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x265のAppleM1対応はどうにかならんのかい

 2020年末にAppleSilicon(AppleM1)を搭載したMacBookAirを購入して,その性能とバッテリライフに心底驚いたわけですが,大きく期待を裏切るものがffmpegによるH.265のエンコード性能の低さでした。

 H.265もだいぶこなれてきましたし,フルHDのMPEG2のトランスコードのパフォーマンスも,実時間の5倍10倍は無理としても,2倍程度は出てくれるだろうと思っていたところ,まさかの0.7倍という実時間を下回る速度でした。

 Rosetta2によるIntelエミュレーションの方が実時間近く出ていたので,ARM64のネイティブでこれっていうのは,Rosetta2の優秀さを示すものであると同時に,x265のARM対応の悪さを示していて,ここまでひどいとさすがにすぐに改善されるだろうと思っていました。

 そもそもM1にはH.265のハードウェアアクセラレータも搭載されているので,これを使えば10倍20倍も夢じゃないとワクワクしていただけに,この期待外れは強烈なものでした。おそらく私だけではなく,世界中の多くの方がそう思ったことでしょう。

 2023年1月現在,未だに未対応のままです。

 結局うちでは,2016年モデルのMacBookProというインテルCPU(2.6GHz)のエンコードが最も高速で,上記と同じ条件だと1.6倍くらい出てくれるので,インテルMacはまだまだ捨てられないなあと言う結論になっています。

 このうち,ハードウェアアクセラレータについては早い段階で使う方法が明らかになっているのですが,高速である代わりに画質がひどく,実質的に使い物になりません,ここで世界は2度目のがっかりを経験することになったのです。

 Rosetta2によるインテルエミュレーションの方が高速というおかしな事が起こるのは,x265のARMのSIMD拡張命令セットへの未対応が原因でしょう。NEONは,SIMDという命令の通り複数の計算を一撃でこなすもので,行列計算に威力を発揮します。これがないと一々計算のための命令を記述しないといけないわけで,それだけで数倍の差がつくことは自明でしょう。

 聞けば2.5倍程度高速化されるという事ですので,ようやくうちのインテルMacに並ぶことになります。クロックはM1の方がずっと高速ですので,M1にも苦手なものがあるんだなあと思うのですが,この時に必要な電力がまさに桁違いですので,やはりM1の優秀さは変わりません。

 さて,そうなってくると私もNEON対応のx265を試したいじゃないですか。

 これまでは,組み込み済みのバイナリを取ってくるか,自分でビルドをしないとダメだったのですが,私はAACのエンコードにfdk-aacを使っているので,どうしてもソースからビルドしないといけません。

 かといってスタティックビルドなんていう面倒な事をやる気もなく,Homebrewで対応してくれることをずっと待っていたのでした。

 x265のM1のNEONパッチはAppleから出ているそうなのですが,いろいろ事情があってHomebrewでの正式なリリースには組み込めずに長い時間放置されているとのことで,実は昨年秋頃に一度だけ組み込まれた事があったそうです。その後現在はまた外されてしまったようですので,私はこのタイミングを逃していたことになります。

 ですが,Homebrewかつ,fdk-aacが組み込める形で,NEONパッチがx265に適用できる簡単な方法が分かったので,ここにメモしておきます。本当に簡単です。

(1)まずこれまでのx265をアンインストールする。
brew uninstall --ignore-dependencies --force x265

(2)次に以下をエディタでひらく。
/opt/homebrew/Library/Taps/homebrew/homebrew-core/Formula/x265.rb

(3)このうち,
head "https://bitbucket.org/multicoreware/x265_git.git", branch: "master"
という行を探して,以下に入れ換える。
head "https://bitbucket.org/multicoreware/x265_git.git", revision: "0b75c44c10e605fe9e9ebed58f04a46271131827"

(4)x265をインストールする。
brew install --HEAD x265

(5)もし元に戻したいなら,編集箇所を元にもどしてから,
brew install homebrew-ffmpeg/ffmpeg/ffmpeg --HEAD


 たったこれだけです。これで特別なオプションを付け足すこともなく,x265がNEONに対応して2,5倍ほど高速にエンコード出来るようになります。

 先程の条件だと,実時間の0.7倍から1.7倍程度に,2.4倍ほど高速化されました。

 NEONの効能はこんなもんではないはずで,もっとコードを最適化すればさらに高速化されると思うのですが,今のところはこの程度です。ようやく7年前のインテルCPUに速度的には並んだというのが情けないなと思うのですが,繰り返すようにこれがファンレスで動いていることがすごいと思います。

