押さえておけばなんとかなりそうです。

 なら,CA3146の互換品を自作することは可能じゃないか?

 手持ちの部品を調べると,まずシングルのトランジスタは2SC2712が使えそうです。この2SC2712はよく知られているように2SC1815の面実装版です。さすがに300MHzは無理ですが,100MHzくらいなら余裕です。hFEのランクはYとします。

 ペアトランジスタについては,やはり手持ちで2SC4207というのがあったので,これを使うことにしました。特性をみていると2SC2712が2つ入っている感じなので,今回の用途には好都合でしょう。

 さすがに面実装品を使って作りますので,14ピンのヘッダピンを出した万能基板上に並べて配線すれば,オリジナルとほぼ同じ大きさの互換品が出来ました。

20220817101031.JPG 

どうですか?なかなか小綺麗にまとまっているでしょう?

 トランジスタチェッカーで誤配線がない事を調べて,ドキドキしながらDiskIIに取り付けて電源を入れ,SpeedTestを起動します。

 すると,ちゃんと回転数が表示されるじゃありませんか!回転数調整用の半固定抵抗を回せばちゃんと回転数が変わって表示され,規定の回転数にあわせ込むことも,嘘のように出来ました。どうも上手く行っているみたいです。

 ライトのテストを行っても問題なし。フォーマットも問題なし。もうバッチリ動いています。そうか,やっぱり原因はCA3146だったのか・・・

 CA3146は世界的に入手が難しくなっているらしく,その需要はDiskIIの修理がほとんどでしょう。2022年の日本で,まさかCA3146の互換品が手作りされているなんて,誰が思うでしょうね。

 ということで,DiskIIは動き始めました。大きい,うるさい,使い勝手が今ひとつと,ドライブの価値だけで語れば飛鳥の方が圧倒的に上だと思います。

 しかし,DiskIIには純正品という価値以上に,歴史的な意味合いと,本体と一緒に必ず写真に写っている憧れなのです。

 2ドライブになったことの便利さと,精度の低さがかえってエラーを許容してしまうこと,そしてあのたたずまいと,DiskIIを常用出来ることにうれしさは,想像以上のものがありました。CA3146が壊れていることを突き止め,互換品を手作りし,動くようになったことも達成感があります。

 ケーブルのシールドが不完全で不安定な動きを見せることもありましたが,シールドを銅箔テープで行い,上手く取り回しを行うことでエラーも激減しています。メカ的なトラブルがなかったことは本当に幸いでした。

 パネルの傷をタッチアップしようとして,ペイントマーカーのペイントが本体に飛び跳ねてしまい,アルコールで拭けばいいだろうと思っていたら,なんと染み込んでしまって落ちなくなってしまったというミスもやらかしましたが,とにかくDiskIIが動くようになって,良かったなあと思っています。

 

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