 はやくNEONへの対応,そしてM1およびM2への最適化をして欲しいなと思います。

 

2022年とAppleII

 さて,2022年もそろそろおしまい,今年は仕事面で10年に一度の挫折があり,5月頃から半年ほど毎日がとても苦しい年でした。今もってその状況は根本的には変わっておらず,気の持ちようとある種のあきらめで,なんとか平静を装っていられる感じですが,挫折の時こそ趣味のみに生きるのが私。

 これまでも,カメラの修理などがどん底から引き上げてくれた(もしくはそれ以上沈むことを防いでくれた)のですが,今回はそれがレトロPCでした。

 レトロPCというのは1970年代から1990年代にかけて発売されたパソコンのことです。各社まちまちのハードウェアで互換性など全くなく,むしろその非互換こそが他社との差別化に繋がっていたという,よく言えばエキサイティングな,悪く言えば消費者そっちのけだった,黎明期のパソコンたちです。

 私も当時を知る人ですので,実家から持ち帰った古いパソコンのうち,当時のものをレストアして当時のまま使うことは,とても簡単なことでした。しかしそれはすでに分かっている結論までのプロセスを,ただなぞるだけの行為に過ぎません。

 新しい発見は少なく,動いたという安心感だけが残るもので,おそらくすぐに触らなくなるだろうなあと,目に前に並ぶ実家からの荷物を見て思ったものです。

 しかし,新しい体験が伴うなら話は別です。1980年代当時,私は学生であり,百花繚乱だったわずか数年間を楽しむには幼すぎました。お金も知識も交友関係もです。

 分厚い雑誌の広告を見ては「いいなあ」「欲しいなあ」と思ったり,「すごいすごいとは聞いているけどなにがそんなにすごいんだろう」とか「いつかは貯めそう」と思って結局試せずにいたりしたものが,とにかくたくさんあります。

 おそらく,現在のレトロPCのブームは,当時を懐かしむことだけではなく,当時のものを現代の技術で拡張したり,現在の自分の能力で動かして,新しい体験をすることにも支えられているんじゃないかと思います。

 そう,大人となった今では,お金もあります。知識も技術もあります。新しい部品も手に入ります。そして多くの資料が手に入るようになっています。

 あたかも転生もののように,かつて出来なかったことを今楽しむこともそうですし,当時は手に入らなかった素晴らしい性能の部品を使って,当時は構想だけで終わっていたものや実現が難しかったものを現実にしたりと,シンプルなマシンだからこそ自由にいじることが出来るレトロPCで楽しんでいるんだろうと思います。


 私の場合,年齢が高くなってから触り始めたX1turboIIIは,やり残したturboZ-BASICの起動で興味が失せてしまったわけですが,小学生の時に触り始めて,いつかはフロッピーディスクで動かすんだと夢見ていた当時を,現実に堪能しました。

 しかし,もっとも楽しんだのはAppleIIです。私がパソコンに興味を持っていた頃はすでにAppleIIは日本国内でもマイナー機種になっていました。もちろん熱心なファンはたくさんいましたし,最初からマイナーだったマシンとは違い,AppleIIはこの世界のパイオニアでしたし,性能は当時も全く色褪せず,高嶺の花であり続けたマシンでしたが,それゆえに持っている人がほとんどおらず,お店で見かけることも少なかったのです。

 1970年代生まれのAppleIIは,その後隆盛を誇るMicrosoft BASICをROMに内蔵した多くのマシンとは異なる流儀で動かすマシンで,仮に当時AppleIIを与えられてもきっとなにも出来なかっただろうと思います。

 実際,1990年代前半にAppleIIを初めて手に入れた時には,電源を入れるところまでは出来ても,そこから先はなにも出来なかったことを覚えています。

 東レ時代の本物のJ-plusだということで捨てずに持っていましたが,それが実家にやってきてから,なんとか動かして見ようと思ったのが今年の2月頃のお話です。

 少しgoogleで調べてみると,AppleIIの情報は,それはもうザクザク出てきます。日本国内では海外製の高価なマシンだったAppleIIは,当然のことながら海外ではベストセラーモデルで,多くの人にとって最初の1台だったモデルなのですから,海外の情報に簡単にアクセスできなかった当時とは,見える色が異なるはずです。

 加えて円高。昨今円安と言われていますが,AppleIIのころは1ドル300円ですから,円は今の半分以下の価値しかなかったわけです。当時日本国内で36万円だったAppleIIは,今でも15万円くらい,最も安いときなら10万円くらいだったりするのです。
 
 そういう気持ちでAppleIIを眺めてみると,当時全く縁がなかったAppleIIを今当時のつもりでトレースすると,全く新しい経験を得ることになるんじゃないのか,もっと言えばあの時代にタイムスリップすることに等しいんじゃないのか,と思うようになりました。

 当時と違ってお金はほとんどかかりません。情報もあふれています。難しいのは当時のハードウェアを手に入れる事ですが,AppleIIは幸い数が出ているので,探すのは難しくありません。最悪自作も可能です。

 ということで,この10ヶ月ほど私はAppleIIにどっぷりでした。

 最初はとにかく電源を入れたところから先に進もうということでしたが,そのために必要になったのはディスクイメージをディスクに書き戻す手段です。これにはこの界隈でよく使われているツールを動かす必要がありますが,そのために16kBの拡張メモリが必要でした。

 メモリは,基本的な入出力仕様が当時のままなのに,中身は強烈に増えているという珍しい部品で,AppleIIの時代には4kBitだったSRAMは,今ではその1000倍以上のものが簡単に入手できます。

 手持ちの256kBitのSRAMを使って自作したあとは,AppleIIの扉が一気に開いたような面白さで,憧れた有名なゲーム,ツールを楽しみ,新しい技術や知識を得てまるで当時のようなワクワクした毎日を過ごしていました。

 DIskIIの修理もそうですし,Z80カードでCP/Mもそうです。CP/Mは,当時X1turboで少し囓りましたが,面白いと思えず,とても不便で面倒くさいという印象しかありませんでした。

 しかし今触って見ると,非力なZ80でよくここまでやるもんだなあと思うほど,良く動いてくれます。これが当時の世界標準だったのかと,その頃いかに無知だったのか,あるいは自分の少し外側には全く見た事のない輝くような世界があったことを知らずに過ごしていたのか,思い知ることになりました。

 AppleIIは何度も壊れてしまいましたが,その都度修理をあきらめなかったのも,まだやり尽くしていないという知識欲からだったと思います。それに修理が現実的だと思えるくらいの情報が入手出来ることも,カスタムチップが少なく部品の入手も難しくないことも,あきらめなかった理由だと思います。

 ということで,AppleIIでやりたいことはほぼやり終えました。ここから先は例えばAppleIIで音楽を作るとか,AppleIIGSを手に入れるとか,自分で6502のコードを書いてみるとか,そういうことをやるしないでしょう。しかし,当時私がそこまでやっていたかと言えば疑問で,詰まるところ歳を取っても私は私ということです。

 当時,こんなに面白い世界を楽しんでいた人たちがいたんだなあと,羨ましく思いましたし,とはいえ当時ここまでの環境を持っていてもきっと使いこなせずに終わっただろうなあと,美しいデザインのAppleIIを見ながら思います。

 同じ事をあの当時にやろうとすると,おそらく数百万円かかったでしょう。ほとんどがオープンになっていて,今なら無償で使えるソフトウェアを全部購入すると考えると,高級車が買えるほどの経済力がないと経験出来なかったでしょう。

 当時の価値観ではありますが,その楽しみは費用に見合うものだったはずで,楽しくないはずがありません。だから私にとって,それは懐かしいのではなく,新しい体験でした。

 残念な事に,新しい経験も済んでしまえば懐かしさにいずれ変わります。次から次へと試したいことが出てきたAppleIIの探検も,CP/Mが起動した時にもう掘り尽くした感じがしました。さみしいことですが,AppleIIの追体験という旅は,ここら辺で終わりのようです。

 

ハンディオシロの盲点


 先日,amazonのセールでハンディオシロHO102を買ったと書きました。2万円という低価格でありながら,中級機並の実力があるので気に入っていると書いたのですが,前言撤回です。

 先に言い訳しておくと,当たり前過ぎて気にもせず,当然だろうと思っていた仕様が実は不十分だったということです。いやー,これは迂闊でした。

 その仕様というのは,垂直感度です。難しく書いていますが,早い話が測定電圧のレンジの範囲です。

 先日,HO102で小さな振幅の波形を測定しよう,垂直感度を上げていきました。しかし,普段の感覚なら当然見えるだろう波形がなかなか見えてきません。おかしいなと思って確認すると,最も感度が高いレンジでも100mV/divだというじゃありませんか。

 普段当たり前過ぎて意識しないことなので慌てて普段使いの54645DやTDS3054を確認しましたが,やはり10mV/divまでOKです。うーん,10倍も違うのか。

 10:1プローブを使っていますので本体の感度はそれぞれ1/10になりはしますが,1:1で測定することなど現実的にはありませんので,HO102は一目盛りたったの0.1Vなわけです。これじゃアナログ信号を扱えません。

 電源や波形ののったノイズも見えませんし,センサ系の微弱の信号はもちろんのこと,ロジックでもちょっとした信号の変動さえもつかまえられないでしょう。これじゃ水平軸の性能がどんなに良くても,使える範囲は限られてしまいます。

 かつて,測定器メーカーにお勤めだった方に聞いたことがあるのですが,オシロスコープで最もお金がかかっているのは,入力のアナログ回路,すなわち垂直軸なんだそうです。安いオシロと高いオシロの差,あるいはメーカーの実力の差というのは,垂直軸に出てくるということでした。

 垂直軸の性能は,周波数特性と感度に差がつきます。これってオシロスコープの基本機能そのものですよね。ここがきちんと作れるメーカーは,当時はそんなに多くはなく世界で数社,日本でも1社か2社かそんなもん,という話だったことを覚えています。

 デジタルオシロは多くがデジタル化されているので,きちんと組んでしまえばそんなに性能差が出ません。しかしアナログ回路は違います。性能を上げるには技術も必要ですし,コストもかかります。

 だから,その当時ボツボツ出てきた韓国や台湾,中国のオシロスコープのメーカーが,安価なものをラインナップするのは,実は高額なもの(それに見合ったアナログ性能を持つもの)を作れないのだ,という理屈です。

 近年,中国や台湾のメーカーも実力を付けていますし,アナログ部も汎用のICを組み合わせればそこそこの性能が出せるようになってきたので,かつて30万円だったものが10万円になっているというのは事実です。

 ぱっと見てみると,やはり2,3万円のものは感度最大で5mV/divでした。7,8万円になると1mV/divとかつての「普通」になってきます。そう考えるとHO102の10mV/divというのがいかに低レベルなものか,わかろうものです。

 やはり,2,3万円で売られているものはやはりそれなりのものだということを,特に初心者の方は考えておいた方が良いと思います。

 

F(x)tec Pro1xを買う

 私は未だに通話用とデータ通信用に携帯電話を分けていて,通話用に維持している3Gのガラケーを「メインだ」と言い張る変わり者です。

 更に悪いことに,もう携帯電話の世界にはついて行けないと興味を失い,仕方がないから持っているという状況に甘んじており,かつてザウルスとPHSでモバイル通信を日常的に行っていたり,海外からPalmTXを輸入して常用したり,twitterデビューがアドエスだったりと,すっかり過去の栄光が失われています。

 振り返ってみると使いやすいように自分でなんとかするということが必要なくなってしまって,それで結局興味を失うことが多いように思うわけですが,なにも手を汚さずとも普通に使える機器というのは楽ちんな一方で,少し外れたことをしようと思うととても苦労するか結局あきらめるかのどちらかになってしまうので,それで結局今日もを失うのだと思います。

 まあ,そういう目的のズレがある似たような傾向の方が世の中にはいらっしゃるようで,例えばキーボード付きのスマートフォンには一定のファンがいるようです。

 電池で動く小型携帯機器のフルキーボードというのは,PC-1245というポケコンに始まり,実際便利につかえることもあって,未だにその魅力にあらがえません。

 iPhoneやAndroidでキーボードがなくなり,タッチパネルでの操作が広く受け入れられるようになったわけですが,私個人は表示されている画面を直接触ると言うことにどうにも馴染めず,これまでもBlackberry KEYONEを使ってきました。

 Blackberry KEYONEはとてもいいスマートフォンでしたが,いかんせん古くOSも8.1止まり,動作速度以上にセキュリティに不安があり,手頃なキーボード付きのスマートフォンが出てきたら買い換えようと思っていました。

 やはりマニア向けの製品になるので,どうしても聞いたことがないようなメーカーから,クラウドファンディングなんかで買うという形が多く,これも私にはちょっと抵抗がありました。

 そこへ飛び込んで来たのが,イギリスのF(x)TECHNOLOGYから出ていた,F(x)tec Pro1xという機種が未使用品で4万円で販売されているという話でした。

 この機種は2年ほど前にちょっと話題になったので私でも知っているのですが,画面をスライドするとキーボードが出てくるという,アドエスを彷彿とさせるモデルです。

 ただ,この手のギミックはやはりメカ屋が優秀な日本製が望ましくて,少々不安があったのですがこの機会を逃すと当分買い換えできないなと,なかば自分を騙すようにポチりました。

 届いてセットアップを行いようやく常用を始めたのですが,結論から言うと今ひとつで期待を下回るものでした。

(1)外観

 大きささはそれほどでもないですが,厚みはキーボード付きという事もあり,かなり分厚いと思います。重さもありますし,これをスマートフォンとしてみればやはりデメリットになると思います。

 意外にかっちりとした剛性感もありますし,青の本体色も綺麗です。しかし,キーボードのギミックには個体の問題かも知れませんが,右側にガタがあり,キーボードを出して画面にタッチするとカタカタと音がなります。これはダメでしょう。

 キーボードは意外によい感触で,独立したキートップを持つ押しやすいキーです。バックライトも持っているあたり,なかなかこだわっているなあと感心します。

 配列は前機種のPro1で酷評された配列を見直していますが,その結果私は何の不満もなく使えています。とはいえ,つくづくBlackberryのキーボードの使い心地の良さが懐かしく感じます。

 キーボードのスライドはちょっとコツが必要で,カメラのシャッターボタンや電源ボタン,音量調整ボタンに触らないように開くのはなかなか難しいです。結構な力を入れないとスライドしないので,ついついキーボードを使わなくなってしまいます。

 そうそう,私の個体の問題だと思うのですが,背面の「XDA」のロゴがかすれていました。本当に未使用であるなら製造時の不良でしょうが,もう面倒ですし,目につくものでもないのでこのまま使うことにします。

 
(2)使い心地

 CPUがミッドレンジ向けのものに変わってしまったのでパフォーマンスは良くないです。メモリも今どきのモデルとしては少なめですので,スマートフォンとしてみれば4万円の価値があるかどうかさえあやしいと思います。

 ディスプレイはOLEDでなかなか高品位だと思います。ただ別にLCDでもいいと思うくらい,LCDとの差が縮まっているのだろうと思います。

 ちょっとどうなのかなと思ったのは左右の端っこが曲面になっていることです。手に馴染むデザインには貢献するかも知れませんが,曲面に映る文字が見にくかったり,そこにタッチがしにくかったり,フィルムが貼れなかったりとあまりメリットを感じませんでした。

 キーボードはスライドが面倒に感じがちで,まず使おうという意欲が湧きにくい上,ATOKとの相性が悪く,横長の画面が使いにくいこともあり,縦画面のままキーボードが使えるBlackberryが圧勝です。

 
(3)その他

 セットアップを一通り済ませた後カメラをテストすると,カメラアプリがすぐに落ちてしまい,もう一度セットアップする羽目になったりしましたし,WiFiの感度が悪すぎて,勝手に切断されてモバイルネットワークに繋がっていたのにセットアップを続行してパケ死したりと,とにかく大変でした。

 ATOKとの相性が悪いことも問題で,横画面でソフトキーボードを消すと縦画面でもソフトキーボードが表示されずに詰むとか,Gboardも候補が画面に大きく表示されて邪魔になるなど,最大の売りであるはずのキーボードが使いにくいというおかしな事が起きています。

 Android11というのはなのでセキュリティのアップデートはGooglePlayで配信されるので安心感がありますが,これがなければKEYONEをそのまま使い続けていたかも知れません。


(4)まとめ

 わざわざ買い換える必要があったのか,という疑問を感じる買い物でした。ちなみに購入したディスプレイのフィルムは曲面をカバーしない中途半端なもので,画面が見にくくなるだけのものでした。国内の有名なメーカーの製品だったのですが,失敗だったと思います。

 専用のケースもありませんし,なにかと不便な思いをします。はっきりいって,ウケ狙いのアイテムだったと思います。

 素のAndroidであることは評価しますが,楽しさや満足感で言えばBlackBerryがやっぱりいいなあと,見直しました。

KT-1100Dを久々に調整する

 うちのFMチューナー,ケンウッドのKT-1100Dは,以前入手した時にセパレーションが機内温度と共に変動してしまい,故障なのか仕様なのかを判断するためにもう一台入手し,結局現在2台所有することになってしまっています。

 結局この時は2台目もセパレーションが同じように変動することがわかり,仕様として割り切ったという結論になったのですが,問題は2台目が故障していたことです。

 完動品という触れ込みで入手しましたが,検波コイルに内蔵された温度補償用のコンデンサが壊れるという持病でチューニングがズレるという問題を抱えていました。

 結局同等品のコンデンサに交換することで完調となった2台目のKT-1100Dですが,出番はなくずっと押し入れで眠っていたのです。

 しかし,ふとしたことから友人に使ってもらうことになり,動作確認と再調整のために6年ぶりに引っ張り出したというわけです。

 SSGや歪率計も数年ぶりに電源を入れますので心配でしたが,これらは今でも問題なく動いてくれました。ケーブル類が断線してたりして手間取りましたし,調整の手順も忘れており,時間がかかってしまいました。しかしかなりいい仕上がりになったと思います。

 忘れないように調整手順を書いておこうと思います。すでにFMチューナーの修理と調整には有名なサイトが存在し,私もそこで勉強させて頂きましたが,複数あるサイトで数値や順番が一致していなかったり,頼りになるはずのサービスマニュアルが案外使い物にならなかったりということもあり,自分用に調整手順を作らざるを得ませんでした。


(0)準備を念入りにする。KT-1100DはFMモード,IF BANDはWIDE,RF SELECTORはDISTANCE,TUNINGモードはAUTO,REC CALはOFF,PROGRAMはOFF,そしてQUIETING CONTROLはNORMALとして右端に。

(1)まずバリキャップ電圧の調整。アンテナを外し,TP6とTP7に電圧計を繋ぐ。76MHzで3.0V±0.1Vになるようにメイン基板上のL14を調整。

(2)次に90MHzで25V±0.1Vになるようにメイン基板上のTC1を調整し,(1)と(2)を何度か繰り返して追い込む。

(3)次は検波の調整。83MHz,80dB,無変調を受信し,TO10とTP11に電圧計を繋ぐ。0V±10mVになるようにDET基板上のL9を調整。L9内蔵のコンデンサが壊れているとここで詰む。

(4)続いてPLL検波の調整。(3)のまま電圧計をTP12とTP13につなぎ替え,0V±10mVになるようにDET基板上のL12を調整。

(5)次にRFの調整。83MHz,40dB,変調を受信し,DET基板にあるCN3の4ピンとGNDの間の電圧が最大になるよう,L1,L4,L7,L18を調整。

(6)このままIFTの調整へ。(5)からSGのレベルを30dBに下げ電圧が最大になるよう,L10を調整。

(7)ここで神経を使うRFの調整は終わり。続けてオートストップレベルの調整。これは放送局の電波を受信したかどうかを判別するレベルを調整するもので,これを下回るレベルはサーチで引っかからない。83MHz,30dB,変調を受信しメーター基板上のVR1を調整。

(8)チューニングメーターの調整。83MHz,80dB,変調を受信し,バーグラフが中央で白く点灯するようにメーター基板上のVR2を調整。

(9)ここからはいよいよステレオへ。まずはMPXのVCOを調整。83MHz,80dB,無変調を受信し,TP14に周波数カウンタを繋ぎ,19.00kHz±50Hzになるようにメイン基板上のVR4を調整。

(10)次にサブキャリアの調整。83MHz,80dB,SUBを受信し,Lチャンネルの音声出力が最大になるようにメイン基板上のL25を調整。

(11)そしてKT-1100Dのキモの1つ,歪みの調整。83MHz,80dB,モノラルを受信し,音声出力の歪みが最小になるようにDCC基板上のVR3を調整。

(12)(11)のままDCC基板上のVR4を調整し,さらに歪みを最小にする。ここで2次歪みが最小になる。

(13)(12)のままDCC基板上のVR6を調整,さらにさらに歪みを最小にする。ここで3次歪みが最小になる。

(14)次はステレオの歪み。83MHz,80dB,LEFTを受信し,音声出力の歪みが最小になるようにDCC基板上のVR5を調整する。

(15)83MHz,80dB,SUBを受信し,音声出力の歪みが最小になるようにDCC基板上のVR7を調整する。

(16)IF BANDをNARROWに切り替えて,80MHz,80dB,LEFTを受信し,音声出力の歪みが最小になるようにDCC基板上のVR2を調整する。出来れば(9)までを何回か繰り返す。

(17)ここからはセパレーションの調整。IF BANDをWIDEに戻して83MHz,80dB,RIGHTを受信し,Lチャンネルの出力が最小になるようにメイン基板上のVR2を調整。

(18)83MHz,80dB,LEFTを受信し,Lチャンネルの出力が最小になるようにメイン基板上のVR3を調整。

(19)IF BANDをNARROWに切り替えて83MHz,80dB,LEFTを受信し,Lチャンネルの出力が最小になるようにメイン基板上のVR1を調整。

(20)次はSメーターの調整。83MHz,80dB,変調を受信しバーグラフの最も上のセグメントが点灯するようにメーター基板上のVR3を調整。

(21)変調度のメーターを調整。REC CALをONにし,MODULATIONのメーターが4つ点灯するようにメーター基板上のVR4を調整。ついでに75%変調で7つ点灯するかどうかも見ておく。


 ここまででFMは完了です。続けてAMです。

(0)準備として,ループアンテナを取り付け,モードはAM,IF BANDはNARROW,TUNING MODEはAUTO,REC CALはOFFにする。

(1)バリキャップ電圧の調整。TP6とTP7に電圧計を繋ぐ。522kHzで1.5V±0.1Vになるようにメイン基板上のL20を調整。

(2)次に1629kHzで8.0V±0.1Vになるようにメイン基板上のTC2を調整し,(1)と(2)を何度か繰り返して追い込む。

(3)続けてRFの調整。630kHz,30dB,変調を受信し,シグナルメーターが最大になるように,メイン基板上のL21を調整。

(4)今度は1440kHz,30dB,変調を受信し,シグナルメーターが最大になるように,メイン基板上のTC3を調整。

(5)いよいよ最後,IFTの調整。999kHz,30dB,変調を受信し,シグナルメーターが最大になるように,メイン基板上のL22を調整。


 これで全部終了。調整を追い込めなくて故障が見つかったり,設定を変更するのをうっかり忘れたりすると,あっという間に1時間や2時間の時間がかかってしまいます。しかし,これでKT-1100Dは甦ります。

 友人のKT-1100Dは,最終的に歪率が0.02%以下,セパレーションは54dBになりました。チャンピオンではないでしょうが,一応スペックは満足する数値です。

 自分用のKT-1100Dもせっかくなので調整を行いましたが,6年くらいでは調整はそれほどズレておらず,相変わらず調子の良い状態であることがはっきりしてよかったと思います。

 悩んだのはシグナルメーターとオートストップレベルの調整です。サービスマニュアルにある数値をそのまま使うと,どうも調整しきれなかったりするので,いろいろ調べてこの数値で調整することにしました。

 というわけで,調整手順をマニュアル化できました。これで気軽に調整ができるというものです。あとどれくらい使えるか分かりませんが,3年に一度くらいは調整できればと思います。

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